JP2004356084A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 金属水素錯化合物例えば水素化ホウ素ナトリウムのアルカリ水溶液を燃料とする燃料電池において、電気的特性を向上させること。
【解決手段】 ケース体内を電解質膜により2つの領域に分割し、一方の領域に電解質膜に接するように板状の多孔質体からなる酸化剤極を設けると共に、他方の領域に電解質膜にその一面側が接するように板状のニッケルネット(網状構造体)からなる流路部を設け、当該ニッケルネットの他面側に接するように板状の多孔質体からなる燃料極を設け、電解質膜と燃料極との間を燃料が通流するように構成する。この構成により例えばナトリウムイオンが燃料極を通らずに電解質膜を介して酸化剤極側に移動できるので、ナトリウムイオンの移動抵抗が小さくなり、このため電流を増加させたときに電圧の落ち込みが少ない。
【選択図】 図1
【解決手段】 ケース体内を電解質膜により2つの領域に分割し、一方の領域に電解質膜に接するように板状の多孔質体からなる酸化剤極を設けると共に、他方の領域に電解質膜にその一面側が接するように板状のニッケルネット(網状構造体)からなる流路部を設け、当該ニッケルネットの他面側に接するように板状の多孔質体からなる燃料極を設け、電解質膜と燃料極との間を燃料が通流するように構成する。この構成により例えばナトリウムイオンが燃料極を通らずに電解質膜を介して酸化剤極側に移動できるので、ナトリウムイオンの移動抵抗が小さくなり、このため電流を増加させたときに電圧の落ち込みが少ない。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えばテトラヒドロホウ酸塩などの金属水素錯化合物のアルカリ水溶液からなる燃料液が供給される燃料電池に関する。
燃料電池は、負極及び正極に夫々燃料及び酸化剤を連続的に供給しそのときに起こる化学反応により得られるエネルギーを電気的エネルギーに変換する装置であり、環境にやさしいクリーンな動力源として注目を集めている。例えばメタノールを改質して水素リッチなガスを取り出し、この水素リッチなガスを燃料として用いる燃料電池は従来から良く知られているが、最近において水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などの水素化ホウ素錯化合物の液体燃料を用いた燃料電池(ボロハイドライド燃料電池)が検討されている。例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)はアルカリ水溶液中において安定しており、BH4−をBO2−に変換するときの電気化学的電位がより卑になることから理論電圧が高く、また水素を発生させる改質器が不要であるなどの利点がある。この種の燃料電池は特許文献1及び2に記載されている。
例えば特許文献1には、図17に示すボロハイドライド燃料電池が知られている。この燃料電池は、樹脂などの絶縁性のケース体11内を高分子電解質膜からなる透過膜12により2つの領域に区画し、一方の領域には酸化剤極13が透過膜12の一面側に接触して設けられ、また他方の領域には燃料極14が透過膜12の他面側に接触して設けられている。酸化剤極13及び燃料極14は、例えばニッケルなどの粒状焼結体あるいは発泡体などの多孔質体を基材とし、その表面に白金、パラジウムなどの貴金属をメッキしたものなどが用いられる。更に酸化剤極13とケース体11の一方の側面との間には酸化剤例えば空気を通流させる第1の流路部15が形成され、また燃料極14とケース体11の他方の側面との間には燃料を通流させる第2の流路部16が形成されている。
このような燃料電池においては、第1の流路部15に例えば加湿された空気を通流させると共に第2の流路部16に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)のアルカリ水溶液である燃料を通流させると、燃料極14では8電子反応である(1)式の反応が主として起こる。
NaBH4+8NaOH→NaBO2+6H2O+8Na++8e−……(1)
燃料極14で生成したナトリウムイオン(Na+)は、透過膜12を通過して酸化剤極13に移動し、電子は外部に接続された図示しない回路を通して酸化剤極13に受け渡される。そして、酸化剤極13では、下記の(2)式に示すように、外部に接続された回路を通して電子が受け渡され、外部から酸化剤として供給された酸素(O2)及び水(H2O)と、透過膜12から移動してきたナトリウムイオンとが触媒作用により反応して水酸化ナトリウムを生成する。また透過膜12から移動してきた水素イオンが酸素と反応して水を生成する反応も起こっている。
燃料極14で生成したナトリウムイオン(Na+)は、透過膜12を通過して酸化剤極13に移動し、電子は外部に接続された図示しない回路を通して酸化剤極13に受け渡される。そして、酸化剤極13では、下記の(2)式に示すように、外部に接続された回路を通して電子が受け渡され、外部から酸化剤として供給された酸素(O2)及び水(H2O)と、透過膜12から移動してきたナトリウムイオンとが触媒作用により反応して水酸化ナトリウムを生成する。また透過膜12から移動してきた水素イオンが酸素と反応して水を生成する反応も起こっている。
2O2+4H2O+8Na++8e−→8NaOH……(2)
特表2000−502832(図1)
特開2002−50375(図2)
ボロハイドライド燃料電池は実施レベルとして技術が確立しているとは言い難く、電気的特性及び使用寿命などにおいて改善すべきところが多い。例えば出力電流を増加させたときに出力電圧は安定していることが理想であるが、現実には出力電圧が低下し、その要因については十分解明されておらず、こうしたことがボロハイドライド燃料電池の実用化を遅らせている一因になっている。
このためボロハイドライド燃料電池の実用化を図るためには、良好な電気的特性が得られない要因を一つ一つ解明していく必要があり、本発明はそうした観点から研究を重ねた結果、電気的特性とナトリウムイオンの移動とが関連していることを突き止めた。即ち燃料電池から外部の負荷に電流を流すためには、第2の流路部16に供給された水素化ホウ素ナトリウムのナトリウムイオンが燃料極14を通って透過膜12に達し、更にこの透過膜12を通って酸化剤極13に到達することが必要であるが、多孔質体である燃料極14がナトリウムイオンの通過に対して抵抗になっているため、燃料電池から取り出される電流を大きくしていくと、出力電圧が低下するという問題がある。
また燃料極14における透過膜12側では、下記に示す(3)式及び(4)式の反応が起こっており、そのため透過膜14側におけるBH4−の反応量が少ないと上述と同じように出力電圧が低下してしまうという問題もある。
