JP2004241307A - ヘテロポリ酸を坦持した電極およびそれを用いた電気化学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極反応における貴金属代替触媒が求められていた。また、電極反応の効率を上げるため触媒は比表面積を大きくすることが必要であった。特に燃料電池の酸素極では、通常酸素から水への反応経路が多段階反応を経て効率が悪く複雑な反応経路をたどらせない電極触媒が求められていた。
【解決手段】強酸化力と触媒能を有するヘテロポリ酸をカーボン及び無機酸化物のナノ多孔質体に担持する。
【選択図】 なし
【解決手段】強酸化力と触媒能を有するヘテロポリ酸をカーボン及び無機酸化物のナノ多孔質体に担持する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池やキャパシタなどの電極材、触媒の担持体に関するものである。特に、この電極を利用して用いる燃料電池、空気電池、水電解装置、ガスセンサ、汚染ガス除去装置などの電気化学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球環境問題への関心の高まりから、省資源化、省エネルギー化が推進されている。エネルギー資源として、再生可能なクリーンエネルギーを利用するエネルギー源とそのシステム開発が進められている。特に、水素をエネルギー源とした燃料電池システムは、自動車のエンジンの代替技術や、分散型電源、コジェネレーション技術などの幅広い用途がある。また、携帯電話などの個人情報機器の普及によって、その電源として大容量の電池の開発が進められている。その技術の候補として、水素やメタノール等の燃料を使った燃料電池が期待されている。
【0003】
燃料電池の基本的な構成を図1に示す。燃料電池では、燃料から水素などの燃料を反応させて電子とプロトンを生成する燃料電極と、生成したプロトンを伝達する電解質、さらにプロトンと酸素とを外部回路を通して到達した電子によって反応させる酸素電極とから成っている。この電極部の反応は、それぞれ以下の役割を有する。まず、燃料電極では、液体または気体の流体燃料が電極上の触媒と反応して、たとえばH2→2H++2e−のように反応して電荷分離した電子は電極から外部回路へ伝わり、プロトンはプロトン伝導性の電解質へ伝わる。電解質はプロトンのみを伝達する役割をもち、燃料等の拡散による効率低下の少ないものが用いられる。燃料電極に対向する酸素電極は、燃料電極で生成した電子とプロトンが到達し、触媒において空気中の酸素または酸素ガスと、O2+4H++4e−→2H2Oの反応によって水を生成する。このように、再生可能なエネルギー源である水素またはメタノールなどのエネルギーから電力を供給することができる上に、反応生成物も水であり環境上の問題の少ない反応である。クリーンエネルギーとして大きな期待がなされている。
【0004】
このような電気化学素子の電極反応触媒としてPt及びPt合金が一般に用いられているが、燃料から発生するCOなどによる触媒能の低下(被毒)の改善や反応の高効率化及び貴金属触媒フリーや削減による低コスト化の検討が盛んに行われている。これらの検討の中で、被毒の改善に対して、例えば燃料極の燃料であるメタノールからの被毒を抑え高活性化する目的でヘテロポリ酸を燃料極材料として混在させた燃料電池について開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−134122号公報(第2−7頁)
【特許文献2】
特開平10−21907号公報(段落番号0049〜0054)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記燃料電池における課題として、電極反応の高効率化と、資源枯渇の回避及び低コスト化のための貴金属触媒の削減、貴金属触媒フリー化が求められている。このため、従来使用されているPt、Pt合金の代替触媒の探索、触媒材料の担体への坦持法、坦持体及び触媒材料の寸法制御が課題として挙げられる。燃料電池の電極は、燃料気体と、反応のための触媒と、電荷を運搬する電極と電解質の異なる役割の相で構成されている。燃料気体は効率的に触媒まで到達する必要があるため、分散体ならびに多孔体が用いられる。反応を効率的に行うために、触媒は比表面積が高くなるように微粒子状態で、凝集することなく分散しているのが好ましい。プロトン生成時の反応では、燃料気体が触媒で反応し、その生成した電子とプロトンが反応サイトである触媒の位置から効率的に分離して伝搬するのが好ましい。また、プロトンと酸素から水を生成する反応では、電子とプロトンが反応サイトの触媒まで効率的に到達し、酸素と反応するのが好ましい。
【0007】
しかしながら、図2の概念図に示すように、カーボンブラックなどのカーボン粒子1で電極を構成する場合には、そのカーボン粒子1に触媒2、3を担持した後にカーボン表面を覆うように電解質4の高分子を塗布したり、触媒が高分子に埋まるように組み合わせている。そのため、実際には図2のように、カーボン電極表面は、全面が固体高分子電解質4で覆われる部分と、部分的に覆われている部分があり、場合によっては全く覆われていない部分が形成されている。例えば、全面が固体高分子電解質4で覆われる部分では、燃料の流体が触媒まで到達しにくいために効率的な反応が行われない。そのために触媒として有効に使用されていない量が多くあるために、白金などの高価な触媒を必要以上に使うことになり、コストが高くなるという課題もある。また、部分的にまたは全く覆われていない部分がある場合では、燃料の流体は触媒まで到達しやすい。
【0008】
しかし、触媒での反応で使われる電子とプロトンのうち、プロトンを電解質膜5から伝える高分子電解質4が近くにないために、電極反応できず効率的な反応が行われない。そのために高分子電解質で覆われている場合と同様に、白金などの高価な触媒を必要以上に使うことになり、コストが高くなるという課題もある。酸素極に用いる電極としては、上記のように、より反応を促進するために反応に寄与する酸素とプロトン伝導体と電子伝導体と触媒が同時に接触するような構造をつくりこみ、例えば触媒を微粒子化などにより比表面積を大きくして三相界面を増加させる必要がある。本発明では、これらの課題を解決し、電池特性を向上させることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題のため、本発明者らは、電解質材料としてプロトン伝導性に優れ、強酸性・強酸化力を兼ね備え、2−プロパノールの製造など多元的な触媒機能を有するヘテロポリ酸に着目し、鋭意検討の結果、ヘテロポリ酸の組成・構造・形状制御による特性変化を見出し、代替触媒材料探索の課題を解決できることを見出した。また触媒の担体への坦持方法も含めて電極の構成を検討することにより高効率な電極反応を起こすことができる。
【0010】
すなわち本発明では、
<1> 酸素とプロトンと電子を介して反応を進行する電極であって、ヘテロポリ酸が導電体と複合体を形成し電極材に坦持されていることを特徴としている。
【0011】
<2> 上記<1>において、電極の導電体材料は、金属及び炭素及び導電性酸化物であることを特徴としている。
【0012】
<3> 酸素とプロトンと電子を介して反応を進行する電極であって、ヘテロポリ酸が多孔質の電子導電性材料に坦持されていることを特徴としている。
【0013】
<4> <1>及び<3>においてヘテロポリ酸は数分子で構成されるクラスター粒子を用いることを特徴としている。
【0014】
<5> <1>−<4>において電極表面上には異種のヘテロポリ酸を混在させて形成していることを特徴としている。
【0015】
<6> <1>−<5>においてヘテロポリ酸は、HlMaMbmOn(式中、Maは第1の金属を示し、Mbは第2の金属を示し、l、m及びnは1以上の整数である)で表されることを特徴としている。
【0016】
<7> 上記<6>において、Maの構成元素はリン、珪素、及びゲルマニウムからなる群から選ばれることが好ましい。
【0017】
<8> 上記<6>において、Mbの構成元素はモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ及びタンタルからなる群から選ばれることが好ましい。
【0018】
また、<9> ヘテロポリ酸は、前記ヘテロポリ酸構成例の水素の一部を第1の元素で置換してなり、且つ該第1の元素がアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0019】
また、<10> 前記第1の元素が2種以上であり、2種以上のうちの第1の種が遷移金属から選ばれ、第2の種がセシウムであることが好ましい。
【0020】
また、<11> 本発明の電気化学素子は、燃料からプロトン生成する燃料電極と、プロトンを酸素と反応させる酸素電極とをプロトン伝導性固体電解質を間にして対向してなる電気化学素子であって、前記酸素電極が<1>−<10>記載の電極であることを特徴としている。
【0021】
また、<12> この電気化学素子において、燃料が水素であるときに優れた効果が得られる。また、この電気化学素子において、燃料がメタノールであるときにも優れた効果が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本発明の電気化学素子の構成は、主に燃料から水素などの燃料を反応させて電子とプロトンを生成する燃料電極と、生成したプロトンを伝達する電解質、さらにプロトンと酸素とを外部回路を通して到達した電子によって反応させる酸素電極とから成っている(図1)。燃料電極、酸素電極にはそれぞれ、H2→2H++2e−、O2+4H++4e−→2H2Oの反応が進むことになるが、これらの反応を効率よく進めるために、触媒を有していることが必要である。一般的にはカーボンブラックと呼ばれる孔径がミクロンオーダーのカーボン多孔質体に白金などの貴金属触媒を担持したものがよく用いられている。
【0024】
電極を形成する手段は、圧縮成型、射出成型、発泡成型、印刷、塗布などの成型方法を用いていて、電解質などの他の構成要素と組み合わせる。本発明では電極反応を効率よく進行させるためヘテロポリ酸触媒を担持させた坦持体を電極として用いる。
【0025】
電極は、反応活性点を増やすために反応が起こる表面の量、触媒の比表面積を増やすほど高効率なものとなると考えられる。このため、触媒であるヘテロポリ酸の粒子を小さくすること例えばナノ粒子程度の大きさに制御することと、反応表面積を広くするため担持体に多孔質体を用いること、特にナノの大きさの空隙を持ったナノ多孔質体を用いることが望ましい。また、一般的にはナノ多孔質体は、電極反応に用いられる電子を反応活性点に供給するため、金属や炭素や導電性酸化物のような電子を容易に伝える導電体からなることが特性に優れていると考えられるが、触媒がナノサイズの大きさで連なって伝導パスを形成していれば電子はトンネル伝導することが考えられるため、多孔質担持体がシリカのような絶縁体であってもかまわない。多孔質電極を電解質に組み合わせるためには、この電解質に貼り合せたり、印刷や塗布したりするなどの方法で行う。
【0026】
このような電気化学素子を燃料電池として用いた際の酸素極に前記多孔質電極を用いることが好ましい。酸素極では、燃料極とは異なり、電極反応に伴うプロトン、電子、酸素とこれらによる生成物である水の伝達経路が確保されている必要がある。さらに、反応活性点を増やすため、多孔質体は低密度なナノ多孔質体で構成され、その中に微細化した触媒材を効率よく分散することが望ましい。また、微細化分散化した触媒材は、前記に例示した中でも、固体酸錯体であり高いプロトン導電性とともに強い酸化力を有するヘテロポリ酸を用いることが望ましい。このヘテロポリ酸は酸素のレドックス反応を促進し、酸素極での反応経路が従来の2つの電子が係わるものから4つの電子が同時に係わるものへ変わることにより、効率が高まる。
【0027】
また、この酸素電極と組み合わせる固体電解質としては、材料はプロトン伝導性を有する電解質であり、例えば、スルホン酸基を側鎖に有するフッ素系高分子膜、酸化タングステンや酸化モリブデンなどの水和酸化物、ポリリン酸やポリタングステン酸などの固体酸錯体などを用いることができる。膜またはシート状でも用いるために、成型されて利用される。
