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JP2004241309A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

プラズマディスプレイパネル Download PDF

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Abstract

【課題】動作電圧が低く高輝度表示ができ、安定した駆動を実現できるプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】基板(表面基板1)上に誘電体層4で覆われた電極(走査電極2、維持電極3)を有するとともに誘電体層4上に保護層11を有し、保護層11には亜鉛が添加されている。また、保護層11は、亜鉛が添加された酸化マグネシウムからなり、2次イオン質量分析法によって保護層11を分析したとき、マグネシウム(Mg)の2次イオン強度に対する亜鉛(Zn)の2次イオン強度の比率が0.01%以上である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、文字や画像表示用のディスプレイやカラーテレビジョン受像機に使用する、ガス放電発光を利用したプラズマディスプレイパネル(PDP)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PDPは、ガス放電によって発生した紫外線によって蛍光体を励起発光させ、画像表示するディスプレイである。その放電の形成手法から交流(AC)型と直流(DC)型に分類することができる。AC型は、輝度、発光効率、寿命の点でDC型よりも優れており、さらに、AC型の中でも反射型面放電タイプは輝度、発光効率の点で特に優れているため、このタイプが最も一般的である。
【0003】
従来のPDPの一例として、反射型面放電タイプのAC型PDPの斜視図を図4に示しており、以下に、このPDPの構造および動作について説明する。
【0004】
ガラス基板などのように透明な絶縁性の表面基板1上に、走査電極2と維持電極3とが対を成して複数形成されている。走査電極2は透明電極2aとその上に形成されたバス電極2bとから構成され、維持電極3は透明電極3aとその上に形成されたバス電極3bとから構成される。透明電極2a、3aはインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO)によって形成されるが、この透明電極2a、3aはシート抵抗が高いため、銀(Ag)などからなるバス電極2b、3bを透明電極2a、3a上に形成することにより、走査電極2および維持電極3の抵抗を低くしている。また、走査電極2と維持電極3を覆うように表面基板1上に低融点ガラスからなる透明な誘電体層4を形成し、この誘電体層4上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層5を形成している。誘電体層4は、AC型PDP特有の電流制限機能を有しているため、AC型PDPはDC型PDPに比べて長寿命となっている。また保護層5は、放電によって誘電体層4がスパッタされて削られないように保護するためのもので耐スパッタ性に優れており、さらに、高い2次電子放出係数を有することで放電開始電圧を低減する働きをしている。
【0005】
一方、ガラス基板などのような絶縁性の背面基板6上には、複数のアドレス電極7が形成され、アドレス電極7を覆うように背面基板6上に下地誘電体層8が形成されている。アドレス電極7間の下地誘電体層8上には、アドレス電極7に平行な隔壁9が形成され、隔壁9間の下地誘電体層8上には蛍光体層10が形成されている。
【0006】
表面基板1と背面基板6とは、走査電極2および維持電極3とアドレス電極7とが直交するように、間に放電空間を介して対向して配置されており、放電空間には放電ガスとしてネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスが充填されている。走査電極2および維持電極3とアドレス電極7とが交差した部分には放電セルが形成される。そして、走査電極2と維持電極3との間に数十kHz〜数百kHzのAC電圧を印加して放電セル内に放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層10を励起し、可視光を発生させることで表示動作が行われる(例えば特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−164145号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
