JP2004200062A - 集電体およびそれを用いた電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】負荷特性を向上させることができる集電体およびそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回されている。正極21は、集電体21Aと、集電体21Aに設けられた合剤層21Bとを有している。集電体21Aは、フラッシュ蒸着法により作製されたものであり、不織布などよりなる多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されている。これにより、広い範囲で導電性ネットワークが形成され、導電率が向上する。
【選択図】 図2
【解決手段】帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回されている。正極21は、集電体21Aと、集電体21Aに設けられた合剤層21Bとを有している。集電体21Aは、フラッシュ蒸着法により作製されたものであり、不織布などよりなる多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されている。これにより、広い範囲で導電性ネットワークが形成され、導電率が向上する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質基材が導電材により被覆された集電体およびそれを用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
二次電池としては、従来より、ニッケル・カドミウム二次電池,鉛蓄電池あるいはリチウム二次電池などが用いられている。特に、リチウム二次電池は、電池電圧が高く、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、かつ、サイクル特性に優れているため、電子機器の電源として広く用いられている。
【0003】
一方、電子技術の進歩により電子機器の高性能化が進み、それに伴いこれまでよりも更に高容量かつ高出力の二次電池が要求されている。この要求に対応するための対策の1つとして、電極の集電体として、三次元構造の小孔が多数設けられたものを用いることが挙げられる(特許文献1参照)。この集電体によれば、小孔に活物質が充填されるため、金属無垢箔よりなる集電体と比較して、電極の厚みを薄くすることが可能となり、その分、単位体積当たりの極板面積を大きくすることができる。従って、電池容量を大きくすることができる。
【0004】
なお、小孔が設けられた集電体は、一般に、多数の孔を有する有機繊維の不織布あるいは織布などよりなる多孔質基材に、導電材を蒸着することにより作製されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−45334号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この集電体では、十分な負荷特性が得られないという問題があった。そこで、本発明者がその原因を調べたところ、集電体の孔に導電材が入り込んでおらず、導電材の被覆率が制限されていることが推察された。集電体の孔に導電材が入り込まないのは、長時間の蒸着により、導電材が堆積し、多孔質基材の孔が塞がれてしまうためと考えられる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、負荷特性を向上させることができる集電体およびそれを用いた電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による集電体は、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されたものである。
【0009】
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極および負極のうちの少なくとも一方は、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆された集電体を有するものである。
【0010】
本発明による集電体では、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されているので、広い範囲で導電性ネットワークが形成され、導電率が向上する。
【0011】
本発明による電池では、正極および負極のうちの少なくとも一方に、本発明の集電体を用いているので、優れた負荷特性が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、電極反応にリチウム(Li)を用いる場合について例示する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0014】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものであり、例えば、チタン酸バリウム系半導体セラミックスにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0015】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0016】
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、集電体21Aと、集電体21Aの片面あるいは両面に設けられた合剤層21Bとを有している。集電体21Aは図示しない多数の孔を有しており、合剤層21Bはこの孔内にも設けられている。
【0017】
集電体21Aは、多孔質基材が導電材により被覆されたものである。導電材の多孔質基材に対する被覆率は50%以上である。すなわち、集電体21Aは、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されたものであり、広い範囲で導電性ネットワークが形成され、多孔質基材を比較的導電性の低い有機材料により構成するようにしても高い導電率が得られるようになっている。よって、多孔質基材を有機材料により構成して、電池の軽量化を図ることができると共に、正極21の巻回性を向上させることが可能である。なお、ここでは、導電材の多孔質基材に対する被覆率を数1で定義する。
【0018】
【数1】
【0019】
多孔質基材としては、有機材料に加えて他の材料よりなるものも用いることができる。具体的には、有機繊維,植物繊維,動物繊維,金属繊維,ガラス繊維あるいはアモルファス繊維などからなる不織布あるいは織布、またはこれらを積層したもの、発泡プラスチック、金属多孔膜、金属細線集合体、多孔セラミックスを用いることができる。中でも、不織布あるいは織布または発泡プラスチックを単独あるいは積層して用いれば、集電体21Aを軽量化することができるので好ましい。ここで、有機繊維あるいは発泡プラスチックの構成材料としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリメチルメタクリレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレート,ポリカーボネート,6−ナイロン,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene copolymer ;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)あるいはポリアリレートなどが挙げられる。
【0020】
植物繊維の構成材料としては、例えば、木綿が挙げられる。動物繊維の構成材料としては、例えば、絹が挙げられる。金属繊維,金属多孔膜および金属細線集合体の構成材料としては、例えば、アルミニウム,銅(Cu),ケイ素(Si),スズ(Sn),亜鉛(Zn),銀(Ag),金(Au),白金(Pt),ニッケルあるいはステンレスが挙げられる。ガラス繊維あるいはアモルファス繊維の構成材料としては、例えば、石英ガラスあるいは酸化バナジウム(V2 O5 )が挙げられる。多孔セラミックの構成材料としては、サファイアなどのアルミナ(Al2 O3 ),炭化ケイ素(SiC),マグネシア(MgO),石英ガラスあるいは酸化バナジウムが挙げられる。
