JP2004109878A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材の両端部から潤滑剤が漏れるのを防止することができ、長期にわたって定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することを課題とする。
【解決手段】シート状部材40は、図1に示すように、少なくとも押圧部材3の長手方向の両端部に、潤滑剤の漏れを防止する潤滑剤漏れ防止部41を備えるように構成して課題を解決した。
【選択図】 図1
【解決手段】シート状部材40は、図1に示すように、少なくとも押圧部材3の長手方向の両端部に、潤滑剤の漏れを防止する潤滑剤漏れ防止部41を備えるように構成して課題を解決した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において未定着画像を加熱加圧定着するのに用いられる定着装置に係り、特に、定着部材とエンドレスベルトとの間に形成されたニップ部に記録媒体を通過させる、所謂ベルトニップ方式の定着装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のベルトニップ方式の定着装置としては、例えば、加熱源を有する回転可能な加熱定着ロールと、この加熱定着ロールに圧接し且つ共に回転移動するエンドレスベルトと、このエンドレスベルトの内側に配設されて、前記エンドレスベルトを加熱定着ロールに向けて押圧して当骸エンドレスベルトと加熱定着ロールとの間にニップ部を形成する圧力パッドとを備え、このニップ部にシートを通過させることで、当該シート上の未定着トナー像を加熱加圧定着するように構成したものが知られている(特開平8−262903号公報参照) 。
【0003】
ところで、上記ベルトニップ方式の定着装置の場合には、エンドレスベルトを圧力パッドによって加熱定着ロールの表面に圧接させるように構成されているため、エンドレスベルトと圧力パッドとの摺動抵抗が過大であると、エンドレスベルト駆動のためのトルクが増大し、エンドレスベルトを駆動させるための加熱定着ロールに働く応力つまり駆動トルクも大きくなるため、エンドレスベルトの磨滅、薄肉の加熱定着ロールコアのギア受け部に働く応力が大きくなり、ギアやコアの破損が引き起こされる懸念があった。また、このような態様にあっては、駆動モーターの負荷も大きくなり、より多くの電力が必要になる。
【0004】
更に、加熱定着ロールによるエンドレスベルトの駆動力に比べて、エンドレスベルト及び圧力パッドの間の摩擦力が無視できないほど大きくなると、加熱定着ロールとエンドレスベルトとの間でスリップが生じ、このような条件下で未定着トナー像を保持したシートをニップ部に通すと、このスリップがシート上の未定着トナー像に画像のずれを引き起こすという問題点もあった。
【0005】
そこで、本出願人は、上記の問題点を解決するため、特開平10−213984号公報や特開平10−228196号公報、あるいは特開平11−45018号公報等に開示された技術を、既に提案している。
【0006】
上記特開平10−213984号公報には、圧力パッドの表面をポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートで被覆するとともに、圧力パッドとエンドレスベルトとの間に、潤滑剤としてシリコーンオイルを介在させることにより、エンドレスベルトの滑りを良好にする技術が提案されている。
【0007】
また、上記特開平10−228196号公報には、圧力パッドとエンドレスベルトの間に潤滑剤を塗布する手段を備えるように構成した技術が提案されている。
【0008】
さらに、上記特開平11−45018号公報には、同様に、圧力付与部材とエンドレスベルトの間に潤滑剤を塗布する部材を備えるように構成した技術が提案されている。
【0009】
しかし、上記特開平10−213984号公報や特開平10−228196号公報、あるいは特開平11−45018号公報等に開示された技術の場合には、圧力パッドの表面をポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートで被覆するとともに、圧力パッドとエンドレスベルトとの間に、シリコーンオイル等の潤滑剤を塗布供給するように構成したものである。
【0010】
ところが、本発明者らの検討によれば、ポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートは潤滑剤が含浸しないため、表面にシリコーンオイル等の潤滑剤が塗布された状態で存在するのみであるため、一部でも潤滑剤の塗布むらが生じると、その部分の摺動抵抗が大きくなり、当該ガラス繊維シートが摩擦によって部分的に削られることになる。したがって、上記ポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートが磨耗によって部分的に削られ磨耗粉がシリコーンオイル等の潤滑剤と混合されて粘度の高い物質となり、経時的にエンドレスベルトを駆動するためのトルクが増大し、上述したような加熱定着ロールとエンドレスベルトの間で生じるスリップに起因して、シート上の未定着トナー像に画像のずれが発生するという問題点が明らかになった。
【0011】
また、上述したシリコーンオイルの一種である、変性シリコーンオイルは、塗布された物質の表面に強固な反応膜を形成することで、塗布むらの発生が抑えられ、結果、摺動抵抗が均一に維持されるのであるが、長時間の熱的環境下で熱劣化をきたし、変質してしまい、反応膜を形成しにくくなってしまうので、経時的にエンドレスベルトを駆動するためのトルクが増大し、上述したような加熱定着ロールとエンドレスベルトとの間で生じるスリップに起因して、シート上の未定着トナー像に画像のずれが発生するという間題点も明らかになった。
【0012】
そこで、本出願人は、上記従来技術の問題点を解決し、潤滑剤を常に含浸した摺動部材にすることで摺動面に塗布むらが発生しにくく、経時的なエンドレスベルトの駆動トルクの増大を防止し、安定した走行性能を確保することにより、高品質の画像を安定して得ることが可能な定着装置について、既に提案している(特願2002−125257号)。
【0013】
この定着装置は、回転可能に配設される定着部材と、前記定着部材に回転可能に圧接配置され、前記定着部材との間に形成されるニップ部に未定着トナー像を担持した記録媒体が挟持されるエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内側に固定配設され、前記定着部材側に向けて当該エンドレスベルトを押圧する押圧部材と、前記エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材と、前記ニップ部を加熱する加熱源とを備えた定着装置において、前記シート状部材は、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層を備え、前記潤滑剤が変性シリコーンオイルであるように構成したものである。
【0014】
また、上記定着装置は、前記シート状部材が、前記多孔質樹脂層の押圧部材側に潤滑剤の透過を防止する潤滑剤透過防止層を備えるようにした構成をも含んでいる。
【0015】
【発明が解決しようとする謀題】
しかし、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特願2002−125257号に係る定着装置の場合には、エンドレスベルトと押圧部材との間にシート状部材を介在し、このシート状部材は、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層を備え、前記潤滑剤が変性シリコーンオイルであるように構成したものであるが、当該シート状部材は、多孔質樹脂層に潤滑剤を保持することができるものの、エンドレスベルトの長手方向の両端部に相当する部分がオープンになっている。そのため、多孔質樹脂層に潤滑剤を保持したシート状部材は、押圧部材によってエンドレスベルトを介して定着部材に圧接されると、その両端部から潤滑剤が浸み出てしまい、潤滑剤の枯渇が起きて、定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができず、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加し、駆動トルクが早期に上昇するという問題点を有していた。
【0016】
また、上記シート状部材の両端部から潤滑剤が浸み出てしまうと、当該潤滑剤がエンドレスベルトの表面側に回り、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、これらエンドレスベルト定着部材とのニップ部に挿通されるシートに付着して、潤滑剤の染みが発生するという問題点を有していた。
【0017】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材の両端部から潤滑剤が漏れるのを防止することができ、長期にわたって定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載された発明は、図2に示すように、回転可能に配設される定着部材1と、前記定着部材1に回転可能に圧接配置され、前記定着部材1との間に形成されるニップ部Nに未定着トナー像Tを担持した記録媒体Kが挟持されるエンドレスベルト2と、前記エンドレスベルト2の内側に固定配設され、前記定着部材1側に向けて当該エンドレスベルト2を押圧する押圧部材3と、前記エンドレスベルト2と押圧部材3との間に介在され、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層を備えたシート状部材40と、前記ニップ部Nを加熱する加熱源Hとを備えた定着装置において、前記シート状部材40は、図1に示すように、少なくとも押圧部材3の長手方向の両端部に、潤滑剤の漏れを防止する潤滑剤漏れ防止部41を備えたことを特徴とする定着装置である。
【0019】
また、請求項2に記載された発明は、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤を弾く撥液加工部からなることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0020】
さらに、請求項3に記載された発明は、前記撥液加工部が、シート状部材の両端部にフッ素樹脂を塗布し、当該塗布されたフッ素樹脂を溶融し成膜して構成されていることを特徴とする請求項2記載の定着装置である。
【0021】
又、請求項4に記載された発明は、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤の浸透を防止する防潤加工部からなることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0022】
更に、請求項5に記載された発明は、前記防潤加工部が、シート状部材の両端部を加熱条件下で圧着して構成されていることを特徴とする請求項4記載の定着装置である。
【0023】
また、請求項6に記載された発明は、前記潤滑剤漏れ防止部が、前記押圧部材と定着部材とによって挟持されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0024】
