JP2004135560A - 香味劣化抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】飲食物の熱、酸素又は光などの要因に基づく香味劣化現象に対して、有意に抑制できる香味劣化抑制方法、および優れた香味劣化抑制作用を有する香味劣化抑制剤を提供する。
【解決手段】緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選択される豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合物し、この得られた抽出物を有効成分とする香味劣化抑制剤を、香味劣化を受けうる被験物に添加する。
【選択図】なし
【解決手段】緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選択される豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合物し、この得られた抽出物を有効成分とする香味劣化抑制剤を、香味劣化を受けうる被験物に添加する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は香味劣化抑制剤及び香味劣化抑制方法に関する。より詳細には本発明は、熱や酸素、光照射による香味劣化を防止するのに有用な香味劣化抑制剤及び香味劣化抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲食品や医薬品等の各種製品は、その素材が本来有する香味(フレーバー)や製造工程中に発生してくる香味により、独特の香りや風味ないしは独特の味わいを有している。特に飲食品において、香味は美味しさの一要素であるとともに食欲をそそる重要な役割を担う。しかしながら、これらの香味成分は比較的不安定であり、商品の製造工程中または製造後の保管や陳列中に劣化し、流通や保存段階で商品価値が著しく低下するという問題がある。その原因としては、光、熱、空気(酸素)、酵素等の作用を受けて生じる酸化、還元、重合、異性化、開環、閉環、エステル化、脱炭酸などの数多くの反応が考えられる。
【0003】
とりわけ飲食品の分野においては、近年のペットボトル入り飲料等といった透明容器入り飲料の普及に伴って、光や熱による香味の劣化現象、殊更商品陳列中に生じる蛍光灯照射や野外における太陽光照射、または熱による香味の劣化現象を有意に抑制乃至防止する方法の開発が早期に求められているのが現状である。
【0004】
このため、従来から、香味の劣化を防止する方法に関して多くの提案がなされている。例えば、ヤマモモ科植物のヤマモモの有機溶媒抽出物による香料の安定化方法(特開平6−108087号公報)、南天の葉の抽出エキスを有効成分とする香料の劣化防止剤(特開平8−231979号公報)、ヒマワリの種子から水および又はアルコールで抽出される成分とカテキン類、更に金属封鎖剤を含む飲料用香味劣化防止剤(特開平7−132073号公報、特開平7−75535号公報)、金属封鎖剤とコーヒー豆から水および又はアルコールで抽出される成分、更にフラボノール類を含む飲料用香味劣化防止剤(特開平7−135938号公報)、金属封鎖剤、フラボノール類、ヒマワリ抽出物からなる群の1種又は2種以上と、リンゴ抽出物とを含む飲料用香味劣化防止剤(特開平8−23940号公報)、ルチンや糖転移ルチン等のフラボノール配糖体を含む食品の香味劣化防止剤(特開平7−10898号公報)などが香味劣化抑制剤として提案されている。
【0005】
しかしながら、これらのものは、種々の要因による香味劣化現象に対して、必ずしも満足できる抑制効果を発揮するものではなかった。
【0006】
一方、マメ科植物の緑豆(種子)に関して、その皮(Food and Chemical Toxicology 1999, 37, 1055−1061)や香気成分(J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4290−4293;J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4817−4820)、並びに緑豆のエタノール抽出物中のフラボノイドに抗酸化活性があること(Cosmet.Toiletries 1998, 113, 71−74)が報告されている。しかしながら、それらの成分の極性は低く、また抗酸化活性も弱い。またマメ科植物の金時豆、黒豆、おたふく豆(いずれも種子)(以上特開昭56−113284号公報)、インゲン豆(本金時種子:Phaseolus vulgaris L.)(日本食品工業学会誌第1巻第7号、475−480頁、1994年;JAOCS, Vol.74, No.8 (1997);J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4817−4820)、小豆(種子)(Agric.Biol.Chem., 54(10) 2499−2540, 1990;J.Agric.Food.Chem. 2000,48, 4817−4820;特開昭56−113284号公報)、レンズ豆(種子)(米国特許第5762936号公報)にも抗酸化作用があることが知られている。
【0007】
しかしながら、上記の文献は単に抗酸化作用について言及するのみで、各種の豆類の抽出物に香味劣化抑制作用があることについては全く記載されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱、酸素または光などの要因に基づく香味劣化現象を有意に抑制できる香味劣化抑制剤を提供することを目的とするものである。さらに本発明は、上記香味劣化抑制現象を有意に抑制することのできる香味劣化抑制方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆といった特定の豆類の抽出物が、香味成分の劣化現象を有意に抑制できることを見いだし、香味劣化抑制剤として有効に利用できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(2)に掲げる、豆類の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする香味劣化抑制剤である。
(1)緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする香味劣化抑制剤。
(2)緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られる抽出物を有効成分として含有することを特徴とする(1)記載の香味劣化抑制剤。
【0011】
また本発明は、下記に掲げる、上記(1)または(2)に記載する香味劣化抑制剤を含有する香料製剤である。
【0012】
さらにまた本発明は、下記に掲げる香味劣化抑制方法である。
(3)香味劣化を受け得る被験物を緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物と共存させることを特徴とする、該被験物の香味劣化抑制方法。
(4)豆の抽出物が緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られるものである、(3)記載の香味劣化抑制方法。
【0013】
なお、本発明において香味とは、鼻で感じる匂い(aroma)と対象物を口にいれてから口と鼻で感じる香りや味(flavor、風味)との両者を含む広い概念で用いられる。また、香味の劣化とはこのような香味が何らかの要因で減少若しくは変化することを意味するものである。なお、香味劣化の原因として光、熱、酸素等の別を問うものではない。
【0014】
【発明の実施の形態】
(1)香味劣化抑制剤
本発明の香味劣化抑制剤は、有効成分として豆類の抽出物を含有することを特徴とする。
【0015】
ここで本発明が対象とする豆類としては、具体的には緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆を挙げることができる。好ましくは緑豆、赤レンズ豆、大福豆、黒ひよこ豆及び金時豆である。
【0016】
