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JP2004248635A - イネゲノムの1塩基多型判別法の開発とイネ品種識別への応用 - Google Patents

イネゲノムの1塩基多型判別法の開発とイネ品種識別への応用 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、簡便、かつ再現性の高いゲノムDNAの多型性の識別方法を提供することにある。本発明の方法は、例えば、イネの品種識別、さらにはイネの育種選抜におけるDNAマーカーに使用することが可能である。
【解決手段】1塩基多型を判別するためのPCRプライマーによって上記課題を解決する。プライマーの3’末端は、判別すべき1塩基多型の位置に対応し、プライマーの3’末端から3番目の塩基はプライマーがアニールする鋳型配列と相補的な塩基から置換されている。この置換はGからT、AからCへ、TからG、またはCからAの置換である。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にイネの品種識別方法に属する。加えて、本発明の技術は、イネの育種選抜において有用形質を選抜するためのDNAマーカーとしても応用可能である。本発明の方法は、一粒の米飯またはイネの植物体より抽出したDNAから、ゲノムDNA中の1塩基レベルの差を簡便に判別して、イネの品種を識別する方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、イネの品種識別のみならず、例えば、選抜用DNAマーカーとして、1塩基レベルの差の判別能を利用して、DNAマーカー部位の遺伝子型決定を行う方法に属する。
【0003】
【従来の技術】
近年、ゲノムDNAの多型性に基づく品種の識別法が開発されている。
【0004】
PCR法を使用しないDNA多型の検出方法としては、AFLP(Amplifiled Fragment Length Polymorphism)が挙げられる。AFLP法は、1990年代に開発された、個体間、品種間のゲノムDNAの相同性を検出するゲノムフィンガープリント法であり(Vosら(1995)AFLP:a new technique for DNA fingerprinting. Nucleic Acids Res. 23、4407〜4414)、現在は、AFLPのためのキットも市販されている(例えば、AFLP Analysis system、Invitrogen社、Carlsbad、CA、USA)。この方法は、(1)ゲノムDNAを2種の制限酵素で処理し、アダプターを連結する、(2)アダプター配列に基づくプライマーを使用してPCRを行う(このプライマーは、アダプター配列の3’末端に特定の鋳型のみを増幅するための選択塩基を加えた配列を有する)、(3)増幅産物を、電気泳動によって分離し、特異的な増幅産物の有無を検出する、という工程を包含する方法である。この方法は、反応に必要なDNAが大量に必要であり、PCRと比較して工程が複雑であり、しかも、制限酵素認識部位以外での1塩基レベルの変化を判別することができないという欠点を有する。
【0005】
近年、PCR法を用いた多型の判別法が開発されている。PCR法の原理を使用した、ゲノムDNAの多型の識別法としては、マイクロサテライト法、RAPD法(random amplified polymorphic DNA method)、RAPD由来STS(sequence tagged site)法などが用いられている。しかし、これら従来法には、以下の欠点がある。
【0006】
マイクロサテライト法は、ゲノムDNA中に存在する数塩基の反復配列(マイクロサテライト)を増幅して、その反復配列の繰り返しの数の違いという多型性を判別する方法である。この方法は、数塩基の反復配列の反復数の差異というわずかなPCR増幅フラグメント長の差異を検出する方法であるため、増幅産物の解析の際に、高濃度のゲルを作成し、かつ慎重に長時間電気泳動をする必要がある。また、1塩基多型を判別できないという欠点を有する。
【0007】
RAPD法は、一般に12塩基程度のランダムプライマーを使用して、ゲノムDNAを増幅し、増幅されたバンドのパターンを電気泳動によって検出することによる、多型の判別方法である。RAPD法は、プライマーの調製は簡便ではあるものの、PCRの条件を厳密に設定する必要があり、しかも、わずかな条件(例えば、温度)の差異によって異なる結果が生じる。従って、RAPD法では、PCR条件の設定が困難であり、かつ条件を設定しても、再現性に乏しく、安定的な判別が困難である。また、RAPD法は、鋳型DNAの純度の影響を受け、さらに、複数回のPCRと電気泳動が必要であるという欠点もある。
【0008】
RAPD由来STS法は、RAPD法によって同定された特異的なバンドの配列決定を行い、その配列情報に基づいてプライマーを設計して、PCRを行う方法である。この方法は、RAPD法によって同定されたバンドに基づく方法であるため、塩基配列がかなり異なる多型を有するゲノム部分でのみ使用可能であり、1塩基置換を判別することが困難である。
【0009】
SNPs法は1塩基多型の遺伝子型を判別することができる方法ではあるが、安定的な判別のためには、PerkinElmer社(Boston、MA、USA)のマルチラベルカウンターのような高価な装置を使用する必要がある。
【0010】
本発明は、これら従来法の欠点を克服し、簡便かつ再現性の高い1塩基レベルの多型を判別するためのPCRプライマーを提供するものである。
【0011】