さらに、請求項7に記載された発明は、前記シート状部材が、前記多孔質樹脂層の押圧部材側に潤滑剤の透過を防止する潤滑剤透過防止層を備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0025】
また更に、請求項8に記載された発明は、前記シート状部材の少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に備えられる潤滑剤漏れ防止部は、当該シート状部材の押圧部材による全加圧長aに対する潤滑剤漏れ防止部が設けられていないシート状部材の非加工長cの割合(c/a)×100%が、90%以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0026】
このような技術的手段において、定着部材1は、回転可能に配設されるものであれば、ロール状、ベルト状等適宜選定して差し支えない。また、エンドレスベルト2は、図1に示すように非張架状態で支持されるものであってもよいし、例えば、複数のロールに掛け渡すなどして張架支持されるものであってもよい。
【0027】
更に、加圧部材3は、固定配設されて前記定着部材1に向けて前記エンドレスベルト2を押圧するものであれば適宜選定して差し支えないが、定着時の熱による劣化を防止するという観点からすれば、耐熱性を具備するもので構成することが好ましい。
【0028】
更にまた、加熱源Hは、ニップ部Nを加熱するものであれば、例えば、図2に示すように、定着部材1を内部加熱するタイプや、また定着部材1を外部加熱するタイプのように、定着部材1を介してニップ部Nを加熱するものは勿論のこと、エンドレスベルト2や加圧部材3を加熱することでニップ部Nを加熱するもの、あるいはベルト状の定着部材1自体が電磁誘導加熱等によって発熱するもの等、適宜選定して差し支えない。
【0029】
また、潤滑剤については、酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイルを用いることが望ましいが、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材として、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層40aと、当該多孔質樹脂層40aの押圧部材3側に配置された潤滑剤透過防止層40bとからなるものを用いることにより、使用可能なシリコーンオイルの種類が広がることがわかっている。上記シート状部材と組み合わせることによって、アミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイルであるヒンダードアミンオイルなどが使用可能となるが、長期間の使用において、高い耐熱性を有し、熱的な劣化の少ないヒンダードアミンオイルを用いるのが、特に望ましい。
【0030】
更に、潤滑剤としてシリコーンオイルを用いる態様にあっては、その粘度が常温で50〜3000csであることが好ましい。ここで、この下限値はシリコーンオイルの不必要な蒸発を防止するという観点に基づいて定められたものであり、一方、上限値はシリコーンオイルが摺動抵抗が大きくなる要因となってしまうのを防止する観点に基づいて定められたものである。
【0031】
また、上記多孔質樹脂層40aは、多数の微細な孔を有する樹脂からなるものであって、例えば、樹脂を発泡させて多孔質化したものや、樹脂を一軸あるいは二軸方向に延伸して多孔質化したもの、あるいは焼結成型等が挙げられる。ここで、樹脂を一軸あるいは二軸方向に延伸して多孔質化した多孔質樹脂層40aを採用する態様にあっては、例えば、当該多孔質樹脂にて織られた繊維( 多孔質樹脂繊維織布) や、前記多孔質樹脂繊維織布及び多孔質樹脂を薄膜化したもの( 多孔質樹脂フイルム) を、従来公知の熱融着法、接着法を用いて積層したものとすることが好ましい。なお、多孔質樹脂層は、繊維自体が多孔質樹脂からなるものでなくとも、当該繊維を織ることによって、多孔質化された樹脂製の繊維織布から構成したものであっても良いが、上述したように、多孔質樹脂にて織られた繊維( 多孔質樹脂繊維織布) などを用いることによって、繊維織布は勿論のこと、多孔質樹脂そのものが潤滑剤を含浸した状態で保持するため、より一層望まし い。
【0032】
そして、その材質については、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂等より適宜選定して差し支えないが、耐熱性、離型性、耐久性、耐摺動性等を考慮すると、多孔質化したPTFE( ポリテトラフルオロエチレン) 、PFA( テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体) 、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) を用いることが好ましい。また、潤滑剤透過防止層40bは、耐熱性があり且つ潤滑剤を透過させない耐熱性樹脂フイルムや金属フイルム等から適宜選定して差し支えないが、コスト及び加工性、更には可撓性などを考慮するとFEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) が好ましい。
【0033】
更に、この発明においては、前記多孔質樹脂層40aに潤滑剤を保持させる必要があるが、この手法については、予め多孔質樹脂層40aに潤滑剤を含浸させるようにしてもよいし、また、外部より多孔質樹脂層40a自体、又はエンドレスベルト2の内面に塗布し、当該エンドレスベルト2を介して多孔質樹脂部材に潤滑剤を供給するようにしてもよい。ここで、後者の態様においては、簡易且つ安定的に潤滑剤を供給するという観点からすれば、前記エンドレスベルト2の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段5を具備させることが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0035】
実施の形態1
図3及び図4はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
【0036】
この実施の形態に係る定着装置1は、図3に示すように、定着部材としての加熱定着ロール10と、薄膜状のエンドレスベルト20と、加圧部材としての圧力パッド30とを備えている。上記エンドレスベルト20は、その内側に配置された圧力パッド30により加熱定着ロール10に押圧されており、加熱定着ロール10とエンドレスベルト20との間には、未定着トナー像Tを担持した記録媒体としての記録シートSが通過可能なニップ部Nが形成されている。なお、図3 中、60は記録シートSをニップ部Nへ案内するガイド板を、61はニップ部Nを通過した記録シートSを案内するガイド板を、62は記録シートSを剥離する剥離部材を、それぞれ示している。
【0037】
上記加熱定着ロール10は、図4に示すように、円筒状のコア11と、このコア11の表面に被覆された弾性体層12と、この弾性体層12の表面に被覆された離型層13とを有しており、コア11の内部には、加熱源14が設けられている。
【0038】
上記コア11の材質としては、機械的強度に優れ、熱伝導性の良好な材質のものであれば、特に制限はないが、例えば、アルミニウム、SUS、鉄、銅、真鍮等の金属や合金等が挙げられる。
【0039】
また、上記弾性体層12の材質としては、当該弾性体層12として公知の材質のものの中から適宜選択でき、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。そして、この弾性体層12は、公知の手法によってコア11の表面に形成され、その手法については、特に制限がなく、例えば、それ自体公知の注入成型法またはコーティング法等を採用することができる。
【0040】
更に、上記離型層13は、未定着トナー像Tのオフセットを好適に防止すると共に、安定した状態で定着装置1を稼動させるために設けられるものであって、その材質としては、耐熱性がありトナーに対し適度な離型性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ素樹脂等が用いられる。
【0041】
更にまた、上記加熱源14としては、前記コア11の内部に収容することができる形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、ハロゲンランプ等を用いることができる。この加熱源14により加熱された加熱定着ロール10の表面温度は、例えば、図3及び図4に示すように、当該加熱定着ロール10の表面に接触するように配置された温度センサー15で計測するようにし、図示しない制御手段によりその温度を一定に制御することができる。
【0042】
上記温度センサー15としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、熱電対等が用いられる。また、制御手段としては、特に制限はなく、たとえば、温度コントローラー、コンピューターなどが用いられる。尚、符号16は、加熱定着ロール10を回転駆動するモーターである。
【0043】
また、上記エンドレスベルト20としては、その形状、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じてそれ自体公知のものの中から適宜選択して使用することができる。このエンドレスベルト20の構造としては、単層構造であっても良いが、この実施の形態においては、図4に示すように、基材21の表面に離型層としての樹脂被覆22を形成したものが用いられる。
【0044】
ここで、エンドレスベルト20の基材21の材質としては、例えば、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のポリマーや、ステンレス、ニッケル、銅等の金属が用いられる。
【0045】
そして、上記樹脂被覆22は、表面に付着するトナーの剥離性のよいものが好ましく、その材質としては、例えば、PTFE( ポリテトラフルオロエチレン) 、PFA( テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体) 、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合 体) 等のフッ素樹脂が用いられる。
【0046】
更に、上記圧力パッド30は、図4に示すように、断面略凹字状に形成された合成樹脂製等の支持体31と、該支持体31上に配置されたシリコーンゴムやフッ素ゴム等からなる弾性体32とから構成されており、当該圧力パッド30は、コイルスプリング等の付勢手段33によって、加熱定着ロール10の表面に圧接する方向に、所定の圧力(例えば、1〜2kg/cm2 )で付勢されている。
【0047】
また、上記圧力パッド30やコイルスプリング33は、図4に示すように、金属製の圧接部材34に支持されており、この圧接部材34の長手方向の両端部には、エンドレスベルト20がスムーズに回転するようにベルト走行ガイド35が設けられている。
【0048】