【0021】
導電材としては、アルミニウム,銅,スズ,鉛(Pb),ヒ素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),亜鉛,カドミウム(Cd),銀,金,白金,パラジウム(Pd),マグネシウム(Mg)またはナトリウム(Na)の単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種が被覆されていることが好ましい。これらの材料は、導電率が高いため、集電体21Aの導電率を更に高くすることができるからである。また、導電材としては、これらの他にも、グラファイトあるいはソフトカーボンなどの炭素質材料あるいはポリアニリンなどの導電性ポリマーが被覆されていてもよい。
【0022】
合剤層21Bは、例えば、正極活物質と、必要に応じてカーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電助剤と、ポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、例えば、TiS,MoS2 ,NbSe2 あるいはV2 O5 などの非含リチウム化合物、またはリチウム金属複合酸化物が挙げられ、電池の使用目的に応じてそれらのいずれか1種または2種以上が選択される。特にリチウム金属複合酸化物は電圧を高くすることができ、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。
【0023】
リチウム金属複合酸化物としては、例えば、化1,化2,化3または化4に示したものが、容量または高温保存特性またはその両方を向上させることができるので好ましい。
【0024】
【化1】
Lia Co1-b Msb O2
( 式中、Msは、鉄,ニッケル,マンガン,銅,亜鉛,アルミニウム,スズ,ホウ素(B),ガリウム(Ga),クロム(Cr),バナジウム(V),チタン,マグネシウム,カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr)およびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種の元素を表し、aはa≧0.9、bは0.5≧b≧0をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0025】
【化2】
Lic Ni1-d Mtd O2
(式中、Mtは、鉄,コバルト,マンガン,銅,亜鉛,アルミニウム,スズ,ホウ素,ガリウム,クロム,バナジウム,チタン,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびケイ素からなる群のうち少なくとも1種の元素を表し、cはc≧0.9、dは0.5≧d≧0をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0026】
【化3】
Lie Mn2-f Muf O4
(式中、Muは鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,アルミニウム,スズ,クロム,バナジウム,チタン,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種の元素を表し、eはe≧0.9、fは0.5≧f≧0.01をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0027】
【化4】
Lig Fe1-g Mvh PO4
式中、Mvは、コバルト,ニッケル,マンガン,銅,亜鉛,アルミニウム,ケイ素,ホウ素,ガリウム,クロム,バナジウム,チタン,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1の元素を表し、gはg≧0.9、hは0.5≧h≧0をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0028】
負極22は、例えば、正極21と同様に構成されている。すなわち、負極22は、多数の孔を有する集電体22Aと、集電体22Aの片面あるいは両面に設けられた合剤層22Bとを有しており、合剤層22Bはこの孔内にも設けられている。集電体22Aは、集電体21Aと同様に、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されたものである。多孔質基材および導電材には、上記で例示した集電体21Aの多孔質基材および導電材と同様の材料を用いることができる。なお、負極22の多孔質基材および導電材は、集電体21Aの多孔質基材および導電材と同一であってもよく同一でなくてもよい。
【0029】
合剤層22Bは、例えば、負極活物質と、必要に応じてポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含んで構成されている。負極活物質としては、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。高い容量を得ることができるからである。なお、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0030】
リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム,ホウ素,アルミニウム,ガリウム,インジウム(In),ケイ素,ゲルマニウム,スズ,鉛,ビスマス,カドミウム,銀,亜鉛,ハフニウム,ジルコニウム(Zr)およびイットリウム(Y)が挙げられる。
【0031】
これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式Mas Mbt Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
【0032】
負極活物質としては、中でも4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。より高い容量を得ることができるからである。なお、これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0033】
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 あるいはZnSi2 などの化学式MdMev (Mdはケイ素またはスズを表し、Meは1種以上の金属元素を表し、v≧0である。)で表される合金あるいは化合物、または、SiC,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
【0034】
なお、他の合金あるいは化合物としては、例えば、LiAl合金,LiAlMf合金(Mfは2A族元素,3B族元素,4B族元素および遷移金属元素からなる群のうちの少なくとも1種を表す。),AlSb合金あるいはCuMgSb合金が挙げられる。
【0035】
負極活物質としては、また、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な炭素質材料,金属酸化物あるいは高分子材料などが挙げられる。なお、炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素,易黒鉛化性炭素,黒鉛,カーボンブラック,繊維状炭素あるいは熱分解性炭素などが挙げられる。また、金属酸化物としては酸化スズ(SnO2 )などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0036】
セパレータ23は、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0037】