【0028】
また燃料極電極触媒はそれぞれプロトン導電性に優れているもの、水素からプロトンへの分離反応を促進するものなら何であっても構わないが、酸素極と電解質、燃料極と電解質の界面による特性劣化を防ぐため酸素極、電解質の構成材料も同系統であるヘテロポリ酸を使うことが望ましい。
【0029】
次にヘテロポリ酸について述べる。ヘテロポリ酸は、代表的な分子式H3MaMb12O40(Ma,Mbはそれぞれ第1の元素、第2の元素)で表される金属原子と酸素原子が規則正しい配列をした金属クラスターである1〜10nm分子サイズの物質群であって、酸素及び2種以上の元素を含む縮合酸の総称で、イソポリ酸に対する化合物である。図3に結晶構造を示す。ヘテロポリ酸の多くは、イソポリ酸とは対照的に極めて強い酸性溶液中で解縮合すること無く安定であり、それ自身強い酸強度と酸化力を有している。一般にその酸強度は強酸性雰囲気においてそれぞれの成分の酸素酸の酸強度よりも強く、固体酸触媒としての能力を有している。また、この強い酸化力は酸化剤として機能し、他の化合物を容易に酸化することで自身は還元状態となる。この還元状態のヘテロポリ酸は適当な酸化剤によって再び容易に酸化できることから、酸化還元反応の可逆性を示す物質である。
【0030】
ヘテロポリ酸は通常水溶液から合成され、対イオンである陽イオンと陰イオンからなっている。陽イオンとしては、水素イオン、アンモニウムや金属イオンであり、陰イオンとしてはポリ酸イオンから形成されている。ポリ酸イオンは金属原子などに酸素原子が通常4または6配位した四面体あるいは八面体を基本単位として、これが稜または頂点を介して結合した構造をもっており、金属の種類、結合様式の相違により多種多様の構造を示し、それとともに金属、半導体、絶縁体的と多様な電気特性やエレクトロクロミズムやフォトルミネッセンス、抗腫瘍抗ウイルス活性、触媒活性など、多様な物理化学的性質も変化する。
【0031】
ポリ酸イオンの特徴として、電気化学的、光化学的に可逆的に多電子酸化還元反応を行うこと、水および極性溶媒に対し高い溶解度を示し多くの配位水を有すること、分子サイズ・構造・イオン電荷量・金属を分子レベルで制御することが容易であること、金属の一部を非常に多くの異種金属で置換することができること、中性分子・イオンをゲストとするカプセル分子を形成しやすい等が挙げられる。
【0032】
強磁性、超伝導、強誘電と魅惑的な物性を示す強相関物質であるペロブスカイト酸化物が金属−酸素の4面体及び8面体構造をユニットとする結晶の長距離秩序を反映したものであることと対して、ヘテロポリ酸は金属−酸素の4面体及び8面体構造のユニットからなる分子断片の協力現象として物性が発現しているものと考えられ、構造変調によりこれらの協力現象を制御することにより効果を最大限に引き出すことができると考えられる。
【0033】
本発明で用いるヘテロポリ酸も一つの製法として溶液成長法を用いる。目的物の構成金属元素からなるナトリウム水和物塩を溶液中で反応温度、攪拌の程度と反応時間の制御のもと反応させる。このときできる塩化ナトリウムなどの副産物との分離は、有機溶剤に対する物質の溶解度差を利用する再結晶により行い、その結果粉末状の目的物質を得ることができる。
【0034】
ヘテロポリ酸の種類としては、H3MaMb12O40(Ma,Mbはそれぞれ第1の元素、第2の元素)の分子式で表されるような構造を持つもので、第1の元素は、リン、珪素、及びゲルマニウムからなる群から選ばれて、特に第1の元素はリンであるのがよい。
【0035】
また、ヘテロポリ酸中の第2の元素として、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、及びタンタル(Ta)を挙げることができる。
【0036】
さらに、ヘテロポリ酸の水素の一部が第3の元素で置換されていてもよい。第3の元素は、1種であっても2種であってもそれ以上であってもよい。また、第3の元素は、セシウム(Cs)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、イッテルビウム(Yb)、鉄(Fe)、銅(Cu)からなる群から選ばれるのが良い。
【0037】
また燃料電池として用いた際の燃料極での燃料としては、水素を好ましく用いることができる。水素以外には、メタノール、エタノールなどのアルコール系、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル系、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素系、ガソリンなどを用いることができる。これら燃料は、直接多孔電極で反応させて用いたり、一旦改質して水素を発生させてそれを反応させたりしてもよい。特に、直接多孔電極で反応させる場合には、メタノールは水素を発生する反応効率が高いため燃料電池からなる電気化学素子には好ましい。
【0038】
電極の触媒担持体としては、多孔質カーボンや多孔質シリカなどがあげられる。
【0039】
本発明に係わる多孔体の第一の構成は、図4に示すような網目構造骨格を有するカーボン複合多孔体11である。この多孔体11の網目構造骨格は、図5に示すように、無機酸化物13の乾燥ゲルからなる網目構造を骨格の芯として、それにカーボン材料14が被覆されてなるものである。
【0040】
まず、網目構造骨格について説明する。この網目構造骨格の構成は、図4および図5に示すような骨格が網目状にネットワークを作っているものであり、湿潤ゲルを経由して乾燥ゲルを得るプロセスから作られる。この構造は微粒子が凝集して網目構造を形成するために、図4の模式図のように表わせる。これを電子顕微鏡写真等で観察すると微粒子の凝集体で、その空隙が多孔構造となっている。この構造は、100nm以下の粒径の微粒子が空孔を構成する細孔サイズが1μm以下の微小孔を形成している。そのため、空孔率50%以上の低密度体を得ることができ、特徴として比表面積の高い多孔体を構成することができる。比表面積としては、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー法(以下、BET法と略す)で測定した値で、100m2/g以上のものが得られるものである。
【0041】
したがって、ここで説明しているカーボン複合多孔体11では、無機酸化物13の乾燥ゲルの網目構造骨格にカーボン材料14が被覆されてなるために、比表面積の大きな多孔体を構成することができる。また、カーボン複合多孔体11を製造する1つの方法であるカーボンの前駆体高分子の有機ゲルを焼成等によって炭化する工程においては、無機酸化物13の網目構造骨格が耐熱性を有しているために、その炭化過程でカーボン材料14の支持体としての役割を果たし、カーボン形成時の多孔体の収縮を抑制することができるという特徴を有するものである。その効果によって、得られるカーボン複合多孔体11では低密度で、比表面積の高い多孔体を形成することができる。
【0042】
本発明に係わる多孔体の第二の構成は、図4及び図6に示すような網目構造骨格を有するカーボン多孔体である。この骨格は、図6に示すように、カーボン材料16からなる網目構造骨格の内部が中空17となっているものである。
【0043】
この構造においては、乾燥ゲル構造である網目構造骨格による高い比表面積に加えて、その骨格内部が中空17になっていることでさらに比表面積が高くなる構造を有している。すなわち、製造行程において、有機ゲルの炭化による網目構造骨格に依存した多孔体としての性能に加えて、さらに性能向上が期待できるものである。
【0044】
本発明に関わる多孔体の第三の構成は、図7に示すように、網目構造骨格を有するカーボン複合多孔体またはカーボン多孔体11において、カーボン材料部分に触媒19が担持されているものである。この構成では、比表面積の大きなカーボン系の多孔体を担持体として用いているために、触媒の担持量が増えたり、反応活性点が増えたりするなどの特徴を有するものである。それによって活性の高い電極や触媒などへの応用が可能である。
【0045】
このときに、触媒19はカーボン材料と接している構成であればよい。前記のカーボン複合多孔体であれば、カーボン材料の表面、または無機酸化物の骨格と被覆されているカーボン材料の間のどちらでもよい。また、前記のカーボン多孔体では、カーボンの骨格の外表面、または内表面のどちらでもよい。しかし、被反応物との接触する機会が高い、カーボン材料の表面に触媒が存在する方が反応性が高いため好ましい。
【0046】
次に、これらの多孔体の製造方法について、図を用いて説明する。
【0047】
これらのカーボン複合多孔体の第一の製造方法は、図8に示す基本的な工程からなる。
【0048】
基本的な工程としては、無機酸化物の網目構造骨格を形成した後に、その湿潤ゲルにカーボン前駆体を形成し、そのカーボン前駆体を炭化してカーボンにする方法である。すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体の複合湿潤ゲルを得る工程、さらに、カーボン前駆体の複合湿潤ゲルを乾燥して複合乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化してカーボン複合多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの付加的な反応が加わることもある。
【0049】
この製造方法では、無機酸化物の網目構造骨格がカーボン前駆体を炭化する際に、炭化に伴う収縮を抑制する構造保持の支持体としての役割を有するために、前駆体の多孔体が炭化するに連れて収縮するのを押さえることができる。それによって、前駆体からカーボンになる際の密度の増加を抑制することができ、比表面積の低下を抑えることが可能になるという効果が得られるものである。
【0050】
これらのカーボン複合多孔体の第二の製造方法は、図9に示す基本的な工程からなる。
【0051】
この工程は、無機酸化物の網目構造骨格を形成して得た乾燥ゲルに、気相中でカーボン材料を形成する方法である。すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルを乾燥して無機酸化物乾燥ゲルを得る工程、乾燥ゲルに気相中でカーボン材料を形成する工程を経て、カーボン複合多孔体を得る。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの付加的な反応が加わることもある。
【0052】
なお、気相中でカーボン材料を形成する方法としては、気相中でカーボン前駆体材料を形成した後に炭化処理する方法と、直接カーボン材料を形成する方法がある。
【0053】
この製造方法では、無機酸化物の網目構造骨格がカーボン前駆体を炭化する際に、炭化に伴う収縮を抑制する構造保持の支持体としての役割を有するために、前駆体の多孔体が炭化するに連れて収縮するのを押さえることができる。それによって、前駆体からカーボンになる際の密度の増加を抑制することができ、比表面積の低下を抑えることが可能になるという効果が得られるものである。特に、気相中で直接カーボン材料を形成する場合には、前駆体の炭化による収縮等の歪が生じにくいために効果が大きい。
【0054】
これらのカーボン多孔体の第一の製造方法は、図10に示す基本的な工程からなる。
【0055】
この工程は、無機酸化物の網目構造骨格を形成した後に、その湿潤ゲルにカーボン前駆体を形成したカーボン複合多孔体から、骨格の芯として存在する無機酸化物を除去することによってカーボン前駆体の乾燥ゲルを得てから、その網目構造骨格のカーボン前駆体を炭化してカーボンにする方法である。すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体の複合湿潤ゲルを得る工程、カーボン前駆体複合湿潤ゲルから無機酸化物を除去する工程、さらにカーボン前駆体湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化してカーボン多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの付加的な反応が加わることもある。