抽出に用いるこれらの豆類は、生豆であっても、また乾燥処理或いは焙煎処理した豆であってもよい。またその形態も特に限定されず、そのままの形態(全実)、表皮を剥離したもの(内実)、またはそのまま(全実)若しくは表皮を剥離した内実を挽割りした物または粉砕した物であってもよい。特に、緑豆の場合は、表皮を剥離した内実を用いることが好ましい。なお、緑豆の表皮を剥離した内実を挽割りにしたものは、一般にはムングダールと称され、商業的に入手することができる。
【0017】
これらの豆類の抽出に使用される溶媒は、特に制限されず、水、極性有機溶媒または非極性有機溶媒のいずれであってもよいが、好ましくは水、極性有機溶媒またはこれらの混合物(含水極性有機溶媒)である。ここで極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4の低級アルコール;グリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコール;またはアセトン、酢酸エチル、酢酸メチルなどを例示することができる。抽出溶媒として、好ましくは水、低級アルコール及びこれらの混合物(含水アルコール)であり、より好ましくは水、エタノール及びこれらの混合物(含水エタノール)である。なお、含水アルコール、特に含水エタノールを使用する場合の、当該溶液中のアルコール(エタノール)の含有割合としては、制限されないが、好ましくは1〜90容量%、更に好ましくは10〜70容量%の範囲を例示することができる。
【0018】
抽出方法としては、一般に用いられる方法を広く採用することができる。制限はされないが、例えば上記の豆類を抽出溶媒の中に浸漬する方法(浸漬法)又は抽出溶媒に豆類を入れて加温しながら還流する方法(加熱還流法)等を挙げることができる。なお、浸漬法による場合は加熱(加温、高温)、室温又は冷却(低温)条件下のいずれであってもよく、また静置した状態の浸漬または攪拌しながらの浸漬のいずれであってもよい。
【0019】
かかる抽出操作により得られた抽出物は、各種の固液分離手段に供され、溶媒に不溶な残渣(不溶性固形分)が除去される。ここで固液分離手段としてはデカンテーション、濾過、遠心分離または圧搾などの各種の固液分離手段を用いることができる。かくして得られる抽出液(濾液、上清、圧搾液)はそのままの状態で、またはさらに水、エタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液で希釈して使用することができる。また、抽出溶媒を留去して一部濃縮または乾燥(減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライなどを含む)して、ペースト状(またはエキス粘稠物)または粉末状態(またはエキス乾燥物)の状態で用いることもできる。また抽出液を濃縮若しくは乾燥した後、該濃縮物若しくは乾燥物をさらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶媒(好ましくは、水やエタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液)に溶解もしくは懸濁して用いてもよい。
【0020】
また、抽出液は、必要に応じて濃縮若しくは乾燥した後に、脱臭または脱色等を目的として精製処理を行ってもよい。かかる精製方法は、特に制限されず、慣用されている精製法を任意に組み合わせて実施することができ、具体的には各種の樹脂処理法(吸着法、イオン交換法など)、超臨界抽出法、膜処理法(限外濾過膜処理法、逆浸透膜処理法、イオン交換膜処理法など)、溶媒分画法および活性炭処理法等を例示することができる。
【0021】
本発明の香味劣化抑制剤は、前述する豆類の抽出物、好ましくは緑豆、赤レンズ豆、大福豆、黒ひよこ豆、または金時豆の抽出物(抽出液そのもの、その濃縮物、乾固物または精製物の別を問わない)を含有するものであればよく、これらの抽出物だけからなるものであってよいが、当該抽出物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。なお、本発明で用いる抽出物は、1種類の豆類の抽出物であってもよいし、また2種類以上の豆類の抽出物(混合物)であってもよい。
【0022】
希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;アラビアガム等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤などを挙げることができる。
【0023】
使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて香味劣化抑制剤を調製する場合は、豆類の抽出物(乾固物として換算)が、香味劣化抑制剤100重量%中に固形換算で0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。
【0024】
なおここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びその塩等のアスコルビン酸類;アスコルビン酸ステアリン酸エステルまたはアスコルビン酸パルミチン酸エステルなどのアスコルビン酸エステル類;エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、クローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン(抽出物) (小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン、酵素分解リンゴ抽出物、ごま油抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物等を挙げることができる。好ましくは、ヤマモモ抽出物、ルチン(抽出物) 、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。
【0025】
抗酸化剤を用いる場合、香味劣化抑制剤100重量%中に配合される当該抗酸化剤の割合としては、制限されないが、例えば、酵素処理イソクエルシトリンの場合、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%を挙げることができる。他の抗酸化剤もこれに準じて用いることができる。
本発明の香味劣化抑制剤はその形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。
【0026】
本発明の香味劣化抑制剤は、香味劣化の抑制、特に光照射によって生じる香味劣化の抑制を目的として幅広い製品に広く適用することができる。このような製品としては、例えば飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができ、より好適には含水物、特に飲料、化粧水及び液剤等の溶液状、中でも水溶液状のものを挙げることができる。尚、本発明の香味劣化抑制剤は、香味成分に直接添加混合することによって該香味成分の香味劣化を防止することができるし、また香料などの香味成分を用いて着香した製品に添加配合することによって該製品の香味劣化を防止することもできる。
【0027】
すなわち本発明によれば、香味劣化抑制剤として前述する豆類(緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆)の抽出物を配合することによって香味劣化現象が有意に抑制されてなる飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料等の各種製品を提供することができる。なお、化粧品としてはスキン化粧料(ローション、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料等を;医薬品としては各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を;医薬部外品としては歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を;また飼料としてはキャットフードやドッグフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0028】
好ましい製品としては、口に含んだ場合に感じられるフレーバー感が商品価値となり得る、例えば飲食物、口紅やリップクリーム等の化粧料、経口用の医薬製剤、歯磨き剤、口中清涼剤及び口臭予防剤等の医薬部外品などの製品を挙げることができるが、より好適な製品は飲食物である。
