JP2004243341A - 超硬合金製圧延用複合ロール - Google Patents
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Abstract
【課題】ロールの外層を耐摩耗性に優れた超硬合金で形成するとともに、低WC含有量の超硬合金からなる高強度の中間層を具備させ、強度的に信頼性の高い超硬合金製圧延用ロールを提供する。
【解決手段】鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に超硬合金からなる外層が中間層を介して接合してなり、前記中間層は平均粒径が3μm以下のWC原料粉末を用いて形成した超硬合金からなることを特徴とする。前記中間層のWC粒子の含有量が重量比率で70%以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に超硬合金からなる外層が中間層を介して接合してなり、前記中間層は平均粒径が3μm以下のWC原料粉末を用いて形成した超硬合金からなることを特徴とする。前記中間層のWC粒子の含有量が重量比率で70%以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、靭性に優れる鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に、高硬度の超硬合金からなる外層を形成した圧延用複合ロールに関する。特に、高い接合強度が要求される板圧延用ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延においては、肌品質の向上、耐摩耗性の向上の要求から、高硬度の材質が用いられる傾向があり、最も耐摩耗性が要求される用途においては、粉末金属系材料や硬質粒子を含有するサーメット系ロールも用いられている。その中でも超硬合金ロールは、優れた耐摩耗性、耐クラック性を有することから、仕上スタンドを中心として多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、WC−Co−Ni−CrのWC系超硬合金で構成した線材圧延用ロールが記載されている。この線材圧延用ロールは、超硬合金単体を焼結した小型のスリーブロールであり、靭性に優れた鋼製のロール軸材に0.1/1000程度の焼嵌め率で嵌合し、そのスリーブロールの側面を固定リング、スペーサーリングなどにより押圧固定して機械的に組立てたものである。この種の超硬合金製スリーブロールの寸法は、外径が100〜500mm、回転軸方向の長さが10〜300mm程度の比較的短尺なものである。
【0004】
このように超硬合金製スリーブをロール軸材に嵌合したロールの場合、固定リング、スペーサーリング、皿バネ、ナットなど多くの部材が必要で組立て構造が複雑であり、かつ高い組立て精度を要求されるので組立てに係わる工数や費用がかかるという問題がある。また、ロール胴部の長さに対して、超硬合金の占める部分つまり圧延に使用できる部分が半分以下であり効率的でない問題がある。
【0005】
さらに、超硬合金は熱伝導率が高いため、圧延使用時に超硬合金の温度が上昇しやすく、その熱が鋼製のロール軸材に伝わりやすく、ロール軸材が大きく膨張する。そこで、超硬合金の熱膨張係数は鋼より小さいので、超硬合金製スリーブには半径方向および軸方向に引張り応力が付与される。焼嵌め時の締め代が大きい場合、半径方向の引張り応力が高くなり過ぎると、超硬合金製スリーブの内面から割れを引き起こすおそれがある。また、逆にこのような割れを懸念するあまり焼嵌め時の締め代が小さい場合、圧延中に超硬合金製スリーブが滑るおそれがある。
【0006】
このような組立て式超硬ロールの欠点を克服するため、例えば特許文献2には超硬合金と鋼材を金属的に接合した複合ロールが提案されている。これは鋼材からなる内層を形成するスリーブの外周に、周期律表のIVa〜VIa族元素の炭化物、窒化物および炭窒化物の硬質粒子の少なくとも1種または2種以上を60〜90重量%と、残部実質的にFe、Ni、Co、Cr、Mo及びWの少なくとも1種または2種以上の金属粉末とからなる混合粉末を焼結すると同時に拡散接合させた超硬合金製の外層を有し、外層表面に100MPa以上の円周方向の圧縮残留応力を付与した複合スリーブを、ロール軸材に嵌合固定したものである。また、特許文献3には超硬合金と鋼製の中実軸材を金属的に接合した中実構造の複合ロールも提案されている。
【0007】
この種の超硬合金製複合ロールは、従来の組立て式超硬ロールにおける固定リング、皿バネ、ナットなどが不要であり、ロール胴部長さの全表面を外層で構成するため圧延に使用できる部分を拡大できる利点を有する。
