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JP2004204091A - 光触媒塗料組成物 - Google Patents

光触媒塗料組成物 Download PDF

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JP2004204091A JP2002375988A JP2002375988A JP2004204091A JP 2004204091 A JP2004204091 A JP 2004204091A JP 2002375988 A JP2002375988 A JP 2002375988A JP 2002375988 A JP2002375988 A JP 2002375988A JP 2004204091 A JP2004204091 A JP 2004204091A
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浩茂 中村
Tomonori Makino
智訓 牧野
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Abstract

【目的】厚塗り塗装しても塗膜剥離がなく、優れた光触媒活性を呈する光触媒塗膜を形成する。
【構成】光触媒分散トナー,水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶液及び無機バインダを含む光触媒塗料組成物であり、無機バインダは、シリカ40〜70質量%,オルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物30〜60質量%の固形分を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶液に分散させている。コロイダルシリカを核としてオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物が結合した分子集合体の分子量分布が、分子量が300以上であり、分子量300〜500が0〜20%,分子量500〜1000が20〜40%,分子量1000〜10000が40〜70%の分子量分布に管理されている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光触媒反応によるセルフクリーニング作用で清浄表面が長期間にわたり維持され、密着性に優れた塗膜の形成に適した光触媒塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
塗膜に光触媒粒子を分散させると、セルフクリーニング作用が塗膜表面に付与され、長期間にわたって清浄な塗膜表面が維持される。有機物ベースの塗膜は光照射で生成した活性酸素によって分解しチョーキング現象が発生するので、活性酸素による分解のない無機物をベースに光触媒塗膜を形成している。
塗膜に光触媒活性を付与する塗料組成物としては、テトラアルコキシシラン等のアルコキシドを溶解した水/エタノール混合溶媒にTiO2の水分散ゾルを分散させた系(WO96/29375),オルガノシリカゾルを有機溶媒に溶解させた溶液にTiO2粉末を分散させた系(特開平8−67835号公報),シラン処理したTiO2粉末をシリコーン樹脂に分散させた系(特開平9−227831号公報)等が報告されている。
【0003】
酸化チタン等の光触媒粒子の結合剤として使用されているテトラアルコキシシランは、加水分解,縮合反応で架橋硬化するので硬化時の体積収縮が大きい。体積収縮は、硬化後の塗膜において非常に大きな収縮応力となり、緩和されることなく残留する。残留応力は乾燥膜厚で5μm以上の厚塗り塗装を施すとき塗膜剥離発生の原因となるので、残留応力に起因する欠陥を回避する薄塗り塗装が余儀なくされている。
【0004】
薄塗り塗装は、浄化作用に必要な光触媒活性を十分に活用できないことは勿論、光触媒塗膜の性能,品質安定性でも不利である。たとえば、大面積の被塗物の表面に均一な膜厚の塗膜を形成することは困難であり、表面の僅かな凹凸や歪みを反映する部分的な厚膜化が避けられない。複雑な表面形状をもつ被塗物に塗装する場合でも、表面の凹凸を倣った厚膜部が生じやすい。厚膜部では、テトラアルコキシシランの体積収縮に起因する収縮応力の影響が現れ、塗膜剥離が発生しやすい。