【0029】
飲食物としては特に制限されず、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、粉末飲料等の飲料類;コーヒー飲料、紅茶飲料等の茶飲料類;コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;カスタードプリン,ミルクプリン,果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート,ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、朝鮮漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;、うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくは菓子類及び飲料である。
【0030】
飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種対象物に対する本発明の香味劣化抑制剤の添加量は、香味劣化現象を抑制できる量であれば特に制限されず、対象物に含まれる香味成分の種類及びその含量、対象物の種類及びそれに含まれる成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。具体的には、対象物に添加する豆類の抽出物(乾固物)の配合量として少なくとも1ppm程度を挙げることができる。豆類の抽出物の配合量の増大に従って香味劣化抑制効果が向上することから、当該効果からいえば本発明において豆類の抽出物の配合量の上限は何ら制限されるものではない。このため、通常、味並びに粘度等の物性といった他の観点からその配合量(上限)を設定することができる。従って、対象物が飲食物である場合、本発明の香味劣化抑制剤の配合割合として、豆類の抽出物(乾固物)が少なくとも1ppm、好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは1〜500ppmの割合で含まれるような配合割合をあげることができる。
【0031】
本発明の香味劣化抑制剤は、各種の香料と組合せることによって香料製剤として調製することができる。
【0032】
ここで用いられる香料は、天然香料(植物性天然香料、動物性天然香料)及び合成香料の別、並びに単体香料及び調合香料の別を問わず、また製造方法並びに形態(水溶性香料、油性香料、乳化香料、粉末香料)の別を問わず、さらに食品香料や香粧品香料の別を特に問わず、任意の香料を挙げることができる。
【0033】
具体的には、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系香料、アップル、グレープ、ピーチ等のフルーツ系香料、バター、チーズ、ヨーグルト等のミルク系香料、バニラ系香料、茶・コーヒー系香料、ミント系香料、ハーブ、コショウ、ワサビ等のスパイス系香料、ナッツ系香料、ビーフ、ポーク、チキン等のミート系香料、魚貝類、甲殻類等の水産物系香料、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の洋酒系香料、バラ、ラベンダー、ジャスミン等のフラワー系香料、オニオン、ガーリック、キャベツ等の野菜系香料、その他の香料をあげることができる。
【0034】
また、とくに食品香料の場合、用途別としては、炭酸飲料、果実飲料、茶・コーヒー系飲料、乳飲料・乳酸菌飲料、機能性飲料等に使用される飲料用香料、冷菓、キャンディー・デザート、チューイングガム、焼き菓子等に使用される菓子用香料、ヨーグルト、バター・マーガリン、チーズ等に使用される酪農・油脂製品用香料、スープ用香料、味噌、醤油、ソース、たれ、ドレッシング等に使用される調味料用香料、食肉加工品用香料、水産加工品用香料、調理食品用香料、冷凍食品用香料、たばこ用香料、口腔製品用香料、医薬品用香料、飼料用香料、産業用香料等をあげることができる。
【0035】
かかる香料製剤中の香料と香味劣化抑制剤の配合割合は、特に制限されないが、着香対象物への通常使用量が0.05〜0.2%の香料の場合、香料に対して豆類の抽出物(乾固物)が少なくとも0.05%程度、好ましくは0.1〜10%の割合で含まれることが好ましい。当該香料製剤は香味が劣化しにくい香料であり、これによれば飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料等の各種製品に所望な香味が付与できるだけでなく、熱、光や酸素などによる香味劣化を有意に防止することができる。
【0036】
(2)香味劣化抑制方法
また、本発明は香味劣化の抑制方法に関する。
【0037】
本発明の方法は、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の光、熱、酸素などによる香味の劣化が問題となる製品に好適に適用される。本発明の香味劣化抑制方法は、光照射及び加熱処理による香味劣化現象に対して特に有用である。
【0038】
本発明の方法は、具体的には緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物を香味劣化を受け得る被験物に配合することによって実施することができる。その配合割合は、前述するようにその効果を発揮する割合であれば制限されず、豆類の抽出物(乾固物として、以下同様)が例えば少なくとも1ppm含まれる割合を挙げることができる。被験物が飲食物である場合は、味に与える影響を鑑みて、豆類の抽出物(乾固物)が1〜1000ppm、好ましくは1〜500ppmで含まれるような範囲を例示することができる。
【0039】
配合の時期は、特に制限されないが、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の被験物が香味劣化を受け得る前に予め配合しておくことが好ましい。これらの被験物は製造工程において、酸素、光または熱の影響を少なからず受けることに鑑みて、製造工程の初期に各種製品材料とともに配合することもできる。
【0040】
【実施例】以下、本発明の内容を実施例及び実験例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、%は重量%を意味するものとする。また、各処方中*を付記した製品は三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の製品、※を付した製品名は三栄源エフ・エフ・アイ(株)の登録商標を意味する。なお、下記の実施例において用いる「ムングダール」とは、緑豆の表皮を剥離し内実を挽割りにしたものである。
【0041】
実施例1
ムングダール(表皮を剥離し内実を挽割りにした緑豆)50gを粉砕後、60容量%エタノール(含水エタノール)350mlを加えて50℃に維持しながら4時間攪拌した。4時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶成分を除去した。得られた濾液にクエン酸をpHが4となるように加えた後、吸引濾過して沈殿を除去した。これを吸着樹脂カラム(三菱化学(株)製セパビーズSP−207)に通し、通過した液を濃縮乾固し40%エタノールを加え、ムングダール抽出液を50g得た。これを香味劣化防止剤1として後述する実験例で使用する。
【0042】
実施例2
黒豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.7%)を黒豆抽出液として取得した。
【0043】
実施例3
小豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール 100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.8%)を小豆抽出液として得た。
【0044】
実施例4
とら豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)をとら豆抽出液として得た。
【0045】
実施例5
赤レンズ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)を赤レンズ豆抽出液として得た。
【0046】
実施例6
