JP2004129371A - 給電装置及びハーネス配索構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】ワイヤハーネスの余長の増大に対応して余長を確実に吸収させる。
【解決手段】ワイヤハーネス5を弛み反対方向に付勢する二つの重ねられたばね3,4を少なくとも備える給電装置1を採用した。ワイヤハーネス5を弛み反対方向に付勢する長いばね3と、長いばねの基部側をワイヤハーネスと共に弛み反対方向に付勢する短いばね4とで上記二つのばねを構成した。短いばね4は長いばね3の半分程度の長さである。長いばね3と短いばね4とを含む複数の長さ違いのばねを備えてもよい。各ばね3,4の基端側を固定し、且つワイヤハーネス5を湾曲状に収容するハーネスプロテクタ2を備える。長いばね3はワイヤハーネス5の湾曲頂部5aを越えて延長される。給電装置1を固定構造体又はスライド構造体に設け、固定構造体から給電装置1を経てスライド構造体にワイヤハーネス5を配索した。
【選択図】 図2
【解決手段】ワイヤハーネス5を弛み反対方向に付勢する二つの重ねられたばね3,4を少なくとも備える給電装置1を採用した。ワイヤハーネス5を弛み反対方向に付勢する長いばね3と、長いばねの基部側をワイヤハーネスと共に弛み反対方向に付勢する短いばね4とで上記二つのばねを構成した。短いばね4は長いばね3の半分程度の長さである。長いばね3と短いばね4とを含む複数の長さ違いのばねを備えてもよい。各ばね3,4の基端側を固定し、且つワイヤハーネス5を湾曲状に収容するハーネスプロテクタ2を備える。長いばね3はワイヤハーネス5の湾曲頂部5aを越えて延長される。給電装置1を固定構造体又はスライド構造体に設け、固定構造体から給電装置1を経てスライド構造体にワイヤハーネス5を配索した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のスライドドア等に常時給電を行うべく複数のばねを重ね合わせてワイヤハーネスを付勢してスライドドア等の開閉時のワイヤハーネスの弛みを吸収させる給電装置及びハーネス配索構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5〜図6は、本出願人が先に提案した自動車のスライドドア用給電装置とスライドドアへのハーネス配索構造を示すものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この給電装置21は、ワイヤハーネス25を湾曲した状態に収容する合成樹脂製のハーネスプロテクタ(以下単にプロテクタと言う)22と、プロテクタ22内でワイヤハーネス25を上向きに付勢する金属製の板ばね23とを備えるものである。
【0004】
プロテクタ22はベース(符号22で代用)とカバー(図示せず)とで構成される。カバーはベース22に係止され、その状態でベース22がスライドドア33の金属製のドアパネル34に固定される。ドアパネル34に合成樹脂製のドアトリム(図示せず)が被着され、プロテクタ22はドアパネル34とドアトリムとの間に位置する。プロテクタ22は垂直な基板部28と、基板部28の周囲の周壁26とを有し、周壁26の前端側に狭い口部31、基板部28の下端側に横長スリット状の口部32をそれぞれ有している。
【0005】
ワイヤハーネス25の一方は前端側の口部31から導出されてスライドドア側の補機やワイヤハーネス(図示せず)にコネクタ35で接続され、ワイヤハーネス25の他方は下端側の口部32から導出されて渡り部を経て車両ボディ36側(電源側)のワイヤハーネス(図示せず)にコネクタ接続される。ワイヤハーネス25は車両ボディ36のステップ部37の近傍でハーネス固定部9によって固定される。
【0006】
図5のスライドドア33の全閉状態において、ワイヤハーネス25は板ばね23で持ち上げられて弛み(余長)吸収されつつ、ハーネス固定部9を支点に後方に引っ張られて大きな半径で湾曲する。「後方」とは車両後方の意味である。図5の全閉状態からスライドドア33を後方に開けるに従って、ワイヤハーネス25は大きく弛もう(垂れ下がろう)とするが、板ばね23の付勢力で持ち上げられて弛みが吸収される。
【0007】
そして、図6のスライドドア33の全開近くの状態でワイヤハーネス25は固定部9を支点に前方に引っ張られつつ板ばね23を下向きに撓ませ、小さな半径で湾曲する。図には示していないが、プロテクタ22には環状の屈曲規制壁が設けられており、ワイヤハーネスはドア全開時に屈曲規制壁によって過大な屈曲が防止される。全開全開から全閉においても板ばね23の付勢力でワイヤハーネス25の弛みが吸収される。弛みが吸収されることで、スライドドア33と車両ボディ36との間へのワイヤハーネス25の挟み込みが防止される。
【0008】
スライドドア33は全閉時に車両ボディ36に密着し、全開時に車両ボディ36から外側に離間する。ワイヤハーネス25はスライドドア33の開閉に伴って車両ボディ側の固定部9を支点に前後に揺動しつつ、プロテクタ22内に引き込まれ、あるいはプロテクタ22から引き出されて伸縮する。
【0009】
なお、ワイヤハーネス25は屈曲性の良好な合成樹脂製のコルゲートチューブで被覆されていることが好ましい。コルゲートチューブは断面円形に限らず長円形のものも使用される。また、板ばね25の一端側には合成樹脂製のハーネス支持用のキャップが装着されてもよく、板ばね25の他端側はプロテクタ22の固定部38に固定される。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−354085(第7−9頁、図4)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成にあっては、車種によってスライドドア33のスライド量が大きく設定された場合に、ワイヤハーネス25の長さも長くなって余長(弛み)が増大し、プロテクタ22を大きく設計しつつ、弾性部材である板ばね23の長さを増して、余長の増大に対処しようとしたが、板ばね23が長くなる程、板ばね23の曲げモーメントが増大し、板ばね23が根本側から大きく屈曲して余長を吸収できなくなるという問題を生じた。そこで、板ばね23の板厚を増加させると、付勢力が増してスライドドア33の開閉操作性が悪化したり、ワイヤハーネス25に過大な押圧力が作用してワイヤハーネス25が傷んだり変形したりしやすいという問題があった。また、板ばね23の厚さや板幅を増すことで、ワイヤハーネス25の付勢力を増すことはできるが、その場合にはプロテクタ22が高さ方向や厚さ方向に肥大化するという問題を生じた。
