JP2004291896A - 車両用ホイール - Google Patents
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Abstract
【課題】副気室を設けてロードノイズの低減を図る技術に関して、副気室による消音をより適切に行うことができるようにした車両用ホイールを提供する。
【解決手段】リム11の外周面に副気室SCを形成する副気室形成部材14を周方向に複数設けて副気室SCを形成した車両用ホイール10を構成する。この副気室形成部材14は、リム11の外周面との間に副気室SCを形成する副気室形成部と、副気室SCをタイヤ20とリム11との間に形成されるタイヤ空気室MCに連通させる連通部14Gと、副気室形成部材14のリム11との接続部に形成した耳部14Fとを備え、副気室形成部材14を、耳部14Fを介してリム11の外周面のウエル部11Cに気密に固定して副気室SCを形成した。
【選択図】 図2
【解決手段】リム11の外周面に副気室SCを形成する副気室形成部材14を周方向に複数設けて副気室SCを形成した車両用ホイール10を構成する。この副気室形成部材14は、リム11の外周面との間に副気室SCを形成する副気室形成部と、副気室SCをタイヤ20とリム11との間に形成されるタイヤ空気室MCに連通させる連通部14Gと、副気室形成部材14のリム11との接続部に形成した耳部14Fとを備え、副気室形成部材14を、耳部14Fを介してリム11の外周面のウエル部11Cに気密に固定して副気室SCを形成した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などの車両に装着される車両用ホイール、殊にロードノイズを低減することのできる車両用ホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行により発生するロードノイズを低減するため、タイヤとホイールリムの間に形成されるタイヤ空気室に、タイヤの気柱共鳴周波数fTに相当する250Hz辺りの振動を、共鳴により吸収する副気室を形成することが従来から行われている(特許文献1参照)。この特許文献1の「リムホイール」は、リムの外周面に複数の蓋部材を周方向に配置すると共に、蓋部材の内側に隔壁を設け、これにより、リムと蓋部材との間に複数の副気室を周方向に形成している。
【0003】
この副気室は、タイヤ空気室と、蓋部材に設けた連通部としての隙間を介して連結されることで、ヘルムホルツ共鳴吸音器を構成しており、このヘルムホルツ共鳴吸音器により発生された共鳴周波数fRで特定の周波数(タイヤの気柱共鳴周波数fT)の振動を吸収(つまり消音)する構成になっている。また、副気室は、タイヤ周方向に連続した環形状ではないので、空洞共鳴音(気柱共鳴音)の発生を抑えることができる。また、リムには、凹状のウエル部を設けているので、タイヤを従来通りリム組みできるというものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−79802号公報([0019]、[要約]など)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1のリムホイールでは、副気室の気密性を確保することに関して充分でない点があった。具体的には、構造上、隔壁による副気室同士の間の気密を充分に行えないおそれがあり、このため、充分に消音できないといったことが考えられる。また、殊に特許文献1の図1の構造では、蓋部材とリム(ウエル部)との間で気密を充分に確保できないおそれがあった。また、副気室や連通部(連通孔)のデザインに関連していうと、副気室により発生する共鳴周波数fRを評価する計算式について、充分に検討されていない面があった。
【0006】
そこで、本発明は、副気室を設けてロードノイズの低減を図る技術に関して、副気室による消音をより適切に行うことができるようにした車両用ホイールを提供することを主たる目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決した本発明の車両用ホイール(第1態様の発明、請求項1)は、リムの外周面に副気室を形成する副気室形成部材を周方向に複数設けて副気室を形成した構成をしている。そして、この車両用ホイールの前記副気室形成部材は、前記リムの外周面との間に副気室を形成する副気室形成部と、前記副気室をタイヤとリムとの間に形成されるタイヤ空気室に連通させる連通部と、前記副気室形成部材の前記リムとの接続部に形成した耳部とを備え、前記副気室形成部材を、前記耳部を介して前記リムの外周面のウエル部に気密に固定して前記副気室を形成したことを特徴とする。
これによれば、副気室形成部材を、リムの外周面のウエル部に、周方向に複数設けて副気室を形成するが、この形成に際しては耳部が利用されるので、気密性の確保がより確実に行えるようになる。
【0008】
また、本発明の車両用ホイール(請求項2)は、請求項1の構成において、前記連通部に、当該連通部の首長さを確保するための突出部を形成すると共に、当該突出部を前記副気室の内側に向けたことを特徴とする。
これによれば、突出部を形成することで連通部の開口面積を大きくすることができ、連通部の加工がし易くなる。これにより、目的とした共鳴周波数fRを発生させ易くなる。また、内側に突出部を形成することで、タイヤ空気室側に突出部を形成するのと異なり、タイヤの組み付けが容易になる。
【0009】
また、本発明の車両用ホイール(請求項3)は、請求項2の構成において、前記突出部を、前記副気室形成部材を折り曲げることにより形成したことを特徴とする。
【0010】