PDPなどのディスプレイに表示された画像を観察者が見たときの印象度は、VGA(640×480)以上の解像度であれば、画像の明るさに依存するところが大きい。つまり、画面輝度が高いほど表示画像が美しく見える。また、画面輝度が十分に高ければ、所望の画面輝度が得られる程度に、表示面側のガラス基板の透過率を低めに設定することが可能であり、これによって外光の反射を抑えることができるので明所コントラストが高くなり、明所でも美しい画像を表示できる。ところが、PDPはCRTに比べると低輝度であり明所コントラストが低いという課題がある。
【0009】
PDPにおいて画面の輝度を上げる方法として駆動電圧を上げることが考えられるが、その場合には、誤放電が発生しやすくなることやドライバ回路の高耐圧化によるコスト増加などの問題がある。
【0010】
また、画面の輝度を上げる他の方法として、上記PDPの放電ガスにアルゴン(Ar)を添加することが考えられる。すなわち、Arを添加することでペニング効果によって放電開始電圧を低下させることができ、同じ駆動電圧を印加しても放電開始電圧の低い方が放電電流が増加するために、より高輝度にできるのである。しかしながら、Arはスパッタリングプロセスに使われるように固体表面をスパッタし易いため、PDPの動作中にArによって保護層5がスパッタされてその表面が損傷を受け、保護層5の2次電子放出係数が低下してしまう。したがって、経時的に、例えば数千時間の動作によって放電開始電圧が上昇し、輝度が低下してしまう。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、動作電圧が低く高輝度表示ができ、安定した駆動を実現できるPDPを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマディスプレイパネルは、基板上に誘電体層で覆われた電極を有するとともに前記誘電体層上に保護層を有し、前記保護層には亜鉛が添加されたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図1〜図3の図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態によるPDPの断面図である。本実施の形態によるPDPは、図4に示した従来のPDPとほぼ同じ構成であり、異なる点は保護層の構成である。図1において、図4と同じ構成については同じ符号を付している。
【0015】
図1に示すように、ガラス製の表面基板1上には、走査電極2と維持電極3とが対を成して複数形成されている。走査電極2は透明電極2aとその上に形成されたバス電極2bとから成り、維持電極3は透明電極3aとその上に形成されたバス電極3bとから成る。透明電極2a、3aはITOやSnOなどの透明導電性材料によって形成され、バス電極2b、3bは、Ag厚膜(厚み:2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)またはクロム/銅/クロム(Cr/Cu/Cr)積層薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)で構成される。また、PbO−SiO−B−ZnO−BaO系ガラス組成を有する低融点ガラスからなる誘電体層4(厚み:40μm)が、走査電極2および維持電極3を覆うように表面基板1上に形成されており、誘電体層4上に保護層11(厚み:500nm〜750nm)が形成されている。ここで、保護層11はMgOからなり、亜鉛(Zn)が添加されている。すなわち、基板上に誘電体層4で覆われた電極を有するとともに誘電体層4上に保護層11を有し、保護層11にはZnが添加されている。
【0016】
一方、ガラス製の背面基板6上には、Ag厚膜(厚み:2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)からなるアドレス電極7が複数形成されている。このアドレス電極7を覆うように、背面基板6上に、酸化鉛(PbO)、酸化ビスマス(Bi)または酸化燐(PO)を主成分とする低融点ガラスからなる下地誘電体層8(厚み:5μm〜20μm)が形成されている。さらに、アドレス電極7間の下地誘電体層8上に、ガラスを主成分とする隔壁9がアドレス電極7に平行に形成され、隔壁9間の下地誘電体層8上にはカラー表示のための3色(赤、緑、青)の蛍光体層10が順次設けられている。なお、下地誘電体層8は蛍光体層10の密着性を改善するためのものであり、下地誘電体層8が無いとPDPが動作しないというものではない。
【0017】
