JP2004350607A - テロメレース阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】テロメレース阻害剤およびテロメレース阻害方法を提供すること。
【解決手段】ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を示す二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、並びにこれらを形成するRNAおよびポリヌクレオチド、その転写物が上記RNA干渉効果を示すDNA、該DNAを含有するベクター、これらの1つ以上を含むテロメレース逆転写酵素の阻害剤およびテロメレース阻害剤、およびこれらの1つ以上を用いることを特徴とするテロメレース逆転写酵素の阻害方法およびテロメレース阻害方法の提供により本発明を達成し、さらにこれらの1つ以上を含む医薬組成物、これらの1つ以上からなる試薬キット、および該二重鎖RNAの同定方法を提供した。
【選択図】 なし
【解決手段】ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を示す二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、並びにこれらを形成するRNAおよびポリヌクレオチド、その転写物が上記RNA干渉効果を示すDNA、該DNAを含有するベクター、これらの1つ以上を含むテロメレース逆転写酵素の阻害剤およびテロメレース阻害剤、およびこれらの1つ以上を用いることを特徴とするテロメレース逆転写酵素の阻害方法およびテロメレース阻害方法の提供により本発明を達成し、さらにこれらの1つ以上を含む医薬組成物、これらの1つ以上からなる試薬キット、および該二重鎖RNAの同定方法を提供した。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はテロメレース阻害活性を示す二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、並びにこれらを形成するRNAおよびポリヌクレオチドに関する。また、その転写物がテロメレース阻害活性を示すことを特徴とするDNAに関する。さらに、該DNAを含有するベクターに関する。また、テロメレース逆転写酵素の阻害剤およびテロメレース逆転写酵素の阻害方法に関する。さらに、テロメレース阻害剤およびテロメレース阻害方法に関する。また、該二重鎖ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチド、該DNAおよび該ベクターのうちの少なくとも1つを含んでなる医薬組成物、癌疾患の防止剤および/または治療剤、並びに試薬キットに関する。さらに、該二重鎖ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチド、該DNAおよび該ベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする癌疾患の防止方法および/または治療方法に関する。また、テロメレース逆転写酵素を発現していない細胞を用いた、テロメレース阻害活性を有する二重鎖ポリヌクレオチドの同定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テロメレース(telomerase)は染色体のテロメア部分の伸張反応を行う酵素であり、細胞の不死化に関与することが知られている。テロメアは真核細胞の染色体DNAの末端部分に存在する単純な繰り返し配列であり、染色体の安定性維持に寄与している。細胞分裂においてDNAの複製を司る通常のDNAポリメラーゼではDNAの最末端まで完全に複製が行われないため、細胞分裂に伴いテロメアは短縮される。正常な体細胞では一定回数分裂後に増殖が停止し、細胞の老化あるいは細胞死が生じる。一方、無限増殖性を有する生殖細胞や不死化した癌細胞の大多数では、テロメレースの発現が認められている。細胞分裂に伴い短縮されたテロメアのテロメレースによる伸張が、細胞の無限増殖性獲得機序の1つであると考えられる。
【0003】
ヒトテロメレース(human telomerase)は、ヒトテロメレース逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase;以下、hTERTと略称する。)およびヒトテロメレースRNA(human telomerase RNA;以下、hTRと略称する。)を含む複合体である(非特許文献1)。
【0004】
テロメレースはテロメア伸張反応において、まずテロメアの相補的配列を有するhTRによりテロメア配列を認識して結合する。ついで、hTRを鋳型とし、触媒サブユニットであるhTERTによりテロメアの伸張を行う。実験的にhTRとhTERTのみでテロメレース活性が認められたことから、これら2つのサブユニットがテロメレース活性に必要十分な要素と考えられる。また、hTRは癌のみならず正常組織でも広く発現しているのに対し、hTERTは癌組織特異的に発現していることから、hTERTがテロメレース活性の決定因子であると考えられる。
【0005】
テロメレースが癌細胞の不死化に関与していることから、テロメレース阻害剤の開発が検討されている。例えば、hTRを標的としたアンチセンス法(非特許文献2および3)、hTERTのドミナントネガティブフォームを用いた方法(非特許文献4)、リボザイムを用いた方法(非特許文献5)、およびG−カドラプレックスDNAインターラクティブコンパウンドを用いた方法(非特許文献6)等によるテロメレースの阻害が報告されている。これらの方法は、何れも欠点があり、実用的な薬剤として開発されているものはほとんど無い。
【0006】
近年、RNAを利用して遺伝子の発現を抑制する方法として、RNA干渉(RNA interference)を利用する方法が開発された(非特許文献7および8)。哺乳動物においては、目的遺伝子のmRNAの部分配列からなる20bpないし25bpの短いRNA(いわゆるセンスRNA)と該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA(アンチセンスRNA)とからなる短い二重鎖RNA(short interfering RNA;以下、siRNAと略称する。)が、該mRNAを効果的に分解し、該遺伝子の発現を阻害することが報告されている(非特許文献7)。siRNAと同様に、ヘアピン構造を有する短鎖二重鎖RNAであるショートヘアピンRNA(以下、shRNAと略称する。)がRNA干渉効果を有することが報告されている(非特許文献8)。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAとが例えばポリヌクレオチド等により連結され、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分が二重鎖を形成するため、ヘアピン様構造を呈する。RNA干渉は、アンチセンス法やリボザイム法等の他の遺伝子発現阻害法と比較して、低濃度および高確率で特異的に目的遺伝子の発現を阻害することができる有用な方法である。
【0007】
テロメレースについても、siRNAによる抑制が報告されている(非特許文献9)。しかし、該siRNAはテロメレースの抑制作用が弱く且つその効果は一過性であった。
【0008】
以下に、本明細書で引用した文献を列記する。
【非特許文献1】ケラー(Kelleher C.)ら、「トレンズ イン バイオケミカル サイエンシズ(TRENDS in Biochemical Sciences)」、2002年、第27巻、p.572−579。
【非特許文献2】フェン(Feng J.)ら、「サイエンス(Science)」、1995年、第269巻、p.1236−1241。
【非特許文献3】コンドウ(Kondo S.)ら、「オンコジーン(Oncogene)」、1998年、第16巻、p.3323−3330。
【非特許文献4】ハーン(Hahn W.C.)ら、「ネイチャー メディシン(Nature Medicine)」、1999年、第10巻、p.1129−1130。
【非特許文献5】ヨコヤマ(Yokoyama Y.)ら、「キャンサー リサーチ(Cancer Research)」、1998年、第58巻、p.5406−5410。
【非特許文献6】サン(Sun D.)ら、「ジャーナル オブ メディシナルケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)」、1997年、第40巻、p.2113−2116。
【非特許文献7】エルバシ(Elbashir S.M.)ら、「ネイチャー(Nature)」、2001年、第411巻、p.494−498。
【非特許文献8】パディソン(Paddison P.J.)ら、「ジーンズ アンド ディベロプメント(Genes and Development)」、2002年、第16巻、p.948−958。
【非特許文献9】コシオレク(Kosciolek B.A.)ら、「モレキュラー キャンサー セラピューティクス(Molecular Cancer Therapeutics)」、2003年、第2巻、第3号、p.209−216。
【非特許文献10】サムブルックら編、「モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル」、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989年。
【非特許文献11】村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、丸善株式会社、1988年。
【非特許文献12】エールリッヒ編、「PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用」、ストックトンプレス、1989年。
【非特許文献13】ウルマー(Ulmer K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671。
【非特許文献14】キム(Kim N.W.)ら、「サイエンス(Science)」、1994年、第266巻、第5193号、p.2011−2015。
【非特許文献15】ウェン(Wenz C.)ら、「ザ エンボ ジャーナル(The EMBO Journal)」、2001年、第20巻、第13号、p.3526−3534。
【非特許文献16】タテマツ(Tatematsu K.)ら、「オンコジーン(Oncogene)」、1996年、第13巻、第10号、p.2265−2274。
【非特許文献17】ナカムラ(Nakamura Y.)ら、「クリニカル ケミストリー(Clinical Chemistry)」、1999年、第45巻、第10号、p.1718−1724。
【非特許文献18】マエサワ(Maesawa C.)ら、「ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、2003年、第31巻、第2号、p.E4−4。
【非特許文献19】「バイオテクニクス(Biotechniques)」、2002年、第32巻、第5号、p.1154−1156、1158、1160。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、テロメレースに極めて特異的で且つ有用性のあるテロメレース阻害剤およびテロメレース阻害方法を提供することである。また本発明の目的は、該テロメレース阻害剤を含む医薬組成物、例えば癌疾患の防止剤および/または治療剤を提供することである。さらに、本発明の目的は、該テロメレース阻害剤を用いることを特徴とする癌疾患の防止方法および/または治療方法を提供することである。
【0010】
【課題解決のための手段】
本発明者らは、上記課題解決のため鋭意検討を重ね、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉を示すことによりテロメレースを阻害し得る二重鎖ポリヌクレオチドを見出して本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、
1.配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNA、
2.配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドA)であって、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドA、
3.配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドB)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドB、
4.配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドC)であって、配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドC、
5.配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドD)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドD、
6.配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドE)であって、配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドE、
7.配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドF)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドF、
8.配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチド
9.下記の群から選ばれるいずれか1つの二重鎖ポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とする二重鎖ポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
および
(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
10.下記の群から選ばれるいずれか1つの二重鎖ポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
および
(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
11.下記の群から選ばれるいずれか1つのポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドG)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドG、
(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドH)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドH、
(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドI)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドI、
(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドJ)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドJ、
(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドK)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドK、
および
(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドL)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドL、
12.下記の群から選ばれるいずれか1つのポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドM)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドM、
(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドN)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドN、
(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドO)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドO、
(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドP)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドP、
(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドQ)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドQ、
および
(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドR)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドR、
13.配列表の配列番号7から12のいずれか1つに記載の塩基配列からなるDNA、
14.下記の群から選ばれるいずれか1つのDNAであって、その転写物がヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするDNA;