DNA多型判別方法の適用例として、ゲノムDNA配列の多型性に基づく品種識別も、近年重要になっている。例えば、イネの場合、古典的な品種識別は、交配させた場合の稔実性、イネの草型、米の粒型、酵素多型等の比較により行われてきた。しかし、これらの古典的な技術は、インディカとジャポニカの識別や、インディカ同士あるいはジャポニカ同士でも遠縁のイネの識別には有効である一方で、近縁の米の識別に供するには不十分であった。近年のように「コシヒカリ」を中心として開発された近縁良食味米同士の識別に用いることは不可能であるという問題がある。
【0012】
食糧法の施行に伴って、精米の品種、産地、産年を精米の包装に表示することが義務づけられた。これらの表示は品種識別の指標の一つとなりうるが、これらの他に植物体や籾、玄米の情報がない場合には、近縁の良食味米の品種を識別することは極めて困難である。
【0013】
最近では、コンビニエンスストア、業務用炊飯サービス、外食産業等で米飯として供給される米についても、品種の特定が必要とされている。しかし、炊飯による澱粉の糊化、タンパク質の変性等が起こるため、古典的な技術によって、DNAの抽出や品種の識別を行うことは不可能である。
【0014】
しかしながら、ゲノムDNAの多型性を識別する従来方法には、上記のような欠点がある。そのため、簡便、かつ再現性の高い多型性の識別方法が求められている。
【0015】
ゲノム分析による品種識別と原理を同じくする、DNAマーカー選抜育種におけるゲノム上の多型判別技術も、現行技術は同様な欠点を持ち、簡易で、かつ信頼のおける多型の識別技術が必要である。
【0016】
【特許文献1】
公開特許公報 特開平6−113850号
【特許文献2】
公開特許公報 特開平6−113851号
【特許文献3】
公開特許公報 特開平6−113852号
【特許文献4】
公開特許公報 特開平7−39400号
【特許文献5】
公開特許公報 特開2001−95589号
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、簡便、かつ再現性の高いゲノムDNAの多型性の識別方法を提供することにある。本発明の方法は、例えば、イネの品種識別、さらにはイネの育種選抜におけるDNAマーカーに使用することが可能である。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、SNPs判別法において使用するプライマーを検討し、簡便、かつ再現性の高い、ゲノムDNAの多型性の識別に使用可能なプライマーをはじめて見出したことによって達成された。
【0019】
具体的には、プライマーの3’末端から3番目の塩基を他の塩基に置換して、人工的なミスマッチを作り、PCRの選択性を高めた。このミスマッチを作る際は、例えば元の塩基がGの場合はTへ、Aの場合はCへ、Tの場合はGへ、Cの場合はAへ、置換すると最も高い確率で選択性のあるマーカーができる。
【0020】
プライマーのTmは、50℃以上、好ましくは、55℃以上、より好ましくは、60℃以上であり、そして、65℃以上、70℃以上のTmを有するプライマーも使用可能である。
【0021】
従って、本発明は以下を提供する。
1. 1塩基多型の遺伝子型を判別するためのPCRプライマーであって、該プライマーの3’末端から1番目の塩基は判別すべき該1塩基多型の位置に対応し、該プライマーの3’末端から3番目の塩基は該プライマーがアニールする鋳型配列と相補的な塩基から置換されており、該置換はGからT、AからCへ、TからG、またはCからAの置換である、プライマー。
2. 50℃以上のTmを有する、項目1に記載のプライマー。
3. 60℃以上のTmを有する、項目1に記載のプライマー。
4. 65℃以上のTmを有する、項目1に記載のプライマー。
5. 以下のプライマー対からなる群から選択されるプライマー対:
(1)配列番号1および2;
(2)配列番号3および4;
(3)配列番号5および6;
(4)配列番号7および8;ならびに
(5)配列番号9および10。
6. 項目5に記載のプライマー対を少なくとも2つ含む、プライマーのセット。
7. 配列番号1〜12からなる群から選択されるプライマーを2つ以上含む、項目6に記載のプライマーセット。
8. 項目1に記載のプライマーを使用する、1塩基多型の遺伝子型の判別方法。
9. 項目1に記載のプライマーを含む、1塩基多型の遺伝子型を判別するためのキット。
10. 1塩基多型の遺伝子型を判別する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)判別対象となる1塩基多型の遺伝子型を選択する工程;
b)多型判別用プライマーを調製する工程であって、ここで、該多型判別用プライマーの3’末端から1番目の塩基は判別すべき該1塩基多型の位置に対応し、該多型判別用プライマーの3’末端から3番目の塩基は該多型判別用プライマーがアニールする鋳型配列と相補的な塩基から置換されており、該置換はGからT、AからCへ、TからG、またはCからAの置換である、多型判別用プライマーを調製する工程;
c)該多型判別用プライマーと、少なくとも1つの別のプライマーを用いて、PCRを行う工程;および
d)PCR産物の増幅の有無から、1塩基多型の遺伝子型を判別する工程;
を包含する、方法。
11. 少なくとも2つ以上のプライマー対を用いる、項目10に記載の方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0023】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0024】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。必要に応じて、プライマーは、デオキシイノシン残基で置換された塩基を含む。
【0025】