オルガノシリカゾルを有機溶媒に溶解させた溶液にTiO2粉末を分散させた塗料組成物では、TiO2の分散が不十分で凝集しやすいため、作製された塗膜が不均一になりがちで膜厚制御も難しい。TiO2粉末の分散性を向上させるためにシラン処理したTiO2粉末をシリコーン樹脂に分散させた塗料組成物を使用すると、厚膜化が可能であるが、塗膜に含まれる有機成分が多くなり、光触媒粒子による分解でチョーキングしやすい塗膜になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者等は、バインダ成分であるオルガノアルコキシシランの一部を光触媒分散トナーに予め添加することによりアナターゼ型チタニア粉末の凝集沈殿が防止できることを紹介した(特開2002−105357号公報)。オルガノアルコキシシランはアナターゼ型チタニア粉末の表面を覆い、粉末表面のゼータ電位が無機バインダのpH値から外れる。その結果、無機バインダと混合した場合でもアナターゼ型チタニア粉末の凝集沈殿が抑制されるものと推察される。
有機成分が極く僅かで主成分がコロイダルシリカの無機バインダを使用すると、チョーキングが抑えられ耐久性に優れた塗膜が形成される。塗膜に含まれる多量のコロイダルシリカは応力緩和に寄与し、シラン縮合物単体のバインダに比較して厚塗り塗装でも耐割れ性に優れた塗膜が形成される。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先願・特開2002−105357号公報で紹介した光触媒塗料組成物を更に改良したものであり、光触媒塗料組成物に配合する無機バインダの分子量分布を適正管理することにより、厚塗り塗装した場合でも剥離が生じがたく、優れた清浄作用を呈する光触媒塗膜を形成することを目的とする。
【0007】
本発明で提案する光触媒塗料組成物は、光触媒分散トナー,無機バインダを含んでいる。
光触媒分散トナーは、イソプロパノール,エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒にTiO2粉末,オルガノアルコキシシラン,水を配合することにより調製される。TiO2粉末には粒径5〜200nmのアナターゼ型チタニア粉末が使用され、塗料組成物の固形分の5〜80質量%を占める割合で配合される。オルガノアルコキシシランは、一般式R1Si(OR2)3〔R1は炭素数1〜3のアルキル基,ビニル基,3,4-エポキシシクロヘキシル基,γ-グリシドキシプロピル基,γ-メルカプトプロピル基又はクロロプロピル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基〕で表され、好ましくは1〜10質量%の割合で配合される。水添加量は、オルガノアルコキシシランを部分加水分解させるが、オルガノアルコキシシラン相互の脱水縮合反応を進行させない範囲、具体的には0.1〜10質量%の範囲で選定される。
【0008】
無機バインダは、シリカ40〜70質量%,オルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物30〜60質量%の固形分を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶液に分散させている。オルガノヒドロキシシランは、一般式R1Si(OH)3〔R1は炭素数1〜3のアルキル基,ビニル基,3,4-エポキシシクロヘキシル基,γ-グリシドキシプロピル基,γ-メルカプトプロピル基又はクロロプロピル基〕で表される化合物である。シリカにオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物が結合した分子集合体は、加水分解,縮合時の温度,時間を調整することにより所定の分子量分布に収められている。シリカには、コロイダルシリカ、主として水系コロイダルシリカ分散液が使用される。
【0009】
【作用】
光触媒分散トナーに配合したオルガノアルコキシシランは、アナターゼ型チタニア粉末の表面にオルガノアルコキシシランのまま吸着し、或いは溶剤中に単に分散した状態で存在する。吸着したオルガノアルコキシシランはアナターゼ型チタニア粉末の分散性を向上させるが、長期間にわたる貯蔵では分散性が十分とはいえない。
水が存在する系では、オルガノアルコキシシランのアルコキシ基が部分加水分解する。加水分解生成物がアナターゼ型チタニア粉末表面のOH基と結合し、この結合を介しアナターゼ型チタニア粉末表面にオルガノアルコキシシランが付着する。アナターゼ型チタニア粉末は、オルガノアルコキシシランの付着によって分散性が向上し、長期にわたって凝集沈殿なく光触媒分散トナー中に懸濁する。その結果、貯蔵安定性に優れた光触媒分散トナーが得られる。良好な分散性は、無機系バインダと混合した後でも維持される。
【0010】
