JP2004224866A - 再分散性樹脂粉末、これを含む粉末組成物及びこれらの使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】水への再分散性に優れ、且つ得られるエマルションによる被膜の耐水性等に優れる再分散性樹脂粉末、これを含む粉末組成物を提供する。
【解決手段】(a)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び(b)メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマーを含有するモノマー混合物を、2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテンの存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体(A)を保護コロイドとし、この存在下で、重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合して得られるエマルションを粉末状とすることを特徴とする再分散性樹脂粉末。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び(b)メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマーを含有するモノマー混合物を、2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテンの存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体(A)を保護コロイドとし、この存在下で、重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合して得られるエマルションを粉末状とすることを特徴とする再分散性樹脂粉末。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水への再分散性に優れ、且つ得られるエマルションによる被膜の耐水性等に優れる再分散性樹脂粉末、これを含む粉末組成物及びこれらの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保全の観点から、コーティング材料や各種添加剤等に用いられる合成樹脂は、無公害、省資源で作業性等の観点から溶剤系樹脂より水分散型樹脂や水溶性樹脂等の合成樹脂水分散体に移行しつつある。この合成樹脂水分散体のうち、水を加えて攪拌混合することにより、容易に水に分散する粉末樹脂は再分散性樹脂粉末あるいは易水分散性樹脂粉末と呼ばれ、輸送や保管、廃棄処理等の容易さから、従来より土木用、紙用、接着剤用又は塗料用等のバインダー、セメントやモルタルへの混入剤として適用されている。
【0003】
従来、上記樹脂粉末は、合成樹脂エマルションを噴霧乾燥する等の手段によって製造されており、この樹脂粉末の製造に使用される合成樹脂エマルションには、通常、再分散性確保の観点から乳化重合時の保護コロイドにポリビニルアルコールやセルロース誘導体等の水溶性高分子を使用するため、得られる被膜の耐水性に劣る欠点があった。そこで、この保護コロイドとしてアセトアセチル化ポリビニルアルコールや、重合性乳化剤による親水性重合物等を用いるなどの手法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−53730号公報
【特許文献2】
特開平7−157565号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら保護コロイドとしてポリビニルアルコールを用いると、乳化重合時のモノマー組成が限定されたり、上記の如き親水性重合物では不飽和基の導入位置や分子量などの制御が困難であり、用途に応じた分子設計ができなかった。
【0006】
本発明の目的は、用途に応じた分子設計が容易であり、水への再分散性に優れ、且つ得られるエマルションによる被膜の耐水性等に優れる再分散性樹脂粉末を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
1.(a)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び(b)メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマーを含有するモノマー混合物を、2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテンの存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体(A)を保護コロイドとし、この存在下で、重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合して得られるエマルションを粉末状とすることを特徴とする再分散性樹脂粉末、
2.メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)が、その成分の少なくとも一部として架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーを含有する1項記載の再分散性樹脂粉末、
3.架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーが、アセトアセトキシエチルメタクリレートである2項記載の再分散性樹脂粉末、
4.ラジカル重合体(A)のガラス転移温度が、40℃以上である1項記載の再分散性樹脂粉末、
5.ラジカル重合体(A)の重量平均分子量が、1,500〜150,000である1項記載の再分散性樹脂粉末、
6.重合性不飽和モノマー(c)が、その成分の少なくとも一部としてカルボニル基含有重合性不飽和モノマーを含有する1項記載の再分散性樹脂粉末、
7.ラジカル重合体(A)と重合性不飽和モノマー(c)との使用重量比が、2/98〜40/60の範囲内である1項記載の再分散性樹脂粉末、
8.1ないし7のいずれか1項記載の再分散性樹脂粉末を含有する粉末組成物、
9.さらに粉末状ヒドラジン系化合物を含有する8項記載の粉末組成物、
10.塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として使用される1ないし7のいずれか1項記載の再分散性樹脂粉末の使用法、
11.塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として使用される8又は9項記載の粉末組成物の使用法、
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)及びメタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)を含有するモノマー混合物を、2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテンの存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体(A)を保護コロイドとして用いる。本明細書において、カルボキシル基とは「カルボン酸無水基」も包含するものとする。
【0009】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸無水物、マレイン酸無水物などを挙げることができ、なかでもアクリル酸、メタクリル酸を好適に使用することができる。
【0010】
メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)(以下、「メタクリロイルモノマー」と略称することがある)は、1分子中に1個のメタクリロイル基を有するモノマーであり、その具体例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等のC1〜24アルキルもしくはシクロアルキルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルメタクリレート;3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリレート;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどのアミノアルキルメタクリレート;メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドブチルエーテルなどのメタクリルアミド又はその誘導体;3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有メタクリレート;γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有メタクリレート;サイラプレンFM−0711(チッソ(株)製)などのジメチルポリシロキサン含有メタクリレート;ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、パーフルオロオクチルメチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレートなどの含フッ素メタクリレート;カヤマーPM−1、カヤマーPM−2(以上、いずれも日本化薬社製のリン酸基含有メタクリレート)、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどのリン酸基含有メタクリレート;2−メタクリロイルオキシエチルスルホニックアシッド・ナトリウム塩などのスルホン酸基含有メタクリレート;アセトアセトキシエチルメタクリレート、ダイアセトンメタクリルアミドなどのカルボニル基含有メタクリレート;メタクリロニトリル、及びメタクリル酸などを挙げることができる。これらのメタクリロイルモノマーは、1種で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0011】