上記圧力パッド30の形状、構造、大きさ等については特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、また、単一の部材からなる構造であってもよいし、本実施の形態のように異なる機能を有する複数の部材からなる構造であってもよい。
なお、図5及び図6は、圧力パッド30の一例を示す全体斜視図及び分解斜視図である。
【0049】
ところで、この実施の形態では、前記エンドレスベルト2の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段5を備え、前記潤滑剤として酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイルを用いるように構成されている。
【0050】
また、この実施の形態では、シート状部材が、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層と、当該多孔質樹脂層の押圧部材側に配置された潤滑剤透過防止層とからなるように構成されている。
【0051】
すなわち、上記保持部材34には、図4に示すように、エンドレスベルト20の内面に潤滑剤としてシリコーンオイルを供給する潤滑剤供給手段としてのオイル供給部材50が配設されている。このオイル供給部材50は、ベルト20の内面に接触配置されるフェルト51と、必要に応じてフェルト51を保持する図示しないケースとを備えており、フェルト51には、粘度50〜3000csの粘度を有するシリコーンオイル52が含浸されている。このフェルト51は、耐熱温度が130℃以上、好ましくは、200℃以上の耐熱性が必要であり、材質としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の不織布が好適である。また、ケースは、離型剤を透過、含浸しないもので、耐熱性が130℃以上であればよく、具体的には、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅等の金属や、ポリカーボネート、メラミン樹脂等の耐熱性樹脂を用いることができる。この実施の形態では、シリコーンオイル52として、常温での粘度が300csの酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイル(ヒンダードアミンオイル)が用いられる。
【0052】
アミノ変性シリコーンオイルは、図7に示すように、アミノ基が塩基性を示すため、酸性物質が存在すると、加熱定着ロール10の熱によって反応が促進され、中和によって粘度が増加したり、不溶物を発生させたりする。
【0053】
そこで、アミノ変性シリコーンオイルに図8に示すような構造式の酸化防止剤を500ppm程度添加したヒンダードアミンオイルを用いることにより、図9に示すように、アミノ変性シリコーンオイル中のアミノ基が酸化されて活性ラジカルとなるHを、酸化防止剤のアミンのベンゼン環でトラップ(共鳴)することにより、アミノ変性シリコーンオイルの中和による連鎖反応を抑制することができ、アミノ変性シリコーンオイルが中和によって粘度が増加したり、不溶物を発生させたりするのを抑制することができる。
【0054】
また、上記ヒンダードアミンオイルが含浸されたフェルト51は、エンドレスベルト20の軸方向のほぼ全域に当接し、エンドレスベルト20の回転に伴って、このエンドレスベルト20の内周面全面にヒンダードアミンオイル52を供給する。ヒンダードアミンオイル52の供給量は、多い必要はなく、従って、フェルト51のエンドレスベルト20に対する当接圧力は小さく、微妙に接触する程度でよい。尚、ヒンダードアミンオイル52を含浸させるフェルト51については、多数の連続気孔を有し、定着温度における耐熱性を有すると共に適度の弾性率を有するものであればよく、スポンジ等であってもよい。
【0055】
また、この実施の形態では、図4に示すように、エンドレスベルト20と圧力パッド30との間に、両者の摩擦を低減するためのシート状部材40が介在されている。なお、図4では、図示の都合上、エンドレスベルト20とシート状部材40との間に、微小な隙間が空いているが、当該シート状部材40は、圧力パッド30の弾性体32によって、エンドレスベルト20と共に加熱定着ロール10の表面に圧接されていることは勿論である。また、上記シート状部材40の基端部(図3中、右側の端部)は、圧接部材34に取り付けられている部材によって挟持されており、その先端部(図4中、左側の端部)は、ニップ部Nを通過した後、フリーとなっている。この摩擦低減用のシート状部材40は、図10に示すように、フッ素系の樹脂を延伸成型、焼結成型等することによって、潤滑剤を保持する微細な孔を多数有する多孔質樹脂層40aと、当該多孔質樹脂層40aの圧力パッド30側に積層された、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) やポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ステンレス、ニッケル、銅、アルミ、PET等の薄いフィルムからなる潤滑剤透過防止層40bと、前記多孔質樹脂層40aのエンドレスベルト20側に積層されたフィルム層40cとから構成されている。ここでは、シート状部材40における多孔質樹脂層40aは、ジャパンゴアテックス製、品番#8181を用いた。なお、シート状部材40は、厚さとして、50μm〜4mm、好ましくは80μm〜500μmであり、厚さが50μm未満では、十分な強度と潤滑剤保持性が得られず、厚さが4mmを超えると、加熱定着ロールに対し十分な圧力を均一に与えられず、またニップ幅が均一に得られにくくなる。
【0056】
なお、上記シート状部材40は、圧接部材を支持する支持部材34に一端が固定した状態で取り付けられているとともに、当該圧接部材34の全表面をエンドレスベルト20の移動方向に沿って覆うように配設されている。上記シート状部材40の先端は、固定せずに自由状態のままであってもよく、又、支持部材34に固定されていてもよく、あるいはシート状部材40自体を筒状に形成して、圧接部材30の全周を覆った状態で、当該圧接部材30に一部を固定しても良い。
【0057】
上記多孔質樹脂層40aとしては、例えば、PTFE( ポリテトラフルオロエチレン) 樹脂を延伸成型、焼結成型して多孔質化した多孔質樹脂からなるものを用いてよいが、ここでは延伸成型したものを用いている。この多孔質樹脂層40aの形状としては、フイルム形状、織布形状、フィルム/織布貼り合せ形状など適宜選定して差し支えないが、この実施の形態では、図10に示すように、多孔質樹脂にて形成された繊維が織られた繊維( 多孔質樹脂繊維織布) からなるものが用いられている。また、この多孔質樹脂層40aの表裏には、潤滑剤透過防止層40bと、フィルム層40cとが貼り合せられており、フィルム層40cをエンドレスベルト20に対向させ、潤滑剤透過防止層40bを圧力パッド30に対向させるように配置している。なお、上記フィルム層40cは、必ずしも設ける必要がないが、当該フィルム層40cを表面に設けることによって、摩擦低減用のシート状部材40表面の平滑性を向上させることができ、耐久性や、より一層摺動抵抗を低減することが可能となる。ただし、フィルム層40cを設ける場合には、当該フィルム層40c自体が潤滑剤の透過性を有することは勿論であり、このフィルム層40cは、結果として潤滑剤を透過するものであればよい。
【0058】
ところで、この実施の形態では、前記シート状部材が、少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に、潤滑剤の漏れを防止する潤滑剤漏れ防止部を備えるように構成されている。
【0059】
また、この実施の形態では、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤を弾く撥液加工部からなるように構成されており、具体的には、前記撥液加工部が、例えば、シート状部材の両端部にフッ素樹脂を塗布し、当該塗布されたフッ素樹脂を溶融して成膜して構成される。
【0060】
すなわち、この実施の形態では、少なくともシート状部材40の圧力パッド30の長手方向の両端部に、図示の実施の形態では、図1に示すように、シート状部材40の長手方向の両端部に、全幅にわたって潤滑剤漏れ防止部としての撥液加工部41が設けられている。この撥液加工部41は、シート状部材40の長手方向の両端部に、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) 等のフッ素樹脂を塗布し、当該フッ素樹脂を加熱等することにより溶融させて成膜することによって形成される。なお、フッ素樹脂としては、FEPに限定されないことは勿論である。なお、上記撥液加工部41は、少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に設けられていれば良いが、押圧部材としての圧力パッド30の上流側及び下流側にわたって、当該シート状部材40の全幅に設けるのが望ましい。
【0061】
また、上記撥液加工部41は、図1に示すように、シート状部材40の長手方向の両端部に、所定の長さにわたって設けられ、加工部分としては、シートの圧力パッド30による全加圧長をa、シートの撥液加工部41を設けない非加工長をcとしたとき、(c/a)×100=90%以上となるように設定されてい る。ただし、上記シートの全加圧長aに対する撥液加工部41を設けない非加工長cの割合は、必ずしも、90%以上である必要はなく、90%未満であっても良い。
【0062】
本発明者らの実験によれば、シートの圧力パッド30による全加圧長aに対する撥液加工部41を設けない非加工長cの割合は、100%未満、つまり少しでも撥液加工部41が圧力パッド30によって加圧されているのが望ましいが、図13に示すように、(c/a)の割合が70〜80%程度に減少すると、初期的な動トルクが上昇するため、90%以上あることが望ましく、更に95%程度であることが望ましい。
【0063】
なお、上記撥液加工部41の両端縁は、エンドレスベルト20の移動方向に沿って、必ずしも平行に形成する必要はなく、図11(a)(b)に示すように、エンドレスベルト20の移動方向下流側に向けて、両端縁の距離が滑らかに狭くなるように形成しても、あるいは両端縁の距離が段階状に狭くなるように形成しても良い。
【0064】
以上の構成において、この実施の形態に係る定着装置では、次のようにして、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材の両端部から潤滑剤が漏れるのを防止することができ、長期にわたって定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することができるようになっている。
【0065】
すなわち、この実施の形態に係る定着装置では、図3及び図4に示すように、加熱定着ロール10がモーター16によって所定の回転速度で駆動されると、当該加熱定着ロール10の回転に従動してエンドレスベルト20も回転する。このとき、加熱定着ロール10とエンドレスベルト20との間に形成されたニップ部Nの入口に、未定着トナー像Tを保持する記録シートSが存在すると、該記録シートSが前記ニップ部Nに取り込まれ、ニップ部Nを通過する。ニップ部Nにおいては、加熱定着ロール10と、圧力パッド30により加熱定着ロール10側に押圧されたエンドレスベルト20とによって前記記録シートSが加圧され、また、加熱定着ロール10によって該記録シートSが加熱される。その結果、未定着トナー像Tが記録シートS上で加熱加圧定着される。
