【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絹フィブロインに重合性を付与した化合物である絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体、およびこれを用いて絹のもつ特性を付与したポリアクリロニトリル系繊維の改質方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアクリロニトリル系繊維は、アクリロニトリル単独、あるいはアクリロニトリルに一部ビニル重合可能なビニル化合物を共重合した組成からなって、メリヤス、セーター、織物、衣服、毛布等広範囲の繊維製品原料として利用されている。ポリアクリロニトリル系繊維は、羊毛に似た性質を有する点に大きな特徴を有するが、吸湿性の点では羊毛に比べて大きく劣っており、静電気が発生しやすく、また感触が冷たい等の問題を含んでいる。そこでポリアクリロニトリル系繊維の改質として、ポリアクリロニトリル系繊維にメタクリル酸及び/又はヒドロキシ基含有メタクリレートをグラフト共重合反応させる方法が提案された〔特許文献1参照〕。
【0003】
一方、絹は保湿性、吸水性、肌触りなどにおいて優れた特性を備えていることから、絹のもつ特性を合成繊維に付与しようとする試みがなされ、例えば、絹フィブロインを加水分解して得た低分子量ポリペプチドを繊維材料表面に付着させる方法〔特許文献2参照〕、絹フィブロインと固着剤(架橋能を有するプレポリマー)を含む処理液で繊維製品を一浴処理して、合成繊維表面に固着させる方法〔特許文献3参照〕、多孔性のアクリル系合成繊維からなる繊維構造物の表面に絹フィブロイン−合成重合体からなる皮膜を形成させる方法〔特許文献4参照〕、絹フィブロイン加水分解した低分子ポリペプチドと水性バインダーを混合して繊維材料にコーティングした後硬化させる方法〔特許文献5参照〕、フィブロインなどアミノ基、水酸基を有する天然有機物に不飽和基を有するイソシアネートと反応させて重合性を付与してビニル化合物と共重合する方法〔特許文献6参照〕などが提案されている。またコンタクトレンズ用材料としてではあるが、絹フィブロイン水溶液中でビニルモノマーをグラフト重合して絹フィブロインをポリマー中に導入する方法の報告〔特許文献7参照〕がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−238469号公報
【特許文献2】
特開平5−5275号公報
【特許文献3】
特開平7−300772号公報
【特許文献4】
特開平7−229065号公報
【特許文献5】
特開平10−212456号公報
【特許文献6】
特開平10−195169号公報
【特許文献7】
特開平9−316143号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
絹フィブロインを繊維に付着させただけでは洗濯などにより脱落しやすく、繊維と結合させると繊維の柔軟性が損なわれ、絹本来の特性が充分発揮されないことが多かった。かかる問題点を解決すべく本発明の目的は、絹フィブロインにビニル重合性を付与し、この重合性を付与した絹フィブロインをアクリロニトリルと共重合してポリアクリロニトリルの特性を生かしながらさらに絹のもつ優れた特性を付与するポリアクリロニトリル系繊維の改質方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達すべくなされたもので、請求項1の発明は絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体に係り、非プロトン性有機溶剤中、塩基の存在下に絹フィブロイン加水分解物と(メタ)アクリル酸クロライドを反応させて得ることからなっている。
【0007】
請求項2の発明はポリアクリロニトリル系繊維の改質方法に係り、前記絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体を共重合成分として含むことからなっている。
【0008】
請求項3の発明は請求項2記載のポリアクリロニトリル系繊維の改質方法に係り、前記絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体は、ポリアクリロニトリル系重合体中に0.05〜3重量%含むことからなっている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体は、絹フィブロイン加水分解物と(メタ)アクリル酸クロライドを、非プロトン性有機溶剤中、塩基の存在下に反応させて得ることができる。
【0010】
絹フィブロイン加水分解物は、蚕(学名:ボンビックス・モリ)の繭から取れる絹を、有機溶剤でワックス、炭水化物およびセリシンを除き、イオン交換水−臭化リチウム1水和物−メチルアルコール〔1:4:5(重量比)〕混合溶液に溶解して不溶解物をろ別した後、透析して臭化リチウムを除き、フィブロイン粉体を得て、さらにこの粉体をα−キモトリプシンなど酵素により加水分解したものである。絹フィブロイン加水分解物は、絹フィブロインの構成アミノ酸のオリゴマーであり、アミノ基を有している。
【0011】
(メタ)アクリル酸クロライドは、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、あるいは両者の混合物である。
【0012】
絹フィブロイン加水分解物と(メタ)アクリル酸クロライドの反応は、通常のアミノ基と酸クロライドの反応と同様であり、非プロトン性有機溶剤中、塩基の存在下で行われる。非プロトン性有機溶剤は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジンなどであり、反応に先立ち充分よく脱水しておく。塩基は、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリンなどの3級アミンが用いられる。塩基は、反応を促進させる触媒になるとともに、反応によって生じる塩酸を捕捉するので、生じる塩酸より多い当量加える必要がある。反応は発熱を伴うので、通常は非プロトン性有機溶剤中に、絹フィブロイン加水分解物および塩基を溶解し、氷水で0℃あるいはそれ以下の温度に冷却しながら、攪拌下に(メタ)アクリル酸クロライドを滴下していく。
【0013】
本発明におけるポリアクリロニトリル系繊維の改質方法においては、前記絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体を共重合成分として含むポリアクリロニトリル系繊維であり、具体的には、アクリロニトリルを主成分とするビニル系モノマーに前記絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体を混合して共重合し、繊維化したものである。
