JP2004124236A - 高炭素鋼線材 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイス寿命を延長することができる高炭素鋼線材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Al:0.001%を超えて0.050%まで、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下を含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.025%以下、Sは0.025%以下で、更に、線材1g当たりについて、200〜600J/秒のエネルギー供給速度及び10〜25秒の照射時間で5000J以上の供給エネルギーとする条件で電子ビーム溶解して凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物の面積値が、線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までである高炭素鋼線材。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Al:0.001%を超えて0.050%まで、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下を含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.025%以下、Sは0.025%以下で、更に、線材1g当たりについて、200〜600J/秒のエネルギー供給速度及び10〜25秒の照射時間で5000J以上の供給エネルギーとする条件で電子ビーム溶解して凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物の面積値が、線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までである高炭素鋼線材。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炭素鋼線材に関し、より詳しくは、伸線加工におけるダイス寿命の延長に寄与する高炭素鋼線材、なかでも、橋梁用ロープ、ホースワイヤー、自動車のラジアルタイアの補強材として用いられるビードワイヤーの用途に好適な伸線加工時にダイス寿命の延長に寄与する高炭素鋼線材に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延して製造された高炭素鋼線材の大半は、数個から数十個のダイスを用いた伸線加工によって半製品である鋼線に加工されて各種最終製品用に振り向けられる。このため、高炭素鋼線材を素材とする最終製品の生産コストに占めるダイス費用の割合は高く、ダイス寿命の延長によってコストを低減したいという産業界からの要望が大きい。
【0003】
ダイス寿命は、例えば、特許文献1に開示されているような特定の伸線加工方法の採用や、特許文献2に開示されているような特定の伸線加工用潤滑剤を用いることによって延長させることができる。しかし、上記いずれの特許文献で提案された技術の実施にも伸線加工設備の改良が必要である。このため、加工設備の改良費用が発生するし、場合によっては、設備レイアウトの面から加工設備の改良が実施できないこともある。
【0004】
このため、伸線加工設備の改良を行うことなくダイス寿命の延長が可能な技術が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−57531号公報
【特許文献2】
特開平11−241086号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、高炭素鋼線材そのものの内質(内部性状)を変えることによって、伸線加工設備の改良を行うことなくダイス寿命の延長を可能とする高炭素鋼線材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(4)に示す高炭素鋼線材にある。
【0008】
(1)質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Al:0.001%を超えて0.050%まで、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下を含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.025%以下、Sは0.025%以下で、更に、その線材1g当たりについて、200〜600J/秒のエネルギー供給速度及び10〜25秒の照射時間で5000J以上の供給エネルギーとする条件で電子ビーム溶解して凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物の面積値が、線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までである高炭素鋼線材。
【0009】
(2)Tiの含有量が0.0005〜0.1%である上記(1)に記載の高炭素鋼線材。
【0010】
(3)Bの含有量が0.0005〜0.01%である上記(1)に記載の高炭素鋼線材。
【0011】
(4)Tiの含有量が0.0005〜0.1%、且つ、Bの含有量が0.0005〜0.01%である上記(1)に記載の高炭素鋼線材。
【0012】
ここで、電子ビーム(EB)による溶解は、真空雰囲気下で試料にEBを照射して行うものとする。
【0013】
なお、凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物(以下、単に介在物ともいう)の面積値は、例えば、走査電子顕微鏡で介在物の反射電子像を観察し、この反射電子像を画像処理装置に取り込み画像解析することによって測定すれば良い。
【0014】
以下、上記(1)〜(4)の高炭素鋼線材に係る発明をそれぞれ(1)〜(4)の発明という。
【0015】
高炭素鋼線材の材質的特徴としての鋼の内質(内部性状)面からは、従来、加工性を阻害する鋼中の介在物を低減した高清浄度鋼を素材とすることで伸線加工性を向上させ、それによってダイス寿命を延長することが行われてきた。すなわち、従来は、アルミナ、スピネルやその複合物などの高融点系の介在物は、伸線加工性を著しく低下させてダイス寿命を短くしてしまうと考えられており、このため上記の介在物を極力低減する製造工程を採用した鋼が用いられてきた。
【0016】
例えば、本願発明者も、特許文献3で、通常のSi脱酸に加えて、高融点介在物の生成を防止するためにAl含有量の極めて少ない合金鉄を使用し、フラックスによる低融点系介在物の組成制御を行って溶製することによって高清浄度鋼を得、この鋼を橋梁用ロープ、ホースワイヤー、ビードワイヤー、スチールコード、バルブスプリングなどの素材として利用する技術を提案した。
【0017】
すなわち、上記のようにして溶製した鋼は、その鋼を加工した鋼材を試料として特定の条件の下で電子ビームを用いて溶解し凝固させた場合、具体的には、上記試料1g当たりについて、200〜600J/秒のエネルギー供給速度及び10〜25秒の照射時間で5000J以上の供給エネルギーとする条件で電子ビーム溶解して凝固させた場合、凝固後の試料表面に存在するアルミナ、スピネルやその複合物など高融点介在物の面積値を、試料1g当たりについて15000μm2 以下にでき、伸線加工性などの冷間加工性と耐疲労特性をともに優れたものとすることが可能で、しかも安定して確保できる。このため、上記2つの特性を両立させることが要求される橋梁用ロープ、ホースワイヤー、ビードワイヤー、スチールコード、バルブスプリングなどの素材として前記の高清浄度鋼を利用することを提案した。以下の説明において、電子ビームをEB、電子ビーム溶解をEB溶解ということがある。なお、1〜3g程度の鋼材試料にEBを照射することによって短時間にその試料を溶解して介在物を試料表面に浮上させ、凝固後の試料表面に存在する介在物を評価(検査)する方法はEB法として確立された技術である。