【0056】
この製造方法では、カーボン材料から網目構造骨格が形成されているために、比表面積が大きなカーボン多孔体を形成できる。さらに、その網目構造骨格の内部に中空部が存在するために表面積の向上を図ることができている。それによって、密度が低く、比表面積の大きなカーボン多孔体を得ることができる。
【0057】
本発明に係わるカーボン多孔体の第二の製造方法は、図11に示す基本的な工程からなる。
【0058】
この工程は、前記のカーボン複合多孔体から、その網目構造骨格の芯として存在する無機酸化物を除去することによってカーボン多孔体を得る方法である。この製造方法では、カーボン材料から網目構造骨格が形成されているために、比表面積が大きなカーボン多孔体を形成できる。さらに、その網目構造骨格の内部に中空部が存在するために表面積の向上を図ることができている。それによって、密度が低く、比表面積の大きなカーボン多孔体を得ることができる。
【0059】
次に、本発明で用いる網目構造骨格を有する無機酸化物の湿潤ゲルについて説明する。無機酸化物の材料としては、一般的な金属酸化物でよいが、網目構造骨格を形成させるためにゾルゲル法で形成されるものが好ましい。例えば、酸化シリコン(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどや、複数の金属を含む酸化物が挙げられる。これらのうち、シリカおよびアルミナは、ゾルゲル法による湿潤ゲルの形成が容易であるために、特に好ましく用いることができる。これらの無機酸化物の原料としては、ゾルゲル反応で湿潤ゲルを形成できるものであればよい。例えば、ケイ酸ナトリウムや水酸化アルミニウムなどの無機原料、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシドやアルミニウム−sec−ブトキシドなどの有機金属アルコキシドの有機原料などを触媒とともに溶媒中でゾルゲル法によって湿潤ゲルを形成させる。
【0060】
以下に、シリカ湿潤ゲルの製造方法を例として少し詳細に説明する。湿潤ゲルを得る方法としては、シリカの原料を溶媒中でのゾルゲル反応によって合成および湿潤ゲル化するものである。このとき、必要に応じて触媒を用いる。この形成過程では、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子を形成し、その微粒子が集まって網目構造骨格を形成し湿潤ゲルが得られる。具体的には、所定の固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。その組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型、塗布などによって所望の使用形態にする。この状態で一定時間経過することによって、溶液はゲル化して湿潤ゲルが得られる。また、必要に応じて、湿潤ゲルの熟成や細孔制御のためにエージング処理を行っても良い。
【0061】
製造時の温度条件としては通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度で実施することもある。このときのシリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。溶媒としては原料が溶解してシリカが形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。触媒としては、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。また、湿潤ゲルを後のカーボン前駆体形成などの工程において、溶媒の親和性を高めたりするのに、表面処理が行われていても良い。このときは、表面処理剤を湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に化学反応させることができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシラン、フェニルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。用途によってその表面処理剤を選定すればよい。
【0062】
多孔質シリカは、連続気孔または独立気孔を有する酸化ケイ素であり、シリカ粉体の成型、シリカ粉体焼成、化学発泡、物理発泡、ゾルゲル法などの多くの方法で作製することができる。本発明の触媒担持体においては、多孔質シリカとして、ナノメートルサイズの気孔を多く有するものを用いることが好ましい効果が得られる。このような好ましい構造を有する多孔質シリカとして、ゾルゲル法によって作製するシリカ乾燥ゲルを特に候補として用いることができる。
【0063】
ここで、乾燥ゲルとは、ゾルゲル反応によって形成される多孔質体であり、ゲル原料液の反応によって固体化した固体骨格部が溶媒を含んで構成された湿潤ゲルを経て、その湿潤ゲルを乾燥して溶媒除去することで形成されるものである。この乾燥ゲルは、100nm以下のサイズの粒子で構成される固体骨格部によって平均細孔直径が100nm以下の範囲である連続気孔が形成されているナノ多孔質体である。また、固体成分を少なくすることで、非常に低密度な多孔質体を得ることができる。
【0064】
本発明で用いる乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得る方法は、大きく湿潤ゲルを得る工程とそれを乾燥する工程からなる。
【0065】
まず、湿潤ゲルを得る方法としては、シリカの原料を溶媒中でのゾルゲル反応によって合成および湿潤ゲル化するものである。このとき、必要に応じて触媒を用いる。この形成過程では、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子を形成し、その微粒子が集まって網目状骨格を形成し湿潤ゲルが得られる。具体的には、所定の密度の多孔質シリカを得るように固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。その組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型、塗布などによって所望の使用形態にする。この状態で一定時間経過することによって、溶液はゲル化してシリカの湿潤ゲルが得られる。製造時の温度条件としては通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度で実施することもある。
【0066】
シリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。溶媒としては原料が溶解してシリカ形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。触媒としては、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。
【0067】
次に、湿潤ゲルから乾燥ゲルを得る乾燥工程について述べる。
乾燥処理には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥の通常乾燥法や、超臨界乾燥法、凍結乾燥法などを用いることができる。一般に、乾燥ゲルを低密度にするために湿潤ゲル中の固体成分量を少なくするとゲル強度が低下する。また、通常、ただ単に乾燥するだけの乾燥法では、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまう。乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、乾燥方法として超臨界乾燥や凍結乾燥を好ましく用いることによって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。また、乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、湿潤ゲルにおいてゲルの固体成分の表面を撥水処理等によって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。
【0068】
超臨界乾燥法や凍結乾燥法では、溶媒を液体状態から相状態を変えることによって、気液界面を無くして表面張力によるゲル骨格へのストレスを無くして乾燥することができるため、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができ、低密度の乾燥ゲルの多孔質体を得るのに適した方法である。特に、超臨界乾燥法で作られた乾燥ゲルを本発明では好ましく用いることができる。
【0069】
この超臨界乾燥に用いる溶媒は、湿潤ゲルの溶媒を用いることができる。また必要に応じて、超臨界乾燥において扱いやすい溶媒に置換しておくのが好ましい。置換する溶媒としては、直接その溶媒を超臨界流体にするメタノール、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、二酸化炭素、水が挙げられる。または、これらの超臨界流体で溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどの一般的な取扱いしやすい有機溶剤に置換しておいてもよい。
【0070】
超臨界乾燥条件としては、オートクレーブなどの圧力容器中で行い、例えばメタノールではその臨界条件である臨界圧力8.09MPa、臨界温度239.4℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放して乾燥を行う。また、二酸化炭素の場合には、臨界圧力7.38MPa、臨界温度31.1℃以上にして、同じように温度一定の状態で超臨界状態から圧力を開放して気体状態にして乾燥を行う。また、水の場合には、臨界圧力22.04MPa、臨界温度374.2℃以上にして乾燥を行う。乾燥に必要な時間としては、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上を経過すればよい。
【0071】
湿潤ゲルを撥水処理してから乾燥する方法は、撥水処理のための表面処理剤を湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に化学反応させる。これによって湿潤ゲルの網目構造の細孔内に発生する表面張力を低減し、乾燥時の応力を低減することができ、通常乾燥にて収縮を抑制した乾燥ゲルを得ることができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。湿潤ゲルを収縮させること無く、通常乾燥方法から乾燥ゲルを得ることができればこれらの表面処理剤に限られるものではない。
【0072】
なお、本方法を用いて得られる乾燥ゲルの材質としては、無機材料、有機高分子材料などを用いることができる。無機酸化物の乾燥ゲルの固体骨格部は、酸化ケイ素(シリカ)または酸化アルミニウム(アルミナ)などゾルゲル反応で得られる一般的なセラミックスを成分として適用することができる。また、有機高分子の乾燥ゲルの固体骨格部としては、一般的な熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により構成することができる。例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、フェノール硬化樹脂、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチルなどを適用することができる。
【0073】
次にヘテロポリ酸を前記多孔質体に担持する方法について述べる。ヘテロポリ酸を担持する方法としては、
A、担持体となる多孔質体の湿潤ゲルを得る前の溶媒原料にヘテロポリ酸を溶媒に溶かした溶液を混在させ湿潤ゲルを得てから乾燥ゲル化し担持する方法、
B、担持体となる多孔質体の湿潤ゲルを得た後にヘテロポリ酸を溶媒に溶かした溶液に漬け込み染み込ませた後乾燥ゲル化し担持する方法、
C、担持体となる多孔質体の乾燥ゲルを形成した後にヘテロポリ酸を溶媒に溶かした溶液を染み込ませ、再乾燥させることにより担持する方法がある。
【0074】