(i)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA1)であって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA1、
(ii)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA2)であって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA2、
(iii)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA3)であって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA3、
(iv)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA4)であって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA4、
(v)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA5)であって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA5、
および
(vi)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA6)であって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA6、
15.前記13.または14のDNAを含むベクター、
16.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害剤、
17.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース阻害剤、
18.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害方法、
19.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース阻害方法、
20.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを有効量含んでなる医薬組成物、
21.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを有効量含んでなる癌疾患の防止剤および/または治療剤、
22.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする癌疾患の防止方法および/または治療方法、
23.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする試薬キット、
24.テロメレース阻害作用を有する二重鎖ポリヌクレオチドの同定方法であって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子を発現していない細胞またはヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子およびヒトテロメレースRNA遺伝子を発現していない細胞を用い、該細胞にヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子発現ベクターおよびヒトテロメレースRNA遺伝子発現ベクターと共に被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションし、ついで、テロメレース活性を測定し、二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしなかったときと比較してテロメレース活性を低下させた二重鎖ポリヌクレオチドを選択することを特徴とする同定方法、
25.ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子を発現していない細胞またはヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子およびヒトテロメレースRNA遺伝子を発現していない細胞が、ヒト骨肉腫由来Saos−2細胞である前記24.の同定方法、
26.トランスフェクションがリポフェクション法である前記24.または25.の同定方法、
27.リポフェクション法が、カチオン性リポソームを用いたリポフェクション法である前記26.の同定方法、
からなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明においては、テロメレースの阻害に有用なポリヌクレオチドを提供する。本明細書中におけるポリヌクレオチドとは、3’,5’−リン酸ジエステル結合により2個を超えるヌクレオチドが連鎖している直鎖状ポリマーを意味し、リン酸ジエステル結合によって繋がっている2個ないし10数個程度のヌクレオチドからなる直鎖状核酸断片も含まれる。
【0013】
本発明に係るポリヌクレオチドの1つの態様は、hTERT mRNAの部分配列からなるRNAおよび該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAである。本発明に係るRNAとしては、好ましくは配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNAが挙げられる。
【0014】
本発明に係るRNAにはそれぞれ、そのRNAの3’末端に、オーバーハング配列と呼ばれる1個ないし数個の塩基配列からなるヌクレオチドを結合させることが好ましい。オーバーハング配列は、その作用の1つとして、RNAをヌクレアーゼから保護する作用を有する。オーバーハング配列は、該RNAのRNA干渉効果を阻害しない限りにおいて特に制限されず、好ましくは1個ないし10個、より好ましくは1個ないし4個、さらに好ましくは2個のヌクレオチドからなるものをいずれも用いることができる。具体的には、デオキシチミジル酸からなる配列(例えばTT)、ウリジル酸からなる配列(例えばUU)、デオキシチミジル酸に続いて任意のヌクレオチドが結合した配列(例えばTN)といった配列を例示できる。合成を安価に行えることおよびヌクレアーゼ耐性がより強いことから、より好ましくは、2つのデオキシチミジル酸からなる配列をオーバーハング配列として使用する。オーバーハング配列は、本発明に係るRNAの3’末端のリボース3’水酸基部位に、ジエステル結合によって結合させる。
【0015】
本発明に係るRNAのそれぞれにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドからなるオーバーハング配列を結合させてなるポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲に包含される。かかるポリヌクレオチドとしては例えば、配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドからなるオーバーハング配列、好ましくは2つのデオキシチミジル酸からなる配列を結合させてなるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0016】
これらポリヌクレオチドの特徴の1つは、該ポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドに含まれるRNAの相補的な塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することである。
【0017】
例えば、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得た二重鎖ポリヌクレオチドは、テロメレースを、二重鎖ポリヌクレオチドの用量依存的に阻害した。すなわち、この二重鎖ポリヌクレオチドはhTERT遺伝子に対してRNA干渉効果を示し、該遺伝子の発現を阻害することによりテロメレースを阻害したと考えられる。本発明におけるテロメレースの阻害とは、テロメレース機能の部分的消失または完全な消失を意味する。
【0018】
同様に、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得た二重鎖ポリヌクレオチドも、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を示し、テロメレースを阻害した。配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得た二重鎖ポリヌクレオチドもまた、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を示し、テロメレースを阻害した。
【0019】
上記RNAおよびポリヌクレオチドは、例えば公知の化学合成法を用いて調製することができる。例えば、市販のRNA合成試薬(Proligo、Dharmacon Research、ChemGenes等)を用いてDNA/RNA合成機により調製可能である。
【0020】
テロメレースの阻害は、1つの態様として、本発明に係るRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、該RNAに相補的な塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチドにより達成可能である。該二重鎖ポリヌクレオチドは、これら2つのポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションさせることにより得ることができる。ハイブリダイゼーションは、これら2つのポリヌクレオチドを慣用の方法でアニーリングすることにより実施可能である。アニーリングは、1例として、本明細書の実施例に記載した方法により行うことができる。
【0021】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドは、例えば下記の群から選ばれる二重鎖ポリヌクレオチドである(図1参照。):(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチド;(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチド;および(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチド。
【0022】
テロメレースの阻害はまた、1つの態様として、本発明に係るRNAを含みヘアピン構造を有する二重鎖を形成し得るポリヌクレオチドにより達成可能であると考える。本発明に係るRNA、該RNAに相補的な塩基配列からなるRNA、およびこれら2つのRNAを連結し且つループ構造を形成するポリヌクレオチドが結合してなるポリヌクレオチドであって、hTERT遺伝子に対してRNA干渉効果を有するポリヌクレオチドも、本発明の範囲に包含される。かかるポリヌクレオチドは、好ましくは本発明に係るRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と該RNAに相補的な塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドであることが望ましい。あるいは、本発明に係るRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と該RNAに相補的な塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドであってもよい。ループ構造を形成するポリヌクレオチドとは、2つのRNAの間に存在して両RNAを連結でき、それ自体がループ構造を形成するものを意味する。非特許文献8に記載された配列を参考にして設計するとよい。好ましくは4個ないし23個、より好ましくは4個ないし8個のヌクレオチドからなるものが望ましい。例えば、TTCAAGAGA(Ambion社またはOligoengine社)、AACGTT、TTAA、CAAGCTTC等の配列を挙げることができる。ヘアピン構造を有する二重鎖の形成は、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分とを慣用の方法でアニーリングすることにより実施可能である。
【0023】
かかるポリヌクレオチドとしてより具体的には、下記の群から選ばれるポリヌクレオチドが例示できる:(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチド;(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチド;(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチド;(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチド;(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチド;および(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチド。
【0024】
本発明に係るRNA、ポリヌクレオチドおよび二重鎖ポリヌクレオチドは、上記のものに制限されず、その機能を損なわない程度の1塩基ないし数塩基程度の塩基の付加、欠失、置換等を有するもの、その他一般的な修飾を受けたものであってもよい。塩基の付加、欠失、置換等を導入する手段は自体公知であり、例えば成書に記載の方法(非特許文献10、11および12)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(非特許文献13)を利用することもできる。
【0025】
テロメレースの阻害は、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つを用いることにより達成できる。例えば、これらを細胞に導入することにより実施可能である。細胞への導入は、公知の手法により実施可能であるが、好ましくはリポフェクション法によりトランスフェクションすることが、導入効率、再現性および簡便性等の観点から望ましい。リポフェクションに用いるリポソームと呼ばれる脂質小胞としては、カチオン性のものが好ましい。カチオン性リポソームとしては、リポフェクトアミン、リポフェクトアミン2000(Lipofectamine2000)(Invitrogen)およびオリゴフェクトアミン(Invitrogen)等が例示できる。あるいは、トランスメッセンジャー(TransMessenger)(QIAGEN)、siRNAトランスフェクションキットjetSI(Ambion)、およびジーンサイレンサーsiRNAトランスフェクションリエージェント(GeneSilencer siRNA Transfection Reagent)(Gene Therapy Systems)等の市販の試薬を用いてトランスフェクションすることもできる。
【0026】
テロメレースの阻害はまた、本発明に係るポリヌクレオチドまたはRNAを細胞内でDNAから転写させることにより達成できる。すなわち、その転写物がテロメレースの阻害を示すDNAも本発明に含まれる。ここで、転写物とは、コード鎖に存在する本発明のDNAが、細胞内で転写されることにより生成するRNAを意味する。本DNAとしては、本発明に係るポリヌクレオチドまたはRNAをコードするDNAであればよく、転写開始点(いわゆる+1サイト)がプリン塩基(GまたはA)となるように設計する。本DNAとその相補鎖からなる二重鎖DNAとして用いてもよいし、本DNAの相補鎖のみを鋳型DNAとして用いることもできる。
【0027】
本発明に係るポリヌクレオチドまたはRNAの細胞内での転写は、本発明に係るDNAをベクターに挿入し、得られたベクターを慣用の方法(非特許文献10等)で細胞内にトランスフェクションすることにより達成できる。
【0028】
ベクターDNAは、導入する細胞の種類等により適宜選択される。ベクターDNAは、天然に存在するものを抽出したもののほか、増殖に必要な部分以外のDNAの部分が一部欠落しているものでもよい。例えば、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス等のウイルス由来のベクター、並びにそれらを組み合わせたベクター、例えばプラスミドおよびバクテリオファージの遺伝学的エレメント由来のベクター、例えばコスミドおよびファージミド等が挙げられる。組換えベクターは、目的の遺伝子配列と複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等とを構成要素とし、これらを自体公知の方法により組み合わせて作製する。ベクターDNAに目的の遺伝子配列を組込む方法は、自体公知の方法を適用できる。例えば、適当な制限酵素を選択、処理してDNAを特定部位で切断し、次いで同様に処理したベクターとして用いるDNAと混合し、リガーゼによって再結合する方法が用いられる。あるいは、目的の遺伝子配列に適当なリンカーをライゲーションし、これを目的に適したベクターのマルチクローニングサイトへ挿入することによっても、所望の組換えベクターが得られる。
【0029】
本発明に係るポリヌクレオチドのコード鎖となるDNAとしてより具体的には、例えば下記の群から選ばれるDNAであって、その転写物がヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするDNAを例示できる:(i)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA;(ii)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA;(iii)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA;(iv)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA;(v)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA;および(vi)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA。