メタクリロイルモノマー(b)としてメタクリル酸を例示しているが、本明細書において、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)としてメタクリル酸などのカルボキシル基とメタクリロイル基とを有するモノマーを使用する場合には、モノマー混合物におけるメタクリロイルモノマー(b)の量は、メタクリル酸などのカルボキシル基とメタクリロイル基とを有するモノマーを包含するメタクリロイルモノマーの量を意味する。
【0012】
本発明ではメタクリロイルモノマー(b)が、その成分の少なくとも一部として架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーを含有することが、得られる被膜の耐水性の点から望ましい。特に架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーが、アセトアセトキシエチルメタクリレートである場合には常温での硬化性に優れるので望ましい。
【0013】
モノマー混合物は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)を4モル%以上、好ましくは5〜50モル%含有し、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含有するものであることが望ましい。また必要に応じて上記モノマー(a)や(b)以外のその他モノマーを含有することができる。
【0014】
モノマー混合物中に必要に応じて含有することができる、その他モノマーとしては、例えば、スチレン、及びスチレンにおける芳香環に任意の置換基の付いた化合物、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン等のスチレン系モノマー;メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート等のC1〜24アルキルもしくはシクロアルキルアクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート;3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどのアミノアルキルアクリレート;アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどのアクリルアミド又はその誘導体;アセトアセトキシエチルアクリレート、ダイアセトンアクリルアミドなどのカルボニル基含有アクリレート;3−エチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有アクリレート;AR−200(大八化学社製のリン酸基含有アクリレート)などのリン酸基含有不飽和モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホニックアシッド、スチレンスルホン酸ソーダなどのスルホン酸基含有不飽和モノマー;アクリロニトリル;酢酸ビニル、α位で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル類、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。これらのモノマーは、1種で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0015】
モノマー混合物は、架橋性官能基を有するモノマーを含有すると、得られるエマルションが、これらの官能基と反応性を有する基を持つ硬化剤と反応することができ、硬化性の向上に寄与することができる。
【0016】
上記モノマー混合物のラジカル重合は、付加開裂型の連鎖移動剤である2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレンダイマーとも呼称される、以下、「MSD」と略称することがある)及び必要に応じてラジカル重合開始剤の存在下で、例えば、有機溶剤中での溶液重合法などの方法によって行うことができる。
【0017】
上記MSDの使用量は、特に限定されるものではないが、通常、上記モノマー混合物100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の範囲内であることが適当である。MSDの使用量が多くなるに従い、得られる重合体が低分子量となりやすくなる。
【0018】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物系重合開始剤;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。上記ラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、モノマー混合物100重量部に対して、20重量部以下、好ましくは0.1〜10重量部の範囲内であることが適当である。
【0019】
上記ラジカル重合を有機溶剤中で行う場合に使用される有機溶剤としては、モノマー混合物及び重合によって得られるラジカル重合体(A)を溶解又は分散できるものであれば特に制限なく使用することができる。上記有機溶剤の具体例としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、 sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。なかでも、この後の工程でエマルション重合することから親水性溶剤であることが好適である。これらの有機溶剤は1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。ラジカル重合時において、上記有機溶剤は、モノマー混合物の合計量に対して、通常、200重量%以下となる範囲で使用される。
【0020】
有機溶剤中でモノマー混合物のラジカル重合反応を行う場合、付加開裂型連鎖移動剤であるMSD、ラジカル重合開始剤、モノマー混合物及び有機溶剤を混合し、撹拌しながら加熱してもよいが、反応熱による系の温度上昇を抑えるために以下の(1)、(2)の方法が好適に用いられる。
【0021】
(1)MSDおよび有機溶剤を反応槽に仕込み、60℃〜200℃の温度で撹拌しながら、モノマー混合物とラジカル重合開始剤を所定の時間かけて混合滴下または分離滴下する方法。
【0022】
(2)上記(1)の方法において、MSDの一部または全部をモノマーとともに混合滴下、又は分離滴下する方法。
【0023】
上記重合反応において、重合反応はラジカル重合一般で行われるように窒素やアルゴンなどの不活性ガスを吹き込みながら行うことが好ましい。
【0024】
上記のようにして得られるラジカル重合体(A)は、末端に連鎖移動剤であるMSDに基づく下記式(1)
【0025】
【化1】
【0026】
で示されるエチレン性不飽和基を有しており、また、このラジカル重合体(A)は重量平均分子量が1,500〜150,000、特に2,000〜50,000の範囲内にあることが好適であり、樹脂酸価が20〜500KOHmg/g、特に30〜250KOHmg/gの範囲内にあることが好適である。
【0027】
上記ラジカル重合体(A)は、また、ガラス転移温度が、40℃以上、好ましくは60℃以上であることが好適である。該ガラス転移温度が40℃未満では、粉末化時及び粉末とした後の貯蔵時に粘結して再分散性を失うので好ましくない。
【0028】
本明細書において、重合体のガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出することができる。
【0029】
【0030】
各式中、W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの重量%、T1、T2、・・はそれぞれモノマーのホモポリマ−のTg(゜K)を表わす。なお、T1、T2、・・は、Polymer Hand Book(Scond Edition,J.Brandup・E.H.Immergut 編)による値である。また、モノマーのホモポリマーのTgが明確でない場合のガラス転移温度(℃)は静的ガラス転移温度とし、例えば示差走査熱量計「DSC−50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度でー100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とした。
【0031】
本発明では、上記の通り得られるラジカル重合体(A)の存在下に、さらに前述の説明で列記したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)及びその他モノマーから適宜選択して含まれるモノマー混合物を前述と同様の手法でラジカル重合して得られる、末端にエチレン性不飽和基を有するABブロック体であるマクロモノマーを保護コロイドとして用いることもできる。その際に用いるモノマー混合物中のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)のモル分率は、ラジカル重合体(A)を得る際のモノマー混合物中のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)のモル分率より低いものであっても良い。またマクロモノマーを製造するために使用されるモノマー混合物中には、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)から選ばれる少なくとも1種のモノマーを70モル%以上、好ましくは80モル%以上含有することが望ましい。
【0032】