【0014】
共重合方法について具体的な例を挙げると、フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体を、塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液に溶解し、ろ過して不溶解分を除いた後、アクリロニトリル、さらに必要により他のビニル系モノマーを加え、重合開始剤を加えて行われる。重合開始剤は、過硫酸アンモニウム、N,N−アゾビスイソブチロニトリルなど一般にビニル重合に使用される重合開始剤である。重合条件は、用いる重合開始剤の種類や量によっても異なり一律に定義できないが、一般的には40〜80℃で、1〜2時間である。
【0015】
絹フィブロインから絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体への反応、および絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体とアクリロニトリルを共重合する反応は以下のように表される。
【0016】
【化1】
【0017】
絹フィブロイン加水分解物は分子中に複数のアミノ基を有する多官能性であるので、絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体にしてアクリロニトリルと共重合したときに、アクリロニロリル鎖が絹フィブロイン加水分解物で架橋化された構造になる。従って、絹フィブロインを多く含むアクリロニトリル共重合体は不溶化することがある。
【0018】
本発明は、ポリアクリロニトリル系繊維を改質するために絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体を共重合体成分として加えるが、このとき予め絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体を多く含む共重合体を製造しておき、これと絹フィブロインを含まない通常のポリアクリロニトリル系重合体をブレンドして繊維化する方法は、絹フィブロインを多く含むアクリロニトリル共重合体を作ることになるので不都合になることがある。
【0019】
本発明が目的とする効果を発揮するには、最終的にポリアクリロニトリル系繊維中に絹フィブロインが結合した(メタ)アクリル酸誘導体を好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%含まれるようにする。0.05重量%未満では本発明が目的とする効果が充分でなく、3重量%を超えると溶媒に不溶化して紡糸することが難しくなることがあり、さらにポリアクリロニトリル系繊維の風合いを損なうことがある。
【0020】
絹フィブロインが結合した(メタ)アクリル酸誘導体を、アクリロニトリルに対し上記範囲にすることにより、共重合体はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの中で、溶解〜ゲル化状態にすることができ、この状態から紡糸して繊維化することができる。
【0021】
【実施例】
1.絹フィブロイン粉体の製造:
蚕(学名:ボンビックス・モリ)の繭を、ソックスレイ抽出器を用いてエチルエーテル、次いで、エチルアルコールにて抽出洗浄してワックス分、炭水化物およびセリシンを除いた。残ったフィブロイン分をイオン交換水、臭化リチウム・1水和物、メチルアルコール〔1:4:5(重量比)〕混合溶液に溶解し、これを透析して臭化リチウムを除いた後、蒸発乾固してフィブロイン粉体とした。
【0022】
2.絹フィブロイン加水分解物〔SF加水分解物〕の製造:
絹フィブロイン粉体1〜2gをイオン交換水100mLに分散し、フィブロインに対し10%のα−キモトリプシンを加え、pH7〜8、37℃にて1時間処理した。ろ過して不溶解物を除いた後、そのろ液を蒸発させてSF加水分解物を得た。
【0023】
3.絹フィブロインが結合したアクリル酸誘導体〔SF−AC〕の製造:
200mL三ッ口フラスコに、脱水したジメチルホルムアミド100mLを入れ、前記SF加水分解物1gを溶解し、トリエチルアミン10mLを加え、氷水で冷却した。温度を5℃以下に保ち、攪拌しつつアクリル酸クロライド5mLを滴下した。滴下終了後、攪拌を続け徐々に室温に戻し、室温になってからさらに30分間攪拌を続けた。反応混合物を多量の水中に注ぎ、析出結晶をろ過、水洗し、減圧下50℃にて乾燥してSF−ACを得た。収率:80%。
【0024】
4.SF−ACとアクリロニトリルとの共重合体〔SF−AC/AN共重合体〕の製造:
SF−AC0.1gを、60重量%塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液120gに入れ、室温で48時間攪拌して溶解させ、ろ過して不溶解分を除いた後、温度計、攪拌機、冷却管を付した500mL三ッ口フラスコに入れ、55℃に加温した。アクリロニトリル10gを加えて溶解し、過硫酸アンモニウム100mgをイオン交換水5mLに溶解した液を加え、1時間攪拌を続けて重合させた。重合反応させた液を、多量の希塩酸中にあけて重合物を析出させ、ろ過、水洗、アセトン洗浄を行い、減圧下で乾燥した。
【0025】
5.SF加水分解物とポリアクリロニトリル(PAN)のブレンド〔SF/PANブレンド〕(比較)
SF加水分解物0.1gとPAN3.23gを60重量%塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液120gに入れ、室温で5時間攪拌して溶解させ、不溶解分をろ過して除いた後、多量の希塩酸中にあけた。析出物を、ろ過、水洗、アセトン洗浄を行い、減圧下40℃で乾燥した。
【0026】
6.SF加水分解物とアクリロニトリルのグラフト重合体〔SF/ANグラフト重合体〕の製造(比較)
SF加水分解物0.1gを、60重量%塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液120gに入れ、室温で溶解させ、ろ過して不溶解分を除いた後、温度計、攪拌機、冷却管を付した500mL三ッ口フラスコに入れ、55℃に加温した。アクリロニトリル(AN)10gを加え、過硫酸アンモニウム100mgをイオン交換水5mLに溶解した液を加え、1時間攪拌をつづけて重合させた。重合反応させた液を、多量の希塩酸中にあけて重合物を析出させ、ろ過、水洗、アセトン洗浄を行い、減圧下40℃にて乾燥した。