【0030】
本発明に係るポリヌクレオチドのコード鎖となるDNAは、U6あるいはH1といったRNAポリメラーゼIIIによって転写を行うタイプのベクターに組み込んだ場合、転写を終結させるために転写される側の3’末端に5塩基ないし6塩基のpoly(T)を結合することが好ましい。さらに、ベクターによってはpoly(T)の後ろに、さらなる塩基配列、例えばGGAAといった塩基配列を結合して用いることが好ましい。
【0031】
本発明に係るポリヌクレオチドのコード鎖となるDNAを用いたテロメレースの阻害は、該DNAを細胞内に導入することにより達成できる。該DNAの細胞への導入については既報(非特許文献8)を参照し、例えばpSHAG−1ベクターシステムにより行なうことができる。あるいは、pSilencerシリーズ(Ambion社)、pSUPER(OligoEngine社)や、レトロウイルス用のpSUPER−Retro(OligoEngine社)等が使用可能であるがこれらに制限されることはない。
【0032】
本発明に係るRNAをコードするDNAとしては、例えば配列表の配列番号7から12のいずれか1に記載の塩基配列からなるDNAが好ましく例示できる。
【0033】
本発明に係るRNAをコードするDNAを用いたテロメレースの阻害は、該DNAを挿入したベクターと、該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAをコードするDNAを挿入したベクターとを細胞内にトランスフェクションすることにより細胞内で転写される2本のRNAにより達成できると考える。あるいは、本発明に係るRNAをコードするDNAと該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAをコードするDNAとを挿入したベクターを用いて同様の効果を得ることも可能である。
【0034】
このように上記DNAおよび該DNAを含むベクターも、テロメレースの阻害に使用可能であり、これらも本発明の範囲に包含される。
【0035】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、RNA干渉によりhTERT mRNAを破壊することができるため、本発明においては上記二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害剤およびこれらのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害方法を提供可能である。
【0036】
本発明においてはまた、上記二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース阻害剤およびこれらのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース阻害方法を提供可能である。
【0037】
さらに、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターは、テロメレースを阻害することに基づく医薬、好ましくは抗腫瘍剤、さらに好ましくは、悪性腫瘍の治療のための医薬の有効成分として有用である。テロメレース阻害作用の確認は、例えばトラップ法(TRAP法:非特許文献14)、ダイレクトテロメレースアッセイ(Direct telomerase assay:非特許文献15)、ストレッチPCRアッセイ(Stretch PCR assay:非特許文献16)、ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ(Hybridization protection assay:非特許文献17)、TREアッセイ(非特許文献18)、ラピッドダイレクトテロメレースアッセイ(rapid direct telomerase assay:非特許文献19)等の方法により行うことができる。あるいは、パディソンらの方法(非特許文献8)や本明細書の実施例に具体的に記載した方法等に従って確認することも可能である。
【0038】
本発明に係る医薬は、本発明に係る上記二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターのうちの少なくとも1つを有効量含む医薬となしてもよいが、通常は、1種または2種以上の医薬用担体または賦形剤を用いて医薬組成物を製造することが好ましい。かかる担体としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限らない。
【0039】
本発明に係る医薬組成物は、テロメレースの作用に基づく疾患の防止剤および/または治療剤として使用することができる。また、当該疾患の防止方法および/または治療方法に使用することができる。テロメレースの作用に基づく疾患としては、例えば癌疾患が挙げられる。
【0040】
テロメレースが腫瘍の種類に関わらず、大多数の腫瘍において発現が確認されていることから、本発明に係る医薬組成物は多様な種類の癌細胞の増殖阻害に有効であると考えられる。したがって、本発明に係る医薬組成物を癌疾患に使用する場合には、対象となる腫瘍の種類は特に限定されず、固形腫瘍または非固形腫瘍のいずれにも適用可能である。固形腫瘍または非固形腫瘍の種類も特に限定されず、テロメレースを発現しているあらゆる種類の腫瘍において適用できる。例えば、胃癌、食道癌、大腸癌、小腸癌、十二指腸癌、肺癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、口腔癌、骨癌、皮膚癌、乳癌、子宮癌、前立腺癌、脳腫瘍、神経芽腫等の固形腫瘍、あるいは白血病や悪性リンパ腫等の非固形腫瘍等を挙げることができるが、本発明に係る医薬組成物の適用対象はこれら疾患に限定されない。
【0041】
一方、テロメレースは正常体細胞では生殖細胞を除いてほとんど発現していない。さらにsiRNAおよびshRNAはmRNAのみに作用するため、ゲノム遺伝子には全く影響を及ぼさないと考えられる。これらから、本発明に係る医薬および医薬組成物は副作用が少ないと考えられ、この観点からも有用である。
【0042】
必要な用量範囲は、特に限定されないが、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターの有効性、投与形態、疾病の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断により適宜選択することが望ましい。具体的には、適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり0.1μg乃至100μgの範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1〜4回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
【0043】
処方は投与形態に適したものを選択すればよく、該処方は当業者によく知られたものを用いればよい。また、処方するときには、これらを単独で使用してもよく、あるいは治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。例えば、他のテロメレース阻害剤または抗腫瘍用医薬の有効成分等を配合してもよい。
【0044】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、ベクターおよび医薬組成物は、好ましくは遺伝子治療剤として用いることができる。この場合、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびDNAのうちの少なくとも1つを注射により直接投与する非ウイルス性のトランスフェクション法、あるいはウイルスベクターを利用したトランスフェクション方法のいずれも適用することができる。
【0045】
非ウイルス性のトランスフェクション法においては、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびDNAのうちの少なくとも1つを注射により直接投与する方法のほか、これらをリポソーム等のリン脂質小胞に封入し、そのリポソームを投与する方法が推奨される。リポソームとしては、カチオン性リポソームの使用がより好ましい。
【0046】
ウイルスベクターを使用するトランスフェクション法において、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAを組込んでトランスフェクションに使用するベクターとしては、好ましくはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター等のDNAウイルスベクター、あるいはRNAウイルスベクターが挙げられる。これらウイルスベクターを用いることにより効率良い投与が可能である。さらに、ウイルスベクターを用いるトランスフェクション法においても、該ベクターをリポソームに封入して、そのリポソームを投与する方法が推奨される。リポソームとしては、カチオン性リポソームの使用がより好ましい。
【0047】
投与形態は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与形態を選択する。例えば、通常の静脈内投与、動脈内投与のほか、皮下、皮内、筋肉内等に投与することもできる。癌疾患に用いる場合は、腫瘍に直接投与することが好ましい。
【0048】
医薬形状は投与形態に応じて選択することができ、遺伝子治療剤として用いる場合は、一般的には、注射剤、点滴剤、あるいはリポソーム製剤として調製することが好ましい。そのほか、シクロデキストリン等の包接体、溶液剤、けん濁剤、脂肪乳剤、散剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤丸剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点耳剤等の作製も可能である。しかし、本発明に係る医薬の形態はこれらに限定されない。
【0049】
製剤化にあたっては、その形態に応じて適切な製剤用添加物を用いることができ、常法に従って製剤化することができる。
【0050】
リポソーム化は、例えばリン脂質を有機溶媒(クロロホルム等)に溶解した溶液に、目的とする物質を溶媒に溶解した溶液を加えた後、溶媒を留去し、これにリン酸緩衝液を加え、振とう、超音波処理および遠心処理した後、上清をろ過処理して回収することにより行い得る。
【0051】
シクロデキストリン包接化は、例えば目的とする物質を溶媒に溶解した溶液に、シクロデキストリンを水等に加温溶解した溶液を加えた後、冷却して析出した沈殿をろ過し、滅菌乾燥することにより行い得る。このとき、使用されるシクロデキストリンは、当該物質の大きさに応じて、空隙直径の異なるシクロデキストリン(α、β、γ型)を適宜選択すればよい。
【0052】
注射用の溶液剤は、塩溶液、グルコース溶液、または塩水とグルコース溶液の混合物からなる担体を用いて調製可能である。
【0053】
けん濁剤は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール等のグリコール類、油類を使用して製造できる。
【0054】
脂肪乳剤化は、例えば目的とする物質、油成分(大豆油、ゴマ油、オリーブ油等の植物油、MCT等)、乳化剤(リン脂質等)等を混合、加熱して溶液とした後に、必要量の水を加え、乳化機(ホモジナイザー、例えば高圧噴射型や超音波型等)を用いて、乳化・均質化処理して行い得る。また、これを凍結乾燥化することも可能である。なお、脂肪乳剤化するとき、乳化助剤を添加してもよく、乳化助剤としては、例えばグリセリンや糖類(例えばブドウ糖、ソルビトール、果糖等)が例示される。
【0055】
散剤、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等についても、通常用いられる方法により調製可能である。
【0056】
本発明においてはさらに、テロメレースを阻害する二重鎖ポリヌクレオチドの同定方法を提供する。本発明に係る同定方法は、hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子(配列番号16)を発現している細胞、またはhTERT遺伝子およびhTR遺伝子の両方を発現していない細胞を用い、該細胞にhTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションし、ついで、テロメレース活性を測定することを1つの特徴とする。hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子を発現している細胞としては、例えばヒト骨肉腫由来Saos−2細胞が挙げられるが、本発明に係る同定方法に使用できる細胞はこれに制限されることはない。hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子を発現している細胞を用いる場合、hTR遺伝子発現ベクターは導入しなくてもよいが、好ましくはhTR遺伝子発現ベクターも導入することが推奨される。hTR遺伝子発現ベクターに対するhTERT遺伝子発現ベクターの導入比は好ましくは1:0.01ないし1:10である。導入比は、用いる細胞によっても異なり、より適切な導入比を実験により決定して用いることができる。トランスフェクションは、慣用のトランスフェクション法(非特許文献10等)により実施できるが、好ましくはリポフェクションによる。リポフェクションは、リポフェクチン、リポフェクトアミン、セルフェクチン、DMRIE−Cまたはスーパーフェクト等の市販の試薬を用いることにより行うことができるが、好ましくはカチオン性リポソームを用いることが望ましい。カチオン性リポソームとしては、リポフェクトアミン、リポフェクトアミン2000およびオリゴフェクトアミン等が挙げられる。
【0057】
hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子を発現している細胞、またはhTERT遺伝子およびhTR遺伝子の両方を発現していない細胞に、hTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションすることにより構築したかかる測定系は、hTERT遺伝子が導入された細胞のみがテロメレース活性を示し、さらにその細胞には二重鎖ポリヌクレオチドも導入されている可能性が極めて高いため、トランスフェクション効率の影響をあまり受けずに二重鎖ポリヌクレオチドの効果を評価することができる。hTR遺伝子およびhTERT遺伝子の発現用ベクターはそれぞれ、通常用いられる哺乳動物用遺伝子発現ベクターにhTERT cDNA(配列番号13)およびhTR cDNA(配列番号16)を挿入すること等により作製すればよい。
【0058】
被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドは、hTERT遺伝子の塩基配列に基づいて、RNA干渉効果を有するRNAに特有の配列を含む領域を選択し、該領域の配列から設計し、公知のヌクレオチド合成方法により作製することができる。hTERT遺伝子の配列は配列表の配列番号13に記載された配列である。RNA干渉効果を有するRNAに特有の配列は既に広く知られている。例えば、AAまたはCAで始まる領域で、GC含量が30%から70%、好ましくは50%となる配列である。また、各塩基の偏りあるいはGまたはCが連続した配列が極力少ない配列が好ましい。
【0059】
本発明に係る同定方法において、二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしなかったときと比較してテロメレース活性を低下させた二重鎖ポリヌクレオチドを選択することにより、所望の二重鎖ポリヌクレオチドを取得することができる。テロメレース活性の測定は、例えばトラップ法(非特許文献14)、ダイレクトテロメレースアッセイ(非特許文献15)、ストレッチPCRアッセイ(非特許文献16)、ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ(非特許文献17)、TREアッセイ(非特許文献18)、ラピッドダイレクトテロメレースアッセイ(非特許文献19)等の方法により実施できる。
【0060】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターはいずれも、それ自体を単独で、試薬等として使用できる。例えば、テロメレースを阻害するための試薬として用いることができる。該試薬はテロメレースが関与する細胞増殖や細胞老化のメカニズム、およびテロメレースの作用に基づく疾患等に関する基礎的研究等に有用である。これらは試薬であるとき、緩衝液、塩、安定化剤、および/または防腐剤等の物質を含んでいてもよい。なお、製剤化にあたっては、各性質に応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。また本発明は、これらのうちの1種またはそれ以上を充填した、1個またはそれ以上の容器を含んでなる試薬キットを提供する。これら試薬および試薬キットは、テロメレースの作用に基づく疾患の診断に使用できる。例えば、癌患者から癌細胞を採取し、該細胞を培養して二重鎖ポリヌクレオチドを含むキットで繰り返し処理したときに細胞死が観察されれば、テロメレース阻害剤が有効な患者と判定することができる。これらはまた、本発明に係る同定方法の陽性対照として使用することができる。
【0061】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0062】
【実施例1】