BH4−+8OH−→BO2−+6H2O+8e−……(3)
BH4−+4OH−→BO2−+2H2O+2H2+4e−……(4)
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、金属水酸錯化合物のアルカリ水溶液を用いる燃料電池において、電気的特性を向上することのできる燃料電池を提供することにある。
BH4−+4OH−→BO2−+2H2O+2H2+4e−……(4)
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、金属水酸錯化合物のアルカリ水溶液を用いる燃料電池において、電気的特性を向上することのできる燃料電池を提供することにある。
本発明は、透過膜を燃料極と酸化剤極との間に介在させ、燃料として金属水素錯化合物のアルカリ水溶液を用いる燃料電池において、前記燃料極と透過膜との間に燃料を通流させるための流路部を設けたことを特徴とする。この流路部は、後述する燃料極に形成される流路及び液流拡散体、そして燃料が流路と液流拡散体とに流れるための空間も含まれる。なお燃料の全てが前記流路部を流れることに限定されるものではなく、一部の燃料が燃料極における透過膜とは反対側の面を流れる場合も含む。流路部は例えば網状構造体などからなる液流拡散体により構成することが好ましい。また金属水素錯化合物としては水素化ホウ素錯化合物を挙げることができる。
本発明によれば、アルカリ金属イオンが燃料極を通らずに例えば液流拡散体からなる流路部から透過膜に到達し、ここを通って酸化剤極側に移動するので、アルカリ金属イオンに移動抵抗が小さく、電流を増加させても出力電圧の落ち込みの程度が小さい。
この発明の燃料電池は、透過膜を燃料極と酸化剤極との間に介在させてなる単位セルをセパレータを介して複数積層させて構成した燃料電池(燃料電池スタック)に適用することができ、その場合には、前記セパレータに設けられた燃料の供給口と、前記燃料極と透過膜との間に設けられた燃料の流路部と、を備え、燃料の供給口から供給された燃料が前記流路部を通るように構成することができ、例えば燃料の流路部は、燃料の供給口に燃料極を介さずに連通している構成とすることができる。具体的には、燃料極の一面側及び他面側は夫々セパレータ及び燃料の流路部をなす液流拡散体に接触し、液流拡散体の一縁は燃料極の一縁よりも外側にはみ出し、燃料の供給口から供給された燃料が、燃料極よりも外側にはみ出している液流拡散体の部分とセパレータとの間の隙間を通って液流拡散体内に流れ込むように構成することができる。また前記流路部は、燃料極側に面した一面側に溝からなる流路を備え、この流路に他面側まで貫通させた孔を多数形成させた流路部材例えば金属プレートであってもよい。この場合、流路部材と透過膜との間に液流拡散体を設け、流路部材と液流拡散体とにより流路部を形成してもよい。
また本発明の他の燃料電池は、透過膜を燃料極と酸化剤極との間に介在させてなる単位セルをセパレータを介して複数積層させて構成し、燃料として金属水素錯化合物のアルカリ水溶液を用いる燃料電池において、
前記セパレータに設けられた燃料の供給口と、
前記燃料極における透過膜側の面に形成された溝からなる流路と、
前記燃料の供給口と燃料の前記流路とを連通する連通路と、
燃料の供給口から供給された燃料が前記連通路を介して前記流路を通るように構成されたことを特徴とする。またこの燃料電池は、燃料極におけるセパレータ側に、溝からなる流路を形成してもよいし、燃料極と透過膜との間に液流拡散体を設けてもよい。なお前記流路は例えば並行状に多数形成された溝からなる。
前記セパレータに設けられた燃料の供給口と、
前記燃料極における透過膜側の面に形成された溝からなる流路と、
前記燃料の供給口と燃料の前記流路とを連通する連通路と、
燃料の供給口から供給された燃料が前記連通路を介して前記流路を通るように構成されたことを特徴とする。またこの燃料電池は、燃料極におけるセパレータ側に、溝からなる流路を形成してもよいし、燃料極と透過膜との間に液流拡散体を設けてもよい。なお前記流路は例えば並行状に多数形成された溝からなる。
本発明の燃料電池によれば、透過膜と燃料極との間に燃料の流路部を設けてい
るので、燃料中のアルカリ金属イオンが燃料極を通らずに流路部から電解質膜に到達し、ここを通って酸化剤極側に移動するようになり、このためアルカリ金属イオンの移動抵抗が小さい。従って電流を増加させても出力電圧の落ち込みの程度が小さく、良好な電気的特性が得られる。
るので、燃料中のアルカリ金属イオンが燃料極を通らずに流路部から電解質膜に到達し、ここを通って酸化剤極側に移動するようになり、このためアルカリ金属イオンの移動抵抗が小さい。従って電流を増加させても出力電圧の落ち込みの程度が小さく、良好な電気的特性が得られる。
また本発明の燃料電池によれば、透過膜と燃料極との間に燃料の流路部を設ける又は透過膜側に面した燃料極の一面側に燃料が通る流路を形成することで、BH4−と水酸基との反応が促進され、当該燃料電池の出力(電力)が大きくなる。
〔第1の実施の形態〕
本発明に係る燃料電池の第1の実施の形態の基本構成について図1及び図2を参照しながら説明する。図1において、2は角型のケース体であり、このケース体2内は透過膜3により酸化剤極(正極)室4と燃料極(負極)室5とに区画されている。酸化剤極室4には、板状の酸化剤極41がその一面側を透過膜3に接触するように設けられると共に、酸化剤極41の他面側とケース体2との間には、酸化剤の流路部42をなす空間が形成されている。この流路部42には、酸化剤極供給路43及び排出路44が接続されており、酸化剤供給路43には、上流側から酸化剤供給源45、供給ポンプ46、加湿手段47及び加熱手段48がこの順に設けられている。
本発明に係る燃料電池の第1の実施の形態の基本構成について図1及び図2を参照しながら説明する。図1において、2は角型のケース体であり、このケース体2内は透過膜3により酸化剤極(正極)室4と燃料極(負極)室5とに区画されている。酸化剤極室4には、板状の酸化剤極41がその一面側を透過膜3に接触するように設けられると共に、酸化剤極41の他面側とケース体2との間には、酸化剤の流路部42をなす空間が形成されている。この流路部42には、酸化剤極供給路43及び排出路44が接続されており、酸化剤供給路43には、上流側から酸化剤供給源45、供給ポンプ46、加湿手段47及び加熱手段48がこの順に設けられている。