【0012】
本発明は上記した点に鑑み、ワイヤハーネスを板ばね等の弾性部材で付勢してワイヤハーネスの余長を吸収させる給電装置やハーネス配索構造において、ワイヤハーネスの余長の増大に対応して、スライドドア等のスライド構造体の操作性を悪化させたり、ワイヤハーネスを傷めたり変形させたり、プロテクタを肥大化させたりすることなく、余長をスムーズ且つ確実に吸収することのできる給電装置及びハーネス配索構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る給電装置は、ワイヤハーネスを弛み反対方向に付勢する二つの重ねられたばねを少なくとも備えることを特徴とする。
上記構成により、スライド構造体の開閉に伴って二つの重なったばねがその接触部分で相互に滑りながら独立して屈曲ないし伸長することで、単にばねの板厚を増した場合とは異なる良好なばね特性を発揮する(単にばねの板厚を増した場合に較べてばねの変位が増しても荷重(付勢力)が確保される)から、余長が増してもワイヤハーネスが弛み反対方向に確実に付勢され、ワイヤハーネスの余長が確実に吸収される。また、ばねの特性すなわち荷重−ストローク線図が緩やかで急激な荷重の増加がないから、スライド構造体の開閉操作性が高まる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の給電装置において、前記二つのばねが、ワイヤハーネスを弛み反対方向に付勢する長いばねと、該長いばねの基部側を該ワイヤハーネスと共に該弛み反対方向に付勢する短いばねとで構成されることを特徴とする。
上記構成により、短いばねが長いばねの基部側(付け根側)を補強し、長いばねに起因する曲げモーメントの増大に対処して、長いばねを基部側から曲がり難くする。それと同時に、短いばねの先端から突出した長いばねの突出部分(重なっていない部分)が短いばねの先端を支点として小さな変位量で撓み可能となるから、ワイヤハーネスが弛み反対方向に高く付勢され、長いばねのみだと垂れ下がるワイヤハーネスの軌跡が高く矯正されて、ワイヤハーネスの余長が確実に吸収される。また、長いばねが短いばねで補強されて耐久性が向上する。また、長いばねの板厚を増す必要がないから、ワイヤハーネスに過大な押圧力が作用することがない。
【0015】
請求項3に係る給電装置は、請求項2記載の給電装置において、前記短いばねが前記長いばねの半分程度の長さであることを特徴とする。
上記構成により、短いばねが長いばねの基部側半部を支持し、長いばねの先端側半部が短いばねの先端から突出し、短いばねの先端を支点として撓み変位可能となる。重ね板ばねの原理で長いばねの先端側半部と基端側半部とでは曲げ応力や曲率がほぼ等しくなる。それにより、ワイヤハーネスの弛み吸収がスムーズ且つ確実に行われる。各ばねに作用する曲げ応力も安定し、過大な曲げ応力がかかりにくくなる。これにより、長いばねの寿命(耐久性)が向上する。
【0016】
請求項4に係る給電装置は、請求項2又は3記載の給電装置において、前記長いばねと短いばねとを含む複数の長さ違いのばねを備えることを特徴とする。
複数の長さ違いのばねが重ね板ばねの原理で長さの範囲のどの部位においても曲げ応力や曲率が等しくなる。それにより、ワイヤハーネスの弛み吸収がスムーズ且つ確実に行われる。各ばねに作用する曲げ応力も均一化され、ばねの一部に過大な曲げ応力が集中することがなくなる。これにより、ワイヤハーネスを支持する長いばねの耐久性が向上する。
【0017】
請求項5に係る給電装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の給電装置において、前記長いばねが前記ワイヤハーネスの湾曲頂部を越えて延長されたことを特徴とする。
上記構成により、ワイヤハーネスの余長が長くても長いばねでワイヤハーネスが弛み反対方向に高く(下方向に弛む場合)支持されて確実に弛みが吸収される。また、ワイヤハーネスが湾曲頂部から折れ曲がることが防止され、ワイヤハーネスの伸縮動作がスムーズに行われる。
【0018】
請求項6に係る給電装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載の給電装置において、前記各ばねの基端側を固定し、且つ前記ワイヤハーネスを湾曲状に収容するハーネスプロテクタを備えることを特徴とする。
上記構成により、ワイヤハーネスがハーネスプロテクタ内で外部との干渉等から保護される。また、プロテクタの側壁面に沿ってワイヤハーネスが安定に拡径ないし縮径して弛み吸収される。また、プロテクタの外周壁内面にワイヤハーネスが接してワイヤハーネスの付勢高さが規制される。各ばねやワイヤハーネスは予めプロテクタ内に組み込まれ、その組立体の状態で車両のスライドドア等に組み付けられる。
【0019】
請求項7に係るハーネス配索構造は、請求項1〜6の何れか1項に記載の給電装置が固定構造体又はスライド構造体に設けられ、該固定構造体から該給電装置を経て該スライド構造体にワイヤハーネスが配索されたことを特徴とする。
上記構成により、固定構造体からスライド構造体に常時給電が行われ、スライド構造体のスライド量が増し、ワイヤハーネスの余長が増加しても、スライド構造体のスライド開閉に伴うワイヤハーネスの弛み(余長)が上記二つないしそれ以上の複数の長さ違いのばねで確実に吸収される。また、長いばねの板厚を増す必要がないから、スライド構造体のスライド操作性が悪化することがない。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明に係る給電装置及びハーネス配索構造の一実施形態をスライドドア(スライド構造体)の全閉から全開に至るまで順に示すものである。
