JP2004123653A - イオン性物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制され、電気化学デバイスを形成するために好適なイオン伝導体用材料の製造方法に適用できるイオン性物質の製造方法であって、効率的にイオン性物質を製造する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1);
【化1】
(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表す。M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するイオン性物質の製造方法であって、該イオン性物質の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物から該イオン性物質を誘導する工程を含んでなり、該一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものであるイオン性物質の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(1);
【化1】
(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表す。M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するイオン性物質の製造方法であって、該イオン性物質の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物から該イオン性物質を誘導する工程を含んでなり、該一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものであるイオン性物質の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン性物質の製造方法に関する。より詳しくは、電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適なイオン伝導体用材料の製造方法に適用できるイオン性物質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン性物質は、イオン伝導体用材料を構成する物質として好適に用いられるものである。また、イオン伝導体用材料は、イオン伝導による各種の電池等において必須であるイオン伝導体の構成材料であって、イオン伝導体を構成する電解液において、電解質及び/又は溶媒として機能することができるものであり、また、固体電解質として機能することができるものである。その用途としては、例えば、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスが挙げられる。これらでは、一般に一対の電極とその間を満たすイオン伝導体から電池が構成されることになる。
【0003】
通常用いられるイオン伝導体としては、例えばγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に、過塩素酸リチウム、LiPF6、LiBF4、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、フタル酸テトラメチルアンモニウム等の電解質を溶解した電解液が使用されている。このようなイオン伝導体においては、電解質が溶解することにより、カチオンとアニオンとに解離して電解液中をイオン伝導することになる。また、固体状態でイオン伝導することができる固体電解質もイオン伝導体として使用されている。
【0004】
しかしながら、このような電気化学テバイスを構成する電解液においては、有機溶媒が揮発しやすく引火点が低いという問題点や、漏液が発生し易く、長期間の信頼性に欠けるという問題点があることから、これらの問題点を改善することができる材料が求められていた。
【0005】
そこで、室温で液状の常温溶融塩を応用する検討が行われている(例えば、非特許文献1参照。)。常温溶融塩としてはN−ブチルピリジウムやN−エチル−N′−メチル−イミダゾリウム等の芳香族4級アンモニウムのハロゲン化物とハロゲンアルミニウムとの錯体や2種類以上のリチウム塩の混合物等が知られている(例えば、非特許文献2参照。)。しかしながら、前者の錯体はハロゲン化物イオンによる腐食性に問題があり、後者は熱力学的に不安定な過冷却液体で、経時的に固化するという問題点がある。
【0006】
一方、テトラフルオロホウ酸アニオンやビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン等のイミダゾリウム塩やピリジウム塩は、電気的に比較的安定であるため、近年盛んに検討がなされている。しかしながら、イオン伝導度等の性能が不充分であり、また、フッ素を含有しているため、電極の腐食等の問題があり、優れた基本性能を発揮するイオン伝導体を構成する材料とするための工夫の余地があった。
【0007】
このようなイオン伝導体用材料としては、有機マトリックス中に伝導種となるイオンドーパントを含有する固体伝導性材料の技術に関し、例えば、有機マトリックスとしてN−メチル−N−プロピルピロリジウムのジシアノアミド塩を、イオンドーパントとしてLiSO3CF3を用いた固体伝導性材料が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
またN−アルキル−N−メチルピロリジウム又は1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムのジシアノアミド塩に関し、熱的特性、粘度、定性的な電位安定性について研究を行い、ジシアノアミド塩が低粘度のイオン性液体として有用であることが開示されていると共に、このようなジシアノアミド塩の合成方法についても開示されている(例えば、非特許文献3。)。この合成方法において、N−アルキル−N−メチルピロリジウムのジシアノアミド塩は、下記反応式で表されるN−アルキル−N−メチルピロリジウムのヨウ素化塩とジシアノアミド銀との反応によって得られることとなる。
【0009】
【化3】
【0010】
しかしながら、このような合成方法においては、N−アルキル−N−メチルピロリジウムのジシアノアミド塩を形成する反応を行った後に、(1)ろ過して溶媒除去、(2)ジクロロメタンに溶解し、脱水するためにMgSO4を添加、(3)ろ過して溶媒除去、(4)減圧乾燥という洗浄工程を行って生成物を得ることになるが、電気化学デバイスに用いる場合に、このような洗浄工程を行っても不純物が多く、生成物がイオン伝導体用材料として好適なものとはならず、また、反応液中に銀イオンが存在し、これが生成物中に不純物として混入すると、イオン伝導体の性能を低下させることから、これらの点において工夫の余地があった。更に、反応液中に沈殿が生じ、効率的に製造できないことから、この点においても工夫の余地があった。
【0011】
ところで、シアノ置換メチド及びアミドを含むシアノ置換塩に関し、N−シアノ置換アミド、N−シアノ置換スルホンアミド、1,1,1−ジシアノ置換スルホニルメチド及び1,1,1−ジシアノアシルメチドから成る群から選択される少なくとも一種の塩とマトリックス材料とを含む電解質が開示され、シアノ置換メチド又はアミドをLiOH・H2OやLi2CO3により中和することにより、電解質を構成する塩が得られることが記載されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、シアノ置換メチド又はアミドをLiOH・H2OやLi2CO3により中和して電解質を構成する塩を得ていることから、この点において製造方法を好適化したうえで、生成物中に不純物が混入しないようにしたり、反応液中に沈殿が生じたりしないようにする工夫の余地があった。
【0012】
またカチオン性部分M+mと結合するアニオン性部分を含むイオン性化合物に関し、カチオン性部分のMは、ヒドロキソニウム、ニトロソニウムNO+、アンモニウムNH4 +、原子価mを有する金属カチオン、原子価mを有する有機カチオン又は原子価mを有する有機金属カチオンであり、アニオン性部分は、式RD−Y−C(C≡N)2 −又はZ−C(C≡N)2 −のうちの1つに相当し、アニオンとなる元素が炭素原子(C)のみにより構成されるものであり、このイオン性化合物は、イオン伝導体材料等に用いることができることが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。このイオン性化合物は、化合物RD−Y−L又はZ−Lを化合物[A−C(CN)2]n−mnM’m+と反応させることで得られ、例えば、下記の式により得られることが開示されている。
FSO2−F+[NaC(CN)2]−Na+→NaF+[FSO2−C(CN)2]−Na+
しかしながら、このようなイオン性化合物の製造方法においては、Aが金属カチオンである化合物を用いてもよいことが記載されており、これに起因して生成物が着色したり、不純物が混入したりしないようにすることについての開示はなく、優れた基本性能を発揮するイオン伝導体材料を製造する方法とするための工夫の余地があった。
【0013】
【非特許文献1】
小浦ら、J.Electrochem.Soc.、1993年、140、p.602
【非特許文献2】
C.A.Angellら、Nature、1933年、362、p.137
【特許文献1】
国際公開第01/15258号パンフレット(第14−17頁)
【非特許文献3】
Douglas R.MacFarlane、他4名、Chem.Commun.、2001年、p.1430−1431
【特許文献2】
特表2002−523879号公報(第1−7頁、第28−36頁)
【特許文献3】
特表2000−508677号公報(第1−12頁、第20−21頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制され、電気化学デバイスを形成するために好適なイオン伝導体用材料の製造方法に適用できるイオン性物質の製造方法であって、効率的にイオン性物質を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、イオン性物質について種々検討した結果、塩の形態とすることにより揮発性がなくなって安全に取り扱うことができるものとなり、溶融塩に電解質を溶解した液体状態や、固体状態の塩によるイオン伝導体が有用であることに着目し、このようなイオン性物質が特定のアニオンを有するものであると、このイオン性物質により構成されるイオン伝導体用材料が、電気化学デバイスに用いる場合に優れたイオン伝導度を有し、しかも電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定であることを見いだした。このようなイオン伝導体用材料に必須として用いられるイオン性物質の製造方法において、特定の構造であるアニオンを有し、金属分を有しない化合物から誘導してイオン性物質を得ることにより、イオン性物質を溶融塩や固体電解質を構成する塩として好適な形態とすることができることとなり、この際に生成物であるイオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分がないことに起因して、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制されることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。イオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分があると、これにより様々な副反応が起こり、例えば、アニオンの二量体等が生成して不純物となって混入することとなる。本発明においては、電気化学デバイスを形成した場合に、不純物により性能が低下することが抑制され、また、製造工程においては、反応液中に沈殿が生じることが抑制されて効率的に製造することができることとなる。なお、イオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分とは、例えばイオン性物質の製造原料に不純物として含有される金属分ではなく、製造原料として用いる化合物を構成する金属分を意味する。
【0016】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0017】
【化4】
【0018】
(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表す。M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するイオン性物質の製造方法であって、上記イオン性物質の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物から上記イオン性物質を誘導する工程を含んでなり、上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものであるイオン性物質の製造方法である。
本発明はまた、上記イオン性物質の製造方法により製造されるイオン性物質を必須としてなり、電解液用材料として用いられるイオン伝導体用材料の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0019】
本発明の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質を製造する方法である。このようなイオン性物質の製造方法は、イオン性物質を必須としてなり、電解液用材料として用いられるイオン伝導体用材料の製造方法に適用することができ、このようなイオン伝導体用材料の製造方法も本発明の一つである。
上記イオン伝導体用材料とは、電解液又は電解質用材料であって、電解液を構成する溶媒及び/又は電解質の材料(電解液用材料)として、また、固体電解質の材料(電解質用材料)として電気化学デバイスのイオン伝導体に好適に用いることができるものであるが、本発明の製造方法においては、電解液用材料として用いられるイオン伝導体用材料を製造することとなる。この場合において、本発明による一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質としては、室温(25℃)において、一定体積をもち、かつ流動性を有する液体であることが好ましく、具体的には、室温(25℃)で300mPa・s以下の液体であることが好ましい。より好ましくは、200mPa・s以下、更に好ましくは、100mPa・s以下の液体である。
【0020】
本発明のイオン性物質の製造方法においては、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程を含んでなり、上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものを用いることとなる。これにより、生成物であるイオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分が反応系中に存在しないで目的物であるアニオンを有するイオン性物質を製造することが可能となり、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制されることとなる。これにより、副生してくる金属化合物の処理の必要がなくなることになる。
【0021】
上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する方法としては、ハロゲン化物を用いて一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物を溶融塩や固体電解質を構成する塩として好適な形態とすることが好ましく、例えば、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物と、ハロゲン化物とを反応させる工程を含んでなり、該ハロゲン化物は、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するものであることが好ましい。これらの製造原料は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
上記工程において、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程における化学反応式の1つを下記式(1)に示す。