燃料極室5には、燃料の流路部をなす液流拡散体、例えば板状に形成された網状構造体であるニッケルネット51が透過膜3と対向するように配置され、ニッケルネット51の一面側と透過膜3との間には、前記ニッケルネット51が透過膜3を傷付けないようにするために多孔質マット例えばカーボンペーパからなる保護層52が介在している。またニッケルネット51の他面側とケース体2との間には、ニッケルネット51の他面側にその一面側が接触するように板状の燃料極53が設けられている。ケース体2におけるニッケルネット51の上端側に対応する部位には、燃料供給口が形成されていてここに供給ポンプ50が介設された燃料供給路54が接続されると共に、ケース体2におけるニッケルネット51の下端側に対応する部位には、燃料排出口が形成されていて、ここには排出路55が接続されている。そしてこの例では燃料供給路54の上流側と排出路55の下流側との間には燃料供給源である燃料貯槽56が介在しており、燃料供給路54及び排出路55により燃料の循環路が構成されている。
以上の燃料電池において、ケース体2を構成する材料としては、絶縁材が有利であり、例えば絶縁性セラミックス、樹脂及び金属酸化物などが用いられる。透過膜3としては例えば陽イオン透過性膜などからなる高分子電解質膜を用いることができ、陽イオン透過性膜としては例えば商品名「ナフィオン」(デュポン株式会社社製)を用いることができるが、陰イオン透過性膜あるいは陽イオン、陰イオンの両方を透過する双極性透過膜などを用いることができる。この実施の形態では、沸騰している水酸化ナトリウム水溶液の前記「ナフィオン」を浸漬して煮沸処理したものを使用している。「ナフィオン」はフッ素樹脂を骨格としてこのフッ素樹脂中の炭素にSO3−イオンが結合しており、このイオンに水素イオン(H+)が吸着している状態である。そこで水酸化ナトリウムにより煮沸処理すると水素イオン(H+)がナトリウムイオン(Na+)により置き換わる。即ち市販の上記の透過膜は交換基がスルホン酸型(SO3H)であるが、水酸化ナトリウム水溶液により処理することでナトリウム型(SO3Na)に変わったことになる。
酸化剤極41及び燃料極53としては、白金を分散した炭素又は鉄、ニッケル、クロム、銅、白金、パラジウムなどの金属あるいはそれらの金属の合金が用いられ、発電効率や耐久性がよく、低コストという点でニッケル又はニッケル・クロム合金の多孔体、例えば粒状焼結体や発泡体を基材とし、その表面に白金、パラジウムなどの貴金属からなる触媒をメッキして触媒層を形成したものなどが用いられる。この実施の形態では例えば両面に触媒層が形成された燃料極を用いる。
燃料としては、上記の電極材料を用いてもよいが、特に好ましいのは水素吸蔵合金又はその水素化物である。この水素吸蔵合金又はその水素化物は、水素を可逆的に吸収、放出し得るものであれば特に制限はなく、例えばMg2Ni合金、Mg2NiとMgとの共晶合金のようなMg2Ni系合金のA2B型合金、ZrNi2系合金、TiNi2系合金などのラベス相系AB2型合金、TiFe系合金のようなAB型合金、LaNi5系合金のようなAB5型合金、TiV2系合金のようなBCC型合金の中から任意に選ぶことができる。
この中で好ましいのは、LaNi4.7Al0.3合金、MmNi0.35Mn0.4Al0.3Co0.75合金(但しMmはミッシュメタル)、MmNi3.75Co0.75Mn0.20Al0.30合金(但しMmはミッシュメタル)、Ti0.5Zr0.5Mn0.8Cr0.8Ni0.4、Ti0.5Zr0.5Mn0.5Cr0.5Ni、Ti0.5Zr0.5V0.75Ni1.25、Ti0.5Zr0.5V0.5Ni1.5、Ti0.1Zr0.9V0.2Mn0.6Co0.1Ni1.1、MmNi3.87Co0.78Mn0.10Al0.38(但しMmはミッシュメタル)などである。
これらの水素吸蔵合金又はその水素化物は、表面をフッ化処理することにより、その性能を著しく高めることができる。即ち、このようなフッ化処理を行うことにより、接触する負極液に対する耐腐食性が付与され、且つ長時間に亘って高い発電容量を維持しうる。このフッ化処理は、例えば水素吸蔵合金又はその水素化物をフッ化剤含有水溶液中に浸漬し、その表面をフッ素化することによって行われる。
酸化剤極41に供給される酸化剤としては、酸素ガス又は空気であってもよいが、既述の(2)式の反応が進行するためには図1に示すように、これら酸化剤ガス中に例えば加湿器47により水分を含ませることが好ましい。また酸化剤はガスに限られず、活性酸素発生剤水溶液、例えば過酸化水素などの過酸化物の水溶液であってもよい。
燃料極室5側の流路部はニッケルネット51などの網状構造体に限られないが、燃料が流路部を通流するときに燃料極53に接触する燃料ができるだけ拡散して入れ替わることができるように燃料を攪拌するものが好ましく、このため単なる空間とするよりも燃料が衝突しながら流れる構造のものという点で拡散層ともいうべき網状構造体が好ましい。この流路部としては他に多孔質シート、発泡シートなどを挙げることができる。
燃料としては、金属水素錯化合物のアルカリ水溶液が用いられ、金属水素錯化合物としては例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム(KBH4)、または水素化ホウ素リチウム(LiBH4)などの水素化ホウ素錯化合物を挙げることができるが、その他に水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素亜鉛(Zn(BH4)2)などを挙げることができる。アルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を用いることができる。アルカリ水溶液の濃度は、あまり高濃度にすると金属水素錯化合物が溶解しにくくなるので、例えば30重量%の範囲で選択することが好ましく、例えば20重量%に調製される。金属水素錯化合物は、目的とする発電容量及びアルカリ水溶液に対する溶解性を考慮して例えば0.1〜50重量%の濃度で用いるのが好ましい。
次にこの実施の形態の作用について図1及び図2を参照しながら説明する。酸化剤供給源45からの酸化剤例えば空気を供給ポンプ46により酸化剤極室4の流路部42に供給する。ここで酸化剤を流路部42に供給する前に加湿器47により例えば絶対温度で30〜70%程度に加湿し、更に加熱器48で必要な温度、例えば40〜90℃に加熱する。流路部42を通流した空気は排出路44から排出される。
一方燃料貯槽56から例えば水酸化ホウ素ナトリウムを水酸化ナトリウムに溶解させてなる燃料を供給ポンプ50により燃料極室5のニッケルネット51に供給する。この例ではニッケルネット51から排出された燃料は燃料貯槽56に戻され、循環される。燃料はニッケルネット51により拡散されながら通流し、多孔質体である燃料極53内に浸透していき、このとき従来技術の項目でも述べたように(4)式(既述の(1)式に相当する)で示される8電子反応が主として起こり、また(5)式で示される4電子反応も起こっていると考えられる。