【0021】
この給電装置1は、従来の技術で説明したのと同様な合成樹脂製のハーネスプロテクタ2と、プロテクタ2内に装着された上下二枚重ねの長さ違いの板ばね(ばね又は弾性部材)3,4とを備えるものである。
【0022】
図1の如く、ワイヤハーネス5の余長の増大に対応してプロテクタ2は従来よりも少し横長に形成されている。プロテクタ2の後半側の周壁6の高さを前半側と同様に高く設定することも可能である。この場合、プロテクタ2は略台形に近い形状となる。プロテクタ2の構成については従来とほぼ同様であるので説明を省略する。ワイヤハーネス5の一方は前端側の開口11からスライドドア側に導出され、ワイヤハーネス5の他方は下端側の横長(長形)の開口12から車両ボディ側に導出されている。
【0023】
板ばねは上側のもの3が長く、下側のもの4が短く設定されている。上側の板ばね(長尺ばね)3は余長の増大に対応して従来のものよりも長く形成され、板ばね3の先端3aがプロテクタ2の周壁6の頂部6aすなわちワイヤハーネスの湾曲頂部5aよりも後方まで延びている。下側の板ばね(短尺ばね)4の先端4aはプロテクタ2の頂部6aすなわちワイヤハーネスの湾曲頂部5aよりも前方に位置している。本形態の下側の板ばね4の長さは上側の板ばね3の長さの半分程度に設定されている。
【0024】
各板ばね3,4の厚さは同じであり、各板ばね3,4は全長に渡って均一な厚さを有している。従来の板ばねの厚さともほぼ同じであり、上下の板ばね3,4の重なった部分の厚さは従来の板ばねの厚さのほぼ二倍である。各板ばね3,4の長さや厚さはワイヤハーネス5の長さや重さに応じて適宜設定される。各板ばね3,4の幅はプロテクタ2の内幅よりも少し狭く設定されることは言うまでもない。各板ばね3,4は長方形ないし矩形帯状を呈している。
【0025】
各板ばね3,4は基端側をプロテクタ2に固定されている。各ばね3,4の先端側は自由端となっている。各板ばね3,4の基端部7は例えばプロテクタ2の垂直な基板部8に突設した突部間のスリット状の溝部(図示せず)に挿入してボルト等で締め付けることで固定される。上側の長い板ばね3の先端部にハーネス支持用の湾曲凹部を有する合成樹脂製のキャップ(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
上側の板ばね3はワイヤハーネス5を支持し、下側の板ばね4は上側の板ばね3とワイヤハーネス5との両方を同時に支持する。明細書における「上側」や「下側」はあくまでもプロテクタ2を垂直に配置した場合の呼び名であり、例えばプロテクタ2を水平に配置した場合は「上側」が「外側」に、「下側」が「内側」となる。これはプロテクタ3を垂直に配置した場合にも当てはまる。
【0027】
図1はスライドドア(図示せず)の全閉時における給電装置1の状態を示し、プロテクタ2内でワイヤハーネス5は二枚の板ばね3,4で上向きに付勢されつつ車両ボディ(固定構造体)側のハーネス固定部9を支点に後方に引っ張られて大きな半径で湾曲している。プロテクタ2内のワイヤハーネス5の状態は従来と同様である。ハーネス固定部5としては例えばワイヤハーネス外周のコルゲートチューブを周方向回動自在で長手方向不動に支持するものが挙げられる。
【0028】
図2はスライドドアを後方に少しスライドさせて開けた(プロテクタ2はスライドドアと一体に移動する)半開時の状態を示し、プロテクタ内でワイヤハーネス5は上側の板ばね3で弛みなく支持され、上側の板ばね3はその基部側(全長のほぼ半分の部分)を下側の板ばね4で支持されて補強されている。
【0029】
上側の板ばね3の基部側が下側の板ばね4で支持されることで、長い上側の板ばね3が基部(付け根)側から撓むことが防止され、さらに下側の板ばね4の先端4aを支点として上側の板ばね3の突出した部分(上側の板ばねの全長から下側の板ばねの全長を引いた長さの短い部分)3bが一枚ばねとしてワイヤハーネス5の重さで下向きに撓むから、その撓み量が小さく抑えられ、それ故に従来であれば鎖線Wの如く大きく弛んだワイヤハーネスが実線5の如く高く持ち上げられて軌跡を矯正され、プロテクタ2内にほぼ完全に収容された状態に保持されて、半開時におけるワイヤハーネス5の弛みが確実に吸収され、ワイヤハーネス5の垂れ下がりが防止される。
【0030】
図3はスライドドアをさらに開けた状態を示し、プロテクタ2内でワイヤハーネス5は図2の状態を保持されつつ、ハーネス固定部9が前方に相対移動する(実際にはプロテクタ2が後退する)ことで、符号5bの如く前向きに屈曲する。上側の板ばね3は下側の板ばね4の矢印A方向の付勢力でワイヤハーネス5と共に矢印Bの如く持ち上げられ、ワイヤハーネス5は上側の板ばね3の軌跡(屈曲形状)に沿ってプロテクタ2内に収容されて、確実に弛み吸収される。
【0031】
図3の状態からスライドドアをさらに開けるに従って、プロテクタ2内でワイヤハーネス5は二枚の板ばね3,4で弛みなく上向きに付勢されつつ、前方に引っ張られる。
【0032】
図4はスライドドアの全開状態を示し、従来と同様にハーネス固定部9を支点に前方に引っ張られつつ小径に屈曲する。符号10は環状の屈曲規制壁を示す。特に図3〜図4にかけてワイヤハーネス5は縮径しつつ上側の板ばね3の突出部分3bのみによって比較的小さな力で付勢されるから、大きなストレスがワイヤハーネス5に加わらず、ワイヤハーネス5の傷みや摩耗や塑性変形が防止される。
【0033】
図4の全開状態から図1の全閉状態にかけての作用は上記全閉から全開にかけての作用とは逆に行われ、上記同様に二枚の長さ違いの板ばね3,4によってワイヤハーネス5の弛みが確実に吸収され、且つワイヤハーネス5にかかるストレスが小さく抑えられる。
【0034】
ワイヤハーネス5はプロテクタ2内で長い上側の板ばね3に沿って配索され、ワイヤハーネス5の一方はスライドドア側に配索されて、スライドドア内の補機やワイヤハーネスに接続され、ワイヤハーネス5の他方はスライドドアから渡り部(空間)を経て車両ボディに配索されて車両ボディ側のワイヤハーネスにコネクタ接続されている。スライドドアの開閉に伴ってワイヤハーネス5は渡り部において前後(車両長手方向ないしスライドドア開閉方向)に揺動する。