前記ラジカル重合体(A)とマクロモノマー製造のためのモノマー混合物との配合比率は、特に限定されるものではないが、通常、前者:後者の比で、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の範囲内にあることが好適である。ラジカル重合体(A)の比率が大きくなるに従い低分子量のマクロモノマーが得られ易くなる。
【0033】
このように製造されるマクロモノマーは、前記ラジカル重合体(A)にモノマー混合物のポリマー鎖がブロック状に導入されたものであり、ラジカル重合体(A)のエチレン性不飽和基はほとんど消費されず、得られるマクロモノマーは末端に前記式(1)で表されるエチレン性不飽和基を有する。マクロモノマーは、重量平均分子量が1,500〜150,000、特に2,000〜50,000の範囲内にあることが好適であり、樹脂酸価が20〜500KOHmg/g、特に30〜250KOHmg/gの範囲内にあることが好適である。
【0034】
本発明では、上記で得られたラジカル重合体(A)を保護コロイドとして、或いはラジカル重合体(A)に基づくマクロモノマーを保護コロイドとして、この存在下、水性媒体中にて重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合するものである。
【0035】
水性媒体は、水、又は有機溶剤と水との混和溶液である。混和溶液における水の量は、50重量%以上、特に70重量%以上であることが好適である。混和溶液における有機溶剤としては、水と均一に混合できるものであり、例えば、前記ラジカル重合体(A)の製造において溶液重合の際に使用可能な有機溶剤のうち、アルコール系、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤などを好適に使用することができる。ラジカル重合体(A)やマクロモノマーを、溶液重合で得られたラジカル重合体(A)やマクロモノマーの有機溶剤溶液の形態で使用する場合には、この溶液に含まれる有機溶剤が系中に持ち込まれ、この有機溶剤が水との混和溶液を構成する。
【0036】
乳化重合を行うに際して、ラジカル重合体(A)やマクロモノマーは有機溶剤溶液の形態で使用することができるが、公知の脱溶剤法や乾燥法により有機溶剤を除去して固形樹脂として使用することもできる。また、ラジカル重合体(A)やマクロモノマーは、中和により水分散性を付与、向上して、乳化重合に供することができる。中和に用いられる中和剤としては、アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など塩基性化合物を挙げることができる。中和当量はラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー中のカルボキシル基に対して、通常、1.2以下、特に0.2〜1.0であることが好ましい。ここで、カルボン酸無水基1個はカルボキシル基2個として計算する。
【0037】
乳化重合される重合性不飽和モノマー(c)としては、ラジカル重合性を有するものであれば種類に制限なく使用でき、得られるエマルションに望まれる性能に応じて適宜選択することができる。具体的には、前記ラジカル重合体(A)を得るためのモノマー混合物の成分として使用されるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)、その他モノマーの説明で列記したモノマーから適宜選択して、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0038】
上記重合性不飽和モノマー(c)は、その成分の少なくとも一部として架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーを含有することが、得られる被膜の耐水性の点から望ましい。特に架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーが、ダイアセトンアクリルアミドやダイアセトンメタクリルアミドなどのカルボニル基含有重合性不飽和モノマーである場合には常温での硬化性に優れるので望ましい。
【0039】
上記重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合する際には、保護コロイドとして前記ラジカル重合体(A)やマクロモノマーを利用し、必要に応じて分散安定性向上のため、その他のアニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤を併用してもよい。上記のアニオン性乳化剤は、特に限定されるものではなく、例えばスルホン酸基、リン酸基等を有する乳化剤を用いることができる。また、ノニオン性乳化剤としては、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型、アマイド系等のノニオン性乳化剤を用いることができ、一般にはHLBが5〜20のものが使用される。カチオン性乳化剤としてはアンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などのカチオン性基を有するものを使用することができる。これらのアニオン性、カチオン性及びノニオン性の乳化剤は、ラジカル反応性不飽和基を有する反応性乳化剤であってもよい。
【0040】
乳化重合する際の、ラジカル重合体(A)或いはマクロモノマーと、重合性不飽和モノマー(c)との配合比率は、特に限定されるものではないが、通常、前者/後者の固形分比で2/98〜40/60、特に5/95〜20/80の範囲内にあることが好適である。ラジカル重合体(A)の配合比率が大きくなるに従い低分子量のエマルション樹脂が得られ易くなる。
【0041】
得られるエマルションの固形分濃度は10〜80重量%の範囲にあることがエマルション重合の際のエマルションの安定性等の点から好ましい。エマルションの粒子径は一般に1μm以下程度であることが好ましく、粒子径は使用するラジカル重合体(A)やマクロモノマー、乳化剤の組成や量によって調整することができる。
【0042】
乳化重合方法としては、(1)ラジカル重合体(A)或いはマクロモノマーを乳化重合される重合性不飽和モノマー(c)に溶解させて、水性媒体(必要に応じて乳化剤が分散されていてもよい)中に滴下して乳化重合を行う方法、(2)水性媒体中にラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー及び必要に応じて乳化剤を分散しておき、この中に重合性不飽和モノマー(c)を滴下して乳化重合を行う方法などを好適に用いることができる。また(3)水性媒体中にラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー、重合性不飽和モノマー(c)及び必要に応じて乳化剤を仕込み攪拌してエマルション化し、乳化重合を行う方法、(4)水性媒体、ラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー、重合性不飽和モノマー(c)及び必要に応じて乳化剤を含有するプレエマルションを作成し水性媒体中に滴下する方法及び(5)水性媒体、重合性不飽和モノマー(c)及び乳化剤を含有するプレエマルションを作成しラジカル重合体(A)或いはマクロモノマーが分散された水性媒体中に滴下する方法なども挙げることができる。上記乳化重合において、レドックス系重合開始剤や水溶性の過酸化物、アゾ系開始剤などの従来公知の重合開始剤を使用することができる。また、乳化重合反応温度は200℃以下が好ましい。
【0043】
乳化重合において、重合性不飽和モノマー(c)は、必要に応じて組成の異なる成分に分けて仕込んだり、傾斜配合によりフィードして配合してもよい。
【0044】
本発明の樹脂粉末は、上記乳化重合によって得られるエマルションを乾燥粉末化することにより製造される。乾燥樹脂粉末化方法は種々あり、例えば噴霧乾燥法、凍結乾燥法、減圧乾燥法等が挙げられ、特に噴霧乾燥が好適である。
【0045】
本発明の樹脂粉末は、例えば、水性塗料や水性インキ用のビヒクル用途、PET、ナイロン、PEN、PVA、PP、PE、ST等のフィルム表面処理剤用途、繊維、紙、プラスチック、建材、壁紙、断熱材等の接着剤用途、セメント・モルタル改質剤用途、人工皮革、繊維仕上、シートやカーペット等のバックコート剤といった繊維加工剤用途、壁紙等のプラスチゾル用途等に使用することができ、特に塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として好適に使用される。
【0046】
本発明の樹脂粉末は、必要に応じて各種添加剤を配合して粉末組成物とすることができる。
【0047】
まず、樹脂粉末に架橋性官能基が導入されている場合には、これと反応する硬化剤を添加することができる。例えば保護コロイド部分にアセトアセチル基が導入されている場合や、エマルション粒子部分にカルボニル基が導入されている場合には、硬化剤として、粉末状ヒドラジン系化合物を含有することができる。
【0048】
粉末状ヒドラジン系化合物としては、例えばカルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、「アミキュアVDH」(味の素社製、1,3−ビス( ヒドラジノカルボノエチル )−5−イソプロピルヒダントイン)などが挙げられる。これらは乾燥粉末化後の本発明の樹脂粉末に添加し均一に混合することが望ましい。
【0049】
また必要に応じて、貯蔵安定性を向上せしめるため、抗粘結剤を添加することができる。樹脂粉末への添加方法としては、乾燥粉末化後の樹脂粉末に添加し均一に混合する方法、樹脂エマルションを乾燥する際に抗粘結剤を同時に噴霧する方法の何れも採りうるが、均一混合性と選択的な表面付着性が得られより少量で粘結防止効果が得られることから後者の方法が好ましい。
【0050】