このセパレータ23には液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を解離させるものである。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルが挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。
【0038】
リチウム塩としては、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,LiCH3 SO3 ,LiCF3 SO3 ,LiClあるいはLiBrなどが挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。
【0039】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0040】
まず、例えば、不織布などの多孔質基材を用意する。次いで、この多孔質基材に例えばフラッシュ蒸着法により導電材を被覆し、集電体21Aを作製する。この工程は、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。多孔質基材および導電材の酸化を防止するためである。また、多孔質基材を湾曲させて孔の開きを見かけ上大きくして行うことが好ましい。孔を導電材で塞がれないようにするためである。なお、フラッシュ蒸着法とは、真空蒸着装置に設けられ、容器を兼ねた発熱体をジュール加熱により高温に保ち、蒸着材料を収容した容器を振動させて蒸着させるのに必要な分を発熱体に添加し蒸発させて成膜対象である基板に蒸着する方法である。このフラッシュ蒸着法は、蒸着速度を遅くすれば、孔に導電材を容易に入り込ませることが可能である。すなわち、本実施の形態に係る集電体21A,22Aを容易に作製することが可能である。なお、導電材として導電性ポリマーを被覆するときは、CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法などの、ガス状の原料を化学反応させて薄膜を形成する方法を用いることが好ましい。
【0041】
続いて、例えば、正極活物質と導電助剤と結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。次いで、この正極合剤スラリーを集電体21Aに塗布し乾燥させたのち、ローラープレス機などにより圧縮成型して合剤層21Bを形成し、正極21を作製する。その際、正極活物質を集電体21Aの孔にも充填する。
【0042】
また、集電体21Aと同様にして集電体22Aを作製する。そののち、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次いで、この負極合剤スラリーを集電体22Aに塗布し乾燥させたのち、ローラープレス機などにより圧縮成型して合剤層22Bを形成し、負極22を作製する。その際、負極活物質を集電体22Aの孔にも充填する。
【0043】
続いて、集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0044】
この二次電池は次のように作用する。
【0045】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。ここでは、集電体21A,22Aの導電率が高くなっているので、この電池反応が円滑に進行する。
【0046】
このように本実施の形態では、集電体21A,22Aを、多孔質基材の50%以上を導電材により被覆したものとしたので、集電体21A,22Aに広い範囲で導電性ネットワークが形成され、集電体21A,22Aの導電率が高くなる。よって、優れた負荷特性を得ることができる。また、多孔質基材を比較的導電率の低い有機材料により構成することが可能となるため、電池の軽量化を図ることができると共に、正極21および負極22を容易かつ効率的に巻回することができ、容量が高く生産性に優れた電池を得ることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、フラッシュ蒸着法により多孔質基材に導電材を蒸着するようにしたので、多孔質基材の50%以上を導電材により被覆することができる。すなわち、本実施の形態に係る集電体21A,22Aを容易に作製することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、集電体21Aおよび集電体22Aの両方を、多孔質基材とこの多孔質基材を被覆する導電材により構成するようにしたが、集電体21Aを多孔質基材と導電材とにより構成し、集電体22Aを、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属無垢箔により構成するようにしてもよい。また、集電体22Aを多孔質基材と導電材とにより構成し、集電体21Aを、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属無垢箔により構成するようにしてもよい。但し、集電体21Aおよび集電体22Aの両方を多孔質基材と導電材とにより構成するようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0049】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0050】
(実施例1−1〜1−4)
まず、フラッシュ蒸着法により、有機繊維の不織布よりなる多孔質基材に、室温における導電率が表1または表2に示した値であるアルミニウムまたは酸化ケイ素(SiO2 )よりなる導電材を被覆して集電体を作製した。その際、多孔質基材に対する導電材の被覆率を実施例1−1〜1−4で表1または表2に示したように変化させた。なお、導電材の被覆率は、EDX(Energy Dispersive X-Ray Spectroscope;エネルギー分散型X線検出器)を用いて、集電体の表面のアルミニウムまたはケイ素の割合を測定することにより見積もった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
次いで、作製した集電体を用いて正極を作製した。まず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2 )91質量部と、導電助剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド3質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、集電体に塗布し、乾燥させたのちロールプレス機で圧縮成型することにより合剤層を形成した。そののち、これを120℃、0.1Torr(約13.3Pa)で3時間真空乾燥させ、正極とした。
【0054】
更に、作製した正極を用いて、図3に示したコイン型の二次電池を作製した。この二次電池は、集電体32Aおよび合剤層32Bからなる正極32と、集電体34Aおよび合剤層34Bからなる負極34とを、電解液を含浸したセパレータ35を介して積層したものである。集電体34Aとしては銅箔を用い、合剤層34Bは、負極活物質であるケイ化マグネシウム(Mg2 Si)粉末55質量部と、負極活物質および導電助剤である人造黒鉛35質量部と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド10質量部とを混合して負極合剤を調整したのち、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとし、集電体34Aに塗布し、乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型することにより形成した。電解液には、プロピレンカーボネートと1, 2−ジメトキシエタンとを等体積で混合した溶媒にLiPF6 を1.5mol/dm3 の割合で溶解させたものを用いた。正極32および負極34などは外装缶31および外装カップ33の内部に収容し、外装缶31と外装カップ33とはガスケット36を介してかしめることにより密閉した。電池の大きさは、直径20mm、高さ1.6mmとした。