【0035】
なお、上記実施形態においては長さ違いの二枚3,4の板ばねを用いたが、同じ長さの板ばねを二枚ないしそれ以上の枚数で用いることも可能である。また、上記実施形態では二枚の長さ違いの板ばね3,4を用いたが、三枚ないしそれ以上の枚数の長さ違いの板ばねを用いることも可能である。三枚の場合、上側の板ばね3は長く、中間の板ばね(図示せず)は中間の長さで、下側の板ばね(図示せず)は短く形成される。少なくとも三枚の板ばねによれば、重ね板ばねの原理で平面視二等辺三角形の一枚の板ばねと等価となり、板ばね長さ方向のどの断面においても曲げ応力は同じ値となり、曲率もいたる所一定となる。二枚の板ばね3,4の場合もこれに近い作用が得られる。板ばね3,4の材料は金属に限らずグラスファイバ等も使用可能である。
【0036】
また、板ばね3,4に代えて弾性部材として、棒状のばねや断面矩形以外のばね(図示せず)を使用することも可能である。この場合も長さは外側のばねが長く、内側のばねが短い。上側に短いばね、下側に長いばねを配置した場合には、下側の長いばねが上側の短いばねとは別個に単独で下向きに撓むから効果は半減する。上側の長いばねと下側の短いばねとを一体に形成した場合には、上記した重ね板ばねの効果は得られないが、ばねが付け根側から大きく撓むことがなくなり、余長吸収性は向上する。但し、各ばね間の滑りが起こらないから、スムーズな屈曲性を得ることは難しい。
【0037】
また、上記した給電装置1やハーネス配索構造はスライドドア以外にもスライド構造体のスライド動作に応じてワイヤハーネス5を前後ないし上下に揺動させつつ複数本のばねで収容方向に付勢して弛みを吸収させる部位に適用可能である。この場合、ワイヤハーネス5を収容するプロテクタ2は必ずしも必要ではなく、ワイヤハーネス5と外部との干渉の危険のない部位ではワイヤハーネス5を露出させた状態で複数本のばね3,4で弛み反対方向に付勢することも可能である。
【0038】
また、スライドドアではなく車両ボディに上記給電装置1を垂直又は水平に配置することも可能である。この場合、プロテクタ2の横長の開口12からワイヤハーネス5の一方がスライドドア側に配索され、プロテクタ2の狭い開口11からワイヤハーネス5の他方が車両ボディ側に配索される。
【0039】
【発明の効果】
以上の如く、請求項1記載の発明によれば、二つのばねが単にばねの板厚を増した場合とは異なる良好なばね特性を発揮するから、ワイヤハーネスの余長の増大に対応して、スライドドア等のスライド構造体の操作性を悪化させたり、ワイヤハーネスを傷めたり変形させたり、プロテクタを肥大化させたりすることなく、余長をスムーズ且つ確実に吸収することができ、これによりスライド構造体への給電の信頼性が高まる。
【0040】
請求項2記載の発明によれば、短いばねによって長いばねの基部側が補強され、且つ短いばねの先端から突出した長いばねの突出部分の撓み剛性が高まるから、スライドドア等(スライド構造体)のスライド量の増加でワイヤハーネスの余長が増大した場合でも、余長が確実に吸収され、例えばスライドドアと車両ボディ(固定構造体)との間へのワイヤハーネスの挟み込み等が防止され、スライド構造体への給電の信頼性が向上する。また、長いばねが補強されることで、長いばねの屈曲耐久性が向上し、それによっても給電の信頼性が高まる。また、長いばねの板厚を増さずにワイヤハーネスの余長の増大に対処できるから、ワイヤハーネスに過大な押圧力が作用せず、ワイヤハーネスの摩耗や傷みや変形等が防止されると共に、スライド構造体のスライド操作力が増大せず、開閉操作性が高まる。
【0041】
請求項3記載の発明によれば、重ね板ばねの原理で長いばねの先端側半部と基端側半部とで曲げ応力や曲率がほぼ等しくなるから、ワイヤハーネスの弛み吸収がスムーズ且つ確実に行われ、且つ各ばねに作用する曲げ応力も安定し、長いばねの耐久性が一層向上して、給電の信頼性がさらに高まる。
【0042】
請求項4記載の発明によれば、重ね板ばねの原理でワイヤハーネスの弛み吸収が一層スムーズ且つ確実に行われると共に、各ばねに作用する曲げ応力も均一化されて、ばねの耐久性が向上するから、給電の信頼性が一層高まる。
【0043】
請求項5記載の発明によれば、ワイヤハーネスの余長吸収性が高まると共に、ワイヤハーネスの折れ曲がりが防止され、ワイヤハーネスの伸縮動作がスムーズ化して、給電の信頼性が一層向上する。
【0044】
請求項6記載の発明によれば、プロテクタと各ばねとワイヤハーネスとの組立体の状態で車両のスライドドア等(スライド構造体)に容易に組み付けることができ、組付作業性が向上する。
【0045】
請求項7記載の発明によれば、スライド構造体のスライド量が増し、ワイヤハーネスの余長が増加しても、スライド構造体のスライド開閉に伴うワイヤハーネスの弛み(余長)が二つないしそれ以上の複数の長さ違いのばねで確実に吸収されるから、スライド構造体と固定構造体との間へのワイヤハーネスの挟み込みが防止され、スライド構造体への給電の信頼性が向上する。また、長いばねの板厚を増さずにワイヤハーネスの余長の増大に対処できるから、ワイヤハーネスに過大な押圧力が作用せず、ワイヤハーネスの摩耗や傷みや変形等が防止されると共に、スライド構造体のスライド操作力が増大せず、開閉操作性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る給電装置及びハーネス配索構造の一実施形態をスライドドア全閉時の状態で示す正面図である。
【図2】同じくスライドドア半開時の状態を示す正面図である。
【図3】同じくスライドドアをさらに開けた状態を示す正面図である。
【図4】同じくスライドドア全開時の状態を示す正面図である。
【図5】従来の給電装置及びハーネス配索構造をスライドドア全閉時の状態で示す斜視図である。
【図6】同じくスライドドア全開近くでの状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 給電装置