【0066】
エンドレスベルト20が回転していると、このエンドレスベルト20の内周面には、フェルト51によってヒンダードアミンオイル52が塗布されている。そして、塗布されたヒンダードアミンオイル52は、エンドレスベルト20の回転に伴ってニップ部Nすなわちエンドレスベルト20の内周面に圧力パッド30によって接触する摩擦低減用のシート状部材40に到達し、当該シート状部材40によって保持され、エンドレスベルト20の内面に徐々に供給される。
【0067】
ここで、上記ヒンダードアミンオイル52は、耐熱性を有しており、加熱定着ロール10の熱によって加熱された場合でも、酸化防止剤によってアミンオイルが中和によって粘度が増加したり、不溶物を発生させたりするのが抑制される。そのため、定着装置1を長期間使用した場合でも、シリコーンオイルが劣化するのを防止することができ、経時的なエンドレスベルトの駆動トルクの増大を防止し、安定した走行性能を確保することにより、高品質の画像を安定して得ることが可能となっている。
【0068】
また、上記シート状部材40は、図11に示すように、多孔質樹脂層40aを備えているため、当該シート状部材40に保持されたヒンダードアミンオイル等のシリコーンオイル52は、多孔質樹脂層40aに含浸された状態で保持され、この多孔質樹脂層40aから徐々にシート状部材40の表面に浸み出して、このシート状部材40の表面には、常時ある程度の量のシリコーンオイル52が均一に塗布された状態となっている。
【0069】
さらに、上記シート状部材の長手方向の両端部には、図1に示すように、撥液加工部41が設けられているため、当該シート状部材40の多孔質樹脂層40aに含浸されたシリコーンオイル52は、撥液加工部41によって弾かれて、シート状部材の長手方向の両端部から浸み出ることがない。そのため、シート状部材40に保持されたヒンダードアミンオイル等のシリコーンオイル52は、多孔質樹脂層40aに含浸された状態で保持され、この多孔質樹脂層40aから徐々にシート状部材40の表面に浸み出して、エンドレスベルト20の内面に供給され、長期にわたって加熱定着ロール10の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルト20と圧力パッド30との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルト20と加熱定着ロール10との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することができるようになっている。
【0070】
実施の形態2
この実施の形態2では、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤の浸透を防止する防潤加工部からなるように構成されており、具体的には、この防潤加工部が、シート状部材の両端部を加熱条件下で圧着して構成されている。
【0071】
すなわち、この実施の形態2では、シート状部材40の押圧部材の長手方向の両端部が、350℃の加熱ロールとニップロールの間に1.8MPaの圧力をかけ、2.5m/minのスピードで通すことにより、当該シート状部材40の多孔質樹脂層40aと、潤滑剤透過防止層40bと、フィルム層40cとが互いに圧着されており、潤滑剤がシート状部材40の両端部に浸透するのを防止するように構成されている。なお、上記シート状部材40の両端部を圧着する際の温度や圧力は、上記の値に限定されるものではなく、潤滑剤の浸透を防止するように適宜設定される。
【0072】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
実施の形態3
図12はこの発明の実施の形態3を示すものであり、この実施の形態では、エンドレスベルト20として複数のロールによって張架されたものが用いられている。
【0074】
図12において、71は加熱源を有する定着部材としての加熱定着ロールを示すものであり、この加熱定着ロール71は、図示しない駆動源により矢印方向に沿って所定の回転速度で駆動されるようになっている。上記加熱定着ロール71としては、金属製コア72を備えており、この金属製コア72としては、例えば、アルミニウムやステンレス等からなるものが用いられる。上記金属製コア72の表面には、弾性体層73としてシリコンゴムが被覆されているとともに、この弾性体層73の表面には、さらにトップコート層74がコーティングされており、このトップコート層74の表面は、鏡面状態に近い状態に仕上げられている。なお、金属製コア72としては、アルミニウムやステンレス等以外にも熱伝導率の高い金属からなるものを使用することができ、トップコート層74としては、耐熱性の高い材料であれば、任意のものを使用することができる。
【0075】
また、上記金属製コア72の内部には、加熱源としてのハロゲンランプ75が配設されており、加熱定着ロール71は、このハロゲンランプ75によって表面温度が所定の温度となるよう内部から加熱されるようになっている。上記加熱定着ロール71の表面温度は、当該加熱定着ロール71の中央部表面に接触する温度センサー76によって検出され、加熱定着ロール71の表面温度が例えば175℃となるように、図示しない温度コントローラーによって制御されるように構成されている。
【0076】
さらに、上記加熱定着ロール71の表面には、例えば、離型剤としてジメチルシリコンオイルが、離型剤供給装置77によって均一に供給されている。
【0077】
また、上記加熱定着ロール71の下方には、無端ベルト状の加圧部材としてエンドレスベルト78を備えたベルトモジュール79が、所定幅のニップ部Nにおいて圧接するように配置されている。このベルトモジュール79は、エンドレスベルト78と、このエンドレスベルト78を張架する3本のロール80、81、82とから主に構成されている。
【0078】
上記ロール80とロール81との間には、エンドレスベルト78を加熱定着ロール81の表面に所定の圧力で押圧するための圧接部材83が配置されている。また、ベルトニップ部Nの出口には、圧力ロール80がベルト78を介して所定の荷重で加熱定着ロール81に圧接されている。
【0079】
上記圧接部材83は、図12に示すように、ベースプレート84と、当該ベースプレート84の表面に単層又は複層に積層された弾性体層85とから構成されており、図示しない付勢手段によって加熱定着ロール81に向けて押圧されている。
【0080】
また、上記エンドレスベルト78の内面には、潤滑剤としてヒンダードアミンオイルが潤滑剤塗布部材86によって塗布されている。
【0081】
さらに、上記加熱定着ロール81の表面には、当該加熱定着ロール81の表面を清掃するためのクリーニング装置87が配置されている。このクリーニング装置87は、供給ロール88によって清掃用のウエブ91を供給するとともに、当該清掃用ウエブ91を図示しないモーターによって回転駆動される巻取ロール89により巻き取る間に、清掃用ウエブ91を圧接ロール90によって加熱定着ロール81の表面に圧接することにより、加熱定着ロール81の表面に付着したオフセットトナー等を除去するように構成されている。
【0082】
なお、図12中、92は加熱定着ロール81の表面を外部から加熱する外部加熱ロールを示している。
【0083】
ところで、この実施の形態でも、エンドレスベルト78と圧接部材83との間に、摩擦低減用のシート状部材93が介在されており、このシート状部材93 が、潤滑剤を保持する多孔質樹脂層93aと、当該多孔質樹脂層93aの押圧部材側に積層された潤滑剤透過防止層93bと、前記多孔質樹脂層93aのエンドレスベルト78側に積層されたフィルム層93cからなるように構成されている。上記シート状部材93の構成は、前記実施の形態1と同様である。
【0084】
なお、上記シート状部材93は、圧接部材83を支持する支持部材84に一端が固定した状態で取り付けられているとともに、当該圧接部材83の全表面をエンドレスベルト78の移動方向に沿って覆うように配設されている。上記シート状部材93の先端は、固定せずに自由状態のままであってもよく、又、支持部材84に固定されていてもよく、あるいはシート状部材93自体を筒状に形成して、圧接部材84の全周を覆った状態で、当該圧接部材84に一部を固定しても良い。図示例では、シート状部材93が筒状に形成されている。
【0085】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材の両端部から潤滑剤が漏れるのを防止することができ、長期にわたって定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明に係る定着装置のシート状部材を示す平面構成図である。
【図2】図2はこの発明に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図3】図3はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
【図4】図4はこの発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す構成図である。
【図5】図5は圧力パッドを示す斜視図である。
【図6】図6は圧力パッドを示す分解斜視図である。
【図7】図7は離型剤を示す化学式である。
【図8】図8は離型剤を示す化学式である。
【図9】図9は離型剤の化学変化を示す化学式である。
【図10】図10はシート状部材の断面構成を示す説明図である。
【図11】図11はこの発明に係る定着装置のシート状部材を示す平面構成図である。
【図12】図12はこの発明の実施の形態3に係る定着装置を示す構成図である。
【図13】図13は実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1:定着装置、2:エンドレスベルト、3:加圧部材、40:シート状部材、41:潤滑材漏れ防止部、5:潤滑剤供給手段、H:加熱源、N:ニップ部、T:未定着トナー像、K:記録媒体。
【発明の属する技術分野】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において未定着画像を加熱加圧定着するのに用いられる定着装置に係り、特に、定着部材とエンドレスベルトとの間に形成されたニップ部に記録媒体を通過させる、所謂ベルトニップ方式の定着装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のベルトニップ方式の定着装置としては、例えば、加熱源を有する回転可能な加熱定着ロールと、この加熱定着ロールに圧接し且つ共に回転移動するエンドレスベルトと、このエンドレスベルトの内側に配設されて、前記エンドレスベルトを加熱定着ロールに向けて押圧して当骸エンドレスベルトと加熱定着ロールとの間にニップ部を形成する圧力パッドとを備え、このニップ部にシートを通過させることで、当該シート上の未定着トナー像を加熱加圧定着するように構成したものが知られている(特開平8−262903号公報参照) 。