【0055】
得られた実施例1−1〜1−4の二次電池について、高負荷特性を調べた。なお、高負荷特性としては、高負荷放電容量維持率を次のようにして求めた。まず、1.0mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流値が1.0μAに減衰するまで定電圧充電を行い、引き続き、1 .0mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行い、基準放電容量を求めた。次いで、上述の条件で再度定電流充電および定電圧充電を行ったのち、9.0mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行い、高負荷放電容量を求め、基準放電容量に対する高負荷放電容量の割合、すなわち(高負荷放電容量)/(基準放電容量)×100を高負荷放電容量維持率として算出した。得られた結果を表1または表2に示す。
【0056】
実施例1−1,1−2に対する比較例1−1として、多孔質基材に対する導電材の被覆率を40%としたことを除き、他は実施例1−1,1−2と同様にして集電体を作製した。また、この集電体を用いて実施例1−1,1−2と同様にして正極を作製すると共に、二次電池を作製した。比較例1−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、高負荷特性を調べた。その結果も表1に合わせて示す。
【0057】
表1から分かるように、導電材の被覆率が50%以上の実施例1−1,1−2では、高負荷放電容量維持率が88%以上と非常に高い値が得られたのに対して、導電材の被覆率が40%の比較例1−1では、高負荷放電容量維持率は53.2%と、実施例1−1,1−2に比べて非常に低かった。すなわち、多孔質基材に対する導電材の被覆率を50%以上とすれば、優れた負荷特性を得られることが分かった。
【0058】
また、表1および表2から分かるように、導電材として、導電率の低い酸化ケイ素を用いた実施例1−3,1−4は、導電率の高いアルミニウムを用いた実施例1−1,1−2に比べて、高負荷放電容量維持率が低かった。すなわち、導電材としては、アルミニウムなどのように導電率が高い材料を用いることが好ましいことが分かった。
【0059】
(実施例2−1〜2−4)
多孔質基材として、実施例1−1〜1−4と同様の不織布を用い、導電材の種類および被覆率を、実施例2−1〜2−4で表3または表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして、集電体を作製した
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
次いで、作製した集電体を用いて、実施例1−1〜1−4と同様にして負極を作製した。また、作製した負極を用いて、図3に示したコイン型の二次電池を作製した。その際、集電体32Aとしてアルミニウム箔を用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同一とした。実施例2−1〜2−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、高負荷特性を調べた。得られた結果を表3または表4に示す。
【0063】
また、実施例2−1,2−2に対する比較例2−1として、多孔質基材に対する導電材の被覆率を40%としたことを除き、他は実施例2−1,2−2と同様にして集電体を作製した。また、この集電体を用いて実施例1−1,1−2と同様にして負極を作製すると共に、二次電池を作製した。比較例2−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、高負荷特性を調べた。その結果も表3に合わせて示す。
【0064】
表3および表4から分かるように、負極34の集電体34Aを多孔質基材と導電材とにより構成するようにしても、正極32の集電体32Aを多孔質基材と導電材とにより構成した実施例1−1〜1−4と同様の傾向が見られた。
【0065】
なお、上記実施例では、多孔質基材および導電材について具体的に例を挙げて説明したが、他の多孔質基材および導電材を用いても同様の結果を得ることができる。
【0066】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、溶媒に液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、電解液に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0067】
なお、ゲル状の電解質には電解液を吸収してゲル化するものであれば種々の高分子化合物を用いることができる。そのような高分子化合物としては、例えば、ポリビニリデンフルオライドあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0068】
固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。このとき、高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または分子中に共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを用いることができる。
【0069】
また、上記実施の形態および実施例では、円筒型またはコイン型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、ボタン型、角型あるいはラミネートフィルムなどの外装部材を用いた他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
【0070】
更に、上記実施の形態および実施例では、電極反応種としてリチウムを用いる場合を説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属,またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その場合、正極活物質,負極活物質および電解質塩は、その軽金属に応じて適宜選択される。他は上記実施の形態と同様に構成することができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の集電体によれば、多孔質基材の50%以上を導電材により被覆するようにしたので、集電体に広い範囲で導電性ネットワークを形成することができ、集電体の導電率を高くすることができる。また、多孔質基材を比較的導電性の低い有機材料により構成することが可能となるため、電池の軽量化を図ることができる。
【0072】
また、請求項7ないし請求項12のいずれか1項に記載の電池によれば、本発明の集電体を用いるようにしたので、優れた負荷特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,36…ガスケット、20…巻回電極体、21,32…正極、21A,22A,32A,34A…集電体、21B,32B,22B,34B…合剤層、22,34…負極、23,35…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード、31…外装缶、33…外装カップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質基材が導電材により被覆された集電体およびそれを用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
二次電池としては、従来より、ニッケル・カドミウム二次電池,鉛蓄電池あるいはリチウム二次電池などが用いられている。特に、リチウム二次電池は、電池電圧が高く、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、かつ、サイクル特性に優れているため、電子機器の電源として広く用いられている。