二重鎖ポリヌクレオチドは、hTERT遺伝子の塩基配列(配列番号13)に基づいて設計した。まず、該遺伝子の塩基配列においてAAまたはCAで始まる部分から、各塩基の偏りあるいはGまたはCが連続した配列が極力少ない配列を選ぶことにより、センスRNAの塩基配列を設計した。また、センスRNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるアンチセンスRNAを設計した。ついで、二重鎖ポリヌクレオチドのヌクレアーゼからの保護を目的とし、センスRNAとアンチセンスRNAのそれぞれの3’末端に、2つのデオキシチミジル酸からなるオーバーハング配列を結合したセンスポリヌクレオチドおよびアンチセンスポリヌクレオチドを設計した。設計したセンスポリヌクレオチドとアンチセンスポリヌクレオチドの双方を、RNA合成装置により合成した。
【0063】
センスポリヌクレオチドとアンチセンスポリヌクレオチドとをアニーリングして二重鎖ポリヌクレオチドを調製した。まず、それぞれ50μM(50pmol/μl)に希釈した後、各試料30μlずつと5×アニーリングバッファー(500mM 酢酸カリウム、150mM HEPES−KOH pH7.4、10mM 酢酸マグネシウム)15μlを混合した(総量75μl)。ついで、混合液を90℃で1分間加熱し、遠心処理後に37℃で60分間静置した。この操作により、ポリヌクレオチドは二本鎖を形成し、最終濃度は20μM(20pmol/μl)になった。
【0064】
作成した二重鎖ポリヌクレオチドの例を図1に示した。TERT02は、配列番号1および2に記載した各塩基配列からなる2つのRNAの各3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチドである。TERT07は、配列番号3および4に記載した各塩基配列からなる2つのRNAの各3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチドである。TERT08は、配列番号5および6に記載した各塩基配列からなる2つのRNAの各3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチドである。配列番号1、配列番号3および配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAはそれぞれ、hTERT cDNA配列(配列番号13)の第1042−1060番目、第1789−1807番目および第1812−1830番目の部分配列から設計されたRNAである。また配列番号2、配列番号4、および配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAはそれぞれ、配列番号1、配列番号3および配列番号5に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAである。
【0065】
【実施例2】
実施例1で作製した二重鎖ポリヌクレオチドから、テロメレース阻害作用を示す二重鎖ポリヌクレオチドを選択するために、hTERT遺伝子を発現しておらずhTR遺伝子のみを発現しているヒト骨肉腫由来Saos−2細胞を用い、hTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に二重鎖ポリヌクレオチドとをトランスフェクションし、テロメレース活性を測定する測定系を構築した。この測定系を用いて、テロメレース阻害作用を示す二重鎖ポリヌクレオチドを選択した。
【0066】
まず、Saos−2細胞を2×105細胞/mlに調製し、24ウェルプレートに1ウェル当たり0.5mlずつ播種し、37℃で一晩(12時間程度)培養した。ついで、hTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に二重鎖ポリヌクレオチドを、1ウェル当たり2.5μlのリポフェクトアミン2000(Invitrogen)と0.1mlの無血清培地中で混合し、細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後に細胞をトリプシン処理し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄して回収した。陰性対象として、上記二重鎖ポリヌクレオチドの代わりに既知の遺伝子と相同性を持たないスクランブル二重鎖ポリヌクレオチド(配列番号14および15に記載の各塩基配列からなる2つのRNAのそれぞれの3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド)を用いて同様に細胞を処理した。
【0067】
回収した細胞中のテロメレース活性は、TRAPeze XL Kit(Oncor)を用い、キットの使用説明書に従って測定した。まず、キットに付属の1×CHAPS溶解バッファー120μlに細胞をけん濁し、氷上で20分間インキュベーション後に、4℃にて12,000rpmで20分間遠心処理し、上清を回収した。上清中の蛋白質濃度を定量後、1反応当り200ngになるように反応液中に加え、テロメレースによるオリゴDNAの伸張反応を30℃で30分間行った。その後、反応液中に含まれるプライマー対でPCR反応を行い、テロメレース反応産物を増幅し、内部標準との比を算出して、テロメレース活性の強度を測定した。検出はプライマーに標識されたフルオレセイン(テロメレース反応産物の指標。)およびスルホローダミン(内部標準の指標。)の各蛍光強度を分光蛍光光度計を用いて計測することにより行った。
【0068】
0.5μg/wellのhTERT遺伝子発現ベクター、0.54μg/wellのhTR遺伝子発現ベクター、および20pmol/wellまたは2pmol/wellの二重鎖ポリヌクレオチドを用いて上記検討を行ったところ、合成した二重鎖ポリヌクレオチドのうち、TERT02、TERT07およびTERT08がテロメレース阻害効果を示した(図2)。
【0069】
さらに、TERT02およびTERT08について、0.125μg/wellのhTERT遺伝子発現ベクター、0.75μg/wellのhTR遺伝子発現ベクターを用い、二重鎖ポリヌクレオチドの濃度を20pmol/wellから0.2pmol/wellの範囲で変化させて同様に検討したところ、いずれも二重鎖ポリヌクレオチドの濃度依存的にテロメレースを阻害することが明らかになった(図3)。
【0070】
一方、加熱してテロメレースの酵素活性を失活させた試料では二重鎖ポリヌクレオチドを添加しなくてもテロメレース活性が全く検出されなかったことから、ここで用いた測定系がテロメレース活性を適切に反映していることが確認できた(図2および図3)。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対するRNA干渉効果によりテロメレースの阻害を達成できる。
【0072】
本発明はアンチセンス法やリボザイム法等の他の遺伝子発現阻害法と比較して、低濃度および高確率で特異的にヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を阻害でき、その結果テロメレースを阻害することができる。また、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは短鎖ポリヌクレオチドであるため、合成が容易であり、安価に合成できる。
【0073】
本発明によれば、テロメレースの作用に基づく疾患の防止および/または治療が可能である。テロメレースが癌の種類を問わずほとんどの癌細胞で発現しており、生殖細胞以外の正常体細胞ではほとんど発現していないことから、例えば本発明は多様な種類の癌疾患の防止および/または治療に有効であると考えられる。
【0074】
このように本発明は、テロメレースが関与する細胞増殖や細胞老化のメカニズムおよびテロメレースの作用に基づく疾患等に関する基礎的研究等に有用である。さらにテロメレースの作用に基づく疾患、例えば癌疾患の防止および/または治療に非常に有用である。
【0075】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたRNA。
配列番号2:配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号3:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたRNA。
配列番号4:配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号5:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたRNA。
配列番号6:配列番号5に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号7:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたDNA。
配列番号8:配列番号7に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたDNA。
配列番号9:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたDNA。
配列番号10:配列番号9に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたDNA。
配列番号11:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたDNA。
配列番号12:配列番号11に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたDNA
配列番号14:全ての遺伝子に対して相同性のない塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号15:配列番号14に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
【0076】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドの配列を示す図である。
【図2】TERT02、TERT07およびTERT08の3種類の二重鎖ポリヌクレオチドがそれぞれ、hTERT遺伝子およびhTR遺伝子と共に該二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしたSaos−2細胞において、テロメレースを阻害したことを示す図である。テロメレース活性は、テロメレース活性測定における内部標準であるスルホローダミンの蛍光強度(バックグランドを減算)に対する、テロメレースにより付加されたテロメア配列の指標であるフルオレセインの蛍光強度(バックグランドを減算)の比(△FL/△R)で示した。図中、DNA(−)およびRNA(−)はそれぞれ、hTERT遺伝子および二重鎖ポリヌクレオチドを無添加のときのテロメレース活性を示す。また、RNA(−)Heatは、二重鎖ポリヌクレオチドを添加せずに試料を加熱してテロメレースの酵素活性を失活させたときのテロメレース活性を示す。スクランブル(scramble)は既知の遺伝子と相同性を持たない二重鎖ポリヌクレオチドであり、陰性対象として用いた。
【図3】TERT02およびTERT08の2種類の二重鎖ポリヌクレオチドがそれぞれ、hTERT遺伝子およびhTR遺伝子と共に該二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしたSaos−2細胞において、テロメレースを二重鎖ポリヌクレオチドの濃度依存的に阻害したことを示す図である。テロメレース活性は、テロメレース活性測定における内部標準であるスルホローダミンの蛍光強度(バックグランドを減算)に対する、テロメレースにより付加されたテロメア配列の指標であるフルオレセインの蛍光強度(バックグランドを減算)の比(△FL/△R)で示した。図中、RNA(−)は、hTERT遺伝子および二重鎖ポリヌクレオチドを無添加のときのテロメレース活性を示す。また、RNA(−)Heatは、二重鎖ポリヌクレオチドを添加せずに試料を加熱してテロメレースの酵素活性を失活させたときのテロメレース活性を示す。スクランブル(scramble)は既知の遺伝子と相同性を持たない二重鎖ポリヌクレオチドであり、陰性対象として用いた。
【産業上の利用分野】
本発明はテロメレース阻害活性を示す二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、並びにこれらを形成するRNAおよびポリヌクレオチドに関する。また、その転写物がテロメレース阻害活性を示すことを特徴とするDNAに関する。さらに、該DNAを含有するベクターに関する。また、テロメレース逆転写酵素の阻害剤およびテロメレース逆転写酵素の阻害方法に関する。さらに、テロメレース阻害剤およびテロメレース阻害方法に関する。また、該二重鎖ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチド、該DNAおよび該ベクターのうちの少なくとも1つを含んでなる医薬組成物、癌疾患の防止剤および/または治療剤、並びに試薬キットに関する。さらに、該二重鎖ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチド、該DNAおよび該ベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする癌疾患の防止方法および/または治療方法に関する。また、テロメレース逆転写酵素を発現していない細胞を用いた、テロメレース阻害活性を有する二重鎖ポリヌクレオチドの同定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テロメレース(telomerase)は染色体のテロメア部分の伸張反応を行う酵素であり、細胞の不死化に関与することが知られている。テロメアは真核細胞の染色体DNAの末端部分に存在する単純な繰り返し配列であり、染色体の安定性維持に寄与している。細胞分裂においてDNAの複製を司る通常のDNAポリメラーゼではDNAの最末端まで完全に複製が行われないため、細胞分裂に伴いテロメアは短縮される。正常な体細胞では一定回数分裂後に増殖が停止し、細胞の老化あるいは細胞死が生じる。一方、無限増殖性を有する生殖細胞や不死化した癌細胞の大多数では、テロメレースの発現が認められている。細胞分裂に伴い短縮されたテロメアのテロメレースによる伸張が、細胞の無限増殖性獲得機序の1つであると考えられる。
【0003】
ヒトテロメレース(human telomerase)は、ヒトテロメレース逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase;以下、hTERTと略称する。)およびヒトテロメレースRNA(human telomerase RNA;以下、hTRと略称する。)を含む複合体である(非特許文献1)。
【0004】
テロメレースはテロメア伸張反応において、まずテロメアの相補的配列を有するhTRによりテロメア配列を認識して結合する。ついで、hTRを鋳型とし、触媒サブユニットであるhTERTによりテロメアの伸張を行う。実験的にhTRとhTERTのみでテロメレース活性が認められたことから、これら2つのサブユニットがテロメレース活性に必要十分な要素と考えられる。また、hTRは癌のみならず正常組織でも広く発現しているのに対し、hTERTは癌組織特異的に発現していることから、hTERTがテロメレース活性の決定因子であると考えられる。
【0005】
テロメレースが癌細胞の不死化に関与していることから、テロメレース阻害剤の開発が検討されている。例えば、hTRを標的としたアンチセンス法(非特許文献2および3)、hTERTのドミナントネガティブフォームを用いた方法(非特許文献4)、リボザイムを用いた方法(非特許文献5)、およびG−カドラプレックスDNAインターラクティブコンパウンドを用いた方法(非特許文献6)等によるテロメレースの阻害が報告されている。これらの方法は、何れも欠点があり、実用的な薬剤として開発されているものはほとんど無い。
【0006】
近年、RNAを利用して遺伝子の発現を抑制する方法として、RNA干渉(RNA interference)を利用する方法が開発された(非特許文献7および8)。哺乳動物においては、目的遺伝子のmRNAの部分配列からなる20bpないし25bpの短いRNA(いわゆるセンスRNA)と該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA(アンチセンスRNA)とからなる短い二重鎖RNA(short interfering RNA;以下、siRNAと略称する。)が、該mRNAを効果的に分解し、該遺伝子の発現を阻害することが報告されている(非特許文献7)。siRNAと同様に、ヘアピン構造を有する短鎖二重鎖RNAであるショートヘアピンRNA(以下、shRNAと略称する。)がRNA干渉効果を有することが報告されている(非特許文献8)。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAとが例えばポリヌクレオチド等により連結され、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分が二重鎖を形成するため、ヘアピン様構造を呈する。RNA干渉は、アンチセンス法やリボザイム法等の他の遺伝子発現阻害法と比較して、低濃度および高確率で特異的に目的遺伝子の発現を阻害することができる有用な方法である。
【0007】
テロメレースについても、siRNAによる抑制が報告されている(非特許文献9)。しかし、該siRNAはテロメレースの抑制作用が弱く且つその効果は一過性であった。
【0008】
以下に、本明細書で引用した文献を列記する。
【非特許文献1】ケラー(Kelleher C.)ら、「トレンズ イン バイオケミカル サイエンシズ(TRENDS in Biochemical Sciences)」、2002年、第27巻、p.572−579。
【非特許文献2】フェン(Feng J.)ら、「サイエンス(Science)」、1995年、第269巻、p.1236−1241。
【非特許文献3】コンドウ(Kondo S.)ら、「オンコジーン(Oncogene)」、1998年、第16巻、p.3323−3330。
