JP2004350559A - デンプンを主原料とする麺類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】穀物から単離されたデンプンを主原料とする麺類の製造方法であって、
(A)デンプンの全量を100質量部とした場合、そのうちの26〜30質量部をその1.75〜2.75倍量の水と混合し、加熱して、デンプンをα化して、粘状物を調製する工程、
(B)得られた粘状物を、残りのデンプン、及び場合により調味料と混合・混練して、粘弾性を有する麺生地を調製する工程、及び
(C)得られた粘弾性を有する麺生地を製麺処理にかける工程
を含むことを特徴とする上記麺類の製造方法。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、穀物から単離されたデンプンを主原料として、従来の麺類と同様の品質を有する麺類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、各種麺類の製造方法については、食品工業界において種々の高度な開発及び発展がなされてきている。各種麺類の製造方法においては、主に小麦粉を用いる場合が多いが、これは、小麦粉が、加工性、生産量(及び/又は輸入量)、栄養素及び貯蔵性の点で非常に優れていることによる。
小麦粉は、加水・混練により、その中に含まれるグルテニンとグリアジンが作用して、タンパク質グルテンを比較的多量に生じ、これにより、優れた粘弾性を有するドウとなる。このようなグルテン含有ドウは、成形性に優れているばかりか、常法により、こしのある、シコシコとした良好な食感を有する麺類を製造することが可能である。従って、小麦粉を主原料とする麺類が食料品として食生活に定着している。
【0003】
一方、小麦粉を含まない穀粉原料を用いて製造される麺類が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、この麺類は、小麦粉(グルテン)を含まないために麺類の茹で処理時の茹で溶けるという問題点を解決することを目的として、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル又はこれらの混合物と、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤との両者を用いることを必須とする。つまり、更なる合成添加剤が必要とされ、近年の健康指向の観点から望ましくない。
また、米を主原料とする麺を製造するに当り、米粉又は米より主として成るデンプン質材料を加熱することにより少なくともその一部をα化し、生麺を成形するために必要な水分を含有せしめ且つα化された上記材料を真空下混練し、次いで製麺することを特徴とする米を主原料とする麺の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)が、かかる発明は、国内において消費されずに貯蔵されている多量の米を消費すべくなされたものであり、従って、米原料の処理に関する発明である。
このように、麺類については、小麦粉自体を用いずに製造することが提案されているが、これは、非常に困難であると当該技術分野において認識されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−245375号公報(請求項1及び4、第3頁第4欄36行〜第4頁第5欄29行)
【特許文献2】
特開昭54−55745号公報(請求項1、第1頁右下欄5〜14行)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、小麦粉自体を用いる従来の麺類の製造により得られる麺類と同様の品質を、小麦粉自体を用いることなく別の手段により達成することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、穀物から単離されたデンプンを主原料とし、この一部を、特定量の水を用いてα化させ、これと残りの未α化デンプンとを組み合せることにより、小麦粉自体の代替品とすることができ、従って、これにより、小麦粉自体を用いる従来の麺類の製造により得られる麺類と同様の品質を小麦粉自体を用いることなく達成することができるとの知見に基づくものである。
即ち、本発明は、穀物から単離されたデンプンを主原料とする麺類の製造方法であって、
(A)デンプンの全量を100質量部とした場合、そのうちの26〜30質量部をその1.75〜2.75倍量の水と混合し、加熱して、デンプンをα化して、粘状物を調製する工程、
(B)得られた粘状物を、残りのデンプン、及び場合により調味料と混合・混練して、粘弾性を有する麺生地を調製する工程、及び
(C)得られた粘弾性を有する麺生地を製麺処理にかける工程