【0022】
【化5】
【0023】
上記工程において、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物のモル数をaとし、ハロゲン化物のモル数をbとすると、反応におけるモル比(a/b)としては、100/1〜0.1/1であることが好ましい。アニオンを有する化合物が0.1未満であると、ハロゲン化物が過剰となりすぎて効率的に生成物を得られないおそれがあり、また、イオン伝導体用材料の製造方法においてはイオン伝導体用材料中にハロゲンが混入し、電極等を被毒させるおそれがある。100を超えると、アニオンを有する化合物が過剰となりすぎて更に収率の向上は期待できないおそれがある。より好ましくは、10/1〜0.5/1 である。
【0024】
上記工程の反応条件は、製造原料や他の反応条件等により適宜設定することができるが、反応温度としては、−20〜200℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、10〜60℃が更に好ましい。反応圧力としては、1×102〜1×108Paが好ましく、1×103〜1×107Paがより好ましく、1×104〜1×106Paが更に好ましい。反応時間としては、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下が更に好ましい。
【0025】
上記工程においては、通常では反応溶媒を用いることとなり、反応溶媒としては、(1)ヘキサン、オクタンなど脂肪族炭化水素系;(2)シクロヘキサンなど脂環式飽和炭化水素系;(3)シクロヘキセンなど脂環式不飽和炭化水素系;(4)ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族炭化水素系;(5)アセトン、メチエチルケトンなどケトン類;(6)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどエステル類;(7)ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などハロゲン化炭化水素類;(8)ジエチルエーテル、ジオキサン、ジオキソランなどエーテル類、(9)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどアルキレングリコールのエーテル類;(10)メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどアルコール類;(11)ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどアミド類;(12)ジメチルスルホキシドなどスルホン酸エステル類;(13)ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど炭酸エステル類;(14)エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど脂環式炭酸エステル類;(15)アセトニトリル等のニトリル類;(16)水等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、(5)、(6)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)が好ましく、更に(5)、(10)、(15)、(16)がより好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においては、上記工程の後に、沈殿物等のろ過、溶媒の除去、脱水、減圧乾燥等の処理を行ってもよく、例えば、生成した沈殿物をろ過し、イオン性物質を含んだ溶媒から真空等の条件下で溶媒を除去した後、ジクロロメタン等の溶剤に溶解することで洗浄し、MgSO4等の脱水効果を有する物質を添加して脱水し、溶媒除去後に減圧乾燥することでイオン性物質を得てもよい。溶剤による洗浄処理の回数としては、適宜設定すればよく、溶剤としては、ジクロロメタン以外に、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、水等が好適である。また、脱水効果を有する物質としては、MgSO4以外に、モレキュラーシーブ、CaCl2、CaO、CaSO4、K2CO3、活性アルミナ、シリカゲル等が好適であり、添加量は、生成物や溶剤の種類等により適宜設定すればよい。
【0027】
本発明のイオン性物質の製造方法は、下記一般式(2);
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、Aは、金属元素を有しない基を表す。Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表す。M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表される化合物と、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するハロゲン化物とを反応させる工程を含んでなることが好ましい。オニウムカチオンとは、O、N、S、P等の非金属原子又は半金属原子のカチオンを有する有機基を意味する。
【0030】
上記一般式(2)で表される化合物において、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表すが、C、N又はSが好ましい。より好ましくは、C又はNである。Qは、有機基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、CpF(2p+1−q)Hq、OCpF(2p+1−q)Hq、SO2CpF(2p+1−q)Hq、CO2CpF(2p+1−q)Hq、SO3C6F5−rHr、NO2(式中、1≦p≦6、0<q≦13、0<r≦5である)等が好ましい。より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、CpF(2p+1−q)Hq、SO2CpF(2p+1−q)Hqである。
【0031】
上記一般式(2)で表される化合物におけるAは、金属元素を有しない基を表すが、アンモニウム、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム等の基であることが好ましく、アンモニウム基がより好ましい。すなわち、一般式(2)で表される化合物は、アンモニウム化合物であることが好ましい。従って、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、アンモニウム化合物であることが好ましい。
M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表すが、それぞれ独立に、−S−、−O−、−SO2−、−CO−から選ばれる連結基であり、好ましくは、−SO2−、−CO−である。また、aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数であるが、a、d及びeは、元素Xの価数によって決まることになり、例えば、XがSの場合、a=1、d=0、e=0となり、XがNの場合、(1)a=2、d=0、e=0、(2)a=1、d=1、e=0、又は、(3)a=1、d=0、e=1のいずれかとなる。
【0032】
上記ハロゲン化物としては、臭化物であることが好ましく、アルカリ金属原子を必須とするカチオンとしては、リチウムカチオンであることが好ましい。また、オニウムカチオンとしては、下記一般式(3);
【0033】
【化7】
【0034】
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一若しくは異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。sは、3、4又は5であり、元素Lの価数によって決まる値である。)で表されるものが好適であり、具体的には下記一般式;
【0035】
【化8】
【0036】
(式中、Rは、一般式(3)と同様である。)で表されるものが好適である。このようなオニウムカチオンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、下記のようなオニウムカチオンが好ましいものである。
(1)下記一般式;
【0037】
【化9】
【0038】
で表される9種類の複素環オニウムカチオン。
(2)下記一般式;
【0039】
【化10】
【0040】
で表される5種類の不飽和オニウムカチオン。
(3)下記一般式;
【0041】
【化11】
【0042】
で表される9種類の飽和環オニウムカチオン。
上記一般式中、R1〜R12は、同一又は異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。
このようなオニウムカチオンの中でも、より好ましくは、一般式(3)におけるLが窒素原子であるものであり、更に好ましくは、下記一般式;
【0043】
【化12】
【0044】
(式中、R1〜R12は、上記と同様である。)で表される4種類のオニウムカチオンである。
上記R1〜R12の有機基としては、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルフィド基や、直鎖、分岐鎖又は環状で、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基、炭化フッ素基等が好ましく、より好ましくは水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜8の炭化水素基である。
【0045】
本発明はまた、上記一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質の製造方法であって、上記イオン性物質の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物と、ハロゲン化物とを反応させる工程を含んでなり、上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものであり、上記ハロゲン化物は、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するものであるイオン性物質の製造方法でもある。
【0046】
本発明のイオン性物質の製造方法としては、イオン性物質を必須としてなり、電解液用材料又は電解質用材料として用いられるイオン伝導体用材料の製造方法に適用することができ、このようなイオン伝導体用材料の製造方法も本発明の一つである。また、この製造方法においては、上述した一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する場合における好ましい方法と同様の方法を用いることとなり、製造原料、反応モル比、反応条件、反応溶媒、工程後の処理等も上記と同様である。
【0047】
上述したイオン伝導体用材料の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質を必須としてイオン伝導体用材料を製造することとなる。
上記一般式(1)で表されるアニオンにおいて、X、Q、M1、及びM2は、上述した一般式(2)と同様である。また、a、b、c、d及びeについても、一般式(2)と同様である。
上記一般式(1)で表されるアニオンとしては、一般式(1)においてeが0である下記一般式(4)で表されるアニオンが好ましく、より好ましくは、トリシアノメチリドアニオン、ジシアノアミドアニオン、チオイソシアネートアニオンである。また、下記一般式(5)や一般式(6)で表されるもの等も好ましいアニオンである。
【0048】
【化13】
【0049】
上記イオン性物質としては、一般式(1)で表されるアニオン及びプロトンから形成される化合物、一般式(1)で表されるアニオンの有機塩、一般式(1)で表されるアニオンの無機塩が好適である。
上記イオン性物質が一般式(1)で表されるアニオンの有機塩である場合、本発明によるイオン伝導体用材料は、溶融塩として好適なものとなり、また、一般式(1)で表されるアニオンの無機塩である場合、本発明によるイオン伝導体用材料は、電解質として好適なものとなる。なお、溶融塩とは、室温から80℃の温度範囲において液体状態を安定に保つことができるものである。
【0050】
上記一般式(1)で表されるアニオンの有機塩としては、一般式(1)で表されるアニオンのオニウム塩であることが好ましく、これらの中でも、上述したオニウムカチオンによる有機塩がより好ましい。更に好ましくは、一般式(1)で表されるアニオンのN−アルキル−N−メチルピロリジウム塩である。一般式(1)で表されるアニオンがジシアノアミドアニオンである場合におけるN−アルキル−N−メチルピロリジウム塩としては、上記式(1)で表される反応により製造されることが好ましい。
【0051】
上記一般式(1)で表されるアニオンの無機塩としては、上述した一般式(1)で表されるアニオンのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることが好ましく、リチウム塩であることがより好ましい。このようなリチウム塩としては、上述した好ましいアニオンのリチウム塩の他にも、LiC(CN)3、LiSi(CN)3、LiB(CN)4、LiAl(CN)4、LiP(CN)2、LiP(CN)6、LiAs(CN)6等が好適である。
【0052】
本発明によるイオン伝導体用材料における一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質の存在量としては、イオン伝導体用材料100質量%に対して、一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質が1質量%以上であることが好ましく、また、99.5質量%以下が好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、また、95質量%以下である。更に好ましくは、10質量%以上であり、また、90質量%以下である。なお、上記一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質において、製造原料に含有される不純物やそれに起因する不純物の含有量としては、200ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、50ppm以下であり、更に好ましくは、20ppm以下である。上記製造原料に含有される不純物とは、例えば、製造原料を製造する際に混入した副生物等を意味する。
【0053】
本発明においてイオン伝導体用材料は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなるものであることが好ましい。この場合において、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、本発明におけるイオン性物質であってもよく、これとは別に添加された化合物であってもよい。このようなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなる本発明のイオン伝導体用材料は、電解質を含有するものとなり、電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
【0054】
上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩において、本発明におけるイオン性物質とは別に添加された化合物としては、電解液中や高分子固体電解質中での解離定数が大きい電解質塩であることが好ましく、LiCF3SO3、NaCF3SO3、KCF3SO3等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiN(CF3SO3)3、LiN(CF3CF3SO2)2等のパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF6、NaPF6、KPF6等のヘキサフロロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiClO4、NaClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF4、NaBF4等のテトラフロロ硼酸塩;LiAsF6、LiI、NaI、NaAsF6、KI等のアルカリ金属塩等が好適である。また、溶解性やイオン伝導度の点から、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、パーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0055】