【非特許文献4】ハーン(Hahn W.C.)ら、「ネイチャー メディシン(Nature Medicine)」、1999年、第10巻、p.1129−1130。
【非特許文献5】ヨコヤマ(Yokoyama Y.)ら、「キャンサー リサーチ(Cancer Research)」、1998年、第58巻、p.5406−5410。
【非特許文献6】サン(Sun D.)ら、「ジャーナル オブ メディシナルケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)」、1997年、第40巻、p.2113−2116。
【非特許文献7】エルバシ(Elbashir S.M.)ら、「ネイチャー(Nature)」、2001年、第411巻、p.494−498。
【非特許文献8】パディソン(Paddison P.J.)ら、「ジーンズ アンド ディベロプメント(Genes and Development)」、2002年、第16巻、p.948−958。
【非特許文献9】コシオレク(Kosciolek B.A.)ら、「モレキュラー キャンサー セラピューティクス(Molecular Cancer Therapeutics)」、2003年、第2巻、第3号、p.209−216。
【非特許文献10】サムブルックら編、「モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル」、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989年。
【非特許文献11】村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、丸善株式会社、1988年。
【非特許文献12】エールリッヒ編、「PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用」、ストックトンプレス、1989年。
【非特許文献13】ウルマー(Ulmer K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671。
【非特許文献14】キム(Kim N.W.)ら、「サイエンス(Science)」、1994年、第266巻、第5193号、p.2011−2015。
【非特許文献15】ウェン(Wenz C.)ら、「ザ エンボ ジャーナル(The EMBO Journal)」、2001年、第20巻、第13号、p.3526−3534。
【非特許文献16】タテマツ(Tatematsu K.)ら、「オンコジーン(Oncogene)」、1996年、第13巻、第10号、p.2265−2274。
【非特許文献17】ナカムラ(Nakamura Y.)ら、「クリニカル ケミストリー(Clinical Chemistry)」、1999年、第45巻、第10号、p.1718−1724。
【非特許文献18】マエサワ(Maesawa C.)ら、「ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、2003年、第31巻、第2号、p.E4−4。
【非特許文献19】「バイオテクニクス(Biotechniques)」、2002年、第32巻、第5号、p.1154−1156、1158、1160。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、テロメレースに極めて特異的で且つ有用性のあるテロメレース阻害剤およびテロメレース阻害方法を提供することである。また本発明の目的は、該テロメレース阻害剤を含む医薬組成物、例えば癌疾患の防止剤および/または治療剤を提供することである。さらに、本発明の目的は、該テロメレース阻害剤を用いることを特徴とする癌疾患の防止方法および/または治療方法を提供することである。
【0010】
【課題解決のための手段】
本発明者らは、上記課題解決のため鋭意検討を重ね、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉を示すことによりテロメレースを阻害し得る二重鎖ポリヌクレオチドを見出して本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、
1.配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNA、
2.配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドA)であって、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドA、
3.配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドB)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドB、
4.配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドC)であって、配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドC、
5.配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドD)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドD、
6.配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドE)であって、配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドE、
7.配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドF)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドF、
8.配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチド
9.下記の群から選ばれるいずれか1つの二重鎖ポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とする二重鎖ポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
および
(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
10.下記の群から選ばれるいずれか1つの二重鎖ポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
および
(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
11.下記の群から選ばれるいずれか1つのポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドG)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドG、
(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドH)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドH、
(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドI)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドI、
(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドJ)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドJ、
(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドK)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドK、
および
(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドL)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドL、
12.下記の群から選ばれるいずれか1つのポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドM)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドM、
(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドN)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドN、
(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドO)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドO、
(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドP)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドP、
(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドQ)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドQ、
および
(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドR)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドR、
13.配列表の配列番号7から12のいずれか1つに記載の塩基配列からなるDNA、
14.下記の群から選ばれるいずれか1つのDNAであって、その転写物がヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするDNA;
(i)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA1)であって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA1、
(ii)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA2)であって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA2、
(iii)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA3)であって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA3、
(iv)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA4)であって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA4、
(v)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA5)であって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA5、
および
(vi)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA6)であって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA6、
15.前記13.または14のDNAを含むベクター、
16.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害剤、
17.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース阻害剤、
18.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害方法、
19.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース阻害方法、
20.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを有効量含んでなる医薬組成物、
21.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを有効量含んでなる癌疾患の防止剤および/または治療剤、
22.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする癌疾患の防止方法および/または治療方法、
23.前記9.または10.のいずれかの二重鎖ポリヌクレオチド、前記11.または12.のいずれかのポリヌクレオチド、前記13.または14.のいずれかのDNA、および前記15.のベクターのうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする試薬キット、
24.テロメレース阻害作用を有する二重鎖ポリヌクレオチドの同定方法であって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子を発現していない細胞またはヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子およびヒトテロメレースRNA遺伝子を発現していない細胞を用い、該細胞にヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子発現ベクターおよびヒトテロメレースRNA遺伝子発現ベクターと共に被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションし、ついで、テロメレース活性を測定し、二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしなかったときと比較してテロメレース活性を低下させた二重鎖ポリヌクレオチドを選択することを特徴とする同定方法、
25.ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子を発現していない細胞またはヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子およびヒトテロメレースRNA遺伝子を発現していない細胞が、ヒト骨肉腫由来Saos−2細胞である前記24.の同定方法、
26.トランスフェクションがリポフェクション法である前記24.または25.の同定方法、
27.リポフェクション法が、カチオン性リポソームを用いたリポフェクション法である前記26.の同定方法、
からなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明においては、テロメレースの阻害に有用なポリヌクレオチドを提供する。本明細書中におけるポリヌクレオチドとは、3’,5’−リン酸ジエステル結合により2個を超えるヌクレオチドが連鎖している直鎖状ポリマーを意味し、リン酸ジエステル結合によって繋がっている2個ないし10数個程度のヌクレオチドからなる直鎖状核酸断片も含まれる。
【0013】
本発明に係るポリヌクレオチドの1つの態様は、hTERT mRNAの部分配列からなるRNAおよび該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAである。本発明に係るRNAとしては、好ましくは配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNAが挙げられる。
【0014】
本発明に係るRNAにはそれぞれ、そのRNAの3’末端に、オーバーハング配列と呼ばれる1個ないし数個の塩基配列からなるヌクレオチドを結合させることが好ましい。オーバーハング配列は、その作用の1つとして、RNAをヌクレアーゼから保護する作用を有する。オーバーハング配列は、該RNAのRNA干渉効果を阻害しない限りにおいて特に制限されず、好ましくは1個ないし10個、より好ましくは1個ないし4個、さらに好ましくは2個のヌクレオチドからなるものをいずれも用いることができる。具体的には、デオキシチミジル酸からなる配列(例えばTT)、ウリジル酸からなる配列(例えばUU)、デオキシチミジル酸に続いて任意のヌクレオチドが結合した配列(例えばTN)といった配列を例示できる。合成を安価に行えることおよびヌクレアーゼ耐性がより強いことから、より好ましくは、2つのデオキシチミジル酸からなる配列をオーバーハング配列として使用する。オーバーハング配列は、本発明に係るRNAの3’末端のリボース3’水酸基部位に、ジエステル結合によって結合させる。
【0015】
本発明に係るRNAのそれぞれにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドからなるオーバーハング配列を結合させてなるポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲に包含される。かかるポリヌクレオチドとしては例えば、配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドからなるオーバーハング配列、好ましくは2つのデオキシチミジル酸からなる配列を結合させてなるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0016】
これらポリヌクレオチドの特徴の1つは、該ポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドに含まれるRNAの相補的な塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することである。