【0003】
ところで、上記ベルトニップ方式の定着装置の場合には、エンドレスベルトを圧力パッドによって加熱定着ロールの表面に圧接させるように構成されているため、エンドレスベルトと圧力パッドとの摺動抵抗が過大であると、エンドレスベルト駆動のためのトルクが増大し、エンドレスベルトを駆動させるための加熱定着ロールに働く応力つまり駆動トルクも大きくなるため、エンドレスベルトの磨滅、薄肉の加熱定着ロールコアのギア受け部に働く応力が大きくなり、ギアやコアの破損が引き起こされる懸念があった。また、このような態様にあっては、駆動モーターの負荷も大きくなり、より多くの電力が必要になる。
【0004】
更に、加熱定着ロールによるエンドレスベルトの駆動力に比べて、エンドレスベルト及び圧力パッドの間の摩擦力が無視できないほど大きくなると、加熱定着ロールとエンドレスベルトとの間でスリップが生じ、このような条件下で未定着トナー像を保持したシートをニップ部に通すと、このスリップがシート上の未定着トナー像に画像のずれを引き起こすという問題点もあった。
【0005】
そこで、本出願人は、上記の問題点を解決するため、特開平10−213984号公報や特開平10−228196号公報、あるいは特開平11−45018号公報等に開示された技術を、既に提案している。
【0006】
上記特開平10−213984号公報には、圧力パッドの表面をポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートで被覆するとともに、圧力パッドとエンドレスベルトとの間に、潤滑剤としてシリコーンオイルを介在させることにより、エンドレスベルトの滑りを良好にする技術が提案されている。
【0007】
また、上記特開平10−228196号公報には、圧力パッドとエンドレスベルトの間に潤滑剤を塗布する手段を備えるように構成した技術が提案されている。
【0008】
さらに、上記特開平11−45018号公報には、同様に、圧力付与部材とエンドレスベルトの間に潤滑剤を塗布する部材を備えるように構成した技術が提案されている。
【0009】
しかし、上記特開平10−213984号公報や特開平10−228196号公報、あるいは特開平11−45018号公報等に開示された技術の場合には、圧力パッドの表面をポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートで被覆するとともに、圧力パッドとエンドレスベルトとの間に、シリコーンオイル等の潤滑剤を塗布供給するように構成したものである。
【0010】
ところが、本発明者らの検討によれば、ポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートは潤滑剤が含浸しないため、表面にシリコーンオイル等の潤滑剤が塗布された状態で存在するのみであるため、一部でも潤滑剤の塗布むらが生じると、その部分の摺動抵抗が大きくなり、当該ガラス繊維シートが摩擦によって部分的に削られることになる。したがって、上記ポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートが磨耗によって部分的に削られ磨耗粉がシリコーンオイル等の潤滑剤と混合されて粘度の高い物質となり、経時的にエンドレスベルトを駆動するためのトルクが増大し、上述したような加熱定着ロールとエンドレスベルトの間で生じるスリップに起因して、シート上の未定着トナー像に画像のずれが発生するという問題点が明らかになった。
【0011】
また、上述したシリコーンオイルの一種である、変性シリコーンオイルは、塗布された物質の表面に強固な反応膜を形成することで、塗布むらの発生が抑えられ、結果、摺動抵抗が均一に維持されるのであるが、長時間の熱的環境下で熱劣化をきたし、変質してしまい、反応膜を形成しにくくなってしまうので、経時的にエンドレスベルトを駆動するためのトルクが増大し、上述したような加熱定着ロールとエンドレスベルトとの間で生じるスリップに起因して、シート上の未定着トナー像に画像のずれが発生するという間題点も明らかになった。
【0012】
そこで、本出願人は、上記従来技術の問題点を解決し、潤滑剤を常に含浸した摺動部材にすることで摺動面に塗布むらが発生しにくく、経時的なエンドレスベルトの駆動トルクの増大を防止し、安定した走行性能を確保することにより、高品質の画像を安定して得ることが可能な定着装置について、既に提案している(特願2002−125257号)。
【0013】
この定着装置は、回転可能に配設される定着部材と、前記定着部材に回転可能に圧接配置され、前記定着部材との間に形成されるニップ部に未定着トナー像を担持した記録媒体が挟持されるエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内側に固定配設され、前記定着部材側に向けて当該エンドレスベルトを押圧する押圧部材と、前記エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材と、前記ニップ部を加熱する加熱源とを備えた定着装置において、前記シート状部材は、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層を備え、前記潤滑剤が変性シリコーンオイルであるように構成したものである。
【0014】
また、上記定着装置は、前記シート状部材が、前記多孔質樹脂層の押圧部材側に潤滑剤の透過を防止する潤滑剤透過防止層を備えるようにした構成をも含んでいる。
【0015】
【発明が解決しようとする謀題】
しかし、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特願2002−125257号に係る定着装置の場合には、エンドレスベルトと押圧部材との間にシート状部材を介在し、このシート状部材は、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層を備え、前記潤滑剤が変性シリコーンオイルであるように構成したものであるが、当該シート状部材は、多孔質樹脂層に潤滑剤を保持することができるものの、エンドレスベルトの長手方向の両端部に相当する部分がオープンになっている。そのため、多孔質樹脂層に潤滑剤を保持したシート状部材は、押圧部材によってエンドレスベルトを介して定着部材に圧接されると、その両端部から潤滑剤が浸み出てしまい、潤滑剤の枯渇が起きて、定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができず、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加し、駆動トルクが早期に上昇するという問題点を有していた。
【0016】
また、上記シート状部材の両端部から潤滑剤が浸み出てしまうと、当該潤滑剤がエンドレスベルトの表面側に回り、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、これらエンドレスベルト定着部材とのニップ部に挿通されるシートに付着して、潤滑剤の染みが発生するという問題点を有していた。
【0017】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材の両端部から潤滑剤が漏れるのを防止することができ、長期にわたって定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載された発明は、図2に示すように、回転可能に配設される定着部材1と、前記定着部材1に回転可能に圧接配置され、前記定着部材1との間に形成されるニップ部Nに未定着トナー像Tを担持した記録媒体Kが挟持されるエンドレスベルト2と、前記エンドレスベルト2の内側に固定配設され、前記定着部材1側に向けて当該エンドレスベルト2を押圧する押圧部材3と、前記エンドレスベルト2と押圧部材3との間に介在され、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層を備えたシート状部材40と、前記ニップ部Nを加熱する加熱源Hとを備えた定着装置において、前記シート状部材40は、図1に示すように、少なくとも押圧部材3の長手方向の両端部に、潤滑剤の漏れを防止する潤滑剤漏れ防止部41を備えたことを特徴とする定着装置である。
【0019】
また、請求項2に記載された発明は、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤を弾く撥液加工部からなることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0020】
さらに、請求項3に記載された発明は、前記撥液加工部が、シート状部材の両端部にフッ素樹脂を塗布し、当該塗布されたフッ素樹脂を溶融し成膜して構成されていることを特徴とする請求項2記載の定着装置である。
【0021】
又、請求項4に記載された発明は、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤の浸透を防止する防潤加工部からなることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0022】
更に、請求項5に記載された発明は、前記防潤加工部が、シート状部材の両端部を加熱条件下で圧着して構成されていることを特徴とする請求項4記載の定着装置である。
【0023】
また、請求項6に記載された発明は、前記潤滑剤漏れ防止部が、前記押圧部材と定着部材とによって挟持されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0024】
さらに、請求項7に記載された発明は、前記シート状部材が、前記多孔質樹脂層の押圧部材側に潤滑剤の透過を防止する潤滑剤透過防止層を備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0025】
また更に、請求項8に記載された発明は、前記シート状部材の少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に備えられる潤滑剤漏れ防止部は、当該シート状部材の押圧部材による全加圧長aに対する潤滑剤漏れ防止部が設けられていないシート状部材の非加工長cの割合(c/a)×100%が、90%以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
【0026】
このような技術的手段において、定着部材1は、回転可能に配設されるものであれば、ロール状、ベルト状等適宜選定して差し支えない。また、エンドレスベルト2は、図1に示すように非張架状態で支持されるものであってもよいし、例えば、複数のロールに掛け渡すなどして張架支持されるものであってもよい。
【0027】
更に、加圧部材3は、固定配設されて前記定着部材1に向けて前記エンドレスベルト2を押圧するものであれば適宜選定して差し支えないが、定着時の熱による劣化を防止するという観点からすれば、耐熱性を具備するもので構成することが好ましい。
【0028】