【0027】
7.赤外スペクトル
上記「SF加水分解物」「SF−AC/AN共重合体」「SF/PANブレンド」「SF/ANグラフト重合体」「PAN」のそれぞれを粉砕し、KBrと混合して錠剤にし、赤外スペクトル(日本分光株式会社「JASCOFT−IR」を使用)と測定した。結果を図1に示した。
【0028】
SF加水分解物は、1662cm−1(アミドI)、1539cm−1(アミドII)、1231cm−1(アミドIII)に吸収を有し、PANは、2243cm−1、1454cm−1、1252cm−1、1074cm−1に吸収を有していた。SF−AC/AN共重合体は、SFの特性吸収帯である1662cm−1、1539cm−1、1231cm−1に、PANの特性吸収帯である2243cm−1、1454cm−1、1252cm−1にそれぞれ吸収を有しており、SF加水分解物とPANの両方を含んでいることが確認できた。SF/PANブレンド、SF/ANグラフト重合体においても、SFとPANの両方を含んでいることが認められた。
【0029】
8.溶解性
SF加水分解物、SF−AC/AN共重合体、SF/PANブレンド、SF/ANグラフト重合体、PANのそれぞれを、各種溶剤に浸漬したときの状態を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
PANは、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化亜鉛水溶液(60%)に溶解し、SFはDMF,DMSOには溶解せず、塩化亜鉛水溶液(60%)には溶解する。表1に示したように、SF−AC/AN共重合体ではDMF、DMSOには溶解せずにゲル化状態になり、塩化亜鉛水溶液(60%)に対しては膨潤するのみである。一方、SF/PANブレンド、SF/ANグラフト重合体では、DMF、DMSOには溶解する。SF−AC/AN共重合体、SF/PANブレンド、SF/ANグラフト重合体は、赤外吸収スペクトルでは実質差がみられなかったが、溶解性には明らかな差がみられた。これは、SF加水分解物にある複数のアミノ基により、SF−ACとしてアクリロニトリルと共重合したときに、アクリロニロリル鎖がSF加水分解物で架橋化した構造になっていることを裏付けている。
【0032】
従って、SF−AC/AN共重合体、SF/PANブレンド、SF/ANグラフト重合体それぞれの分子鎖の状態を模式的に記すと、図2のようになると推定される。
【0033】
9.吸湿性
SF加水分解物は、吸湿性が高く、PANの吸湿性が低いことは知られている。本発明のSF−AC/AN共重合体、および比較として挙げたSF/PANブレンド、SF/ANグラフト重合体のそれぞれについて吸湿性を測定し、表2に示した。
【0034】
【表2】
PANにSFが入ることにより、吸湿性が高くなり、PANの改質に役立つことがわかる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体により、各種ビニル重合体に絹フィブロインを導入することができ、ビニル重合体の改質ができる。特にアクリロニトリルと少量の絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体を共重合することにより、ポリアクリロニトリルの特性を生かしながらさらに絹のもつ優れた特性をポリアクリロニトリル系繊維に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、絹フィブロイン加水分解物、絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体/アクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリルそれぞれの赤外吸収スペクトル、(B)は、絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体/アクリロニトリル共重合体、絹フィブロイン/ポリアクリロニトリルブレンド、絹フィブロイン/アクリロニトリルグラフト重合体それぞれの赤外吸収スペクトルである。
【図2】(A)は絹フィブロイン結合(メタ)アクリル酸誘導体/アクリロニトリル共重合体、(B)は絹フィブロイン/ポリアクリロニトリルブレンド、(C)は絹フィブロイン/アクリロニトリルグラフト重合体であり、それぞれの分子鎖の状態を模式的に示した図である。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative, which is a compound obtained by imparting polymerizability to silk fibroin, and a method for modifying a polyacrylonitrile-based fiber having the properties of silk by using the same.
[0002]
[Prior art]
The polyacrylonitrile fiber is composed of acrylonitrile alone or a composition obtained by copolymerizing acrylonitrile with a vinyl compound capable of partially polymerizing vinyl, and is used as a raw material for a wide variety of textile products such as knitted fabrics, sweaters, woven fabrics, clothes, blankets, and the like. Polyacrylonitrile-based fibers have a great feature in that they have properties similar to wool, but they are significantly inferior to wool in terms of hygroscopicity, and are liable to generate static electricity and have problems such as a cold feel. In. Therefore, as a modification of polyacrylonitrile-based fibers, a method has been proposed in which methacrylic acid and / or a hydroxy group-containing methacrylate is subjected to a graft copolymerization reaction with polyacrylonitrile-based fibers (see Patent Document 1).