また、前記課題を解決した本発明の車両用ホイール(第2態様の発明、請求項4)は、タイヤとリムにより形成されるタイヤ空気室に連通する連通部を備えた副気室を、前記リムに沿って周方向に少なくとも1つ設けた構成をしている。そして、この車両用ホイールは、前記連通部の開口面積、前記連通部の首長さ、および前記副気室の体積をパラメータとした次の式1で定義される前記副気室の共鳴周波数に関して、前記副気室の周方向の長さが長くなると、前記式1の補正係数の値を大きくして前記パラメータを設定し、前記共鳴周波数を所定の値にしたことを特徴とする。
fR=C/2π×√(S/(V(L+α×√S))) … (式1)
ここで、fRは共鳴周波数、Cは副気室内部の音速、Sは連通部の開口面積、Vは副気室の体積、Lは連通部の首長さ、αは補正係数である。
【0011】
この構成によれば、副気室の周方向の長さが長くなると、式1の補正係数が大きくされる。例えば、後記する実施形態で参照する図4のグラフのように、副気室の周方向の長さ/気柱の長さの比(副気室の長さ比)が0.25を超える辺りから補正係数を大きくして計算を行い、例えば共鳴周波数fRが250Hz程度になるように、連通部(連通孔)の首長さや連通部(連通孔)の開口面積を設定する。このようにすることで、従来、適切に消音できなかったものが消音できるようになる。また、設計や加工が容易になる。なお、この第2態様の発明は、請求項1などの発明(第1態様の発明)の副気室だけに適用が限定されるのではなく、あらゆるタイプの副気室(レゾ室、消音室…)に適用することができる。
【0012】
また、本発明の車両用ホイール(請求項5)は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明における連通部の設定を、請求項4の式1に基づいて定めることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図1などを参照して詳細に説明する。
参照する図において、図1は、車両用ホイールの斜視図である。図2は、図1の車両用ホイールにタイヤを装着した車輪の周方向の要部を示す断面図である。図3は、図1の車両用ホイールにおける副気室形成部材の固定状態を平面視した図などである。
【0014】
車両用ホイール10の構成を説明する。
図1および図2に示されるように、本実施形態の車両用ホイール10は、円盤状のディスク12の外周にリム11が固定された構成をしている。また、このような構成をした車両用ホイール10の外周に、タイヤ20が装着されて車輪1を構成している。なお、タイヤ20に関して、符号21はタイヤ本体、符号22はインナライナ、符号22Aはビード部を示す。また、符号MCはタイヤ20とリム11との間に形成されるタイヤ空気室(主気室)を示す。
【0015】
リム11(図2参照)は、断面視したリム11の両端近傍にタイヤ20のビード部22Aが位置するビードシート部11Bを、リム11の両端にリムフランジ11Aを有する。また、リム11は、凹形状をしたウエル部11Cを有する。本実施形態では、副気室SCは、副気室形成部材14とリム11のウエル部11Cとで形成される。なお、本実施形態の車両用ホイール10は、鉄製であるとする。
【0016】
副気室SCを形成する副気室形成部材14の構成を説明する。
図1から図3に示されるように、副気室形成部材14は、車両用ホイール10のリム11に沿って固定され、リム11との間に独立した空間である副気室SCを、リム11の外周面(ウエル部11C)に形成する役割を有する。このため、副気室形成部材14は、タイヤ20のトレッドに平行な平行板14Aとトレッドに垂直な垂直板14Bを備える断面L字型をした本体部分と、この本体部分(平行板14Aと垂直板14B)の端部から外側に延出したフランジ部14F(14Fa,14Fb)とを有する。また、副気室形成部材14の長手方向の両端には、一端側の端板14Cと他端側の端板14Dと、この端板14C,14Dから外側に延出したフランジ部14F(14Fc,14Fd)を有する。即ち、副気室形成部材14は、L字チャンネル型に構成された平行板14Aと垂直板14B(本体部分)と、長手方向の両端にそれぞれ位置する端板14C,14Dと、これらの周囲に延出するフランジ部14F(14Fa,14Fb,14Fc,14Fd)を含んで構成される。ちなみに、平行板14A、垂直板14B、および両方の端板14C,14Dで構成される空間が、請求項の「副気室形成部」に相当する。また、フランジ部14Fは、請求項の「副気室形成部材のリムとの接続部に形成した耳部」に相当する。
【0017】
なお、フランジ部14Fは、リム11の外周面に副気室SCを形成する際に、副気室SCの気密性を高める目的(ひいては消音効果を高める目的)で形成されるものであることから、当該目的を達成できるものであれば、その形状・材質などの如何は問わない。ちなみに、図1では、副気室形成部材14は1つしか示していないが、この副気室形成部材14は、車輪1の静バランスや動バランスを考慮して、適宜間隔を置いて複数固定されているものとする。即ち、副気室SCは、適宜間隔を置いて複数形成されているものとする。
【0018】
また、副気室形成部材14は、副気室形成部材14の内部(副気室形成部)に形成される副気室SCとタイヤ20とリム11の間に形成されるタイヤ空気室(主気室)MCとを連通する連通孔14Gを有する(この連通孔14Gは請求項の「連通部」に相当する)。連通孔14Gを設ける位置は、副気室形成部材14が有する4面(板14A,14B,14C,14D)の何れでもよい。
【0019】