上記抗粘結剤としては、微粒子の無機粉末が好ましく、例えば、炭酸カルシウム、クレー、無水珪酸、珪酸アルミニウム、シリカ、タルク、アルミナホワイト等が使用され得る。抗粘結剤の量は特に限定されないが、樹脂粉末100重量部に対し20重量部以下、好ましくは0.1〜20重量部の範囲が適当である。
【0051】
さらに各種用途に応じた添加剤としては、例えば、接着剤用途における粘性改良剤、保水剤、粘着付与剤、増粘剤等、塗料用バインダーや水性インキ用バインダー用途における粘性改良剤、増粘剤、顔料分散剤、安定剤、消泡剤等、繊維仕上用途におけるレベリング剤、帯電防止剤、繊維柔軟剤、増粘剤、消泡剤等、セメントやモルタル改質剤用途におけるAE剤、減水剤、保水剤、増粘剤、流動化剤、防水剤等が挙げられる。これらの添加剤はその添加剤の形態により、乾燥前の樹脂エマルションに添加しても良いし、乾燥する際に同時に噴霧する方法、あるいは乾燥後の樹脂粉末に添加する方法も可能である。
【0052】
本発明の粉末組成物は、例えば、水性塗料や水性インキ用のビヒクル用途、PET、ナイロン、PEN、PVA、PP、PE、ST等のフィルム表面処理剤用途、繊維、紙、プラスチック、建材、壁紙、断熱材等の接着剤用途、セメント・モルタル改質剤用途、人工皮革、繊維仕上、シートやカーペット等のバックコート剤といった繊維加工剤用途、壁紙等のプラスチゾル用途等に使用することができ、特に塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として好適に使用される。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0054】
ラジカル重合体(A)の製造
製造例1
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル471.2部および2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン118部を仕込み、160℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート781部、メタクリル酸344部およびジターシャリアミルパーオキサイド87.2部の混合液を4時間かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌し、冷却して固形分72%の樹脂(A−1)溶液を得た。
【0055】
製造例2
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル790部および製造例1の固形分72%のA−1樹脂溶液180部を仕込み、120℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート702.9部、メタクリル酸309.6部および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)12.2部の混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した後、冷却して固形分57%の樹脂(A−2)溶液を得た。
【0056】
製造例3
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル485.2部および2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン118部を仕込み、160℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート710部、メタクリル酸344部、アセトアセトキシメタクリレート71.0部およびジターシャリアミルパーオキサイド87.2部の混合液を4時間かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌し、冷却して固形分72%の樹脂(A−3)溶液を得た。
【0057】
製造例4(比較用)
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル381.6部を仕込み、120℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート652.3部、メタクリル酸309.6部、メルカプトエタノール50.6部および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)12.2部の混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した後、冷却して固形分72%の樹脂(A−4)溶液を得た。
【0058】
製造例5(比較用)
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル471.2部および2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン118部を仕込み、160℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中に2−エチルへキシルメタクリレート781部、メタクリル酸344部およびジターシャリアミルパーオキサイド87.2部の混合液を4時間かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌し、冷却して固形分72%の樹脂(A−5)溶液を得た。
【0059】
上記製造例1〜5で得た各樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度を下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
エマルションの製造
製造例6
フラスコに、製造例1で得た固形分72%の樹脂(A−1)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−1)を得た。
【0062】
製造例7
フラスコに、製造例1で得た固形分72%の樹脂(A−1)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート135部、ダイアセトンアクリルアミド15部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−2)を得た。
【0063】
製造例8
フラスコに、製造例2で得た固形分57%の樹脂(A−2)溶液54.3部、脱イオン水213.7部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート135部、ダイアセトンアクリルアミド15部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−3)を得た。
【0064】
製造例9
フラスコに、製造例3で得た固形分72%の樹脂(A−3)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート135部、ダイアセトンアクリルアミド15部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−4)を得た。
【0065】
製造例10(比較用)
フラスコに、製造例4で得た固形分72%の樹脂(A−4)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−5)を得た。
【0066】
製造例11(比較用)
フラスコに、製造例5で得た固形分72%の樹脂(A−5)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−6)を得た。
【0067】
製造例12(比較用)
フラスコに、ポリビニルアルコール(ケン化度99%、重合度2000)を30部、脱イオン水260部、過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下しようとしたところ、滴下量が約半量となった時点で凝集が起こり、エマルションは得られなかった。
【0068】
樹脂粉末の作成
実施例1〜4及び比較例1、2
上記各製造例で得たエマルション(B−1)〜(B−6)を、夫々、140℃の熱風中に噴霧して乾燥し、各樹脂粉末を得た。
【0069】
得られた各樹脂粉末について、下記に示す再分散性と被膜の耐水性の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0070】
(*1)再分散性:樹脂粉末を水に添加し、攪拌して再分散液の状態を観察した。
◎:短時間(3分間)で白色の均一な乳化液が得られる
○:充分な攪拌の後(20分間)白色の均一な乳化液が得られる
×:充分な攪拌の後(20分間)も白色の均一な乳化液が得られない
【0071】
(*2)被膜の耐水性:再分散液を乾燥させ被膜を作り、水中に浸漬して被膜の状態を観察した。
◎:再分散(溶解)しない
○:若干再分散(溶解)する
×:再分散(溶解)する
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、用途に応じた分子設計が容易であり、水への再分散性に優れ、且つ得られるエマルションによる被膜の耐水性等に優れる再分散性樹脂粉末が得られる。従って本発明の樹脂粉末は、印刷インキ及び塗料への使用だけでなく、接着剤、セメント・モルタル改質剤など各種用途への使用が可能である。
【0073】
【表2】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水への再分散性に優れ、且つ得られるエマルションによる被膜の耐水性等に優れる再分散性樹脂粉末、これを含む粉末組成物及びこれらの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保全の観点から、コーティング材料や各種添加剤等に用いられる合成樹脂は、無公害、省資源で作業性等の観点から溶剤系樹脂より水分散型樹脂や水溶性樹脂等の合成樹脂水分散体に移行しつつある。この合成樹脂水分散体のうち、水を加えて攪拌混合することにより、容易に水に分散する粉末樹脂は再分散性樹脂粉末あるいは易水分散性樹脂粉末と呼ばれ、輸送や保管、廃棄処理等の容易さから、従来より土木用、紙用、接着剤用又は塗料用等のバインダー、セメントやモルタルへの混入剤として適用されている。