【0008】
【特許文献1】
特公昭58−39906号公報
【特許文献2】
特開平10−8212号公報
【特許文献3】
特開平10−8213号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
超硬合金製複合ロールは、靭性の高い内層と複合化した構造であるから、ロール軸材との締結に焼嵌めやキー止めを用いることが可能なため、板圧延用ロールを含めた各種ロールへの適用が可能である。
【0010】
しかし、軸材への焼嵌めによる焼嵌め応力や、圧延の負荷による繰り返し応力がロールに作用し、ロール強度設計上、超硬合金の外層と鋼系材料等の内層との境界の接合層の強度が最もロール破壊に対して影響を与える。特に、ロール表面からの割損を防ぐため、ロール表面に圧縮残留応力を付与している場合、外層と内層との境界部にはロール半径方向に引張成分の残留応力が作用しており、さらに境界からロールが破壊するおそれが高まる。
【0011】
このようなロール割損を防ぐため、境界部の接合強度の増加が必要となる。超硬合金と鉄系あるいは鋼系の材料を直接接合すると、炭素活量の差により、超硬合金層から鉄あるいは鋼層に炭素が拡散移動し、境界近傍の超硬層の炭素が欠乏し、η相と呼ばれる層が形成され、材料強度の低下が起こる。
【0012】
このようなη相を防止する方法として、超硬合金層と鉄あるいは鋼系材質の中間に、比較的微細なWC粒子で形成した超硬合金からなる中間層を介在させることが有効である。さらに望ましくはWC粒子の含有量が70%以下の超硬合金からなる中間層を介在させることが有効である。本発明は、このような低WC含有量の超硬合金からなる高強度の中間層を具備させ、強度的に信頼性の高い超硬合金製圧延用複合ロールを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の超硬合金製圧延用複合ロールは、鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に超硬合金からなる外層が中間層を介して接合してなり、前記中間層は平均粒径が3μm以下のWC原料粉末を用いて形成した超硬合金からなることを特徴とする。
【0014】
また、前記本発明の超硬合金製圧延用複合ロールにおいて、中間層のWC粒子の含有量が重量比率で70%以下であることを特徴とする。また、中間層の厚みが1mm以上であることを特徴とする。さらにはロール軸方向中央部の外層表面においてロール表面と平行な方向の残留応力として圧縮残留応力が付与されていることを特徴とする。
【0015】
【作用】
超硬合金の外層と鉄系あるいは鋼系材料の内層との境界には、接合強度を高めるため、中間層として、通常の超硬合金より比較的WC粒子の含有量の少ない超硬合金を用いるのが有効である。この中間層の強度は、WC粒子の粒径にも依存しており、微細なWC粒子を用いることにより、中間層の強度を増大させ、この部分からのロール破壊を防止することも可能となる。
【0016】
また、本発明の複合ロールにおいては十分な中間層強度を確保するために、中間層のWC粒子の含有量を重量比率で70%以下にすることが好ましい。さらに、中間層の厚みが1mm以上とすることが望ましい。中間層は外層と内層との間に2層以上介在させてもよい。
【0017】
また、ロール軸方向中央部の外層(ロール胴部)の表面に、ロール表面に対して平行に圧縮残留応力を付与することにより、耐事故性を十分向上させ、かつ外層と内層との境界部から剥離し難くなるので望ましい。この圧縮応力は境界部および内層の強度面も考慮して100〜500MPaであることが望ましい。
【0018】
本発明の複合ロールの製造方法として、鋼系または鉄系材料からなる内層を用いて、真空焼結、加圧焼結ないしは熱間静水圧プレス(HIP)法により超硬合金からなる外層を接合させる。ロールの構成は、中実の複合ロールでもよく、複合スリーブロールを鋼等の軸材に焼嵌めて組み立てたものでも良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
まず、外層形成用の超硬合金原料粉末として、平均粒径が10μmのWC原料粉末、平均粒径が1μmの1種類のCo原料粉末を用意し、それぞれを重量%でWC原料粉末80%、Co原料粉末20%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、外層形成用の超硬合金原料粉末とした。
【0020】
