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JP2004284176A - 液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents

液体噴射ヘッドの製造方法 Download PDF

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JP2004284176A
JP2004284176A JP2003078455A JP2003078455A JP2004284176A JP 2004284176 A JP2004284176 A JP 2004284176A JP 2003078455 A JP2003078455 A JP 2003078455A JP 2003078455 A JP2003078455 A JP 2003078455A JP 2004284176 A JP2004284176 A JP 2004284176A
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JP2003078455A
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Yutaka Furuhata
豊 古畑
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Seiko Epson Corp
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Seiko Epson Corp
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Publication date
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Abstract

【課題】接続配線を良好に形成でき且つ基板の割れを防止することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】流路形成基板10に封止基板30とノズルプレート20とが接合されると共に駆動IC110が実装された接合体150を台座200上に載置し、この接合体150表面の長手方向一端部側の周縁部を固定部材210で押圧して接合体150を台座200上に保持固定し、この状態で圧電素子300から引き出される引き出し配線90と駆動IC110とをワイヤボンディングにより電気的に接続する。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被噴射液を吐出する液体噴射ヘッドの製造方法に関し、特に、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室に供給されたインクを圧電素子によって加圧することにより、ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
そして、たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電体層を形成し、この圧電体層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
【0004】
また、このような圧電素子は、駆動IC(半導体集積回路)等によって駆動され、この駆動ICは、例えば、圧力発生室が形成された流路形成基板の一方面側に接合される封止基板上に固定される。そして、この駆動ICと各圧電素子から引き出される引き出し配線とが、ワイヤボンディングによって形成された接続配線によって電気的に接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、このような接続配線は、一般的に以下のような手順で形成される。まず、圧電素子が形成された流路形成基板に、封止基板等の所定の各基板を接合して接合体を形成すると共に、封止基板上に駆動ICを実装する。この接合体を台座上に載置し保持部材によってこの接合体の周縁部全体を台座上に押圧することによって固定する。そして、接合体全体を所定温度に加熱した状態でワイヤボンディングすることによって接続配線を形成する。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−160366号公報(第2図(a)、(b)、第6頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように接合体の周縁部全体を保持部材によって押圧した状態で接続配線を形成すると、その際の熱により接合体を構成する基板に割れが発生するという問題がある。例えば、流路形成基板及び封止基板は、シリコン単結晶基板等の比較的硬く割れが生じやすい材料で形成されるのに対し、ノズル開口が穿設されたノズルプレートは、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。このため、接合体を加熱すると、これら流路形成基板及び接合基板とノズルプレートとの熱膨張係数の違いにより、接合体にはその長手方向に沿った変形が生じる。しかし、接続配線を形成する際には接合体が固定部材によって固定されて変形が規制されているため、変形は発生しないが流路形成基板及び接合基板に割れが発生してしまう。
【0008】
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドの製造方法だけではなく、勿論、インク以外を吐出する他の液体噴射ヘッドの製造方法においても、同様に存在する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、接続配線を良好に形成でき且つ基板の割れを防止することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ノズル開口が穿設されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する圧力発生室が画成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側の面に設けられて当該圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板とを有し、且つ該封止基板上に前記圧電素子を駆動させる駆動ICが実装された液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記流路形成基板に前記封止基板と前記ノズルプレートとが接合されると共に前記駆動ICが実装された接合体を台座上に載置し、該接合体表面の長手方向一端部側の周縁部を固定部材で押圧して当該接合体を前記台座上に保持固定し、この状態で前記圧電素子から引き出される引き出し配線と前記駆動ICとをワイヤボンディングにより電気的に接続する接続工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0011】
かかる第1の態様では、ワイヤボンディングの際の熱に伴って、接合体を構成する流路形成基板、あるいは封止基板に割れが発生するのを防止することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ワイヤボンディングの際の熱による前記接合体の長手方向の変形を許容するように、前記接合体の前記一端部から所定範囲を前記固定部材によって押圧することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0013】