[0003]
On the other hand, silk has excellent properties in moisturizing properties, water absorption, feel, etc., and attempts have been made to impart the properties of silk to synthetic fibers, for example, obtained by hydrolyzing silk fibroin. A method for attaching a low-molecular-weight polypeptide to the surface of a fiber material [see Patent Document 2], treating a fiber product in a bath with a treatment solution containing silk fibroin and a fixing agent (a prepolymer having a crosslinking ability), and applying the solution to the surface of a synthetic fiber. A method of fixing (see Patent Document 3), a method of forming a film of silk fibroin-synthetic polymer on the surface of a fibrous structure made of porous acrylic synthetic fiber (see Patent Document 4), and hydrolyzing silk fibroin A method in which a low molecular polypeptide and an aqueous binder are mixed to coat a fiber material and then cured (see Patent Document 5); amino groups such as fibroin; A method of copolymerizing a vinyl compound to impart a polymerizable reacted with isocyanates having an unsaturated group in natural organic [Patent Document 6] it has been proposed to have a. As a material for contact lenses, there is a report on a method of introducing silk fibroin into a polymer by graft-polymerizing a vinyl monomer in an aqueous solution of silk fibroin (see Patent Document 7).
[0004]
[Patent Document 1]
JP-A-7-238469 [Patent Document 2]
JP-A-5-5275 [Patent Document 3]
JP-A-7-300772 [Patent Document 4]
JP-A-7-229065 [Patent Document 5]
Japanese Patent Application Laid-Open No. 10-212456 [Patent Document 6]
JP 10-195169 A [Patent Document 7]
JP-A-9-316143
[Problems to be solved by the invention]
When silk fibroin is simply attached to the fiber, the fiber is liable to fall off by washing or the like, and when combined with the fiber, the flexibility of the fiber is impaired, and the inherent properties of silk are often not sufficiently exhibited. In order to solve such problems, an object of the present invention is to provide silk fibroin with vinyl polymerizability, and copolymerize silk fibroin with this polymerizability with acrylonitrile to further utilize the properties of polyacrylonitrile and to further improve the properties of silk. It is an object of the present invention to provide a method for modifying polyacrylonitrile-based fibers which imparts improved properties.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
The present invention has been achieved to achieve the above object, and the invention of claim 1 relates to a silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative, which comprises a hydrolyzate of silk fibroin in an aprotic organic solvent in the presence of a base. And (meth) acrylic chloride.