【0003】
一方、電子技術の進歩により電子機器の高性能化が進み、それに伴いこれまでよりも更に高容量かつ高出力の二次電池が要求されている。この要求に対応するための対策の1つとして、電極の集電体として、三次元構造の小孔が多数設けられたものを用いることが挙げられる(特許文献1参照)。この集電体によれば、小孔に活物質が充填されるため、金属無垢箔よりなる集電体と比較して、電極の厚みを薄くすることが可能となり、その分、単位体積当たりの極板面積を大きくすることができる。従って、電池容量を大きくすることができる。
【0004】
なお、小孔が設けられた集電体は、一般に、多数の孔を有する有機繊維の不織布あるいは織布などよりなる多孔質基材に、導電材を蒸着することにより作製されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−45334号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この集電体では、十分な負荷特性が得られないという問題があった。そこで、本発明者がその原因を調べたところ、集電体の孔に導電材が入り込んでおらず、導電材の被覆率が制限されていることが推察された。集電体の孔に導電材が入り込まないのは、長時間の蒸着により、導電材が堆積し、多孔質基材の孔が塞がれてしまうためと考えられる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、負荷特性を向上させることができる集電体およびそれを用いた電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による集電体は、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されたものである。
【0009】
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極および負極のうちの少なくとも一方は、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆された集電体を有するものである。
【0010】
本発明による集電体では、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されているので、広い範囲で導電性ネットワークが形成され、導電率が向上する。
【0011】
本発明による電池では、正極および負極のうちの少なくとも一方に、本発明の集電体を用いているので、優れた負荷特性が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、電極反応にリチウム(Li)を用いる場合について例示する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0014】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものであり、例えば、チタン酸バリウム系半導体セラミックスにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0015】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0016】
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、集電体21Aと、集電体21Aの片面あるいは両面に設けられた合剤層21Bとを有している。集電体21Aは図示しない多数の孔を有しており、合剤層21Bはこの孔内にも設けられている。
【0017】
集電体21Aは、多孔質基材が導電材により被覆されたものである。導電材の多孔質基材に対する被覆率は50%以上である。すなわち、集電体21Aは、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されたものであり、広い範囲で導電性ネットワークが形成され、多孔質基材を比較的導電性の低い有機材料により構成するようにしても高い導電率が得られるようになっている。よって、多孔質基材を有機材料により構成して、電池の軽量化を図ることができると共に、正極21の巻回性を向上させることが可能である。なお、ここでは、導電材の多孔質基材に対する被覆率を数1で定義する。
【0018】
【数1】
【0019】
多孔質基材としては、有機材料に加えて他の材料よりなるものも用いることができる。具体的には、有機繊維,植物繊維,動物繊維,金属繊維,ガラス繊維あるいはアモルファス繊維などからなる不織布あるいは織布、またはこれらを積層したもの、発泡プラスチック、金属多孔膜、金属細線集合体、多孔セラミックスを用いることができる。中でも、不織布あるいは織布または発泡プラスチックを単独あるいは積層して用いれば、集電体21Aを軽量化することができるので好ましい。ここで、有機繊維あるいは発泡プラスチックの構成材料としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリメチルメタクリレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレート,ポリカーボネート,6−ナイロン,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene copolymer ;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)あるいはポリアリレートなどが挙げられる。
【0020】
植物繊維の構成材料としては、例えば、木綿が挙げられる。動物繊維の構成材料としては、例えば、絹が挙げられる。金属繊維,金属多孔膜および金属細線集合体の構成材料としては、例えば、アルミニウム,銅(Cu),ケイ素(Si),スズ(Sn),亜鉛(Zn),銀(Ag),金(Au),白金(Pt),ニッケルあるいはステンレスが挙げられる。ガラス繊維あるいはアモルファス繊維の構成材料としては、例えば、石英ガラスあるいは酸化バナジウム(V2 O5 )が挙げられる。多孔セラミックの構成材料としては、サファイアなどのアルミナ(Al2 O3 ),炭化ケイ素(SiC),マグネシア(MgO),石英ガラスあるいは酸化バナジウムが挙げられる。
【0021】
導電材としては、アルミニウム,銅,スズ,鉛(Pb),ヒ素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),亜鉛,カドミウム(Cd),銀,金,白金,パラジウム(Pd),マグネシウム(Mg)またはナトリウム(Na)の単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種が被覆されていることが好ましい。これらの材料は、導電率が高いため、集電体21Aの導電率を更に高くすることができるからである。また、導電材としては、これらの他にも、グラファイトあるいはソフトカーボンなどの炭素質材料あるいはポリアニリンなどの導電性ポリマーが被覆されていてもよい。
【0022】
合剤層21Bは、例えば、正極活物質と、必要に応じてカーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電助剤と、ポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、例えば、TiS,MoS2 ,NbSe2 あるいはV2 O5 などの非含リチウム化合物、またはリチウム金属複合酸化物が挙げられ、電池の使用目的に応じてそれらのいずれか1種または2種以上が選択される。特にリチウム金属複合酸化物は電圧を高くすることができ、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。
【0023】
リチウム金属複合酸化物としては、例えば、化1,化2,化3または化4に示したものが、容量または高温保存特性またはその両方を向上させることができるので好ましい。