NaBH4+8NaOH→NaBO2+6H2O+8Na++8e−……(4)
NaBH4+4NaOH→NaBO2+2H2O+2H2+4Na++4e−……(5)
このようにして燃料極53から電子が、外部に接続された回路に取り出されると共に、燃料中のナトリウムイオンが透過膜3を通って酸化剤極室4側に移動し、既述の(2)式にも示したようにナトリウムイオンと酸素及び水分とから水酸化ナトリウムが生成される。
NaBH4+4NaOH→NaBO2+2H2O+2H2+4Na++4e−……(5)
このようにして燃料極53から電子が、外部に接続された回路に取り出されると共に、燃料中のナトリウムイオンが透過膜3を通って酸化剤極室4側に移動し、既述の(2)式にも示したようにナトリウムイオンと酸素及び水分とから水酸化ナトリウムが生成される。
このような実施の形態によれば、透過膜3と燃料極53との間に燃料の流路部であるニッケルネット51を介在させているので次のような効果がある。燃料極室5側に供給された燃料は、ニッケルネット51により拡散されるのでそのときに攪拌作用が働いて燃料極53に接触、浸透しながら下流側に移動する。このときニッケルネット51を流れている燃料であるNaBH4が燃料極53の表面の触媒層に接触して電極反応が起こり、その結果電荷担体であるナトリウムイオンがフリーな状態になり、透過膜3を通って酸化剤極41側に移動しようとする。更に燃料中にはNaOHが含まれているので、多量の解離したナトリウムイオンが含まれており、このナトリウムイオンも電荷担体として酸化剤極41側に移動しようとする。
ここで図17に示した従来構造のような透過膜と流路部との間に燃料極が介在する場合には、ナトリウムイオンが燃料極内を通過することになるが、この実施の形態では流路部(ニッケルネット51)と透過膜3との間に燃料極が介在しないので、ナトリウムイオンがスムーズに透過膜3に到達し、これを通って酸化剤極41側に移動する。従ってナトリウムイオンが燃料極室5から酸化剤極室4側に移動するときの抵抗が小さいので、電流の増加に伴って起こる出力電圧の低下を抑えることができる。
更にまた透過膜3として、陽イオン交換膜を水酸化ナトリウムで煮沸し、イオン交換基であるSO3−にナトリウムイオンを結合させた膜を使用すれば、ニッケルネット51から移動してきたナトリウムイオンが透過膜3に到達すると、いわば玉突き状態で透過膜3中のナトリウムイオンが飛び出すので、ナトリウムイオンの移動抵抗が小さくなる。このように燃料中のアルカリ水溶液のアルカリ金属を含む溶液例えばアルカリ水溶液により陽イオン交換膜をアルカリ型透過膜として使用することが好ましい。
次いで図1の構成をより具現化した例について図3〜図7を参照しながら説明する。この実施の形態は図1に示す単位セルを積層した燃料電池スタックである。但しこの明細書では燃料電池スタックを燃料電池と呼ぶことにする。以下の説明において、図1に相当する部分については便宜上同じ符号を付しておく。図3中、6A、6Bは、例えば導電性材料からなるセパレータ(バイポーラプレート)であり、これらセパレータ6A、6Bの間には透過膜3が配置される。透過膜3と一方のセパレータ6Aとの間には既述の保護層52(図示せず)、ニッケルネット51及び燃料極53が配置されると共に透過膜3と他方のセパレータ6Bとの間には酸化剤極41が配置され、図4に示すように透過膜3、保護層52、ニッケルネット51、燃料極53、酸化剤極41及び後述のガスケット7A、7Bを含む単位セル60がセパレータ6A(6B)を介して複数個積層され、この積層体がエンドプレート100及び101の間に固定される。透過膜3、保護層52、ニッケルネット51、燃料極53及び酸化剤極41は例えば接着剤などで互いに固定され、膜・電極構造体(MEA:Membrance Electrode Assembly)を構成している。
各セパレータ6A、6Bの表面(図4中手前側の面)及び裏面側(裏側の面)には、各々屈曲路をなす溝が形成されている。各セパレータ6A、6Bの表面側の溝は酸化剤の流路61であり、裏面側の溝は燃料の流路62である。前記流路61は先の実施の形態の流路部42に相当する。また燃料の流路62という記載をしているが、燃料については後述のように大部分がニッケルネット51を流れる。なお図3において左側には、セパレータ6Aの裏面側を見せている。7A、7Bはガスケットであり、これらガスケット7A、7Bには各々窓71が形成されている。一方のガスケット7Aの窓71には、燃料極53及びニッケルネット51が密に嵌合され、他方のガスケット7Bの窓71には、酸化剤極41が密に嵌合される。
セパレータ6Aにおける酸化剤の流路61の左上端には排出口63が形成されており、透過膜3及びガスケット7A、7Bには、この排出口63に対応する位置に夫々孔31、72、72が穿設されている。従って前記流路61の右下端の供給端61aに供給された酸化剤は当該流路61を流れて排出口63から排出され、孔72、31、72を通ってセパレータ6Bの流路61の供給端61aに到達する。
図5は、セパレータ6Aにおける燃料極53及びニッケルネット51の取り付け状態を示す図であり、図6はセパレータ6Aの裏面側を示す図である。セパレータ6Aの流路62は、この例では図7に示すように並行状に伸びる複数の細い溝62aにより構成される。セパレータ6Aにおける流路62の左上端部には、燃料の供給口64が穿設されており、ここから供給された燃料が流路62及びニッケルネット51を通って流路62の右下端部の排出端65に向かうことになる。流路62が形成される領域は略四角形であるが、入口側及び出口側はその四角形領域から符号62b、62cで示すように左右に少しはみ出しており、ニッケルネット51の一面は、このはみ出した部分を除く四角形と同じ大きさに作られている。
セパレータ6Aとニッケルネット51との間には、その両面が夫々セパレータ6A及びニッケルネット51に接触した状態で燃料極53が介在している。この燃料極53の幅(図7中左右方向の長さ)はニッケルネット51と同じ寸法であるが、上下方向の長さはニッケルネット51よりも短く、燃料極53の上端及び下端は、ニッケルネット51の上端及び下端よりも夫々流路62の幅のおよそ半分の長さ(2個の溝62aの幅分)だけ内側に寄っている。従って図7からも分かるように、燃料極53の上方側及び下方側には、各々燃料極53の上端面、流路62、燃料極53の上下からはみ出したニッケルネット51の部分及びガスケット7Aで囲まれる空間(連通路)66、67が形成され、上側の燃料の供給口64は空間66を通じてニッケルネット51に連通し、またニッケルネット51の下部側(排出側)は空間67を通じて燃料の排出端65に連通している。