【0018】
ところで、伸線加工後の線径が0.9〜3.5mmであるホースワイヤーやビードワイヤーは、線径が0.2〜0.3mmの極細線にまで大きな加工度で伸線加工されるスチールコードに比べて、伸線加工性や耐疲労特性の要求度合いが低くなる。
【0019】
本質的には、伸線加工性やその結果としてダイス寿命の向上を期待されることは必須である用途に相違ないものの、ホースワイヤーやビードワイヤーのように伸線加工性の要求度合いが若干低いものに対しては、ダイス寿命をより向上させる積極的な対策を採用することができる。
【0020】
本願発明者らのその後の検討により、従来は僅かでも存在すれば伸線加工性を著しく低下させてダイス寿命を短くしてしまうと考えられていたアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点系の介在物が鋼中に特定の量だけ存在すれば、却ってダイス寿命の延長に効果があることが判明した。
【0021】
したがって、伸線加工性や耐疲労特性の要求度合いが若干低いホースワイヤーやビードワイヤーに対しては、ダイス寿命の延長に効果があるアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点系の介在物が鋼中に特定の量だけ存在する鋼を素材とした高炭素鋼線材を利用することができる。
【0022】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0023】
【特許文献3】
特開2000−80443号公報
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、ダイス寿命の延長に効果があるアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点介在物を評価するため、EB溶解時のエネルギー供給速度及び照射時間を種々変えて介在物面積、介在物の鋼材試料表面への浮上の状況(つまり、凝固させた後の鋼材試料表面に存在する介在物の状況)、低融点介在物の分解の状況について検討した。その結果の一例を図1、図2に示す。
【0025】
図1は、Si脱酸後に微量のAlを添加して溶製した表1に示す化学組成(とりべ分析値)を有する鋼を鋼塊としたものに、通常の方法で分塊圧延、鍛造を施して直径30mmの鋼材とし、この鋼材のR/2部(Rは鋼材の半径)から直径5.5mmで長さが5mmの試料を切り出し、試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度及び照射時間をそれぞれ150〜800J/秒、5〜30秒の範囲で種々変えて試料表面に浮上した介在物の面積、換言すれば、凝固させた後の試料表面に存在する介在物の面積を測定した結果である。なお、上記においてEB溶解は、水冷されている銅製のハース上に置いた試料に1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下でEBを照射して行った。
【0026】
【表1】
【0027】
図2は、上記において照射時間を15秒とした場合の介在物の組成と試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度との関係を示したものである。この場合もEB溶解は、水冷されているCu(銅)製の器に入れた試料に1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下でEB照射して行った。
【0028】
図2にはCa−Al−Si系の酸化物が示されているが、このうちCaは精錬時に添加するフラックスや耐火材から混入するものであり、Siは主に脱酸剤として添加するSiが残存するものである。又、AlはSi脱酸後に添加した微量のAlが残存するものである。なお、図2中の領域「I」は、製品から切り出して研磨した試料を用いてEPMAで定量した場合の組成である。介在物組成が領域「I」にある試料をEB溶解した場合、凝固後の試料表面に存在する介在物の組成は、試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度によって領域「II」、領域「III」及び領域「IV」にわかれる。ここで、領域「II」、領域「III及び領域「IV」はそれぞれ試料1g当たりについて150〜400J/秒、400超〜500J/秒、500超〜800J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成を示している。なお、図2における介在物CaO、Al2O3及びSiO2 の融点はそれぞれ2572℃、2050℃、1702℃である。
【0029】
図1及び図2から下記の事項が明らかになった。
(i )試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度が200J/秒未満の場合には、EBの照射時間を長くしてもエネルギーが不足するので試料は完全には溶解せず、介在物はその一部が浮上するだけである。すなわち、試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度が200J/秒未満では試料中の介在物は完全には浮上しない。
(ii)どの照射時間においても、浮上した介在物の面積値は、あるエネルギー供給速度をピークとして漸次減少する傾向が認められ、このピーク値は試料1g当たりの供給エネルギーがほぼ5000JとなるEB照射条件に対応する。
(iii )試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度、つまり供給エネルギーが大きくなる程、浮上し凝固後の試料表面に存在する介在物の組成は高融点側にシフトする。これは試料中の介在物が一旦表面に完全に浮上した後(ピーク位置)、電子ビームによって鋼中のCによる還元反応が促進され、低融点の酸化物系介在物が順次還元、分解されていくためである。
(iv)上記(i)〜(iii)から、試料が完全に溶解するエネルギー供給速度範囲、つまり鋼材試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度が200J/秒以上の範囲では、照射時間によってエネルギー供給速度は異なるものの、試料1g当たりの供給エネルギーがほぼ5000Jで浮上して凝固後の試料表面に存在する介在物の面積が最大となり(以下、浮上して凝固後の試料表面に存在する介在物の面積が最大となるところを「ピーク位置」という)、このピーク位置を境に介在物浮上状態は下記の(a)〜(c)に分類できることがわかる。
【0030】
つまり、(a)ピーク位置に至るまでの介在物が完全に浮上しきっていない状態、(b)ピーク位置である試料中の介在物が完全に浮上した状態、(c)ピーク位置を超え浮上した酸化物系介在物が低融点のものから順次還元、分解されていき、高融点介在物が残った状態、に分類できる。
【0031】