【0003】
従来、上記樹脂粉末は、合成樹脂エマルションを噴霧乾燥する等の手段によって製造されており、この樹脂粉末の製造に使用される合成樹脂エマルションには、通常、再分散性確保の観点から乳化重合時の保護コロイドにポリビニルアルコールやセルロース誘導体等の水溶性高分子を使用するため、得られる被膜の耐水性に劣る欠点があった。そこで、この保護コロイドとしてアセトアセチル化ポリビニルアルコールや、重合性乳化剤による親水性重合物等を用いるなどの手法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−53730号公報
【特許文献2】
特開平7−157565号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら保護コロイドとしてポリビニルアルコールを用いると、乳化重合時のモノマー組成が限定されたり、上記の如き親水性重合物では不飽和基の導入位置や分子量などの制御が困難であり、用途に応じた分子設計ができなかった。
【0006】
本発明の目的は、用途に応じた分子設計が容易であり、水への再分散性に優れ、且つ得られるエマルションによる被膜の耐水性等に優れる再分散性樹脂粉末を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
1.(a)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び(b)メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマーを含有するモノマー混合物を、2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテンの存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体(A)を保護コロイドとし、この存在下で、重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合して得られるエマルションを粉末状とすることを特徴とする再分散性樹脂粉末、
2.メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)が、その成分の少なくとも一部として架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーを含有する1項記載の再分散性樹脂粉末、
3.架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーが、アセトアセトキシエチルメタクリレートである2項記載の再分散性樹脂粉末、
4.ラジカル重合体(A)のガラス転移温度が、40℃以上である1項記載の再分散性樹脂粉末、
5.ラジカル重合体(A)の重量平均分子量が、1,500〜150,000である1項記載の再分散性樹脂粉末、
6.重合性不飽和モノマー(c)が、その成分の少なくとも一部としてカルボニル基含有重合性不飽和モノマーを含有する1項記載の再分散性樹脂粉末、
7.ラジカル重合体(A)と重合性不飽和モノマー(c)との使用重量比が、2/98〜40/60の範囲内である1項記載の再分散性樹脂粉末、
8.1ないし7のいずれか1項記載の再分散性樹脂粉末を含有する粉末組成物、
9.さらに粉末状ヒドラジン系化合物を含有する8項記載の粉末組成物、
10.塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として使用される1ないし7のいずれか1項記載の再分散性樹脂粉末の使用法、
11.塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として使用される8又は9項記載の粉末組成物の使用法、
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)及びメタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)を含有するモノマー混合物を、2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテンの存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体(A)を保護コロイドとして用いる。本明細書において、カルボキシル基とは「カルボン酸無水基」も包含するものとする。
【0009】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸無水物、マレイン酸無水物などを挙げることができ、なかでもアクリル酸、メタクリル酸を好適に使用することができる。
【0010】
メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)(以下、「メタクリロイルモノマー」と略称することがある)は、1分子中に1個のメタクリロイル基を有するモノマーであり、その具体例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等のC1〜24アルキルもしくはシクロアルキルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルメタクリレート;3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリレート;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどのアミノアルキルメタクリレート;メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドブチルエーテルなどのメタクリルアミド又はその誘導体;3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有メタクリレート;γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有メタクリレート;サイラプレンFM−0711(チッソ(株)製)などのジメチルポリシロキサン含有メタクリレート;ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、パーフルオロオクチルメチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレートなどの含フッ素メタクリレート;カヤマーPM−1、カヤマーPM−2(以上、いずれも日本化薬社製のリン酸基含有メタクリレート)、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどのリン酸基含有メタクリレート;2−メタクリロイルオキシエチルスルホニックアシッド・ナトリウム塩などのスルホン酸基含有メタクリレート;アセトアセトキシエチルメタクリレート、ダイアセトンメタクリルアミドなどのカルボニル基含有メタクリレート;メタクリロニトリル、及びメタクリル酸などを挙げることができる。これらのメタクリロイルモノマーは、1種で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0011】
メタクリロイルモノマー(b)としてメタクリル酸を例示しているが、本明細書において、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)としてメタクリル酸などのカルボキシル基とメタクリロイル基とを有するモノマーを使用する場合には、モノマー混合物におけるメタクリロイルモノマー(b)の量は、メタクリル酸などのカルボキシル基とメタクリロイル基とを有するモノマーを包含するメタクリロイルモノマーの量を意味する。
【0012】
本発明ではメタクリロイルモノマー(b)が、その成分の少なくとも一部として架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーを含有することが、得られる被膜の耐水性の点から望ましい。特に架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーが、アセトアセトキシエチルメタクリレートである場合には常温での硬化性に優れるので望ましい。
【0013】
モノマー混合物は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)を4モル%以上、好ましくは5〜50モル%含有し、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含有するものであることが望ましい。また必要に応じて上記モノマー(a)や(b)以外のその他モノマーを含有することができる。
【0014】