透過膜3及びガスケット7A、7Bには、前記排出端65に対応する位置に夫々孔(図6ではガスケット7Aの孔73が示されている)が穿設されており、この排出端65から排出された燃料は、各孔を通ってセパレータ6Bの流路62における図3では隠れて見えない燃料供給口に到達する。従ってこの例では、ガスケット7Aの孔73が燃料の排出口に相当する。
このような構成の燃料電池では、外部から供給された燃料が単位セル60に順次流れ、例えばセパレータ6Aの燃料の供給口64に送られた燃料の一部は、屈曲した流路62に沿ってつまり燃料極53とセパレータ6Aとの間を流れるが、燃料の大部分は空間(連通路)66を介して、ニッケルネット51の図中上端部における燃料極53からはみ出した部位から流入して、図7(a)に矢印102で示すように当該ニッケルネット51を流れ、下端部の空間(連通路)67を介して排出端65に到達する。また既述のようにセパレータ6Bの流路61の入口に供給された酸化剤、例えば加湿された空気はセパレータ6Bの流路61を流れる。
この実施の形態によれば、燃料電池スタックを構成する単位セルにおいて燃料の流路部であるニッケルネット51が燃料極53を介さずに燃料の供給口64及び排出端65(排出口73)に連通しているので、その連通路である空間66を通って燃料の一部がニッケルネット51を流れる。従って図1の実施の形態と同様にナトリウムイオンの移動抵抗が小さいので、良好な電気的特性が得られる。この例ではセパレータ6Aにも流路62が形成されているため、ニッケルネット51には燃料の一部が流れることになるが、ニッケルネット51に燃料の全部が流れるようにしてもよい。ニッケルネット51に流れる燃料の割合の設定は、通流抵抗と出力特性とを考慮して設定することになる。
また本発明では、例えば燃料極53の一部に孔を穿設し、この孔と燃料の供給口64とを対向させ、燃料供給口64からの燃料が燃料極53の前記孔を通ってニッケルネット51内に流入するように構成してもよい。
〔第2の実施の形態〕
本発明に係る燃料電池の第2の実施の形態について図8及び図9を参照しながら説明する。この燃料電池は、図3及び図7における燃料の流路部として、ニッケルネット51の代わりに溝からなる流路を備えた流路部材を用いたものである。具体的に当該燃料電池の概略断面図である図8及び分解斜視図である図9を用いて説明すると、透過膜3と燃料極53との間に例えば金属プレートからなる流路部材8が設けられ、燃料極3側に面した流路部材8の一面側には溝からなる流路80を備えており、またこの流路80には他面側まで貫通させた孔81が多数形成されている。この孔81は例えば口径が0.5〜3mmであって、1〜5mmの間隔で縦横に配列されている。前記流路80は燃料を通流させるために屈曲路を形成するように設けられており、この流路80の一端側には図9に示すように排出口80aが形成されている。
〔第2の実施の形態〕
本発明に係る燃料電池の第2の実施の形態について図8及び図9を参照しながら説明する。この燃料電池は、図3及び図7における燃料の流路部として、ニッケルネット51の代わりに溝からなる流路を備えた流路部材を用いたものである。具体的に当該燃料電池の概略断面図である図8及び分解斜視図である図9を用いて説明すると、透過膜3と燃料極53との間に例えば金属プレートからなる流路部材8が設けられ、燃料極3側に面した流路部材8の一面側には溝からなる流路80を備えており、またこの流路80には他面側まで貫通させた孔81が多数形成されている。この孔81は例えば口径が0.5〜3mmであって、1〜5mmの間隔で縦横に配列されている。前記流路80は燃料を通流させるために屈曲路を形成するように設けられており、この流路80の一端側には図9に示すように排出口80aが形成されている。
燃料極53の上端面とガスケット7Aとの間には、セパレータ6Aの流路62の入口側と流路80の一端面側とを連通する連通路66が形成されると共に、燃料極53の下端面とガスケット7Aとの間には、セパレータ6Aの流路62の出口側と流路80の他端側とを連通する連通路67が形成されている。従って燃料供給口64から流入した燃料は、セパレータ6Aの流路62と流路部材8の流路80とに分流されることになる。なお、流路62及び流路80は、実際には図6に示すように構成されるが、図示の便宜上図8では略解して記載してある。また図9は構造の理解を容易にするために作図しており、流路62及び流路80のパターンは図8とは厳密には対応していない。
また前記流路部材8には、図9に示すようにセパレータ6Aの排出口63及びガスケット7Aの孔72に対応する位置に酸化剤が通るための孔83が穿設されている。
続いてこの実施の形態の作用について述べると、セパレータ6Aの供給口64に送られた燃料は、屈曲した流路62つまり燃料極53とセパレータ6Aと、連通路66とに分流され、連通路66側に流入した燃料は流路部材8の上端部側から屈曲した流路80に沿って流れる。セパレータ6Aの屈曲した流路62を沿って流れる一部の燃料は下端側の排出端65に到達し、更に図9では燃料極53によって隠れているが図5に示すガスケット7Aの排出口73を介して排出口80aに到達する。また流路部材8の屈曲した流路80を沿って流れる燃料は下端側の排出口80aに到達する。この燃料は共に排出口80aから図3に示すように透過膜3の孔32及びガスケット7Bの排出口73を介してセパレータ6Bの一面側に形成された燃料の流路62の供給端に到達する。また燃料極53側の電極反応によって生成されたイオンは孔81を通って透過膜3を透過し、酸化剤極41に到達する。
この実施の形態によれば、燃料電池スタックを構成する単位セルにおいて燃料の流路部である流路部材8が燃料極53を介さずに燃料の供給口64、排出端65(排出口73)及び排出口80aに連通しているので、連通路66を通って燃料の一部が流路部材8を流れる。従って燃料極53で生成されたナトリウムイオンは燃料極53を介さずにスムーズに透過膜3を透過するので上述した第1の実施の形態と同様にナトリウムイオンの移動抵抗が小さくなる。
またこの流路部材8には、燃料を通流させるための屈曲した流路80が形成されており、この流路80によって燃料が効率よく流れるため燃料極53側の電極反応が促進される。
更に燃料極53における透過膜3側では、上述したように下記に示す(5)式及び(6)式の反応が起こっている(先の(3)式及び(4)式と同じである)。
BH4−+8OH−→BO2−+6H2O+8e−……(5)
BH4−+4OH−→BO2−+2H2O+2H2+4e−……(6)
そこで、燃料極53と透過膜3の間に流路部材8を介して燃料を供給することのより、(5)式及び(6)式の反応が促進される。こうしたことから後述する実施例に示すように上述した第1の実施の形態よりも燃料電池の出力(電力)が大きくなる。
BH4−+4OH−→BO2−+2H2O+2H2+4e−……(6)