好ましくは、Bの方法であり、この方法では、ナノ多孔質体の中に効率よくヘテロポリ酸無水和物を担持した構造を作製することができる。乾燥ゲル化して多孔質体を得るプロセスでは、乾燥、加熱真空、超臨界乾燥及び凍結乾燥などの方法があるが、超臨界乾燥による方法が最も分散よくヘテロポリ酸を担持する事が出来る。
【0075】
(ヘテロポリ酸の作製)
ヘテロポリ酸として代表的な12タングストリン酸の作製を溶液成長法によっておこなった。作製のための化学反応は、12Na2WO4 ・2H2O+Na2HPO4 ・12H2O+26HCl→H3PW12O40 ・6H2O+26NaCl+42H2Oによる反応で行った。溶液成長プロセスは以下の通りである。
【0076】
▲1▼ タングステン酸ナトリウム2水和物 Na2WO4・2H2O 100gとリン酸水素ナトリウム12水和物 NaHPO4・12H2O 50gを各々秤量し丸底フラスコ中で純水160mlに溶かして、80℃で5h攪拌反応する。
【0077】
▲2▼ ▲1▼の反応後、24%HCl 150mlを攪拌しながら滴下する。
【0078】
二つの試料を混ぜて攪拌した後、80℃の湯浴中での反応で反応中に攪拌をしなかった場合、沈殿物が形成されてしまい所望の反応が進行しなかった。また、80℃の湯浴中での反応で攪拌をした場合でも濃縮過程を自然乾燥で進めると反応が進まず、所望外の物質が析出してしまい目的試料を得られなかった。このため80℃ 5hの反応後、エバポレーターを用いて急速な濃縮をした。
【0079】
▲3▼ エバポレーターにより白色沈殿を含む液を約100mlになるまで濃縮する。
【0080】
▲4▼ 室温まで冷却後、分液漏斗に移し同量のエチルエーテルを加えると白濁した沈殿層とエーテル層に分離する。さらに、35%HClを数滴加えてからゆっくり攪拌し、放置すると白濁した沈殿層から少し緑黄色がついた油状生成物が底のほうにたまり始め、油状生成物とエーテルと水に分離する。
【0081】
▲5▼ エバポレーターによりエーテルと水を取り除き目的物質を得る。
【0082】
沈殿物含有溶液から目的物質を抽出するためエチルエーテルへの溶解度差を利用したエーテル抽出をおこなった。抽出過程で▲4▼の過程の後、沈殿物のみ及び溶液のみをそれぞれ取り出してエーテル抽出しようとしても目的物質は得られなかった。
【0083】
次に沈殿物含有溶液全量に対して、エーテルと塩酸を加えたときに分液漏斗を振って混濁した結果、混濁具合の強弱の度合いによって多少の違いは生じるもののほぼ5ml前後の油状生成物しか得ることができず生成物の収率は非常に低いものであった。
【0084】
このため収率を上げる検討を重ねたところ、沈殿物含有溶液全量に対して、エーテルと塩酸を加え攪拌棒によって少しずつ攪拌を加えると攪拌が反応を誘発し40%近くの収率で油状生成物を得ることができた。この油状生成物からエーテルと水を分離し粉末バルク体であるH3PW12O40試料を得た。
【0085】
同様の方法で異種のヘテロポリ酸を作製することができるがこの方法に限られるものではない。
【0086】
以下に、本発明に係る多孔電極およびそれを用いた電気化学素子の具体的な実施例を示すが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(実施例1 ヘテロポリ酸を担持した多孔質体の作製(その1))
平均粒径0.1μmのカーボンブラックを圧縮成型して比表面積約50m2/gの多孔体を得た。
【0087】
ヘテロポリ酸分子2mgをアセトン溶媒100ml中に溶かした溶液中に、この多孔体を浸漬させて超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥条件としては、オートクレーブによる圧力容器中で行い、臨界条件である臨界圧力10.56MPa、臨界温度293.7℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放した。この触媒担持量は約0.2mg/cm3であった。
【0088】
続いて、この溶液に多孔体を室温で浸漬することで、多孔体表面にヘテロポリ酸をスペーサとして吸着させて、多孔電極Aを得た。その後に、同じくヘテロポリ酸であるタングストリン酸ナトリウム水和物で作製された電解質フィルムの両面に多孔電極Aを貼り合せて電気化学素子を形成した。
【0089】
また、比較として、同じ多孔体に白金アンモニウムから焼成によって白金触媒を担持した。触媒の粒径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.3mg/cm3であった。この触媒担持した多孔体に、スルホン酸基を有するパーフルオロポリマーを塗布して多孔電極Bを形成した。これをナフィオンと組み合わせて電気化学素子を構成した。
【0090】
これらの電気化学素子の片面に水素を導入し、対向する面に空気を導入して燃料電池とした。多孔電極Aと多孔電極Bでの出力電圧を測定したところ、従来の多孔電極Bの場合に0.8Vであるのに対して、担持触媒量が少ない多孔電極Aの方は0.95Vと高い値が得られ効率的な反応が生じていることが明らかになった。
(実施例2 ヘテロポリ酸を担持した多孔質体の作製(その2))
テトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1対3対4になるように調製したゲル原料液を、カーボンペーパー上に、厚さ300μmとなるように塗布を行った。この後に塗膜がゲル化して固体化したシリカ湿潤ゲル層を得た。
【0091】
このシリカ湿潤ゲル層を形成したカーボンペーパーをエタノールで洗浄(溶媒置換)した後に、ヘテロポリ酸分子2mgをアセトン溶媒100ml中に溶かした溶液中に、このゲル体を浸漬させて二酸化炭素による超臨界乾燥を行って、触媒を担持した乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層を得た。超臨界乾燥は、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温して乾燥ゲルを得た。
【0092】
なお、得られた多孔質シリカ層は、密度約200kg/m3であり、空孔率は約92%であった。また、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法で測定した比表面積の値は約800m2/gであり、その平均細孔直径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.23mg/cm3であった。
【0093】
続いて、この溶液に多孔体を室温で浸漬することで、多孔体表面にヘテロポリ酸をスペーサとして吸着させて、多孔電極Aを得た。その後に、同じくヘテロポリ酸であるタングストリン酸ナトリウム水和物で作製された電解質フィルムの両面に多孔電極Aを貼り合せて電気化学素子を形成した。
【0094】
また、比較として、同じ多孔体に白金アンモニウムから焼成によって白金触媒を担持した。触媒の粒径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.3mg/cm3であった。この触媒担持した多孔体に、スルホン酸基を有するパーフルオロポリマーを塗布して多孔電極Bを形成した。これをナフィオンと組み合わせて電気化学素子を構成した。
【0095】
これらの電気化学素子の片面に水素を導入し、対向する面に空気を導入して燃料電池とした。多孔電極Aと多孔電極Bでの出力電圧を測定したところ、従来の多孔電極Bの場合に0.8Vであるのに対して、担持触媒量が少ない多孔電極Aの方は0.9Vと高い値が得られ効率的な反応が生じていることが明らかになった。
(実施例3 ヘテロポリ酸を担持した多孔質体の作製(その3))
ケイ酸ソーダの電気透析を行い、pH9〜10のケイ酸水溶液(水溶液中のシリカ成分濃度14重量%)を作る。そのケイ酸水溶液のpHを5.5に調整したのちに、この原料液をカーボンペーパー上に、厚さ300μmとなるように塗布を行った。この後に塗膜がゲル化して固体化したシリカ湿潤ゲル層を得た。
【0096】
このシリカ湿潤ゲル層を形成したカーボンペーパーをジメチルジメトキシシランの5重量%イソプロピルアルコール溶液中で疎水化処理を行った後に、ヘテロポリ酸分子2mgをアセトン溶媒100ml中に溶かした溶液中に、このゲル体を浸漬させて通常乾燥法である減圧乾燥を行って、乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層を得た。乾燥条件は、圧力0.05MPa、温度50℃で3時間経過後に、圧力が大気圧になってから降温して乾燥ゲルを得た。
【0097】
なお、得られた乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層は、密度約200kg/m3であり、空孔率は約92%であった。また、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法で測定した比表面積の値は約600m2/gであり、その平均細孔直径は約15nmであった。この触媒担持量は約0.22mg/cm3であった。
【0098】
続いて、この溶液に多孔体を室温で浸漬することで、多孔体表面にヘテロポリ酸をスペーサとして吸着させて、多孔電極Aを得た。その後に、同じくヘテロポリ酸であるタングストリン酸ナトリウム水和物で作製された電解質フィルムの両面に多孔電極Aを貼り合せて電気化学素子を形成した。
【0099】
また、比較として、同じ多孔体に白金アンモニウムから焼成によって白金触媒を担持した。触媒の粒径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.3mg/cm3であった。この触媒担持した多孔体に、スルホン酸基を有するパーフルオロポリマーを塗布して多孔電極Bを形成した。これをナフィオンと組み合わせて電気化学素子を構成した。
【0100】
これらの電気化学素子の片面に水素を導入し、対向する面に空気を導入して燃料電池とした。多孔電極Aと多孔電極Bでの出力電圧を測定したところ、従来の多孔電極Bの場合に0.8Vであるのに対して、担持触媒量が少ない多孔電極Aの方は0.85Vと高い値が得られ効率的な反応が生じていることが明らかになった。
【0101】
【発明の効果】
本発明にかかる貴金属代替触媒のナノ多孔質体への担持により優れた電極性能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池の一般的な原理を説明するための図
【図2】多孔電極の従来技術を説明するための図
【図3】ヘテロポリ酸の構造を説明するための図
【図4】本発明の多孔体における網目構造骨格を説明するための模式図
【図5】本発明のカーボン複合多孔体における網目構造骨格を説明するための断面図
【図6】本発明のカーボン多孔体における網目構造骨格を説明するための断面図
【図7】本発明の多孔体における他の一例を説明するための模式図
【図8】本発明で得られるカーボン複合多孔体の製造方法の一例を説明する工程図
【図9】本発明で得られるカーボン複合多孔体の製造方法の他の一例を説明する工程図
【図10】本発明で得られるカーボン多孔体の製造方法の一例を説明する工程図
【図11】本発明で得られるカーボン多孔体の製造方法の他の一例を説明する工程図
【符号の説明】
1 電子伝導性を有する多孔体の構成粒子
2 活性な触媒
3 不活性な触媒
4 被覆されたプロトン伝導性固体電解質
5 プロトン伝導性固体電解質膜
11 多孔体
13 無機酸化物
14 カーボン材料
16 カーボン材料
17 中空部
19 担持された触媒
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池やキャパシタなどの電極材、触媒の担持体に関するものである。特に、この電極を利用して用いる燃料電池、空気電池、水電解装置、ガスセンサ、汚染ガス除去装置などの電気化学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球環境問題への関心の高まりから、省資源化、省エネルギー化が推進されている。エネルギー資源として、再生可能なクリーンエネルギーを利用するエネルギー源とそのシステム開発が進められている。特に、水素をエネルギー源とした燃料電池システムは、自動車のエンジンの代替技術や、分散型電源、コジェネレーション技術などの幅広い用途がある。また、携帯電話などの個人情報機器の普及によって、その電源として大容量の電池の開発が進められている。その技術の候補として、水素やメタノール等の燃料を使った燃料電池が期待されている。