上記イオン伝導体用材料としては、その他の電解質塩を含有していてもよく、過塩素酸テトラエチルアンモニウム等の過塩素酸の四級アンモニウム塩;(C2H5)4NBF4等のテトラフロロ硼酸の四級アンモニウム塩、(C2H5)4NPF6等の四級アンモニウム塩;(CH3)4P・BF4、(C2H5)4P・BF4等の四級ホスホニウム塩等が好適であり、溶解性やイオン伝導度の点から、四級アンモニウム塩が好ましい。
【0056】
上記イオン伝導体用材料における電解質塩の存在量としては、イオン伝導体用材料100質量%に対して、電解質塩0.1質量%以上が好ましく、また、50質量%以下が好ましい。0.1質量%未満であると、イオンの絶対量が不足となってイオン伝導度が小さくなるおそれがある。50質量%を超えると、イオンの移動が大きく阻害されるおそれがある。より好ましくは、30質量%以下である。
【0057】
上記イオン伝導体用材料は、オニウムカチオンを有する有機化合物を含んでなるものであることが好ましい。オニウムカチオンを有する有機化合物としては、上述したようなオニウムカチオンを有するものであることが好ましく、この場合においては、本発明におけるイオン性物質がオニウムカチオンを有する有機化合物であってもよく、これとは別に添加された化合物であってもよい。このようなオニウムカチオンを有する有機化合物を含んでなるイオン伝導体用材料は、溶融塩を含有するものとなり、電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。
【0058】
上記オニウムカチオンを有する有機化合物において、本発明におけるイオン性物質とは別に添加された化合物としては、ハロゲンアニオン(フルオロアニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオン)、4フッ化ホウ酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、6フッ化ヒ酸アニオン、下記一般式(7)で表されるスルホニルイミドアニオン、下記一般式(8)で表されるスルホニルメチドアニオン、有機カルボン酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸等のアニオン)等のアニオンと、オニウムカチオンとを有する有機化合物が好適である。
【0059】
【化14】
【0060】
上記一般式(7)及び一般式(8)中、R13、R14及びR15は、同一又は異なって、エーテル基を1個又は2個有してもよい炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。
【0061】
上記イオン伝導体用材料におけるオニウムカチオンの存在量としては、一般式(1)で表されるアニオン1molに対し、0.5mol以上が好ましく、また、2.0mol以下が好ましい。より好ましくは、0.8mol以上であり、また、1.2mol以下である。
【0062】
上記イオン伝導体用材料はまた、プロトンを含むことにより、水素電池を構成するイオン伝導体の材料として好適に用いることができるものとなる。なお、本発明においては、解離してプロトンを発生することができる化合物を含ませることにより、本発明によるイオン伝導体用材料中にプロトンが存在することになる。上記イオン伝導体用材料におけるプロトンの存在量としては、イオン伝導体用材料に対して、0.01mol/L以上が好ましく、また、10mol/L以下が好ましい。0.01mol/L未満であると、プロトンの絶対量が不足となってプロトン伝導度が小さくなるおそれがある。10mol/Lを超えると、プロトンの移動が大きく阻害されるおそれがある。より好ましくは、5mol/L以下である。
【0063】
本発明におけるイオン伝導体用材料は、重合体を含むと、固体化して高分子固体電解質として好適に用いることができるものとなる。また、有機溶媒を含むと、イオン伝導度がより向上することになる。
上記重合体としては、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のポリビニル系重合体;ポリオキシメチレン:ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系重合体;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリフォスファゼン類、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート系重合体、アイオネン系重合体が好適である。
【0064】
上記イオン伝導体用材料を高分子固体電解質とする場合、重合体の存在量としては、イオン伝導体用材料100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、また、500質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、固体化の効果が得られないおそれがあり、500質量%を超えると、イオン伝導度が低下するおそれがある。より好ましくは、1質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0065】
上記有機溶媒としては、本発明によるイオン伝導体用材料の構成要素との相溶性が良好であり、誘電率が大きく、電解質塩の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が好適である。また、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)がより好ましい。
このような有機溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類や炭酸ビニレン等の炭酸エステル類;プロピオン酸メチルや蟻酸メチル等の脂肪族エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等の脂肪族ニトリル類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;スルホラン等の硫黄化合物;ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、リン酸エステル類が好適である。これらの中でも、炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類がより好ましく、カーボネート類が更に好ましい。
【0066】
本発明におけるイオン伝導体用材料は、上記以外の構成要素を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、各種無機酸化物微粒子を含むことにより、複合電解質としても使用でき、これにより、強度、膜厚均一性が改善するばかりでなく、無機酸化物と上述した重合体間に微細な空孔が生じることになり、特に溶媒を添加した場合には空孔内にフリーの電解液が複合電解質内に分散することになり、強度改善効果を損ねることなく、逆にイオン伝導度、移動度を増加させることもできる。
【0067】
上記無機酸化物微粒子としては、非電子伝導性、電気化学的に安定なものが好適であり、またイオン伝導性を有するものがより好ましい。このような微粒子としては、α、β、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト等のイオン伝導性又は非電導性セラミックス微粒子が好適である。
【0068】
上記無機酸化物微粒子の比表面積としては、高分子固体電解質中の電解質含有液の保有量を多くし、イオン伝導性、移動度を増加させるという点から、できるだけ大きいことが好ましく、BET法で5m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましい。このような無機酸化物微粒子の結晶粒子径としては、イオン伝導体用材料における他の構成要素と混合できればよいが、大きさ(平均結晶粒径)としては0.01μm以上が好ましく、また、20μm以下が好ましい。より好ましくは、0.01μm以上であり、また、2μm以下である。
上記無機酸化物微粒子の形状としては、球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒、棒状等の種々の形状を有するものを用いることができる。
【0069】
上記無機酸化物微粒子の添加量としては、高分子固体電解質に対して50質量%以下が好ましい。50質量%を超えると、逆に高分子固体電解質の強度やイオン伝導性を低下させたり、成膜しづらくなったりするおそれがある。より好ましくは、0.1質量%以上であり、また、30質量%以下である。
【0070】
上記イオン伝導体用材料は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適なものである。このような本発明によって製造されるイオン伝導体用材料を用いてなる二次電池、電解コンデンサ又は電気二重層キャパシタもまた、本発明の1つである。
【0071】
上記電気化学デバイスに用いられるイオン伝導体としては、電解質と有機溶媒又は重合体との混合物が好適である。有機溶媒を用いれば、一般にこのイオン伝導体は電解液と呼ばれ、重合体を用いれば、高分子固体電解質と呼ばれるものになる。高分子固体電解質には可塑剤として有機溶媒を含有するものも含まれる。本発明のイオン伝導体用材料は、このようなイオン伝導体において、電解液における電解質や有機溶媒の代替として、また、高分子固体電解質として好適に適用することができ、本発明のイオン伝導体用材料をイオン伝導体の材料として用いてなる電気化学デバイスでは、これらのうちの少なくとも1つが、本発明のイオン伝導体用材料により構成されることになる。これらの中でも、電解液における有機溶媒の代替、又は、高分子固体電解質として用いることが好ましい。
【0072】
上記有機溶媒としては、本発明のイオン伝導体用材料を溶解できる非プロトン性の溶媒であればよく、上述した有機溶媒と同様のものが好適である。ただし、2種類以上の混合溶媒にする場合、電解質がLiイオンを含むものである場合は、これらの有機溶媒のうち誘電率が20以上の非プロトン性溶媒と誘電率が10以下の非プロトン性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより電解液を調製することが好ましい。特にリチウム塩を用いる場合には、ジエチルエーテル、ジメチルカーボネート等の誘電率が10以下の非プロトン性溶媒に対する溶解度が低く単独では充分なイオン伝導度が得られず、また、逆に誘電率20以上の非プロトン性溶媒単独では溶解度は高いもののその粘度も高いため、イオンが移動しにくくなりやはり充分なイオン伝導度が得られないことになる。これらを混合すれば、適当な溶解度と移動度を確保することができ充分なイオン伝導度を得ることができる。
【0073】
上記電解質を溶解する重合体としては、上述した重合体1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中でも、ポリエチレンオキシドを主鎖又は側鎖にもつ重合体又は共重合体、ポリビニリデンフロライドの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸エステル重合体、ポリアクリロニトリルが好適である。これらの重合体に可塑剤を加える場合は、上記の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0074】
上記イオン伝導体中における電解質濃度としては、0.01mol/dm3以上が好ましく、また、飽和濃度以下が好ましい。0.01mol/dm3未満であると、イオン伝導度が低いため好ましくない。より好ましくは、0.1mol/dm3以上、また、1.5mol/dm3以下である。
【0075】
以下に本発明によるイオン伝導体用材料を用いてなる(1)二次電池、(2)電解コンデンサ、及び、(3)電気二重層キャパシタについて説明する。
(1)二次電池
二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ及び本発明のイオン伝導体用材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されるものである。このような二次電池としては、リチウム二次電池が好ましい。リチウム二次電池の一形態の断面模式図を図1に示す。このリチウム二次電池は、後述する負極活物質としてコークスを用い、正極活物質としてCoを含有する化合物を用いたものであるが、このようなリチウム二次電池おいて、充電時には、負極においてC6Li→6C+Li+eの反応が起こり、負極表面で発生した電子(e)は、電解液中をイオン伝導して正極表面に移動し、正極表面では、CoO2+Li+e→LiCoO2の反応が起こり、負極から正極へ電流が流れることになる。放電時には、充電時の逆反応が起こり、正極から負極へ電流が流れることになる。このように、イオンによる化学反応により電気を蓄えたり、供給したりすることとなる。
【0076】
上記負極としては、負極活物質、負極用導電剤、負極用結着剤等を含む負極合剤を負極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。負極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記負極活物質としては、金属リチウム、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料等が好適である。上記リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料としては、金属リチウム;熱分解炭素;ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス;グラファイト;ガラス状炭素;フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したものである有機高分子化合物焼成体;炭素繊維;活性炭素等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアセン等のポリマー;Li4/3Ti5/3O4、TiS2等のリチウム含有遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;アルカリ金属と合金化するAl、Pb、Sn、Bi、Si等の金属;アルカリ金属を格子間に挿入することのできる、AlSb、Mg2Si、NiSi2等の立方晶系の金属間化合物や、Li3−aGaN(G:遷移金属)等のリチウム窒素化合物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる金属リチウムや炭素材料がより好ましい。
【0077】
上記負極用導電剤は、電子伝導性材料であればよく、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、銅、ニッケル等の金属粉末;ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維がより好ましい。負極用導電剤の使用量としては、負極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。また、負極活物質は電子伝導性を有するため、負極用導電剤を用いなくてもよい。
【0078】
上記負極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体がより好ましい。
【0079】
上記負極用集電体としては、電池の内部において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらの中でも、銅や銅を含む合金がより好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの負極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。負極用集電体の形状としては、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体等が好適である。集電体の厚さとしては、1〜500μmが好適である。