うずら豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をうずら豆抽出液として得た。
【0047】
実施例7
白花豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.6%)を白花豆抽出液として得た。
【0048】
実施例8
金時豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)を金時豆抽出液として得た。
【0049】
実施例9
レンズ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をレンズ豆抽出液として得た。
【0050】
実施例10
ムングダール10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をムングダール抽出液Aとして取得した。
【0051】
実施例11
ひよこ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.5%)をひよこ豆抽出液として取得した。
【0052】
実施例12
黒ひよこ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)を黒ひよこ豆抽出液として取得した。
【0053】
実施例13
チャナ ダル(黒ひよこ豆の表皮を剥離して内実を挽割りにしたもの)10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.4%)をチャナ ダル抽出液として取得した。
【0054】
実施例14
大福豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)を大福豆抽出液として取得した。
【0055】
実施例15
ムングダール10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。濾液を濃縮乾固し、水を加え全量を85mlとした後、フィルター濾過を行い、得られた濾液をムングダール抽出液Bとして取得した。
【0056】
実施例16
ムングダール10gを粉砕した後、30容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85mlをムングダール抽出液Cとして取得した。
【0057】
実験例1 無果汁透明炭酸飲料(蛍光灯照射)
果糖ブドウ糖液糖 13 %
クエン酸(結晶)* 0.1 %
サイダー香料* 0.1 %
豆抽出液(実施例2〜14) 0.1 %
清水にて上記の成分を6倍濃度で含むシロップを調製し、このシロップ50mlを300ml容PETボトルに移し、これにプレーンソーダ250mlを添加して、PETボトル充填無果汁炭酸飲料を調製した。
【0058】
これを試験対象品として、人工気象機(株式会社日本医化器械製作所社製LH−300−RDSCT型)を用いて10℃、2万ルクス照度の条件下で25時間にわたって蛍光灯照射を行った。上記で得られた無果汁透明炭酸飲料を7名の厳選されたパネラーに飲んでもらい、官能評価を行った。
【0059】
なお、香味の評価基準は下記のものに従った。
<評価基準>
3:異味、異臭をほとんど感じない
2:異味、異臭を感じる
1:異味、異臭が強い(香味劣化抑制剤無添加と同等の香味を有する)
0:異味、異臭を非常に強く感じる
<官能評価結果>
【0060】
【表1】
【0061】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、無果汁透明炭酸飲料に対する香味劣化抑制作用、特に光照射による香味劣化に対する抑制作用(光香味劣化抑制作用、耐光性付与作用)があることがあることが認められた。
【0062】
実験例2 100%グレープフルーツ果汁飲料(蛍光灯照射)
濃縮還元100%グレープフルーツジュースに各種香味劣化抑制剤を0.1%ずつ添加し、透明ガラス容器にいれ、人工気象機(株式会社日本医化器械製作所社製LH−300−RDSCT型)を用いて10℃、2万ルクス照度の条件下で25時間にわたって蛍光灯照射を行い、実験例1と同様の基準で官能評価を行った。
【0063】
<官能評価結果>
【表2】
【0064】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、100%グレープフルーツ果汁飲料に対する香味劣化抑制作用、特に光照射による香味劣化に対する抑制作用(光香味劣化抑制作用、耐光性付与作用)があることがあることが認められた。
【0065】
【0066】
各成分を混合して上記処方の乳飲料(コーヒー)を調製し、150kg/cm2(14.7×106Pa)にてホモジナイズした後、200mL容缶に充填し、124℃で20分間レトルト殺菌を行い、冷却して乳飲料(コーヒー)を調製した。
【0067】
これを試験対象品として、60℃で1週間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行った。
【0068】
<官能評価結果>
【表3】
【0069】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、乳飲料(コーヒー)に対する香味劣化抑制作用、特に熱による香味劣化に対する抑制作用(熱香味劣化抑制作用、耐熱性付与作用)があることがあることが認められた。
【0070】
実験例4 レモン果汁入り低アルコール飲料 (耐熱性)
95%エタノール 7 (%)
レモン果汁 3
砂糖 5
クエン酸(無水)* 0.1
レモン香料* 0.1
豆抽出液(実施例2〜14) 0.1
【0071】
清水にて上記の成分を2倍濃度で含むシロップを調製した。このシロップ95mlを200mL容缶に移し、これにプレーンソーダ95mlを添加した後、70℃で20分殺菌を行い冷却し、レモン果汁入り低アルコール飲料を調製した。これを試験対象品として、50℃で1週間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行った。
【0072】
<官能評価結果>
【表4】
【0073】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、レモン果汁入り低アルコール飲料に対する香味劣化抑制作用、特に熱による香味劣化に対する抑制作用(熱香味劣化抑制作用、耐熱性付与作用)があることがあることが認められた。
【0074】
【0075】
各成分を混合して上記処方のレモン果汁入り飲料を調製し、93℃達温後、透明PETボトルに充填し(ホットパック)、冷却してPETボトル充填レモン果汁入り透明飲料を調製した。
【0076】
これを試験対象品として、55℃で48時間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行ったところ、香味劣化抑制剤1を添加した本発明の飲料は、8名のパネラーによる評価平均が2.9であった。
【0077】
【0078】
各成分を混合して上記処方のコーヒー飲料を調製し、ホモジナイズした後200mL容缶に充填し、124℃で20分間レトルト殺菌を行い、冷却してコーヒー飲料を調製した。
【0079】
これを試験対象品として、60℃で6週間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行ったところ、香味劣化抑制剤1を添加した本発明の飲料は、7名のパネラーによる評価平均が2.3であった。
【0080】
【0081】
発酵乳、グラニュー糖及び安定剤を清水に溶解し、50%クエン酸溶液にてpH3.8に調整した。湯煎にて70℃に加温し、ホモゲナイザーにて均質化し93℃達温後、香料及び香味劣化抑制剤1を添加してPETボトル充填後、冷却して酸乳飲料を調製した。
【0082】