なお、タイヤ空気室MCの中には、何らかの理由により水(水蒸気)が閉じ込められる場合がある。この閉じ込められた水がタイヤ空気室MCにある場合はさほど問題にはならないが、この水が副気室SCに入り込んで長く留まると、鉄製の車両用ホイール10の場合は錆びが問題になる。このため、本実施形態のような鉄製の車両用ホイール10に副気室SCを形成する場合、副気室SCからの排水を考慮して、端板14C(或いは14D)に連通孔14Gを形成するのが好ましい。ちなみに本実施形態では、連通孔14Gは、端板14Cではなく、平行板14Aの略中央部に設けてある(図1から図3参照)。
【0020】
連通孔14Gの開口面積Sと首長さ(経路長)Lの関係は、後で式1を参照して説明するが、連通孔14Gの首長さLを長くすると、副気室SCにより発生する共鳴周波数fRは低くなる。一方で、連通孔14Gの開口面積Sを広くすると、副気室SCにより発生する共鳴周波数fRは高くなる。また、連通孔14Gの開口面積Sを広くすると、連通孔14Gの加工が容易になるという加工上の利点(ひいては目的とする共鳴周波数fRを発生させやすくなるという利点)と、連通孔14Gに目詰まり(例えば表面処理塗装などによる目詰まり)が起こり難くなるという運用上の利点が得られる。また、開口面積Sを広くすると、精度上の管理・保証が容易になるという利点が得られる。そこで、本実施形態では、首長さLを長くすることで開口面積Sを広くするようにして、所定の共鳴周波数fRを発生させるようにしている。
【0021】
ちなみに、肉薄の板材に、ドリルなどの切削工具や打ち抜き用の工具などで単に孔をあけて連通孔14Gを構成するとすれば、連通孔14Gの首長さLを、板材の肉厚以上に厚く(長く)することは困難である。
【0022】
しかし、本実施形態では、図3(b)に示すように、連通孔14Gの首長さLを確保するための突出部14Hを、副気室形成部材14の平行板14Aの略中央の材料自体を折り曲げることで(深絞り成型するようにして折り曲げることで)、副気室SCの内側に向けて形成している。このように突出部14Hを形成することで、喩え薄肉の板材であっても、連通孔14Gに奥行きを持たせることができ、首長さLの長さを確保できるようになる。また、従来のように、首長さLの長さを確保するために、別部材を取り付ける必要がない。このため、部品点数の削減や、工数の削減、材料の節減などができるようになる。
【0023】
また、従来は特許文献1の図5などに見られるように、副気室SCの外側にも連通孔14G(突出部14H)を突出させていたが、本実施形態では、副気室SCの内側に突出部14Hを突出させることで、突出部14Hを副気室SCの外側には突出させないで済ませている。このため、例えばタイヤ20の組み付けが容易である。
【0024】
なお、突出部14Hを形成した連通孔14Gは、所定の共鳴周波数fRを発生させるため、式1に基づいて設定した所定の開口面積Sと所定の首長さLを有している。
【0025】
副気室形成部材14のリム11への固定を説明する。
前記説明したように構成された副気室形成部材14は、リム11のウエル部11Cの端の立ち上がり部分を利用して溶接して固定される。このため、形成される副気室SCの断面は矩形になる。なお、副気室形成部材14のリム11への固定の仕方(副気室SCの形成の仕方)は、フランジ部14Fの部分を全周にわたってリム11(ウエル部11C)に溶接する全周溶接による固定でも、フランジ14部Fの部分をリム11にスポット溶接すると共に、フランジ部14Fに接着剤やシール材を塗布して気密性を確保する固定でもよい。このように固定することで、気密性が確保されるので、タイヤ空気室MCに発生する気柱共鳴を、副気室SCで発生する共鳴により低減することができる。また、リム11の構造を利用して副気室SCを形成しているので、副気室SCを設けることによる車両用ホール10の重量増加を少なくすることができる。
【0026】
ちなみに、副気室SCは、リム11(ウエル部11C)に沿って形成されるが、この副気室SCを形成する数は、1以上であればよい。なお、副気室SCの数が多くなると、副気室SCの体積が小さくなるので、共鳴周波数fRは高くなる。
【0027】
図4と式1を参照して副気室SCと共鳴周波数fRの関係を説明する。
本実施形態のように、連通孔14Gによりタイヤ空気室MCと副気室SCを連通した場合に副気室SCが発生する周波数(共鳴周波数)fRは、次の式1で表現される。
【0028】
fR=C/2π×√(S/(V(L+α×√S)) … (式1)
fR;共鳴周波数…Hz
C;副気室SC内部の音速(=タイヤ空気室MC内部の音速)…m/秒
S;連通孔14Gの開口面積…平方m
V;副気室SCの体積…立方m
L;連通孔14Gの首長さ…m
α;補正係数
【0029】
この式1から理解されるように、連通孔14Gの開口面積Sが大きくなると共鳴周波数fRは高くなる。また、副気室SCの体積Vが大きくなると共鳴周波数fRは低くなる。また、連通孔14Gの首長さLが長くなると共鳴周波数fRは低くなる。また、連通孔14Gの開口面積Sが大きくなると、共鳴周波数fRは高くなる。
【0030】
ここで、特許文献1の段落番号[0043]の[数1]に見られるように、従来は式1の補正係数αの値を0.8にして計算を行い、所定の共鳴周波数fRが発生するようにしていた。しかしながら、タイヤ空気室MCを構成するリム11の周方向の長さ(気柱の長さ)に対して副気室SCの周方向の長さLSC(図3(b)参照)が長くなると(「副気室SCの長さ比」が大きくなると)、補正係数αが0.8のままでは適切に共鳴周波数fRを設定できないといった問題があることが判った。殊に、副気室SCの長さ比が大きくなるに連れて(1に近付くに連れて)、目的とした共鳴周波数fRを発生しにくくなる傾向が強くなった。なお、副気室SCがリム11の全周を取り巻く場合の副気室SCの長さ比は1である。
【0031】