2 ハーネスプロテクタ
3 長い板ばね
4 短い板ばね
5 ワイヤハーネス
5a 湾曲頂部
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のスライドドア等に常時給電を行うべく複数のばねを重ね合わせてワイヤハーネスを付勢してスライドドア等の開閉時のワイヤハーネスの弛みを吸収させる給電装置及びハーネス配索構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5〜図6は、本出願人が先に提案した自動車のスライドドア用給電装置とスライドドアへのハーネス配索構造を示すものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この給電装置21は、ワイヤハーネス25を湾曲した状態に収容する合成樹脂製のハーネスプロテクタ(以下単にプロテクタと言う)22と、プロテクタ22内でワイヤハーネス25を上向きに付勢する金属製の板ばね23とを備えるものである。
【0004】
プロテクタ22はベース(符号22で代用)とカバー(図示せず)とで構成される。カバーはベース22に係止され、その状態でベース22がスライドドア33の金属製のドアパネル34に固定される。ドアパネル34に合成樹脂製のドアトリム(図示せず)が被着され、プロテクタ22はドアパネル34とドアトリムとの間に位置する。プロテクタ22は垂直な基板部28と、基板部28の周囲の周壁26とを有し、周壁26の前端側に狭い口部31、基板部28の下端側に横長スリット状の口部32をそれぞれ有している。
【0005】
ワイヤハーネス25の一方は前端側の口部31から導出されてスライドドア側の補機やワイヤハーネス(図示せず)にコネクタ35で接続され、ワイヤハーネス25の他方は下端側の口部32から導出されて渡り部を経て車両ボディ36側(電源側)のワイヤハーネス(図示せず)にコネクタ接続される。ワイヤハーネス25は車両ボディ36のステップ部37の近傍でハーネス固定部9によって固定される。
【0006】
図5のスライドドア33の全閉状態において、ワイヤハーネス25は板ばね23で持ち上げられて弛み(余長)吸収されつつ、ハーネス固定部9を支点に後方に引っ張られて大きな半径で湾曲する。「後方」とは車両後方の意味である。図5の全閉状態からスライドドア33を後方に開けるに従って、ワイヤハーネス25は大きく弛もう(垂れ下がろう)とするが、板ばね23の付勢力で持ち上げられて弛みが吸収される。
【0007】
そして、図6のスライドドア33の全開近くの状態でワイヤハーネス25は固定部9を支点に前方に引っ張られつつ板ばね23を下向きに撓ませ、小さな半径で湾曲する。図には示していないが、プロテクタ22には環状の屈曲規制壁が設けられており、ワイヤハーネスはドア全開時に屈曲規制壁によって過大な屈曲が防止される。全開全開から全閉においても板ばね23の付勢力でワイヤハーネス25の弛みが吸収される。弛みが吸収されることで、スライドドア33と車両ボディ36との間へのワイヤハーネス25の挟み込みが防止される。
【0008】
スライドドア33は全閉時に車両ボディ36に密着し、全開時に車両ボディ36から外側に離間する。ワイヤハーネス25はスライドドア33の開閉に伴って車両ボディ側の固定部9を支点に前後に揺動しつつ、プロテクタ22内に引き込まれ、あるいはプロテクタ22から引き出されて伸縮する。
【0009】
なお、ワイヤハーネス25は屈曲性の良好な合成樹脂製のコルゲートチューブで被覆されていることが好ましい。コルゲートチューブは断面円形に限らず長円形のものも使用される。また、板ばね25の一端側には合成樹脂製のハーネス支持用のキャップが装着されてもよく、板ばね25の他端側はプロテクタ22の固定部38に固定される。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−354085(第7−9頁、図4)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成にあっては、車種によってスライドドア33のスライド量が大きく設定された場合に、ワイヤハーネス25の長さも長くなって余長(弛み)が増大し、プロテクタ22を大きく設計しつつ、弾性部材である板ばね23の長さを増して、余長の増大に対処しようとしたが、板ばね23が長くなる程、板ばね23の曲げモーメントが増大し、板ばね23が根本側から大きく屈曲して余長を吸収できなくなるという問題を生じた。そこで、板ばね23の板厚を増加させると、付勢力が増してスライドドア33の開閉操作性が悪化したり、ワイヤハーネス25に過大な押圧力が作用してワイヤハーネス25が傷んだり変形したりしやすいという問題があった。また、板ばね23の厚さや板幅を増すことで、ワイヤハーネス25の付勢力を増すことはできるが、その場合にはプロテクタ22が高さ方向や厚さ方向に肥大化するという問題を生じた。
【0012】
本発明は上記した点に鑑み、ワイヤハーネスを板ばね等の弾性部材で付勢してワイヤハーネスの余長を吸収させる給電装置やハーネス配索構造において、ワイヤハーネスの余長の増大に対応して、スライドドア等のスライド構造体の操作性を悪化させたり、ワイヤハーネスを傷めたり変形させたり、プロテクタを肥大化させたりすることなく、余長をスムーズ且つ確実に吸収することのできる給電装置及びハーネス配索構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る給電装置は、ワイヤハーネスを弛み反対方向に付勢する二つの重ねられたばねを少なくとも備えることを特徴とする。