【0003】
燃料電池の基本的な構成を図1に示す。燃料電池では、燃料から水素などの燃料を反応させて電子とプロトンを生成する燃料電極と、生成したプロトンを伝達する電解質、さらにプロトンと酸素とを外部回路を通して到達した電子によって反応させる酸素電極とから成っている。この電極部の反応は、それぞれ以下の役割を有する。まず、燃料電極では、液体または気体の流体燃料が電極上の触媒と反応して、たとえばH2→2H++2e−のように反応して電荷分離した電子は電極から外部回路へ伝わり、プロトンはプロトン伝導性の電解質へ伝わる。電解質はプロトンのみを伝達する役割をもち、燃料等の拡散による効率低下の少ないものが用いられる。燃料電極に対向する酸素電極は、燃料電極で生成した電子とプロトンが到達し、触媒において空気中の酸素または酸素ガスと、O2+4H++4e−→2H2Oの反応によって水を生成する。このように、再生可能なエネルギー源である水素またはメタノールなどのエネルギーから電力を供給することができる上に、反応生成物も水であり環境上の問題の少ない反応である。クリーンエネルギーとして大きな期待がなされている。
【0004】
このような電気化学素子の電極反応触媒としてPt及びPt合金が一般に用いられているが、燃料から発生するCOなどによる触媒能の低下(被毒)の改善や反応の高効率化及び貴金属触媒フリーや削減による低コスト化の検討が盛んに行われている。これらの検討の中で、被毒の改善に対して、例えば燃料極の燃料であるメタノールからの被毒を抑え高活性化する目的でヘテロポリ酸を燃料極材料として混在させた燃料電池について開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−134122号公報(第2−7頁)
【特許文献2】
特開平10−21907号公報(段落番号0049〜0054)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記燃料電池における課題として、電極反応の高効率化と、資源枯渇の回避及び低コスト化のための貴金属触媒の削減、貴金属触媒フリー化が求められている。このため、従来使用されているPt、Pt合金の代替触媒の探索、触媒材料の担体への坦持法、坦持体及び触媒材料の寸法制御が課題として挙げられる。燃料電池の電極は、燃料気体と、反応のための触媒と、電荷を運搬する電極と電解質の異なる役割の相で構成されている。燃料気体は効率的に触媒まで到達する必要があるため、分散体ならびに多孔体が用いられる。反応を効率的に行うために、触媒は比表面積が高くなるように微粒子状態で、凝集することなく分散しているのが好ましい。プロトン生成時の反応では、燃料気体が触媒で反応し、その生成した電子とプロトンが反応サイトである触媒の位置から効率的に分離して伝搬するのが好ましい。また、プロトンと酸素から水を生成する反応では、電子とプロトンが反応サイトの触媒まで効率的に到達し、酸素と反応するのが好ましい。
【0007】
しかしながら、図2の概念図に示すように、カーボンブラックなどのカーボン粒子1で電極を構成する場合には、そのカーボン粒子1に触媒2、3を担持した後にカーボン表面を覆うように電解質4の高分子を塗布したり、触媒が高分子に埋まるように組み合わせている。そのため、実際には図2のように、カーボン電極表面は、全面が固体高分子電解質4で覆われる部分と、部分的に覆われている部分があり、場合によっては全く覆われていない部分が形成されている。例えば、全面が固体高分子電解質4で覆われる部分では、燃料の流体が触媒まで到達しにくいために効率的な反応が行われない。そのために触媒として有効に使用されていない量が多くあるために、白金などの高価な触媒を必要以上に使うことになり、コストが高くなるという課題もある。また、部分的にまたは全く覆われていない部分がある場合では、燃料の流体は触媒まで到達しやすい。
【0008】
しかし、触媒での反応で使われる電子とプロトンのうち、プロトンを電解質膜5から伝える高分子電解質4が近くにないために、電極反応できず効率的な反応が行われない。そのために高分子電解質で覆われている場合と同様に、白金などの高価な触媒を必要以上に使うことになり、コストが高くなるという課題もある。酸素極に用いる電極としては、上記のように、より反応を促進するために反応に寄与する酸素とプロトン伝導体と電子伝導体と触媒が同時に接触するような構造をつくりこみ、例えば触媒を微粒子化などにより比表面積を大きくして三相界面を増加させる必要がある。本発明では、これらの課題を解決し、電池特性を向上させることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題のため、本発明者らは、電解質材料としてプロトン伝導性に優れ、強酸性・強酸化力を兼ね備え、2−プロパノールの製造など多元的な触媒機能を有するヘテロポリ酸に着目し、鋭意検討の結果、ヘテロポリ酸の組成・構造・形状制御による特性変化を見出し、代替触媒材料探索の課題を解決できることを見出した。また触媒の担体への坦持方法も含めて電極の構成を検討することにより高効率な電極反応を起こすことができる。
【0010】
すなわち本発明では、
<1> 酸素とプロトンと電子を介して反応を進行する電極であって、ヘテロポリ酸が導電体と複合体を形成し電極材に坦持されていることを特徴としている。
【0011】
<2> 上記<1>において、電極の導電体材料は、金属及び炭素及び導電性酸化物であることを特徴としている。
【0012】
<3> 酸素とプロトンと電子を介して反応を進行する電極であって、ヘテロポリ酸が多孔質の電子導電性材料に坦持されていることを特徴としている。
【0013】
<4> <1>及び<3>においてヘテロポリ酸は数分子で構成されるクラスター粒子を用いることを特徴としている。
【0014】
<5> <1>−<4>において電極表面上には異種のヘテロポリ酸を混在させて形成していることを特徴としている。
【0015】
<6> <1>−<5>においてヘテロポリ酸は、HlMaMbmOn(式中、Maは第1の金属を示し、Mbは第2の金属を示し、l、m及びnは1以上の整数である)で表されることを特徴としている。
【0016】
<7> 上記<6>において、Maの構成元素はリン、珪素、及びゲルマニウムからなる群から選ばれることが好ましい。
【0017】
<8> 上記<6>において、Mbの構成元素はモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ及びタンタルからなる群から選ばれることが好ましい。
【0018】
また、<9> ヘテロポリ酸は、前記ヘテロポリ酸構成例の水素の一部を第1の元素で置換してなり、且つ該第1の元素がアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0019】
また、<10> 前記第1の元素が2種以上であり、2種以上のうちの第1の種が遷移金属から選ばれ、第2の種がセシウムであることが好ましい。
【0020】
また、<11> 本発明の電気化学素子は、燃料からプロトン生成する燃料電極と、プロトンを酸素と反応させる酸素電極とをプロトン伝導性固体電解質を間にして対向してなる電気化学素子であって、前記酸素電極が<1>−<10>記載の電極であることを特徴としている。
【0021】
また、<12> この電気化学素子において、燃料が水素であるときに優れた効果が得られる。また、この電気化学素子において、燃料がメタノールであるときにも優れた効果が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本発明の電気化学素子の構成は、主に燃料から水素などの燃料を反応させて電子とプロトンを生成する燃料電極と、生成したプロトンを伝達する電解質、さらにプロトンと酸素とを外部回路を通して到達した電子によって反応させる酸素電極とから成っている(図1)。燃料電極、酸素電極にはそれぞれ、H2→2H++2e−、O2+4H++4e−→2H2Oの反応が進むことになるが、これらの反応を効率よく進めるために、触媒を有していることが必要である。一般的にはカーボンブラックと呼ばれる孔径がミクロンオーダーのカーボン多孔質体に白金などの貴金属触媒を担持したものがよく用いられている。
【0024】
電極を形成する手段は、圧縮成型、射出成型、発泡成型、印刷、塗布などの成型方法を用いていて、電解質などの他の構成要素と組み合わせる。本発明では電極反応を効率よく進行させるためヘテロポリ酸触媒を担持させた坦持体を電極として用いる。
【0025】
電極は、反応活性点を増やすために反応が起こる表面の量、触媒の比表面積を増やすほど高効率なものとなると考えられる。このため、触媒であるヘテロポリ酸の粒子を小さくすること例えばナノ粒子程度の大きさに制御することと、反応表面積を広くするため担持体に多孔質体を用いること、特にナノの大きさの空隙を持ったナノ多孔質体を用いることが望ましい。また、一般的にはナノ多孔質体は、電極反応に用いられる電子を反応活性点に供給するため、金属や炭素や導電性酸化物のような電子を容易に伝える導電体からなることが特性に優れていると考えられるが、触媒がナノサイズの大きさで連なって伝導パスを形成していれば電子はトンネル伝導することが考えられるため、多孔質担持体がシリカのような絶縁体であってもかまわない。多孔質電極を電解質に組み合わせるためには、この電解質に貼り合せたり、印刷や塗布したりするなどの方法で行う。
【0026】
このような電気化学素子を燃料電池として用いた際の酸素極に前記多孔質電極を用いることが好ましい。酸素極では、燃料極とは異なり、電極反応に伴うプロトン、電子、酸素とこれらによる生成物である水の伝達経路が確保されている必要がある。さらに、反応活性点を増やすため、多孔質体は低密度なナノ多孔質体で構成され、その中に微細化した触媒材を効率よく分散することが望ましい。また、微細化分散化した触媒材は、前記に例示した中でも、固体酸錯体であり高いプロトン導電性とともに強い酸化力を有するヘテロポリ酸を用いることが望ましい。このヘテロポリ酸は酸素のレドックス反応を促進し、酸素極での反応経路が従来の2つの電子が係わるものから4つの電子が同時に係わるものへ変わることにより、効率が高まる。
【0027】
また、この酸素電極と組み合わせる固体電解質としては、材料はプロトン伝導性を有する電解質であり、例えば、スルホン酸基を側鎖に有するフッ素系高分子膜、酸化タングステンや酸化モリブデンなどの水和酸化物、ポリリン酸やポリタングステン酸などの固体酸錯体などを用いることができる。膜またはシート状でも用いるために、成型されて利用される。
【0028】
また燃料極電極触媒はそれぞれプロトン導電性に優れているもの、水素からプロトンへの分離反応を促進するものなら何であっても構わないが、酸素極と電解質、燃料極と電解質の界面による特性劣化を防ぐため酸素極、電解質の構成材料も同系統であるヘテロポリ酸を使うことが望ましい。
【0029】
次にヘテロポリ酸について述べる。ヘテロポリ酸は、代表的な分子式H3MaMb12O40(Ma,Mbはそれぞれ第1の元素、第2の元素)で表される金属原子と酸素原子が規則正しい配列をした金属クラスターである1〜10nm分子サイズの物質群であって、酸素及び2種以上の元素を含む縮合酸の総称で、イソポリ酸に対する化合物である。図3に結晶構造を示す。ヘテロポリ酸の多くは、イソポリ酸とは対照的に極めて強い酸性溶液中で解縮合すること無く安定であり、それ自身強い酸強度と酸化力を有している。一般にその酸強度は強酸性雰囲気においてそれぞれの成分の酸素酸の酸強度よりも強く、固体酸触媒としての能力を有している。また、この強い酸化力は酸化剤として機能し、他の化合物を容易に酸化することで自身は還元状態となる。この還元状態のヘテロポリ酸は適当な酸化剤によって再び容易に酸化できることから、酸化還元反応の可逆性を示す物質である。
【0030】