用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、DNA、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0026】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本件明細書においてヌクレオチドを1文字表記する場合、Gはグアニンを、Tはチミンを、Aはアデニンを、Cはシトシンを示す。
【0028】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
【0029】
本明細書において使用する場合、用語「プライマー」とは、適切な条件下(例えば、4つの異なるヌクレオシド三リン酸およびポリメライゼーション剤(例えば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、または逆転写酵素)の存在下)で、適切な緩衝液中で、そして適切な温度において、鋳型指向性のDNA合成を開始する点として作用する一本鎖オリゴヌクレオチドをいう。プライマーの適切な長さは、プライマーの意図される使用に依存するが、代表的には、15〜30ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子は、鋳型との十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、一般により低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型の正確な配列に完全にマッチする必要はないが、鋳型とハイブリダイズするのに十分相補的であるべきである。用語「プライマー部位」とは、プライマーがハイブリダイズする標的である鋳型核酸の配列をいう。用語「プライマー対」とは、増幅される核酸配列の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマーおよび増幅されるその配列の3’末端の相補物とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含む一組のプライマーをいう。
【0030】
本明細書において使用する場合、「1塩基多型」とは、遺伝子の塩基配列が一ヶ所だけ異なる状態、およびその部位をいう。本明細書において、「1塩基多型」は、「SNP」および「SNPs」と互換可能に使用される。
【0031】
本明細書において使用する場合、「多型判別用プライマー」とは、そのプライマーを用いたPCRなどの核酸増幅反応によって、その増幅産物の有無から多型部位の遺伝子型を判別するために使用されるプライマーを意味する。本明細書において用語「多型判別用プライマー」は、「SNP判別プライマー」および「SNPs判別プライマー」と互換可能に使用される。
【0032】
また、本明細書においては、核酸増幅反応として、例示的に用語「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)」を用いているが、本発明の実施のためにPCR以外の核酸増幅反応も使用可能である。従って、本発明のプライマーが使用されるのは、PCRに限定されない。
【0033】
本明細書において、「プライマー」の3’末端から塩基を数える場合、「プライマーの3’末端から1番目の塩基」とは、3’末端の塩基をいう。従って、例えば、配列番号1の配列(5’−CCAACTGCTGCAATAATGCC−3’)を有するプライマーにおいて、「プライマーの3’末端から1番目の塩基」は「C」であり、「プライマーの3’末端から3番目の塩基」は「G」である。
【0034】
本明細書において、「プライマーの3’末端から1番目の塩基に対応する塩基」とは、プライマーが鋳型核酸とハイブリダイズした場合に、そのプライマーの3’末端から1番目の塩基がハイブリダイズする位置に存在する塩基をいう。
【0035】
本発明のプライマーを用いるPCRにおける鋳型DNAの調製は、周知の種々の方法(例えば、CTBA法、ボイル法など)によって、細胞および組織などからゲノムDNAを調製することによって、行われ得る。
【0036】
鋳型核酸としてDNAフラグメントを使用する場合、鋳型核酸は、例えば、ゲノムDNAまたはプラスミドDNAを消化することによって、あるいはPCRの使用によって、調製され得る。プライマーまたはプローブとしての使用のためのオリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの化学合成の分野において公知の方法(非限定的例として、BeaucageおよびCarruthers(Tetrahedron Lett 22:1859〜1862(1981))によって記載されるホスホロアミダイト法、およびMatteucciら(J.Am.Chem.Soc.、103:3185(1981))によって提供されるトリエステル法(両方を本明細書において参考として援用する)によって化学的に合成される。これらの合成は、Needham−VanDevanter,D.R.ら(Nucleic Acids Res.12:6159〜6168(1984)において記載されるような自動合成機を使用し得る。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson,J.D.およびRegnier,F.E.(J.Chrom、255:137〜149(1983))に記載されるように、ネイティブのアクリルアミドゲル電気泳動またはアニオン交換HPLCのいずれかによって行われ得る。次に、所望される場合、二本鎖フラグメントは、適切な相補的な一本鎖の対を適切な条件下でアニールすることによってか、または適切なプライマー配列とともにDNAポリメラーゼを使用して相補鎖を合成することによって、得られ得る。核酸プローブのための特定の配列が与えられる場合、相補的鎖もまた同定され、そして含まれることが理解される。その相補的鎖は、標的が二本鎖核酸である場合、同等に良く作用する。