更に、本発明者らの検討の結果、鋼材試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度には上限を設ける必要があることが判明した。これは、エネルギー供給速度が大きくなりすぎると、溶解の初期段階で溶け始めた試料の一部に飛散(スプラッシュ)が生ずるためである。試料の溶解中に飛散が起こると、(v )試料中に含まれる介在物も飛散してしまう、(vi)溶解した部分の流動が激しくなって一旦表面に浮上した介在物が流動により試料内部に巻き込まれてしまう、といった問題が生じるため適切な情報が得られなくなる。したがって、上記した飛散を抑えることが重要となる。
【0032】
表2に、鋼材試料1g当たりのEB溶解時の照射時間(t)を5〜25秒とした場合のエネルギー供給速度(Ev)と飛散率(飛散が認められた試料数/溶解した全試料数)の関係を示す。この場合もEB溶解は、水冷されている銅製のハース上に置いた試料に1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下でEBを照射して行った。
【0033】
【表2】
【0034】
この表2から、飛散はエネルギー供給速度が600J/秒を超えると顕著に現れ、飛散率で50%を超えてしまうことがわかった。
【0035】
以上の知見から、ダイス寿命の延長に効果があるアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点介在物を評価しようとする本発明においては、EB溶解試料としての線材1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度を200〜600J/秒とした。
【0036】
高融点介在物を効率的に精度良く評価するためには、少なくとも既に述べた浮上介在物の面積におけるピーク値に対応するエネルギーを供給することが必要である。したがって、本発明においては、EB溶解試料である線材1g当たりの供給エネルギーを5000J以上とした。なお、この供給エネルギーの上限値は特に規定する必要はなく、エネルギー供給速度が600J/秒、照射時間が25秒の場合の15000Jであっても良い。
【0037】
EB溶解試料としての線材1g当たりのEB照射時間が10秒未満の場合には、所望の5000Jの供給エネルギーを付与するのために高いエネルギー供給速度が必要となって溶解の初期段階で溶け始めた試料の一部に飛散が生じてしまう。一方、試料としての1g当たりのEB照射時間が25秒を超えると供給エネルギーが大きくなりすぎて、高融点介在物が還元、分解され始めるようになるので適切な情報が得られなくなる。したがって、本発明においては、EB溶解試料としての線材1g当たりのEB照射時間を10〜25秒とした。
【0038】
なお既に述べたように、本発明におけるEBによる溶解は、真空雰囲気下で試料にEBを照射して行うものであり、例えば、水冷されている銅製のハース上に置いた試料に真空雰囲気下(例えば、1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下)でEBを照射して行えば良い。
次いで、本発明者らは、種々の化学組成を有する鋼材を前記本発明に係る条件の下、1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気中でEB溶解し、凝固させた後の試料表面に存在する介在物の面積値とダイス寿命との関係を調査した。その結果、介在物の面積値が鋼材試料1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までの場合に、後述の実施例でその一例を示すように、介在物が一種の潤滑剤となって良好なダイス寿命が得られることがわかった。このため、本発明においては、本発明に係る条件の下でEB溶解し、凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物の面積値を、線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までと規定した。
【0039】
なお、本発明に係る条件の下でEB溶解し、凝固させた後の試料表面に存在するアルミナ、スピネルやその複合物など高融点介在物の面積値を、EB溶解試料としての線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までとするには、例えば、次に述べる化学組成に調整して通常のSi脱酸を行った後、微量のAl(例えば、溶鋼70トン当たり3kg程度)添加して鋼を溶製し、高融点介在物の生成量を調整すればよい。
【0040】
以下、本発明における成分元素の限定理由について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
【0041】
C:0.60〜1.10%
Cは、高強度化に有効な元素であり、高炭素鋼線材を素材とする製品に求められる強度を確保するために0.60%以上含有させる。しかし、その含有量が多すぎると鋼材が硬質化して冷間加工性が低下する。特に、C含有量が1.1%を超えると、鋼材が硬質化するばかりでなく、旧オーステナイト粒界へのセメンタイトの析出が多くなって冷間加工性の低下が著しくなる。したがって、Cの含有量を0.60〜1.10%とした。
【0042】
Si:0.1〜1.5%
Siは、脱酸作用を有するとともに素地の強化にも有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満では添加効果に乏しく、一方、1.5%を超えると部分的に脱炭層が生成して組織が不均一となり、伸線加工性を阻害する。したがって、Si含有量を0.1〜1.5%とした。
【0043】
Mn:0.2〜1.0%
Mnは、脱酸作用を有するとともに鋼中に固溶しているSをMnSとして固定して靱性の劣化を抑える作用を有する。しかし、その含有量が0.1%未満では前記の効果が得難く、一方、1.0%を超えるとマルテンサイトやベイナイトが生成して冷間加工性が著しく低下する。したがって、Mnの含有量を0.2〜1.0%とした。
【0044】
Cr:0.01〜2.0%
Crは、パーライトのラメラ間隔を小さくして強度を高める作用を有する。又、伸線加工を初めとする冷間加工時の加工硬化率を高める働きがあるので、Crの添加によって比較的低い加工率でも高強度を得ることができる。しかし、その含有量が0.01%未満では添加効果に乏しい。一方、Crを過剰に添加すると焼入れ性が高くなってマルテンサイトやベイナイトが生成して冷間加工性が低下する。特に、その含有量が2.0%を超えると多量のマルテンサイトやベイナイトが生成して冷間加工性の著しい低下をきたす。更に、鋼線を対象としたパテンティング処理が困難になるばかりか、2次スケールが緻密になり過ぎて、機械的な処理や酸洗処理によるデスケーリング性が劣化する。したがって、Crの含有量を0.01〜2.0%とした。
【0045】
Al:0.001%を超えて0.003%まで
アルミナ、スピネルやその複合物など高融点介在物を特定の量だけ生成させてダイス寿命を延長させるために、Alは0.001%を超えて含有させる必要がある。しかし、0.050%を超えて含有させると上記の高融点介在物量が過剰になり、橋梁用ロープ、ホースワイヤー、ビードワイヤーなどへの伸線加工に耐えきれない程度の大型介在物を生成するおそれがある。したがって、Alの含有量を0.001%を超えて0.050%までとした。
【0046】
Cu:1.0%以下
Cuは添加しなくても良い。添加すれば、強度を高める作用を有する。Cuには耐食性を高める作用もある。これらの効果を確実に得るには、Cuは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えると延性を損なう。したがって、Cuの含有量を1.0%以下とした。