この問題に対して本発明者らは、副気室SCの周方向の長さLSCが長くなると、図4に示すように、補正係数αの値を大きくすることで、かかる問題を解決できることを見出した。そして、この知見から、補正係数αを大きくした式1に基づいて、所定の共鳴周波数fRになるように、連通孔14Gの首長さL、連通孔14Gの開口面積S、副気室SCの体積Vを設定することで、副気室SCの共鳴によりタイヤ空気室MCの気柱共鳴による振動を効果的に低減することができることが判った。
【0032】
なお、図4では、副気室SCの長さ比が0.25を超える辺りから補正係数αの値を大きくしていっている。そして副気室SCの長さ比が1の場合、即ち、リム11の全周を副気室SCが取り囲む構成の場合は、補正係数αは5.5である。つまり、副気室SCの長さ比が0.25を超える辺りから従来の発明との差異が生じ、有利な効果を奏する。
【0033】
図5は、本発明の効果を説明するために引用した周波数−騒音レベル曲線である。この図は、横軸が周波数、縦軸が騒音レベルである。一点鎖線で示す曲線は、副気室SCを形成しない場合の周波数−騒音レベル曲線であり、実線で示すのは副気室SCを形成した場合の周波数−騒音レベル曲線である。
【0034】
この図5に示されるように、副気室SCを形成しない場合(一点鎖線の曲線参照)は、気柱共鳴による大きな振動レベルのピークP1が気柱共鳴周波数fTである250Hz辺りに発生しているが、副気室SCを形成した場合(実線の曲線参照)は、気柱共鳴によるピークP1がなくなり、気柱共鳴周波数fTの前後に小さなピークP2が2つ出現している。つまり、気柱共鳴によるロードノイズが低減されている。ちなみに、本実施形態では、フランジ部14Fにより副気室形成部材14をリム11(ウエル部11C)に全周溶接して固定しているので気密性が確保され、より確実に気柱共鳴によるロードノイズの低減が達成されている。
【0035】
次に、車両用ホイール10へのタイヤ20の組み付けを説明する。
図1から図3に示されるように、突出部14Hを副気室SCの内側に形成していることから、副気室形成部材14の表面は平らである。また、ウエル部11Cの溝も確保されている。このため、車両用ホイール10へのタイヤ20の組み付け(装着)は、通常の車両用ホイールと同様に行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、車両用ホイール10は鉄製であるとして説明したが、アルミニウム製でも、マグネシウム合金製でもよい。また、車両用ホイール10は、リム11とディスク12とから構成されることとして説明したが、例えばディスク12は、ホイールスポークであってもよい。また、副気室14を設ける数は特に限定されない。例えば、リム11を1周取り巻いた1つの副気室SCを構成するようにしてもよい(副気室SCの長さ比=1)。また、フランジ部(耳部)14Fは、副気室形成部材14の全周を取り囲んで形成する必要は必ずしもなく、適宜省略することができる。
【0037】
また、特に第2態様の発明については、その性質上、副気室SCを形成する位置が特定の場所に限定されることはない。例えば、リム11の外周面に副気室SCを形成しても、第2態様の発明の技術的範囲に属する。また、第1態様の発明については、副気室形成部材14とリム11とで閉空間となる副気室SCを形成することとしたが、つまりリム11を利用して副気室SCを形成することとしたが、第2の態様の発明(請求項4)についてはこのような制限などはない。
【0038】
【発明の効果】
以上説明した本発明のうち、請求項1に記載の発明(第1態様の発明)によれば、副気室の気密をより確実にできるので、気柱共鳴によるロードノイズを適切に消音することができる。また、請求項2に記載の発明によれば、例えば連通部の開口面積を大きくできるので、連通部の加工がし易くなる。また、内側に突出部を形成することで、タイヤの組み付けが容易になる。また、請求項3に記載の発明によれば、部品点数の削減などを図ることができる。
【0039】
また、請求項4に記載の発明(第2態様の発明)によれば、副気室の設計を適切に行うことができるので、気柱共鳴によるロードノイズを適切に消音することができる。また、請求項5に記載の発明によれば、第1態様の発明における副気室の設計を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる実施形態の車両用ホイールの斜視図である。
【図2】図1の車両用ホイールにタイヤを装着した車輪の周方向の要部を示す断面図である。
【図3】(a)は図1の車両用ホイールにおける副気室形成部材の固定状態を平面視した図であり、(b)は副気室形成部材の側面を断面視した図である。
【図4】副気室の長さ比と補正係数の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の効果を説明するために引用した周波数−騒音レベル曲線である。
【符号の説明】
1 … 車輪
10 … 車両用ホイール
11 … リム
11A… リムフランジ
11B… ビードシート部
11C… ウエル部
12 … ディスク
14 … 副気室形成部材
14A… 平行板
14B… 垂直板
14C… 端板
14D… 端板
14F… フランジ部
14Fa,14Fb,14Fc,14Fd… フランジ部
14G… 連通孔
14H… 突出部
20 … タイヤ
21 … タイヤ本体
22 … インナライナ
22A… ビード部
MC … タイヤ空気室
SC … 副気室