また、外層と内層の間に配置する中間層形成用の超硬合金原料粉末として、平均粒径が3μm、5μmの2種類のWC原料粉末、平均粒径が1μmのCo粉末を用意し、それぞれ重量%でWC原料粉末50%、Co原料粉末50%の割合で配合し、また別にWC原料粉末75%、Co原料粉末25%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、中間層形成用の超硬合金原料粉末とした。
【0021】
前述の外層形成用の超硬合金原料粉末を用いて、外径300mm、内径240mm、長さ500mmの超硬合金製の仮焼結体からなる中空スリーブを作製した。
【0022】
また、内径φ310mm、長さ550mmのHIP缶の中央に、内層として、外径φ220mm、内径φ160mm、長さ500mmの中空円筒状のSCM440を配置した。そして、前記超硬合金製の中空スリーブを内層の周りに挿入した。
【0023】
次いで、内層の外面と中空スリーブの外層の内面との間に形成された空隙に、前記の中間層形成用の超硬合金原料粉末をそれぞれ充填した。その後、HIP缶を鋼の蓋で溶接密封した後、700℃にて真空ポンプで脱気処理を行なった。HIP缶にリークが生じていないことを確認した後、1350℃、1400気圧にてHIP処理を行なった。冷却後、HIP缶を加工除去し、超音波探傷検査にて、外層、中間層および内層の接合が健全であることを確認した。
【0024】
このようにして、中間層を形成するのに用いたWC原料粉末の平均粒径がそれぞれ異なる種類毎に同一仕様のロールを複数本づつ製造した。
【0025】
また、境界接合部の強度を測定した。この境界接合部の強度の測定は、ロール直径方向に、内層、中間層および外層を含む境界接合部の抗折試験片を切り出し、JIS R1601に準拠した抗折試験を行ない坑折強度(MPa)を測定した。また、外層のロール軸方向中央部に歪ゲージを貼り、破壊法により外層におけるロール円周方向の残留応力(MPa)を測定した。これらの結果を表1に示す。表1において、WC粒径は中間層に用いたWC原料粉末の平均粒径(μm)、WC含有量は中間層のWC粒子の含有量(重量%)、残留応力のマイナス符号は圧縮を表す。
【0026】
表1
No WC粒径 WC含有量 坑折強度 残留応力 圧延時の状況
1 3 50 1653 −205 良好
2 5 50 1140 −233 境界から割れ発生
3 5 75 721 −241 境界から割れ発生
【0027】
表1から、No.2およびNo.3のロールは圧延に供したところ、境界部に割れが発生した。No.1(本発明例)のロールは、境界部に割れは発生せず、良好な結果を得ることができた。
【0028】
(実施例2)
外径730mm、長さ2300mmの鋼で構成されるHIP缶に、外径480mm、内径300mm、長さ2500mmの中空円筒状の内層となる鍛鋼を設置し、この内層の周囲に内径490mm、厚み2mmの仕切りとなる鋼管を配置した。
【0029】
平均粒径が10μmのWC原料粉末、平均粒径が1μmのCo原料粉末を用意し、WC原料粉末85%、Co原料粉末15%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、外層形成用の超硬合金原料粉末を作製し、これをHIP缶の内面と鋼管の外面との間の空隙に充填した。
【0030】
また、鋼管の内面と内層の外面との間の空隙に中間層となる平均粒径3μmのWC粉末30%、平均粒径1μmのCo粉末70%の混合粉末を充填した。充填後、仕切りの鋼管を引き抜きいた後、次いでHIP缶を鋼の蓋で溶接密封し、700℃にて真空ポンプで脱気処理を行なった。HIP缶にリークが生じていないことを確認した後、1300℃、1400気圧にてHIP処理を行なった。冷却後HIP缶を加工除去して超硬合金製複合スリーブロールを作製した。この複合スリーブロールの内径を加工した後、クロムモリブデン鋼の軸材に焼嵌め、本発明の冷間圧延用組立式ロールを完成した。
【0031】
実施例1同様に、ロール直径方向に、内層、中間層および外層を含む境界接合部の抗折試験片を切り出し、JIS R1601に準拠した抗折試験を行ない坑折強度(MPa)を測定した。また、ロール円周方向の残留応力(MPa)を測定した。結果、坑折強度は1780(MPa)、残留応力は−320(MPa)であり十分な特性値を得ることができた。
【0032】
【発明の効果】