かかる第2の態様では、ワイヤボンディングの際の熱に伴う接合体の変形が許容されるため、流路形成基板あるいは封止基板に割れが発生するのを防止できる。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記接合体の短辺に沿った領域を前記固定部材によって押圧することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0015】
かかる第3の態様では、ワイヤボンディングの際の熱に伴う接合体の変形が確実に許容され、流路形成基板あるいは封止基板の割れをより確実に防止できる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記台座が加熱手段を具備し、該加熱手段によって前記台座を加熱することにより前記接合体全体を所定温度に上昇させた状態でワイヤボンディングを行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0017】
かかる第4の態様では、接合体を比較的容易に所定温度まで加熱することができ且つ接合体を構成する基板に割れが発生することもない。
【0018】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記固定部材と前記接合体との間に緩衝部材を介在させることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0019】
かかる第5の態様では、固定部材で接合体を押圧することによって生じる接合体の割れを防止することができる。
【0020】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記流路形成基板がシリコン単結晶基板からなり、前記ノズルプレートがステンレス鋼からなることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0021】
かかる第6の態様では、流路形成基板とノズルプレートとの熱膨張率が比較的大幅に異なる場合でも、流路形成基板に割れが生じるのを防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。この流路形成基板10には、複数の隔壁により区画された圧力発生室12がその長手方向に2列並設されている。また各列の圧力発生室12の長手方向外側には、連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、連通部13は、後述する封止基板30のリザーバ部33と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0023】
このような圧力発生室12等は、弾性膜50とは反対側の面から流路形成基板10を異方性エッチングすることによって形成されている。異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、本実施形態では、流路形成基板10が面方位(110)のシリコン単結晶基板からなるため、シリコン単結晶基板の(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。すなわち、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現する。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、圧力発生室12を高密度に配列することができる。
【0024】
本実施形態では、各圧力発生室12の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板10をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングすることにより形成されている。なお、弾性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。
【0025】
このような圧力発生室12等が形成される流路形成基板10の厚さは、圧力発生室12を配設する密度に合わせて最適な厚さを選択することが好ましい。例えば、1インチ当たり180個(180dpi)程度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、180〜280μm程度、より望ましくは、220μm程度とするのが好適である。また、例えば、360dpi程度と比較的高密度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、100μm以下とするのが好ましい。これは、隣接する圧力発生室12間の隔壁の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。
【0026】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.03〜0.3mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10−6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。ノズルプレート20は、一方の面で流路形成基板10の一面を全面的に覆い、流路形成基板10であるシリコン単結晶基板を衝撃や外力から保護する補強板の役目も果たす。ここで、インク滴吐出圧力をインクに与える圧力発生室12の大きさと、インク滴を吐出するノズル開口21の大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノズル開口21は数十μmの直径で精度よく形成する必要がある。
【0027】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成され、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、本実施形態では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用する。
【0028】
ここで、圧電素子300の個別電極である上電極膜80には、圧電素子300の長手方向端部近傍から圧力発生室12の外側の領域まで引き出されるリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90は、例えば、金(Au)等からなり、本実施形態では、圧電素子300の長手方向端部近傍から圧力発生室12の列間に対応する領域まで延設されている。また、圧電素子300の共通電極である下電極膜60は、本実施形態では、圧力発生室12の長手方向両端部近傍に対向する領域でそれぞれパターニングされ且つ圧力発生室12の並設方向に沿って圧力発生室12の列の外側の領域まで延設されている。そして、各圧力発生室12の列に対応する領域の下電極膜60は、圧力発生室12の列の外側の領域で連続している。
【0029】