【0047】
Ni:1.0%以下
Niは添加しなくても良い。添加すれば、強度を高める作用を有する。又、Niには、CやNによる時効硬化を遅らせて靱性と延性の低下を防ぐ作用や、絞りを高める作用もある。これらの効果を確実に得るには、Niは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えるとマルテンサイトやベイナイトが生成し易くなって冷間加工性が低下する。したがって、Niの含有量を1.0%以下とした。
【0048】
Mo:1.0%以下
Moは添加しなくても良い。添加すれば、強度を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Moは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えるとマルテンサイトやベイナイトが生成し易くなって冷間加工性が低下する。したがって、Moの含有量を1.0%以下とした。
【0049】
Ti:0.1%以下
Tiは添加しなくても良い。添加すれば、動的歪時効の原因となるNをTiNとして捕捉して冷間加工性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Tiは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.1%を超えるとTiO2 などの硬質の介在物が多量に生成し、却って冷間加工性が大きく低下する。したがって、Tiの含有量を0.1%以下とした。
【0050】
B:0.01%以下
Bは添加しなくても良い。添加すれば、パーライト中のセメンタイトの成長を促進させて、冷間加工性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Bは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.01%を超えると粒界に偏析して靱性や延性の低下をきたす。したがって、Bの含有量を0.01%以下とした。
【0051】
不純物元素としてのP及びSはその含有量を下記のとおりに規定する。
【0052】
P:0.025%以下
Pは偏析しやすい元素であり、靱性と延性を低下させてしまう。特にその含有量が0.025%を超えると靱性と延性の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのPの含有量を0.025%以下とした。
【0053】
S:0.025%以下
Sは偏析しやすい元素であり、靱性と延性を低下させてしまう。特にその含有量が0.025%を超えると靱性と延性の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのSの含有量を0.025%以下とした。
【0054】
前記(1)の発明に係る高炭素鋼線材は、前述のEB溶解した際の介在物規定を満たし、上記のCからSまでの元素と、残部がFe及び不純物の化学組成を有する鋼である。
【0055】
前記(2)の発明に係る高炭素鋼線材は、(1)の発明の高炭素鋼線材におけるTi含有量の下限値を0.0005%とした高炭素鋼線材である。
【0056】
前記(3)の発明に係る高炭素鋼線材は、(1)の発明の高炭素鋼線材におけるB含有量の下限値を0.0005%とした高炭素鋼線材である。
【0057】
前記(4)の発明に係る高炭素鋼線材は、(1)の発明の高炭素鋼線材におけるTi含有量の下限値を0.0005%とするとともにB含有量の下限値を0.0005%とした高炭素鋼線材である。
【0058】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0059】
【実施例】
表3に示す化学組成を有する各種の鋼を下記A〜Cの条件で処理して70トン試験溶製し鋼塊としたものに、通常の方法で分解圧延、線材圧延を施して直径5.5mmの線材を作製した。
【0060】
条件A:通常のSi脱酸に加えて、高融点介在物の生成を防止するためにAl含有量の極めて少ない合金鉄を使用し、フラックスによる低融点系介在物の組成制御を行って鋼を溶製。
【0061】
条件B:通常のSi脱酸を行った後、微量のAlを添加して鋼を溶製。
【0062】
条件C:Al脱酸を行って鋼を溶製。
【0063】
【表3】
【0064】
上記のようにして得た線材を、EB溶解試料とするために約1gずつに切断し、通常の方法で酸洗して表面に付着している圧延スケールを除去した。次いで、アルコール中で超音波洗浄を行い、乾燥させた後EB装置(日本電子製:JEBM−3IAI)に設置した。EB装置内を1.33×10−3〜1.33×10−4Paの高真空状態にしてから、本発明に係るEB溶解条件例として、エネルギー供給速度を420J/秒、照射時間を15秒として、水冷されている銅製のハース上に置いた試料を溶解し、浮上し凝固させた後の試料表面に存在する介在物を走査型電子顕微鏡にて観察し、得られた介在物の像の面積値を汎用の画像処理装置を用いて測定した。
【0065】
一方、上記のようにして得た直径5.5mmの各線材を通常の方法で直径1.4mmまで冷間伸線し、ダイス寿命指数と最終伸線後の鋼線の表面色調を調査した。
【0066】
ダイス寿命指数とは、伸線量100トン当たりの最終伸線ダイス交換数をいい、その値が小さいほどダイス寿命が長いことを示す。鋼線の表面色調は、色差計で測定した色差を0〜10の段階に区分して調査した。なお、上記の数値が大きいほど色調が明るいことを意味し、ダイス摩耗による金属光沢が発生してダイス寿命が短いことを示す。
【0067】
表4に、上記のようにして測定した試料表面に存在する介在物の面積値(EB溶解試料としての線材1g当たりについての値に換算)、ダイス寿命指数及び最終伸線後の鋼線の表面色調を前記溶製条件と併せて示す。なお、鋼11の線材は直径1.4mmに伸線加工する前に断線を生じた。このため、表4のダイス寿命指数及び最終伸線後の鋼線の表面色調の欄は「−」と表示した。
【0068】
【表4】
表4によれば、本発明に係る条件でEB溶解した場合に、介在物面積値が、EB溶解試料としての線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までであれば、ダイス寿命指数は小さくて鋼線の表面色調は暗く、したがって、安定して長いダイス寿命が得られることが明らかである
【0069】
【発明の効果】
本発明の高炭素鋼線材は、線材そのものの内質を変えたものであるので、ダイス寿命の延長を図るために伸線加工設備の改良を行う必要がない。この線材はダイス寿命に優れるので耐疲労特性が要求されることが少ない橋梁用ロープ、ホースワイヤー、自動車のラジアルタイアの補強材として用いられるビードワイヤーなどの用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】EB溶解時のエネルギー供給速度と照射時間が凝固後の試料表面に存在する介在物の面積値に与える影響を示す図である。
【図2】EB溶解条件と浮上する介在物の組成変化の関係を示した図である。
【符号の説明】
I:製品から切り出して研磨した試料をEPMAで定量した場合の組成、
II:試料1g当たりについて150〜400J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成、
III:試料1g当たりについて400超〜500J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成、