更にまた、加熱源Hは、ニップ部Nを加熱するものであれば、例えば、図2に示すように、定着部材1を内部加熱するタイプや、また定着部材1を外部加熱するタイプのように、定着部材1を介してニップ部Nを加熱するものは勿論のこと、エンドレスベルト2や加圧部材3を加熱することでニップ部Nを加熱するもの、あるいはベルト状の定着部材1自体が電磁誘導加熱等によって発熱するもの等、適宜選定して差し支えない。
【0029】
また、潤滑剤については、酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイルを用いることが望ましいが、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材として、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層40aと、当該多孔質樹脂層40aの押圧部材3側に配置された潤滑剤透過防止層40bとからなるものを用いることにより、使用可能なシリコーンオイルの種類が広がることがわかっている。上記シート状部材と組み合わせることによって、アミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイルであるヒンダードアミンオイルなどが使用可能となるが、長期間の使用において、高い耐熱性を有し、熱的な劣化の少ないヒンダードアミンオイルを用いるのが、特に望ましい。
【0030】
更に、潤滑剤としてシリコーンオイルを用いる態様にあっては、その粘度が常温で50〜3000csであることが好ましい。ここで、この下限値はシリコーンオイルの不必要な蒸発を防止するという観点に基づいて定められたものであり、一方、上限値はシリコーンオイルが摺動抵抗が大きくなる要因となってしまうのを防止する観点に基づいて定められたものである。
【0031】
また、上記多孔質樹脂層40aは、多数の微細な孔を有する樹脂からなるものであって、例えば、樹脂を発泡させて多孔質化したものや、樹脂を一軸あるいは二軸方向に延伸して多孔質化したもの、あるいは焼結成型等が挙げられる。ここで、樹脂を一軸あるいは二軸方向に延伸して多孔質化した多孔質樹脂層40aを採用する態様にあっては、例えば、当該多孔質樹脂にて織られた繊維( 多孔質樹脂繊維織布) や、前記多孔質樹脂繊維織布及び多孔質樹脂を薄膜化したもの( 多孔質樹脂フイルム) を、従来公知の熱融着法、接着法を用いて積層したものとすることが好ましい。なお、多孔質樹脂層は、繊維自体が多孔質樹脂からなるものでなくとも、当該繊維を織ることによって、多孔質化された樹脂製の繊維織布から構成したものであっても良いが、上述したように、多孔質樹脂にて織られた繊維( 多孔質樹脂繊維織布) などを用いることによって、繊維織布は勿論のこと、多孔質樹脂そのものが潤滑剤を含浸した状態で保持するため、より一層望まし い。
【0032】
そして、その材質については、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂等より適宜選定して差し支えないが、耐熱性、離型性、耐久性、耐摺動性等を考慮すると、多孔質化したPTFE( ポリテトラフルオロエチレン) 、PFA( テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体) 、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) を用いることが好ましい。また、潤滑剤透過防止層40bは、耐熱性があり且つ潤滑剤を透過させない耐熱性樹脂フイルムや金属フイルム等から適宜選定して差し支えないが、コスト及び加工性、更には可撓性などを考慮するとFEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) が好ましい。
【0033】
更に、この発明においては、前記多孔質樹脂層40aに潤滑剤を保持させる必要があるが、この手法については、予め多孔質樹脂層40aに潤滑剤を含浸させるようにしてもよいし、また、外部より多孔質樹脂層40a自体、又はエンドレスベルト2の内面に塗布し、当該エンドレスベルト2を介して多孔質樹脂部材に潤滑剤を供給するようにしてもよい。ここで、後者の態様においては、簡易且つ安定的に潤滑剤を供給するという観点からすれば、前記エンドレスベルト2の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段5を具備させることが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0035】
実施の形態1
図3及び図4はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
【0036】
この実施の形態に係る定着装置1は、図3に示すように、定着部材としての加熱定着ロール10と、薄膜状のエンドレスベルト20と、加圧部材としての圧力パッド30とを備えている。上記エンドレスベルト20は、その内側に配置された圧力パッド30により加熱定着ロール10に押圧されており、加熱定着ロール10とエンドレスベルト20との間には、未定着トナー像Tを担持した記録媒体としての記録シートSが通過可能なニップ部Nが形成されている。なお、図3 中、60は記録シートSをニップ部Nへ案内するガイド板を、61はニップ部Nを通過した記録シートSを案内するガイド板を、62は記録シートSを剥離する剥離部材を、それぞれ示している。
【0037】
上記加熱定着ロール10は、図4に示すように、円筒状のコア11と、このコア11の表面に被覆された弾性体層12と、この弾性体層12の表面に被覆された離型層13とを有しており、コア11の内部には、加熱源14が設けられている。
【0038】
上記コア11の材質としては、機械的強度に優れ、熱伝導性の良好な材質のものであれば、特に制限はないが、例えば、アルミニウム、SUS、鉄、銅、真鍮等の金属や合金等が挙げられる。
【0039】
また、上記弾性体層12の材質としては、当該弾性体層12として公知の材質のものの中から適宜選択でき、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。そして、この弾性体層12は、公知の手法によってコア11の表面に形成され、その手法については、特に制限がなく、例えば、それ自体公知の注入成型法またはコーティング法等を採用することができる。
【0040】
更に、上記離型層13は、未定着トナー像Tのオフセットを好適に防止すると共に、安定した状態で定着装置1を稼動させるために設けられるものであって、その材質としては、耐熱性がありトナーに対し適度な離型性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ素樹脂等が用いられる。
【0041】
更にまた、上記加熱源14としては、前記コア11の内部に収容することができる形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、ハロゲンランプ等を用いることができる。この加熱源14により加熱された加熱定着ロール10の表面温度は、例えば、図3及び図4に示すように、当該加熱定着ロール10の表面に接触するように配置された温度センサー15で計測するようにし、図示しない制御手段によりその温度を一定に制御することができる。
【0042】
上記温度センサー15としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、熱電対等が用いられる。また、制御手段としては、特に制限はなく、たとえば、温度コントローラー、コンピューターなどが用いられる。尚、符号16は、加熱定着ロール10を回転駆動するモーターである。
【0043】
また、上記エンドレスベルト20としては、その形状、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じてそれ自体公知のものの中から適宜選択して使用することができる。このエンドレスベルト20の構造としては、単層構造であっても良いが、この実施の形態においては、図4に示すように、基材21の表面に離型層としての樹脂被覆22を形成したものが用いられる。
【0044】
ここで、エンドレスベルト20の基材21の材質としては、例えば、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のポリマーや、ステンレス、ニッケル、銅等の金属が用いられる。
【0045】
そして、上記樹脂被覆22は、表面に付着するトナーの剥離性のよいものが好ましく、その材質としては、例えば、PTFE( ポリテトラフルオロエチレン) 、PFA( テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体) 、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合 体) 等のフッ素樹脂が用いられる。
【0046】
更に、上記圧力パッド30は、図4に示すように、断面略凹字状に形成された合成樹脂製等の支持体31と、該支持体31上に配置されたシリコーンゴムやフッ素ゴム等からなる弾性体32とから構成されており、当該圧力パッド30は、コイルスプリング等の付勢手段33によって、加熱定着ロール10の表面に圧接する方向に、所定の圧力(例えば、1〜2kg/cm2 )で付勢されている。
【0047】
また、上記圧力パッド30やコイルスプリング33は、図4に示すように、金属製の圧接部材34に支持されており、この圧接部材34の長手方向の両端部には、エンドレスベルト20がスムーズに回転するようにベルト走行ガイド35が設けられている。
【0048】
上記圧力パッド30の形状、構造、大きさ等については特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、また、単一の部材からなる構造であってもよいし、本実施の形態のように異なる機能を有する複数の部材からなる構造であってもよい。
なお、図5及び図6は、圧力パッド30の一例を示す全体斜視図及び分解斜視図である。
【0049】
ところで、この実施の形態では、前記エンドレスベルト2の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段5を備え、前記潤滑剤として酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイルを用いるように構成されている。
【0050】
また、この実施の形態では、シート状部材が、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層と、当該多孔質樹脂層の押圧部材側に配置された潤滑剤透過防止層とからなるように構成されている。
【0051】
すなわち、上記保持部材34には、図4に示すように、エンドレスベルト20の内面に潤滑剤としてシリコーンオイルを供給する潤滑剤供給手段としてのオイル供給部材50が配設されている。このオイル供給部材50は、ベルト20の内面に接触配置されるフェルト51と、必要に応じてフェルト51を保持する図示しないケースとを備えており、フェルト51には、粘度50〜3000csの粘度を有するシリコーンオイル52が含浸されている。このフェルト51は、耐熱温度が130℃以上、好ましくは、200℃以上の耐熱性が必要であり、材質としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の不織布が好適である。また、ケースは、離型剤を透過、含浸しないもので、耐熱性が130℃以上であればよく、具体的には、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅等の金属や、ポリカーボネート、メラミン樹脂等の耐熱性樹脂を用いることができる。この実施の形態では、シリコーンオイル52として、常温での粘度が300csの酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイル(ヒンダードアミンオイル)が用いられる。