表面基板1と背面基板6とは、走査電極2および維持電極3とアドレス電極7とが直交するように、間に放電空間を介して対向して配置されており、周囲はフリットガラスによって気密封止されている。放電空間には放電ガスとして、例えばNeとXeの混合ガスが66.5kPa(500Torr)程度の圧力で充填されている。走査電極2および維持電極3とアドレス電極7とが交差した部分は放電セルを形成し、赤、緑および青の蛍光体層10を有する隣接した3つの放電セルがカラー表示を行うための1つの画素を構成する。
【0018】
このようなプラズマディスプレイパネルでは、走査電極2とアドレス電極7との間で選択的に書き込みパルスを印加してアドレス放電を行った後、周期的な維持パルスを走査電極2と維持電極3とに交互に印加して維持放電を行うことで、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層10が励起され、可視光が発生することにより表示動作が行われる。
【0019】
次に、本実施の形態において、誘電体層4上に保護層11を形成する方法について説明する。
【0020】
まず、表面基板1上に走査電極2および維持電極3を形成した後、スクリーン印刷法、ダイコート印刷法またはシートラミネート法を用いて誘電体層4を形成する。その後、電子ビーム蒸着法を用いて誘電体層4上に保護層11を形成するが、このとき、保護層11へのZnの添加量が所望の値となるように、MgOペレットとZnOペレットを所定の比率で混合した材料を蒸発源として使用する。これにより、MgOからなり、Znが添加された保護層11を形成することができる。すなわち、蒸発源として使用するMgOペレットとZnOペレットの混合比率を変えることにより、保護層11へのZnの添加量を制御する。ここで、蒸発源の構成材料として、ZnOペレットの代わりに他の亜鉛化合物を用いてもよい。
【0021】
なお、保護層11の形成方法として、電子ビーム蒸着法だけでなく、スパッタ法やイオンプレーティング法などを用いることが可能であり、この場合にもターゲットまたは蒸発源の構成材料の混合比率を調整することにより、所望量のZnを添加した保護層11を形成することができる。
【0022】
次に、本実施の形態によるPDP(パネルA)の特性について調べた結果について説明する。比較のために、MgOペレットのみを使用した電子ビーム蒸着法により、MgOからなる保護層を形成し、保護層以外の構成はパネルAと同じである比較用のPDP(パネルB)を作製した。
【0023】
パネルAおよびパネルBについて放電開始電圧を調べたところ、パネルAでは161Vであったのに対し、パネルBでは175Vであり、パネルBに比べてパネルAの方が動作電圧を低下させることができる。また、同じ駆動電圧(175V)で、パネル全体を白表示したときの輝度を測定すると、パネルAでは525cd/mであったのに対し、パネルBでは470cd/mであり、パネルBに比べてパネルAの方が高輝度となった。
【0024】
次に、パネルAおよびパネルBについて、保護層の厚み方向の組成を2次イオン質量分析法(SIMS)を用いて調べた結果を図2(パネルAの場合)および図3(パネルBの場合)に示す。測定にはATOMIKA社製の2次イオン質量分析計SIMS4500を使用した。測定条件として、1次イオン種:O 、1次イオンエネルギー:5keV、1次イオン入射角度:30度、1次イオン電流量:70nA、ラスター領域:160μm□、分析領域:80μm□とし、2次イオン(64Zn48Mg 16)強度を測定した。なお、質量分析における測定のダイナミックレンジが10であり、Znを分析する時にMgは強度が強すぎて同時にモニターできないため、Mgに起因する他の質量を有し且つ最適な信号強度が得られるMgをモニターした。
【0025】
図2および図3において、横軸は、保護層5(パネルBの場合)または保護層11(パネルAの場合)の表面を0としたときの、保護層5、11の厚み方向の誘電体層4側への距離(保護層表面からの深さ)を表しており、縦軸は2次イオン強度の測定値を表している。ここで、保護層表面からの深さが600nm付近でMgの2次イオン強度が大きく変化しているが、この部分が保護層5、11と誘電体層4との境界である。図3に示す保護層5中のZnの2次イオン強度については検出限界レベルであり、パネルBの保護層5中には、誘電体層4との境界近傍を除いてZnがほとんど含まれていないと考えてよい。一方、図2に示すパネルAの保護層11中においては、Mgの2次イオン強度に対するZnの2次イオン強度の比率は0.1%〜1%程度であり、MgO中にZnが添加されていることがわかる。
【0026】