IV:試料1g当たりについて500超〜800J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炭素鋼線材に関し、より詳しくは、伸線加工におけるダイス寿命の延長に寄与する高炭素鋼線材、なかでも、橋梁用ロープ、ホースワイヤー、自動車のラジアルタイアの補強材として用いられるビードワイヤーの用途に好適な伸線加工時にダイス寿命の延長に寄与する高炭素鋼線材に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延して製造された高炭素鋼線材の大半は、数個から数十個のダイスを用いた伸線加工によって半製品である鋼線に加工されて各種最終製品用に振り向けられる。このため、高炭素鋼線材を素材とする最終製品の生産コストに占めるダイス費用の割合は高く、ダイス寿命の延長によってコストを低減したいという産業界からの要望が大きい。
【0003】
ダイス寿命は、例えば、特許文献1に開示されているような特定の伸線加工方法の採用や、特許文献2に開示されているような特定の伸線加工用潤滑剤を用いることによって延長させることができる。しかし、上記いずれの特許文献で提案された技術の実施にも伸線加工設備の改良が必要である。このため、加工設備の改良費用が発生するし、場合によっては、設備レイアウトの面から加工設備の改良が実施できないこともある。
【0004】
このため、伸線加工設備の改良を行うことなくダイス寿命の延長が可能な技術が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−57531号公報
【特許文献2】
特開平11−241086号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、高炭素鋼線材そのものの内質(内部性状)を変えることによって、伸線加工設備の改良を行うことなくダイス寿命の延長を可能とする高炭素鋼線材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(4)に示す高炭素鋼線材にある。
【0008】
(1)質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Al:0.001%を超えて0.050%まで、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下を含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.025%以下、Sは0.025%以下で、更に、その線材1g当たりについて、200〜600J/秒のエネルギー供給速度及び10〜25秒の照射時間で5000J以上の供給エネルギーとする条件で電子ビーム溶解して凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物の面積値が、線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までである高炭素鋼線材。
【0009】
(2)Tiの含有量が0.0005〜0.1%である上記(1)に記載の高炭素鋼線材。
【0010】
(3)Bの含有量が0.0005〜0.01%である上記(1)に記載の高炭素鋼線材。
【0011】
(4)Tiの含有量が0.0005〜0.1%、且つ、Bの含有量が0.0005〜0.01%である上記(1)に記載の高炭素鋼線材。
【0012】
ここで、電子ビーム(EB)による溶解は、真空雰囲気下で試料にEBを照射して行うものとする。
【0013】
なお、凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物(以下、単に介在物ともいう)の面積値は、例えば、走査電子顕微鏡で介在物の反射電子像を観察し、この反射電子像を画像処理装置に取り込み画像解析することによって測定すれば良い。
【0014】
以下、上記(1)〜(4)の高炭素鋼線材に係る発明をそれぞれ(1)〜(4)の発明という。
【0015】
高炭素鋼線材の材質的特徴としての鋼の内質(内部性状)面からは、従来、加工性を阻害する鋼中の介在物を低減した高清浄度鋼を素材とすることで伸線加工性を向上させ、それによってダイス寿命を延長することが行われてきた。すなわち、従来は、アルミナ、スピネルやその複合物などの高融点系の介在物は、伸線加工性を著しく低下させてダイス寿命を短くしてしまうと考えられており、このため上記の介在物を極力低減する製造工程を採用した鋼が用いられてきた。
【0016】
例えば、本願発明者も、特許文献3で、通常のSi脱酸に加えて、高融点介在物の生成を防止するためにAl含有量の極めて少ない合金鉄を使用し、フラックスによる低融点系介在物の組成制御を行って溶製することによって高清浄度鋼を得、この鋼を橋梁用ロープ、ホースワイヤー、ビードワイヤー、スチールコード、バルブスプリングなどの素材として利用する技術を提案した。
【0017】
すなわち、上記のようにして溶製した鋼は、その鋼を加工した鋼材を試料として特定の条件の下で電子ビームを用いて溶解し凝固させた場合、具体的には、上記試料1g当たりについて、200〜600J/秒のエネルギー供給速度及び10〜25秒の照射時間で5000J以上の供給エネルギーとする条件で電子ビーム溶解して凝固させた場合、凝固後の試料表面に存在するアルミナ、スピネルやその複合物など高融点介在物の面積値を、試料1g当たりについて15000μm2 以下にでき、伸線加工性などの冷間加工性と耐疲労特性をともに優れたものとすることが可能で、しかも安定して確保できる。このため、上記2つの特性を両立させることが要求される橋梁用ロープ、ホースワイヤー、ビードワイヤー、スチールコード、バルブスプリングなどの素材として前記の高清浄度鋼を利用することを提案した。以下の説明において、電子ビームをEB、電子ビーム溶解をEB溶解ということがある。なお、1〜3g程度の鋼材試料にEBを照射することによって短時間にその試料を溶解して介在物を試料表面に浮上させ、凝固後の試料表面に存在する介在物を評価(検査)する方法はEB法として確立された技術である。
【0018】
ところで、伸線加工後の線径が0.9〜3.5mmであるホースワイヤーやビードワイヤーは、線径が0.2〜0.3mmの極細線にまで大きな加工度で伸線加工されるスチールコードに比べて、伸線加工性や耐疲労特性の要求度合いが低くなる。
【0019】
本質的には、伸線加工性やその結果としてダイス寿命の向上を期待されることは必須である用途に相違ないものの、ホースワイヤーやビードワイヤーのように伸線加工性の要求度合いが若干低いものに対しては、ダイス寿命をより向上させる積極的な対策を採用することができる。
【0020】
本願発明者らのその後の検討により、従来は僅かでも存在すれば伸線加工性を著しく低下させてダイス寿命を短くしてしまうと考えられていたアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点系の介在物が鋼中に特定の量だけ存在すれば、却ってダイス寿命の延長に効果があることが判明した。
【0021】
したがって、伸線加工性や耐疲労特性の要求度合いが若干低いホースワイヤーやビードワイヤーに対しては、ダイス寿命の延長に効果があるアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点系の介在物が鋼中に特定の量だけ存在する鋼を素材とした高炭素鋼線材を利用することができる。
【0022】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0023】
【特許文献3】
特開2000−80443号公報