上記構成により、スライド構造体の開閉に伴って二つの重なったばねがその接触部分で相互に滑りながら独立して屈曲ないし伸長することで、単にばねの板厚を増した場合とは異なる良好なばね特性を発揮する(単にばねの板厚を増した場合に較べてばねの変位が増しても荷重(付勢力)が確保される)から、余長が増してもワイヤハーネスが弛み反対方向に確実に付勢され、ワイヤハーネスの余長が確実に吸収される。また、ばねの特性すなわち荷重−ストローク線図が緩やかで急激な荷重の増加がないから、スライド構造体の開閉操作性が高まる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の給電装置において、前記二つのばねが、ワイヤハーネスを弛み反対方向に付勢する長いばねと、該長いばねの基部側を該ワイヤハーネスと共に該弛み反対方向に付勢する短いばねとで構成されることを特徴とする。
上記構成により、短いばねが長いばねの基部側(付け根側)を補強し、長いばねに起因する曲げモーメントの増大に対処して、長いばねを基部側から曲がり難くする。それと同時に、短いばねの先端から突出した長いばねの突出部分(重なっていない部分)が短いばねの先端を支点として小さな変位量で撓み可能となるから、ワイヤハーネスが弛み反対方向に高く付勢され、長いばねのみだと垂れ下がるワイヤハーネスの軌跡が高く矯正されて、ワイヤハーネスの余長が確実に吸収される。また、長いばねが短いばねで補強されて耐久性が向上する。また、長いばねの板厚を増す必要がないから、ワイヤハーネスに過大な押圧力が作用することがない。
【0015】
請求項3に係る給電装置は、請求項2記載の給電装置において、前記短いばねが前記長いばねの半分程度の長さであることを特徴とする。
上記構成により、短いばねが長いばねの基部側半部を支持し、長いばねの先端側半部が短いばねの先端から突出し、短いばねの先端を支点として撓み変位可能となる。重ね板ばねの原理で長いばねの先端側半部と基端側半部とでは曲げ応力や曲率がほぼ等しくなる。それにより、ワイヤハーネスの弛み吸収がスムーズ且つ確実に行われる。各ばねに作用する曲げ応力も安定し、過大な曲げ応力がかかりにくくなる。これにより、長いばねの寿命(耐久性)が向上する。
【0016】
請求項4に係る給電装置は、請求項2又は3記載の給電装置において、前記長いばねと短いばねとを含む複数の長さ違いのばねを備えることを特徴とする。
複数の長さ違いのばねが重ね板ばねの原理で長さの範囲のどの部位においても曲げ応力や曲率が等しくなる。それにより、ワイヤハーネスの弛み吸収がスムーズ且つ確実に行われる。各ばねに作用する曲げ応力も均一化され、ばねの一部に過大な曲げ応力が集中することがなくなる。これにより、ワイヤハーネスを支持する長いばねの耐久性が向上する。
【0017】
請求項5に係る給電装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の給電装置において、前記長いばねが前記ワイヤハーネスの湾曲頂部を越えて延長されたことを特徴とする。
上記構成により、ワイヤハーネスの余長が長くても長いばねでワイヤハーネスが弛み反対方向に高く(下方向に弛む場合)支持されて確実に弛みが吸収される。また、ワイヤハーネスが湾曲頂部から折れ曲がることが防止され、ワイヤハーネスの伸縮動作がスムーズに行われる。
【0018】
請求項6に係る給電装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載の給電装置において、前記各ばねの基端側を固定し、且つ前記ワイヤハーネスを湾曲状に収容するハーネスプロテクタを備えることを特徴とする。
上記構成により、ワイヤハーネスがハーネスプロテクタ内で外部との干渉等から保護される。また、プロテクタの側壁面に沿ってワイヤハーネスが安定に拡径ないし縮径して弛み吸収される。また、プロテクタの外周壁内面にワイヤハーネスが接してワイヤハーネスの付勢高さが規制される。各ばねやワイヤハーネスは予めプロテクタ内に組み込まれ、その組立体の状態で車両のスライドドア等に組み付けられる。
【0019】
請求項7に係るハーネス配索構造は、請求項1〜6の何れか1項に記載の給電装置が固定構造体又はスライド構造体に設けられ、該固定構造体から該給電装置を経て該スライド構造体にワイヤハーネスが配索されたことを特徴とする。
上記構成により、固定構造体からスライド構造体に常時給電が行われ、スライド構造体のスライド量が増し、ワイヤハーネスの余長が増加しても、スライド構造体のスライド開閉に伴うワイヤハーネスの弛み(余長)が上記二つないしそれ以上の複数の長さ違いのばねで確実に吸収される。また、長いばねの板厚を増す必要がないから、スライド構造体のスライド操作性が悪化することがない。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明に係る給電装置及びハーネス配索構造の一実施形態をスライドドア(スライド構造体)の全閉から全開に至るまで順に示すものである。
【0021】
この給電装置1は、従来の技術で説明したのと同様な合成樹脂製のハーネスプロテクタ2と、プロテクタ2内に装着された上下二枚重ねの長さ違いの板ばね(ばね又は弾性部材)3,4とを備えるものである。
【0022】
図1の如く、ワイヤハーネス5の余長の増大に対応してプロテクタ2は従来よりも少し横長に形成されている。プロテクタ2の後半側の周壁6の高さを前半側と同様に高く設定することも可能である。この場合、プロテクタ2は略台形に近い形状となる。プロテクタ2の構成については従来とほぼ同様であるので説明を省略する。ワイヤハーネス5の一方は前端側の開口11からスライドドア側に導出され、ワイヤハーネス5の他方は下端側の横長(長形)の開口12から車両ボディ側に導出されている。
【0023】
板ばねは上側のもの3が長く、下側のもの4が短く設定されている。上側の板ばね(長尺ばね)3は余長の増大に対応して従来のものよりも長く形成され、板ばね3の先端3aがプロテクタ2の周壁6の頂部6aすなわちワイヤハーネスの湾曲頂部5aよりも後方まで延びている。下側の板ばね(短尺ばね)4の先端4aはプロテクタ2の頂部6aすなわちワイヤハーネスの湾曲頂部5aよりも前方に位置している。本形態の下側の板ばね4の長さは上側の板ばね3の長さの半分程度に設定されている。
【0024】