を含むことを特徴とする上記麺類の製造方法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法により得られる麺類としては、うどん、ひやむぎ、そうめん、中華麺及びマカロニ・スパゲッティ、及び、ギョウザ及びその他(ワンタン、シュウマイ、春巻き、ピザ)の生地類が挙げられる。これらの麺類は、一般の定義では、小麦粉自体を用いることが要件とされているであろうが、本発明においては、小麦粉自体を用いないで製造される場合であっても麺類と定義する。例えば、“うどん”は、小麦粉でつくった麺のうち、いちばん太いものをいうと定義されている(「調理科学辞典」、医歯薬出版株式会社、河野友美ら編集、第52頁)が、本発明においては、小麦粉自体を用いずに、後述する特殊な態様で製造したものも“うどん”に包含される。
【0008】
本発明の麺類の製造方法においては、穀物から単離されたデンプンを主原料として用いることを前提とする。つまり、本発明において用いるデンプンは、穀物から単離されたものであり、従って、デンプンを含有する原料穀物自体、例えば、ジャガイモ、小麦、米及びこれらの粉体製品(例えば、強力粉、中力粉及び薄力粉などの小麦粉)を含まない。また、本発明における「穀物から単離されたデンプン」は、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、サツマイモ、米、キャッサバ及びタピオカからなる群より選ばれる穀物から単離されたものであるのが好ましい。これらの穀物は、本発明の効果が奏されるかぎり、その形状、大きさ、産地及び品種などが制限されることはない。
尚、デンプンは、食品工業総合辞典(昭和63年3月5日、第2版、日本食品工業学会編纂、第635〜636頁)によれば、「緑色植物が太陽光線のエネルギーを利用して合成し、根、種実、茎などに蓄えた貯蔵多糖類で・・・α−D−グルコールのみからなるホモ多糖類で、アミロース、アミロペクチンというまったく構造の異なるグルカンの混合物で・・・その数は2,000種にも及ぶという」とされ、各種デンプンの各特性が記載されている。本発明においては、本発明の効果が奏されるかぎり、これらの特性にかかわらず各種デンプンを用いることができるが、ジャガイモから単離されたデンプンが特に好ましい。
【0009】
穀物からデンプンを単離する方法は、常法により行うことができる。例えば、ジャガイモからデンプンを単離する方法としては、ジャガイモの摩砕物から水を使っていわゆる篩別、スターチテーブル上での沈澱又は遠心分離法でデンプンを単離する在来法、及び、摩砕後ただちにスクリューデカンターで脱汁し、固形物と汁液とに分け、固形物からデンプンを単離する脱汁法が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
また、穀物から単離されたデンプンは、例えば、三幸食品(株)、王子コーンスターチ(株)、朝日化学工業(株)、ホクレン農業共同組合から商業的に入手することができる。
【0010】
本発明の製造方法は、以下の(A)〜(C)工程を含むことを必須とする。以下、本発明の方法をより具体的に説明する。尚、以下に記載する「質量部(以下、単に“部”と称する)」は、特段の記載がない限り、各製造方法の全工程において用いる全デンプン量を100部とした場合のものである。
工程(A):穀物から単離されたデンプンの全量を100部とした場合、そのうちの26〜30部、好ましくは27〜29部をその1.75〜2.75倍量、好ましくは2〜2.5倍量の水と混合し、加熱して、デンプンをα化して、粘状物を調製する。この混合は、得られる粘状物が均質なものとなるように撹拌機を用いて行うのが好ましい。加熱条件は、次第に温度を上昇させてα化するのが好ましい。これは、例えば、デンプンを熱湯に直接添加すると、いわゆるダマが生じてしまうために均質なα化デンプンが得られないことによる。従って、このようなダマが生じずに、デンプンをα化することが可能な加熱条件とするのがよい。具体的には、例えば、デンプンを常温の水と混合した後、撹拌しつつ、例えば3〜9分間程度かけて温度を100℃とし、100℃に達温してから更に数秒〜2分間加熱することができる。これにより粘状物を調製することができる。
【0011】
工程(B):得られた粘状物を、残り(即ち、70〜74部、好ましくは71〜73部)の未α化デンプン、及び場合により調味料と混合・混練して、粘弾性を有する麺生地を調製する。このような混合・混練は常法により行うことができ、例えば縦型ミキサーを用いて行うことができる。また、本発明においては、調味料は必須成分ではないが、麺類の種類や求められる食味を考慮して適宜添加することができる。例えば、うどんの場合には常法どおり食塩水を用いることができる。また、中華麺の場合にはアルカリ風味とするための食品添加物を用いることができる。尚、本発明においては、上記成分に加えて、他の添加剤として、例えば、保存料、着色料などを含ませることもできる。また、添加剤としては、小麦粉から単離されたグルテンを添加してもよい。小麦粉アレルギー患者の発症の可能性や喫食時の安心感を考慮する場合には、グルテンを原料として用いないのが好ましいが、小麦粉アレルギー患者以外の消費者を対象とする場合には、例えば、グルテンを用いてもよく、その添加量は、例えば、全デンプン質量をベースとして10%以下の量とするのがよい。