【0080】
上記正極としては、正極活物質、正極用導電剤、正極用結着剤等を含む正極合剤を正極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。正極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記正極活物質としては、金属Li、LixCoO2 、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1−yO2、LixCoyJ1−yOz、LixNi1−yJyOz、LixMn2O4、LixMn2−yJyO4;MnO2、VgOh、CrgOh(g及びhは、1以上の整数)等のリチウムを含まない酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記Jは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBから選ばれた少なくとも1種の元素を表す。また、xは、0≦x≦1.2であり、yは、0≦y≦0.9であり、zは、2.0≦z≦2.3であり、xは、電池の充放電により増減することとなる。また、正極活物質としては、遷移金属カルコゲン化物、リチウムを含んでいてもよいバナジウム酸化物やニオブ酸化物、共役系ポリマーからなる有機導電性物質、シェブレル相化合物等を用いてもよい。正極活物質粒子の平均粒径としては、1〜30μmであることが好ましい。
【0081】
上記正極用導電剤としては、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であればよく、上述した負極用導電剤と同様のもの;アルミニウム、銀等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、ニッケル粉末がより好ましい。正極用導電剤の使用量としては、正極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。カーボンブラックやグラファイトを用いる場合には、正極活物質100重量部に対して2〜15重量部とすることが好ましい。
【0082】
上記正極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、上述した負極用結着剤におけるスチレンブタジエンゴム以外のものや、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0083】
上記正極用集電体としては、用いる正極活物質の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂、アルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金が好ましい。また、これらの正極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。正極用集電体の形状及び厚さとしては、上述した負極集電体と同様である。
【0084】
上記セパレータは、イオン伝導体として電解液を用いた場合においては、大きなイオン透過度と、所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性薄膜であることが好ましく、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を有するものであることが好ましい。材質としては、耐有機溶剤性と疎水性の点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるオレフィン系ポリマー又はガラス繊維等からなるシート、不織布又は織布等が好適である。セパレータが有する細孔の孔径としては、電極から脱離した正極活物質や負極活物質、結着剤、導電剤が透過しない範囲であることが好ましく、0.01〜1μmであることが好ましい。セパレータの厚さとしては、10〜300μmであることが好ましい。また、空隙率としては、30〜80%であることが好ましい。
【0085】
上記二次電池としては、ポリマー材料に、電解液を保持させたゲルを正極合剤又は負極合剤に含ませたり、電解液を保持するポリマー材料からなる多孔性のセパレータを正極又は負極と一体化することで構成されるものであってもよい。上記ポリマー材料としては、電解液を保持できるものであればよく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体等が好ましい。
上記二次電池の形状としては、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車等に用いる大形等が挙げられる。
【0086】
(2)電解コンデンサ
電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、陽極箔と陰極箔との間に挟まれたセパレータである電解紙、リード線及び本発明のイオン伝導体用材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものである。電解コンデンサの一形態の斜視図を図2(a)に示す。このような電解コンデンサとしては、アルミ電解コンデンサが好適である。アルミ電解コンデンサの一形態の断面模式図を図2(b)に示す。このようなアルミ電解コンデンサとしては、電解エッチングで細かな凹凸を作って粗面化したアルミ箔の表面に電解陽極酸化によって形成した薄い酸化被膜(酸化アルミニウム)を誘電体とするものが好適である。
【0087】
(3)電気二重層キャパシタ
電気二重層キャパシタは、負極、正極及び本発明のイオン伝導体用材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものであり、好ましい形態としては、対向配置した正極及び負極からなる電極素子に、イオン伝導体である電解液を含ませたものである。このような電気二重層キャパシタの一形態の断面模式図及び電極表面の拡大模式図を図3に示す。
【0088】
上記正極及び負極は、分極性電極であり、電極活物質として活性炭繊維、活性炭粒子の成形体、活性炭粒子等の活性炭と、導電剤と、バインダー物質とから構成され、薄い塗布膜、シート状又は板状の成形体として使用することが好適である。このような構成を有する電気二重層キャパシタにおいては、図3の拡大図に示されるように、イオンの物理的な吸・脱着により分極性電極と電解液との界面に生成する電気二重層に電荷が蓄えられることとなる。
【0089】
上記活性炭としては、平均細孔径が2.5nm以下であるものが好ましい。この活性炭の平均細孔径は、窒素吸着によるBET法によって測定されることが好ましい。活性炭の比表面積としては、炭素質種による単位面積あたりの静電容量(F/m2)、高比表面積化に伴う嵩密度の低下等により異なるが、窒素吸着によるBET法により求めた比表面積としては、500〜2500m2/gが好ましく、1000〜2000m2/gがより好ましい。
【0090】
上記活性炭の製造方法としては、植物系の木材、のこくず、ヤシ殻、パルプ廃液、化石燃料系の石炭、石油重質油、又は、それらを熱分解した石炭及び石油系ピッチ、石油コークス、カーボンアエロゲル、メソフェーズカーボン、タールピッチを紡糸した繊維、合成高分子、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イオン交換樹脂、液晶高分子、プラスチック廃棄物、廃タイヤ等の原料を炭化した後、賦活して製造する賦活法を用いることが好ましい。
【0091】
上記賦活法としては、(1)炭化された原料を高温で水蒸気、炭酸ガス、酸素、その他の酸化ガス等と接触反応させるガス賦活法、(2)炭化された原料に、塩化亜鉛、リン酸、リン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫化カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カルシウム、ホウ酸、硝酸等を均等に含浸させて、不活性ガス雰囲気中で加熱し、薬品の脱水及び酸化反応により活性炭を得る薬品賦活法が挙げられ、いずれを用いてもよい。
【0092】
上記賦活法により得られた活性炭は、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で、好ましくは500〜2500℃、より好ましくは700〜1500℃で熱処理することが好ましく、不要な表面官能基を除去したり、炭素の結晶性を発達させて電子伝導性を増加させてもよい。活性炭の形状としては、破砕、造粒、顆粒、繊維、フェルト、織物、シート状等が挙げられる。粒状の場合においては、電極の嵩密度の向上、内部抵抗の低減という点で、平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。
上記電極活物質としては、活性炭以外にも上述の高比表面積を有する炭素材料を用いてもよく、例えば、カーボンナノチューブやプラズマCVDにより作製したダイヤモンド等を用いてもよい。
【0093】
上記導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、酸化チタン、アルミニウム、ニッケル等の金属ファイバー等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、少量で効果的に導電性が向上する点で、アセチレンブラック及びケッチェンブラックがより好ましい。導電剤の配合量としては、活性炭の嵩密度等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0094】
上記バインダー物質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシルメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。バインダー物質の配合量としては、活性炭の種類と形状等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、0.5〜30質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。
【0095】
上記正極及び負極の成形方法としては、(1)活性炭とアセチレンブラックの混合物に、ポリテトラフルオロエチレンを添加混合した後、プレス成形して得る方法、(2)活性炭とピッチ、タール、フェノール樹脂等のバインダー物質を混合、成型した後、不活性雰囲気下で熱処理して焼結体を得る方法、(3)活性炭とバインダー物質又は活性炭のみを焼結して電極とする方法等が好適である。炭素繊維布を賦活処理して得られる活性炭繊維布を用いる場合は、バインダー物質を使用せずにそのまま電極として使用してもよい。
【0096】
上記電気二重層キャパシタには、セパレータを分極性電極に挟み込む方法や、保持手段を用いることにより分極性電極を間隔を隔てて対向させる方法等により、分極性電極が接触や短絡することを防ぐことが好ましい。セパレータとしては、使用温度域において溶融塩等と化学反応を起こさない多孔性の薄膜を用いることが好適である。セパレータの材質としては、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維等が好適である。
上記電気二重層キャパシタの形状としては、コイン型、巻回型、角型、アルミラミネート型等が挙げられ、いずれの形状としてもよい。
【0097】
本発明によるイオン伝導体用材料を用いてなる二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスは、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の各種用途に好適に用いることができるものである。
【0098】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0099】
〔銀イオン測定条件〕
機器:ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業社製)
方法:サンプル0.3gをイオン交換水で10倍に希釈し、その溶液を測定
〔硝酸イオン測定条件〕
機器:イオンクロマトグラフシステム DX−500(日本ダイオネクス社製)
分離モード:イオン交換
検出器:電気伝導度検出器 CD−20
カラム:AS4A−SC
方法:サンプル0.3gをイオン交換水で100倍に希釈し、その溶液を測定
【0100】
〔実施例1〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、攪拌装置、及び、滴下漏斗を備えたフラスコに、メチルピロリジン85g(1.0mol)と2−ブタノン(以下、MEKと記す)400gを仕込み、窒素気流下で50℃に保ちながら、n−ブチルブロマイド205.5g(1.5mol)を2時間をかけて滴下し、更に、2時間、80℃を保ち、反応を終了した。次いで、反応液をろ過して、やや黄白色結晶の1−メチル−3−ブチルピロリジウムブロマイド(以下、MBPyBrと記す)を得た。その後、この結晶をMEKで2回洗浄して白色のMBPyBr187g(収率90%)を得た。
【0101】
次いで、温度計、窒素ガス導入誉、還流冷却管、及び、攪拌装置を備えたフラスコに、ジシアナミドアンモニウム(以下、ADCAと記す)37.8g(0.45mol)、及び、アセトニトリル100gを加え、室温で分散させた。次いで、MBPyBr62.4g(0.30mol)をアセトニトリル300gに溶解させ、上記ADCA分散水溶液に2時間かけて滴下した。この時、系内は30℃以下に保持した。滴下終了後、更に、24時間、室温で攪拌した。その後、吸引ろ過で沈澱物を除去し、そのろ液をロータリーエバポレーターを用いて、50℃、1.3〜26.6kPaで揮発分を除去した。次いで、この濃縮物をジクロロメタンに溶解させ1晩放置した後、その溶液をポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターを用いてジクロロメタンを除去し、60℃、3日間、減圧下で乾燥させ、1−メチル−3−ブチルピロリジウムジシアナミド(以下、MBPyDCAと略す)を得た(60g、収率90%)。
このMBPyDCAは無色透明液であり、粘度は35mPa、銀イオン濃度は20ppm、硝酸イオン濃度は10ppmであった。
【0102】
〔実施例2〕
実施例1におけるMBPyBrを3−エチル−1−メチル−イミダゾリウムブロマイド53.7g(0.30mol)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、3−エチル−1−メチル−イミダゾリウムジシアナミドを得た。
この3−エチル−1−メチル−イミダゾリウムジシアナミドはやや茶色の透明液であり、粘度は15mPa、銀イオン濃度は15ppm、硝酸イオン濃度は10ppmであった。
〔実施例3〕
実施例1におけるジクロロメタンをアセトニトリルに変更した以外、同様の操作を行い、MBPyDCAを得た。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1におけるADCAをジシアナミド78.8gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、MBPyDCAを得た。
このMBPyDCAは薄黄色の透明液であり、粘度は30mPa、銀イオン濃度は150ppm、硝酸イオン濃度は170ppmであった。
【0104】
【発明の効果】
本発明のイオン性物質の製造方法は、上述の構成よりなり、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制され、電気化学デバイスを形成するために好適なイオン伝導体用材料の構成材料であるイオン性物質を効率的に製造することができ、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスに好適なイオン伝導体用材料の製造方法に適用することができる方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】リチウム二次電池の一形態を示す断面模式図である。
【図2】(a)は、電解コンデンサの一形態を示す斜視図であり、(b)は、アルミ電解コンデンサの一形態を示す断面模式図である。