本発明の超硬合金製圧延用複合ロールによれば、ロールの外層は耐摩耗性に優れるとともに、低WC含有量の超硬合金からなる高強度の中間層を具備させ、強度的に信頼性の高い超硬合金製圧延用ロールを得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、靭性に優れる鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に、高硬度の超硬合金からなる外層を形成した圧延用複合ロールに関する。特に、高い接合強度が要求される板圧延用ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延においては、肌品質の向上、耐摩耗性の向上の要求から、高硬度の材質が用いられる傾向があり、最も耐摩耗性が要求される用途においては、粉末金属系材料や硬質粒子を含有するサーメット系ロールも用いられている。その中でも超硬合金ロールは、優れた耐摩耗性、耐クラック性を有することから、仕上スタンドを中心として多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、WC−Co−Ni−CrのWC系超硬合金で構成した線材圧延用ロールが記載されている。この線材圧延用ロールは、超硬合金単体を焼結した小型のスリーブロールであり、靭性に優れた鋼製のロール軸材に0.1/1000程度の焼嵌め率で嵌合し、そのスリーブロールの側面を固定リング、スペーサーリングなどにより押圧固定して機械的に組立てたものである。この種の超硬合金製スリーブロールの寸法は、外径が100〜500mm、回転軸方向の長さが10〜300mm程度の比較的短尺なものである。
【0004】
このように超硬合金製スリーブをロール軸材に嵌合したロールの場合、固定リング、スペーサーリング、皿バネ、ナットなど多くの部材が必要で組立て構造が複雑であり、かつ高い組立て精度を要求されるので組立てに係わる工数や費用がかかるという問題がある。また、ロール胴部の長さに対して、超硬合金の占める部分つまり圧延に使用できる部分が半分以下であり効率的でない問題がある。
【0005】
さらに、超硬合金は熱伝導率が高いため、圧延使用時に超硬合金の温度が上昇しやすく、その熱が鋼製のロール軸材に伝わりやすく、ロール軸材が大きく膨張する。そこで、超硬合金の熱膨張係数は鋼より小さいので、超硬合金製スリーブには半径方向および軸方向に引張り応力が付与される。焼嵌め時の締め代が大きい場合、半径方向の引張り応力が高くなり過ぎると、超硬合金製スリーブの内面から割れを引き起こすおそれがある。また、逆にこのような割れを懸念するあまり焼嵌め時の締め代が小さい場合、圧延中に超硬合金製スリーブが滑るおそれがある。
【0006】
このような組立て式超硬ロールの欠点を克服するため、例えば特許文献2には超硬合金と鋼材を金属的に接合した複合ロールが提案されている。これは鋼材からなる内層を形成するスリーブの外周に、周期律表のIVa〜VIa族元素の炭化物、窒化物および炭窒化物の硬質粒子の少なくとも1種または2種以上を60〜90重量%と、残部実質的にFe、Ni、Co、Cr、Mo及びWの少なくとも1種または2種以上の金属粉末とからなる混合粉末を焼結すると同時に拡散接合させた超硬合金製の外層を有し、外層表面に100MPa以上の円周方向の圧縮残留応力を付与した複合スリーブを、ロール軸材に嵌合固定したものである。また、特許文献3には超硬合金と鋼製の中実軸材を金属的に接合した中実構造の複合ロールも提案されている。
【0007】
この種の超硬合金製複合ロールは、従来の組立て式超硬ロールにおける固定リング、皿バネ、ナットなどが不要であり、ロール胴部長さの全表面を外層で構成するため圧延に使用できる部分を拡大できる利点を有する。
【0008】
【特許文献1】
特公昭58−39906号公報
【特許文献2】
特開平10−8212号公報
【特許文献3】
特開平10−8213号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
超硬合金製複合ロールは、靭性の高い内層と複合化した構造であるから、ロール軸材との締結に焼嵌めやキー止めを用いることが可能なため、板圧延用ロールを含めた各種ロールへの適用が可能である。
【0010】
しかし、軸材への焼嵌めによる焼嵌め応力や、圧延の負荷による繰り返し応力がロールに作用し、ロール強度設計上、超硬合金の外層と鋼系材料等の内層との境界の接合層の強度が最もロール破壊に対して影響を与える。特に、ロール表面からの割損を防ぐため、ロール表面に圧縮残留応力を付与している場合、外層と内層との境界部にはロール半径方向に引張成分の残留応力が作用しており、さらに境界からロールが破壊するおそれが高まる。
【0011】
このようなロール割損を防ぐため、境界部の接合強度の増加が必要となる。超硬合金と鉄系あるいは鋼系の材料を直接接合すると、炭素活量の差により、超硬合金層から鉄あるいは鋼層に炭素が拡散移動し、境界近傍の超硬層の炭素が欠乏し、η相と呼ばれる層が形成され、材料強度の低下が起こる。