[0007]
The invention of claim 2 relates to a method for modifying a polyacrylonitrile fiber, comprising the silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative as a copolymer component.
[0008]
The invention of claim 3 relates to the method of modifying polyacrylonitrile fiber according to claim 2, wherein the silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative is contained in the polyacrylonitrile-based polymer in an amount of 0.05 to 3% by weight. Consists of
[0009]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
The silk fibroin-bound (meth) acrylic acid derivative in the present invention can be obtained by reacting a silk fibroin hydrolyzate with (meth) acrylic acid chloride in an aprotic organic solvent in the presence of a base.
[0010]
Silk fibroin hydrolyzate is obtained by removing silk, carbohydrates, and sericin from an cocoon of a silkworm (scientific name: Bombix mori) using an organic solvent to remove ion-exchanged water-lithium bromide monohydrate-methyl alcohol [1. : 4: 5 (weight ratio)], dissolved in a mixed solution and filtered to remove insolubles, and then dialyzed to remove lithium bromide to obtain a fibroin powder, and this powder was further subjected to an enzyme such as α-chymotrypsin. By hydrolysis. The silk fibroin hydrolyzate is an oligomer of the constituent amino acids of silk fibroin and has an amino group.
[0011]
(Meth) acrylic acid chloride is acrylic acid chloride, methacrylic acid chloride, or a mixture of both.
[0012]
The reaction between the silk fibroin hydrolyzate and (meth) acrylic acid chloride is the same as the usual reaction between amino group and acid chloride, and is carried out in an aprotic organic solvent in the presence of a base. The aprotic organic solvent includes dimethylformamide, dimethylacetamide, dimethylsulfoxide, N-methylpyrrolidone, pyridine and the like, and is sufficiently dehydrated prior to the reaction. As the base, a tertiary amine such as triethylamine, pyridine and picoline is used. Since the base serves as a catalyst for accelerating the reaction and traps the hydrochloric acid generated by the reaction, it must be added in an equivalent amount larger than the generated hydrochloric acid. Since the reaction is exothermic, the silk fibroin hydrolyzate and the base are usually dissolved in an aprotic organic solvent, and (meth) acrylic acid is stirred under cooling with ice water to a temperature of 0 ° C. or lower. Chloride is added dropwise.
[0013]
The method for modifying a polyacrylonitrile-based fiber according to the present invention is a polyacrylonitrile-based fiber containing the silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative as a copolymer component, specifically, a vinyl-based fiber containing acrylonitrile as a main component. The fiber is obtained by mixing the above-mentioned silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative with a monomer, copolymerizing the mixture, and forming a fiber.
[0014]
As a specific example of the copolymerization method, a fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative is dissolved in an aqueous solution of zinc chloride (ZnCl 2 ) and filtered to remove insoluble components, and then acrylonitrile and, if necessary, acrylonitrile. And a polymerization initiator is added. The polymerization initiator is a polymerization initiator generally used for vinyl polymerization, such as ammonium persulfate and N, N-azobisisobutyronitrile. The polymerization conditions vary depending on the type and amount of the polymerization initiator used and cannot be defined uniformly, but are generally 40 to 80 ° C. and 1 to 2 hours.
[0015]
The reaction from silk fibroin to silk fibroin-bound (meth) acrylic acid derivative and the reaction to copolymerize silk fibroin-bound (meth) acrylic acid derivative with acrylonitrile are represented as follows.
[0016]
Embedded image
[0017]
Since silk fibroin hydrolyzate is polyfunctional with multiple amino groups in the molecule, when acrylonitrile is copolymerized with acrylonitrile as a silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative, the acryloniloryl chain becomes A cross-linked structure results. Therefore, the acrylonitrile copolymer containing a large amount of silk fibroin may be insolubilized.