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、ダイス寿命の延長に効果があるアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点介在物を評価するため、EB溶解時のエネルギー供給速度及び照射時間を種々変えて介在物面積、介在物の鋼材試料表面への浮上の状況(つまり、凝固させた後の鋼材試料表面に存在する介在物の状況)、低融点介在物の分解の状況について検討した。その結果の一例を図1、図2に示す。
【0025】
図1は、Si脱酸後に微量のAlを添加して溶製した表1に示す化学組成(とりべ分析値)を有する鋼を鋼塊としたものに、通常の方法で分塊圧延、鍛造を施して直径30mmの鋼材とし、この鋼材のR/2部(Rは鋼材の半径)から直径5.5mmで長さが5mmの試料を切り出し、試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度及び照射時間をそれぞれ150〜800J/秒、5〜30秒の範囲で種々変えて試料表面に浮上した介在物の面積、換言すれば、凝固させた後の試料表面に存在する介在物の面積を測定した結果である。なお、上記においてEB溶解は、水冷されている銅製のハース上に置いた試料に1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下でEBを照射して行った。
【0026】
【表1】
【0027】
図2は、上記において照射時間を15秒とした場合の介在物の組成と試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度との関係を示したものである。この場合もEB溶解は、水冷されているCu(銅)製の器に入れた試料に1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下でEB照射して行った。
【0028】
図2にはCa−Al−Si系の酸化物が示されているが、このうちCaは精錬時に添加するフラックスや耐火材から混入するものであり、Siは主に脱酸剤として添加するSiが残存するものである。又、AlはSi脱酸後に添加した微量のAlが残存するものである。なお、図2中の領域「I」は、製品から切り出して研磨した試料を用いてEPMAで定量した場合の組成である。介在物組成が領域「I」にある試料をEB溶解した場合、凝固後の試料表面に存在する介在物の組成は、試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度によって領域「II」、領域「III」及び領域「IV」にわかれる。ここで、領域「II」、領域「III及び領域「IV」はそれぞれ試料1g当たりについて150〜400J/秒、400超〜500J/秒、500超〜800J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成を示している。なお、図2における介在物CaO、Al2O3及びSiO2 の融点はそれぞれ2572℃、2050℃、1702℃である。
【0029】
図1及び図2から下記の事項が明らかになった。
(i )試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度が200J/秒未満の場合には、EBの照射時間を長くしてもエネルギーが不足するので試料は完全には溶解せず、介在物はその一部が浮上するだけである。すなわち、試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度が200J/秒未満では試料中の介在物は完全には浮上しない。
(ii)どの照射時間においても、浮上した介在物の面積値は、あるエネルギー供給速度をピークとして漸次減少する傾向が認められ、このピーク値は試料1g当たりの供給エネルギーがほぼ5000JとなるEB照射条件に対応する。
(iii )試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度、つまり供給エネルギーが大きくなる程、浮上し凝固後の試料表面に存在する介在物の組成は高融点側にシフトする。これは試料中の介在物が一旦表面に完全に浮上した後(ピーク位置)、電子ビームによって鋼中のCによる還元反応が促進され、低融点の酸化物系介在物が順次還元、分解されていくためである。
(iv)上記(i)〜(iii)から、試料が完全に溶解するエネルギー供給速度範囲、つまり鋼材試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度が200J/秒以上の範囲では、照射時間によってエネルギー供給速度は異なるものの、試料1g当たりの供給エネルギーがほぼ5000Jで浮上して凝固後の試料表面に存在する介在物の面積が最大となり(以下、浮上して凝固後の試料表面に存在する介在物の面積が最大となるところを「ピーク位置」という)、このピーク位置を境に介在物浮上状態は下記の(a)〜(c)に分類できることがわかる。
【0030】
つまり、(a)ピーク位置に至るまでの介在物が完全に浮上しきっていない状態、(b)ピーク位置である試料中の介在物が完全に浮上した状態、(c)ピーク位置を超え浮上した酸化物系介在物が低融点のものから順次還元、分解されていき、高融点介在物が残った状態、に分類できる。
【0031】
更に、本発明者らの検討の結果、鋼材試料1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度には上限を設ける必要があることが判明した。これは、エネルギー供給速度が大きくなりすぎると、溶解の初期段階で溶け始めた試料の一部に飛散(スプラッシュ)が生ずるためである。試料の溶解中に飛散が起こると、(v )試料中に含まれる介在物も飛散してしまう、(vi)溶解した部分の流動が激しくなって一旦表面に浮上した介在物が流動により試料内部に巻き込まれてしまう、といった問題が生じるため適切な情報が得られなくなる。したがって、上記した飛散を抑えることが重要となる。
【0032】
表2に、鋼材試料1g当たりのEB溶解時の照射時間(t)を5〜25秒とした場合のエネルギー供給速度(Ev)と飛散率(飛散が認められた試料数/溶解した全試料数)の関係を示す。この場合もEB溶解は、水冷されている銅製のハース上に置いた試料に1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下でEBを照射して行った。
【0033】
【表2】
【0034】
この表2から、飛散はエネルギー供給速度が600J/秒を超えると顕著に現れ、飛散率で50%を超えてしまうことがわかった。
【0035】
以上の知見から、ダイス寿命の延長に効果があるアルミナ、スピネルやその複合物などの高融点介在物を評価しようとする本発明においては、EB溶解試料としての線材1g当たりのEB溶解時のエネルギー供給速度を200〜600J/秒とした。
【0036】
高融点介在物を効率的に精度良く評価するためには、少なくとも既に述べた浮上介在物の面積におけるピーク値に対応するエネルギーを供給することが必要である。したがって、本発明においては、EB溶解試料である線材1g当たりの供給エネルギーを5000J以上とした。なお、この供給エネルギーの上限値は特に規定する必要はなく、エネルギー供給速度が600J/秒、照射時間が25秒の場合の15000Jであっても良い。
【0037】