これを試験対象品として、人工気象機(株式会社日本医化器械製作所社製LH−300−RDSCT型)にて、静置した状態で10℃下で24時間蛍光燈照射(20000ルクス)を行った。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行ったところ、香味劣化抑制剤1を添加した本発明の飲料は、7名のパネラーによる評価平均が2.6であった。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選択される豆の抽出物を有効成分として飲食物等に含有せしめることによって、該飲食物の熱、酸素又は光に晒されることにより生じる、香味劣化現象に対して効果的に抑制することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は香味劣化抑制剤及び香味劣化抑制方法に関する。より詳細には本発明は、熱や酸素、光照射による香味劣化を防止するのに有用な香味劣化抑制剤及び香味劣化抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲食品や医薬品等の各種製品は、その素材が本来有する香味(フレーバー)や製造工程中に発生してくる香味により、独特の香りや風味ないしは独特の味わいを有している。特に飲食品において、香味は美味しさの一要素であるとともに食欲をそそる重要な役割を担う。しかしながら、これらの香味成分は比較的不安定であり、商品の製造工程中または製造後の保管や陳列中に劣化し、流通や保存段階で商品価値が著しく低下するという問題がある。その原因としては、光、熱、空気(酸素)、酵素等の作用を受けて生じる酸化、還元、重合、異性化、開環、閉環、エステル化、脱炭酸などの数多くの反応が考えられる。
【0003】
とりわけ飲食品の分野においては、近年のペットボトル入り飲料等といった透明容器入り飲料の普及に伴って、光や熱による香味の劣化現象、殊更商品陳列中に生じる蛍光灯照射や野外における太陽光照射、または熱による香味の劣化現象を有意に抑制乃至防止する方法の開発が早期に求められているのが現状である。
【0004】
このため、従来から、香味の劣化を防止する方法に関して多くの提案がなされている。例えば、ヤマモモ科植物のヤマモモの有機溶媒抽出物による香料の安定化方法(特開平6−108087号公報)、南天の葉の抽出エキスを有効成分とする香料の劣化防止剤(特開平8−231979号公報)、ヒマワリの種子から水および又はアルコールで抽出される成分とカテキン類、更に金属封鎖剤を含む飲料用香味劣化防止剤(特開平7−132073号公報、特開平7−75535号公報)、金属封鎖剤とコーヒー豆から水および又はアルコールで抽出される成分、更にフラボノール類を含む飲料用香味劣化防止剤(特開平7−135938号公報)、金属封鎖剤、フラボノール類、ヒマワリ抽出物からなる群の1種又は2種以上と、リンゴ抽出物とを含む飲料用香味劣化防止剤(特開平8−23940号公報)、ルチンや糖転移ルチン等のフラボノール配糖体を含む食品の香味劣化防止剤(特開平7−10898号公報)などが香味劣化抑制剤として提案されている。
【0005】
しかしながら、これらのものは、種々の要因による香味劣化現象に対して、必ずしも満足できる抑制効果を発揮するものではなかった。
【0006】
一方、マメ科植物の緑豆(種子)に関して、その皮(Food and Chemical Toxicology 1999, 37, 1055−1061)や香気成分(J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4290−4293;J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4817−4820)、並びに緑豆のエタノール抽出物中のフラボノイドに抗酸化活性があること(Cosmet.Toiletries 1998, 113, 71−74)が報告されている。しかしながら、それらの成分の極性は低く、また抗酸化活性も弱い。またマメ科植物の金時豆、黒豆、おたふく豆(いずれも種子)(以上特開昭56−113284号公報)、インゲン豆(本金時種子:Phaseolus vulgaris L.)(日本食品工業学会誌第1巻第7号、475−480頁、1994年;JAOCS, Vol.74, No.8 (1997);J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4817−4820)、小豆(種子)(Agric.Biol.Chem., 54(10) 2499−2540, 1990;J.Agric.Food.Chem. 2000,48, 4817−4820;特開昭56−113284号公報)、レンズ豆(種子)(米国特許第5762936号公報)にも抗酸化作用があることが知られている。
【0007】
しかしながら、上記の文献は単に抗酸化作用について言及するのみで、各種の豆類の抽出物に香味劣化抑制作用があることについては全く記載されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱、酸素または光などの要因に基づく香味劣化現象を有意に抑制できる香味劣化抑制剤を提供することを目的とするものである。さらに本発明は、上記香味劣化抑制現象を有意に抑制することのできる香味劣化抑制方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆といった特定の豆類の抽出物が、香味成分の劣化現象を有意に抑制できることを見いだし、香味劣化抑制剤として有効に利用できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(2)に掲げる、豆類の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする香味劣化抑制剤である。
(1)緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする香味劣化抑制剤。
(2)緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られる抽出物を有効成分として含有することを特徴とする(1)記載の香味劣化抑制剤。
【0011】
また本発明は、下記に掲げる、上記(1)または(2)に記載する香味劣化抑制剤を含有する香料製剤である。
【0012】
さらにまた本発明は、下記に掲げる香味劣化抑制方法である。
(3)香味劣化を受け得る被験物を緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物と共存させることを特徴とする、該被験物の香味劣化抑制方法。
(4)豆の抽出物が緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られるものである、(3)記載の香味劣化抑制方法。
【0013】
なお、本発明において香味とは、鼻で感じる匂い(aroma)と対象物を口にいれてから口と鼻で感じる香りや味(flavor、風味)との両者を含む広い概念で用いられる。また、香味の劣化とはこのような香味が何らかの要因で減少若しくは変化することを意味するものである。なお、香味劣化の原因として光、熱、酸素等の別を問うものではない。
【0014】
【発明の実施の形態】
(1)香味劣化抑制剤
本発明の香味劣化抑制剤は、有効成分として豆類の抽出物を含有することを特徴とする。
【0015】
ここで本発明が対象とする豆類としては、具体的には緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆を挙げることができる。好ましくは緑豆、赤レンズ豆、大福豆、黒ひよこ豆及び金時豆である。
【0016】
抽出に用いるこれらの豆類は、生豆であっても、また乾燥処理或いは焙煎処理した豆であってもよい。またその形態も特に限定されず、そのままの形態(全実)、表皮を剥離したもの(内実)、またはそのまま(全実)若しくは表皮を剥離した内実を挽割りした物または粉砕した物であってもよい。特に、緑豆の場合は、表皮を剥離した内実を用いることが好ましい。なお、緑豆の表皮を剥離した内実を挽割りにしたものは、一般にはムングダールと称され、商業的に入手することができる。
【0017】
これらの豆類の抽出に使用される溶媒は、特に制限されず、水、極性有機溶媒または非極性有機溶媒のいずれであってもよいが、好ましくは水、極性有機溶媒またはこれらの混合物(含水極性有機溶媒)である。ここで極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4の低級アルコール;グリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコール;またはアセトン、酢酸エチル、酢酸メチルなどを例示することができる。抽出溶媒として、好ましくは水、低級アルコール及びこれらの混合物(含水アルコール)であり、より好ましくは水、エタノール及びこれらの混合物(含水エタノール)である。なお、含水アルコール、特に含水エタノールを使用する場合の、当該溶液中のアルコール(エタノール)の含有割合としては、制限されないが、好ましくは1〜90容量%、更に好ましくは10〜70容量%の範囲を例示することができる。