[0018]
According to the present invention, a silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative is added as a copolymer component to modify polyacrylonitrile-based fibers. The method of blending this with a normal polyacrylonitrile-based polymer that does not contain silk fibroin to produce a fiber may be inconvenient because it will produce an acrylonitrile copolymer containing a large amount of silk fibroin. is there.
[0019]
In order to achieve the intended effect of the present invention, 0.05 to 3% by weight, more preferably 0.1 to 3% by weight of a (meth) acrylic acid derivative in which silk fibroin is finally bonded to polyacrylonitrile-based fibers is preferably used. 11% by weight. If the amount is less than 0.05% by weight, the intended effect of the present invention is not sufficient. If the amount exceeds 3% by weight, it becomes insoluble in a solvent and spinning may be difficult, and the texture of the polyacrylonitrile fiber may be impaired. There is.
[0020]
By making the (meth) acrylic acid derivative with silk fibroin bound to the above range with respect to acrylonitrile, the copolymer can be dissolved to a gelled state in dimethylformamide, dimethylsulfoxide and the like. Can be spun into fibers.
[0021]
【Example】
1. Production of silk fibroin powder:
The cocoon of the silkworm (scientific name: Bombix Mori) was extracted and washed with ethyl ether and then with ethyl alcohol using a Soxhlet extractor to remove wax, carbohydrates and sericin. The remaining fibroin was dissolved in a mixed solution of ion-exchanged water, lithium bromide monohydrate, and methyl alcohol [1: 4: 5 (weight ratio)], and dialyzed to remove lithium bromide. Evaporated to dryness to obtain a fibroin powder.
[0022]
2. Production of silk fibroin hydrolyzate [SF hydrolyzate]:
Silk fibroin powder (1-2 g) was dispersed in ion-exchanged water (100 mL), and 10% of α-chymotrypsin was added to the fibroin, followed by treatment at pH 7 to 8 at 37 ° C. for 1 hour. After filtering to remove insolubles, the filtrate was evaporated to obtain an SF hydrolyzate.
[0023]
3. Production of acrylic acid derivative [SF-AC] to which silk fibroin is bound:
100 mL of dehydrated dimethylformamide was placed in a 200 mL three-necked flask, 1 g of the SF hydrolyzate was dissolved, 10 mL of triethylamine was added, and the mixture was cooled with ice water. While maintaining the temperature at 5 ° C. or lower, 5 mL of acrylic acid chloride was added dropwise with stirring. After completion of the dropwise addition, stirring was continued to gradually return to room temperature, and after the temperature reached room temperature, stirring was further continued for 30 minutes. The reaction mixture was poured into a large amount of water, and the precipitated crystals were filtered, washed with water, and dried at 50 ° C. under reduced pressure to obtain SF-AC. Yield: 80%.
[0024]
4. Production of copolymer of SF-AC and acrylonitrile [SF-AC / AN copolymer]:
0.1 g of SF-AC was added to 120 g of a 60% by weight aqueous solution of zinc chloride (ZnCl 2 ) and dissolved by stirring at room temperature for 48 hours. After removing insoluble components by filtration, a thermometer, a stirrer, and a cooling pipe were installed. The flask was placed in a 500 mL three-necked flask and heated to 55 ° C. Acrylonitrile (10 g) was added and dissolved, a solution of ammonium persulfate (100 mg) dissolved in ion-exchanged water (5 mL) was added, and the mixture was stirred for 1 hour to polymerize. The solution subjected to the polymerization reaction was poured into a large amount of dilute hydrochloric acid to precipitate a polymer, which was filtered, washed with water, washed with acetone, and dried under reduced pressure.
[0025]
5. Blend of SF hydrolyzate and polyacrylonitrile (PAN) [SF / PAN blend] (comparison)
0.1 g of SF hydrolyzate and 3.23 g of PAN are put into 120 g of a 60% by weight aqueous solution of zinc chloride (ZnCl 2 ), and the mixture is stirred at room temperature for 5 hours to be dissolved. Opened inside. The precipitate was filtered, washed with water, washed with acetone, and dried at 40 ° C. under reduced pressure.