また、全工程で使用する水の量は、58〜70部であるのが好ましく、より好ましくは61〜67部である。
【0012】
工程(C):得られた粘弾性を有する麺生地を製麺処理にかける。このような製麺法としては、押圧して平面状に延ばし線切りする線切り方式、引き伸ばす方法である撚延方式、及び穴のあいた金型から押し出す押出し方式が挙げられる。これらの方式は、得ようとする加工食品の種類により適宜決定することができ、例えば、うどんの場合には線切り方式とし、中華麺の場合には撚延方式とすることができ、また、マカロニ・スパゲッティの場合には押出し方式とするのがよい。
尚、グルテンにより所望の品質を得ようとする従来においては熟成を行う必要があるが、本発明の製造方法においては、熟成を行わなくても従来と同様の品質とすることができる。しかしながら、必要により、製麺処理後、常法に従って、熟成を行ってもよい。
【0013】
上述のようにして得られる麺類は、生麺としてそのまま調理することができるが、必要により、更なる工程として、冷蔵、冷凍、乾燥又は凍結乾燥処理に付して、保存性を高めることができる。これらの処理は、通常の麺類に対するものと同様に行うことができる。また、特にこれらの処理に付した場合には、これらの麺類の強度の低さを考慮して、保存期間中、麺類が外圧を受けないようにするのが好ましい。例えば、麺類の保存は、包装ではなく、容器、例えばカップ容器に充填することによるのが好ましい。これにより、麺類の破損を防ぐことができる。
【0014】
また、本発明においては、穀物から単離されたデンプンの一部を、特定量の水と混合し、加熱して、デンプンをα化して、粘状物とし、これを残りの未α化デンプンと組み合せることにより、プレミックスデンプンを作成しておくこともできる。
このようなプレミックスデンプンは、例えば、未α化デンプン100部に対して、1.5〜3倍量の水で加熱処理して得たα化デンプンを10部以上、例えば10〜70部添加・混合することにより得ることができる。このようにして得たプレミックスデンプン100部に対して、水330〜600部を加えて混練することにより麺生地とすることができる。
プレミックスデンプンを作成することにより、麺類用原材料の管理が容易となり、また、予め原材料がバランスよく配合されているために、原材料の配合ミスや計量ミスを防止することができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、やわらかいものから、こしのあるしこしことした食感のあるものまで幅広い食感を達成することができる。また、グルテンを用いないことにより、小麦粉アレルギーの患者が喫食することができる麺類を製造することができる。また、本発明の製造方法により得られる麺類は、穀物から単離されたデンプンを主原料とするため、小麦粉とは全く異質の風味を帯びている。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0016】
【実施例】
実施例1:うどんの製造
(A)ジャガイモデンプン200g(28.6部)を、水450g(64.3部)と混合し、加熱し、100℃に達したところで更に1分間加熱して、該デンプンをα化して、粘状物650g(92.9部)を得た。
(B)このようにして得られた粘状物650g(92.9部)を、更なるジャガイモデンプン500g(71.4部)とミキサーで混合・混練して、粘弾性を有する麺生地1150g(164.3部)を調製した。
(C)このようにして得られた麺生地を、製麺機にかけて、直径1.2cmのうどんとした。
このようにして得られたうどんを常法による調理後に食したところ、こし及びしこしこ感が良好なものであった。
Claims (3)
- 穀物から単離されたデンプンを主原料とする麺類の製造方法であって、
(A)デンプンの全量を100質量部とした場合、そのうちの26〜30質量部をその1.75〜2.75倍量の水と混合し、加熱して、デンプンをα化して、粘状物を調製する工程、
(B)得られた粘状物を、残りのデンプン、及び場合により調味料と混合・混練して、粘弾性を有する麺生地を調製する工程、及び
(C)得られた粘弾性を有する麺生地を製麺処理にかける工程
を含むことを特徴とする上記麺類の製造方法。 - 全工程で使用する水の量が、デンプンの全量を100質量部とした場合に、58〜70質量部である請求項1に記載の製造方法。
- デンプンが、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、サツマイモ、米、キャッサバ及びタピオカからなる群より選ばれる穀物から単離されたものである請求項1又は2に記載の製造方法。
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