モノマー混合物中に必要に応じて含有することができる、その他モノマーとしては、例えば、スチレン、及びスチレンにおける芳香環に任意の置換基の付いた化合物、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン等のスチレン系モノマー;メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート等のC1〜24アルキルもしくはシクロアルキルアクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート;3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどのアミノアルキルアクリレート;アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどのアクリルアミド又はその誘導体;アセトアセトキシエチルアクリレート、ダイアセトンアクリルアミドなどのカルボニル基含有アクリレート;3−エチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有アクリレート;AR−200(大八化学社製のリン酸基含有アクリレート)などのリン酸基含有不飽和モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホニックアシッド、スチレンスルホン酸ソーダなどのスルホン酸基含有不飽和モノマー;アクリロニトリル;酢酸ビニル、α位で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル類、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。これらのモノマーは、1種で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0015】
モノマー混合物は、架橋性官能基を有するモノマーを含有すると、得られるエマルションが、これらの官能基と反応性を有する基を持つ硬化剤と反応することができ、硬化性の向上に寄与することができる。
【0016】
上記モノマー混合物のラジカル重合は、付加開裂型の連鎖移動剤である2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレンダイマーとも呼称される、以下、「MSD」と略称することがある)及び必要に応じてラジカル重合開始剤の存在下で、例えば、有機溶剤中での溶液重合法などの方法によって行うことができる。
【0017】
上記MSDの使用量は、特に限定されるものではないが、通常、上記モノマー混合物100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の範囲内であることが適当である。MSDの使用量が多くなるに従い、得られる重合体が低分子量となりやすくなる。
【0018】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物系重合開始剤;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。上記ラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、モノマー混合物100重量部に対して、20重量部以下、好ましくは0.1〜10重量部の範囲内であることが適当である。
【0019】
上記ラジカル重合を有機溶剤中で行う場合に使用される有機溶剤としては、モノマー混合物及び重合によって得られるラジカル重合体(A)を溶解又は分散できるものであれば特に制限なく使用することができる。上記有機溶剤の具体例としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、 sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。なかでも、この後の工程でエマルション重合することから親水性溶剤であることが好適である。これらの有機溶剤は1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。ラジカル重合時において、上記有機溶剤は、モノマー混合物の合計量に対して、通常、200重量%以下となる範囲で使用される。
【0020】
有機溶剤中でモノマー混合物のラジカル重合反応を行う場合、付加開裂型連鎖移動剤であるMSD、ラジカル重合開始剤、モノマー混合物及び有機溶剤を混合し、撹拌しながら加熱してもよいが、反応熱による系の温度上昇を抑えるために以下の(1)、(2)の方法が好適に用いられる。
【0021】
(1)MSDおよび有機溶剤を反応槽に仕込み、60℃〜200℃の温度で撹拌しながら、モノマー混合物とラジカル重合開始剤を所定の時間かけて混合滴下または分離滴下する方法。
【0022】
(2)上記(1)の方法において、MSDの一部または全部をモノマーとともに混合滴下、又は分離滴下する方法。
【0023】
上記重合反応において、重合反応はラジカル重合一般で行われるように窒素やアルゴンなどの不活性ガスを吹き込みながら行うことが好ましい。
【0024】
上記のようにして得られるラジカル重合体(A)は、末端に連鎖移動剤であるMSDに基づく下記式(1)
【0025】
【化1】
【0026】
で示されるエチレン性不飽和基を有しており、また、このラジカル重合体(A)は重量平均分子量が1,500〜150,000、特に2,000〜50,000の範囲内にあることが好適であり、樹脂酸価が20〜500KOHmg/g、特に30〜250KOHmg/gの範囲内にあることが好適である。
【0027】
上記ラジカル重合体(A)は、また、ガラス転移温度が、40℃以上、好ましくは60℃以上であることが好適である。該ガラス転移温度が40℃未満では、粉末化時及び粉末とした後の貯蔵時に粘結して再分散性を失うので好ましくない。
【0028】
本明細書において、重合体のガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出することができる。
【0029】
【0030】
各式中、W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの重量%、T1、T2、・・はそれぞれモノマーのホモポリマ−のTg(゜K)を表わす。なお、T1、T2、・・は、Polymer Hand Book(Scond Edition,J.Brandup・E.H.Immergut 編)による値である。また、モノマーのホモポリマーのTgが明確でない場合のガラス転移温度(℃)は静的ガラス転移温度とし、例えば示差走査熱量計「DSC−50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度でー100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とした。
【0031】
本発明では、上記の通り得られるラジカル重合体(A)の存在下に、さらに前述の説明で列記したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)及びその他モノマーから適宜選択して含まれるモノマー混合物を前述と同様の手法でラジカル重合して得られる、末端にエチレン性不飽和基を有するABブロック体であるマクロモノマーを保護コロイドとして用いることもできる。その際に用いるモノマー混合物中のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)のモル分率は、ラジカル重合体(A)を得る際のモノマー混合物中のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)のモル分率より低いものであっても良い。またマクロモノマーを製造するために使用されるモノマー混合物中には、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)から選ばれる少なくとも1種のモノマーを70モル%以上、好ましくは80モル%以上含有することが望ましい。
【0032】
前記ラジカル重合体(A)とマクロモノマー製造のためのモノマー混合物との配合比率は、特に限定されるものではないが、通常、前者:後者の比で、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の範囲内にあることが好適である。ラジカル重合体(A)の比率が大きくなるに従い低分子量のマクロモノマーが得られ易くなる。
【0033】
このように製造されるマクロモノマーは、前記ラジカル重合体(A)にモノマー混合物のポリマー鎖がブロック状に導入されたものであり、ラジカル重合体(A)のエチレン性不飽和基はほとんど消費されず、得られるマクロモノマーは末端に前記式(1)で表されるエチレン性不飽和基を有する。マクロモノマーは、重量平均分子量が1,500〜150,000、特に2,000〜50,000の範囲内にあることが好適であり、樹脂酸価が20〜500KOHmg/g、特に30〜250KOHmg/gの範囲内にあることが好適である。
【0034】
本発明では、上記で得られたラジカル重合体(A)を保護コロイドとして、或いはラジカル重合体(A)に基づくマクロモノマーを保護コロイドとして、この存在下、水性媒体中にて重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合するものである。
【0035】
水性媒体は、水、又は有機溶剤と水との混和溶液である。混和溶液における水の量は、50重量%以上、特に70重量%以上であることが好適である。混和溶液における有機溶剤としては、水と均一に混合できるものであり、例えば、前記ラジカル重合体(A)の製造において溶液重合の際に使用可能な有機溶剤のうち、アルコール系、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤などを好適に使用することができる。ラジカル重合体(A)やマクロモノマーを、溶液重合で得られたラジカル重合体(A)やマクロモノマーの有機溶剤溶液の形態で使用する場合には、この溶液に含まれる有機溶剤が系中に持ち込まれ、この有機溶剤が水との混和溶液を構成する。
【0036】