[0026]
6. Production of SF hydrolyzate and acrylonitrile graft polymer [SF / AN graft polymer] (comparison)
0.1 g of SF hydrolyzate is added to 120 g of a 60% by weight aqueous solution of zinc chloride (ZnCl 2 ), dissolved at room temperature, and filtered to remove insoluble components. Then, 500 mL of a thermometer, a stirrer, and a cooling tube are attached. The mixture was placed in a three-necked flask and heated to 55 ° C. Acrylonitrile (AN) (10 g) was added, a solution of ammonium persulfate (100 mg) dissolved in ion-exchanged water (5 mL) was added, and the mixture was stirred for 1 hour to polymerize. The polymerized solution was poured into a large amount of dilute hydrochloric acid to precipitate a polymer, which was filtered, washed with water and washed with acetone, and dried at 40 ° C. under reduced pressure.
[0027]
7. Infrared spectrum Each of the above-mentioned “SF hydrolyzate”, “SF-AC / AN copolymer”, “SF / PAN blend”, “SF / AN graft polymer” and “PAN” is ground and mixed with KBr to form tablets. And an infrared spectrum (using JASCOFT-IR, JASCO Corporation). The results are shown in FIG.
[0028]
The SF hydrolyzate has absorption at 1662 cm -1 (amide I), 1539 cm -1 (amide II), 1231 cm -1 (amide III), and PAN has 2243 cm -1 , 1454 cm -1 , 1252 cm -1 , It had an absorption at 1074 cm -1 . The SF-AC / AN copolymer has the characteristic absorption bands of SF at 1662 cm −1 , 1539 cm −1 and 1231 cm −1 , and the characteristic absorption bands of PAN at 2243 cm −1 , 1454 cm −1 and 1252 cm −1 , respectively. It was confirmed that it had absorption and contained both SF hydrolyzate and PAN. The SF / PAN blend and the SF / AN graft polymer were also found to contain both SF and PAN.
[0029]
8. Table 1 shows the state when each of the soluble SF hydrolyzate, SF-AC / AN copolymer, SF / PAN blend, SF / AN graft polymer, and PAN was immersed in various solvents.
[0030]
[Table 1]
[0031]
PAN is dissolved in dimethylformamide (DMF), dimethylsulfoxide (DMSO), and an aqueous zinc chloride solution (60%). SF is not dissolved in DMF and DMSO, but is dissolved in an aqueous zinc chloride solution (60%). As shown in Table 1, the SF-AC / AN copolymer does not dissolve in DMF and DMSO, but becomes a gelled state, and only swells in an aqueous zinc chloride solution (60%). On the other hand, SF / PAN blends and SF / AN graft polymers dissolve in DMF and DMSO. The SF-AC / AN copolymer, the SF / PAN blend, and the SF / AN graft polymer had substantially no difference in infrared absorption spectrum, but had a clear difference in solubility. This supports the fact that, when SF-AC is copolymerized with acrylonitrile by a plurality of amino groups in the SF hydrolyzate, an acryloniloryl chain has a structure cross-linked with the SF hydrolyzate.
[0032]
Therefore, it is estimated that the state of the molecular chain of each of the SF-AC / AN copolymer, SF / PAN blend, and SF / AN graft polymer is schematically shown in FIG.
[0033]
9. It is known that a hygroscopic SF hydrolyzate has high hygroscopicity and low hygroscopicity of PAN. The hygroscopicity of each of the SF-AC / AN copolymer of the present invention, and the SF / PAN blend and SF / AN graft polymer mentioned as comparative examples were measured, and are shown in Table 2.
[0034]
[Table 2]
It can be seen that the inclusion of SF in the PAN increases the hygroscopicity and is useful for PAN reforming.
[0035]
【The invention's effect】
With the silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative of the present invention, silk fibroin can be introduced into various vinyl polymers, and the vinyl polymer can be modified. In particular, by copolymerizing acrylonitrile and a small amount of a silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative, it is possible to impart the excellent properties of silk to the polyacrylonitrile fiber while taking advantage of the properties of polyacrylonitrile.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 (A) is an infrared absorption spectrum of silk fibroin hydrolyzate, silk fibroin-bonded (meth) acrylic acid derivative / acrylonitrile copolymer and polyacrylonitrile, and (B) is silk fibroin-bonded (meth) It is an infrared absorption spectrum of each of acrylic acid derivative / acrylonitrile copolymer, silk fibroin / polyacrylonitrile blend, and silk fibroin / acrylonitrile graft polymer.
FIG. 2 (A) is a silk fibroin-bound (meth) acrylic acid derivative / acrylonitrile copolymer, (B) is a silk fibroin / polyacrylonitrile blend, and (C) is a silk fibroin / acrylonitrile graft polymer. FIG. 3 is a diagram schematically showing a state of a molecular chain.