ヘテロポリ酸は通常水溶液から合成され、対イオンである陽イオンと陰イオンからなっている。陽イオンとしては、水素イオン、アンモニウムや金属イオンであり、陰イオンとしてはポリ酸イオンから形成されている。ポリ酸イオンは金属原子などに酸素原子が通常4または6配位した四面体あるいは八面体を基本単位として、これが稜または頂点を介して結合した構造をもっており、金属の種類、結合様式の相違により多種多様の構造を示し、それとともに金属、半導体、絶縁体的と多様な電気特性やエレクトロクロミズムやフォトルミネッセンス、抗腫瘍抗ウイルス活性、触媒活性など、多様な物理化学的性質も変化する。
【0031】
ポリ酸イオンの特徴として、電気化学的、光化学的に可逆的に多電子酸化還元反応を行うこと、水および極性溶媒に対し高い溶解度を示し多くの配位水を有すること、分子サイズ・構造・イオン電荷量・金属を分子レベルで制御することが容易であること、金属の一部を非常に多くの異種金属で置換することができること、中性分子・イオンをゲストとするカプセル分子を形成しやすい等が挙げられる。
【0032】
強磁性、超伝導、強誘電と魅惑的な物性を示す強相関物質であるペロブスカイト酸化物が金属−酸素の4面体及び8面体構造をユニットとする結晶の長距離秩序を反映したものであることと対して、ヘテロポリ酸は金属−酸素の4面体及び8面体構造のユニットからなる分子断片の協力現象として物性が発現しているものと考えられ、構造変調によりこれらの協力現象を制御することにより効果を最大限に引き出すことができると考えられる。
【0033】
本発明で用いるヘテロポリ酸も一つの製法として溶液成長法を用いる。目的物の構成金属元素からなるナトリウム水和物塩を溶液中で反応温度、攪拌の程度と反応時間の制御のもと反応させる。このときできる塩化ナトリウムなどの副産物との分離は、有機溶剤に対する物質の溶解度差を利用する再結晶により行い、その結果粉末状の目的物質を得ることができる。
【0034】
ヘテロポリ酸の種類としては、H3MaMb12O40(Ma,Mbはそれぞれ第1の元素、第2の元素)の分子式で表されるような構造を持つもので、第1の元素は、リン、珪素、及びゲルマニウムからなる群から選ばれて、特に第1の元素はリンであるのがよい。
【0035】
また、ヘテロポリ酸中の第2の元素として、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、及びタンタル(Ta)を挙げることができる。
【0036】
さらに、ヘテロポリ酸の水素の一部が第3の元素で置換されていてもよい。第3の元素は、1種であっても2種であってもそれ以上であってもよい。また、第3の元素は、セシウム(Cs)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、イッテルビウム(Yb)、鉄(Fe)、銅(Cu)からなる群から選ばれるのが良い。
【0037】
また燃料電池として用いた際の燃料極での燃料としては、水素を好ましく用いることができる。水素以外には、メタノール、エタノールなどのアルコール系、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル系、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素系、ガソリンなどを用いることができる。これら燃料は、直接多孔電極で反応させて用いたり、一旦改質して水素を発生させてそれを反応させたりしてもよい。特に、直接多孔電極で反応させる場合には、メタノールは水素を発生する反応効率が高いため燃料電池からなる電気化学素子には好ましい。
【0038】
電極の触媒担持体としては、多孔質カーボンや多孔質シリカなどがあげられる。
【0039】
本発明に係わる多孔体の第一の構成は、図4に示すような網目構造骨格を有するカーボン複合多孔体11である。この多孔体11の網目構造骨格は、図5に示すように、無機酸化物13の乾燥ゲルからなる網目構造を骨格の芯として、それにカーボン材料14が被覆されてなるものである。
【0040】
まず、網目構造骨格について説明する。この網目構造骨格の構成は、図4および図5に示すような骨格が網目状にネットワークを作っているものであり、湿潤ゲルを経由して乾燥ゲルを得るプロセスから作られる。この構造は微粒子が凝集して網目構造を形成するために、図4の模式図のように表わせる。これを電子顕微鏡写真等で観察すると微粒子の凝集体で、その空隙が多孔構造となっている。この構造は、100nm以下の粒径の微粒子が空孔を構成する細孔サイズが1μm以下の微小孔を形成している。そのため、空孔率50%以上の低密度体を得ることができ、特徴として比表面積の高い多孔体を構成することができる。比表面積としては、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー法(以下、BET法と略す)で測定した値で、100m2/g以上のものが得られるものである。
【0041】
したがって、ここで説明しているカーボン複合多孔体11では、無機酸化物13の乾燥ゲルの網目構造骨格にカーボン材料14が被覆されてなるために、比表面積の大きな多孔体を構成することができる。また、カーボン複合多孔体11を製造する1つの方法であるカーボンの前駆体高分子の有機ゲルを焼成等によって炭化する工程においては、無機酸化物13の網目構造骨格が耐熱性を有しているために、その炭化過程でカーボン材料14の支持体としての役割を果たし、カーボン形成時の多孔体の収縮を抑制することができるという特徴を有するものである。その効果によって、得られるカーボン複合多孔体11では低密度で、比表面積の高い多孔体を形成することができる。
【0042】
本発明に係わる多孔体の第二の構成は、図4及び図6に示すような網目構造骨格を有するカーボン多孔体である。この骨格は、図6に示すように、カーボン材料16からなる網目構造骨格の内部が中空17となっているものである。
【0043】
この構造においては、乾燥ゲル構造である網目構造骨格による高い比表面積に加えて、その骨格内部が中空17になっていることでさらに比表面積が高くなる構造を有している。すなわち、製造行程において、有機ゲルの炭化による網目構造骨格に依存した多孔体としての性能に加えて、さらに性能向上が期待できるものである。
【0044】
本発明に関わる多孔体の第三の構成は、図7に示すように、網目構造骨格を有するカーボン複合多孔体またはカーボン多孔体11において、カーボン材料部分に触媒19が担持されているものである。この構成では、比表面積の大きなカーボン系の多孔体を担持体として用いているために、触媒の担持量が増えたり、反応活性点が増えたりするなどの特徴を有するものである。それによって活性の高い電極や触媒などへの応用が可能である。
【0045】
このときに、触媒19はカーボン材料と接している構成であればよい。前記のカーボン複合多孔体であれば、カーボン材料の表面、または無機酸化物の骨格と被覆されているカーボン材料の間のどちらでもよい。また、前記のカーボン多孔体では、カーボンの骨格の外表面、または内表面のどちらでもよい。しかし、被反応物との接触する機会が高い、カーボン材料の表面に触媒が存在する方が反応性が高いため好ましい。
【0046】
次に、これらの多孔体の製造方法について、図を用いて説明する。
【0047】
これらのカーボン複合多孔体の第一の製造方法は、図8に示す基本的な工程からなる。
【0048】
基本的な工程としては、無機酸化物の網目構造骨格を形成した後に、その湿潤ゲルにカーボン前駆体を形成し、そのカーボン前駆体を炭化してカーボンにする方法である。すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体の複合湿潤ゲルを得る工程、さらに、カーボン前駆体の複合湿潤ゲルを乾燥して複合乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化してカーボン複合多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの付加的な反応が加わることもある。
【0049】
この製造方法では、無機酸化物の網目構造骨格がカーボン前駆体を炭化する際に、炭化に伴う収縮を抑制する構造保持の支持体としての役割を有するために、前駆体の多孔体が炭化するに連れて収縮するのを押さえることができる。それによって、前駆体からカーボンになる際の密度の増加を抑制することができ、比表面積の低下を抑えることが可能になるという効果が得られるものである。
【0050】
これらのカーボン複合多孔体の第二の製造方法は、図9に示す基本的な工程からなる。
【0051】
この工程は、無機酸化物の網目構造骨格を形成して得た乾燥ゲルに、気相中でカーボン材料を形成する方法である。すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルを乾燥して無機酸化物乾燥ゲルを得る工程、乾燥ゲルに気相中でカーボン材料を形成する工程を経て、カーボン複合多孔体を得る。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの付加的な反応が加わることもある。
【0052】
なお、気相中でカーボン材料を形成する方法としては、気相中でカーボン前駆体材料を形成した後に炭化処理する方法と、直接カーボン材料を形成する方法がある。
【0053】
この製造方法では、無機酸化物の網目構造骨格がカーボン前駆体を炭化する際に、炭化に伴う収縮を抑制する構造保持の支持体としての役割を有するために、前駆体の多孔体が炭化するに連れて収縮するのを押さえることができる。それによって、前駆体からカーボンになる際の密度の増加を抑制することができ、比表面積の低下を抑えることが可能になるという効果が得られるものである。特に、気相中で直接カーボン材料を形成する場合には、前駆体の炭化による収縮等の歪が生じにくいために効果が大きい。
【0054】
これらのカーボン多孔体の第一の製造方法は、図10に示す基本的な工程からなる。
【0055】
この工程は、無機酸化物の網目構造骨格を形成した後に、その湿潤ゲルにカーボン前駆体を形成したカーボン複合多孔体から、骨格の芯として存在する無機酸化物を除去することによってカーボン前駆体の乾燥ゲルを得てから、その網目構造骨格のカーボン前駆体を炭化してカーボンにする方法である。すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体の複合湿潤ゲルを得る工程、カーボン前駆体複合湿潤ゲルから無機酸化物を除去する工程、さらにカーボン前駆体湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化してカーボン多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの付加的な反応が加わることもある。
【0056】
この製造方法では、カーボン材料から網目構造骨格が形成されているために、比表面積が大きなカーボン多孔体を形成できる。さらに、その網目構造骨格の内部に中空部が存在するために表面積の向上を図ることができている。それによって、密度が低く、比表面積の大きなカーボン多孔体を得ることができる。
【0057】
本発明に係わるカーボン多孔体の第二の製造方法は、図11に示す基本的な工程からなる。
【0058】
この工程は、前記のカーボン複合多孔体から、その網目構造骨格の芯として存在する無機酸化物を除去することによってカーボン多孔体を得る方法である。この製造方法では、カーボン材料から網目構造骨格が形成されているために、比表面積が大きなカーボン多孔体を形成できる。さらに、その網目構造骨格の内部に中空部が存在するために表面積の向上を図ることができている。それによって、密度が低く、比表面積の大きなカーボン多孔体を得ることができる。
【0059】