アナターゼ型チタニア粉末表面に対するオルガノアルコキシシランの付着量は光触媒分散トナーの水添加量で制御でき、オルガノアルコキシシラン付着による分散性の向上は0.1質量%以上の水添加量でみられる。水添加量の増加に応じてアナターゼ型チタニア粉末表面に付着するオルガノアルコキシシランが多くなり、アナターゼ型チタニア粉末の分散性が向上する。しかし、10質量%を超える過剰量の水を添加すると、アナターゼ型チタニア粉末表面に付着するアルコキシ基の加水分解生成物が多くなりすぎ、光触媒活性が損なわれる。過剰量の水添加は、光触媒分散トナーに添加したオルガノアルコキシシラン相互の脱水縮合を促進させ、アナターゼ型チタニア粉末表面に付着する加水分解生成物の割合が却って減少する。
【0011】
光触媒分散トナーに配合される水以外の成分は、次のように定めることが好ましい。
光触媒としては、光触媒活性が高く化学的安定性にも優れた粒径5〜200nmのアナターゼ型チタニア粉末を用い、5〜80質量%の割合で配合する。粒径5nmの粉末は製造自体が難しく、200nmを超える粒径では光触媒活性が不足する。アナターゼ型チタニア粉末の配合割合が5質量%未満になるとチクソ性がなく粒子の沈降が早く固めのケーキになるため、トナー使用時の再分散が困難になる。逆に80質量%を超える配合量では、チクソ性が高くなりすぎ却ってトナーとしての流動性が損なわれる。
【0012】
オルガノアルコキシシランは、一般式R1Si(OR2)3〔R1はアルキル基,ビニル基,3,4-エポキシシクロヘキシル基,γ-グリシドキシプロピル基,γ-メルカプトプロピル基又はクロロプロピル基,R2は炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基〕で表され、1〜10質量%の割合で配合される。オルガノアルコキシシランは、有機官能基の導入によってシラン相互の反応が抑制され、アナターゼ型チタニア粉末の表面に付着する割合が高くなる。この点、テトラアルコキシシランでは、加水分解が過度に進行してアナターゼ型チタニア粉末の表面に付着するだけでなく、シラン相互が反応する結果としてアナターゼ型チタニア粉末の分散に寄与しない割合が高くなる。
【0013】
オルガノアルコキシシランであっても、有機官能基が2個以上になるとアナターゼ型チタニア粉末の表面に付着する有機物の量が増加する。有機物が過剰に付着したアナターゼ型チタニア粉末の分散トナーから作製された光触媒塗膜を光照射環境に置くと有機物が分解し、塗膜のチョーキングが短時間に進行する。そこで、Siに直接結合する有機官能基を一つだけとし、炭素数1〜3のアルキル基,ビニル基,3,4-エポキシシクロヘキシル基,γ-グリシドキシプロピル基,γ-メルカプトプロピル基又はクロロプロピル基にすることが好適である。
【0014】
オルガノアルコキシシランの配合量は、1〜10質量%の範囲に定められる。1質量%未満の配合量では分散性の向上がみられず、逆に10質量%を超える配合量ではアナターゼ型チタニア粉末表面の被覆率が高くなりすぎて塗膜形成後の光触媒活性が極端に低下する。オルガノアルコキシシランの配合量はアナターゼ型チタニア粉末の粒径に依存する。たとえば、7nmのTiO2粉末は約300m2/gの大きな表面積をもつので、8質量%のオルガノアルコキシシランで最も大きな効果が得られる。粒径20nmのTiO2粉末では表面積が50m2/g程度であり、オルガノアルコキシシランの配合量3質量%で最も効果的になる。
【0015】
溶媒には、イソプロパノール,エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒が使用される。混合比率は、イソプロパノール:40〜60質量%,エチレングリコールモノブチルエーテル:40〜60質量%が好ましい。混合比率の調整によって,アナターゼ型チタニア粉末の分散性が改善されると共に、光触媒分散トナーをバインダと混合した後で塗膜を形成する際に揮発スピードが適度にコントロールされるので、剥離に至るクラックの発生が防止される。
光触媒分散トナーは、オルガノアルコキシシラン,水を添加したイソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒にアナターゼ型チタニア粉末を加え、攪拌機で攪拌した後、充填したビーズが攪拌状態に維持されている横型ミルに流量1リットル/分の速さで注入することにより調製される。必要に応じ、顔料,染料等の着色剤や増粘剤等の添加材を添加する。
【0016】
無機バインダは、シリカ,オルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物を固形分として水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶液に分散させることにより調製される。コロイダルシリカには、水系コロイダルシリカ分散液とイソプロパノール系コロイダルシリカ分散液の混合物が好ましい。シリカの平均粒径は150nm以下(更には、30nm)以下が好ましく、無機バインダの保存安定性を確保する上で好ましくは酸性のコロイダルシリカが使用される。
オルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物は、オルガノアルコキシシランの加水分解によって得られ、一般式R1Si(OH)3で表される。代表的なオルガノアルコキシシランには、光触媒分散トナーの一成分と同じ化合物R1Si(OR2)3を使用できる。オルガノヒドロキシシランの部分縮合物には、一般式R1Si(OH)3のオルガノヒドロキシシランを部分縮合することにより得られるオリゴマー等も使用できる。
【0017】
無機バインダの固形分は、コロイダルシリカを核としてオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物が脱水縮合で結合した分子集合体になっている。無機バインダを光触媒分散トナーと混合すると,オルガノヒドロキシシランの部分縮合物が付着したアナターゼ型チタニア粉末とコロイダルシリカを核として分子集合体が反応・結合するため、強固なネットワークが形成されると共に、アナターゼ型チタニア粉末が塗膜に均一分散される。
コロイダルシリカにオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物が結合した分子集合体は、重合時の反応時間,反応温度を制御することにより所定の分子量,分子量分布に収められる。分子量が300以上で、分子量300〜500が0〜20%,分子量500〜1000が20〜40%,分子量1000〜10000が40〜70%の分子量分布に調整することにより、形成された塗膜の耐剥離性が向上する。
【0018】
分子量分布が耐剥離性に及ぼす影響は、次のように考えられ、後述の実施例によっても支持される。低分子量成分を含む塗料組成物から作製された塗膜では、低分子量成分のOH基が反応点となって塗膜に大きな応力を加え、完全に加水分解が完了していない分子が単独で存在し、コロイダルシリカとの結合が生じていない(図1a)。そのため、塗膜形成時に反応点が多く、脱水縮合反応が急激に進行し、結果として大きな応力が塗膜に残留する。しかも、低分子量成分(未反応成分)は塗膜pの表層にブリードしやすく、雨水や紫外線照射UVに曝される環境下で硬化反応が生起する。硬化反応の結果、体積収縮に起因する収縮応力が塗膜pに発生し、基材bに達する亀裂cが生じる(図1b)。
【0019】
他方、完全にアルコキシドの加水分解が完了した成分を含む塗料組成物から作製された塗膜では、アルコキシドとコロイダルシリカとの結合が十分に進み、コロイダルシリカを取り囲んだ大きな分子となっている。そのため、反応点が少なく、塗膜形成時に反応が徐々に進行するため残留応力も小さくなる(図2a)。しかも、塗膜表面に未反応成分のブリードがなく、塗膜内部に微細なクラックfcが入っている。そのため、雨水や紫外線照射に曝される環境下で硬化反応が進行することなく、塗膜に加えられる応力があっても微細クラックによって分散されるため、基材に達するクラックにまで成長しない(図2b)。
【0020】
加水分解及び脱水縮合反応による結合状態は、ゲル濾過クロマトグラフィで測定し、ポリスチレンを標準物質として作成した検量線から算出した分子量で評価できる。具体的には、無機バインダとテトラヒドロフランで20倍希釈し、1μmフィルタで濾過した後、カラムに1000/2000 Shoudex 801,802を用いたゲル濾過クロマトグラフィ(HLC 8020:東ソー株式会社製)を使用し、テトラヒドロフランを測定溶媒としRI検出器により分子量分布を求めた。縮合が分子量300以上に進行し、300未満の低分子量成分がなくなると、過剰なOH基や塗膜表面にブリードする低分子量成分の影響が抑制される。なかでも、分子量300〜500が0〜20%,分子量500〜1000が20〜40%,分子量1000〜10000が40〜70%の分子量分布に管理されているとき、低分子量成分の影響抑制が効果的になる。
【0021】
溶媒は、コロイダルシリカ分散液中の水分,オルガノヒドロキシシランの縮合水,オルガノヒドロキシシランの加水分解で生じるアルコール,イソプロパノール,エチレングリコールモノブチルエーテルから構成される。無機バインダの溶媒として少なくとも20質量%のエチレングリコールモノブチルエーテルを配合すると、無機バインダの保存安定性が飛躍的に向上し、塗装作業性,成膜性に優れた塗料組成物が得られる。従来の無機バインダでは20質量%以上の水分を含ませると保存安定性が劣化するが、20質量%以上のエチレングリコールモノブチルエーテルを含む系では、20質量%以上の水分を含んでいても十分な保存安定性が維持される。無機バインダは、保存安定性を向上させるため、アンモニア水,トリエタノールアミン,ジメチルエタノールアミン等の有機アミン類を用いてpH:4〜5に調整することが好ましい。
【0022】