【0017】
例えば、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得た二重鎖ポリヌクレオチドは、テロメレースを、二重鎖ポリヌクレオチドの用量依存的に阻害した。すなわち、この二重鎖ポリヌクレオチドはhTERT遺伝子に対してRNA干渉効果を示し、該遺伝子の発現を阻害することによりテロメレースを阻害したと考えられる。本発明におけるテロメレースの阻害とは、テロメレース機能の部分的消失または完全な消失を意味する。
【0018】
同様に、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得た二重鎖ポリヌクレオチドも、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を示し、テロメレースを阻害した。配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせて得た二重鎖ポリヌクレオチドもまた、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を示し、テロメレースを阻害した。
【0019】
上記RNAおよびポリヌクレオチドは、例えば公知の化学合成法を用いて調製することができる。例えば、市販のRNA合成試薬(Proligo、Dharmacon Research、ChemGenes等)を用いてDNA/RNA合成機により調製可能である。
【0020】
テロメレースの阻害は、1つの態様として、本発明に係るRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと、該RNAに相補的な塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチドにより達成可能である。該二重鎖ポリヌクレオチドは、これら2つのポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションさせることにより得ることができる。ハイブリダイゼーションは、これら2つのポリヌクレオチドを慣用の方法でアニーリングすることにより実施可能である。アニーリングは、1例として、本明細書の実施例に記載した方法により行うことができる。
【0021】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドは、例えば下記の群から選ばれる二重鎖ポリヌクレオチドである(図1参照。):(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチド;(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチド;および(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドとからなる二重鎖ポリヌクレオチド。
【0022】
テロメレースの阻害はまた、1つの態様として、本発明に係るRNAを含みヘアピン構造を有する二重鎖を形成し得るポリヌクレオチドにより達成可能であると考える。本発明に係るRNA、該RNAに相補的な塩基配列からなるRNA、およびこれら2つのRNAを連結し且つループ構造を形成するポリヌクレオチドが結合してなるポリヌクレオチドであって、hTERT遺伝子に対してRNA干渉効果を有するポリヌクレオチドも、本発明の範囲に包含される。かかるポリヌクレオチドは、好ましくは本発明に係るRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と該RNAに相補的な塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドであることが望ましい。あるいは、本発明に係るRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と該RNAに相補的な塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドであってもよい。ループ構造を形成するポリヌクレオチドとは、2つのRNAの間に存在して両RNAを連結でき、それ自体がループ構造を形成するものを意味する。非特許文献8に記載された配列を参考にして設計するとよい。好ましくは4個ないし23個、より好ましくは4個ないし8個のヌクレオチドからなるものが望ましい。例えば、TTCAAGAGA(Ambion社またはOligoengine社)、AACGTT、TTAA、CAAGCTTC等の配列を挙げることができる。ヘアピン構造を有する二重鎖の形成は、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分とを慣用の方法でアニーリングすることにより実施可能である。
【0023】
かかるポリヌクレオチドとしてより具体的には、下記の群から選ばれるポリヌクレオチドが例示できる:(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチド;(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチド;(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチド;(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチド;(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチド;および(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチド。
【0024】
本発明に係るRNA、ポリヌクレオチドおよび二重鎖ポリヌクレオチドは、上記のものに制限されず、その機能を損なわない程度の1塩基ないし数塩基程度の塩基の付加、欠失、置換等を有するもの、その他一般的な修飾を受けたものであってもよい。塩基の付加、欠失、置換等を導入する手段は自体公知であり、例えば成書に記載の方法(非特許文献10、11および12)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(非特許文献13)を利用することもできる。
【0025】
テロメレースの阻害は、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つを用いることにより達成できる。例えば、これらを細胞に導入することにより実施可能である。細胞への導入は、公知の手法により実施可能であるが、好ましくはリポフェクション法によりトランスフェクションすることが、導入効率、再現性および簡便性等の観点から望ましい。リポフェクションに用いるリポソームと呼ばれる脂質小胞としては、カチオン性のものが好ましい。カチオン性リポソームとしては、リポフェクトアミン、リポフェクトアミン2000(Lipofectamine2000)(Invitrogen)およびオリゴフェクトアミン(Invitrogen)等が例示できる。あるいは、トランスメッセンジャー(TransMessenger)(QIAGEN)、siRNAトランスフェクションキットjetSI(Ambion)、およびジーンサイレンサーsiRNAトランスフェクションリエージェント(GeneSilencer siRNA Transfection Reagent)(Gene Therapy Systems)等の市販の試薬を用いてトランスフェクションすることもできる。
【0026】
テロメレースの阻害はまた、本発明に係るポリヌクレオチドまたはRNAを細胞内でDNAから転写させることにより達成できる。すなわち、その転写物がテロメレースの阻害を示すDNAも本発明に含まれる。ここで、転写物とは、コード鎖に存在する本発明のDNAが、細胞内で転写されることにより生成するRNAを意味する。本DNAとしては、本発明に係るポリヌクレオチドまたはRNAをコードするDNAであればよく、転写開始点(いわゆる+1サイト)がプリン塩基(GまたはA)となるように設計する。本DNAとその相補鎖からなる二重鎖DNAとして用いてもよいし、本DNAの相補鎖のみを鋳型DNAとして用いることもできる。
【0027】
本発明に係るポリヌクレオチドまたはRNAの細胞内での転写は、本発明に係るDNAをベクターに挿入し、得られたベクターを慣用の方法(非特許文献10等)で細胞内にトランスフェクションすることにより達成できる。
【0028】
ベクターDNAは、導入する細胞の種類等により適宜選択される。ベクターDNAは、天然に存在するものを抽出したもののほか、増殖に必要な部分以外のDNAの部分が一部欠落しているものでもよい。例えば、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス等のウイルス由来のベクター、並びにそれらを組み合わせたベクター、例えばプラスミドおよびバクテリオファージの遺伝学的エレメント由来のベクター、例えばコスミドおよびファージミド等が挙げられる。組換えベクターは、目的の遺伝子配列と複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等とを構成要素とし、これらを自体公知の方法により組み合わせて作製する。ベクターDNAに目的の遺伝子配列を組込む方法は、自体公知の方法を適用できる。例えば、適当な制限酵素を選択、処理してDNAを特定部位で切断し、次いで同様に処理したベクターとして用いるDNAと混合し、リガーゼによって再結合する方法が用いられる。あるいは、目的の遺伝子配列に適当なリンカーをライゲーションし、これを目的に適したベクターのマルチクローニングサイトへ挿入することによっても、所望の組換えベクターが得られる。
【0029】
本発明に係るポリヌクレオチドのコード鎖となるDNAとしてより具体的には、例えば下記の群から選ばれるDNAであって、その転写物がヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするDNAを例示できる:(i)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA;(ii)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA;(iii)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA;(iv)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA;(v)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA;および(vi)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNAであって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA。
【0030】
本発明に係るポリヌクレオチドのコード鎖となるDNAは、U6あるいはH1といったRNAポリメラーゼIIIによって転写を行うタイプのベクターに組み込んだ場合、転写を終結させるために転写される側の3’末端に5塩基ないし6塩基のpoly(T)を結合することが好ましい。さらに、ベクターによってはpoly(T)の後ろに、さらなる塩基配列、例えばGGAAといった塩基配列を結合して用いることが好ましい。
【0031】
本発明に係るポリヌクレオチドのコード鎖となるDNAを用いたテロメレースの阻害は、該DNAを細胞内に導入することにより達成できる。該DNAの細胞への導入については既報(非特許文献8)を参照し、例えばpSHAG−1ベクターシステムにより行なうことができる。あるいは、pSilencerシリーズ(Ambion社)、pSUPER(OligoEngine社)や、レトロウイルス用のpSUPER−Retro(OligoEngine社)等が使用可能であるがこれらに制限されることはない。
【0032】
本発明に係るRNAをコードするDNAとしては、例えば配列表の配列番号7から12のいずれか1に記載の塩基配列からなるDNAが好ましく例示できる。
【0033】
本発明に係るRNAをコードするDNAを用いたテロメレースの阻害は、該DNAを挿入したベクターと、該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAをコードするDNAを挿入したベクターとを細胞内にトランスフェクションすることにより細胞内で転写される2本のRNAにより達成できると考える。あるいは、本発明に係るRNAをコードするDNAと該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAをコードするDNAとを挿入したベクターを用いて同様の効果を得ることも可能である。
【0034】
このように上記DNAおよび該DNAを含むベクターも、テロメレースの阻害に使用可能であり、これらも本発明の範囲に包含される。
【0035】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、RNA干渉によりhTERT mRNAを破壊することができるため、本発明においては上記二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害剤およびこれらのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害方法を提供可能である。
【0036】
本発明においてはまた、上記二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース阻害剤およびこれらのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース阻害方法を提供可能である。
【0037】
さらに、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターは、テロメレースを阻害することに基づく医薬、好ましくは抗腫瘍剤、さらに好ましくは、悪性腫瘍の治療のための医薬の有効成分として有用である。テロメレース阻害作用の確認は、例えばトラップ法(TRAP法:非特許文献14)、ダイレクトテロメレースアッセイ(Direct telomerase assay:非特許文献15)、ストレッチPCRアッセイ(Stretch PCR assay:非特許文献16)、ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ(Hybridization protection assay:非特許文献17)、TREアッセイ(非特許文献18)、ラピッドダイレクトテロメレースアッセイ(rapid direct telomerase assay:非特許文献19)等の方法により行うことができる。あるいは、パディソンらの方法(非特許文献8)や本明細書の実施例に具体的に記載した方法等に従って確認することも可能である。
【0038】
本発明に係る医薬は、本発明に係る上記二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターのうちの少なくとも1つを有効量含む医薬となしてもよいが、通常は、1種または2種以上の医薬用担体または賦形剤を用いて医薬組成物を製造することが好ましい。かかる担体としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限らない。
【0039】
本発明に係る医薬組成物は、テロメレースの作用に基づく疾患の防止剤および/または治療剤として使用することができる。また、当該疾患の防止方法および/または治療方法に使用することができる。テロメレースの作用に基づく疾患としては、例えば癌疾患が挙げられる。
【0040】
テロメレースが腫瘍の種類に関わらず、大多数の腫瘍において発現が確認されていることから、本発明に係る医薬組成物は多様な種類の癌細胞の増殖阻害に有効であると考えられる。したがって、本発明に係る医薬組成物を癌疾患に使用する場合には、対象となる腫瘍の種類は特に限定されず、固形腫瘍または非固形腫瘍のいずれにも適用可能である。固形腫瘍または非固形腫瘍の種類も特に限定されず、テロメレースを発現しているあらゆる種類の腫瘍において適用できる。例えば、胃癌、食道癌、大腸癌、小腸癌、十二指腸癌、肺癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、口腔癌、骨癌、皮膚癌、乳癌、子宮癌、前立腺癌、脳腫瘍、神経芽腫等の固形腫瘍、あるいは白血病や悪性リンパ腫等の非固形腫瘍等を挙げることができるが、本発明に係る医薬組成物の適用対象はこれら疾患に限定されない。
【0041】
一方、テロメレースは正常体細胞では生殖細胞を除いてほとんど発現していない。さらにsiRNAおよびshRNAはmRNAのみに作用するため、ゲノム遺伝子には全く影響を及ぼさないと考えられる。これらから、本発明に係る医薬および医薬組成物は副作用が少ないと考えられ、この観点からも有用である。
【0042】
必要な用量範囲は、特に限定されないが、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターの有効性、投与形態、疾病の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断により適宜選択することが望ましい。具体的には、適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり0.1μg乃至100μgの範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1〜4回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
【0043】
処方は投与形態に適したものを選択すればよく、該処方は当業者によく知られたものを用いればよい。また、処方するときには、これらを単独で使用してもよく、あるいは治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。例えば、他のテロメレース阻害剤または抗腫瘍用医薬の有効成分等を配合してもよい。