次に、本発明で用いる網目構造骨格を有する無機酸化物の湿潤ゲルについて説明する。無機酸化物の材料としては、一般的な金属酸化物でよいが、網目構造骨格を形成させるためにゾルゲル法で形成されるものが好ましい。例えば、酸化シリコン(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどや、複数の金属を含む酸化物が挙げられる。これらのうち、シリカおよびアルミナは、ゾルゲル法による湿潤ゲルの形成が容易であるために、特に好ましく用いることができる。これらの無機酸化物の原料としては、ゾルゲル反応で湿潤ゲルを形成できるものであればよい。例えば、ケイ酸ナトリウムや水酸化アルミニウムなどの無機原料、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシドやアルミニウム−sec−ブトキシドなどの有機金属アルコキシドの有機原料などを触媒とともに溶媒中でゾルゲル法によって湿潤ゲルを形成させる。
【0060】
以下に、シリカ湿潤ゲルの製造方法を例として少し詳細に説明する。湿潤ゲルを得る方法としては、シリカの原料を溶媒中でのゾルゲル反応によって合成および湿潤ゲル化するものである。このとき、必要に応じて触媒を用いる。この形成過程では、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子を形成し、その微粒子が集まって網目構造骨格を形成し湿潤ゲルが得られる。具体的には、所定の固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。その組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型、塗布などによって所望の使用形態にする。この状態で一定時間経過することによって、溶液はゲル化して湿潤ゲルが得られる。また、必要に応じて、湿潤ゲルの熟成や細孔制御のためにエージング処理を行っても良い。
【0061】
製造時の温度条件としては通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度で実施することもある。このときのシリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。溶媒としては原料が溶解してシリカが形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。触媒としては、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。また、湿潤ゲルを後のカーボン前駆体形成などの工程において、溶媒の親和性を高めたりするのに、表面処理が行われていても良い。このときは、表面処理剤を湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に化学反応させることができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシラン、フェニルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。用途によってその表面処理剤を選定すればよい。
【0062】
多孔質シリカは、連続気孔または独立気孔を有する酸化ケイ素であり、シリカ粉体の成型、シリカ粉体焼成、化学発泡、物理発泡、ゾルゲル法などの多くの方法で作製することができる。本発明の触媒担持体においては、多孔質シリカとして、ナノメートルサイズの気孔を多く有するものを用いることが好ましい効果が得られる。このような好ましい構造を有する多孔質シリカとして、ゾルゲル法によって作製するシリカ乾燥ゲルを特に候補として用いることができる。
【0063】
ここで、乾燥ゲルとは、ゾルゲル反応によって形成される多孔質体であり、ゲル原料液の反応によって固体化した固体骨格部が溶媒を含んで構成された湿潤ゲルを経て、その湿潤ゲルを乾燥して溶媒除去することで形成されるものである。この乾燥ゲルは、100nm以下のサイズの粒子で構成される固体骨格部によって平均細孔直径が100nm以下の範囲である連続気孔が形成されているナノ多孔質体である。また、固体成分を少なくすることで、非常に低密度な多孔質体を得ることができる。
【0064】
本発明で用いる乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得る方法は、大きく湿潤ゲルを得る工程とそれを乾燥する工程からなる。
【0065】
まず、湿潤ゲルを得る方法としては、シリカの原料を溶媒中でのゾルゲル反応によって合成および湿潤ゲル化するものである。このとき、必要に応じて触媒を用いる。この形成過程では、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子を形成し、その微粒子が集まって網目状骨格を形成し湿潤ゲルが得られる。具体的には、所定の密度の多孔質シリカを得るように固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。その組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型、塗布などによって所望の使用形態にする。この状態で一定時間経過することによって、溶液はゲル化してシリカの湿潤ゲルが得られる。製造時の温度条件としては通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度で実施することもある。
【0066】
シリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。溶媒としては原料が溶解してシリカ形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。触媒としては、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。
【0067】
次に、湿潤ゲルから乾燥ゲルを得る乾燥工程について述べる。
乾燥処理には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥の通常乾燥法や、超臨界乾燥法、凍結乾燥法などを用いることができる。一般に、乾燥ゲルを低密度にするために湿潤ゲル中の固体成分量を少なくするとゲル強度が低下する。また、通常、ただ単に乾燥するだけの乾燥法では、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまう。乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、乾燥方法として超臨界乾燥や凍結乾燥を好ましく用いることによって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。また、乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、湿潤ゲルにおいてゲルの固体成分の表面を撥水処理等によって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。
【0068】
超臨界乾燥法や凍結乾燥法では、溶媒を液体状態から相状態を変えることによって、気液界面を無くして表面張力によるゲル骨格へのストレスを無くして乾燥することができるため、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができ、低密度の乾燥ゲルの多孔質体を得るのに適した方法である。特に、超臨界乾燥法で作られた乾燥ゲルを本発明では好ましく用いることができる。
【0069】
この超臨界乾燥に用いる溶媒は、湿潤ゲルの溶媒を用いることができる。また必要に応じて、超臨界乾燥において扱いやすい溶媒に置換しておくのが好ましい。置換する溶媒としては、直接その溶媒を超臨界流体にするメタノール、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、二酸化炭素、水が挙げられる。または、これらの超臨界流体で溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどの一般的な取扱いしやすい有機溶剤に置換しておいてもよい。
【0070】
超臨界乾燥条件としては、オートクレーブなどの圧力容器中で行い、例えばメタノールではその臨界条件である臨界圧力8.09MPa、臨界温度239.4℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放して乾燥を行う。また、二酸化炭素の場合には、臨界圧力7.38MPa、臨界温度31.1℃以上にして、同じように温度一定の状態で超臨界状態から圧力を開放して気体状態にして乾燥を行う。また、水の場合には、臨界圧力22.04MPa、臨界温度374.2℃以上にして乾燥を行う。乾燥に必要な時間としては、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上を経過すればよい。
【0071】
湿潤ゲルを撥水処理してから乾燥する方法は、撥水処理のための表面処理剤を湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に化学反応させる。これによって湿潤ゲルの網目構造の細孔内に発生する表面張力を低減し、乾燥時の応力を低減することができ、通常乾燥にて収縮を抑制した乾燥ゲルを得ることができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。湿潤ゲルを収縮させること無く、通常乾燥方法から乾燥ゲルを得ることができればこれらの表面処理剤に限られるものではない。
【0072】
なお、本方法を用いて得られる乾燥ゲルの材質としては、無機材料、有機高分子材料などを用いることができる。無機酸化物の乾燥ゲルの固体骨格部は、酸化ケイ素(シリカ)または酸化アルミニウム(アルミナ)などゾルゲル反応で得られる一般的なセラミックスを成分として適用することができる。また、有機高分子の乾燥ゲルの固体骨格部としては、一般的な熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により構成することができる。例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、フェノール硬化樹脂、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチルなどを適用することができる。
【0073】
次にヘテロポリ酸を前記多孔質体に担持する方法について述べる。ヘテロポリ酸を担持する方法としては、
A、担持体となる多孔質体の湿潤ゲルを得る前の溶媒原料にヘテロポリ酸を溶媒に溶かした溶液を混在させ湿潤ゲルを得てから乾燥ゲル化し担持する方法、
B、担持体となる多孔質体の湿潤ゲルを得た後にヘテロポリ酸を溶媒に溶かした溶液に漬け込み染み込ませた後乾燥ゲル化し担持する方法、
C、担持体となる多孔質体の乾燥ゲルを形成した後にヘテロポリ酸を溶媒に溶かした溶液を染み込ませ、再乾燥させることにより担持する方法がある。
【0074】
好ましくは、Bの方法であり、この方法では、ナノ多孔質体の中に効率よくヘテロポリ酸無水和物を担持した構造を作製することができる。乾燥ゲル化して多孔質体を得るプロセスでは、乾燥、加熱真空、超臨界乾燥及び凍結乾燥などの方法があるが、超臨界乾燥による方法が最も分散よくヘテロポリ酸を担持する事が出来る。
【0075】
(ヘテロポリ酸の作製)
ヘテロポリ酸として代表的な12タングストリン酸の作製を溶液成長法によっておこなった。作製のための化学反応は、12Na2WO4 ・2H2O+Na2HPO4 ・12H2O+26HCl→H3PW12O40 ・6H2O+26NaCl+42H2Oによる反応で行った。溶液成長プロセスは以下の通りである。
【0076】
▲1▼ タングステン酸ナトリウム2水和物 Na2WO4・2H2O 100gとリン酸水素ナトリウム12水和物 NaHPO4・12H2O 50gを各々秤量し丸底フラスコ中で純水160mlに溶かして、80℃で5h攪拌反応する。
【0077】
▲2▼ ▲1▼の反応後、24%HCl 150mlを攪拌しながら滴下する。
【0078】
二つの試料を混ぜて攪拌した後、80℃の湯浴中での反応で反応中に攪拌をしなかった場合、沈殿物が形成されてしまい所望の反応が進行しなかった。また、80℃の湯浴中での反応で攪拌をした場合でも濃縮過程を自然乾燥で進めると反応が進まず、所望外の物質が析出してしまい目的試料を得られなかった。このため80℃ 5hの反応後、エバポレーターを用いて急速な濃縮をした。