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などの車両に装着される車両用ホイール、殊にロードノイズを低減することのできる車両用ホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行により発生するロードノイズを低減するため、タイヤとホイールリムの間に形成されるタイヤ空気室に、タイヤの気柱共鳴周波数fTに相当する250Hz辺りの振動を、共鳴により吸収する副気室を形成することが従来から行われている(特許文献1参照)。この特許文献1の「リムホイール」は、リムの外周面に複数の蓋部材を周方向に配置すると共に、蓋部材の内側に隔壁を設け、これにより、リムと蓋部材との間に複数の副気室を周方向に形成している。
【0003】
この副気室は、タイヤ空気室と、蓋部材に設けた連通部としての隙間を介して連結されることで、ヘルムホルツ共鳴吸音器を構成しており、このヘルムホルツ共鳴吸音器により発生された共鳴周波数fRで特定の周波数(タイヤの気柱共鳴周波数fT)の振動を吸収(つまり消音)する構成になっている。また、副気室は、タイヤ周方向に連続した環形状ではないので、空洞共鳴音(気柱共鳴音)の発生を抑えることができる。また、リムには、凹状のウエル部を設けているので、タイヤを従来通りリム組みできるというものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−79802号公報([0019]、[要約]など)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1のリムホイールでは、副気室の気密性を確保することに関して充分でない点があった。具体的には、構造上、隔壁による副気室同士の間の気密を充分に行えないおそれがあり、このため、充分に消音できないといったことが考えられる。また、殊に特許文献1の図1の構造では、蓋部材とリム(ウエル部)との間で気密を充分に確保できないおそれがあった。また、副気室や連通部(連通孔)のデザインに関連していうと、副気室により発生する共鳴周波数fRを評価する計算式について、充分に検討されていない面があった。
【0006】
そこで、本発明は、副気室を設けてロードノイズの低減を図る技術に関して、副気室による消音をより適切に行うことができるようにした車両用ホイールを提供することを主たる目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決した本発明の車両用ホイール(第1態様の発明、請求項1)は、リムの外周面に副気室を形成する副気室形成部材を周方向に複数設けて副気室を形成した構成をしている。そして、この車両用ホイールの前記副気室形成部材は、前記リムの外周面との間に副気室を形成する副気室形成部と、前記副気室をタイヤとリムとの間に形成されるタイヤ空気室に連通させる連通部と、前記副気室形成部材の前記リムとの接続部に形成した耳部とを備え、前記副気室形成部材を、前記耳部を介して前記リムの外周面のウエル部に気密に固定して前記副気室を形成したことを特徴とする。
これによれば、副気室形成部材を、リムの外周面のウエル部に、周方向に複数設けて副気室を形成するが、この形成に際しては耳部が利用されるので、気密性の確保がより確実に行えるようになる。
【0008】
また、本発明の車両用ホイール(請求項2)は、請求項1の構成において、前記連通部に、当該連通部の首長さを確保するための突出部を形成すると共に、当該突出部を前記副気室の内側に向けたことを特徴とする。
これによれば、突出部を形成することで連通部の開口面積を大きくすることができ、連通部の加工がし易くなる。これにより、目的とした共鳴周波数fRを発生させ易くなる。また、内側に突出部を形成することで、タイヤ空気室側に突出部を形成するのと異なり、タイヤの組み付けが容易になる。
【0009】
また、本発明の車両用ホイール(請求項3)は、請求項2の構成において、前記突出部を、前記副気室形成部材を折り曲げることにより形成したことを特徴とする。
【0010】
また、前記課題を解決した本発明の車両用ホイール(第2態様の発明、請求項4)は、タイヤとリムにより形成されるタイヤ空気室に連通する連通部を備えた副気室を、前記リムに沿って周方向に少なくとも1つ設けた構成をしている。そして、この車両用ホイールは、前記連通部の開口面積、前記連通部の首長さ、および前記副気室の体積をパラメータとした次の式1で定義される前記副気室の共鳴周波数に関して、前記副気室の周方向の長さが長くなると、前記式1の補正係数の値を大きくして前記パラメータを設定し、前記共鳴周波数を所定の値にしたことを特徴とする。
fR=C/2π×√(S/(V(L+α×√S))) … (式1)
ここで、fRは共鳴周波数、Cは副気室内部の音速、Sは連通部の開口面積、Vは副気室の体積、Lは連通部の首長さ、αは補正係数である。
【0011】
この構成によれば、副気室の周方向の長さが長くなると、式1の補正係数が大きくされる。例えば、後記する実施形態で参照する図4のグラフのように、副気室の周方向の長さ/気柱の長さの比(副気室の長さ比)が0.25を超える辺りから補正係数を大きくして計算を行い、例えば共鳴周波数fRが250Hz程度になるように、連通部(連通孔)の首長さや連通部(連通孔)の開口面積を設定する。このようにすることで、従来、適切に消音できなかったものが消音できるようになる。また、設計や加工が容易になる。なお、この第2態様の発明は、請求項1などの発明(第1態様の発明)の副気室だけに適用が限定されるのではなく、あらゆるタイプの副気室(レゾ室、消音室…)に適用することができる。
【0012】
また、本発明の車両用ホイール(請求項5)は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明における連通部の設定を、請求項4の式1に基づいて定めることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図1などを参照して詳細に説明する。