【0044】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、ベクターおよび医薬組成物は、好ましくは遺伝子治療剤として用いることができる。この場合、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびDNAのうちの少なくとも1つを注射により直接投与する非ウイルス性のトランスフェクション法、あるいはウイルスベクターを利用したトランスフェクション方法のいずれも適用することができる。
【0045】
非ウイルス性のトランスフェクション法においては、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびDNAのうちの少なくとも1つを注射により直接投与する方法のほか、これらをリポソーム等のリン脂質小胞に封入し、そのリポソームを投与する方法が推奨される。リポソームとしては、カチオン性リポソームの使用がより好ましい。
【0046】
ウイルスベクターを使用するトランスフェクション法において、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAを組込んでトランスフェクションに使用するベクターとしては、好ましくはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター等のDNAウイルスベクター、あるいはRNAウイルスベクターが挙げられる。これらウイルスベクターを用いることにより効率良い投与が可能である。さらに、ウイルスベクターを用いるトランスフェクション法においても、該ベクターをリポソームに封入して、そのリポソームを投与する方法が推奨される。リポソームとしては、カチオン性リポソームの使用がより好ましい。
【0047】
投与形態は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与形態を選択する。例えば、通常の静脈内投与、動脈内投与のほか、皮下、皮内、筋肉内等に投与することもできる。癌疾患に用いる場合は、腫瘍に直接投与することが好ましい。
【0048】
医薬形状は投与形態に応じて選択することができ、遺伝子治療剤として用いる場合は、一般的には、注射剤、点滴剤、あるいはリポソーム製剤として調製することが好ましい。そのほか、シクロデキストリン等の包接体、溶液剤、けん濁剤、脂肪乳剤、散剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤丸剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点耳剤等の作製も可能である。しかし、本発明に係る医薬の形態はこれらに限定されない。
【0049】
製剤化にあたっては、その形態に応じて適切な製剤用添加物を用いることができ、常法に従って製剤化することができる。
【0050】
リポソーム化は、例えばリン脂質を有機溶媒(クロロホルム等)に溶解した溶液に、目的とする物質を溶媒に溶解した溶液を加えた後、溶媒を留去し、これにリン酸緩衝液を加え、振とう、超音波処理および遠心処理した後、上清をろ過処理して回収することにより行い得る。
【0051】
シクロデキストリン包接化は、例えば目的とする物質を溶媒に溶解した溶液に、シクロデキストリンを水等に加温溶解した溶液を加えた後、冷却して析出した沈殿をろ過し、滅菌乾燥することにより行い得る。このとき、使用されるシクロデキストリンは、当該物質の大きさに応じて、空隙直径の異なるシクロデキストリン(α、β、γ型)を適宜選択すればよい。
【0052】
注射用の溶液剤は、塩溶液、グルコース溶液、または塩水とグルコース溶液の混合物からなる担体を用いて調製可能である。
【0053】
けん濁剤は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール等のグリコール類、油類を使用して製造できる。
【0054】
脂肪乳剤化は、例えば目的とする物質、油成分(大豆油、ゴマ油、オリーブ油等の植物油、MCT等)、乳化剤(リン脂質等)等を混合、加熱して溶液とした後に、必要量の水を加え、乳化機(ホモジナイザー、例えば高圧噴射型や超音波型等)を用いて、乳化・均質化処理して行い得る。また、これを凍結乾燥化することも可能である。なお、脂肪乳剤化するとき、乳化助剤を添加してもよく、乳化助剤としては、例えばグリセリンや糖類(例えばブドウ糖、ソルビトール、果糖等)が例示される。
【0055】
散剤、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等についても、通常用いられる方法により調製可能である。
【0056】
本発明においてはさらに、テロメレースを阻害する二重鎖ポリヌクレオチドの同定方法を提供する。本発明に係る同定方法は、hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子(配列番号16)を発現している細胞、またはhTERT遺伝子およびhTR遺伝子の両方を発現していない細胞を用い、該細胞にhTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションし、ついで、テロメレース活性を測定することを1つの特徴とする。hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子を発現している細胞としては、例えばヒト骨肉腫由来Saos−2細胞が挙げられるが、本発明に係る同定方法に使用できる細胞はこれに制限されることはない。hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子を発現している細胞を用いる場合、hTR遺伝子発現ベクターは導入しなくてもよいが、好ましくはhTR遺伝子発現ベクターも導入することが推奨される。hTR遺伝子発現ベクターに対するhTERT遺伝子発現ベクターの導入比は好ましくは1:0.01ないし1:10である。導入比は、用いる細胞によっても異なり、より適切な導入比を実験により決定して用いることができる。トランスフェクションは、慣用のトランスフェクション法(非特許文献10等)により実施できるが、好ましくはリポフェクションによる。リポフェクションは、リポフェクチン、リポフェクトアミン、セルフェクチン、DMRIE−Cまたはスーパーフェクト等の市販の試薬を用いることにより行うことができるが、好ましくはカチオン性リポソームを用いることが望ましい。カチオン性リポソームとしては、リポフェクトアミン、リポフェクトアミン2000およびオリゴフェクトアミン等が挙げられる。
【0057】
hTERT遺伝子は発現していないがhTR遺伝子を発現している細胞、またはhTERT遺伝子およびhTR遺伝子の両方を発現していない細胞に、hTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションすることにより構築したかかる測定系は、hTERT遺伝子が導入された細胞のみがテロメレース活性を示し、さらにその細胞には二重鎖ポリヌクレオチドも導入されている可能性が極めて高いため、トランスフェクション効率の影響をあまり受けずに二重鎖ポリヌクレオチドの効果を評価することができる。hTR遺伝子およびhTERT遺伝子の発現用ベクターはそれぞれ、通常用いられる哺乳動物用遺伝子発現ベクターにhTERT cDNA(配列番号13)およびhTR cDNA(配列番号16)を挿入すること等により作製すればよい。
【0058】
被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドは、hTERT遺伝子の塩基配列に基づいて、RNA干渉効果を有するRNAに特有の配列を含む領域を選択し、該領域の配列から設計し、公知のヌクレオチド合成方法により作製することができる。hTERT遺伝子の配列は配列表の配列番号13に記載された配列である。RNA干渉効果を有するRNAに特有の配列は既に広く知られている。例えば、AAまたはCAで始まる領域で、GC含量が30%から70%、好ましくは50%となる配列である。また、各塩基の偏りあるいはGまたはCが連続した配列が極力少ない配列が好ましい。
【0059】
本発明に係る同定方法において、二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしなかったときと比較してテロメレース活性を低下させた二重鎖ポリヌクレオチドを選択することにより、所望の二重鎖ポリヌクレオチドを取得することができる。テロメレース活性の測定は、例えばトラップ法(非特許文献14)、ダイレクトテロメレースアッセイ(非特許文献15)、ストレッチPCRアッセイ(非特許文献16)、ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ(非特許文献17)、TREアッセイ(非特許文献18)、ラピッドダイレクトテロメレースアッセイ(非特許文献19)等の方法により実施できる。
【0060】
本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAおよびベクターはいずれも、それ自体を単独で、試薬等として使用できる。例えば、テロメレースを阻害するための試薬として用いることができる。該試薬はテロメレースが関与する細胞増殖や細胞老化のメカニズム、およびテロメレースの作用に基づく疾患等に関する基礎的研究等に有用である。これらは試薬であるとき、緩衝液、塩、安定化剤、および/または防腐剤等の物質を含んでいてもよい。なお、製剤化にあたっては、各性質に応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。また本発明は、これらのうちの1種またはそれ以上を充填した、1個またはそれ以上の容器を含んでなる試薬キットを提供する。これら試薬および試薬キットは、テロメレースの作用に基づく疾患の診断に使用できる。例えば、癌患者から癌細胞を採取し、該細胞を培養して二重鎖ポリヌクレオチドを含むキットで繰り返し処理したときに細胞死が観察されれば、テロメレース阻害剤が有効な患者と判定することができる。これらはまた、本発明に係る同定方法の陽性対照として使用することができる。
【0061】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0062】
【実施例1】
二重鎖ポリヌクレオチドは、hTERT遺伝子の塩基配列(配列番号13)に基づいて設計した。まず、該遺伝子の塩基配列においてAAまたはCAで始まる部分から、各塩基の偏りあるいはGまたはCが連続した配列が極力少ない配列を選ぶことにより、センスRNAの塩基配列を設計した。また、センスRNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるアンチセンスRNAを設計した。ついで、二重鎖ポリヌクレオチドのヌクレアーゼからの保護を目的とし、センスRNAとアンチセンスRNAのそれぞれの3’末端に、2つのデオキシチミジル酸からなるオーバーハング配列を結合したセンスポリヌクレオチドおよびアンチセンスポリヌクレオチドを設計した。設計したセンスポリヌクレオチドとアンチセンスポリヌクレオチドの双方を、RNA合成装置により合成した。
【0063】
センスポリヌクレオチドとアンチセンスポリヌクレオチドとをアニーリングして二重鎖ポリヌクレオチドを調製した。まず、それぞれ50μM(50pmol/μl)に希釈した後、各試料30μlずつと5×アニーリングバッファー(500mM 酢酸カリウム、150mM HEPES−KOH pH7.4、10mM 酢酸マグネシウム)15μlを混合した(総量75μl)。ついで、混合液を90℃で1分間加熱し、遠心処理後に37℃で60分間静置した。この操作により、ポリヌクレオチドは二本鎖を形成し、最終濃度は20μM(20pmol/μl)になった。
【0064】
作成した二重鎖ポリヌクレオチドの例を図1に示した。TERT02は、配列番号1および2に記載した各塩基配列からなる2つのRNAの各3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチドである。TERT07は、配列番号3および4に記載した各塩基配列からなる2つのRNAの各3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチドである。TERT08は、配列番号5および6に記載した各塩基配列からなる2つのRNAの各3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチドである。配列番号1、配列番号3および配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAはそれぞれ、hTERT cDNA配列(配列番号13)の第1042−1060番目、第1789−1807番目および第1812−1830番目の部分配列から設計されたRNAである。また配列番号2、配列番号4、および配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAはそれぞれ、配列番号1、配列番号3および配列番号5に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNAである。
【0065】
【実施例2】
実施例1で作製した二重鎖ポリヌクレオチドから、テロメレース阻害作用を示す二重鎖ポリヌクレオチドを選択するために、hTERT遺伝子を発現しておらずhTR遺伝子のみを発現しているヒト骨肉腫由来Saos−2細胞を用い、hTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に二重鎖ポリヌクレオチドとをトランスフェクションし、テロメレース活性を測定する測定系を構築した。この測定系を用いて、テロメレース阻害作用を示す二重鎖ポリヌクレオチドを選択した。
【0066】
まず、Saos−2細胞を2×105細胞/mlに調製し、24ウェルプレートに1ウェル当たり0.5mlずつ播種し、37℃で一晩(12時間程度)培養した。ついで、hTERT遺伝子発現ベクターおよびhTR遺伝子発現ベクターと共に二重鎖ポリヌクレオチドを、1ウェル当たり2.5μlのリポフェクトアミン2000(Invitrogen)と0.1mlの無血清培地中で混合し、細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後に細胞をトリプシン処理し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄して回収した。陰性対象として、上記二重鎖ポリヌクレオチドの代わりに既知の遺伝子と相同性を持たないスクランブル二重鎖ポリヌクレオチド(配列番号14および15に記載の各塩基配列からなる2つのRNAのそれぞれの3’末端に2つのデオキシチミジル酸が結合したポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド)を用いて同様に細胞を処理した。
【0067】
回収した細胞中のテロメレース活性は、TRAPeze XL Kit(Oncor)を用い、キットの使用説明書に従って測定した。まず、キットに付属の1×CHAPS溶解バッファー120μlに細胞をけん濁し、氷上で20分間インキュベーション後に、4℃にて12,000rpmで20分間遠心処理し、上清を回収した。上清中の蛋白質濃度を定量後、1反応当り200ngになるように反応液中に加え、テロメレースによるオリゴDNAの伸張反応を30℃で30分間行った。その後、反応液中に含まれるプライマー対でPCR反応を行い、テロメレース反応産物を増幅し、内部標準との比を算出して、テロメレース活性の強度を測定した。検出はプライマーに標識されたフルオレセイン(テロメレース反応産物の指標。)およびスルホローダミン(内部標準の指標。)の各蛍光強度を分光蛍光光度計を用いて計測することにより行った。
【0068】
0.5μg/wellのhTERT遺伝子発現ベクター、0.54μg/wellのhTR遺伝子発現ベクター、および20pmol/wellまたは2pmol/wellの二重鎖ポリヌクレオチドを用いて上記検討を行ったところ、合成した二重鎖ポリヌクレオチドのうち、TERT02、TERT07およびTERT08がテロメレース阻害効果を示した(図2)。
【0069】
さらに、TERT02およびTERT08について、0.125μg/wellのhTERT遺伝子発現ベクター、0.75μg/wellのhTR遺伝子発現ベクターを用い、二重鎖ポリヌクレオチドの濃度を20pmol/wellから0.2pmol/wellの範囲で変化させて同様に検討したところ、いずれも二重鎖ポリヌクレオチドの濃度依存的にテロメレースを阻害することが明らかになった(図3)。
【0070】
一方、加熱してテロメレースの酵素活性を失活させた試料では二重鎖ポリヌクレオチドを添加しなくてもテロメレース活性が全く検出されなかったことから、ここで用いた測定系がテロメレース活性を適切に反映していることが確認できた(図2および図3)。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対するRNA干渉効果によりテロメレースの阻害を達成できる。
【0072】
本発明はアンチセンス法やリボザイム法等の他の遺伝子発現阻害法と比較して、低濃度および高確率で特異的にヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を阻害でき、その結果テロメレースを阻害することができる。また、本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは短鎖ポリヌクレオチドであるため、合成が容易であり、安価に合成できる。
【0073】
本発明によれば、テロメレースの作用に基づく疾患の防止および/または治療が可能である。テロメレースが癌の種類を問わずほとんどの癌細胞で発現しており、生殖細胞以外の正常体細胞ではほとんど発現していないことから、例えば本発明は多様な種類の癌疾患の防止および/または治療に有効であると考えられる。
【0074】