各板ばね3,4の厚さは同じであり、各板ばね3,4は全長に渡って均一な厚さを有している。従来の板ばねの厚さともほぼ同じであり、上下の板ばね3,4の重なった部分の厚さは従来の板ばねの厚さのほぼ二倍である。各板ばね3,4の長さや厚さはワイヤハーネス5の長さや重さに応じて適宜設定される。各板ばね3,4の幅はプロテクタ2の内幅よりも少し狭く設定されることは言うまでもない。各板ばね3,4は長方形ないし矩形帯状を呈している。
【0025】
各板ばね3,4は基端側をプロテクタ2に固定されている。各ばね3,4の先端側は自由端となっている。各板ばね3,4の基端部7は例えばプロテクタ2の垂直な基板部8に突設した突部間のスリット状の溝部(図示せず)に挿入してボルト等で締め付けることで固定される。上側の長い板ばね3の先端部にハーネス支持用の湾曲凹部を有する合成樹脂製のキャップ(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
上側の板ばね3はワイヤハーネス5を支持し、下側の板ばね4は上側の板ばね3とワイヤハーネス5との両方を同時に支持する。明細書における「上側」や「下側」はあくまでもプロテクタ2を垂直に配置した場合の呼び名であり、例えばプロテクタ2を水平に配置した場合は「上側」が「外側」に、「下側」が「内側」となる。これはプロテクタ3を垂直に配置した場合にも当てはまる。
【0027】
図1はスライドドア(図示せず)の全閉時における給電装置1の状態を示し、プロテクタ2内でワイヤハーネス5は二枚の板ばね3,4で上向きに付勢されつつ車両ボディ(固定構造体)側のハーネス固定部9を支点に後方に引っ張られて大きな半径で湾曲している。プロテクタ2内のワイヤハーネス5の状態は従来と同様である。ハーネス固定部5としては例えばワイヤハーネス外周のコルゲートチューブを周方向回動自在で長手方向不動に支持するものが挙げられる。
【0028】
図2はスライドドアを後方に少しスライドさせて開けた(プロテクタ2はスライドドアと一体に移動する)半開時の状態を示し、プロテクタ内でワイヤハーネス5は上側の板ばね3で弛みなく支持され、上側の板ばね3はその基部側(全長のほぼ半分の部分)を下側の板ばね4で支持されて補強されている。
【0029】
上側の板ばね3の基部側が下側の板ばね4で支持されることで、長い上側の板ばね3が基部(付け根)側から撓むことが防止され、さらに下側の板ばね4の先端4aを支点として上側の板ばね3の突出した部分(上側の板ばねの全長から下側の板ばねの全長を引いた長さの短い部分)3bが一枚ばねとしてワイヤハーネス5の重さで下向きに撓むから、その撓み量が小さく抑えられ、それ故に従来であれば鎖線Wの如く大きく弛んだワイヤハーネスが実線5の如く高く持ち上げられて軌跡を矯正され、プロテクタ2内にほぼ完全に収容された状態に保持されて、半開時におけるワイヤハーネス5の弛みが確実に吸収され、ワイヤハーネス5の垂れ下がりが防止される。
【0030】
図3はスライドドアをさらに開けた状態を示し、プロテクタ2内でワイヤハーネス5は図2の状態を保持されつつ、ハーネス固定部9が前方に相対移動する(実際にはプロテクタ2が後退する)ことで、符号5bの如く前向きに屈曲する。上側の板ばね3は下側の板ばね4の矢印A方向の付勢力でワイヤハーネス5と共に矢印Bの如く持ち上げられ、ワイヤハーネス5は上側の板ばね3の軌跡(屈曲形状)に沿ってプロテクタ2内に収容されて、確実に弛み吸収される。
【0031】
図3の状態からスライドドアをさらに開けるに従って、プロテクタ2内でワイヤハーネス5は二枚の板ばね3,4で弛みなく上向きに付勢されつつ、前方に引っ張られる。
【0032】
図4はスライドドアの全開状態を示し、従来と同様にハーネス固定部9を支点に前方に引っ張られつつ小径に屈曲する。符号10は環状の屈曲規制壁を示す。特に図3〜図4にかけてワイヤハーネス5は縮径しつつ上側の板ばね3の突出部分3bのみによって比較的小さな力で付勢されるから、大きなストレスがワイヤハーネス5に加わらず、ワイヤハーネス5の傷みや摩耗や塑性変形が防止される。
【0033】
図4の全開状態から図1の全閉状態にかけての作用は上記全閉から全開にかけての作用とは逆に行われ、上記同様に二枚の長さ違いの板ばね3,4によってワイヤハーネス5の弛みが確実に吸収され、且つワイヤハーネス5にかかるストレスが小さく抑えられる。
【0034】
ワイヤハーネス5はプロテクタ2内で長い上側の板ばね3に沿って配索され、ワイヤハーネス5の一方はスライドドア側に配索されて、スライドドア内の補機やワイヤハーネスに接続され、ワイヤハーネス5の他方はスライドドアから渡り部(空間)を経て車両ボディに配索されて車両ボディ側のワイヤハーネスにコネクタ接続されている。スライドドアの開閉に伴ってワイヤハーネス5は渡り部において前後(車両長手方向ないしスライドドア開閉方向)に揺動する。
【0035】
なお、上記実施形態においては長さ違いの二枚3,4の板ばねを用いたが、同じ長さの板ばねを二枚ないしそれ以上の枚数で用いることも可能である。また、上記実施形態では二枚の長さ違いの板ばね3,4を用いたが、三枚ないしそれ以上の枚数の長さ違いの板ばねを用いることも可能である。三枚の場合、上側の板ばね3は長く、中間の板ばね(図示せず)は中間の長さで、下側の板ばね(図示せず)は短く形成される。少なくとも三枚の板ばねによれば、重ね板ばねの原理で平面視二等辺三角形の一枚の板ばねと等価となり、板ばね長さ方向のどの断面においても曲げ応力は同じ値となり、曲率もいたる所一定となる。二枚の板ばね3,4の場合もこれに近い作用が得られる。板ばね3,4の材料は金属に限らずグラスファイバ等も使用可能である。
【0036】
また、板ばね3,4に代えて弾性部材として、棒状のばねや断面矩形以外のばね(図示せず)を使用することも可能である。この場合も長さは外側のばねが長く、内側のばねが短い。上側に短いばね、下側に長いばねを配置した場合には、下側の長いばねが上側の短いばねとは別個に単独で下向きに撓むから効果は半減する。上側の長いばねと下側の短いばねとを一体に形成した場合には、上記した重ね板ばねの効果は得られないが、ばねが付け根側から大きく撓むことがなくなり、余長吸収性は向上する。但し、各ばね間の滑りが起こらないから、スムーズな屈曲性を得ることは難しい。
【0037】