参照する図において、図1は、車両用ホイールの斜視図である。図2は、図1の車両用ホイールにタイヤを装着した車輪の周方向の要部を示す断面図である。図3は、図1の車両用ホイールにおける副気室形成部材の固定状態を平面視した図などである。
【0014】
車両用ホイール10の構成を説明する。
図1および図2に示されるように、本実施形態の車両用ホイール10は、円盤状のディスク12の外周にリム11が固定された構成をしている。また、このような構成をした車両用ホイール10の外周に、タイヤ20が装着されて車輪1を構成している。なお、タイヤ20に関して、符号21はタイヤ本体、符号22はインナライナ、符号22Aはビード部を示す。また、符号MCはタイヤ20とリム11との間に形成されるタイヤ空気室(主気室)を示す。
【0015】
リム11(図2参照)は、断面視したリム11の両端近傍にタイヤ20のビード部22Aが位置するビードシート部11Bを、リム11の両端にリムフランジ11Aを有する。また、リム11は、凹形状をしたウエル部11Cを有する。本実施形態では、副気室SCは、副気室形成部材14とリム11のウエル部11Cとで形成される。なお、本実施形態の車両用ホイール10は、鉄製であるとする。
【0016】
副気室SCを形成する副気室形成部材14の構成を説明する。
図1から図3に示されるように、副気室形成部材14は、車両用ホイール10のリム11に沿って固定され、リム11との間に独立した空間である副気室SCを、リム11の外周面(ウエル部11C)に形成する役割を有する。このため、副気室形成部材14は、タイヤ20のトレッドに平行な平行板14Aとトレッドに垂直な垂直板14Bを備える断面L字型をした本体部分と、この本体部分(平行板14Aと垂直板14B)の端部から外側に延出したフランジ部14F(14Fa,14Fb)とを有する。また、副気室形成部材14の長手方向の両端には、一端側の端板14Cと他端側の端板14Dと、この端板14C,14Dから外側に延出したフランジ部14F(14Fc,14Fd)を有する。即ち、副気室形成部材14は、L字チャンネル型に構成された平行板14Aと垂直板14B(本体部分)と、長手方向の両端にそれぞれ位置する端板14C,14Dと、これらの周囲に延出するフランジ部14F(14Fa,14Fb,14Fc,14Fd)を含んで構成される。ちなみに、平行板14A、垂直板14B、および両方の端板14C,14Dで構成される空間が、請求項の「副気室形成部」に相当する。また、フランジ部14Fは、請求項の「副気室形成部材のリムとの接続部に形成した耳部」に相当する。
【0017】
なお、フランジ部14Fは、リム11の外周面に副気室SCを形成する際に、副気室SCの気密性を高める目的(ひいては消音効果を高める目的)で形成されるものであることから、当該目的を達成できるものであれば、その形状・材質などの如何は問わない。ちなみに、図1では、副気室形成部材14は1つしか示していないが、この副気室形成部材14は、車輪1の静バランスや動バランスを考慮して、適宜間隔を置いて複数固定されているものとする。即ち、副気室SCは、適宜間隔を置いて複数形成されているものとする。
【0018】
また、副気室形成部材14は、副気室形成部材14の内部(副気室形成部)に形成される副気室SCとタイヤ20とリム11の間に形成されるタイヤ空気室(主気室)MCとを連通する連通孔14Gを有する(この連通孔14Gは請求項の「連通部」に相当する)。連通孔14Gを設ける位置は、副気室形成部材14が有する4面(板14A,14B,14C,14D)の何れでもよい。
【0019】
なお、タイヤ空気室MCの中には、何らかの理由により水(水蒸気)が閉じ込められる場合がある。この閉じ込められた水がタイヤ空気室MCにある場合はさほど問題にはならないが、この水が副気室SCに入り込んで長く留まると、鉄製の車両用ホイール10の場合は錆びが問題になる。このため、本実施形態のような鉄製の車両用ホイール10に副気室SCを形成する場合、副気室SCからの排水を考慮して、端板14C(或いは14D)に連通孔14Gを形成するのが好ましい。ちなみに本実施形態では、連通孔14Gは、端板14Cではなく、平行板14Aの略中央部に設けてある(図1から図3参照)。
【0020】
連通孔14Gの開口面積Sと首長さ(経路長)Lの関係は、後で式1を参照して説明するが、連通孔14Gの首長さLを長くすると、副気室SCにより発生する共鳴周波数fRは低くなる。一方で、連通孔14Gの開口面積Sを広くすると、副気室SCにより発生する共鳴周波数fRは高くなる。また、連通孔14Gの開口面積Sを広くすると、連通孔14Gの加工が容易になるという加工上の利点(ひいては目的とする共鳴周波数fRを発生させやすくなるという利点)と、連通孔14Gに目詰まり(例えば表面処理塗装などによる目詰まり)が起こり難くなるという運用上の利点が得られる。また、開口面積Sを広くすると、精度上の管理・保証が容易になるという利点が得られる。そこで、本実施形態では、首長さLを長くすることで開口面積Sを広くするようにして、所定の共鳴周波数fRを発生させるようにしている。
【0021】
ちなみに、肉薄の板材に、ドリルなどの切削工具や打ち抜き用の工具などで単に孔をあけて連通孔14Gを構成するとすれば、連通孔14Gの首長さLを、板材の肉厚以上に厚く(長く)することは困難である。
【0022】