乳化重合を行うに際して、ラジカル重合体(A)やマクロモノマーは有機溶剤溶液の形態で使用することができるが、公知の脱溶剤法や乾燥法により有機溶剤を除去して固形樹脂として使用することもできる。また、ラジカル重合体(A)やマクロモノマーは、中和により水分散性を付与、向上して、乳化重合に供することができる。中和に用いられる中和剤としては、アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など塩基性化合物を挙げることができる。中和当量はラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー中のカルボキシル基に対して、通常、1.2以下、特に0.2〜1.0であることが好ましい。ここで、カルボン酸無水基1個はカルボキシル基2個として計算する。
【0037】
乳化重合される重合性不飽和モノマー(c)としては、ラジカル重合性を有するものであれば種類に制限なく使用でき、得られるエマルションに望まれる性能に応じて適宜選択することができる。具体的には、前記ラジカル重合体(A)を得るためのモノマー混合物の成分として使用されるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)、その他モノマーの説明で列記したモノマーから適宜選択して、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0038】
上記重合性不飽和モノマー(c)は、その成分の少なくとも一部として架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーを含有することが、得られる被膜の耐水性の点から望ましい。特に架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーが、ダイアセトンアクリルアミドやダイアセトンメタクリルアミドなどのカルボニル基含有重合性不飽和モノマーである場合には常温での硬化性に優れるので望ましい。
【0039】
上記重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合する際には、保護コロイドとして前記ラジカル重合体(A)やマクロモノマーを利用し、必要に応じて分散安定性向上のため、その他のアニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤を併用してもよい。上記のアニオン性乳化剤は、特に限定されるものではなく、例えばスルホン酸基、リン酸基等を有する乳化剤を用いることができる。また、ノニオン性乳化剤としては、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型、アマイド系等のノニオン性乳化剤を用いることができ、一般にはHLBが5〜20のものが使用される。カチオン性乳化剤としてはアンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などのカチオン性基を有するものを使用することができる。これらのアニオン性、カチオン性及びノニオン性の乳化剤は、ラジカル反応性不飽和基を有する反応性乳化剤であってもよい。
【0040】
乳化重合する際の、ラジカル重合体(A)或いはマクロモノマーと、重合性不飽和モノマー(c)との配合比率は、特に限定されるものではないが、通常、前者/後者の固形分比で2/98〜40/60、特に5/95〜20/80の範囲内にあることが好適である。ラジカル重合体(A)の配合比率が大きくなるに従い低分子量のエマルション樹脂が得られ易くなる。
【0041】
得られるエマルションの固形分濃度は10〜80重量%の範囲にあることがエマルション重合の際のエマルションの安定性等の点から好ましい。エマルションの粒子径は一般に1μm以下程度であることが好ましく、粒子径は使用するラジカル重合体(A)やマクロモノマー、乳化剤の組成や量によって調整することができる。
【0042】
乳化重合方法としては、(1)ラジカル重合体(A)或いはマクロモノマーを乳化重合される重合性不飽和モノマー(c)に溶解させて、水性媒体(必要に応じて乳化剤が分散されていてもよい)中に滴下して乳化重合を行う方法、(2)水性媒体中にラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー及び必要に応じて乳化剤を分散しておき、この中に重合性不飽和モノマー(c)を滴下して乳化重合を行う方法などを好適に用いることができる。また(3)水性媒体中にラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー、重合性不飽和モノマー(c)及び必要に応じて乳化剤を仕込み攪拌してエマルション化し、乳化重合を行う方法、(4)水性媒体、ラジカル重合体(A)或いはマクロモノマー、重合性不飽和モノマー(c)及び必要に応じて乳化剤を含有するプレエマルションを作成し水性媒体中に滴下する方法及び(5)水性媒体、重合性不飽和モノマー(c)及び乳化剤を含有するプレエマルションを作成しラジカル重合体(A)或いはマクロモノマーが分散された水性媒体中に滴下する方法なども挙げることができる。上記乳化重合において、レドックス系重合開始剤や水溶性の過酸化物、アゾ系開始剤などの従来公知の重合開始剤を使用することができる。また、乳化重合反応温度は200℃以下が好ましい。
【0043】
乳化重合において、重合性不飽和モノマー(c)は、必要に応じて組成の異なる成分に分けて仕込んだり、傾斜配合によりフィードして配合してもよい。
【0044】
本発明の樹脂粉末は、上記乳化重合によって得られるエマルションを乾燥粉末化することにより製造される。乾燥樹脂粉末化方法は種々あり、例えば噴霧乾燥法、凍結乾燥法、減圧乾燥法等が挙げられ、特に噴霧乾燥が好適である。
【0045】
本発明の樹脂粉末は、例えば、水性塗料や水性インキ用のビヒクル用途、PET、ナイロン、PEN、PVA、PP、PE、ST等のフィルム表面処理剤用途、繊維、紙、プラスチック、建材、壁紙、断熱材等の接着剤用途、セメント・モルタル改質剤用途、人工皮革、繊維仕上、シートやカーペット等のバックコート剤といった繊維加工剤用途、壁紙等のプラスチゾル用途等に使用することができ、特に塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として好適に使用される。
【0046】
本発明の樹脂粉末は、必要に応じて各種添加剤を配合して粉末組成物とすることができる。
【0047】
まず、樹脂粉末に架橋性官能基が導入されている場合には、これと反応する硬化剤を添加することができる。例えば保護コロイド部分にアセトアセチル基が導入されている場合や、エマルション粒子部分にカルボニル基が導入されている場合には、硬化剤として、粉末状ヒドラジン系化合物を含有することができる。
【0048】
粉末状ヒドラジン系化合物としては、例えばカルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、「アミキュアVDH」(味の素社製、1,3−ビス( ヒドラジノカルボノエチル )−5−イソプロピルヒダントイン)などが挙げられる。これらは乾燥粉末化後の本発明の樹脂粉末に添加し均一に混合することが望ましい。
【0049】
また必要に応じて、貯蔵安定性を向上せしめるため、抗粘結剤を添加することができる。樹脂粉末への添加方法としては、乾燥粉末化後の樹脂粉末に添加し均一に混合する方法、樹脂エマルションを乾燥する際に抗粘結剤を同時に噴霧する方法の何れも採りうるが、均一混合性と選択的な表面付着性が得られより少量で粘結防止効果が得られることから後者の方法が好ましい。
【0050】
上記抗粘結剤としては、微粒子の無機粉末が好ましく、例えば、炭酸カルシウム、クレー、無水珪酸、珪酸アルミニウム、シリカ、タルク、アルミナホワイト等が使用され得る。抗粘結剤の量は特に限定されないが、樹脂粉末100重量部に対し20重量部以下、好ましくは0.1〜20重量部の範囲が適当である。
【0051】
さらに各種用途に応じた添加剤としては、例えば、接着剤用途における粘性改良剤、保水剤、粘着付与剤、増粘剤等、塗料用バインダーや水性インキ用バインダー用途における粘性改良剤、増粘剤、顔料分散剤、安定剤、消泡剤等、繊維仕上用途におけるレベリング剤、帯電防止剤、繊維柔軟剤、増粘剤、消泡剤等、セメントやモルタル改質剤用途におけるAE剤、減水剤、保水剤、増粘剤、流動化剤、防水剤等が挙げられる。これらの添加剤はその添加剤の形態により、乾燥前の樹脂エマルションに添加しても良いし、乾燥する際に同時に噴霧する方法、あるいは乾燥後の樹脂粉末に添加する方法も可能である。
【0052】
本発明の粉末組成物は、例えば、水性塗料や水性インキ用のビヒクル用途、PET、ナイロン、PEN、PVA、PP、PE、ST等のフィルム表面処理剤用途、繊維、紙、プラスチック、建材、壁紙、断熱材等の接着剤用途、セメント・モルタル改質剤用途、人工皮革、繊維仕上、シートやカーペット等のバックコート剤といった繊維加工剤用途、壁紙等のプラスチゾル用途等に使用することができ、特に塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として好適に使用される。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0054】
ラジカル重合体(A)の製造
製造例1
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル471.2部および2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン118部を仕込み、160℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート781部、メタクリル酸344部およびジターシャリアミルパーオキサイド87.2部の混合液を4時間かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌し、冷却して固形分72%の樹脂(A−1)溶液を得た。
【0055】
製造例2