【0037】
合成オリゴヌクレオチドの配列または任意の核酸フラグメントの配列は、ジデオキシチェーンターミネーション法またはマクサム−ギルバート法のいずれかを使用して得られ得る(Sambrookら、Molecular Cloning−a Laboratory Manual(第2版)、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、(1989)、本明細書において参考として援用する)。このマニュアルを、本明細書において、「Sambrookら」という;「Zyskindら(1988)」。Recombinant DNA Laboratory Manual、(Acad.Press、NewYork)。
【0038】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。
【0039】
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols inMolecular Biology、 Wiley、 New York、NY;Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
【0040】
(好ましい実施形態の説明)
1つの局面において、本発明は、3’末端から1番目、2番目、3番目、または4番目の塩基が置換されたプライマーを提供する。この置換は、1つのみであっても、2つ以上の組み合わせでもよい。好ましくは、3’末端から3番目の塩基のみが置換される。このプライマーの置換は、任意の置換であってよいが、好ましくは、GからT、AからCへ、TからG、またはCからAの置換である。
【0041】
1つの局面において、本発明のプライマーのTmは、好ましくは50℃以上、なお好ましくは、55℃以上、より好ましくは、60℃以上であり、そして、65℃以上、70℃以上のTmを有するプライマーも使用可能である。
【0042】
本発明のプライマーの3’は、判別する1塩基変異の位置に対応する。従って、1塩基変異の位置の塩基と、本発明のプライマーの3’末端から1番目の塩基はアニールし得る位置にある。本発明のプライマーを使用する場合、3’末端から1番目の塩基は、SNPの1つの遺伝子型の塩基と相補的であっても、そのSNPの他の遺伝子型と相補的であってもよい。本発明のプライマーを複数使用する場合は、好ましくは、3’末端から1番目の塩基がSNPの1つの遺伝子型の塩基に相補的であるプライマーと、3’末端の塩基がSNPの他の遺伝子型の塩基に相補的であるプライマーとを組み合わせて使用する。
【0043】
好ましくは、本発明のプライマーは、プライマーの3’末端の塩基と相補的な塩基を有する鋳型のみを増幅し得る。従って、本発明のプライマーを用いたPCR反応において、増幅産物が検出される場合には、鋳型中の、プライマー3’末端に対応する位置の塩基は、プライマー3’末端と相補的な塩基である。
【0044】
本発明におけるPCR反応において使用される鋳型としては、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNAが挙げられるがこれらに限定されない。本発明において使用されるゲノムDNAとしては、細菌の染色体DNA、真核生物の核DNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、ならびにウイルスDNAが挙げられるがこれらに限定されない。本発明において使用される鋳型は、天然から単離された状態であっても、単離された後に酵素などによって処理されたものあってもよい。鋳型を処理する酵素としては、逆転写酵素、制限酵素、ポリメラーゼなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
本発明において使用されるプライマーは、例えば、放射性物質、蛍光物質などによって標識されていてもよい。また、本発明のプライマーを使用するSNP判別方法において、同時に、STSプライマーを使用してもよい。
【0046】
PCR産物を検出する方法としては、電気泳動、リアルタイムPCR検出装置が挙げられるがこれに限定されない。
【0047】
PCR反応のためには、周知または市販の種々の酵素を使用しうる。また、PCR反応の条件は周知である。
【0048】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【0049】
【実施例】
(実施例1:ゲノムDNAの調製)
種々の生物からゲノムDNAを調製する方法は周知である。例えば、イネの精米、あるいは玄米からゲノムDNAを調製する場合は、以下の方法を用いた。
【0050】
精米、あるいは玄米を1粒とり(籾のついている米の場合は、藤原製作所(東京)の籾擦り機で玄米へ、玄米を精米にする場合は、ケット製(東京)の試験用パーレストを用いる)、薬包紙に包み、金槌で粉々にし、1.5mLのエッペンチューブ(試験用ポリプロピレン製小型試験管)に入れた。 400μLのDNA抽出液(100mM Tris−HCl pH 8.0, 10mM EDTA, 1M KCl)を添加し、攪拌した。10分室温で静置後、トミー遠心器MX−100で15000rpm,10分遠心し、上澄みをとり、400μLの2−プロパノールを加え、攪拌、15000rpm,10分遠心し、DNAを沈殿させた。上澄みを捨て、沈殿を乾燥させ、20μLのTE緩衝液(10mM Tris−HCl, 1mM EDTA pH 8.0) に溶かし、鋳型DNA(ゲノムDNA)として使用した。
【0051】
(実施例2:SNP判別プライマーの最適化)
PCR反応においてSNPの異なる遺伝子型を特異的に増幅するプライマーを作成し、その特異性を検討し、プライマーを最適化した。
【0052】