流路形成基板10の圧電素子300側には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態でその空間を密封する圧電素子保持部31を有する封止基板30が接合されている。この圧電素子保持部31は、本実施形態では、各圧電素子300に対向する領域、すなわち、各圧力発生室12の列に対向する領域のそれぞれに設けられた圧電素子300の列をそれぞれ封止している。また、圧電素子保持部31の間、すなわち、封止基板30の中央部に対応する領域には、この封止基板30を厚さ方向に貫通する貫通部32が設けられている。そして、上電極膜80から引き出されたリード電極90の先端部がこの貫通部32内に露出され、各リード電極90はこの貫通部32内に延設された接続配線120を介して電気的に接続されている。
【0030】
また、この封止基板30には、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部33が設けられている。リザーバ部33は、本実施形態では、封止基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、弾性膜50及び絶縁体膜55を貫通して設けられた貫通孔を介して流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。この封止基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。これにより、熱硬化性の接着剤を用いた高温での接着であっても両者を確実に接着することができる。また、この封止基板30上の貫通部32の両側には、圧電素子300を列毎に駆動する2つの駆動IC110がそれぞれ実装されている。そして、駆動IC110と各リード電極90の貫通部32内に露出した端部近傍とが、ボンディングワイヤからなる駆動配線120によって電気的に接続されている。
【0031】
なお、封止基板30のリザーバ部33に対応する領域には、封止膜41及び固定板42からなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部33の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成されている。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0032】
このように構成したインクジェット式記録ヘッドは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC110からの記録信号に従い、上電極膜80と下電極膜60との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0033】
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図5を参照して説明する。なお、図3及び図4は、圧力発生室12の長手方向の断面図であり、図5は、接合工程を説明する平面図及び側面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコン単結晶基板である流路形成基板10を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、流路形成基板10の表面に弾性膜50及びマスク膜51を構成する二酸化シリコン膜52を形成する。次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、ジルコニウム(Zr)層を形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55を形成する。次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極形成膜65を形成後、この下電極形成膜65をパターニングすることにより、所定形状の下電極膜60を形成する。
【0034】
次に、図3(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなり圧電素子300の圧電体層70を構成する圧電体形成膜75と、例えば、アルミニウム、金、ニッケル、白金、イリジウム等の多くの金属、あるいは導電性酸化物等からなり上電極膜80を構成する上電極形成膜85とを順次積層する。そして、図3(e)に示すように、これら上電極形成膜85と圧電体形成膜75とを同時にパターニングして下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80からなる圧電素子300を形成する。次いで、図3(f)に示すように、金(Au)からなるリード電極形成膜95を流路形成基板10の全面に亘って形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介してリード電極形成膜95を各圧電素子300毎にパターニングすることによってリード電極90を形成する。以上が膜形成プロセスである。
【0035】
このようにして膜形成を行った後、流路形成基板10を異方性エッチングすることにより、圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14を形成する。具体的には、まず、図4(a)に示すように予め圧電素子保持部31等が形成された封止基板30を流路形成基板10の圧電素子300側の面に接合する。なお、封止基板30は、流路形成基板10を異方性エッチングする際に、各圧電素子300をアルカリ溶液から保護する役割も果たす。次いで、図4(b)に示すように、流路形成基板10の封止基板30との接合面とは反対側の面に形成されている二酸化シリコン膜52を所定形状にパターニングしてマスク膜51とする。そして、このマスク膜51を介して前述したアルカリ溶液による異方性エッチングを行うことにより、流路形成基板10に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14を形成する。なお、このように異方性エッチングを行う際には、封止基板30の表面を保護フィルム等で封止した状態で行う。次いで、図4(c)に示すように、流路形成基板10の封止基板30とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、封止基板30にコンプライアンス基板40を接合して接合体150とし、さらに、封止基板30上の所定位置に2つの駆動IC110をそれぞれ実装する。
【0036】
そして、図4(d)に示すように、ワイヤボンディングにより接続配線120を形成し、この接続配線120によって各圧電素子300から引き出されたリード電極90と駆動IC110とを電気的に接続する。ここで、ワイヤボンディングは、図5に示すように、駆動IC110が実装された接合体150(図4(c)参照)を台座200上に載置して吸引すると共に、例えば、金属等で形成された固定部材210によって台座200上に押圧して保持した状態で行う。このとき、接合体150の長手方向一端部側を固定部材210によって押圧して台座200上に保持するようにする。すなわち、ワイヤボンディングの際の熱による接合体150の変形を許容するように、接合体150の一端部から所定の範囲を固定部材210で押圧する。接合体150を固定部材210で押圧する範囲は、接合体150の長手方向の一端部側の1/3程度の領域であることが好ましい。例えば、本実施形態では、接合体150の周縁部の短辺に沿った領域のみを固定部材210によって押圧するようにしている。
【0037】