光触媒分散トナーは、オルガノアルコキシシラン,水を添加したイソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒にアナターゼ型チタニア粉末を加え、攪拌機で攪拌した後、充填したビーズが攪拌状態に維持されている横型ミルに流量1リットル/分の速さで注入することにより調製される。必要に応じ、顔料,染料等の着色剤や増粘剤等の添加材を添加することも可能である。
無機バインダは、コロイダルシリカ分散液に添加したオルガノアルコキシシランを加水分解させてオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物とした後、溶剤で希釈する方法、コロイダルシリカ分散液を溶剤で希釈した後、オルガノアルコキシシランを添加して加水分解させる方法等によって調製される。コロイダルシリカにオルガノアルコキシシランを添加して加水分解させるとき、液温を10〜80℃に保ち、常圧下で1〜24時間攪拌しながら反応させる。非水性コロイダルシリカ分散液の一部を後で添加し、更に加熱・反応させても良い。オルガノアルコキシシランの加水分解に際しては、無機酸,有機酸等の加水分解触媒を少量添加することもできる。
【0023】
十分に攪拌した光触媒分散トナーに無機バインダを徐々に加えながら、更に攪拌することにより光触媒塗料組成物が調製される。このとき、固形分としてTiO2が5〜80質量%となる配合比率で光触媒分散トナー,無機系バインダを混合する。十分な光触媒活性を得る上で5質量%以上のTiO2含有量が必要であるが、80質量%を超える過剰量のTiO2が含まれると塗膜の密着性が低下する。
調製された塗料は、スプレー法,浸漬法,フローコーティング法,ロールコート法,スクリーン印刷法,静電塗装法等によって、前処理された基材に塗布される。塗布後、80〜130℃で1〜30分加熱することにより、基材に対する密着性に優れた塗膜が形成される。塗膜の厚さは、基材の種類や用途に応じて異なるため一概に定めることはできないが、通常1〜30μmの範囲で調整される。光触媒塗料組成物が塗布される基材には、普通鋼,めっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム,銅、真鍮等の金属や、セメント,コンクリート,タイル,スレート板,ガラス,石材等がある。加熱時の温度によっては、プラスチック等の有機材料にも塗装可能である。
【0024】
【実施例】
アナターゼ型チタニア粉末分散トナーの調製
イソプロパノール:50質量%,エチレングリコールモノブチルエーテル:50質量%の混合溶媒に3質量%のオルガノアルコキシシラン,0.3質量%の水を添加し、更に粒径20nmのアナターゼ型チタニア粉末を添加した。アナターゼ型チタニア粉末の添加量は、塗料全体の40質量%となる割合に設定した。ビーズミルを用いた攪拌機で混合物を分散させることにより光触媒分散トナーを調製した。
【0025】
無機系バインダの調製
水系コロイダルシリカ:21.2g(平均粒径5〜20nm,固形分20質量%,pH3.0)とイソプロパノール系コロイダルシリカ62.6g(平均粒径5〜20nm,固形分20質量%)を混合した後、メチルトリメトキシシラン13.9gを加え、80℃で12時間攪拌して加水分解を完了させた。次いで、加水分解物にイソプロパノール:33質量%,エチレングリコールモノブチルエーテル:67質量%の混合溶媒を添加し、更にアンモニア水を添加してpHを4.5に調整した。
得られた光触媒分散トナー,無機系バインダを固形分中のTiO2含有量が40質量%となる割合で混合攪拌し、50μmのメッシュを用いて濾過し塗料化した。
【0026】
前処理したSUS304ステンレス鋼基材に塗料をスプレー塗布し、200℃で20分加熱することにより膜厚10μmの塗膜を形成した。比較のため、水無添加の光触媒分散トナーを無機系バインダと混合することにより調製された塗料(比較例1)及び反応時間の調整により分子量300未満とした無機バインダを光触媒分散トナーと混合した塗料(比較例2)を用いて同様にSUS304ステンレス鋼基材を塗装した。
【0027】
調製された光触媒塗料組成物の分散性及び塗膜の耐剥離性,光触媒活性を以下の方法で評価した。
(1)光触媒塗料組成物の分散性
光触媒分散トナー,無機系バインダを混合した塗料化した後、1日経過後にTiO2粒子の凝集状態を調査した。5μm以上のツブが検出されない塗料組成物を○,10μm以上のツブはないが5〜10μmのツブが検出された塗料組成物を△,10μm以上のツブが生じた塗料組成物を×として分散性を評価した。
【0028】
(2)塗膜の耐剥離性
63℃のサンシャインウェザー試験で塗膜の耐剥離性を調査し、試験開始から3000時間経過した時点で剥離が検出されなかった塗膜を○,剥離した塗膜を×として耐剥離性を評価した。