【0024】
【化1】
Lia Co1-b Msb O2
( 式中、Msは、鉄,ニッケル,マンガン,銅,亜鉛,アルミニウム,スズ,ホウ素(B),ガリウム(Ga),クロム(Cr),バナジウム(V),チタン,マグネシウム,カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr)およびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種の元素を表し、aはa≧0.9、bは0.5≧b≧0をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0025】
【化2】
Lic Ni1-d Mtd O2
(式中、Mtは、鉄,コバルト,マンガン,銅,亜鉛,アルミニウム,スズ,ホウ素,ガリウム,クロム,バナジウム,チタン,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびケイ素からなる群のうち少なくとも1種の元素を表し、cはc≧0.9、dは0.5≧d≧0をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0026】
【化3】
Lie Mn2-f Muf O4
(式中、Muは鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,アルミニウム,スズ,クロム,バナジウム,チタン,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種の元素を表し、eはe≧0.9、fは0.5≧f≧0.01をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0027】
【化4】
Lig Fe1-g Mvh PO4
式中、Mvは、コバルト,ニッケル,マンガン,銅,亜鉛,アルミニウム,ケイ素,ホウ素,ガリウム,クロム,バナジウム,チタン,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1の元素を表し、gはg≧0.9、hは0.5≧h≧0をそれぞれ満たす範囲内の値である。)
【0028】
負極22は、例えば、正極21と同様に構成されている。すなわち、負極22は、多数の孔を有する集電体22Aと、集電体22Aの片面あるいは両面に設けられた合剤層22Bとを有しており、合剤層22Bはこの孔内にも設けられている。集電体22Aは、集電体21Aと同様に、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されたものである。多孔質基材および導電材には、上記で例示した集電体21Aの多孔質基材および導電材と同様の材料を用いることができる。なお、負極22の多孔質基材および導電材は、集電体21Aの多孔質基材および導電材と同一であってもよく同一でなくてもよい。
【0029】
合剤層22Bは、例えば、負極活物質と、必要に応じてポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含んで構成されている。負極活物質としては、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。高い容量を得ることができるからである。なお、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0030】
リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム,ホウ素,アルミニウム,ガリウム,インジウム(In),ケイ素,ゲルマニウム,スズ,鉛,ビスマス,カドミウム,銀,亜鉛,ハフニウム,ジルコニウム(Zr)およびイットリウム(Y)が挙げられる。
【0031】
これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式Mas Mbt Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
【0032】
負極活物質としては、中でも4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。より高い容量を得ることができるからである。なお、これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0033】
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 あるいはZnSi2 などの化学式MdMev (Mdはケイ素またはスズを表し、Meは1種以上の金属元素を表し、v≧0である。)で表される合金あるいは化合物、または、SiC,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
【0034】
なお、他の合金あるいは化合物としては、例えば、LiAl合金,LiAlMf合金(Mfは2A族元素,3B族元素,4B族元素および遷移金属元素からなる群のうちの少なくとも1種を表す。),AlSb合金あるいはCuMgSb合金が挙げられる。
【0035】
負極活物質としては、また、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な炭素質材料,金属酸化物あるいは高分子材料などが挙げられる。なお、炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素,易黒鉛化性炭素,黒鉛,カーボンブラック,繊維状炭素あるいは熱分解性炭素などが挙げられる。また、金属酸化物としては酸化スズ(SnO2 )などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0036】
セパレータ23は、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0037】
このセパレータ23には液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を解離させるものである。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルが挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。
【0038】
リチウム塩としては、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,LiCH3 SO3 ,LiCF3 SO3 ,LiClあるいはLiBrなどが挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。
【0039】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0040】
まず、例えば、不織布などの多孔質基材を用意する。次いで、この多孔質基材に例えばフラッシュ蒸着法により導電材を被覆し、集電体21Aを作製する。この工程は、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。多孔質基材および導電材の酸化を防止するためである。また、多孔質基材を湾曲させて孔の開きを見かけ上大きくして行うことが好ましい。孔を導電材で塞がれないようにするためである。なお、フラッシュ蒸着法とは、真空蒸着装置に設けられ、容器を兼ねた発熱体をジュール加熱により高温に保ち、蒸着材料を収容した容器を振動させて蒸着させるのに必要な分を発熱体に添加し蒸発させて成膜対象である基板に蒸着する方法である。このフラッシュ蒸着法は、蒸着速度を遅くすれば、孔に導電材を容易に入り込ませることが可能である。すなわち、本実施の形態に係る集電体21A,22Aを容易に作製することが可能である。なお、導電材として導電性ポリマーを被覆するときは、CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法などの、ガス状の原料を化学反応させて薄膜を形成する方法を用いることが好ましい。