【図3】電気二重層キャパシタの一形態を示す断面模式図及び電極表面の拡大模式図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン性物質の製造方法に関する。より詳しくは、電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適なイオン伝導体用材料の製造方法に適用できるイオン性物質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン性物質は、イオン伝導体用材料を構成する物質として好適に用いられるものである。また、イオン伝導体用材料は、イオン伝導による各種の電池等において必須であるイオン伝導体の構成材料であって、イオン伝導体を構成する電解液において、電解質及び/又は溶媒として機能することができるものであり、また、固体電解質として機能することができるものである。その用途としては、例えば、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスが挙げられる。これらでは、一般に一対の電極とその間を満たすイオン伝導体から電池が構成されることになる。
【0003】
通常用いられるイオン伝導体としては、例えばγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に、過塩素酸リチウム、LiPF6、LiBF4、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、フタル酸テトラメチルアンモニウム等の電解質を溶解した電解液が使用されている。このようなイオン伝導体においては、電解質が溶解することにより、カチオンとアニオンとに解離して電解液中をイオン伝導することになる。また、固体状態でイオン伝導することができる固体電解質もイオン伝導体として使用されている。
【0004】
しかしながら、このような電気化学テバイスを構成する電解液においては、有機溶媒が揮発しやすく引火点が低いという問題点や、漏液が発生し易く、長期間の信頼性に欠けるという問題点があることから、これらの問題点を改善することができる材料が求められていた。
【0005】
そこで、室温で液状の常温溶融塩を応用する検討が行われている(例えば、非特許文献1参照。)。常温溶融塩としてはN−ブチルピリジウムやN−エチル−N′−メチル−イミダゾリウム等の芳香族4級アンモニウムのハロゲン化物とハロゲンアルミニウムとの錯体や2種類以上のリチウム塩の混合物等が知られている(例えば、非特許文献2参照。)。しかしながら、前者の錯体はハロゲン化物イオンによる腐食性に問題があり、後者は熱力学的に不安定な過冷却液体で、経時的に固化するという問題点がある。
【0006】
一方、テトラフルオロホウ酸アニオンやビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン等のイミダゾリウム塩やピリジウム塩は、電気的に比較的安定であるため、近年盛んに検討がなされている。しかしながら、イオン伝導度等の性能が不充分であり、また、フッ素を含有しているため、電極の腐食等の問題があり、優れた基本性能を発揮するイオン伝導体を構成する材料とするための工夫の余地があった。
【0007】
このようなイオン伝導体用材料としては、有機マトリックス中に伝導種となるイオンドーパントを含有する固体伝導性材料の技術に関し、例えば、有機マトリックスとしてN−メチル−N−プロピルピロリジウムのジシアノアミド塩を、イオンドーパントとしてLiSO3CF3を用いた固体伝導性材料が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
またN−アルキル−N−メチルピロリジウム又は1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムのジシアノアミド塩に関し、熱的特性、粘度、定性的な電位安定性について研究を行い、ジシアノアミド塩が低粘度のイオン性液体として有用であることが開示されていると共に、このようなジシアノアミド塩の合成方法についても開示されている(例えば、非特許文献3。)。この合成方法において、N−アルキル−N−メチルピロリジウムのジシアノアミド塩は、下記反応式で表されるN−アルキル−N−メチルピロリジウムのヨウ素化塩とジシアノアミド銀との反応によって得られることとなる。
【0009】
【化3】
【0010】
しかしながら、このような合成方法においては、N−アルキル−N−メチルピロリジウムのジシアノアミド塩を形成する反応を行った後に、(1)ろ過して溶媒除去、(2)ジクロロメタンに溶解し、脱水するためにMgSO4を添加、(3)ろ過して溶媒除去、(4)減圧乾燥という洗浄工程を行って生成物を得ることになるが、電気化学デバイスに用いる場合に、このような洗浄工程を行っても不純物が多く、生成物がイオン伝導体用材料として好適なものとはならず、また、反応液中に銀イオンが存在し、これが生成物中に不純物として混入すると、イオン伝導体の性能を低下させることから、これらの点において工夫の余地があった。更に、反応液中に沈殿が生じ、効率的に製造できないことから、この点においても工夫の余地があった。
【0011】
ところで、シアノ置換メチド及びアミドを含むシアノ置換塩に関し、N−シアノ置換アミド、N−シアノ置換スルホンアミド、1,1,1−ジシアノ置換スルホニルメチド及び1,1,1−ジシアノアシルメチドから成る群から選択される少なくとも一種の塩とマトリックス材料とを含む電解質が開示され、シアノ置換メチド又はアミドをLiOH・H2OやLi2CO3により中和することにより、電解質を構成する塩が得られることが記載されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、シアノ置換メチド又はアミドをLiOH・H2OやLi2CO3により中和して電解質を構成する塩を得ていることから、この点において製造方法を好適化したうえで、生成物中に不純物が混入しないようにしたり、反応液中に沈殿が生じたりしないようにする工夫の余地があった。
【0012】
またカチオン性部分M+mと結合するアニオン性部分を含むイオン性化合物に関し、カチオン性部分のMは、ヒドロキソニウム、ニトロソニウムNO+、アンモニウムNH4 +、原子価mを有する金属カチオン、原子価mを有する有機カチオン又は原子価mを有する有機金属カチオンであり、アニオン性部分は、式RD−Y−C(C≡N)2 −又はZ−C(C≡N)2 −のうちの1つに相当し、アニオンとなる元素が炭素原子(C)のみにより構成されるものであり、このイオン性化合物は、イオン伝導体材料等に用いることができることが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。このイオン性化合物は、化合物RD−Y−L又はZ−Lを化合物[A−C(CN)2]n−mnM’m+と反応させることで得られ、例えば、下記の式により得られることが開示されている。
FSO2−F+[NaC(CN)2]−Na+→NaF+[FSO2−C(CN)2]−Na+
しかしながら、このようなイオン性化合物の製造方法においては、Aが金属カチオンである化合物を用いてもよいことが記載されており、これに起因して生成物が着色したり、不純物が混入したりしないようにすることについての開示はなく、優れた基本性能を発揮するイオン伝導体材料を製造する方法とするための工夫の余地があった。
【0013】
【非特許文献1】
小浦ら、J.Electrochem.Soc.、1993年、140、p.602
【非特許文献2】
C.A.Angellら、Nature、1933年、362、p.137
【特許文献1】
国際公開第01/15258号パンフレット(第14−17頁)
【非特許文献3】
Douglas R.MacFarlane、他4名、Chem.Commun.、2001年、p.1430−1431
【特許文献2】
特表2002−523879号公報(第1−7頁、第28−36頁)
【特許文献3】
特表2000−508677号公報(第1−12頁、第20−21頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制され、電気化学デバイスを形成するために好適なイオン伝導体用材料の製造方法に適用できるイオン性物質の製造方法であって、効率的にイオン性物質を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、イオン性物質について種々検討した結果、塩の形態とすることにより揮発性がなくなって安全に取り扱うことができるものとなり、溶融塩に電解質を溶解した液体状態や、固体状態の塩によるイオン伝導体が有用であることに着目し、このようなイオン性物質が特定のアニオンを有するものであると、このイオン性物質により構成されるイオン伝導体用材料が、電気化学デバイスに用いる場合に優れたイオン伝導度を有し、しかも電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定であることを見いだした。このようなイオン伝導体用材料に必須として用いられるイオン性物質の製造方法において、特定の構造であるアニオンを有し、金属分を有しない化合物から誘導してイオン性物質を得ることにより、イオン性物質を溶融塩や固体電解質を構成する塩として好適な形態とすることができることとなり、この際に生成物であるイオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分がないことに起因して、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制されることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。イオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分があると、これにより様々な副反応が起こり、例えば、アニオンの二量体等が生成して不純物となって混入することとなる。本発明においては、電気化学デバイスを形成した場合に、不純物により性能が低下することが抑制され、また、製造工程においては、反応液中に沈殿が生じることが抑制されて効率的に製造することができることとなる。なお、イオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分とは、例えばイオン性物質の製造原料に不純物として含有される金属分ではなく、製造原料として用いる化合物を構成する金属分を意味する。
【0016】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0017】
【化4】
【0018】
(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表す。M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するイオン性物質の製造方法であって、上記イオン性物質の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物から上記イオン性物質を誘導する工程を含んでなり、上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものであるイオン性物質の製造方法である。
本発明はまた、上記イオン性物質の製造方法により製造されるイオン性物質を必須としてなり、電解液用材料として用いられるイオン伝導体用材料の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0019】
本発明の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質を製造する方法である。このようなイオン性物質の製造方法は、イオン性物質を必須としてなり、電解液用材料として用いられるイオン伝導体用材料の製造方法に適用することができ、このようなイオン伝導体用材料の製造方法も本発明の一つである。
上記イオン伝導体用材料とは、電解液又は電解質用材料であって、電解液を構成する溶媒及び/又は電解質の材料(電解液用材料)として、また、固体電解質の材料(電解質用材料)として電気化学デバイスのイオン伝導体に好適に用いることができるものであるが、本発明の製造方法においては、電解液用材料として用いられるイオン伝導体用材料を製造することとなる。この場合において、本発明による一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質としては、室温(25℃)において、一定体積をもち、かつ流動性を有する液体であることが好ましく、具体的には、室温(25℃)で300mPa・s以下の液体であることが好ましい。より好ましくは、200mPa・s以下、更に好ましくは、100mPa・s以下の液体である。
【0020】
本発明のイオン性物質の製造方法においては、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程を含んでなり、上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものを用いることとなる。これにより、生成物であるイオン性物質を形成しない銀イオン等の金属分が反応系中に存在しないで目的物であるアニオンを有するイオン性物質を製造することが可能となり、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制されることとなる。これにより、副生してくる金属化合物の処理の必要がなくなることになる。
【0021】
上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する方法としては、ハロゲン化物を用いて一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物を溶融塩や固体電解質を構成する塩として好適な形態とすることが好ましく、例えば、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物と、ハロゲン化物とを反応させる工程を含んでなり、該ハロゲン化物は、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するものであることが好ましい。これらの製造原料は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
上記工程において、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程における化学反応式の1つを下記式(1)に示す。
【0022】
【化5】
【0023】
上記工程において、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物のモル数をaとし、ハロゲン化物のモル数をbとすると、反応におけるモル比(a/b)としては、100/1〜0.1/1であることが好ましい。アニオンを有する化合物が0.1未満であると、ハロゲン化物が過剰となりすぎて効率的に生成物を得られないおそれがあり、また、イオン伝導体用材料の製造方法においてはイオン伝導体用材料中にハロゲンが混入し、電極等を被毒させるおそれがある。100を超えると、アニオンを有する化合物が過剰となりすぎて更に収率の向上は期待できないおそれがある。より好ましくは、10/1〜0.5/1 である。
【0024】
上記工程の反応条件は、製造原料や他の反応条件等により適宜設定することができるが、反応温度としては、−20〜200℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、10〜60℃が更に好ましい。反応圧力としては、1×102〜1×108Paが好ましく、1×103〜1×107Paがより好ましく、1×104〜1×106Paが更に好ましい。反応時間としては、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下が更に好ましい。
【0025】