【0018】
抽出方法としては、一般に用いられる方法を広く採用することができる。制限はされないが、例えば上記の豆類を抽出溶媒の中に浸漬する方法(浸漬法)又は抽出溶媒に豆類を入れて加温しながら還流する方法(加熱還流法)等を挙げることができる。なお、浸漬法による場合は加熱(加温、高温)、室温又は冷却(低温)条件下のいずれであってもよく、また静置した状態の浸漬または攪拌しながらの浸漬のいずれであってもよい。
【0019】
かかる抽出操作により得られた抽出物は、各種の固液分離手段に供され、溶媒に不溶な残渣(不溶性固形分)が除去される。ここで固液分離手段としてはデカンテーション、濾過、遠心分離または圧搾などの各種の固液分離手段を用いることができる。かくして得られる抽出液(濾液、上清、圧搾液)はそのままの状態で、またはさらに水、エタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液で希釈して使用することができる。また、抽出溶媒を留去して一部濃縮または乾燥(減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライなどを含む)して、ペースト状(またはエキス粘稠物)または粉末状態(またはエキス乾燥物)の状態で用いることもできる。また抽出液を濃縮若しくは乾燥した後、該濃縮物若しくは乾燥物をさらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶媒(好ましくは、水やエタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液)に溶解もしくは懸濁して用いてもよい。
【0020】
また、抽出液は、必要に応じて濃縮若しくは乾燥した後に、脱臭または脱色等を目的として精製処理を行ってもよい。かかる精製方法は、特に制限されず、慣用されている精製法を任意に組み合わせて実施することができ、具体的には各種の樹脂処理法(吸着法、イオン交換法など)、超臨界抽出法、膜処理法(限外濾過膜処理法、逆浸透膜処理法、イオン交換膜処理法など)、溶媒分画法および活性炭処理法等を例示することができる。
【0021】
本発明の香味劣化抑制剤は、前述する豆類の抽出物、好ましくは緑豆、赤レンズ豆、大福豆、黒ひよこ豆、または金時豆の抽出物(抽出液そのもの、その濃縮物、乾固物または精製物の別を問わない)を含有するものであればよく、これらの抽出物だけからなるものであってよいが、当該抽出物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。なお、本発明で用いる抽出物は、1種類の豆類の抽出物であってもよいし、また2種類以上の豆類の抽出物(混合物)であってもよい。
【0022】
希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;アラビアガム等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤などを挙げることができる。
【0023】
使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて香味劣化抑制剤を調製する場合は、豆類の抽出物(乾固物として換算)が、香味劣化抑制剤100重量%中に固形換算で0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。
【0024】
なおここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びその塩等のアスコルビン酸類;アスコルビン酸ステアリン酸エステルまたはアスコルビン酸パルミチン酸エステルなどのアスコルビン酸エステル類;エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、クローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン(抽出物) (小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン、酵素分解リンゴ抽出物、ごま油抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物等を挙げることができる。好ましくは、ヤマモモ抽出物、ルチン(抽出物) 、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。
【0025】
抗酸化剤を用いる場合、香味劣化抑制剤100重量%中に配合される当該抗酸化剤の割合としては、制限されないが、例えば、酵素処理イソクエルシトリンの場合、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%を挙げることができる。他の抗酸化剤もこれに準じて用いることができる。
本発明の香味劣化抑制剤はその形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。
【0026】
本発明の香味劣化抑制剤は、香味劣化の抑制、特に光照射によって生じる香味劣化の抑制を目的として幅広い製品に広く適用することができる。このような製品としては、例えば飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができ、より好適には含水物、特に飲料、化粧水及び液剤等の溶液状、中でも水溶液状のものを挙げることができる。尚、本発明の香味劣化抑制剤は、香味成分に直接添加混合することによって該香味成分の香味劣化を防止することができるし、また香料などの香味成分を用いて着香した製品に添加配合することによって該製品の香味劣化を防止することもできる。
【0027】
すなわち本発明によれば、香味劣化抑制剤として前述する豆類(緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆)の抽出物を配合することによって香味劣化現象が有意に抑制されてなる飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料等の各種製品を提供することができる。なお、化粧品としてはスキン化粧料(ローション、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料等を;医薬品としては各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を;医薬部外品としては歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を;また飼料としてはキャットフードやドッグフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0028】
好ましい製品としては、口に含んだ場合に感じられるフレーバー感が商品価値となり得る、例えば飲食物、口紅やリップクリーム等の化粧料、経口用の医薬製剤、歯磨き剤、口中清涼剤及び口臭予防剤等の医薬部外品などの製品を挙げることができるが、より好適な製品は飲食物である。
【0029】
飲食物としては特に制限されず、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、粉末飲料等の飲料類;コーヒー飲料、紅茶飲料等の茶飲料類;コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;カスタードプリン,ミルクプリン,果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート,ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、朝鮮漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;、うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくは菓子類及び飲料である。
【0030】
飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種対象物に対する本発明の香味劣化抑制剤の添加量は、香味劣化現象を抑制できる量であれば特に制限されず、対象物に含まれる香味成分の種類及びその含量、対象物の種類及びそれに含まれる成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。具体的には、対象物に添加する豆類の抽出物(乾固物)の配合量として少なくとも1ppm程度を挙げることができる。豆類の抽出物の配合量の増大に従って香味劣化抑制効果が向上することから、当該効果からいえば本発明において豆類の抽出物の配合量の上限は何ら制限されるものではない。このため、通常、味並びに粘度等の物性といった他の観点からその配合量(上限)を設定することができる。従って、対象物が飲食物である場合、本発明の香味劣化抑制剤の配合割合として、豆類の抽出物(乾固物)が少なくとも1ppm、好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは1〜500ppmの割合で含まれるような配合割合をあげることができる。
【0031】
本発明の香味劣化抑制剤は、各種の香料と組合せることによって香料製剤として調製することができる。
【0032】
ここで用いられる香料は、天然香料(植物性天然香料、動物性天然香料)及び合成香料の別、並びに単体香料及び調合香料の別を問わず、また製造方法並びに形態(水溶性香料、油性香料、乳化香料、粉末香料)の別を問わず、さらに食品香料や香粧品香料の別を特に問わず、任意の香料を挙げることができる。
【0033】
具体的には、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系香料、アップル、グレープ、ピーチ等のフルーツ系香料、バター、チーズ、ヨーグルト等のミルク系香料、バニラ系香料、茶・コーヒー系香料、ミント系香料、ハーブ、コショウ、ワサビ等のスパイス系香料、ナッツ系香料、ビーフ、ポーク、チキン等のミート系香料、魚貝類、甲殻類等の水産物系香料、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の洋酒系香料、バラ、ラベンダー、ジャスミン等のフラワー系香料、オニオン、ガーリック、キャベツ等の野菜系香料、その他の香料をあげることができる。
【0034】
また、とくに食品香料の場合、用途別としては、炭酸飲料、果実飲料、茶・コーヒー系飲料、乳飲料・乳酸菌飲料、機能性飲料等に使用される飲料用香料、冷菓、キャンディー・デザート、チューイングガム、焼き菓子等に使用される菓子用香料、ヨーグルト、バター・マーガリン、チーズ等に使用される酪農・油脂製品用香料、スープ用香料、味噌、醤油、ソース、たれ、ドレッシング等に使用される調味料用香料、食肉加工品用香料、水産加工品用香料、調理食品用香料、冷凍食品用香料、たばこ用香料、口腔製品用香料、医薬品用香料、飼料用香料、産業用香料等をあげることができる。
【0035】
かかる香料製剤中の香料と香味劣化抑制剤の配合割合は、特に制限されないが、着香対象物への通常使用量が0.05〜0.2%の香料の場合、香料に対して豆類の抽出物(乾固物)が少なくとも0.05%程度、好ましくは0.1〜10%の割合で含まれることが好ましい。当該香料製剤は香味が劣化しにくい香料であり、これによれば飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料等の各種製品に所望な香味が付与できるだけでなく、熱、光や酸素などによる香味劣化を有意に防止することができる。
【0036】
(2)香味劣化抑制方法
また、本発明は香味劣化の抑制方法に関する。
【0037】
本発明の方法は、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の光、熱、酸素などによる香味の劣化が問題となる製品に好適に適用される。本発明の香味劣化抑制方法は、光照射及び加熱処理による香味劣化現象に対して特に有用である。
【0038】
本発明の方法は、具体的には緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物を香味劣化を受け得る被験物に配合することによって実施することができる。その配合割合は、前述するようにその効果を発揮する割合であれば制限されず、豆類の抽出物(乾固物として、以下同様)が例えば少なくとも1ppm含まれる割合を挙げることができる。被験物が飲食物である場合は、味に与える影響を鑑みて、豆類の抽出物(乾固物)が1〜1000ppm、好ましくは1〜500ppmで含まれるような範囲を例示することができる。
【0039】
配合の時期は、特に制限されないが、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の被験物が香味劣化を受け得る前に予め配合しておくことが好ましい。これらの被験物は製造工程において、酸素、光または熱の影響を少なからず受けることに鑑みて、製造工程の初期に各種製品材料とともに配合することもできる。
【0040】
【実施例】以下、本発明の内容を実施例及び実験例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、%は重量%を意味するものとする。また、各処方中*を付記した製品は三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の製品、※を付した製品名は三栄源エフ・エフ・アイ(株)の登録商標を意味する。なお、下記の実施例において用いる「ムングダール」とは、緑豆の表皮を剥離し内実を挽割りにしたものである。
【0041】
実施例1
ムングダール(表皮を剥離し内実を挽割りにした緑豆)50gを粉砕後、60容量%エタノール(含水エタノール)350mlを加えて50℃に維持しながら4時間攪拌した。4時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶成分を除去した。得られた濾液にクエン酸をpHが4となるように加えた後、吸引濾過して沈殿を除去した。これを吸着樹脂カラム(三菱化学(株)製セパビーズSP−207)に通し、通過した液を濃縮乾固し40%エタノールを加え、ムングダール抽出液を50g得た。これを香味劣化防止剤1として後述する実験例で使用する。
【0042】
実施例2
黒豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.7%)を黒豆抽出液として取得した。
【0043】
実施例3
小豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール 100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.8%)を小豆抽出液として得た。
【0044】
実施例4
とら豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)をとら豆抽出液として得た。
【0045】
実施例5
赤レンズ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)を赤レンズ豆抽出液として得た。
【0046】
実施例6
うずら豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をうずら豆抽出液として得た。
【0047】
実施例7
白花豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.6%)を白花豆抽出液として得た。
【0048】
実施例8
金時豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)を金時豆抽出液として得た。
【0049】
実施例9
レンズ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をレンズ豆抽出液として得た。
【0050】
実施例10
ムングダール10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をムングダール抽出液Aとして取得した。
【0051】
実施例11