しかし、本実施形態では、図3(b)に示すように、連通孔14Gの首長さLを確保するための突出部14Hを、副気室形成部材14の平行板14Aの略中央の材料自体を折り曲げることで(深絞り成型するようにして折り曲げることで)、副気室SCの内側に向けて形成している。このように突出部14Hを形成することで、喩え薄肉の板材であっても、連通孔14Gに奥行きを持たせることができ、首長さLの長さを確保できるようになる。また、従来のように、首長さLの長さを確保するために、別部材を取り付ける必要がない。このため、部品点数の削減や、工数の削減、材料の節減などができるようになる。
【0023】
また、従来は特許文献1の図5などに見られるように、副気室SCの外側にも連通孔14G(突出部14H)を突出させていたが、本実施形態では、副気室SCの内側に突出部14Hを突出させることで、突出部14Hを副気室SCの外側には突出させないで済ませている。このため、例えばタイヤ20の組み付けが容易である。
【0024】
なお、突出部14Hを形成した連通孔14Gは、所定の共鳴周波数fRを発生させるため、式1に基づいて設定した所定の開口面積Sと所定の首長さLを有している。
【0025】
副気室形成部材14のリム11への固定を説明する。
前記説明したように構成された副気室形成部材14は、リム11のウエル部11Cの端の立ち上がり部分を利用して溶接して固定される。このため、形成される副気室SCの断面は矩形になる。なお、副気室形成部材14のリム11への固定の仕方(副気室SCの形成の仕方)は、フランジ部14Fの部分を全周にわたってリム11(ウエル部11C)に溶接する全周溶接による固定でも、フランジ14部Fの部分をリム11にスポット溶接すると共に、フランジ部14Fに接着剤やシール材を塗布して気密性を確保する固定でもよい。このように固定することで、気密性が確保されるので、タイヤ空気室MCに発生する気柱共鳴を、副気室SCで発生する共鳴により低減することができる。また、リム11の構造を利用して副気室SCを形成しているので、副気室SCを設けることによる車両用ホール10の重量増加を少なくすることができる。
【0026】
ちなみに、副気室SCは、リム11(ウエル部11C)に沿って形成されるが、この副気室SCを形成する数は、1以上であればよい。なお、副気室SCの数が多くなると、副気室SCの体積が小さくなるので、共鳴周波数fRは高くなる。
【0027】
図4と式1を参照して副気室SCと共鳴周波数fRの関係を説明する。
本実施形態のように、連通孔14Gによりタイヤ空気室MCと副気室SCを連通した場合に副気室SCが発生する周波数(共鳴周波数)fRは、次の式1で表現される。
【0028】
fR=C/2π×√(S/(V(L+α×√S)) … (式1)
fR;共鳴周波数…Hz
C;副気室SC内部の音速(=タイヤ空気室MC内部の音速)…m/秒
S;連通孔14Gの開口面積…平方m
V;副気室SCの体積…立方m
L;連通孔14Gの首長さ…m
α;補正係数
【0029】
この式1から理解されるように、連通孔14Gの開口面積Sが大きくなると共鳴周波数fRは高くなる。また、副気室SCの体積Vが大きくなると共鳴周波数fRは低くなる。また、連通孔14Gの首長さLが長くなると共鳴周波数fRは低くなる。また、連通孔14Gの開口面積Sが大きくなると、共鳴周波数fRは高くなる。
【0030】
ここで、特許文献1の段落番号[0043]の[数1]に見られるように、従来は式1の補正係数αの値を0.8にして計算を行い、所定の共鳴周波数fRが発生するようにしていた。しかしながら、タイヤ空気室MCを構成するリム11の周方向の長さ(気柱の長さ)に対して副気室SCの周方向の長さLSC(図3(b)参照)が長くなると(「副気室SCの長さ比」が大きくなると)、補正係数αが0.8のままでは適切に共鳴周波数fRを設定できないといった問題があることが判った。殊に、副気室SCの長さ比が大きくなるに連れて(1に近付くに連れて)、目的とした共鳴周波数fRを発生しにくくなる傾向が強くなった。なお、副気室SCがリム11の全周を取り巻く場合の副気室SCの長さ比は1である。
【0031】
この問題に対して本発明者らは、副気室SCの周方向の長さLSCが長くなると、図4に示すように、補正係数αの値を大きくすることで、かかる問題を解決できることを見出した。そして、この知見から、補正係数αを大きくした式1に基づいて、所定の共鳴周波数fRになるように、連通孔14Gの首長さL、連通孔14Gの開口面積S、副気室SCの体積Vを設定することで、副気室SCの共鳴によりタイヤ空気室MCの気柱共鳴による振動を効果的に低減することができることが判った。
【0032】
なお、図4では、副気室SCの長さ比が0.25を超える辺りから補正係数αの値を大きくしていっている。そして副気室SCの長さ比が1の場合、即ち、リム11の全周を副気室SCが取り囲む構成の場合は、補正係数αは5.5である。つまり、副気室SCの長さ比が0.25を超える辺りから従来の発明との差異が生じ、有利な効果を奏する。
【0033】
図5は、本発明の効果を説明するために引用した周波数−騒音レベル曲線である。この図は、横軸が周波数、縦軸が騒音レベルである。一点鎖線で示す曲線は、副気室SCを形成しない場合の周波数−騒音レベル曲線であり、実線で示すのは副気室SCを形成した場合の周波数−騒音レベル曲線である。
【0034】
この図5に示されるように、副気室SCを形成しない場合(一点鎖線の曲線参照)は、気柱共鳴による大きな振動レベルのピークP1が気柱共鳴周波数fTである250Hz辺りに発生しているが、副気室SCを形成した場合(実線の曲線参照)は、気柱共鳴によるピークP1がなくなり、気柱共鳴周波数fTの前後に小さなピークP2が2つ出現している。つまり、気柱共鳴によるロードノイズが低減されている。ちなみに、本実施形態では、フランジ部14Fにより副気室形成部材14をリム11(ウエル部11C)に全周溶接して固定しているので気密性が確保され、より確実に気柱共鳴によるロードノイズの低減が達成されている。