上記工程においては、通常では反応溶媒を用いることとなり、反応溶媒としては、(1)ヘキサン、オクタンなど脂肪族炭化水素系;(2)シクロヘキサンなど脂環式飽和炭化水素系;(3)シクロヘキセンなど脂環式不飽和炭化水素系;(4)ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族炭化水素系;(5)アセトン、メチエチルケトンなどケトン類;(6)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどエステル類;(7)ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などハロゲン化炭化水素類;(8)ジエチルエーテル、ジオキサン、ジオキソランなどエーテル類、(9)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどアルキレングリコールのエーテル類;(10)メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどアルコール類;(11)ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどアミド類;(12)ジメチルスルホキシドなどスルホン酸エステル類;(13)ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど炭酸エステル類;(14)エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど脂環式炭酸エステル類;(15)アセトニトリル等のニトリル類;(16)水等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、(5)、(6)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)が好ましく、更に(5)、(10)、(15)、(16)がより好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においては、上記工程の後に、沈殿物等のろ過、溶媒の除去、脱水、減圧乾燥等の処理を行ってもよく、例えば、生成した沈殿物をろ過し、イオン性物質を含んだ溶媒から真空等の条件下で溶媒を除去した後、ジクロロメタン等の溶剤に溶解することで洗浄し、MgSO4等の脱水効果を有する物質を添加して脱水し、溶媒除去後に減圧乾燥することでイオン性物質を得てもよい。溶剤による洗浄処理の回数としては、適宜設定すればよく、溶剤としては、ジクロロメタン以外に、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、水等が好適である。また、脱水効果を有する物質としては、MgSO4以外に、モレキュラーシーブ、CaCl2、CaO、CaSO4、K2CO3、活性アルミナ、シリカゲル等が好適であり、添加量は、生成物や溶剤の種類等により適宜設定すればよい。
【0027】
本発明のイオン性物質の製造方法は、下記一般式(2);
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、Aは、金属元素を有しない基を表す。Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表す。M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表される化合物と、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するハロゲン化物とを反応させる工程を含んでなることが好ましい。オニウムカチオンとは、O、N、S、P等の非金属原子又は半金属原子のカチオンを有する有機基を意味する。
【0030】
上記一般式(2)で表される化合物において、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表すが、C、N又はSが好ましい。より好ましくは、C又はNである。Qは、有機基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、CpF(2p+1−q)Hq、OCpF(2p+1−q)Hq、SO2CpF(2p+1−q)Hq、CO2CpF(2p+1−q)Hq、SO3C6F5−rHr、NO2(式中、1≦p≦6、0<q≦13、0<r≦5である)等が好ましい。より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、CpF(2p+1−q)Hq、SO2CpF(2p+1−q)Hqである。
【0031】
上記一般式(2)で表される化合物におけるAは、金属元素を有しない基を表すが、アンモニウム、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム等の基であることが好ましく、アンモニウム基がより好ましい。すなわち、一般式(2)で表される化合物は、アンモニウム化合物であることが好ましい。従って、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、アンモニウム化合物であることが好ましい。
M1及びM2は、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表すが、それぞれ独立に、−S−、−O−、−SO2−、−CO−から選ばれる連結基であり、好ましくは、−SO2−、−CO−である。また、aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数であるが、a、d及びeは、元素Xの価数によって決まることになり、例えば、XがSの場合、a=1、d=0、e=0となり、XがNの場合、(1)a=2、d=0、e=0、(2)a=1、d=1、e=0、又は、(3)a=1、d=0、e=1のいずれかとなる。
【0032】
上記ハロゲン化物としては、臭化物であることが好ましく、アルカリ金属原子を必須とするカチオンとしては、リチウムカチオンであることが好ましい。また、オニウムカチオンとしては、下記一般式(3);
【0033】
【化7】
【0034】
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一若しくは異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。sは、3、4又は5であり、元素Lの価数によって決まる値である。)で表されるものが好適であり、具体的には下記一般式;
【0035】
【化8】
【0036】
(式中、Rは、一般式(3)と同様である。)で表されるものが好適である。このようなオニウムカチオンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、下記のようなオニウムカチオンが好ましいものである。
(1)下記一般式;
【0037】
【化9】
【0038】
で表される9種類の複素環オニウムカチオン。
(2)下記一般式;
【0039】
【化10】
【0040】
で表される5種類の不飽和オニウムカチオン。
(3)下記一般式;
【0041】
【化11】
【0042】
で表される9種類の飽和環オニウムカチオン。
上記一般式中、R1〜R12は、同一又は異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。
このようなオニウムカチオンの中でも、より好ましくは、一般式(3)におけるLが窒素原子であるものであり、更に好ましくは、下記一般式;
【0043】
【化12】
【0044】
(式中、R1〜R12は、上記と同様である。)で表される4種類のオニウムカチオンである。
上記R1〜R12の有機基としては、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルフィド基や、直鎖、分岐鎖又は環状で、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基、炭化フッ素基等が好ましく、より好ましくは水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜8の炭化水素基である。
【0045】
本発明はまた、上記一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質の製造方法であって、上記イオン性物質の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物と、ハロゲン化物とを反応させる工程を含んでなり、上記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものであり、上記ハロゲン化物は、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するものであるイオン性物質の製造方法でもある。
【0046】
本発明のイオン性物質の製造方法としては、イオン性物質を必須としてなり、電解液用材料又は電解質用材料として用いられるイオン伝導体用材料の製造方法に適用することができ、このようなイオン伝導体用材料の製造方法も本発明の一つである。また、この製造方法においては、上述した一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する場合における好ましい方法と同様の方法を用いることとなり、製造原料、反応モル比、反応条件、反応溶媒、工程後の処理等も上記と同様である。
【0047】
上述したイオン伝導体用材料の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質を必須としてイオン伝導体用材料を製造することとなる。
上記一般式(1)で表されるアニオンにおいて、X、Q、M1、及びM2は、上述した一般式(2)と同様である。また、a、b、c、d及びeについても、一般式(2)と同様である。
上記一般式(1)で表されるアニオンとしては、一般式(1)においてeが0である下記一般式(4)で表されるアニオンが好ましく、より好ましくは、トリシアノメチリドアニオン、ジシアノアミドアニオン、チオイソシアネートアニオンである。また、下記一般式(5)や一般式(6)で表されるもの等も好ましいアニオンである。
【0048】
【化13】
【0049】
上記イオン性物質としては、一般式(1)で表されるアニオン及びプロトンから形成される化合物、一般式(1)で表されるアニオンの有機塩、一般式(1)で表されるアニオンの無機塩が好適である。
上記イオン性物質が一般式(1)で表されるアニオンの有機塩である場合、本発明によるイオン伝導体用材料は、溶融塩として好適なものとなり、また、一般式(1)で表されるアニオンの無機塩である場合、本発明によるイオン伝導体用材料は、電解質として好適なものとなる。なお、溶融塩とは、室温から80℃の温度範囲において液体状態を安定に保つことができるものである。
【0050】
上記一般式(1)で表されるアニオンの有機塩としては、一般式(1)で表されるアニオンのオニウム塩であることが好ましく、これらの中でも、上述したオニウムカチオンによる有機塩がより好ましい。更に好ましくは、一般式(1)で表されるアニオンのN−アルキル−N−メチルピロリジウム塩である。一般式(1)で表されるアニオンがジシアノアミドアニオンである場合におけるN−アルキル−N−メチルピロリジウム塩としては、上記式(1)で表される反応により製造されることが好ましい。
【0051】
上記一般式(1)で表されるアニオンの無機塩としては、上述した一般式(1)で表されるアニオンのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることが好ましく、リチウム塩であることがより好ましい。このようなリチウム塩としては、上述した好ましいアニオンのリチウム塩の他にも、LiC(CN)3、LiSi(CN)3、LiB(CN)4、LiAl(CN)4、LiP(CN)2、LiP(CN)6、LiAs(CN)6等が好適である。
【0052】
本発明によるイオン伝導体用材料における一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質の存在量としては、イオン伝導体用材料100質量%に対して、一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質が1質量%以上であることが好ましく、また、99.5質量%以下が好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、また、95質量%以下である。更に好ましくは、10質量%以上であり、また、90質量%以下である。なお、上記一般式(1)で表されるアニオンを有するイオン性物質において、製造原料に含有される不純物やそれに起因する不純物の含有量としては、200ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、50ppm以下であり、更に好ましくは、20ppm以下である。上記製造原料に含有される不純物とは、例えば、製造原料を製造する際に混入した副生物等を意味する。
【0053】
本発明においてイオン伝導体用材料は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなるものであることが好ましい。この場合において、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、本発明におけるイオン性物質であってもよく、これとは別に添加された化合物であってもよい。このようなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなる本発明のイオン伝導体用材料は、電解質を含有するものとなり、電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
【0054】
上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩において、本発明におけるイオン性物質とは別に添加された化合物としては、電解液中や高分子固体電解質中での解離定数が大きい電解質塩であることが好ましく、LiCF3SO3、NaCF3SO3、KCF3SO3等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiN(CF3SO3)3、LiN(CF3CF3SO2)2等のパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF6、NaPF6、KPF6等のヘキサフロロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiClO4、NaClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF4、NaBF4等のテトラフロロ硼酸塩;LiAsF6、LiI、NaI、NaAsF6、KI等のアルカリ金属塩等が好適である。また、溶解性やイオン伝導度の点から、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、パーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0055】
上記イオン伝導体用材料としては、その他の電解質塩を含有していてもよく、過塩素酸テトラエチルアンモニウム等の過塩素酸の四級アンモニウム塩;(C2H5)4NBF4等のテトラフロロ硼酸の四級アンモニウム塩、(C2H5)4NPF6等の四級アンモニウム塩;(CH3)4P・BF4、(C2H5)4P・BF4等の四級ホスホニウム塩等が好適であり、溶解性やイオン伝導度の点から、四級アンモニウム塩が好ましい。
【0056】
上記イオン伝導体用材料における電解質塩の存在量としては、イオン伝導体用材料100質量%に対して、電解質塩0.1質量%以上が好ましく、また、50質量%以下が好ましい。0.1質量%未満であると、イオンの絶対量が不足となってイオン伝導度が小さくなるおそれがある。50質量%を超えると、イオンの移動が大きく阻害されるおそれがある。より好ましくは、30質量%以下である。
【0057】
上記イオン伝導体用材料は、オニウムカチオンを有する有機化合物を含んでなるものであることが好ましい。オニウムカチオンを有する有機化合物としては、上述したようなオニウムカチオンを有するものであることが好ましく、この場合においては、本発明におけるイオン性物質がオニウムカチオンを有する有機化合物であってもよく、これとは別に添加された化合物であってもよい。このようなオニウムカチオンを有する有機化合物を含んでなるイオン伝導体用材料は、溶融塩を含有するものとなり、電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。
【0058】
