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JP2004131572A - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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Hideyuki Sakai
酒井 秀之
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Toyo Tire Corp
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Toyo Tire and Rubber Co Ltd
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Abstract

【課題】シリカなどの白色充填剤を配合したゴム組成物、特にタイヤ用ゴム組成物において帯電防止性の改善を図る。
【解決手段】天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム、白色充填剤、及び、帯電防止剤を含有するゴム組成物であり、該帯電防止剤は、多フッ化アルキル基を含むアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩(例えば、LiCFSO、Li(CFSON)と、分子中に複数のエーテル結合を持つエーテル化合物(例えば、ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕アジペート、ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕フタレート)とからなる。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性を改良したゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの空気入りタイヤの分野において、充填剤としてシリカを配合したゴム組成物は、転がり抵抗性能と湿潤路面に対する摩擦性能との両立を可能にすることから、その利用が進められている。しかし、シリカ配合のゴム組成物は、カーボンブラックを配合したゴム組成物に比べて導電性に劣るため、車体で発生する静電気をタイヤを介して路面に逃がすことができない。そのため、乗員が車を乗り降りする際に電気ショックにより不快な思いをしたり、タイヤに蓄積した静電気が放電するときに電波を発生してラジオノイズの原因になるという問題がある。
【0003】
また、タイヤ以外のゴム組成物においても、従来、その導電性を改良するためにカーボンブラックが配合されているが、カーボンブラックを配合すると必然的にゴム製品が黒色になるため、美観などの点で問題となることがあり、そのため、カーボンブラックを使用することなく帯電防止性を改良することのできるゴム組成物が求められている。
【0004】
そこで、特許文献1には、シリカ配合のゴム組成物における静電気対策として、天然ゴムやジエン系ゴムに対して、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアニオン系の帯電防止剤を配合することが提案されている。
【0005】
また、特許文献2及び特許文献3には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムなどのゴムに対して、アルカリ金属塩と特定のカルボン酸のエステル化合物からなる帯電防止剤を配合することが提案されており、帯電防止剤として、具体的にはLiClO/ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕アジペートなどが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−273561号公報
【0007】
【特許文献2】特開平11−124472号公報
【0008】
【特許文献3】特開平11−140233号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1の帯電防止剤を添加することにより、シリカ配合のゴム組成物の体積抵抗をある程度下げることはできるが、その効果は不十分であり、また、持続性も満足するものではない。
【0010】
一方、特許文献2及び3に開示された技術は特殊なゴムを使用したゴム組成物についての検討であり、タイヤに用いられる汎用ゴムのゴム組成物については検討されていない。また、特許文献2及び3に開示されたLiClO/ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕アジペートでは、導電性の改良効果が必ずしも十分とは言えず、更なる導電性の改良が求められている。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、シリカなどの白色充填剤を配合したゴム組成物において帯電防止性のより一層の改善を図ることを目的とし、また、このゴム組成物を用いて帯電防止性に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、帯電防止剤として特定のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と特定のエーテル化合物を組合せ、更に該金属塩のアニオン部位に多フッ化アルキル基を持たせることで飛躍的に帯電防止性が改善されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム、白色充填剤、及び、多フッ化アルキル基を含むアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と、分子中に複数のエーテル結合を持つエーテル化合物とからなる帯電防止剤、を含有するゴム組成物に係るものである。
【0014】
本発明のゴム組成物において、前記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、多フッ化アルキルスルホニル基を含むアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、より具体的には、LiCFSO又はLi(CFSONであることが好ましい。
【0015】
また、前記エーテル化合物は、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0016】
〔CO−O−(RO) …(1)
CO−(OCHCHR−O−CO−R …(2)
式(1)中、Rは置換基を有してもよい炭素数2〜22の脂肪族、脂環式若しくは芳香族のカルボン酸残基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基を表し、mは1〜30の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。但しm+n≧3である。式(2)中、R及びRは炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、tは2〜20の整数を表す。