【0052】
アミノ変性シリコーンオイルは、図7に示すように、アミノ基が塩基性を示すため、酸性物質が存在すると、加熱定着ロール10の熱によって反応が促進され、中和によって粘度が増加したり、不溶物を発生させたりする。
【0053】
そこで、アミノ変性シリコーンオイルに図8に示すような構造式の酸化防止剤を500ppm程度添加したヒンダードアミンオイルを用いることにより、図9に示すように、アミノ変性シリコーンオイル中のアミノ基が酸化されて活性ラジカルとなるHを、酸化防止剤のアミンのベンゼン環でトラップ(共鳴)することにより、アミノ変性シリコーンオイルの中和による連鎖反応を抑制することができ、アミノ変性シリコーンオイルが中和によって粘度が増加したり、不溶物を発生させたりするのを抑制することができる。
【0054】
また、上記ヒンダードアミンオイルが含浸されたフェルト51は、エンドレスベルト20の軸方向のほぼ全域に当接し、エンドレスベルト20の回転に伴って、このエンドレスベルト20の内周面全面にヒンダードアミンオイル52を供給する。ヒンダードアミンオイル52の供給量は、多い必要はなく、従って、フェルト51のエンドレスベルト20に対する当接圧力は小さく、微妙に接触する程度でよい。尚、ヒンダードアミンオイル52を含浸させるフェルト51については、多数の連続気孔を有し、定着温度における耐熱性を有すると共に適度の弾性率を有するものであればよく、スポンジ等であってもよい。
【0055】
また、この実施の形態では、図4に示すように、エンドレスベルト20と圧力パッド30との間に、両者の摩擦を低減するためのシート状部材40が介在されている。なお、図4では、図示の都合上、エンドレスベルト20とシート状部材40との間に、微小な隙間が空いているが、当該シート状部材40は、圧力パッド30の弾性体32によって、エンドレスベルト20と共に加熱定着ロール10の表面に圧接されていることは勿論である。また、上記シート状部材40の基端部(図3中、右側の端部)は、圧接部材34に取り付けられている部材によって挟持されており、その先端部(図4中、左側の端部)は、ニップ部Nを通過した後、フリーとなっている。この摩擦低減用のシート状部材40は、図10に示すように、フッ素系の樹脂を延伸成型、焼結成型等することによって、潤滑剤を保持する微細な孔を多数有する多孔質樹脂層40aと、当該多孔質樹脂層40aの圧力パッド30側に積層された、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) やポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ステンレス、ニッケル、銅、アルミ、PET等の薄いフィルムからなる潤滑剤透過防止層40bと、前記多孔質樹脂層40aのエンドレスベルト20側に積層されたフィルム層40cとから構成されている。ここでは、シート状部材40における多孔質樹脂層40aは、ジャパンゴアテックス製、品番#8181を用いた。なお、シート状部材40は、厚さとして、50μm〜4mm、好ましくは80μm〜500μmであり、厚さが50μm未満では、十分な強度と潤滑剤保持性が得られず、厚さが4mmを超えると、加熱定着ロールに対し十分な圧力を均一に与えられず、またニップ幅が均一に得られにくくなる。
【0056】
なお、上記シート状部材40は、圧接部材を支持する支持部材34に一端が固定した状態で取り付けられているとともに、当該圧接部材34の全表面をエンドレスベルト20の移動方向に沿って覆うように配設されている。上記シート状部材40の先端は、固定せずに自由状態のままであってもよく、又、支持部材34に固定されていてもよく、あるいはシート状部材40自体を筒状に形成して、圧接部材30の全周を覆った状態で、当該圧接部材30に一部を固定しても良い。
【0057】
上記多孔質樹脂層40aとしては、例えば、PTFE( ポリテトラフルオロエチレン) 樹脂を延伸成型、焼結成型して多孔質化した多孔質樹脂からなるものを用いてよいが、ここでは延伸成型したものを用いている。この多孔質樹脂層40aの形状としては、フイルム形状、織布形状、フィルム/織布貼り合せ形状など適宜選定して差し支えないが、この実施の形態では、図10に示すように、多孔質樹脂にて形成された繊維が織られた繊維( 多孔質樹脂繊維織布) からなるものが用いられている。また、この多孔質樹脂層40aの表裏には、潤滑剤透過防止層40bと、フィルム層40cとが貼り合せられており、フィルム層40cをエンドレスベルト20に対向させ、潤滑剤透過防止層40bを圧力パッド30に対向させるように配置している。なお、上記フィルム層40cは、必ずしも設ける必要がないが、当該フィルム層40cを表面に設けることによって、摩擦低減用のシート状部材40表面の平滑性を向上させることができ、耐久性や、より一層摺動抵抗を低減することが可能となる。ただし、フィルム層40cを設ける場合には、当該フィルム層40c自体が潤滑剤の透過性を有することは勿論であり、このフィルム層40cは、結果として潤滑剤を透過するものであればよい。
【0058】
ところで、この実施の形態では、前記シート状部材が、少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に、潤滑剤の漏れを防止する潤滑剤漏れ防止部を備えるように構成されている。
【0059】
また、この実施の形態では、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤を弾く撥液加工部からなるように構成されており、具体的には、前記撥液加工部が、例えば、シート状部材の両端部にフッ素樹脂を塗布し、当該塗布されたフッ素樹脂を溶融して成膜して構成される。
【0060】
すなわち、この実施の形態では、少なくともシート状部材40の圧力パッド30の長手方向の両端部に、図示の実施の形態では、図1に示すように、シート状部材40の長手方向の両端部に、全幅にわたって潤滑剤漏れ防止部としての撥液加工部41が設けられている。この撥液加工部41は、シート状部材40の長手方向の両端部に、FEP( テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) 等のフッ素樹脂を塗布し、当該フッ素樹脂を加熱等することにより溶融させて成膜することによって形成される。なお、フッ素樹脂としては、FEPに限定されないことは勿論である。なお、上記撥液加工部41は、少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に設けられていれば良いが、押圧部材としての圧力パッド30の上流側及び下流側にわたって、当該シート状部材40の全幅に設けるのが望ましい。
【0061】
また、上記撥液加工部41は、図1に示すように、シート状部材40の長手方向の両端部に、所定の長さにわたって設けられ、加工部分としては、シートの圧力パッド30による全加圧長をa、シートの撥液加工部41を設けない非加工長をcとしたとき、(c/a)×100=90%以上となるように設定されてい る。ただし、上記シートの全加圧長aに対する撥液加工部41を設けない非加工長cの割合は、必ずしも、90%以上である必要はなく、90%未満であっても良い。
【0062】
本発明者らの実験によれば、シートの圧力パッド30による全加圧長aに対する撥液加工部41を設けない非加工長cの割合は、100%未満、つまり少しでも撥液加工部41が圧力パッド30によって加圧されているのが望ましいが、図13に示すように、(c/a)の割合が70〜80%程度に減少すると、初期的な動トルクが上昇するため、90%以上あることが望ましく、更に95%程度であることが望ましい。
【0063】
なお、上記撥液加工部41の両端縁は、エンドレスベルト20の移動方向に沿って、必ずしも平行に形成する必要はなく、図11(a)(b)に示すように、エンドレスベルト20の移動方向下流側に向けて、両端縁の距離が滑らかに狭くなるように形成しても、あるいは両端縁の距離が段階状に狭くなるように形成しても良い。
【0064】
以上の構成において、この実施の形態に係る定着装置では、次のようにして、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材の両端部から潤滑剤が漏れるのを防止することができ、長期にわたって定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することができるようになっている。
【0065】
すなわち、この実施の形態に係る定着装置では、図3及び図4に示すように、加熱定着ロール10がモーター16によって所定の回転速度で駆動されると、当該加熱定着ロール10の回転に従動してエンドレスベルト20も回転する。このとき、加熱定着ロール10とエンドレスベルト20との間に形成されたニップ部Nの入口に、未定着トナー像Tを保持する記録シートSが存在すると、該記録シートSが前記ニップ部Nに取り込まれ、ニップ部Nを通過する。ニップ部Nにおいては、加熱定着ロール10と、圧力パッド30により加熱定着ロール10側に押圧されたエンドレスベルト20とによって前記記録シートSが加圧され、また、加熱定着ロール10によって該記録シートSが加熱される。その結果、未定着トナー像Tが記録シートS上で加熱加圧定着される。
【0066】
エンドレスベルト20が回転していると、このエンドレスベルト20の内周面には、フェルト51によってヒンダードアミンオイル52が塗布されている。そして、塗布されたヒンダードアミンオイル52は、エンドレスベルト20の回転に伴ってニップ部Nすなわちエンドレスベルト20の内周面に圧力パッド30によって接触する摩擦低減用のシート状部材40に到達し、当該シート状部材40によって保持され、エンドレスベルト20の内面に徐々に供給される。
【0067】
ここで、上記ヒンダードアミンオイル52は、耐熱性を有しており、加熱定着ロール10の熱によって加熱された場合でも、酸化防止剤によってアミンオイルが中和によって粘度が増加したり、不溶物を発生させたりするのが抑制される。そのため、定着装置1を長期間使用した場合でも、シリコーンオイルが劣化するのを防止することができ、経時的なエンドレスベルトの駆動トルクの増大を防止し、安定した走行性能を確保することにより、高品質の画像を安定して得ることが可能となっている。
【0068】
また、上記シート状部材40は、図11に示すように、多孔質樹脂層40aを備えているため、当該シート状部材40に保持されたヒンダードアミンオイル等のシリコーンオイル52は、多孔質樹脂層40aに含浸された状態で保持され、この多孔質樹脂層40aから徐々にシート状部材40の表面に浸み出して、このシート状部材40の表面には、常時ある程度の量のシリコーンオイル52が均一に塗布された状態となっている。