EB溶解試料としての線材1g当たりのEB照射時間が10秒未満の場合には、所望の5000Jの供給エネルギーを付与するのために高いエネルギー供給速度が必要となって溶解の初期段階で溶け始めた試料の一部に飛散が生じてしまう。一方、試料としての1g当たりのEB照射時間が25秒を超えると供給エネルギーが大きくなりすぎて、高融点介在物が還元、分解され始めるようになるので適切な情報が得られなくなる。したがって、本発明においては、EB溶解試料としての線材1g当たりのEB照射時間を10〜25秒とした。
【0038】
なお既に述べたように、本発明におけるEBによる溶解は、真空雰囲気下で試料にEBを照射して行うものであり、例えば、水冷されている銅製のハース上に置いた試料に真空雰囲気下(例えば、1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気下)でEBを照射して行えば良い。
次いで、本発明者らは、種々の化学組成を有する鋼材を前記本発明に係る条件の下、1.33×10−3〜1.33×10−4Pa程度の真空雰囲気中でEB溶解し、凝固させた後の試料表面に存在する介在物の面積値とダイス寿命との関係を調査した。その結果、介在物の面積値が鋼材試料1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までの場合に、後述の実施例でその一例を示すように、介在物が一種の潤滑剤となって良好なダイス寿命が得られることがわかった。このため、本発明においては、本発明に係る条件の下でEB溶解し、凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物の面積値を、線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までと規定した。
【0039】
なお、本発明に係る条件の下でEB溶解し、凝固させた後の試料表面に存在するアルミナ、スピネルやその複合物など高融点介在物の面積値を、EB溶解試料としての線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までとするには、例えば、次に述べる化学組成に調整して通常のSi脱酸を行った後、微量のAl(例えば、溶鋼70トン当たり3kg程度)添加して鋼を溶製し、高融点介在物の生成量を調整すればよい。
【0040】
以下、本発明における成分元素の限定理由について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
【0041】
C:0.60〜1.10%
Cは、高強度化に有効な元素であり、高炭素鋼線材を素材とする製品に求められる強度を確保するために0.60%以上含有させる。しかし、その含有量が多すぎると鋼材が硬質化して冷間加工性が低下する。特に、C含有量が1.1%を超えると、鋼材が硬質化するばかりでなく、旧オーステナイト粒界へのセメンタイトの析出が多くなって冷間加工性の低下が著しくなる。したがって、Cの含有量を0.60〜1.10%とした。
【0042】
Si:0.1〜1.5%
Siは、脱酸作用を有するとともに素地の強化にも有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満では添加効果に乏しく、一方、1.5%を超えると部分的に脱炭層が生成して組織が不均一となり、伸線加工性を阻害する。したがって、Si含有量を0.1〜1.5%とした。
【0043】
Mn:0.2〜1.0%
Mnは、脱酸作用を有するとともに鋼中に固溶しているSをMnSとして固定して靱性の劣化を抑える作用を有する。しかし、その含有量が0.1%未満では前記の効果が得難く、一方、1.0%を超えるとマルテンサイトやベイナイトが生成して冷間加工性が著しく低下する。したがって、Mnの含有量を0.2〜1.0%とした。
【0044】
Cr:0.01〜2.0%
Crは、パーライトのラメラ間隔を小さくして強度を高める作用を有する。又、伸線加工を初めとする冷間加工時の加工硬化率を高める働きがあるので、Crの添加によって比較的低い加工率でも高強度を得ることができる。しかし、その含有量が0.01%未満では添加効果に乏しい。一方、Crを過剰に添加すると焼入れ性が高くなってマルテンサイトやベイナイトが生成して冷間加工性が低下する。特に、その含有量が2.0%を超えると多量のマルテンサイトやベイナイトが生成して冷間加工性の著しい低下をきたす。更に、鋼線を対象としたパテンティング処理が困難になるばかりか、2次スケールが緻密になり過ぎて、機械的な処理や酸洗処理によるデスケーリング性が劣化する。したがって、Crの含有量を0.01〜2.0%とした。
【0045】
Al:0.001%を超えて0.003%まで
アルミナ、スピネルやその複合物など高融点介在物を特定の量だけ生成させてダイス寿命を延長させるために、Alは0.001%を超えて含有させる必要がある。しかし、0.050%を超えて含有させると上記の高融点介在物量が過剰になり、橋梁用ロープ、ホースワイヤー、ビードワイヤーなどへの伸線加工に耐えきれない程度の大型介在物を生成するおそれがある。したがって、Alの含有量を0.001%を超えて0.050%までとした。
【0046】
Cu:1.0%以下
Cuは添加しなくても良い。添加すれば、強度を高める作用を有する。Cuには耐食性を高める作用もある。これらの効果を確実に得るには、Cuは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えると延性を損なう。したがって、Cuの含有量を1.0%以下とした。
【0047】
Ni:1.0%以下
Niは添加しなくても良い。添加すれば、強度を高める作用を有する。又、Niには、CやNによる時効硬化を遅らせて靱性と延性の低下を防ぐ作用や、絞りを高める作用もある。これらの効果を確実に得るには、Niは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えるとマルテンサイトやベイナイトが生成し易くなって冷間加工性が低下する。したがって、Niの含有量を1.0%以下とした。
【0048】
Mo:1.0%以下
Moは添加しなくても良い。添加すれば、強度を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Moは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えるとマルテンサイトやベイナイトが生成し易くなって冷間加工性が低下する。したがって、Moの含有量を1.0%以下とした。
【0049】
Ti:0.1%以下
Tiは添加しなくても良い。添加すれば、動的歪時効の原因となるNをTiNとして捕捉して冷間加工性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Tiは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.1%を超えるとTiO2 などの硬質の介在物が多量に生成し、却って冷間加工性が大きく低下する。したがって、Tiの含有量を0.1%以下とした。
【0050】
B:0.01%以下
Bは添加しなくても良い。添加すれば、パーライト中のセメンタイトの成長を促進させて、冷間加工性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Bは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.01%を超えると粒界に偏析して靱性や延性の低下をきたす。したがって、Bの含有量を0.01%以下とした。
【0051】
不純物元素としてのP及びSはその含有量を下記のとおりに規定する。
【0052】
P:0.025%以下