プライマーを最適化する際の候補プライマーとして、配列番号13(A1プライマー)と同様に、「T」塩基を「プライマーの3’末端から1番目の塩基に対応する塩基」として有する核酸配列を特異的に増幅するプライマーとして、A2〜A6プライマーを合成した(図1)。A2〜A6プライマー(配列番号14〜18)は、プライマーの3’末端から3〜5番目の塩基に対応する塩基が各種塩基に置換されたプライマーである。B1プライマー(配列番号19)は、A1プライマーの3’末端の「T」を「C」に置換したプライマーである。B2〜B6プライマー(配列番号20〜24)も同様に、A2〜A6プライマーの3’末端の「T」を「C」に置換したプライマーである。
【0053】
これらの各プライマーを、配列番号25に記載される配列(5’−gctggtgctatagctgttatcctc−3’)を有するプライマーとともに、鋳型DNAとしてコシヒカリから調製したDNAを用いて、以下の条件下でPCRを行った。
(PCR溶液)
鋳型DNA 1.0μL
10×Taq ポリメラーゼ反応用緩衝液 2.0μL
dNTPs (各2.5mM) 1.6μL
滅菌水 14.5μL
Taqポリメラーゼ(5U/μL) 0.1μL
プライマー(正方向)(50μM) 0.4μL
プライマー(逆方向)(50μM) 0.4μL
合計 20.0μL
今回の実験では、60℃以上のTm(融点)を有するプライマーを設計した。PCR用のポリメラーゼとして、HotStart用のTaqポリメラーゼであるタカラのEX Taq ポリメラーゼを使用した。PCR増幅器はタカラのThermal Cycler SPを用いているが、とくにこれらのものに限定されない。
【0054】
PCR条件は以下のとおりである:
94℃ 2分
の後、以下を30サイクル
94℃ 10秒
60℃ 10秒
72℃ 20秒
最後に4℃に保温して、PCR産物を保存した。
【0055】
ゲル電気泳動によるPCR増幅、非増幅の確認を行った結果を、図1に示す。図1の各レーンに示す実験に使用したプライマーは、以下のとおりである:
レーンA1(配列番号13および配列番号25)、
レーンB1(配列番号19および配列番号25)、
レーンA2(配列番号14および配列番号25)、
レーンB2(配列番号20および配列番号25)、
レーンA3(配列番号15および配列番号25)、
レーンB3(配列番号21および配列番号25)、
レーンA4(配列番号16および配列番号25)、
レーンB4(配列番号22および配列番号25)、
レーンA5(配列番号17および配列番号25)、
レーンB5(配列番号23および配列番号25)、
レーンA6(配列番号18および配列番号25)、
レーンB6(配列番号24および配列番号25)。
【0056】
使用したプライマーの配列は以下のとおりである:
A1プライマー:配列番号13:gcggctctaggccggcctggtat
A2プライマー:配列番号14:gcggctctaggccggcctggaat
A3プライマー:配列番号15:gcggctctaggccggcctgctat
A4プライマー:配列番号16:gcggctctaggccggcctcgaat
A5プライマー:配列番号17:gcggctctaggccggcctgggat
A6プライマー:配列番号18:gcggctctaggccggcctgttat
B1プライマー:配列番号19:gcggctctaggccggcctggtac
B2プライマー:配列番号20:gcggctctaggccggcctggaac
B3プライマー:配列番号21:gcggctctaggccggcctgctac
B4プライマー:配列番号22:gcggctctaggccggcctcgaac
B5プライマー:配列番号23:gcggctctaggccggcctgggac
B6プライマー:配列番号24:gcggctctaggccggcctgttac
AB−reverseプライマー:配列番号25:gctggtgctatagctgttatcctc。
【0057】
図1の電気泳動の結果に示されるように、3’末端のみが異なるプライマーは、SNPを特異的に判別することができなかった(レーンA1およびB1)。具体的には、使用したA1プライマーおよびB1プライマーの3’末端に対応する塩基は、コシヒカリでは「T」であるため、B1プライマーを用いた場合の増幅は、擬陽性の増幅である。従って、3’末端のみが異なるプライマーを使用しても、SNPを特異的に判別することはできなかった。
【0058】
次に、A1プライマーおよびB1プライマーの3’末端から3〜5番目の塩基に対応する塩基が各種塩基に置換されたプライマーA2〜A6およびB2〜B6を用いて、PCRおよびゲル電気泳動を行った。その結果、A5プライマーおよびB5プライマーを用いた場合にのみ、擬陽性も儀陰性も観察されたなかった。従って、最適なSNP判別プライマーを設計するためには、プライマーの3’末端から3番目の塩基を、プライマーがアニールする鋳型配列と相補的な塩基から置換することが好ましいことが理解できる。
【0059】
図1に示される結果(レーンA2、B2、A5およびB5)は、プリン−プリン塩基対のミスマッチが核酸二重鎖を不安定にするという予測と一致するものである。しかし、驚くべきことに、A/Aミスマッチを形成させるプライマーの場合よりも(レーンA2およびB2)、G/Aミスマッチを形成させるプライマーを用いた場合に(レーンA5およびB5)、1塩基多型判別におけるプライマーの特異性が顕著に向上し、実際に、G/Aミスマッチを形成させるプライマーを用いた場合には、擬陽性が検出されなかった。
【0060】