このように本発明は、テロメレースが関与する細胞増殖や細胞老化のメカニズムおよびテロメレースの作用に基づく疾患等に関する基礎的研究等に有用である。さらにテロメレースの作用に基づく疾患、例えば癌疾患の防止および/または治療に非常に有用である。
【0075】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたRNA。
配列番号2:配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号3:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたRNA。
配列番号4:配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号5:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたRNA。
配列番号6:配列番号5に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号7:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたDNA。
配列番号8:配列番号7に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたDNA。
配列番号9:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたDNA。
配列番号10:配列番号9に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたDNA。
配列番号11:ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(配列番号13)の配列に基づいて設計されたDNA。
配列番号12:配列番号11に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたDNA
配列番号14:全ての遺伝子に対して相同性のない塩基配列からなる設計されたRNA。
配列番号15:配列番号14に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなる設計されたRNA。
【0076】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二重鎖ポリヌクレオチドの配列を示す図である。
【図2】TERT02、TERT07およびTERT08の3種類の二重鎖ポリヌクレオチドがそれぞれ、hTERT遺伝子およびhTR遺伝子と共に該二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしたSaos−2細胞において、テロメレースを阻害したことを示す図である。テロメレース活性は、テロメレース活性測定における内部標準であるスルホローダミンの蛍光強度(バックグランドを減算)に対する、テロメレースにより付加されたテロメア配列の指標であるフルオレセインの蛍光強度(バックグランドを減算)の比(△FL/△R)で示した。図中、DNA(−)およびRNA(−)はそれぞれ、hTERT遺伝子および二重鎖ポリヌクレオチドを無添加のときのテロメレース活性を示す。また、RNA(−)Heatは、二重鎖ポリヌクレオチドを添加せずに試料を加熱してテロメレースの酵素活性を失活させたときのテロメレース活性を示す。スクランブル(scramble)は既知の遺伝子と相同性を持たない二重鎖ポリヌクレオチドであり、陰性対象として用いた。
【図3】TERT02およびTERT08の2種類の二重鎖ポリヌクレオチドがそれぞれ、hTERT遺伝子およびhTR遺伝子と共に該二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしたSaos−2細胞において、テロメレースを二重鎖ポリヌクレオチドの濃度依存的に阻害したことを示す図である。テロメレース活性は、テロメレース活性測定における内部標準であるスルホローダミンの蛍光強度(バックグランドを減算)に対する、テロメレースにより付加されたテロメア配列の指標であるフルオレセインの蛍光強度(バックグランドを減算)の比(△FL/△R)で示した。図中、RNA(−)は、hTERT遺伝子および二重鎖ポリヌクレオチドを無添加のときのテロメレース活性を示す。また、RNA(−)Heatは、二重鎖ポリヌクレオチドを添加せずに試料を加熱してテロメレースの酵素活性を失活させたときのテロメレース活性を示す。スクランブル(scramble)は既知の遺伝子と相同性を持たない二重鎖ポリヌクレオチドであり、陰性対象として用いた。
Claims (27)
- 配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNA。
- 配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドA)であって、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドA。
- 配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドB)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドB。
- 配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドC)であって、配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドC。
- 配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドD)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドD。
- 配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドE)であって、配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドE。
- 配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドF)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせて得られる二重鎖ポリヌクレオチドがヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチドF。
- 配列表の配列番号1から6のいずれか1つに記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチド
- 下記の群から選ばれるいずれか1つの二重鎖ポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とする二重鎖ポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
および
(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に1個ないし数個のヌクレオチドを結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド。 - 下記の群から選ばれるいずれか1つの二重鎖ポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
(ii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド、
および
(iii)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAにそのRNAの3’末端に2つのデオキシチミジル酸を結合させてなるポリヌクレオチドからなる二重鎖ポリヌクレオチド。 - 下記の群から選ばれるいずれか1つのポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドG)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドG、
(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドH)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドH、
(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドI)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドI、
(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドJ)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドJ、
(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドK)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドK、
および
(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、ループ構造を形成するポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドL)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とループ構造を形成するポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドL。 - 下記の群から選ばれるいずれか1つのポリヌクレオチドであって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドM)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドM、
(ii)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドN)であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号2に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドN、
(iii)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドO)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドO、
(iv)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドP)であって、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドP、
(v)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドQ)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端とが結合したポリヌクレオチドQ、
および
(vi)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAが結合してなるポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドR)であって、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるRNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの5’末端と配列番号6に記載の塩基配列からなるRNAの3’末端とが結合したポリヌクレオチドR。 - 配列表の配列番号7から12のいずれか1つに記載の塩基配列からなるDNA。
- 下記の群から選ばれるいずれか1つのDNAであって、その転写物がヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を有することを特徴とするDNA;
(i)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA1)であって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA1、
(ii)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA2)であって、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA2、
(iii)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA3)であって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA3、
(iv)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA4)であって、配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号10に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA4、
(v)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA5)であって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端とが結合したDNA5、
および
(vi)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNA、4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAおよび配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAが結合してなるDNA(DNA6)であって、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAの5’末端と4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの3’末端とが結合し、さらに4個ないし23個のヌクレオチドからなるDNAの5’末端と配列番号12に記載の塩基配列からなるDNAの3’末端とが結合したDNA6。 - 請求項13または14に記載のDNAを含むベクター。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害剤。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを含んでなるテロメレース阻害剤。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現阻害方法。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とするテロメレース阻害方法。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを有効量含んでなる医薬組成物。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを有効量含んでなる癌疾患の防止剤および/または治療剤。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする癌疾患の防止方法および/または治療方法。
- 請求項9または10のいずれか1項に記載の二重鎖ポリヌクレオチド、請求項11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項13または14のいずれか1項に記載のDNA、および請求項15に記載のベクターのうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする試薬キット。
- テロメレース阻害作用を有する二重鎖ポリヌクレオチドの同定方法であって、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子を発現していない細胞またはヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子およびヒトテロメレースRNA遺伝子を発現していない細胞を用い、該細胞にヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子発現ベクターおよびヒトテロメレースRNA遺伝子発現ベクターと共に被検物質である二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションし、ついで、テロメレース活性を測定し、二重鎖ポリヌクレオチドをトランスフェクションしなかったときと比較してテロメレース活性を低下させた二重鎖ポリヌクレオチドを選択することを特徴とする同定方法。
- ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子を発現していない細胞またはヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子およびヒトテロメレースRNA遺伝子を発現していない細胞が、ヒト骨肉腫由来Saos−2細胞である請求項24に記載の同定方法。
- トランスフェクションがリポフェクション法である請求項24または25に記載の同定方法。
- リポフェクション法が、カチオン性リポソームを用いたリポフェクション法である請求項26に記載の同定方法。
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2003
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