【0017】
本発明は、また、上記のゴム組成物からなるトレッド部を備える空気入りタイヤに係るものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムである。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムが挙げられ、これらは単独で用いても、あるいは2種以上併用してもよい。
【0019】
本発明のゴム組成物に用いる白色充填剤としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、タルク、クレーが挙げられ、これらは単独で用いても、あるいは2種以上併用してもよい。特に好ましい白色充填剤はシリカであり、シリカを用いることにより、タイヤトレッド用ゴム組成物において、転がり抵抗性能と湿潤路面に対する摩擦性能との両立が可能となる。
【0020】
白色充填剤の配合量は特に限定されず、用途に応じて適宜に設定することができる。例えば、タイヤ用ゴム組成物として使用する場合、上記性能の両立のため、白色充填剤は上記ゴム成分100重量部に対して10〜100重量部であることが好ましい。
【0021】
本発明のゴム組成物に用いる帯電防止剤は、(A)多フッ化アルキル基を含むアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と、(B)分子中に複数のエーテル結合を持つエーテル化合物とからなる。
【0022】
上記(A)の多フッ化アルキル基とは、複数の水素がフッ素で置換されたアルキル基のことであり、好ましくはアルキル基の全ての水素がフッ素で置換されていることである。上記(A)の金属塩は、より好ましくは多フッ化アルキルスルホニル基を含むアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩である。具体的には、該金属塩のカチオン部位としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Baなどが挙げられ、特にLi塩が好ましい。また、アニオン部位としては、CFSO、(CFSON、CSO、(CFSOC等が挙げられる。該金属塩の特に好ましい具体例は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CFSON)である。
【0023】
上記(B)のエーテル化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物及び/又は上記一般式(2)で表される化合物が好適に用いられる。
【0024】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、アジピン酸ジエステル化合物、フタル酸ジエステル化合物がより好ましい。特に好ましい具体例は、ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕アジペート、ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕フタレートである。
【0025】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、トリエチレングリコールジオクトエート、テトラエチレングリコールジオクトエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートなどが挙げられる。
【0026】
上記(A)及び(B)からなる帯電防止剤により導電性が発現する機構は以下の通りであると推察される。すなわち、上記(B)中のエーテル酸素がクラウンエーテルのような配位場を形成し、上記(A)中の金属イオン(好ましくはLi)を取り込み溶解する。この解離したイオン種はエーテル酸素の分子振動によって移動しやすい状態となっている。これに外部から電場が印加されると、相応する極に向かって移動(イオン輸送)し、イオン伝導性を発現する。その際、上記(A)の金属塩におけるアニオン部位の多フッ化アルキル基による電子吸引効果によってアニオン種が安定化するので良好な導電性が発現される。また、特にアニオン種が大きいと電子が一層局在化して安定化するので、より一層優れた導電性を発現することができる。このような観点より、上記(A)の金属塩におけるアニオン部位は、分子量が140以上であることが好ましく、より好ましくは分子量200以上である。
【0027】
上記(A)と(B)の配合比率は、重量比で(A)/(B)=5/95〜50/50であることが好ましく、より好ましくは(A)/(B)=10/90〜30/70である。(A)の配合量が上記範囲よりも少ないと、解離するイオン種が少なくイオン輸送効果が低くなり、逆に上記範囲を超えると、クラウンエーテルのような配位場自体が少なくイオン輸送効果が低くなる。
【0028】
また、上記(A)及び(B)よりなる帯電防止剤の配合量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。
【0029】
本発明のゴム組成物には、上記した各成分の他に、白色充填剤とゴム成分を結合させるカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、活性剤、滑剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。また、タイヤ用ゴム組成物として使用する場合、カーボンブラックを補強剤として配合することもでき、その場合、カーボンブラックは、ゴム成分100重量部に対して5〜50重量部配合することが好ましい。
【0030】
ゴム組成物を調製する方法としては、特に限定されることなく公知の方法を使用することができ、例えば、上記各成分と必要に応じて他の添加剤をバンバリーミキサーやロールなどを用いて混練することにより調製することができる。
【0031】
本発明のゴム組成物は、タイヤ、特にトレッド部のためのゴム組成物として好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、各種の事務用品、電気製品などにおけるゴム部品に適用することができるものである。
【0032】
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に上記した本発明のゴム組成物を用いたものであり、シリカなどの白色充填剤を配合することで転がり抵抗性能と湿潤路面に対する摩擦性能との両立を図りながら、上記した帯電防止剤の優れた導電性効果により車体で発生する静電気をタイヤを介して路面に安定して逃がすことができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0034】