この結果は、(1)A/Aミスマッチを形成させることによって、異なる鎖のアデニンの6位のアミノ基の間で立体障害を生じるさせる場合と、(2)G/Aミスマッチを形成させて、グアニン環とアデニン環との間で水素結合を形成し得る場合、を比較すると、(2)の場合の方が、プライマーの塩基対形成に対してより大きな影響を与え、その結果、1塩基多型判別におけるプライマーの特異性を向上させたものと予測される。従って、ただ単に、プリン−プリンミスマッチ塩基対を形成させるだけでなく、水素結合を形成し得るG/Aミスマッチ塩基対を形成させることが、1塩基多型判別におけるプライマーの特性の向上に好ましい。
【0061】
同様に、ピリミジンの場合には、ただ単に、ピリミジン−ピリミジンミスマッチ塩基対を形成させるだけでなく、水素結合を形成し得るT/Cミスマッチ塩基対を形成させることが、1塩基多型判別におけるプライマーの特性の向上に好ましいと考えられる。
【0062】
以上の結果から、1塩基多型の遺伝子型を判別するためのPCRプライマーの設計においては、プライマーの3’末端から3番目の塩基をそのプライマーがアニールする鋳型配列と相補的な塩基から置換し、さらにその置換が、(1)G/A塩基対を形成するように、CからAの置換、またはTからGへの置換であるか、または(2)T/C塩基対を形成するように、GからTの置換、またはAからCへの置換であることが好ましい。
【0063】
(実施例3:プライマーの3’末端から1番目の塩基が判別すべきSNPの位置に対応するプライマーを用いるPCR増幅反応)
イネの品種識別を行うために、配列番号9および10のプライマー対を用いた。これらのプライマー対は、イネの第1染色体上にあるSNPを含む塩基配列(領域31P2)に基づいて以下のように設計した。
【0064】
31P2領域で、コシヒカリでは「A」塩基であるが、日本晴では「T」塩基であるSNPを同定した。このSNPの遺伝子型を判別するために、プライマーの3’末端から1番目の塩基を、このSNP部位の位置に対応させ、そしてコシヒカリのゲノムDNAを増幅するプライマーとして、配列5’−ctatcagaaatacttgctttggacaagcaa−3’(配列番号10)を有するプライマーを設計した。PCRにおいて、このプライマーとともに使用するプライマーとして、配列5’−gagcctgttgatggtgaagc−3’(配列番号9)を有するプライマーを設計し、PCR増幅反応を行った。
【0065】
反応液の組成は以下のとおりである:
Figure 2004248635
今回の実験では、Taq ポリメラーゼはタカラのEx Taq ポリメラーゼ、PCR増幅器はタカラのThermal Cycler SPを用いているが、とくにこれらのものに限定されない。
PCR条件は以下のとおりである:
94℃ 2分
の後、以下を30サイクル
94℃ 10秒
60℃ 10秒
72℃ 20秒
最後に4℃に保温して、PCR産物を保存した。
【0066】
上記以外のPCR反応を使用することは当業者に周知であるので、通常のDNAを増やすためのPCR増幅であれば、上の反応サイクルには限定されず、他のサイクルも同様に利用可能である。
【0067】
(ゲル電気泳動によるPCR増幅、非増幅の確認)
本実施例における品種識別では、任意に選択したイネのゲノムDNAを用いて、PCRによる増幅反応によって核酸が増幅されるか否かを指標として、ゲノムの多型性に基づくイネの品種識別を行った。
【0068】
ゲル電気泳動をする増幅核酸の確認方法は以下のとおりに行った。
0.8から2.0%のアガロースゲルを用い、PCR産物の一部をとり(2μL以上)、電気泳動する。電気泳動装置としては、コスモバイオ(東京)のミニゲル(商品名ミューピッド)を用いた。15分程度の泳動後、ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、UVランプでDNAを確認した(図2)。
【0069】
その結果、コシヒカリのゲノムDNAを鋳型に用いた場合には、PCR法によって核酸フラグメントが増幅された。コシヒカリと同じ遺伝子型をもつSNPを有する「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「きらら397」、「はえぬき」、「ササニシキ」、「どんとこい」、および「アキヒカリ」においても同様に、核酸フラグメントが増幅された。
【0070】
一方、日本晴のゲノムDNAを鋳型に用いた場合には、PCRによって、核酸フラグメントが増幅されなかった。日本晴型のSNPを有する、「キヌヒカリ」、「ゆきの精」、「こしいぶき」、「ハナエチゼン」、「ほほほの穂」および「五百万石」においても同様に、核酸フラグメントが増幅されなかった。
【0071】
従って、配列番号9および10のプライマー対を使用するPCRでの核酸フラグメントの増幅を指標にして、配列番号10のプライマーの3’末端から1番目の核酸に対応する塩基が「T」ではなく「A」であることを判別可能である。
【0072】
また、上記のプライマーを用いた場合に増幅された核酸が確認された場合には、PCRに用いた鋳型DNAを調整した品種が、例えば、「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「きらら397」、「はえぬき」、「ササニシキ」、「どんとこい」、または「アキヒカリ」ではあるが、「キヌヒカリ」でも、「ゆきの精」でも、「こしいぶき」でも、「ハナエチゼン」でも、「ほほほの穂」でも、「五百万石」でもないことも、識別可能である。
【0073】
(実施例4:マルチプレックスPCR)
イネの品種識別を行うためには、複数のプライマー対を組み合わせ、各プライマー対それぞれでの、増幅されたバンドの有無を調べる。そのため、通常は、複数のチューブでのPCR反応が必要である。
【0074】
そこで、この作業を簡便にするため、幾つかのプライマー対を混合し、1回のPCR(1つのチューブ)で反応を行うことも可能である。この方法は、マルチプレックス法と呼ばれている。この場合の反応液組成の例を示す。