【0069】
さらに、上記シート状部材の長手方向の両端部には、図1に示すように、撥液加工部41が設けられているため、当該シート状部材40の多孔質樹脂層40aに含浸されたシリコーンオイル52は、撥液加工部41によって弾かれて、シート状部材の長手方向の両端部から浸み出ることがない。そのため、シート状部材40に保持されたヒンダードアミンオイル等のシリコーンオイル52は、多孔質樹脂層40aに含浸された状態で保持され、この多孔質樹脂層40aから徐々にシート状部材40の表面に浸み出して、エンドレスベルト20の内面に供給され、長期にわたって加熱定着ロール10の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルト20と圧力パッド30との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルト20と加熱定着ロール10との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することができるようになっている。
【0070】
実施の形態2
この実施の形態2では、前記潤滑剤漏れ防止部が、潤滑剤の浸透を防止する防潤加工部からなるように構成されており、具体的には、この防潤加工部が、シート状部材の両端部を加熱条件下で圧着して構成されている。
【0071】
すなわち、この実施の形態2では、シート状部材40の押圧部材の長手方向の両端部が、350℃の加熱ロールとニップロールの間に1.8MPaの圧力をかけ、2.5m/minのスピードで通すことにより、当該シート状部材40の多孔質樹脂層40aと、潤滑剤透過防止層40bと、フィルム層40cとが互いに圧着されており、潤滑剤がシート状部材40の両端部に浸透するのを防止するように構成されている。なお、上記シート状部材40の両端部を圧着する際の温度や圧力は、上記の値に限定されるものではなく、潤滑剤の浸透を防止するように適宜設定される。
【0072】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
実施の形態3
図12はこの発明の実施の形態3を示すものであり、この実施の形態では、エンドレスベルト20として複数のロールによって張架されたものが用いられている。
【0074】
図12において、71は加熱源を有する定着部材としての加熱定着ロールを示すものであり、この加熱定着ロール71は、図示しない駆動源により矢印方向に沿って所定の回転速度で駆動されるようになっている。上記加熱定着ロール71としては、金属製コア72を備えており、この金属製コア72としては、例えば、アルミニウムやステンレス等からなるものが用いられる。上記金属製コア72の表面には、弾性体層73としてシリコンゴムが被覆されているとともに、この弾性体層73の表面には、さらにトップコート層74がコーティングされており、このトップコート層74の表面は、鏡面状態に近い状態に仕上げられている。なお、金属製コア72としては、アルミニウムやステンレス等以外にも熱伝導率の高い金属からなるものを使用することができ、トップコート層74としては、耐熱性の高い材料であれば、任意のものを使用することができる。
【0075】
また、上記金属製コア72の内部には、加熱源としてのハロゲンランプ75が配設されており、加熱定着ロール71は、このハロゲンランプ75によって表面温度が所定の温度となるよう内部から加熱されるようになっている。上記加熱定着ロール71の表面温度は、当該加熱定着ロール71の中央部表面に接触する温度センサー76によって検出され、加熱定着ロール71の表面温度が例えば175℃となるように、図示しない温度コントローラーによって制御されるように構成されている。
【0076】
さらに、上記加熱定着ロール71の表面には、例えば、離型剤としてジメチルシリコンオイルが、離型剤供給装置77によって均一に供給されている。
【0077】
また、上記加熱定着ロール71の下方には、無端ベルト状の加圧部材としてエンドレスベルト78を備えたベルトモジュール79が、所定幅のニップ部Nにおいて圧接するように配置されている。このベルトモジュール79は、エンドレスベルト78と、このエンドレスベルト78を張架する3本のロール80、81、82とから主に構成されている。
【0078】
上記ロール80とロール81との間には、エンドレスベルト78を加熱定着ロール81の表面に所定の圧力で押圧するための圧接部材83が配置されている。また、ベルトニップ部Nの出口には、圧力ロール80がベルト78を介して所定の荷重で加熱定着ロール81に圧接されている。
【0079】
上記圧接部材83は、図12に示すように、ベースプレート84と、当該ベースプレート84の表面に単層又は複層に積層された弾性体層85とから構成されており、図示しない付勢手段によって加熱定着ロール81に向けて押圧されている。
【0080】
また、上記エンドレスベルト78の内面には、潤滑剤としてヒンダードアミンオイルが潤滑剤塗布部材86によって塗布されている。
【0081】
さらに、上記加熱定着ロール81の表面には、当該加熱定着ロール81の表面を清掃するためのクリーニング装置87が配置されている。このクリーニング装置87は、供給ロール88によって清掃用のウエブ91を供給するとともに、当該清掃用ウエブ91を図示しないモーターによって回転駆動される巻取ロール89により巻き取る間に、清掃用ウエブ91を圧接ロール90によって加熱定着ロール81の表面に圧接することにより、加熱定着ロール81の表面に付着したオフセットトナー等を除去するように構成されている。
【0082】
なお、図12中、92は加熱定着ロール81の表面を外部から加熱する外部加熱ロールを示している。
【0083】
ところで、この実施の形態でも、エンドレスベルト78と圧接部材83との間に、摩擦低減用のシート状部材93が介在されており、このシート状部材93 が、潤滑剤を保持する多孔質樹脂層93aと、当該多孔質樹脂層93aの押圧部材側に積層された潤滑剤透過防止層93bと、前記多孔質樹脂層93aのエンドレスベルト78側に積層されたフィルム層93cからなるように構成されている。上記シート状部材93の構成は、前記実施の形態1と同様である。
【0084】
なお、上記シート状部材93は、圧接部材83を支持する支持部材84に一端が固定した状態で取り付けられているとともに、当該圧接部材83の全表面をエンドレスベルト78の移動方向に沿って覆うように配設されている。上記シート状部材93の先端は、固定せずに自由状態のままであってもよく、又、支持部材84に固定されていてもよく、あるいはシート状部材93自体を筒状に形成して、圧接部材84の全周を覆った状態で、当該圧接部材84に一部を固定しても良い。図示例では、シート状部材93が筒状に形成されている。
【0085】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、エンドレスベルトと押圧部材との間に介在されるシート状部材の両端部から潤滑剤が漏れるのを防止することができ、長期にわたって定着部材の回転時に潤滑剤の均一な層を形成することができ、エンドレスベルトと押圧部材との間の摺動抵抗が増加するのを防止できるとともに、エンドレスベルトと定着部材との間にスリップが生じたり、シートに付着して潤滑剤の染みが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明に係る定着装置のシート状部材を示す平面構成図である。
【図2】図2はこの発明に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図3】図3はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
【図4】図4はこの発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す構成図である。
【図5】図5は圧力パッドを示す斜視図である。
【図6】図6は圧力パッドを示す分解斜視図である。
【図7】図7は離型剤を示す化学式である。
【図8】図8は離型剤を示す化学式である。
【図9】図9は離型剤の化学変化を示す化学式である。
【図10】図10はシート状部材の断面構成を示す説明図である。
【図11】図11はこの発明に係る定着装置のシート状部材を示す平面構成図である。
【図12】図12はこの発明の実施の形態3に係る定着装置を示す構成図である。
【図13】図13は実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1:定着装置、2:エンドレスベルト、3:加圧部材、40:シート状部材、41:潤滑材漏れ防止部、5:潤滑剤供給手段、H:加熱源、N:ニップ部、T:未定着トナー像、K:記録媒体。
Claims (8)
- 回転可能に配設される定着部材と、前記定着部材に回転可能に圧接配置され、前記定着部材との間に形成されるニップ部に未定着トナー像を担持した記録媒体が挟持されるエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内側に固定配設され、前記定着部材側に向けて当該エンドレスベルトを押圧する押圧部材と、前記エンドレスベルトと押圧部材との間に介在され、少なくとも潤滑剤を保持する多孔質樹脂層を備えたシート状部材と、前記ニップ部を加熱する加熱源とを備えた定着装置において、
前記シート状部材は、少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に、潤滑剤の漏れを防止する潤滑剤漏れ防止部を備えたことを特徴とする定着装置。 - 前記潤滑剤漏れ防止部は、潤滑剤を弾く撥液加工部からなることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記撥液加工部は、シート状部材の両端部にフッ素樹脂を塗布し、当該塗布されたフッ素樹脂を溶融し成膜して構成されていることを特徴とする請求項2記載の定着装置。
- 前記潤滑剤漏れ防止部は、潤滑剤の浸透を防止する防潤加工部からなることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記防潤加工部は、シート状部材の両端部を加熱条件下で圧着して構成されていることを特徴とする請求項4記載の定着装置。
- 前記潤滑剤漏れ防止部は、前記押圧部材と定着部材とによって挟持されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記シート状部材は、前記多孔質樹脂層の押圧部材側に潤滑剤の透過を防止する潤滑剤透過防止層を備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記シート状部材の少なくとも押圧部材の長手方向の両端部に備えられる潤滑剤漏れ防止部は、当該シート状部材の押圧部材による全加圧長aに対する潤滑剤漏れ防止部が設けられていないシート状部材の非加工長cの割合(c/a)×100%が、90%以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
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