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル790部および製造例1の固形分72%のA−1樹脂溶液180部を仕込み、120℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート702.9部、メタクリル酸309.6部および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)12.2部の混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した後、冷却して固形分57%の樹脂(A−2)溶液を得た。
【0056】
製造例3
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル485.2部および2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン118部を仕込み、160℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート710部、メタクリル酸344部、アセトアセトキシメタクリレート71.0部およびジターシャリアミルパーオキサイド87.2部の混合液を4時間かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌し、冷却して固形分72%の樹脂(A−3)溶液を得た。
【0057】
製造例4(比較用)
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル381.6部を仕込み、120℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中にイソブチルメタクリレート652.3部、メタクリル酸309.6部、メルカプトエタノール50.6部および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)12.2部の混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した後、冷却して固形分72%の樹脂(A−4)溶液を得た。
【0058】
製造例5(比較用)
フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル471.2部および2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン118部を仕込み、160℃で窒素を吹き込みながら攪拌し、この中に2−エチルへキシルメタクリレート781部、メタクリル酸344部およびジターシャリアミルパーオキサイド87.2部の混合液を4時間かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌し、冷却して固形分72%の樹脂(A−5)溶液を得た。
【0059】
上記製造例1〜5で得た各樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度を下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
エマルションの製造
製造例6
フラスコに、製造例1で得た固形分72%の樹脂(A−1)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−1)を得た。
【0062】
製造例7
フラスコに、製造例1で得た固形分72%の樹脂(A−1)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート135部、ダイアセトンアクリルアミド15部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−2)を得た。
【0063】
製造例8
フラスコに、製造例2で得た固形分57%の樹脂(A−2)溶液54.3部、脱イオン水213.7部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート135部、ダイアセトンアクリルアミド15部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−3)を得た。
【0064】
製造例9
フラスコに、製造例3で得た固形分72%の樹脂(A−3)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート135部、ダイアセトンアクリルアミド15部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−4)を得た。
【0065】
製造例10(比較用)
フラスコに、製造例4で得た固形分72%の樹脂(A−4)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−5)を得た。
【0066】
製造例11(比較用)
フラスコに、製造例5で得た固形分72%の樹脂(A−5)溶液43部、脱イオン水225部、20%水酸化ナトリウム水溶液21部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下した後、同温度で2時間攪拌し、冷却して固形分40%のエマルション(B−6)を得た。
【0067】
製造例12(比較用)
フラスコに、ポリビニルアルコール(ケン化度99%、重合度2000)を30部、脱イオン水260部、過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、窒素を吹き込みながら82℃で攪拌し、その中にイソボルニルメタクリレート150部、n−ブチルアクリレート150部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤社製のアニオン系乳化剤、固形分30%)20部、過硫酸アンモニウム0.6部および脱イオン水230部の混合物を機械的に強制分散してなるプレエマルションを4時間かけて滴下しようとしたところ、滴下量が約半量となった時点で凝集が起こり、エマルションは得られなかった。
【0068】
樹脂粉末の作成
実施例1〜4及び比較例1、2
上記各製造例で得たエマルション(B−1)〜(B−6)を、夫々、140℃の熱風中に噴霧して乾燥し、各樹脂粉末を得た。
【0069】
得られた各樹脂粉末について、下記に示す再分散性と被膜の耐水性の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0070】
(*1)再分散性:樹脂粉末を水に添加し、攪拌して再分散液の状態を観察した。
◎:短時間(3分間)で白色の均一な乳化液が得られる
○:充分な攪拌の後(20分間)白色の均一な乳化液が得られる
×:充分な攪拌の後(20分間)も白色の均一な乳化液が得られない
【0071】
(*2)被膜の耐水性:再分散液を乾燥させ被膜を作り、水中に浸漬して被膜の状態を観察した。
◎:再分散(溶解)しない
○:若干再分散(溶解)する
×:再分散(溶解)する
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、用途に応じた分子設計が容易であり、水への再分散性に優れ、且つ得られるエマルションによる被膜の耐水性等に優れる再分散性樹脂粉末が得られる。従って本発明の樹脂粉末は、印刷インキ及び塗料への使用だけでなく、接着剤、セメント・モルタル改質剤など各種用途への使用が可能である。
【0073】
【表2】
Claims (11)
- (a)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び(b)メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマーを含有するモノマー混合物を、2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテンの存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体(A)を保護コロイドとし、この存在下で、重合性不飽和モノマー(c)を乳化重合して得られるエマルションを粉末状とすることを特徴とする再分散性樹脂粉末。
- メタクリロイル基含有重合性不飽和モノマー(b)が、その成分の少なくとも一部として架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーを含有する請求項1記載の再分散性樹脂粉末。
- 架橋性官能基含有重合性不飽和モノマーが、アセトアセトキシエチルメタクリレートである請求項2記載の再分散性樹脂粉末。
- ラジカル重合体(A)のガラス転移温度が、40℃以上である請求項1記載の再分散性樹脂粉末。
- ラジカル重合体(A)の重量平均分子量が、1,500〜150,000である請求項1記載の再分散性樹脂粉末。
- 重合性不飽和モノマー(c)が、その成分の少なくとも一部としてカルボニル基含有重合性不飽和モノマーを含有する請求項1記載の再分散性樹脂粉末。
- ラジカル重合体(A)と重合性不飽和モノマー(c)との使用重量比が、2/98〜40/60の範囲内である請求項1記載の再分散性樹脂粉末。
- 請求項1ないし7のいずれか1項記載の再分散性樹脂粉末を含有する粉末組成物。
- さらに粉末状ヒドラジン系化合物を含有する請求項8記載の粉末組成物。
- 塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として使用される請求項1ないし7のいずれか1項記載の再分散性樹脂粉末の使用法。
- 塗料、インキもしくは接着剤のバインダー或いは添加剤、セメント非含有もしくはセメント含有充填組成物のバインダー或いは添加剤として使用される請求項8又は9記載の粉末組成物の使用法。
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