【0035】
次に、車両用ホイール10へのタイヤ20の組み付けを説明する。
図1から図3に示されるように、突出部14Hを副気室SCの内側に形成していることから、副気室形成部材14の表面は平らである。また、ウエル部11Cの溝も確保されている。このため、車両用ホイール10へのタイヤ20の組み付け(装着)は、通常の車両用ホイールと同様に行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、車両用ホイール10は鉄製であるとして説明したが、アルミニウム製でも、マグネシウム合金製でもよい。また、車両用ホイール10は、リム11とディスク12とから構成されることとして説明したが、例えばディスク12は、ホイールスポークであってもよい。また、副気室14を設ける数は特に限定されない。例えば、リム11を1周取り巻いた1つの副気室SCを構成するようにしてもよい(副気室SCの長さ比=1)。また、フランジ部(耳部)14Fは、副気室形成部材14の全周を取り囲んで形成する必要は必ずしもなく、適宜省略することができる。
【0037】
また、特に第2態様の発明については、その性質上、副気室SCを形成する位置が特定の場所に限定されることはない。例えば、リム11の外周面に副気室SCを形成しても、第2態様の発明の技術的範囲に属する。また、第1態様の発明については、副気室形成部材14とリム11とで閉空間となる副気室SCを形成することとしたが、つまりリム11を利用して副気室SCを形成することとしたが、第2の態様の発明(請求項4)についてはこのような制限などはない。
【0038】
【発明の効果】
以上説明した本発明のうち、請求項1に記載の発明(第1態様の発明)によれば、副気室の気密をより確実にできるので、気柱共鳴によるロードノイズを適切に消音することができる。また、請求項2に記載の発明によれば、例えば連通部の開口面積を大きくできるので、連通部の加工がし易くなる。また、内側に突出部を形成することで、タイヤの組み付けが容易になる。また、請求項3に記載の発明によれば、部品点数の削減などを図ることができる。
【0039】
また、請求項4に記載の発明(第2態様の発明)によれば、副気室の設計を適切に行うことができるので、気柱共鳴によるロードノイズを適切に消音することができる。また、請求項5に記載の発明によれば、第1態様の発明における副気室の設計を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる実施形態の車両用ホイールの斜視図である。
【図2】図1の車両用ホイールにタイヤを装着した車輪の周方向の要部を示す断面図である。
【図3】(a)は図1の車両用ホイールにおける副気室形成部材の固定状態を平面視した図であり、(b)は副気室形成部材の側面を断面視した図である。
【図4】副気室の長さ比と補正係数の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の効果を説明するために引用した周波数−騒音レベル曲線である。
【符号の説明】
1 … 車輪
10 … 車両用ホイール
11 … リム
11A… リムフランジ
11B… ビードシート部
11C… ウエル部
12 … ディスク
14 … 副気室形成部材
14A… 平行板
14B… 垂直板
14C… 端板
14D… 端板
14F… フランジ部
14Fa,14Fb,14Fc,14Fd… フランジ部
14G… 連通孔
14H… 突出部
20 … タイヤ
21 … タイヤ本体
22 … インナライナ
22A… ビード部
MC … タイヤ空気室
SC … 副気室
Claims (5)
- リムの外周面に副気室を形成する副気室形成部材を周方向に複数設けて副気室を形成した車両用ホイールであって、
前記副気室形成部材は、前記リムの外周面との間に副気室を形成する副気室形成部と、前記副気室をタイヤとリムとの間に形成されるタイヤ空気室に連通させる連通部と、前記副気室形成部材の前記リムとの接続部に形成した耳部と、を備え、
前記副気室形成部材を、前記耳部を介して前記リムの外周面のウエル部に気密に固定して前記副気室を形成したこと、
を特徴とする車両用ホイール。 - 前記連通部に、当該連通部の首長さを確保するための突出部を形成すると共に、当該突出部を前記副気室の内側に向けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
- 前記突出部を、前記副気室形成部材を折り曲げることにより形成したことを特徴とする請求項2に記載の車両用ホイール。
- タイヤとリムにより形成されるタイヤ空気室に連通する連通部を備えた副気室を、前記リムに沿って周方向に少なくとも1つ設けた車両用ホイールであって、
前記連通部の開口面積、前記連通部の首長さ、および前記副気室の体積をパラメータとした次の式1で定義される前記副気室の共鳴周波数に関して、
前記副気室の周方向の長さが長くなると、前記式1の補正係数αの値を大きくして前記パラメータを設定し、前記共鳴周波数を所定の値にしたこと、
を特徴とする車両用ホイール。
fR=C/2π×√(S/(V(L+α×√S))) … (式1)
fR;共鳴周波数
C;副気室内部の音速
S;連通部の開口面積
V;副気室の体積
L;連通部の首長さ
α;補正係数 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用ホイールにおける前記連通部の設定を、前記式1に基づいて定めることを特徴とする請求項4に記載の車両用ホイール。
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