【0041】
続いて、例えば、正極活物質と導電助剤と結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。次いで、この正極合剤スラリーを集電体21Aに塗布し乾燥させたのち、ローラープレス機などにより圧縮成型して合剤層21Bを形成し、正極21を作製する。その際、正極活物質を集電体21Aの孔にも充填する。
【0042】
また、集電体21Aと同様にして集電体22Aを作製する。そののち、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次いで、この負極合剤スラリーを集電体22Aに塗布し乾燥させたのち、ローラープレス機などにより圧縮成型して合剤層22Bを形成し、負極22を作製する。その際、負極活物質を集電体22Aの孔にも充填する。
【0043】
続いて、集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0044】
この二次電池は次のように作用する。
【0045】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。ここでは、集電体21A,22Aの導電率が高くなっているので、この電池反応が円滑に進行する。
【0046】
このように本実施の形態では、集電体21A,22Aを、多孔質基材の50%以上を導電材により被覆したものとしたので、集電体21A,22Aに広い範囲で導電性ネットワークが形成され、集電体21A,22Aの導電率が高くなる。よって、優れた負荷特性を得ることができる。また、多孔質基材を比較的導電率の低い有機材料により構成することが可能となるため、電池の軽量化を図ることができると共に、正極21および負極22を容易かつ効率的に巻回することができ、容量が高く生産性に優れた電池を得ることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、フラッシュ蒸着法により多孔質基材に導電材を蒸着するようにしたので、多孔質基材の50%以上を導電材により被覆することができる。すなわち、本実施の形態に係る集電体21A,22Aを容易に作製することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、集電体21Aおよび集電体22Aの両方を、多孔質基材とこの多孔質基材を被覆する導電材により構成するようにしたが、集電体21Aを多孔質基材と導電材とにより構成し、集電体22Aを、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属無垢箔により構成するようにしてもよい。また、集電体22Aを多孔質基材と導電材とにより構成し、集電体21Aを、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属無垢箔により構成するようにしてもよい。但し、集電体21Aおよび集電体22Aの両方を多孔質基材と導電材とにより構成するようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0049】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0050】
(実施例1−1〜1−4)
まず、フラッシュ蒸着法により、有機繊維の不織布よりなる多孔質基材に、室温における導電率が表1または表2に示した値であるアルミニウムまたは酸化ケイ素(SiO2 )よりなる導電材を被覆して集電体を作製した。その際、多孔質基材に対する導電材の被覆率を実施例1−1〜1−4で表1または表2に示したように変化させた。なお、導電材の被覆率は、EDX(Energy Dispersive X-Ray Spectroscope;エネルギー分散型X線検出器)を用いて、集電体の表面のアルミニウムまたはケイ素の割合を測定することにより見積もった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
次いで、作製した集電体を用いて正極を作製した。まず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2 )91質量部と、導電助剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド3質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、集電体に塗布し、乾燥させたのちロールプレス機で圧縮成型することにより合剤層を形成した。そののち、これを120℃、0.1Torr(約13.3Pa)で3時間真空乾燥させ、正極とした。
【0054】
更に、作製した正極を用いて、図3に示したコイン型の二次電池を作製した。この二次電池は、集電体32Aおよび合剤層32Bからなる正極32と、集電体34Aおよび合剤層34Bからなる負極34とを、電解液を含浸したセパレータ35を介して積層したものである。集電体34Aとしては銅箔を用い、合剤層34Bは、負極活物質であるケイ化マグネシウム(Mg2 Si)粉末55質量部と、負極活物質および導電助剤である人造黒鉛35質量部と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド10質量部とを混合して負極合剤を調整したのち、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとし、集電体34Aに塗布し、乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型することにより形成した。電解液には、プロピレンカーボネートと1, 2−ジメトキシエタンとを等体積で混合した溶媒にLiPF6 を1.5mol/dm3 の割合で溶解させたものを用いた。正極32および負極34などは外装缶31および外装カップ33の内部に収容し、外装缶31と外装カップ33とはガスケット36を介してかしめることにより密閉した。電池の大きさは、直径20mm、高さ1.6mmとした。
【0055】
得られた実施例1−1〜1−4の二次電池について、高負荷特性を調べた。なお、高負荷特性としては、高負荷放電容量維持率を次のようにして求めた。まず、1.0mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流値が1.0μAに減衰するまで定電圧充電を行い、引き続き、1 .0mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行い、基準放電容量を求めた。次いで、上述の条件で再度定電流充電および定電圧充電を行ったのち、9.0mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行い、高負荷放電容量を求め、基準放電容量に対する高負荷放電容量の割合、すなわち(高負荷放電容量)/(基準放電容量)×100を高負荷放電容量維持率として算出した。得られた結果を表1または表2に示す。
【0056】
実施例1−1,1−2に対する比較例1−1として、多孔質基材に対する導電材の被覆率を40%としたことを除き、他は実施例1−1,1−2と同様にして集電体を作製した。また、この集電体を用いて実施例1−1,1−2と同様にして正極を作製すると共に、二次電池を作製した。比較例1−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、高負荷特性を調べた。その結果も表1に合わせて示す。
【0057】
表1から分かるように、導電材の被覆率が50%以上の実施例1−1,1−2では、高負荷放電容量維持率が88%以上と非常に高い値が得られたのに対して、導電材の被覆率が40%の比較例1−1では、高負荷放電容量維持率は53.2%と、実施例1−1,1−2に比べて非常に低かった。すなわち、多孔質基材に対する導電材の被覆率を50%以上とすれば、優れた負荷特性を得られることが分かった。