下記表1に示す配合に従って実施例1〜5及び比較例1〜6のゴム組成物をバンバリーミキサーで調製した。但し、充填剤、カップリング剤及び帯電防止剤については下記表2,3に示す通りである。得られたゴム組成物を150℃で30分間加硫して厚さ1mmと2mmのゴムシートをそれぞれ作製した。得られたゴムシートを用いて、発熱性、体積抵抗及びその持続性、ならびに帯電防止剤の表面ブリードの有無を評価した。評価方法は以下の通りである。
【0035】
(発熱性)レオロジー社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、厚さ1mmのゴムシートの粘弾性を60℃、50Hz、初期歪み5%、動歪み1%にて測定した。発熱性は、各ゴムシートのtanδを求め、比較例2のゴムシートのtanδを100とした指数表示で表した。数値が小さい程、発熱性が良いこと、即ち発熱しにくいことを示す。
【0036】
(体積抵抗)三菱化学社製ハイレスターUPを用いて、厚さ2mmのゴムシートについて、23℃、65RHの雰囲気中、測定電圧500Vで測定した。表2,3中、例えば「6.5E+07」とは6.5×10であることを意味する。
【0037】
(体積抵抗持続性)70℃のギアオーブンに4週間入れた後、上記同様にして体積抵抗を測定した。
【0038】
(表面ブリードの有無)厚さ2mmのゴムシートを加硫後一週間室温で放置し、一週間後のシートの表面状態を目視にて観察した。
【0039】
【表1】
Figure 2004131572
【0040】
【表2】
Figure 2004131572
【0041】
【表3】
Figure 2004131572
【0042】
表2,3の充填剤及び帯電防止剤の詳細は以下の通りである。
シリカ:日本シリカ社製Nipsil AQ
カーボンブラック:東海カーボン社製シースト6
帯電防止剤a:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド/ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)アジペート=20/80(重量比)(三光化学社製サンコノール0862−20R)
帯電防止剤b:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド/ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)フタレート=20/80(重量比)
帯電防止剤c:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム/ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)アジペート=20/80(重量比)
帯電防止剤d:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド/ポリオキシエチレンオレイルアミドエーテル=20/80(重量比)(三光化学社製サンコノールN−0720R)
帯電防止剤e:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(日本油脂社製ラビゾールB900)
帯電防止剤f:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日本油脂社製ニューレックスソフト60)
帯電防止剤g:過塩素酸リチウム/ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)アジペート(三光化学社製サンコノール0862−18)
上記表2,3に示すように、実施例1〜5では、発熱性が良好であり、かつ、比較例2〜6に対して体積抵抗が低く導電性にも優れていた。更に、表面にブリードが発生することもなく、導電性の持続性にも優れていた。
【0043】
これに対し、比較例1では、導電性には優れるものの発熱性に大きく劣るものであった。また、比較例3〜6では、発熱性が良好であり、かつ、比較例2に対して導電性が若干改良されていたが、不十分なものであった。
【0044】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、シリカなどの白色充填剤を配合したゴム組成物に優れた帯電防止性を付与することができ、また、このゴム組成物を空気入りタイヤに使用することにより、転がり抵抗性能と湿潤路面に対する摩擦性能との両立を図りながら優れた帯電防止性を付与することができる。

Claims (6)

  1. 天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム、
    白色充填剤、及び、
    多フッ化アルキル基を含むアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と、分子中に複数のエーテル結合を持つエーテル化合物とからなる帯電防止剤、
    を含有するゴム組成物。
  2. 前記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が、多フッ化アルキルスルホニル基を含むアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
  3. 前記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が、LiCFSO又はLi(CFSONであることを特徴とする請求項2記載のゴム組成物。
  4. 前記エーテル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれに記載のゴム組成物。
    〔CO−O−(RO) …(1)
    CO−(OCHCHR−O−CO−R …(2)
    (式(1)中、Rは置換基を有してもよい炭素数2〜22の脂肪族、脂環式若しくは芳香族のカルボン酸残基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基を表し、mは1〜30の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。但しm+n≧3である。式(2)中、R及びRは炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、tは2〜20の整数を表す。)
  5. 前記エーテル化合物が、ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕アジペート又はビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕フタレートであることを特徴とする請求項4記載のゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれに記載のゴム組成物からなるトレッド部を備える空気入りタイヤ。
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