Pは偏析しやすい元素であり、靱性と延性を低下させてしまう。特にその含有量が0.025%を超えると靱性と延性の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのPの含有量を0.025%以下とした。
【0053】
S:0.025%以下
Sは偏析しやすい元素であり、靱性と延性を低下させてしまう。特にその含有量が0.025%を超えると靱性と延性の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのSの含有量を0.025%以下とした。
【0054】
前記(1)の発明に係る高炭素鋼線材は、前述のEB溶解した際の介在物規定を満たし、上記のCからSまでの元素と、残部がFe及び不純物の化学組成を有する鋼である。
【0055】
前記(2)の発明に係る高炭素鋼線材は、(1)の発明の高炭素鋼線材におけるTi含有量の下限値を0.0005%とした高炭素鋼線材である。
【0056】
前記(3)の発明に係る高炭素鋼線材は、(1)の発明の高炭素鋼線材におけるB含有量の下限値を0.0005%とした高炭素鋼線材である。
【0057】
前記(4)の発明に係る高炭素鋼線材は、(1)の発明の高炭素鋼線材におけるTi含有量の下限値を0.0005%とするとともにB含有量の下限値を0.0005%とした高炭素鋼線材である。
【0058】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0059】
【実施例】
表3に示す化学組成を有する各種の鋼を下記A〜Cの条件で処理して70トン試験溶製し鋼塊としたものに、通常の方法で分解圧延、線材圧延を施して直径5.5mmの線材を作製した。
【0060】
条件A:通常のSi脱酸に加えて、高融点介在物の生成を防止するためにAl含有量の極めて少ない合金鉄を使用し、フラックスによる低融点系介在物の組成制御を行って鋼を溶製。
【0061】
条件B:通常のSi脱酸を行った後、微量のAlを添加して鋼を溶製。
【0062】
条件C:Al脱酸を行って鋼を溶製。
【0063】
【表3】
【0064】
上記のようにして得た線材を、EB溶解試料とするために約1gずつに切断し、通常の方法で酸洗して表面に付着している圧延スケールを除去した。次いで、アルコール中で超音波洗浄を行い、乾燥させた後EB装置(日本電子製:JEBM−3IAI)に設置した。EB装置内を1.33×10−3〜1.33×10−4Paの高真空状態にしてから、本発明に係るEB溶解条件例として、エネルギー供給速度を420J/秒、照射時間を15秒として、水冷されている銅製のハース上に置いた試料を溶解し、浮上し凝固させた後の試料表面に存在する介在物を走査型電子顕微鏡にて観察し、得られた介在物の像の面積値を汎用の画像処理装置を用いて測定した。
【0065】
一方、上記のようにして得た直径5.5mmの各線材を通常の方法で直径1.4mmまで冷間伸線し、ダイス寿命指数と最終伸線後の鋼線の表面色調を調査した。
【0066】
ダイス寿命指数とは、伸線量100トン当たりの最終伸線ダイス交換数をいい、その値が小さいほどダイス寿命が長いことを示す。鋼線の表面色調は、色差計で測定した色差を0〜10の段階に区分して調査した。なお、上記の数値が大きいほど色調が明るいことを意味し、ダイス摩耗による金属光沢が発生してダイス寿命が短いことを示す。
【0067】
表4に、上記のようにして測定した試料表面に存在する介在物の面積値(EB溶解試料としての線材1g当たりについての値に換算)、ダイス寿命指数及び最終伸線後の鋼線の表面色調を前記溶製条件と併せて示す。なお、鋼11の線材は直径1.4mmに伸線加工する前に断線を生じた。このため、表4のダイス寿命指数及び最終伸線後の鋼線の表面色調の欄は「−」と表示した。
【0068】
【表4】
表4によれば、本発明に係る条件でEB溶解した場合に、介在物面積値が、EB溶解試料としての線材1g当たりについて15000μm2 を超えて300000μm2 までであれば、ダイス寿命指数は小さくて鋼線の表面色調は暗く、したがって、安定して長いダイス寿命が得られることが明らかである
【0069】
【発明の効果】
本発明の高炭素鋼線材は、線材そのものの内質を変えたものであるので、ダイス寿命の延長を図るために伸線加工設備の改良を行う必要がない。この線材はダイス寿命に優れるので耐疲労特性が要求されることが少ない橋梁用ロープ、ホースワイヤー、自動車のラジアルタイアの補強材として用いられるビードワイヤーなどの用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】EB溶解時のエネルギー供給速度と照射時間が凝固後の試料表面に存在する介在物の面積値に与える影響を示す図である。
【図2】EB溶解条件と浮上する介在物の組成変化の関係を示した図である。
【符号の説明】
I:製品から切り出して研磨した試料をEPMAで定量した場合の組成、
II:試料1g当たりについて150〜400J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成、
III:試料1g当たりについて400超〜500J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成、
IV:試料1g当たりについて500超〜800J/秒のエネルギー供給速度でEB溶解した場合の介在物組成。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Al:0.001%を超えて0.050%まで、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下を含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.025%以下、Sは0.025%以下で、更に、線材1g当たりについて、200〜600J/秒のエネルギー供給速度及び10〜25秒の照射時間で5000J以上の供給エネルギーとする条件で電子ビーム溶解して凝固させた後の試料表面に存在する非金属介在物の面積値が、線材1g当たりについて15000μm2 を超えてて300000μm2 までであることを特徴とする高炭素鋼線材。
- Tiの含有量が0.0005〜0.1%である請求項1に記載の高炭素鋼線材。
- Bの含有量が0.0005〜0.01%である請求項1に記載の高炭素鋼線材。
- Tiの含有量が0.0005〜0.1%、且つ、Bの含有量が0.0005〜0.01%である請求項1に記載の高炭素鋼線材。
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2002
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US20130295412A1 (en) * | 2011-01-26 | 2013-11-07 | Daimler Ag | Wire-type spray material for a thermally sprayed layer having a pearlite, bainite, martensite structure |
US9546414B2 (en) * | 2011-01-26 | 2017-01-17 | Daimler Ag | Wire-type spray material for a thermally sprayed layer having a pearlite, bainite, martensite structure |
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