【0012】
このようなη相を防止する方法として、超硬合金層と鉄あるいは鋼系材質の中間に、比較的微細なWC粒子で形成した超硬合金からなる中間層を介在させることが有効である。さらに望ましくはWC粒子の含有量が70%以下の超硬合金からなる中間層を介在させることが有効である。本発明は、このような低WC含有量の超硬合金からなる高強度の中間層を具備させ、強度的に信頼性の高い超硬合金製圧延用複合ロールを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の超硬合金製圧延用複合ロールは、鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に超硬合金からなる外層が中間層を介して接合してなり、前記中間層は平均粒径が3μm以下のWC原料粉末を用いて形成した超硬合金からなることを特徴とする。
【0014】
また、前記本発明の超硬合金製圧延用複合ロールにおいて、中間層のWC粒子の含有量が重量比率で70%以下であることを特徴とする。また、中間層の厚みが1mm以上であることを特徴とする。さらにはロール軸方向中央部の外層表面においてロール表面と平行な方向の残留応力として圧縮残留応力が付与されていることを特徴とする。
【0015】
【作用】
超硬合金の外層と鉄系あるいは鋼系材料の内層との境界には、接合強度を高めるため、中間層として、通常の超硬合金より比較的WC粒子の含有量の少ない超硬合金を用いるのが有効である。この中間層の強度は、WC粒子の粒径にも依存しており、微細なWC粒子を用いることにより、中間層の強度を増大させ、この部分からのロール破壊を防止することも可能となる。
【0016】
また、本発明の複合ロールにおいては十分な中間層強度を確保するために、中間層のWC粒子の含有量を重量比率で70%以下にすることが好ましい。さらに、中間層の厚みが1mm以上とすることが望ましい。中間層は外層と内層との間に2層以上介在させてもよい。
【0017】
また、ロール軸方向中央部の外層(ロール胴部)の表面に、ロール表面に対して平行に圧縮残留応力を付与することにより、耐事故性を十分向上させ、かつ外層と内層との境界部から剥離し難くなるので望ましい。この圧縮応力は境界部および内層の強度面も考慮して100〜500MPaであることが望ましい。
【0018】
本発明の複合ロールの製造方法として、鋼系または鉄系材料からなる内層を用いて、真空焼結、加圧焼結ないしは熱間静水圧プレス(HIP)法により超硬合金からなる外層を接合させる。ロールの構成は、中実の複合ロールでもよく、複合スリーブロールを鋼等の軸材に焼嵌めて組み立てたものでも良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
まず、外層形成用の超硬合金原料粉末として、平均粒径が10μmのWC原料粉末、平均粒径が1μmの1種類のCo原料粉末を用意し、それぞれを重量%でWC原料粉末80%、Co原料粉末20%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、外層形成用の超硬合金原料粉末とした。
【0020】
また、外層と内層の間に配置する中間層形成用の超硬合金原料粉末として、平均粒径が3μm、5μmの2種類のWC原料粉末、平均粒径が1μmのCo粉末を用意し、それぞれ重量%でWC原料粉末50%、Co原料粉末50%の割合で配合し、また別にWC原料粉末75%、Co原料粉末25%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、中間層形成用の超硬合金原料粉末とした。
【0021】
前述の外層形成用の超硬合金原料粉末を用いて、外径300mm、内径240mm、長さ500mmの超硬合金製の仮焼結体からなる中空スリーブを作製した。
【0022】
また、内径φ310mm、長さ550mmのHIP缶の中央に、内層として、外径φ220mm、内径φ160mm、長さ500mmの中空円筒状のSCM440を配置した。そして、前記超硬合金製の中空スリーブを内層の周りに挿入した。
【0023】
次いで、内層の外面と中空スリーブの外層の内面との間に形成された空隙に、前記の中間層形成用の超硬合金原料粉末をそれぞれ充填した。その後、HIP缶を鋼の蓋で溶接密封した後、700℃にて真空ポンプで脱気処理を行なった。HIP缶にリークが生じていないことを確認した後、1350℃、1400気圧にてHIP処理を行なった。冷却後、HIP缶を加工除去し、超音波探傷検査にて、外層、中間層および内層の接合が健全であることを確認した。
【0024】