上記オニウムカチオンを有する有機化合物において、本発明におけるイオン性物質とは別に添加された化合物としては、ハロゲンアニオン(フルオロアニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオン)、4フッ化ホウ酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、6フッ化ヒ酸アニオン、下記一般式(7)で表されるスルホニルイミドアニオン、下記一般式(8)で表されるスルホニルメチドアニオン、有機カルボン酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸等のアニオン)等のアニオンと、オニウムカチオンとを有する有機化合物が好適である。
【0059】
【化14】
【0060】
上記一般式(7)及び一般式(8)中、R13、R14及びR15は、同一又は異なって、エーテル基を1個又は2個有してもよい炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。
【0061】
上記イオン伝導体用材料におけるオニウムカチオンの存在量としては、一般式(1)で表されるアニオン1molに対し、0.5mol以上が好ましく、また、2.0mol以下が好ましい。より好ましくは、0.8mol以上であり、また、1.2mol以下である。
【0062】
上記イオン伝導体用材料はまた、プロトンを含むことにより、水素電池を構成するイオン伝導体の材料として好適に用いることができるものとなる。なお、本発明においては、解離してプロトンを発生することができる化合物を含ませることにより、本発明によるイオン伝導体用材料中にプロトンが存在することになる。上記イオン伝導体用材料におけるプロトンの存在量としては、イオン伝導体用材料に対して、0.01mol/L以上が好ましく、また、10mol/L以下が好ましい。0.01mol/L未満であると、プロトンの絶対量が不足となってプロトン伝導度が小さくなるおそれがある。10mol/Lを超えると、プロトンの移動が大きく阻害されるおそれがある。より好ましくは、5mol/L以下である。
【0063】
本発明におけるイオン伝導体用材料は、重合体を含むと、固体化して高分子固体電解質として好適に用いることができるものとなる。また、有機溶媒を含むと、イオン伝導度がより向上することになる。
上記重合体としては、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のポリビニル系重合体;ポリオキシメチレン:ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系重合体;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリフォスファゼン類、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート系重合体、アイオネン系重合体が好適である。
【0064】
上記イオン伝導体用材料を高分子固体電解質とする場合、重合体の存在量としては、イオン伝導体用材料100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、また、500質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、固体化の効果が得られないおそれがあり、500質量%を超えると、イオン伝導度が低下するおそれがある。より好ましくは、1質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0065】
上記有機溶媒としては、本発明によるイオン伝導体用材料の構成要素との相溶性が良好であり、誘電率が大きく、電解質塩の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が好適である。また、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)がより好ましい。
このような有機溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類や炭酸ビニレン等の炭酸エステル類;プロピオン酸メチルや蟻酸メチル等の脂肪族エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等の脂肪族ニトリル類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;スルホラン等の硫黄化合物;ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、リン酸エステル類が好適である。これらの中でも、炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類がより好ましく、カーボネート類が更に好ましい。
【0066】
本発明におけるイオン伝導体用材料は、上記以外の構成要素を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、各種無機酸化物微粒子を含むことにより、複合電解質としても使用でき、これにより、強度、膜厚均一性が改善するばかりでなく、無機酸化物と上述した重合体間に微細な空孔が生じることになり、特に溶媒を添加した場合には空孔内にフリーの電解液が複合電解質内に分散することになり、強度改善効果を損ねることなく、逆にイオン伝導度、移動度を増加させることもできる。
【0067】
上記無機酸化物微粒子としては、非電子伝導性、電気化学的に安定なものが好適であり、またイオン伝導性を有するものがより好ましい。このような微粒子としては、α、β、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト等のイオン伝導性又は非電導性セラミックス微粒子が好適である。
【0068】
上記無機酸化物微粒子の比表面積としては、高分子固体電解質中の電解質含有液の保有量を多くし、イオン伝導性、移動度を増加させるという点から、できるだけ大きいことが好ましく、BET法で5m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましい。このような無機酸化物微粒子の結晶粒子径としては、イオン伝導体用材料における他の構成要素と混合できればよいが、大きさ(平均結晶粒径)としては0.01μm以上が好ましく、また、20μm以下が好ましい。より好ましくは、0.01μm以上であり、また、2μm以下である。
上記無機酸化物微粒子の形状としては、球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒、棒状等の種々の形状を有するものを用いることができる。
【0069】
上記無機酸化物微粒子の添加量としては、高分子固体電解質に対して50質量%以下が好ましい。50質量%を超えると、逆に高分子固体電解質の強度やイオン伝導性を低下させたり、成膜しづらくなったりするおそれがある。より好ましくは、0.1質量%以上であり、また、30質量%以下である。
【0070】
上記イオン伝導体用材料は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適なものである。このような本発明によって製造されるイオン伝導体用材料を用いてなる二次電池、電解コンデンサ又は電気二重層キャパシタもまた、本発明の1つである。
【0071】
上記電気化学デバイスに用いられるイオン伝導体としては、電解質と有機溶媒又は重合体との混合物が好適である。有機溶媒を用いれば、一般にこのイオン伝導体は電解液と呼ばれ、重合体を用いれば、高分子固体電解質と呼ばれるものになる。高分子固体電解質には可塑剤として有機溶媒を含有するものも含まれる。本発明のイオン伝導体用材料は、このようなイオン伝導体において、電解液における電解質や有機溶媒の代替として、また、高分子固体電解質として好適に適用することができ、本発明のイオン伝導体用材料をイオン伝導体の材料として用いてなる電気化学デバイスでは、これらのうちの少なくとも1つが、本発明のイオン伝導体用材料により構成されることになる。これらの中でも、電解液における有機溶媒の代替、又は、高分子固体電解質として用いることが好ましい。
【0072】
上記有機溶媒としては、本発明のイオン伝導体用材料を溶解できる非プロトン性の溶媒であればよく、上述した有機溶媒と同様のものが好適である。ただし、2種類以上の混合溶媒にする場合、電解質がLiイオンを含むものである場合は、これらの有機溶媒のうち誘電率が20以上の非プロトン性溶媒と誘電率が10以下の非プロトン性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより電解液を調製することが好ましい。特にリチウム塩を用いる場合には、ジエチルエーテル、ジメチルカーボネート等の誘電率が10以下の非プロトン性溶媒に対する溶解度が低く単独では充分なイオン伝導度が得られず、また、逆に誘電率20以上の非プロトン性溶媒単独では溶解度は高いもののその粘度も高いため、イオンが移動しにくくなりやはり充分なイオン伝導度が得られないことになる。これらを混合すれば、適当な溶解度と移動度を確保することができ充分なイオン伝導度を得ることができる。
【0073】
上記電解質を溶解する重合体としては、上述した重合体1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中でも、ポリエチレンオキシドを主鎖又は側鎖にもつ重合体又は共重合体、ポリビニリデンフロライドの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸エステル重合体、ポリアクリロニトリルが好適である。これらの重合体に可塑剤を加える場合は、上記の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0074】
上記イオン伝導体中における電解質濃度としては、0.01mol/dm3以上が好ましく、また、飽和濃度以下が好ましい。0.01mol/dm3未満であると、イオン伝導度が低いため好ましくない。より好ましくは、0.1mol/dm3以上、また、1.5mol/dm3以下である。
【0075】
以下に本発明によるイオン伝導体用材料を用いてなる(1)二次電池、(2)電解コンデンサ、及び、(3)電気二重層キャパシタについて説明する。
(1)二次電池
二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ及び本発明のイオン伝導体用材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されるものである。このような二次電池としては、リチウム二次電池が好ましい。リチウム二次電池の一形態の断面模式図を図1に示す。このリチウム二次電池は、後述する負極活物質としてコークスを用い、正極活物質としてCoを含有する化合物を用いたものであるが、このようなリチウム二次電池おいて、充電時には、負極においてC6Li→6C+Li+eの反応が起こり、負極表面で発生した電子(e)は、電解液中をイオン伝導して正極表面に移動し、正極表面では、CoO2+Li+e→LiCoO2の反応が起こり、負極から正極へ電流が流れることになる。放電時には、充電時の逆反応が起こり、正極から負極へ電流が流れることになる。このように、イオンによる化学反応により電気を蓄えたり、供給したりすることとなる。
【0076】
上記負極としては、負極活物質、負極用導電剤、負極用結着剤等を含む負極合剤を負極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。負極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記負極活物質としては、金属リチウム、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料等が好適である。上記リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料としては、金属リチウム;熱分解炭素;ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス;グラファイト;ガラス状炭素;フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したものである有機高分子化合物焼成体;炭素繊維;活性炭素等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアセン等のポリマー;Li4/3Ti5/3O4、TiS2等のリチウム含有遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;アルカリ金属と合金化するAl、Pb、Sn、Bi、Si等の金属;アルカリ金属を格子間に挿入することのできる、AlSb、Mg2Si、NiSi2等の立方晶系の金属間化合物や、Li3−aGaN(G:遷移金属)等のリチウム窒素化合物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる金属リチウムや炭素材料がより好ましい。
【0077】
上記負極用導電剤は、電子伝導性材料であればよく、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、銅、ニッケル等の金属粉末;ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維がより好ましい。負極用導電剤の使用量としては、負極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。また、負極活物質は電子伝導性を有するため、負極用導電剤を用いなくてもよい。
【0078】
上記負極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体がより好ましい。
【0079】
上記負極用集電体としては、電池の内部において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらの中でも、銅や銅を含む合金がより好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの負極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。負極用集電体の形状としては、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体等が好適である。集電体の厚さとしては、1〜500μmが好適である。
【0080】
上記正極としては、正極活物質、正極用導電剤、正極用結着剤等を含む正極合剤を正極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。正極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記正極活物質としては、金属Li、LixCoO2 、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1−yO2、LixCoyJ1−yOz、LixNi1−yJyOz、LixMn2O4、LixMn2−yJyO4;MnO2、VgOh、CrgOh(g及びhは、1以上の整数)等のリチウムを含まない酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記Jは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBから選ばれた少なくとも1種の元素を表す。また、xは、0≦x≦1.2であり、yは、0≦y≦0.9であり、zは、2.0≦z≦2.3であり、xは、電池の充放電により増減することとなる。また、正極活物質としては、遷移金属カルコゲン化物、リチウムを含んでいてもよいバナジウム酸化物やニオブ酸化物、共役系ポリマーからなる有機導電性物質、シェブレル相化合物等を用いてもよい。正極活物質粒子の平均粒径としては、1〜30μmであることが好ましい。
【0081】