【0079】
▲3▼ エバポレーターにより白色沈殿を含む液を約100mlになるまで濃縮する。
【0080】
▲4▼ 室温まで冷却後、分液漏斗に移し同量のエチルエーテルを加えると白濁した沈殿層とエーテル層に分離する。さらに、35%HClを数滴加えてからゆっくり攪拌し、放置すると白濁した沈殿層から少し緑黄色がついた油状生成物が底のほうにたまり始め、油状生成物とエーテルと水に分離する。
【0081】
▲5▼ エバポレーターによりエーテルと水を取り除き目的物質を得る。
【0082】
沈殿物含有溶液から目的物質を抽出するためエチルエーテルへの溶解度差を利用したエーテル抽出をおこなった。抽出過程で▲4▼の過程の後、沈殿物のみ及び溶液のみをそれぞれ取り出してエーテル抽出しようとしても目的物質は得られなかった。
【0083】
次に沈殿物含有溶液全量に対して、エーテルと塩酸を加えたときに分液漏斗を振って混濁した結果、混濁具合の強弱の度合いによって多少の違いは生じるもののほぼ5ml前後の油状生成物しか得ることができず生成物の収率は非常に低いものであった。
【0084】
このため収率を上げる検討を重ねたところ、沈殿物含有溶液全量に対して、エーテルと塩酸を加え攪拌棒によって少しずつ攪拌を加えると攪拌が反応を誘発し40%近くの収率で油状生成物を得ることができた。この油状生成物からエーテルと水を分離し粉末バルク体であるH3PW12O40試料を得た。
【0085】
同様の方法で異種のヘテロポリ酸を作製することができるがこの方法に限られるものではない。
【0086】
以下に、本発明に係る多孔電極およびそれを用いた電気化学素子の具体的な実施例を示すが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(実施例1 ヘテロポリ酸を担持した多孔質体の作製(その1))
平均粒径0.1μmのカーボンブラックを圧縮成型して比表面積約50m2/gの多孔体を得た。
【0087】
ヘテロポリ酸分子2mgをアセトン溶媒100ml中に溶かした溶液中に、この多孔体を浸漬させて超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥条件としては、オートクレーブによる圧力容器中で行い、臨界条件である臨界圧力10.56MPa、臨界温度293.7℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放した。この触媒担持量は約0.2mg/cm3であった。
【0088】
続いて、この溶液に多孔体を室温で浸漬することで、多孔体表面にヘテロポリ酸をスペーサとして吸着させて、多孔電極Aを得た。その後に、同じくヘテロポリ酸であるタングストリン酸ナトリウム水和物で作製された電解質フィルムの両面に多孔電極Aを貼り合せて電気化学素子を形成した。
【0089】
また、比較として、同じ多孔体に白金アンモニウムから焼成によって白金触媒を担持した。触媒の粒径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.3mg/cm3であった。この触媒担持した多孔体に、スルホン酸基を有するパーフルオロポリマーを塗布して多孔電極Bを形成した。これをナフィオンと組み合わせて電気化学素子を構成した。
【0090】
これらの電気化学素子の片面に水素を導入し、対向する面に空気を導入して燃料電池とした。多孔電極Aと多孔電極Bでの出力電圧を測定したところ、従来の多孔電極Bの場合に0.8Vであるのに対して、担持触媒量が少ない多孔電極Aの方は0.95Vと高い値が得られ効率的な反応が生じていることが明らかになった。
(実施例2 ヘテロポリ酸を担持した多孔質体の作製(その2))
テトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1対3対4になるように調製したゲル原料液を、カーボンペーパー上に、厚さ300μmとなるように塗布を行った。この後に塗膜がゲル化して固体化したシリカ湿潤ゲル層を得た。
【0091】
このシリカ湿潤ゲル層を形成したカーボンペーパーをエタノールで洗浄(溶媒置換)した後に、ヘテロポリ酸分子2mgをアセトン溶媒100ml中に溶かした溶液中に、このゲル体を浸漬させて二酸化炭素による超臨界乾燥を行って、触媒を担持した乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層を得た。超臨界乾燥は、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温して乾燥ゲルを得た。
【0092】
なお、得られた多孔質シリカ層は、密度約200kg/m3であり、空孔率は約92%であった。また、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法で測定した比表面積の値は約800m2/gであり、その平均細孔直径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.23mg/cm3であった。
【0093】
続いて、この溶液に多孔体を室温で浸漬することで、多孔体表面にヘテロポリ酸をスペーサとして吸着させて、多孔電極Aを得た。その後に、同じくヘテロポリ酸であるタングストリン酸ナトリウム水和物で作製された電解質フィルムの両面に多孔電極Aを貼り合せて電気化学素子を形成した。
【0094】
また、比較として、同じ多孔体に白金アンモニウムから焼成によって白金触媒を担持した。触媒の粒径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.3mg/cm3であった。この触媒担持した多孔体に、スルホン酸基を有するパーフルオロポリマーを塗布して多孔電極Bを形成した。これをナフィオンと組み合わせて電気化学素子を構成した。
【0095】
これらの電気化学素子の片面に水素を導入し、対向する面に空気を導入して燃料電池とした。多孔電極Aと多孔電極Bでの出力電圧を測定したところ、従来の多孔電極Bの場合に0.8Vであるのに対して、担持触媒量が少ない多孔電極Aの方は0.9Vと高い値が得られ効率的な反応が生じていることが明らかになった。
(実施例3 ヘテロポリ酸を担持した多孔質体の作製(その3))
ケイ酸ソーダの電気透析を行い、pH9〜10のケイ酸水溶液(水溶液中のシリカ成分濃度14重量%)を作る。そのケイ酸水溶液のpHを5.5に調整したのちに、この原料液をカーボンペーパー上に、厚さ300μmとなるように塗布を行った。この後に塗膜がゲル化して固体化したシリカ湿潤ゲル層を得た。
【0096】
このシリカ湿潤ゲル層を形成したカーボンペーパーをジメチルジメトキシシランの5重量%イソプロピルアルコール溶液中で疎水化処理を行った後に、ヘテロポリ酸分子2mgをアセトン溶媒100ml中に溶かした溶液中に、このゲル体を浸漬させて通常乾燥法である減圧乾燥を行って、乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層を得た。乾燥条件は、圧力0.05MPa、温度50℃で3時間経過後に、圧力が大気圧になってから降温して乾燥ゲルを得た。
【0097】
なお、得られた乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層は、密度約200kg/m3であり、空孔率は約92%であった。また、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法で測定した比表面積の値は約600m2/gであり、その平均細孔直径は約15nmであった。この触媒担持量は約0.22mg/cm3であった。
【0098】
続いて、この溶液に多孔体を室温で浸漬することで、多孔体表面にヘテロポリ酸をスペーサとして吸着させて、多孔電極Aを得た。その後に、同じくヘテロポリ酸であるタングストリン酸ナトリウム水和物で作製された電解質フィルムの両面に多孔電極Aを貼り合せて電気化学素子を形成した。
【0099】
また、比較として、同じ多孔体に白金アンモニウムから焼成によって白金触媒を担持した。触媒の粒径は約20nmであった。この触媒担持量は約0.3mg/cm3であった。この触媒担持した多孔体に、スルホン酸基を有するパーフルオロポリマーを塗布して多孔電極Bを形成した。これをナフィオンと組み合わせて電気化学素子を構成した。
【0100】
これらの電気化学素子の片面に水素を導入し、対向する面に空気を導入して燃料電池とした。多孔電極Aと多孔電極Bでの出力電圧を測定したところ、従来の多孔電極Bの場合に0.8Vであるのに対して、担持触媒量が少ない多孔電極Aの方は0.85Vと高い値が得られ効率的な反応が生じていることが明らかになった。
【0101】
【発明の効果】
本発明にかかる貴金属代替触媒のナノ多孔質体への担持により優れた電極性能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池の一般的な原理を説明するための図
【図2】多孔電極の従来技術を説明するための図
【図3】ヘテロポリ酸の構造を説明するための図
【図4】本発明の多孔体における網目構造骨格を説明するための模式図
【図5】本発明のカーボン複合多孔体における網目構造骨格を説明するための断面図
【図6】本発明のカーボン多孔体における網目構造骨格を説明するための断面図
【図7】本発明の多孔体における他の一例を説明するための模式図
【図8】本発明で得られるカーボン複合多孔体の製造方法の一例を説明する工程図
【図9】本発明で得られるカーボン複合多孔体の製造方法の他の一例を説明する工程図
【図10】本発明で得られるカーボン多孔体の製造方法の一例を説明する工程図
【図11】本発明で得られるカーボン多孔体の製造方法の他の一例を説明する工程図
【符号の説明】
1 電子伝導性を有する多孔体の構成粒子
2 活性な触媒
3 不活性な触媒
4 被覆されたプロトン伝導性固体電解質
5 プロトン伝導性固体電解質膜
11 多孔体
13 無機酸化物
14 カーボン材料
16 カーボン材料
17 中空部
19 担持された触媒
Claims (12)
- 酸素とプロトンと電子を介して反応を進行する電極であって、ヘテロポリ酸が導電体と複合体を形成し電極材に坦持されていることを特徴とする電極。
- 前記導電体が金属及び炭素及び導電性酸化物であることを特徴とする請求項1記載の電極。
- 酸素とプロトンと電子を介して反応を進行する電極であって、ヘテロポリ酸が多孔質の電子導電性材料に坦持されていることを特徴とする電極。
- 前記請求項1、3のヘテロポリ酸としてヘテロポリ酸分子クラスター粒子を用いることを特徴とする電極。
- 電極表面上で異種のヘテロポリ酸を混在させて形成することを特徴とする請求項1−4記載の電極。
- 前記ヘテロポリ酸が、HlMaMbmOn(式中、Maは第1の金属を示し、Mbは第2の金属を示し、l、m及びnは1以上の整数である)である前記請求項1−5記載の電極。
- 前記Maの元素がリン、ケイ素及びゲルマニウムからなる群から選ばれる請求項6記載の電極。
- 前記Mbの元素が、モリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ及びタンタルからなる群から選ばれる請求項6記載の電極。
- 前記ヘテロポリ酸は、前記水素の一部を第1の元素で置換してなり、且つ該第1の元素がアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属から選ばれる1種以上である請求項7−8記載の電極。
- 前記第1の元素が2種以上であり、2種以上のうちの第1の種が遷移金属から選ばれ、第2の種がセシウムである請求項9記載の電極。
- 燃料からプロトン生成する燃料電極と、プロトンを酸素と反応させる酸素電極とをプロトン伝導性固体電解質を間にして対向してなる電気化学素子であって、前記酸素電極が請求項1−10記載の電極であることを特徴とする電気化学素子。
- 前記燃料が水素またはメタノールである請求項11記載の電気化学素子。
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