また、上記した給電装置1やハーネス配索構造はスライドドア以外にもスライド構造体のスライド動作に応じてワイヤハーネス5を前後ないし上下に揺動させつつ複数本のばねで収容方向に付勢して弛みを吸収させる部位に適用可能である。この場合、ワイヤハーネス5を収容するプロテクタ2は必ずしも必要ではなく、ワイヤハーネス5と外部との干渉の危険のない部位ではワイヤハーネス5を露出させた状態で複数本のばね3,4で弛み反対方向に付勢することも可能である。
【0038】
また、スライドドアではなく車両ボディに上記給電装置1を垂直又は水平に配置することも可能である。この場合、プロテクタ2の横長の開口12からワイヤハーネス5の一方がスライドドア側に配索され、プロテクタ2の狭い開口11からワイヤハーネス5の他方が車両ボディ側に配索される。
【0039】
【発明の効果】
以上の如く、請求項1記載の発明によれば、二つのばねが単にばねの板厚を増した場合とは異なる良好なばね特性を発揮するから、ワイヤハーネスの余長の増大に対応して、スライドドア等のスライド構造体の操作性を悪化させたり、ワイヤハーネスを傷めたり変形させたり、プロテクタを肥大化させたりすることなく、余長をスムーズ且つ確実に吸収することができ、これによりスライド構造体への給電の信頼性が高まる。
【0040】
請求項2記載の発明によれば、短いばねによって長いばねの基部側が補強され、且つ短いばねの先端から突出した長いばねの突出部分の撓み剛性が高まるから、スライドドア等(スライド構造体)のスライド量の増加でワイヤハーネスの余長が増大した場合でも、余長が確実に吸収され、例えばスライドドアと車両ボディ(固定構造体)との間へのワイヤハーネスの挟み込み等が防止され、スライド構造体への給電の信頼性が向上する。また、長いばねが補強されることで、長いばねの屈曲耐久性が向上し、それによっても給電の信頼性が高まる。また、長いばねの板厚を増さずにワイヤハーネスの余長の増大に対処できるから、ワイヤハーネスに過大な押圧力が作用せず、ワイヤハーネスの摩耗や傷みや変形等が防止されると共に、スライド構造体のスライド操作力が増大せず、開閉操作性が高まる。
【0041】
請求項3記載の発明によれば、重ね板ばねの原理で長いばねの先端側半部と基端側半部とで曲げ応力や曲率がほぼ等しくなるから、ワイヤハーネスの弛み吸収がスムーズ且つ確実に行われ、且つ各ばねに作用する曲げ応力も安定し、長いばねの耐久性が一層向上して、給電の信頼性がさらに高まる。
【0042】
請求項4記載の発明によれば、重ね板ばねの原理でワイヤハーネスの弛み吸収が一層スムーズ且つ確実に行われると共に、各ばねに作用する曲げ応力も均一化されて、ばねの耐久性が向上するから、給電の信頼性が一層高まる。
【0043】
請求項5記載の発明によれば、ワイヤハーネスの余長吸収性が高まると共に、ワイヤハーネスの折れ曲がりが防止され、ワイヤハーネスの伸縮動作がスムーズ化して、給電の信頼性が一層向上する。
【0044】
請求項6記載の発明によれば、プロテクタと各ばねとワイヤハーネスとの組立体の状態で車両のスライドドア等(スライド構造体)に容易に組み付けることができ、組付作業性が向上する。
【0045】
請求項7記載の発明によれば、スライド構造体のスライド量が増し、ワイヤハーネスの余長が増加しても、スライド構造体のスライド開閉に伴うワイヤハーネスの弛み(余長)が二つないしそれ以上の複数の長さ違いのばねで確実に吸収されるから、スライド構造体と固定構造体との間へのワイヤハーネスの挟み込みが防止され、スライド構造体への給電の信頼性が向上する。また、長いばねの板厚を増さずにワイヤハーネスの余長の増大に対処できるから、ワイヤハーネスに過大な押圧力が作用せず、ワイヤハーネスの摩耗や傷みや変形等が防止されると共に、スライド構造体のスライド操作力が増大せず、開閉操作性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る給電装置及びハーネス配索構造の一実施形態をスライドドア全閉時の状態で示す正面図である。
【図2】同じくスライドドア半開時の状態を示す正面図である。
【図3】同じくスライドドアをさらに開けた状態を示す正面図である。
【図4】同じくスライドドア全開時の状態を示す正面図である。
【図5】従来の給電装置及びハーネス配索構造をスライドドア全閉時の状態で示す斜視図である。
【図6】同じくスライドドア全開近くでの状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 給電装置
2 ハーネスプロテクタ
3 長い板ばね
4 短い板ばね
5 ワイヤハーネス
5a 湾曲頂部
Claims (7)
- ワイヤハーネスを弛み反対方向に付勢する二つの重ねられたばねを少なくとも備えることを特徴とする給電装置。
- 前記二つのばねが、ワイヤハーネスを弛み反対方向に付勢する長いばねと、該長いばねの基部側を該ワイヤハーネスと共に該弛み反対方向に付勢する短いばねとで構成されることを特徴とする請求項1記載の給電装置。
- 前記短いばねが前記長いばねの半分程度の長さであることを特徴とする請求項2記載の給電装置。
- 前記長いばねと短いばねとを含む複数の長さ違いのばねを備えることを特徴とする請求項2又は3記載の給電装置。
- 前記長いばねが前記ワイヤハーネスの湾曲頂部を越えて延長されたことを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の給電装置。
- 前記各ばねの基端側を固定し、且つ前記ワイヤハーネスを湾曲状に収容するハーネスプロテクタを備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の給電装置。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載の給電装置1が固定構造体又はスライド構造体に設けられ、該固定構造体から該給電装置を経て該スライド構造体にワイヤハーネスが配索されたことを特徴とするハーネス配索構造。
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