また、これら固定部材210と接合体150との間に、例えば、ゴム、樹脂等の比較的硬度の低い材料で形成された緩衝材を介在させることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定部材210と接合体150との間に、硬度が40°程度のゴムで形成した緩衝部材220を介在させるようにした。これにより、固定部材210によって接合体150に割れ等が発生するのをさらに防止できる。
【0038】
このように接合体150が保持される台座200には、例えば、ヒータ等の加熱手段(図示なし)が設けられており、この加熱手段で台座200を加熱することで接合体150全体を所定温度、例えば、75℃程度まで上昇させる。そして、接合体150を所定温度に保持した状態でワイヤボンディングすることにより接続配線120を形成する。
【0039】
このとき、シリコン単結晶基板で形成されている流路形成基板10及び封止基板30とステンレス鋼(SUS)で形成されているノズルプレート20及びコンプライアンス基板40を構成する固定板42とは、熱膨張係数が異なるため、接合体150にはその長手方向に沿った変形が生じる。そして、ステンレス鋼で形成されるノズルプレート20等が熱によって変形した際、シリコン単結晶基板で形成される流路形成基板10等がノズルプレート20等の変形に耐えられず、流路形成基板10等にクラック等による破壊が起きる。これは、流路形成基板10等を構成するシリコン単結晶基板よりもノズルプレート20等を構成するステンレス鋼の方が、ワイヤボンディング時に発生する熱による影響を受けやすいからである。
【0040】
本発明では、接合体150の長手方向一端部側、好適には長手方向一端部側の1/3程度の領域を固定部材210で押圧して接合体150を台座200上に保持しているため接合体150の変形が許容され、流路形成基板10又は封止基板30に割れが発生することがない。また、流路形成基板10及び封止基板30に割れが発生しないため、ワイヤボンディングを行う際の接合体150の温度を従来よりも上昇させることができる。
【0041】
例えば、本実施形態のように、接合体150の一端部側のみを固定部材210で押圧した状態で、接合体150の温度を上昇させた場合、約75℃程度まで割れは発生しなかった。一方、従来のように接合体の周縁部全体を押圧した状態で、接合体の温度を上昇させると約70℃程度で流路形成基板に割れが発生した。このように、従来の方法よりも高い温度でワイヤボンディングを行うことができるため、リード電極90及び駆動IC110と接続配線120との接合強度を向上することができ、耐久性及び信頼性を向上したインクジェット式記録ヘッドを実現できる。
【0042】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、接合体150の長手方向一端部側の駆動IC110の外側領域のみを固定部材210によって押圧することにより台座200上に保持するようにしたが、これに限定されず、例えば、図6に示すように、固定部材210Aを略コ字状とし、接合体150の周縁部の短辺に沿った領域と共に長辺に沿った領域の一部を押圧して台座200上に保持するようにしてもよい。何れにしても、接合体150の長手方向一端部側の領域のみを固定部材210によって押圧することで台座200上に保持していれば、ワイヤボンディング時に接合体150を構成する基板に割れが発生するのを防止することができる。
【0043】
また、例えば、上述の実施形態では、リード電極90と駆動IC110とを接続する接続配線120の形成工程を一例として本発明を説明したが、本発明の製造方法は、ボンディングワイヤからなる配線であれば、何れの部分を電気的に接続する配線にも適用することができる。さらに、例えば、上述の実施形態では、成膜及びリソグラフィプロセスを応用して製造される薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のインクジェット式記録ヘッドにも本発明を採用することができる。
【0044】
なお、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図7に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0045】
また、以上の説明では、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置を一例として挙げたが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図5】接続工程を説明する平面図及び断面図である。
【図6】接続工程の他の例を説明する平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21ノズル開口、 30 封止基板、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 110 駆動IC、 120 接続配線、 200 台座、 210 固定部材、 300 圧電素子

Claims (6)

  1. ノズル開口が穿設されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する圧力発生室が画成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側の面に設けられて当該圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板とを有し、且つ該封止基板上に前記圧電素子を駆動させる駆動ICが実装された液体噴射ヘッドの製造方法であって、
    前記流路形成基板に前記封止基板と前記ノズルプレートとが接合されると共に前記駆動ICが実装された接合体を台座上に載置し、該接合体表面の長手方向一端部側の周縁部を固定部材で押圧して当該接合体を前記台座上に保持固定し、この状態で前記圧電素子から引き出される引き出し配線と前記駆動ICとをワイヤボンディングにより電気的に接続する接続工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  2. 請求項1において、前記ワイヤボンディングの際の熱による前記接合体の長手方向の変形を許容するように、前記接合体の前記一端部から所定範囲を前記固定部材によって押圧することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  3. 請求項1又は2において、前記接合体の短辺に沿った領域を前記固定部材によって押圧することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記台座が加熱手段を具備し、該加熱手段によって前記台座を加熱することにより前記接合体全体を所定温度に上昇させた状態でワイヤボンディングを行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記固定部材と前記接合体との間に緩衝部材を介在させることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  6. 請求項1〜5の何れかにおいて、前記流路形成基板がシリコン単結晶基板からなり、前記ノズルプレートがステンレス鋼からなることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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