上記正極用導電剤としては、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であればよく、上述した負極用導電剤と同様のもの;アルミニウム、銀等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、ニッケル粉末がより好ましい。正極用導電剤の使用量としては、正極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。カーボンブラックやグラファイトを用いる場合には、正極活物質100重量部に対して2〜15重量部とすることが好ましい。
【0082】
上記正極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、上述した負極用結着剤におけるスチレンブタジエンゴム以外のものや、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0083】
上記正極用集電体としては、用いる正極活物質の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂、アルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金が好ましい。また、これらの正極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。正極用集電体の形状及び厚さとしては、上述した負極集電体と同様である。
【0084】
上記セパレータは、イオン伝導体として電解液を用いた場合においては、大きなイオン透過度と、所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性薄膜であることが好ましく、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を有するものであることが好ましい。材質としては、耐有機溶剤性と疎水性の点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるオレフィン系ポリマー又はガラス繊維等からなるシート、不織布又は織布等が好適である。セパレータが有する細孔の孔径としては、電極から脱離した正極活物質や負極活物質、結着剤、導電剤が透過しない範囲であることが好ましく、0.01〜1μmであることが好ましい。セパレータの厚さとしては、10〜300μmであることが好ましい。また、空隙率としては、30〜80%であることが好ましい。
【0085】
上記二次電池としては、ポリマー材料に、電解液を保持させたゲルを正極合剤又は負極合剤に含ませたり、電解液を保持するポリマー材料からなる多孔性のセパレータを正極又は負極と一体化することで構成されるものであってもよい。上記ポリマー材料としては、電解液を保持できるものであればよく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体等が好ましい。
上記二次電池の形状としては、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車等に用いる大形等が挙げられる。
【0086】
(2)電解コンデンサ
電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、陽極箔と陰極箔との間に挟まれたセパレータである電解紙、リード線及び本発明のイオン伝導体用材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものである。電解コンデンサの一形態の斜視図を図2(a)に示す。このような電解コンデンサとしては、アルミ電解コンデンサが好適である。アルミ電解コンデンサの一形態の断面模式図を図2(b)に示す。このようなアルミ電解コンデンサとしては、電解エッチングで細かな凹凸を作って粗面化したアルミ箔の表面に電解陽極酸化によって形成した薄い酸化被膜(酸化アルミニウム)を誘電体とするものが好適である。
【0087】
(3)電気二重層キャパシタ
電気二重層キャパシタは、負極、正極及び本発明のイオン伝導体用材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものであり、好ましい形態としては、対向配置した正極及び負極からなる電極素子に、イオン伝導体である電解液を含ませたものである。このような電気二重層キャパシタの一形態の断面模式図及び電極表面の拡大模式図を図3に示す。
【0088】
上記正極及び負極は、分極性電極であり、電極活物質として活性炭繊維、活性炭粒子の成形体、活性炭粒子等の活性炭と、導電剤と、バインダー物質とから構成され、薄い塗布膜、シート状又は板状の成形体として使用することが好適である。このような構成を有する電気二重層キャパシタにおいては、図3の拡大図に示されるように、イオンの物理的な吸・脱着により分極性電極と電解液との界面に生成する電気二重層に電荷が蓄えられることとなる。
【0089】
上記活性炭としては、平均細孔径が2.5nm以下であるものが好ましい。この活性炭の平均細孔径は、窒素吸着によるBET法によって測定されることが好ましい。活性炭の比表面積としては、炭素質種による単位面積あたりの静電容量(F/m2)、高比表面積化に伴う嵩密度の低下等により異なるが、窒素吸着によるBET法により求めた比表面積としては、500〜2500m2/gが好ましく、1000〜2000m2/gがより好ましい。
【0090】
上記活性炭の製造方法としては、植物系の木材、のこくず、ヤシ殻、パルプ廃液、化石燃料系の石炭、石油重質油、又は、それらを熱分解した石炭及び石油系ピッチ、石油コークス、カーボンアエロゲル、メソフェーズカーボン、タールピッチを紡糸した繊維、合成高分子、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イオン交換樹脂、液晶高分子、プラスチック廃棄物、廃タイヤ等の原料を炭化した後、賦活して製造する賦活法を用いることが好ましい。
【0091】
上記賦活法としては、(1)炭化された原料を高温で水蒸気、炭酸ガス、酸素、その他の酸化ガス等と接触反応させるガス賦活法、(2)炭化された原料に、塩化亜鉛、リン酸、リン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫化カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カルシウム、ホウ酸、硝酸等を均等に含浸させて、不活性ガス雰囲気中で加熱し、薬品の脱水及び酸化反応により活性炭を得る薬品賦活法が挙げられ、いずれを用いてもよい。
【0092】
上記賦活法により得られた活性炭は、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で、好ましくは500〜2500℃、より好ましくは700〜1500℃で熱処理することが好ましく、不要な表面官能基を除去したり、炭素の結晶性を発達させて電子伝導性を増加させてもよい。活性炭の形状としては、破砕、造粒、顆粒、繊維、フェルト、織物、シート状等が挙げられる。粒状の場合においては、電極の嵩密度の向上、内部抵抗の低減という点で、平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。
上記電極活物質としては、活性炭以外にも上述の高比表面積を有する炭素材料を用いてもよく、例えば、カーボンナノチューブやプラズマCVDにより作製したダイヤモンド等を用いてもよい。
【0093】
上記導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、酸化チタン、アルミニウム、ニッケル等の金属ファイバー等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、少量で効果的に導電性が向上する点で、アセチレンブラック及びケッチェンブラックがより好ましい。導電剤の配合量としては、活性炭の嵩密度等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0094】
上記バインダー物質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシルメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。バインダー物質の配合量としては、活性炭の種類と形状等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、0.5〜30質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。
【0095】
上記正極及び負極の成形方法としては、(1)活性炭とアセチレンブラックの混合物に、ポリテトラフルオロエチレンを添加混合した後、プレス成形して得る方法、(2)活性炭とピッチ、タール、フェノール樹脂等のバインダー物質を混合、成型した後、不活性雰囲気下で熱処理して焼結体を得る方法、(3)活性炭とバインダー物質又は活性炭のみを焼結して電極とする方法等が好適である。炭素繊維布を賦活処理して得られる活性炭繊維布を用いる場合は、バインダー物質を使用せずにそのまま電極として使用してもよい。
【0096】
上記電気二重層キャパシタには、セパレータを分極性電極に挟み込む方法や、保持手段を用いることにより分極性電極を間隔を隔てて対向させる方法等により、分極性電極が接触や短絡することを防ぐことが好ましい。セパレータとしては、使用温度域において溶融塩等と化学反応を起こさない多孔性の薄膜を用いることが好適である。セパレータの材質としては、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維等が好適である。
上記電気二重層キャパシタの形状としては、コイン型、巻回型、角型、アルミラミネート型等が挙げられ、いずれの形状としてもよい。
【0097】
本発明によるイオン伝導体用材料を用いてなる二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスは、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の各種用途に好適に用いることができるものである。
【0098】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0099】
〔銀イオン測定条件〕
機器:ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業社製)
方法:サンプル0.3gをイオン交換水で10倍に希釈し、その溶液を測定
〔硝酸イオン測定条件〕
機器:イオンクロマトグラフシステム DX−500(日本ダイオネクス社製)
分離モード:イオン交換
検出器:電気伝導度検出器 CD−20
カラム:AS4A−SC
方法:サンプル0.3gをイオン交換水で100倍に希釈し、その溶液を測定
【0100】
〔実施例1〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、攪拌装置、及び、滴下漏斗を備えたフラスコに、メチルピロリジン85g(1.0mol)と2−ブタノン(以下、MEKと記す)400gを仕込み、窒素気流下で50℃に保ちながら、n−ブチルブロマイド205.5g(1.5mol)を2時間をかけて滴下し、更に、2時間、80℃を保ち、反応を終了した。次いで、反応液をろ過して、やや黄白色結晶の1−メチル−3−ブチルピロリジウムブロマイド(以下、MBPyBrと記す)を得た。その後、この結晶をMEKで2回洗浄して白色のMBPyBr187g(収率90%)を得た。
【0101】
次いで、温度計、窒素ガス導入誉、還流冷却管、及び、攪拌装置を備えたフラスコに、ジシアナミドアンモニウム(以下、ADCAと記す)37.8g(0.45mol)、及び、アセトニトリル100gを加え、室温で分散させた。次いで、MBPyBr62.4g(0.30mol)をアセトニトリル300gに溶解させ、上記ADCA分散水溶液に2時間かけて滴下した。この時、系内は30℃以下に保持した。滴下終了後、更に、24時間、室温で攪拌した。その後、吸引ろ過で沈澱物を除去し、そのろ液をロータリーエバポレーターを用いて、50℃、1.3〜26.6kPaで揮発分を除去した。次いで、この濃縮物をジクロロメタンに溶解させ1晩放置した後、その溶液をポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターを用いてジクロロメタンを除去し、60℃、3日間、減圧下で乾燥させ、1−メチル−3−ブチルピロリジウムジシアナミド(以下、MBPyDCAと略す)を得た(60g、収率90%)。
このMBPyDCAは無色透明液であり、粘度は35mPa、銀イオン濃度は20ppm、硝酸イオン濃度は10ppmであった。
【0102】
〔実施例2〕
実施例1におけるMBPyBrを3−エチル−1−メチル−イミダゾリウムブロマイド53.7g(0.30mol)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、3−エチル−1−メチル−イミダゾリウムジシアナミドを得た。
この3−エチル−1−メチル−イミダゾリウムジシアナミドはやや茶色の透明液であり、粘度は15mPa、銀イオン濃度は15ppm、硝酸イオン濃度は10ppmであった。
〔実施例3〕
実施例1におけるジクロロメタンをアセトニトリルに変更した以外、同様の操作を行い、MBPyDCAを得た。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1におけるADCAをジシアナミド78.8gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、MBPyDCAを得た。
このMBPyDCAは薄黄色の透明液であり、粘度は30mPa、銀イオン濃度は150ppm、硝酸イオン濃度は170ppmであった。
【0104】
【発明の効果】
本発明のイオン性物質の製造方法は、上述の構成よりなり、イオン伝導性に影響する不純物の混入が抑制され、電気化学デバイスを形成するために好適なイオン伝導体用材料の構成材料であるイオン性物質を効率的に製造することができ、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスに好適なイオン伝導体用材料の製造方法に適用することができる方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】リチウム二次電池の一形態を示す断面模式図である。
【図2】(a)は、電解コンデンサの一形態を示す斜視図であり、(b)は、アルミ電解コンデンサの一形態を示す断面模式図である。
【図3】電気二重層キャパシタの一形態を示す断面模式図及び電極表面の拡大模式図である。
Claims (8)
- 前記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、アンモニウム化合物である
ことを特徴とする請求項1記載のイオン性物質の製造方法。 - 請求項1又は2記載のイオン性物質の製造方法により製造されるイオン性物質を必須としてなり、電解液用材料として用いられる
ことを特徴とするイオン伝導体用材料の製造方法。 - 下記一般式(1);
該イオン性物質の製造方法は、一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物と、ハロゲン化物とを反応させる工程を含んでなり、
該一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、金属元素を有しないものであり、
該ハロゲン化物は、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するものである
ことを特徴とするイオン性物質の製造方法。 - 前記一般式(1)で表されるアニオンを有する化合物は、アンモニウム化合物である
ことを特徴とする請求項4記載のイオン性物質の製造方法。 - 請求項4又は5記載のイオン性物質の製造方法により製造されるイオン性物質を必須としてなる
ことを特徴とするイオン伝導体用材料の製造方法。 - 前記イオン伝導体用材料は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなる
ことを特徴とする請求項3又は6記載のイオン伝導体用材料の製造方法。 - 請求項3、6又は7記載の製造方法によって製造されるイオン伝導体用材料を用いてなる
ことを特徴とする二次電池、電解コンデンサ又は電気二重層キャパシタ。
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