(3)塗膜の光触媒活性
付着量0.2mg/cm2でサラダ油を試験片表面に付着させ、5mW/cm2のブラックライトで24時間照射した後、試験片に残存しているサラダ油の重量を測定し、重量減少率を油分解率として光触媒活性を評価した。
【0029】
表1の調査結果にみられるように、オルガノアルコキシシラン,水を添加した光触媒分散トナーから得られた塗料組成物では、無機バインダの分子量分布に拘らず良好な分散性を示した。他方、水無添加の光触媒分散トナーを用いた塗料組成物(比較例11)では、5〜10μmのツブが検出された。
【0030】
Figure 2004204091
【0031】
表1の各種塗料組成物を前処理したSUS304ステンレス鋼基材にスプレー塗布し、塗布量によって膜厚を調整した塗膜を形成した。得られた塗膜の耐剥離性,光触媒活性を調査した結果を表2に示す。
表2から明らかなように、分子量300未満の低分子量成分を含む無機バインダを用いた塗料組成物から作製された塗膜は膜厚10μm以上で剥離してしまい、膜厚5μmと薄膜化した塗膜では光触媒活性が極端に低下した。これに対し、本発明に従って調整された塗料組成物から作製された塗膜では、膜厚が15μmと相当厚くなっても脱落することなく、優れた光触媒活性を呈した。
【0032】
Figure 2004204091
【0033】
【発明の効果】
以上に説明したように、分子量分布が制御された無機バインダを光触媒分散トナーと混合して調整された塗料組成物を使用すると、オルガノアルコキシシランの加水分解時に生じる体積収縮に起因する収縮応力が分散された状態で塗膜が被塗物表面に形成されるため、厚塗り塗装した場合でも優れた耐剥離性を示す。しかも、アナターゼ型チタニア粉末,オルガノアルコキシシランを配合した光触媒分散トナーに少量の水を添加してオルガノアルコキシシランを部分加水分解し、アナターゼ型チタニア粉末表面のOH基にアルコキシ基の加水分解生成物を反応させているので、アナターゼ型チタニア粉末の凝集沈殿が抑制され分散性が向上し、アナターゼ型チタニア粉末の光触媒活性が効率よく発現する光触媒塗膜となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】低分子量成分を含む無機バインダを使用した場合の塗料組成物(a),塗膜(b)における欠陥発生を説明する図
【図2】分子量分布を適正管理した無機バインダを用いた塗料組成物(a),塗膜(b)で欠陥が抑制されることを説明する図
【符号の説明】
b:基材 p:光触媒塗膜 c:クラック fc:微細クラック UV:紫外線又は雨水

Claims (4)

  1. 光触媒分散トナー,無機バインダを混合した塗料組成物であり、
    光触媒分散トナーは、イソプロパノール,エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒にアナターゼ型チタニア粉末,オルガノアルコキシシラン,水を配合しており、
    無機バインダは、オルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物30〜60質量%及びシリカ40〜70質量%の固形分を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶液に分散させており、コロイダルシリカを核としてオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物が結合した分子集合体がスチレン換算で分子量が300以上で、分子量300〜500が0〜20%,分子量500〜1000が20〜40%,分子量1000〜10000が40〜70%の分子量分布に管理されていることを特徴とする光触媒塗料組成物。
  2. アナターゼ型チタニア粉末が粒径5〜200nmであり、塗料組成物の固形分に占める割合が5〜80質量%である請求項1記載の光触媒塗料組成物。
  3. 一般式R1Si(OR2)3〔R1は炭素数1〜3のアルキル基,ビニル基,3,4-エポキシシクロヘキシル基,γ-グリシドキシプロピル基,γ-メルカプトプロピル基又はクロロプロピル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基〕で表されるオルガノアルコキシシランを使用する請求項1記載の光触媒塗料組成物。
  4. 一般式R1Si(OH)3〔R1は炭素数1〜3のアルキル基,ビニル基,3,4-エポキシシクロヘキシル基,γ-グリシドキシプロピル基,γ-メルカプトプロピル基又はクロロプロピル基〕で表されるオルガノヒドロキシシランを使用する請求項1記載の光触媒塗料組成物。
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