【0058】
また、表1および表2から分かるように、導電材として、導電率の低い酸化ケイ素を用いた実施例1−3,1−4は、導電率の高いアルミニウムを用いた実施例1−1,1−2に比べて、高負荷放電容量維持率が低かった。すなわち、導電材としては、アルミニウムなどのように導電率が高い材料を用いることが好ましいことが分かった。
【0059】
(実施例2−1〜2−4)
多孔質基材として、実施例1−1〜1−4と同様の不織布を用い、導電材の種類および被覆率を、実施例2−1〜2−4で表3または表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして、集電体を作製した
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
次いで、作製した集電体を用いて、実施例1−1〜1−4と同様にして負極を作製した。また、作製した負極を用いて、図3に示したコイン型の二次電池を作製した。その際、集電体32Aとしてアルミニウム箔を用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同一とした。実施例2−1〜2−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、高負荷特性を調べた。得られた結果を表3または表4に示す。
【0063】
また、実施例2−1,2−2に対する比較例2−1として、多孔質基材に対する導電材の被覆率を40%としたことを除き、他は実施例2−1,2−2と同様にして集電体を作製した。また、この集電体を用いて実施例1−1,1−2と同様にして負極を作製すると共に、二次電池を作製した。比較例2−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、高負荷特性を調べた。その結果も表3に合わせて示す。
【0064】
表3および表4から分かるように、負極34の集電体34Aを多孔質基材と導電材とにより構成するようにしても、正極32の集電体32Aを多孔質基材と導電材とにより構成した実施例1−1〜1−4と同様の傾向が見られた。
【0065】
なお、上記実施例では、多孔質基材および導電材について具体的に例を挙げて説明したが、他の多孔質基材および導電材を用いても同様の結果を得ることができる。
【0066】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、溶媒に液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、電解液に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0067】
なお、ゲル状の電解質には電解液を吸収してゲル化するものであれば種々の高分子化合物を用いることができる。そのような高分子化合物としては、例えば、ポリビニリデンフルオライドあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0068】
固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。このとき、高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または分子中に共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを用いることができる。
【0069】
また、上記実施の形態および実施例では、円筒型またはコイン型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、ボタン型、角型あるいはラミネートフィルムなどの外装部材を用いた他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
【0070】
更に、上記実施の形態および実施例では、電極反応種としてリチウムを用いる場合を説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属,またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その場合、正極活物質,負極活物質および電解質塩は、その軽金属に応じて適宜選択される。他は上記実施の形態と同様に構成することができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の集電体によれば、多孔質基材の50%以上を導電材により被覆するようにしたので、集電体に広い範囲で導電性ネットワークを形成することができ、集電体の導電率を高くすることができる。また、多孔質基材を比較的導電性の低い有機材料により構成することが可能となるため、電池の軽量化を図ることができる。
【0072】
また、請求項7ないし請求項12のいずれか1項に記載の電池によれば、本発明の集電体を用いるようにしたので、優れた負荷特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,36…ガスケット、20…巻回電極体、21,32…正極、21A,22A,32A,34A…集電体、21B,32B,22B,34B…合剤層、22,34…負極、23,35…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード、31…外装缶、33…外装カップ
Claims (12)
- 多孔質基材の50%以上が導電材により被覆されたことを特徴とする集電体。
- 前記多孔質基材は、織布,不織布またはこれらを積層したものにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の集電体。
- 前記多孔質基材は、有機材料を含むことを特徴とする請求項1記載の集電体。
- 前記導電材は、アルミニウム(Al),銅(Cu),スズ(Sn),鉛(Pb),ヒ素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),亜鉛(Zn),カドミウム(Cd),銀(Ag),金(Au),白金(Pt),パラジウム(Pd),マグネシウム(Mg)またはナトリウム(Na)の単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の集電体。
- 前記導電材は、炭素質材料を含むことを特徴とする請求項1記載の集電体。
- 前記導電材は、導電性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載の集電体。
- 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記正極および負極のうちの少なくとも一方は、多孔質基材の50%以上が導電材により被覆された集電体を有する
ことを特徴とする電池。 - 前記多孔質基材は、織布,不織布またはこれらを積層したものにより構成されていることを特徴とする請求項7記載の電池。
- 前記多孔質基材は、有機材料を含むことを特徴とする請求項7記載の電池。
- 前記導電材は、アルミニウム(Al),銅(Cu),スズ(Sn),鉛(Pb),ヒ素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),亜鉛(Zn),カドミウム(Cd),銀(Ag),金(Au),白金(Pt),パラジウム(Pd),マグネシウム(Mg)またはナトリウム(Na)の単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項7記載の電池。
- 前記導電材は、炭素質材料を含むことを特徴とする請求項7記載の電池。
- 前記導電材は、導電性ポリマーを含むことを特徴とする請求項7記載の電池。
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2002
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