ひよこ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.5%)をひよこ豆抽出液として取得した。
【0052】
実施例12
黒ひよこ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)を黒ひよこ豆抽出液として取得した。
【0053】
実施例13
チャナ ダル(黒ひよこ豆の表皮を剥離して内実を挽割りにしたもの)10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.4%)をチャナ ダル抽出液として取得した。
【0054】
実施例14
大福豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)を大福豆抽出液として取得した。
【0055】
実施例15
ムングダール10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。濾液を濃縮乾固し、水を加え全量を85mlとした後、フィルター濾過を行い、得られた濾液をムングダール抽出液Bとして取得した。
【0056】
実施例16
ムングダール10gを粉砕した後、30容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間攪拌後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85mlをムングダール抽出液Cとして取得した。
【0057】
実験例1 無果汁透明炭酸飲料(蛍光灯照射)
果糖ブドウ糖液糖 13 %
クエン酸(結晶)* 0.1 %
サイダー香料* 0.1 %
豆抽出液(実施例2〜14) 0.1 %
清水にて上記の成分を6倍濃度で含むシロップを調製し、このシロップ50mlを300ml容PETボトルに移し、これにプレーンソーダ250mlを添加して、PETボトル充填無果汁炭酸飲料を調製した。
【0058】
これを試験対象品として、人工気象機(株式会社日本医化器械製作所社製LH−300−RDSCT型)を用いて10℃、2万ルクス照度の条件下で25時間にわたって蛍光灯照射を行った。上記で得られた無果汁透明炭酸飲料を7名の厳選されたパネラーに飲んでもらい、官能評価を行った。
【0059】
なお、香味の評価基準は下記のものに従った。
<評価基準>
3:異味、異臭をほとんど感じない
2:異味、異臭を感じる
1:異味、異臭が強い(香味劣化抑制剤無添加と同等の香味を有する)
0:異味、異臭を非常に強く感じる
<官能評価結果>
【0060】
【表1】
【0061】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、無果汁透明炭酸飲料に対する香味劣化抑制作用、特に光照射による香味劣化に対する抑制作用(光香味劣化抑制作用、耐光性付与作用)があることがあることが認められた。
【0062】
実験例2 100%グレープフルーツ果汁飲料(蛍光灯照射)
濃縮還元100%グレープフルーツジュースに各種香味劣化抑制剤を0.1%ずつ添加し、透明ガラス容器にいれ、人工気象機(株式会社日本医化器械製作所社製LH−300−RDSCT型)を用いて10℃、2万ルクス照度の条件下で25時間にわたって蛍光灯照射を行い、実験例1と同様の基準で官能評価を行った。
【0063】
<官能評価結果>
【表2】
【0064】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、100%グレープフルーツ果汁飲料に対する香味劣化抑制作用、特に光照射による香味劣化に対する抑制作用(光香味劣化抑制作用、耐光性付与作用)があることがあることが認められた。
【0065】
【0066】
各成分を混合して上記処方の乳飲料(コーヒー)を調製し、150kg/cm2(14.7×106Pa)にてホモジナイズした後、200mL容缶に充填し、124℃で20分間レトルト殺菌を行い、冷却して乳飲料(コーヒー)を調製した。
【0067】
これを試験対象品として、60℃で1週間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行った。
【0068】
<官能評価結果>
【表3】
【0069】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、乳飲料(コーヒー)に対する香味劣化抑制作用、特に熱による香味劣化に対する抑制作用(熱香味劣化抑制作用、耐熱性付与作用)があることがあることが認められた。
【0070】
実験例4 レモン果汁入り低アルコール飲料 (耐熱性)
95%エタノール 7 (%)
レモン果汁 3
砂糖 5
クエン酸(無水)* 0.1
レモン香料* 0.1
豆抽出液(実施例2〜14) 0.1
【0071】
清水にて上記の成分を2倍濃度で含むシロップを調製した。このシロップ95mlを200mL容缶に移し、これにプレーンソーダ95mlを添加した後、70℃で20分殺菌を行い冷却し、レモン果汁入り低アルコール飲料を調製した。これを試験対象品として、50℃で1週間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行った。
【0072】
<官能評価結果>
【表4】
【0073】
官能評価の結果、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、レモン果汁入り低アルコール飲料に対する香味劣化抑制作用、特に熱による香味劣化に対する抑制作用(熱香味劣化抑制作用、耐熱性付与作用)があることがあることが認められた。
【0074】
【0075】
各成分を混合して上記処方のレモン果汁入り飲料を調製し、93℃達温後、透明PETボトルに充填し(ホットパック)、冷却してPETボトル充填レモン果汁入り透明飲料を調製した。
【0076】
これを試験対象品として、55℃で48時間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行ったところ、香味劣化抑制剤1を添加した本発明の飲料は、8名のパネラーによる評価平均が2.9であった。
【0077】
【0078】
各成分を混合して上記処方のコーヒー飲料を調製し、ホモジナイズした後200mL容缶に充填し、124℃で20分間レトルト殺菌を行い、冷却してコーヒー飲料を調製した。
【0079】
これを試験対象品として、60℃で6週間加熱して、熱(高温)の影響による香味の劣化現象(耐熱性)を観察した。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行ったところ、香味劣化抑制剤1を添加した本発明の飲料は、7名のパネラーによる評価平均が2.3であった。
【0080】
【0081】
発酵乳、グラニュー糖及び安定剤を清水に溶解し、50%クエン酸溶液にてpH3.8に調整した。湯煎にて70℃に加温し、ホモゲナイザーにて均質化し93℃達温後、香料及び香味劣化抑制剤1を添加してPETボトル充填後、冷却して酸乳飲料を調製した。
【0082】
これを試験対象品として、人工気象機(株式会社日本医化器械製作所社製LH−300−RDSCT型)にて、静置した状態で10℃下で24時間蛍光燈照射(20000ルクス)を行った。得られた飲料について実験例1と同様の基準で官能評価を行ったところ、香味劣化抑制剤1を添加した本発明の飲料は、7名のパネラーによる評価平均が2.6であった。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選択される豆の抽出物を有効成分として飲食物等に含有せしめることによって、該飲食物の熱、酸素又は光に晒されることにより生じる、香味劣化現象に対して効果的に抑制することができる。
Claims (4)
- 緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする香味劣化抑制剤。
- 緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られる抽出物を有効成分として含有することを特徴とする香味劣化抑制剤。
- 請求項1または2に記載の香味劣化抑制剤を含有する香料製剤。
- 請求項1または2に記載の香味劣化抑制剤を香味劣化を受け得る被験物に添加することを特徴とする該被験物の香味劣化抑制方法。
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