そこで、燃料極53と透過膜3の間に流路部材8を介して燃料を供給することのより、(5)式及び(6)式の反応が促進される。こうしたことから後述する実施例に示すように上述した第1の実施の形態よりも燃料電池の出力(電力)が大きくなる。
また第2の実施の形態の燃料電池において、図10に示すように透過膜3と流路部材8との間にニッケルネット51を介在させてもよい。このようにニッケルネット51を介在させることで、多くのイオンが透過膜3を透過することができる。またニッケルネット51は透過膜3の保護にも役立つ。
〔第3の実施の形態〕
本発明に係る燃料電池の第3の実施の形態について図11及び図12を参照しながら説明する。この燃料電池は、第1の実施の形態において、燃料極3側に面したセパレータ6Aの一面側に燃料を通流させるための流路を形成せずに面一とし、燃料極53の構造を工夫したものである。即ち当該燃料電池の燃料極9の一面側及び他面側には燃料を通流させるための流路をなす、各々水平に伸びる矩形状の例えば深さ0.2mmの溝90a、90bが並行状に多数形成されている。前記燃料極9側に面したセパレータ6Aの一面側には、上部左端に位置する供給口64と下部右端に位置する排出口65とが形成されている。燃料極9の上端面とガスケット7Aとの間には、連通路93が形成されると共に、燃料極9の下端面とガスケット7Aとの間には、連通路94が形成されている。また燃料極9は図3に示すようにガスケット7Aの窓71に嵌入されており、燃料極9の左端側及び右端側の各側面部とガスケット7Aの左端側及び右端側の各側面部との間には隙間が形成されている。即ちガスケット7Aは燃料極9よりも一回り大きく作られており、その間の隙間は流路をなしている。
〔第3の実施の形態〕
本発明に係る燃料電池の第3の実施の形態について図11及び図12を参照しながら説明する。この燃料電池は、第1の実施の形態において、燃料極3側に面したセパレータ6Aの一面側に燃料を通流させるための流路を形成せずに面一とし、燃料極53の構造を工夫したものである。即ち当該燃料電池の燃料極9の一面側及び他面側には燃料を通流させるための流路をなす、各々水平に伸びる矩形状の例えば深さ0.2mmの溝90a、90bが並行状に多数形成されている。前記燃料極9側に面したセパレータ6Aの一面側には、上部左端に位置する供給口64と下部右端に位置する排出口65とが形成されている。燃料極9の上端面とガスケット7Aとの間には、連通路93が形成されると共に、燃料極9の下端面とガスケット7Aとの間には、連通路94が形成されている。また燃料極9は図3に示すようにガスケット7Aの窓71に嵌入されており、燃料極9の左端側及び右端側の各側面部とガスケット7Aの左端側及び右端側の各側面部との間には隙間が形成されている。即ちガスケット7Aは燃料極9よりも一回り大きく作られており、その間の隙間は流路をなしている。
続いてこの実施の形態の作用について述べると、セパレータ6Aの供給口64に送られた燃料の一部は、燃料極9の周囲に形成されたガスケット7Aとの間の隙間を介して排出口65に流れると共に、燃料極9の上端面を乗り越えてニッケルネット51を通って排出口65に流れ込む。そして燃料極9における図12中左端側の空間(燃料極9とガスケット7Aとの間の隙間)から各溝90a、90bを介して図12中右端側の空間に流れ、ここを降下して排出口65に流れ込む。そしてこの燃料は、排出口65から図3に示すようにガスケット7Aの排出口73、透過膜3の孔32及びガスケット7Bの排出口73を介してセパレータ6Bの一面側に形成された燃料の流路の供給端に到達する。
この実施の形態によれば、燃料電池スタックを構成する単位セルにおいて燃料が燃料極9に形成された溝90a、90bを流れると共にニッケルネット51に流れた燃料が拡散され、そのときの攪拌作用によって燃料極9の一端側に形成された溝90aに接触、浸透する。即ちニッケルネット51による攪拌作用と燃料極9一端側及び他端側に形成された溝90a、90bによる燃料の接触面積の増大とにより、電極反応が促進される。
また燃料極9における透過膜3側では、上述したように(5)式及び(6)式の反応が起こっており、このような構成にすることで(5)式及び(6)式の反応が促進される。こうしたことから後述する実施例に示すように上述した第1の実施の形態よりも燃料電池の出力(電力)が大きくなる。
また当該燃料電池は、セパレータ6Aとニッケルネット51との間に、上述した凹部である溝90a、90bが形成されているため、上記(6)式によって燃料極9側で生成されたH2ガスが凹部である溝90a、90bから燃料と共に排出されるので、即ち水素泡として滞留していたH2ガスが除去されるので、燃料と接する燃料極9の活性領域が大きくなる。
なお当該燃料電池の燃料極9は、一面側及び他面側に流路をなす溝90a、90bを並行状に多数形成したが、ニッケルネット51に接する燃料極9の一面側にだけ溝90aを形成してもよい。更に当該燃料電池は、ニッケルネット51を介在させない構成であってもよい。
〔第4の実施の形態〕
本発明に係る燃料電池の第4の実施の形態について図13及び図14を参照しながら説明する。この燃料電池は、第1の実施の形態において、燃料極3側に面したセパレータ6Aの一面側に燃料を通流させるための流路を形成せず、燃料極53の構造を工夫したものである。即ち当該燃料電池の透過膜3側に面する燃料極110の一面側には溝からなる流路111が形成され、この流路111は燃料を通流させるために屈曲路を形成するように設けられている。前記流路111の一端側には図14に示すように供給口112が形成されており、前記流路111の他端側には排出端113が形成されている。また前記燃料極110には、図3に示すようにセパレータ6Aの排出口63、ガスケット7Aの孔72及び透過膜3の孔32に対応する位置に酸化剤が通るための孔114が穿設されている。
〔第4の実施の形態〕
本発明に係る燃料電池の第4の実施の形態について図13及び図14を参照しながら説明する。この燃料電池は、第1の実施の形態において、燃料極3側に面したセパレータ6Aの一面側に燃料を通流させるための流路を形成せず、燃料極53の構造を工夫したものである。即ち当該燃料電池の透過膜3側に面する燃料極110の一面側には溝からなる流路111が形成され、この流路111は燃料を通流させるために屈曲路を形成するように設けられている。前記流路111の一端側には図14に示すように供給口112が形成されており、前記流路111の他端側には排出端113が形成されている。また前記燃料極110には、図3に示すようにセパレータ6Aの排出口63、ガスケット7Aの孔72及び透過膜3の孔32に対応する位置に酸化剤が通るための孔114が穿設されている。