このようにして、中間層を形成するのに用いたWC原料粉末の平均粒径がそれぞれ異なる種類毎に同一仕様のロールを複数本づつ製造した。
【0025】
また、境界接合部の強度を測定した。この境界接合部の強度の測定は、ロール直径方向に、内層、中間層および外層を含む境界接合部の抗折試験片を切り出し、JIS R1601に準拠した抗折試験を行ない坑折強度(MPa)を測定した。また、外層のロール軸方向中央部に歪ゲージを貼り、破壊法により外層におけるロール円周方向の残留応力(MPa)を測定した。これらの結果を表1に示す。表1において、WC粒径は中間層に用いたWC原料粉末の平均粒径(μm)、WC含有量は中間層のWC粒子の含有量(重量%)、残留応力のマイナス符号は圧縮を表す。
【0026】
表1
No WC粒径 WC含有量 坑折強度 残留応力 圧延時の状況
1 3 50 1653 −205 良好
2 5 50 1140 −233 境界から割れ発生
3 5 75 721 −241 境界から割れ発生
【0027】
表1から、No.2およびNo.3のロールは圧延に供したところ、境界部に割れが発生した。No.1(本発明例)のロールは、境界部に割れは発生せず、良好な結果を得ることができた。
【0028】
(実施例2)
外径730mm、長さ2300mmの鋼で構成されるHIP缶に、外径480mm、内径300mm、長さ2500mmの中空円筒状の内層となる鍛鋼を設置し、この内層の周囲に内径490mm、厚み2mmの仕切りとなる鋼管を配置した。
【0029】
平均粒径が10μmのWC原料粉末、平均粒径が1μmのCo原料粉末を用意し、WC原料粉末85%、Co原料粉末15%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、外層形成用の超硬合金原料粉末を作製し、これをHIP缶の内面と鋼管の外面との間の空隙に充填した。
【0030】
また、鋼管の内面と内層の外面との間の空隙に中間層となる平均粒径3μmのWC粉末30%、平均粒径1μmのCo粉末70%の混合粉末を充填した。充填後、仕切りの鋼管を引き抜きいた後、次いでHIP缶を鋼の蓋で溶接密封し、700℃にて真空ポンプで脱気処理を行なった。HIP缶にリークが生じていないことを確認した後、1300℃、1400気圧にてHIP処理を行なった。冷却後HIP缶を加工除去して超硬合金製複合スリーブロールを作製した。この複合スリーブロールの内径を加工した後、クロムモリブデン鋼の軸材に焼嵌め、本発明の冷間圧延用組立式ロールを完成した。
【0031】
実施例1同様に、ロール直径方向に、内層、中間層および外層を含む境界接合部の抗折試験片を切り出し、JIS R1601に準拠した抗折試験を行ない坑折強度(MPa)を測定した。また、ロール円周方向の残留応力(MPa)を測定した。結果、坑折強度は1780(MPa)、残留応力は−320(MPa)であり十分な特性値を得ることができた。
【0032】
【発明の効果】
本発明の超硬合金製圧延用複合ロールによれば、ロールの外層は耐摩耗性に優れるとともに、低WC含有量の超硬合金からなる高強度の中間層を具備させ、強度的に信頼性の高い超硬合金製圧延用ロールを得ることができる。
Claims (4)
- 鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に超硬合金からなる外層が中間層を介して接合してなり、前記中間層は平均粒径が3μm以下のWC原料粉末を用いて形成した超硬合金からなることを特徴とする超硬合金製圧延用複合ロール。
- 中間層のWC粒子の含有量が重量比率で70%以下であることを特徴とする請求項1に記載の超硬合金製圧延用複合ロール。
- 中間層の厚みが1mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の超硬合金製圧延用複合ロール。
- ロール軸方向中央部の外層表面において、ロール表面と平行な方向の残留応力として圧縮残留応力が付与されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超硬合金製圧延用複合ロール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003033266A JP2004243341A (ja) | 2003-02-12 | 2003-02-12 | 超硬合金製圧延用複合ロール |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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