【0075】
4種類のPCRマーカーの場合
鋳型DNA 1.0μL
10X PCR反応緩衝液 2.0μL
dNTPs (各2.5mM) 1.6μL
滅菌水 13.86μL
Taq ポリメラーゼ (5U/μL) 0.1 μL
プライマー(配列番号1〜8) 各50μM
合計 20μL
上記の反応において使用したプライマーは、以下のとおりである:
6P1N−522プライマー:配列番号1:CCAACTGCTGCAATAATGCC
6P1N−322プライマー:配列番号2:CGTAGCAACTCAATATAACATCAGCTAA
26P1K−5プライマー:配列番号3:TTGTTTAGACAAAGTAAAGGAGCAATGCT
26P1−3−1プライマー:配列番号4:GATATCTTAGGGCCCGTTTGG
17P1K−51プライマー:配列番号5:TGACAACGTAGATTAGGTTTCTATCAATAATAC
17P1K−32プライマー:配列番号6:ACAATCCTGTTTGTCGCAGG
4P1K−5−2プライマー:配列番号7:TTGTATCCAAATAAATCAGGACCACTCTG
4P1−3−11プライマー:配列番号8:GGTCTGTAGGCTGCTCAC。
【0076】
マルチプレックスPCRの場合、PCR産物の確認のためのゲル電気泳動では、3%のアガロースゲルを用い、バンド間の分離をはっきりさせるために40分程度の電気泳動を行なった。結果を図3に示す。
【0077】
(実施例5:マーカーによる品種識別)
本発明のプライマー対とSTS型プライマーを用いて、日本で流通している代表的品種と、北陸地域で育成された品種の品種識別を行った。品種判別のためのPCR条件は、実施例2のとおりである。
【0078】
本発明のプライマーとして、配列番号1〜10のプライマーに加えて、以下のプライマーを使用した:
37P2−5−Hプライマー:配列番号11:GGGTATCATGCCTTTACTGG
37P2−N3プライマー:配列番号12:GCGACAGGAGTAGCCTTC。
【0079】
12組のSTS型プライマーとして以下のプライマーを使用した:
18P1−5−1プライマー:配列番号26:GGCTGCTAGCGTCATCAGG
18P1−3−1プライマー:配列番号27:TTCTCATCATAACATATTGATCTTGC
18P12−52プライマー:配列番号28:ATGGCCGTGCTCTGTTTCC
18P12−32プライマー:配列番号29:CAGCAGTTTGGAAACCAACG
18P14−51プライマー:配列番号30:AAGACATAGGCCTCGGTTGC
18P14−31プライマー:配列番号31:TGTTGAACTTGGGGGTATGC
27P1−5−1プライマー:配列番号32:CATGCGCCTTCACACACC
27P1−3−1プライマー:配列番号33:CAATTGACTTTTGGCAAGATGC
29P1−5プライマー:配列番号34:AAGCAATCACTTCCTGCAACC
29P1−3プライマー:配列番号35:TGCTGCTCAGCAATACTTCG
33P1−5プライマー:配列番号36:AGTGCTCAAGAAATCATAGCTGA
33P1−3プライマー:配列番号37:GAAGCTTGTGAGTAACGGC
34P1−5−Hプライマー:配列番号38:TCTCCCAGATCAAGAACTAGC
34P1A−3プライマー:配列番号39:CGGCAAGCACAGCGTTC
34P2−5プライマー:配列番号40:ATTACTGCCAAACCGCTTGC
34P2−3プライマー:配列番号41:TGTGATCCATTATTGTCCGTAACC
34P3−5−1プライマー:配列番号42:TCCCTCCTTCTCACGACTCC
34P3−3−1プライマー:配列番号43:GACACCAGCTTCCCTTGTCC
35P1−5プライマー:配列番号44:TCTGACACTCTTATCAACAATTACATGAC
35P1−3プライマー:配列番号45:TGCAAGAAGGAACGAAGAGC
37P1−5プライマー:配列番号46:GCACACTATTATCCTTGCTCTAATGC
37P1−3プライマー:配列番号47:CATGGCGCTCACACAGG
38P1−5プライマー:配列番号48:ACCGAGATCATTGTTGTCTGTC
38P1−3プライマー:配列番号49:TTTGAGCCCATAAATGAATAATCTG。
【0080】
上記のプライマーを使用した比較結果を図4に示す。PCRでの増幅産物が確認された場合には「1」、PCRでの増幅産物が確認されなかった場合には「0」を記載した。
【0081】
上記のSTSプライマー(配列番号26〜49)では識別できなかったイネ品種はお互いに遺伝的に近縁なものが多いが(例えば、コシヒカリ、キヌヒカリ、どんとこい)、本発明のプライマーを使用した場合は識別することができた。
【0082】
具体的には、従来から用いられている12組のSTS型プライマーでは識別することができなかったコシヒカリ、ひとめぼれ、キヌヒカリ、はえぬき、どんとこい、ゆきの精、こしいぶき、ハナエチゼンについて、本発明の方法で作成した4組のSNP判別マーカー(配列番号1〜8)を用いることによって、識別することが可能となった。
【0083】
以上の結果から、本発明において最適化されたプライマーを用いることによって、擬陽性および擬陰性を生じることなく、1塩基多型判別することが可能となった。また、STS型プライマーを用いる従来の方法では識別できるマーカーを設定するに大きな労力が必要であった遺伝的に近縁なイネ品種を識別するマーカーも、容易に作成可能となった。
【0084】
また、本発明のプライマーと従来のSTS型プライマーを組み合わせることにより、さらに多くの近縁のイネを識別していくことが可能となる。
【0085】