続いてこの実施の形態の作用について述べると、セパレータ6Aの供給口64に送られた燃料は、供給口112を介して透過膜3側に面した燃料極110の一面側に形成された屈曲した流路111に沿って流れ、排出端113に到達する。到達した燃料は、図3に示すように透過膜3の孔32及びガスケット7Bの排出口73を介してセパレータ6Bの一面側に形成された燃料の流路の供給端に到達する。なお図15ではガスケット7Aは省略されている。
この実施の形態によれば、燃料電池スタックを構成する単位セルにおいてセパレータ6Aの供給口64に送られた燃料は燃料極110に設けられた供給口112を介して透過膜3に接する屈曲した流路111に沿って流れることから燃料極110で生成されたナトリウムイオンは燃料極110を介さずにスムーズに透過膜3を透過するので上述した第1の実施の形態と同様にナトリウムイオンの移動抵抗が小さくなる。なお、流路111は第3の実施の形態のように横に並行状に伸びる多数の矩形状の溝により構成してもよい。
またこの燃料極110には、燃料を通流させるための屈曲した流路111が形成されており、この流路111によって燃料が効率よく流れるため燃料極110側の電極反応が促進される。
更に燃料極110における透過膜3側では、上述したように(5)式及び(6)式の反応が起こっており、このような構成にすることで(5)式及び(6)式の反応が促進される。こうしたことから上述した第1の実施の形態よりも燃料電池の出力(電力)が大きくなる。
更にまたこの燃料電池は、透過膜3と燃料極110との間にニッケルネット51を介在させる構成であってもよい。
なお、この実施の形態では燃料極110に流路111が形成され、この流路111に燃料が通る構成であるが、セパレータ6Aに流路を設けて、燃料極110に設けられた流路111とセパレータ6Aに設けられた流路とに燃料を分流させる構成にしてもよい。
次に本発明の燃料電池について効果を確認するために行った実験について説明する。
〔実験例1〕
(実施例1)
フッ化処理したZr0.9Ti0.1Mn0.6V0.2Co0.1Ni1.1の合金粉末(平均粒径2〜5μm)13.6gをフッ素樹脂であるPTFE粉末(0.1mm)1.36gとすり混ぜ、基材であるNi発泡体68cm2(80×85mm)の両面に塗布して触媒層を形成し、100メッシュのNi網で包んだ後、ロールプレスの圧着により厚さ0.5mmの板状の燃料極を作成した。この燃料極と、パラジウムメッキした発泡ニッケル板からなる酸化剤極と、陽イオン交換膜(デュポン社製、商品名「ナフィオン」)からなる透過膜と、厚さ0.2mmの板状のニッケルネットからなる燃料通流用の流路部と、を用いて図1に示す構造の燃料電池を作成した。そして30重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に2重量%濃度で水酸化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を溶解して調整した溶液をニッケルネットに1ml/分の流量で供給すると共に、絶対温度50%、温度60℃の空気を酸化剤極室4の流路部42に供給し、燃料極53と酸化剤極41との間の電流、電圧特性を調べた。結果は図15にて○でプロットした通りである。
(比較例1)
透過膜3と燃料極53の一面側とが接するように構成し、燃料極53の他面側に燃料通流用の流路部51を配置した構成(図17に示す構成)とした他は、実施例1と同様に構成した燃料電池を用い、同様にして燃料極53と酸化剤極41との間の電流、電圧特性を調べた。結果は図15にて□でプロットした通りである。
〔実験例1〕
(実施例1)
フッ化処理したZr0.9Ti0.1Mn0.6V0.2Co0.1Ni1.1の合金粉末(平均粒径2〜5μm)13.6gをフッ素樹脂であるPTFE粉末(0.1mm)1.36gとすり混ぜ、基材であるNi発泡体68cm2(80×85mm)の両面に塗布して触媒層を形成し、100メッシュのNi網で包んだ後、ロールプレスの圧着により厚さ0.5mmの板状の燃料極を作成した。この燃料極と、パラジウムメッキした発泡ニッケル板からなる酸化剤極と、陽イオン交換膜(デュポン社製、商品名「ナフィオン」)からなる透過膜と、厚さ0.2mmの板状のニッケルネットからなる燃料通流用の流路部と、を用いて図1に示す構造の燃料電池を作成した。そして30重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に2重量%濃度で水酸化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を溶解して調整した溶液をニッケルネットに1ml/分の流量で供給すると共に、絶対温度50%、温度60℃の空気を酸化剤極室4の流路部42に供給し、燃料極53と酸化剤極41との間の電流、電圧特性を調べた。結果は図15にて○でプロットした通りである。
(比較例1)
透過膜3と燃料極53の一面側とが接するように構成し、燃料極53の他面側に燃料通流用の流路部51を配置した構成(図17に示す構成)とした他は、実施例1と同様に構成した燃料電池を用い、同様にして燃料極53と酸化剤極41との間の電流、電圧特性を調べた。結果は図15にて□でプロットした通りである。
図15の結果からわかるように、透過膜と燃料極との間に燃料を通流させることにより、電流の増加に伴う電圧の落ち込みの程度が小さくなり、本発明の効果が確認できた。このように図1の構造と図17の構造との間で差異が生じるのは、既述のように燃料中のナトリウムイオンの移動抵抗の差に基づくものと推察される。
〔実験例2〕
次に燃料スタックの単位セルについて、酸化剤極側のセパレータと燃料極側のセパレータとの間に流れる電流と、これらセパレータから取り出される電力との関係について調べた。この実験において先の実施例1及び比較例1の各燃料電池を用いると共に、更に次の実施例2及び実施例3に係る燃料電池も用いた。図16は、このような燃料電池の出力、電流特性を調べた特性図である。図16中の縦軸は出力〔W〕であり、横軸は電流〔A〕である。また図16中の○及び□は上述の実施例1及び比較例2の出力、電流特性を示している。
(実施例2)
実施例2は、図8及び図9に示す第2の実施の形態に相当し、実施例1において、ニッケルネットの代わりに金属プレートからなる流路部材を用いている。透過膜側に面する流路部材の表面には、流路の溝の幅2.2mm、溝の深さ2mm、当該溝には径2mm、ピッチ3mmの連通孔が形成されており、この流路部材は燃料極と透過膜との間に設けられている。そして、実施例1と同様の条件で出力、電流の特性を調べた。その結果を図16中の△で示す。
(実施例3)
実施例3は、図11及び図12に示す第3の実施の形態に相当し、この燃料極の両面には、幅2.5mm、深さ0.2mm、ピッチ5.0mmの矩形状の溝が並行状に多数形成されている。そして、この燃料電池を用いて実施例1と同様の条件で出力、電流の特性を調べた。その結果を図16中の●で示す。