したがって、本実施の形態によるパネルAのように、保護層11を、MgOにZnを添加して構成することにより、PDPの動作電圧を低下させることができる。このようにPDPの動作電圧が低下する理由としては、以下のように考えられる。すなわち、Zn原子はイオン化傾向が9.394であり、Mg原子のイオン化傾向7.646に比べて大きく非常に酸化しやすい特性を有している。したがって、MgOからなる保護層中でもZn原子はZn単体ではなくZnOの状態で存在しているものと考えられる。ここで、ZnO単結晶はワイドバンドギャップ(3.37eV)の半導体であり、ZnO単結晶中では励起子の結合エネルギーが室温の熱エネルギー(約25meV)よりも大きい60meVであるため、励起子が室温で安定して存在できる。これらのことから、パネルAの保護層11では、ZnOが局所的にMgOと置換しているか、または、ZnOがMgOの粒界に存在することにより、保護層11の母体であるMgOの伝導帯に効率よく電子を励起できる安定な準位がMgOのバンドギャップ(8.7eV)中に形成され、その結果、保護層11の電子放出特性がよくなり、放電開始電圧が低下するものと考えられる。
【0027】
また、保護層11へのZnの添加量が少なすぎると放電開始電圧が低下する効果が得られない。SIMSを用いて保護層11を分析したとき、Mgの2次イオン強度に対するZnの2次イオン強度の比率が0.01%以上となるようにZnを添加すると、放電開始電圧が低下する効果が得られた。
【0028】
次に、パネルAについて、通常の使用で5万時間連続して動作させた場合に相当する加速寿命試験を行ったところ、放電開始電圧の大きな変動がなく安定であった。さらに、この加速寿命試験を行った後のパネルAを割って保護層11を観察したところ、スパッタによる膜厚減少がほとんど無く、長寿命であることが分かった。これは、ZnとMgの原子半径が比較的近いために、MgOからなる保護層の膜質はZnを添加してもあまり低下しないことによるものと考えられる。
【0029】
また、MgOに比べてZnOは耐スパッタ性が低いため、保護層11へのZnの添加量が多くなりすぎると、Znを添加しない場合に比べて保護層11の耐スパッタ性がかなり低下するものと考えられる。SIMSを用いて保護層11を分析したとき、Mgの2次イオン強度に対するZnの2次イオン強度の比率が40%を超えると耐スパッタ性が低下した。このため、保護層11へのZnの添加量については、Mgの2次イオン強度に対するZnの2次イオン強度の比率が40%以下となるようにするのが好ましい。
【0030】
なお、上記実施の形態では保護層11の構成材料としてMgOを用いた場合について説明したが、MgOの代わりに酸化カルシウム(CaO)や酸化バリウム(BaO)やそれらを混合したものを用いた場合にも同様の効果を得ることができる。また、放電ガスはNeとXeの混合ガスに限られるものではなく、ヘリウム(He)やクリプトン(Kr)などの希ガスを混合して使用してもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、動作電圧が低く高輝度表示ができ、安定した駆動が可能なPDPを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの要部を示す断面図
【図2】同プラズマディスプレイパネルの保護層の組成を2次イオン質量分析法によって分析した結果を示す図
【図3】比較用プラズマディスプレイパネルの保護層の組成を2次イオン質量分析法によって分析した結果を示す図
【図4】従来のプラズマディスプレイパネルの要部を示す斜視図
【符号の説明】
1 表面基板
2 走査電極
3 維持電極
4 誘電体層
11 保護層

Claims (4)

  1. 基板上に誘電体層で覆われた電極を有するとともに前記誘電体層上に保護層を有し、前記保護層には亜鉛が添加されたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
  2. 保護層は、亜鉛が添加された酸化マグネシウムからなることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 2次イオン質量分析法によって保護層を分析したとき、マグネシウム(Mg)の2次イオン強度に対する亜鉛(Zn)の2次イオン強度の比率が0.01%以上であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 2次イオン質量分析法によって保護層を分析したとき、マグネシウム(Mg)の2次イオン強度に対する亜鉛(Zn)の2次イオン強度の比率が40%以下であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
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