【発明の効果】
本発明のプライマーを使用することにより、従来法よりも高精度に、1塩基レベルの変異を判別することが可能となった。また、SNPs遺伝子型の判別において、本発明のプライマーを使用する判別方法を用いた場合、従来のような特に高額な機械を使用する必要がない。従って、本発明のプライマーによって、簡易で安定的な品種識別が可能である。
【0086】
本発明のプライマーは1塩基置換を擬陽性の問題を生じることなく判定するので、従来法よりも多くのゲノム上の部位での変異を安定的に判別可能である。
【0087】
また、本発明のプライマーは、イネなどの育種において、選抜育種用のDNAマーカーとしても、有用である。
【0088】
【配列表】
Figure 2004248635
Figure 2004248635
Figure 2004248635
Figure 2004248635
Figure 2004248635
Figure 2004248635
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Figure 2004248635
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Figure 2004248635
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Figure 2004248635
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Figure 2004248635
Figure 2004248635
Figure 2004248635

【図面の簡単な説明】
【図1】図1の上図は、コシヒカリと他品種のゲノム部分配列を示す。コシヒカリと他品種のゲノム部分配列を比較した場合のSNPの位置を、矢印で示す。
図1の中図は、上図に示したゲノム部分配列周辺領域を増幅するSNP判別用プライマーA1〜A6およびB1〜B6の部分配列を示す。SNP判別用プライマーの配列中、ゲノムDNA配列に対応する部分についてのみを図1に示した。「−」は、ゲノムDNA配列と同一の塩基を示す。ゲノムDNA配列と異なる塩基を、一文字表記で示した。SNP判別用プライマーA1〜A6全ての3’末端塩基は「T」である。一方、SNP判別用プライマーB1〜B6全ての3’末端塩基は「C」である。そのため、図1では、SNP判別用プライマーの3’末端の配列を「T/C」で示した。
図1の下図:SNP判別用プライマーを使用したPCRの結果を示す。
【図2】図2は、配列番号9および10に記載される配列を有するSNP判別用プライマーを用いたPCRの結果を示す。ゲルの写真の下に示した品種名は、鋳型DNAとして使用したゲノムDNAを調製したイネの品種名である。
【図3】図3は、配列番号1〜8に記載される配列を有するSNP判別用プライマーを用いたPCRの結果を示す。ゲルの写真の下に示した品種名は、鋳型DNAとして使用したゲノムDNAを調製したイネの品種名である。
【図4】図4は、SNP判別プライマーおよびSTSプライマーを使用し、各イネ品種から調製したゲノムDNAを用いてPCRを行った結果を示す図である。使用したプライマーを、配列番号で記載する。STSプライマーを使用した場合には判別できないが、SNP判別プライマーを使用した場合にのみ識別可能となった品種名に「*」を付した。

Claims (11)

  1. 1塩基多型の遺伝子型を判別するためのPCRプライマーであって、該プライマーの3’末端から1番目の塩基は判別すべき該1塩基多型の位置に対応し、該プライマーの3’末端から3番目の塩基は該プライマーがアニールする鋳型配列と相補的な塩基から置換されており、該置換はGからT、AからCへ、TからG、またはCからAの置換である、プライマー。
  2. 50℃以上のTmを有する、請求項1に記載のプライマー。
  3. 60℃以上のTmを有する、請求項1に記載のプライマー。
  4. 65℃以上のTmを有する、請求項1に記載のプライマー。
  5. 以下のプライマー対からなる群から選択されるプライマー対:
    (1)配列番号1および2;
    (2)配列番号3および4;
    (3)配列番号5および6;
    (4)配列番号7および8;ならびに
    (5)配列番号9および10。
  6. 請求項5に記載のプライマー対を少なくとも2つ含む、プライマーのセット。
  7. 配列番号1〜12からなる群から選択されるプライマーを2つ以上含む、請求項6に記載のプライマーセット。
  8. 請求項1に記載のプライマーを使用する、1塩基多型の遺伝子型の判別方法。
  9. 請求項1に記載のプライマーを含む、1塩基多型の遺伝子型を判別するためのキット。
  10. 1塩基多型の遺伝子型を判別する方法であって、該方法は、以下の工程:
    a)判別対象となる1塩基多型の遺伝子型を選択する工程;
    b)多型判別用プライマーを調製する工程であって、ここで、該多型判別用プライマーの3’末端から1番目の塩基は判別すべき該1塩基多型の位置に対応し、該多型判別用プライマーの3’末端から3番目の塩基は該多型判別用プライマーがアニールする鋳型配列と相補的な塩基から置換されており、該置換はGからT、AからCへ、TからG、またはCからAの置換である、多型判別用プライマーを調製する工程;
    c)該多型判別用プライマーと、少なくとも1つの別のプライマーを用いて、PCRを行う工程;および
    d)PCR産物の増幅の有無から、1塩基多型の遺伝子型を判別する工程;
    を包含する、方法。
  11. 少なくとも2つ以上のプライマー対を用いる、請求項10に記載の方法。
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