〔実験例2〕
次に燃料スタックの単位セルについて、酸化剤極側のセパレータと燃料極側のセパレータとの間に流れる電流と、これらセパレータから取り出される電力との関係について調べた。この実験において先の実施例1及び比較例1の各燃料電池を用いると共に、更に次の実施例2及び実施例3に係る燃料電池も用いた。図16は、このような燃料電池の出力、電流特性を調べた特性図である。図16中の縦軸は出力〔W〕であり、横軸は電流〔A〕である。また図16中の○及び□は上述の実施例1及び比較例2の出力、電流特性を示している。
(実施例2)
実施例2は、図8及び図9に示す第2の実施の形態に相当し、実施例1において、ニッケルネットの代わりに金属プレートからなる流路部材を用いている。透過膜側に面する流路部材の表面には、流路の溝の幅2.2mm、溝の深さ2mm、当該溝には径2mm、ピッチ3mmの連通孔が形成されており、この流路部材は燃料極と透過膜との間に設けられている。そして、実施例1と同様の条件で出力、電流の特性を調べた。その結果を図16中の△で示す。
(実施例3)
実施例3は、図11及び図12に示す第3の実施の形態に相当し、この燃料極の両面には、幅2.5mm、深さ0.2mm、ピッチ5.0mmの矩形状の溝が並行状に多数形成されている。そして、この燃料電池を用いて実施例1と同様の条件で出力、電流の特性を調べた。その結果を図16中の●で示す。
図16に示すように実施例1〜3は比較例1よりも燃料電池の出力(電力)がおよそ5〜8倍大きいことが分かる。また実施例1〜3において本発明の第3の実施の形態に相当する実施例3の構造を用いると燃料電池の出力(電力)が特に大きくなるということが理解できる。
2 ケース体
3 透過膜
4 酸化剤極室
41 酸化剤極
42 流路部
45 酸化剤供給源
5 燃料極室
51 ニッケルネット(燃料の流路部)
53 燃料極
57 溝
6A、6B セパレータ
60 単位セル
61 酸化剤の流路(流路部)
62 流路
66、67 連通路をなす空間
7A、7B ガスケット
80 流路
80a 排出口
81 孔
90a、90b 溝
111 流路
112 供給口
113 排出端
114 孔
3 透過膜
4 酸化剤極室
41 酸化剤極
42 流路部
45 酸化剤供給源
5 燃料極室
51 ニッケルネット(燃料の流路部)
53 燃料極
57 溝
6A、6B セパレータ
60 単位セル
61 酸化剤の流路(流路部)
62 流路
66、67 連通路をなす空間
7A、7B ガスケット
80 流路
80a 排出口
81 孔
90a、90b 溝
111 流路
112 供給口
113 排出端
114 孔
Claims (13)
- 透過膜を燃料極と酸化剤極との間に介在させ、燃料として金属水素錯化合物のアルカリ水溶液を用いる燃料電池において、
前記燃料極と透過膜との間に燃料を通流させるための流路部を設けたことを特徴とする燃料電池。 - 透過膜を燃料極と酸化剤極との間に介在させてなる単位セルをセパレータを介して複数積層させて構成し、燃料として金属水素錯化合物のアルカリ水溶液を用いる燃料電池において、
前記セパレータに設けられた燃料の供給口と、
前記燃料極と透過膜との間に設けられた燃料の流路部と、を備え、
燃料の供給口から供給された燃料の一部又は全部が前記流路部を通るように構成されたことを特徴とする燃料電池。 - 燃料の供給口と燃料の流路部とを連通する連通路が形成されていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
- 流路部は、液流拡散体により構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池。
- 燃料極の一面側及び他面側は夫々セパレータ及び燃料の流路部をなす液流拡散体に接触し、液流拡散体の一縁は燃料極の一縁よりも外側にはみ出し、燃料の供給口から供給された燃料が、燃料極よりも外側にはみ出している液流拡散体の部分とセパレータとの間の隙間を通って液流拡散体内に流れ込むように構成したことを特徴とする請求項4記載の燃料電池。
- 流路部は、燃料極側に面した一面側に溝からなる流路を備え、この流路に他面側まで貫通させた孔を多数形成させた流路部材であることを特徴とする請求項1ないしは3のいずれかに記載の燃料電池。
- 前記流路部材と透過膜との間には液流拡散体が設けられ、流路部材と液流拡散体とにより流路部が形成されていることを特徴とする請求項6記載の燃料電池。
- 透過膜を燃料極と酸化剤極との間に介在させてなる単位セルをセパレータを介して複数積層させて構成し、燃料として金属水素錯化合物のアルカリ水溶液を用いる燃料電池において、
前記セパレータに設けられた燃料の供給口と、
前記燃料極における透過膜側の面に形成された溝からなる流路と、
前記燃料の供給口と燃料極の前記流路とを連通する連通路と、
燃料の供給口から供給された燃料が前記連通路を介して前記流路を通るように構成されたことを特徴とする燃料電池。 - 前記燃料極におけるセパレータ側の面には、溝からなる流路が形成されていることを特徴とする請求項8記載の燃料電池。
- 前記流路は、並行状に多数形成された溝からなることを特徴とする請求項8又は9記載の燃料電池。
- 前記燃料極と透過膜との間に液流拡散体を設けたことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一つに記載の燃料電池。
- 液流拡散体は、網状構造体であることを特徴とする請求項4、7又は11記載の燃料電池。
- 金属水素錯化合物が水素化ホウ素錯化合物であることを特徴とする請求項1ないしは12のいずれかに記載の燃料電池。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008282779A (ja) * | 2007-05-14 | 2008-11-20 | Panasonic Corp | 直接酸化型燃料電池 |
JP2013507741A (ja) * | 2009-10-08 | 2013-03-04 | フルイディック,インク. | 流れ管理システムを備えた電気化学電池 |
-
2003
- 2003-12-17 JP JP2003419712A patent/JP2004356084A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008282779A (ja) * | 2007-05-14 | 2008-11-20 | Panasonic Corp | 直接酸化型燃料電池 |
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