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JP2004104931A - ギヤードモータ - Google Patents

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JP2004104931A
JP2004104931A JP2002265248A JP2002265248A JP2004104931A JP 2004104931 A JP2004104931 A JP 2004104931A JP 2002265248 A JP2002265248 A JP 2002265248A JP 2002265248 A JP2002265248 A JP 2002265248A JP 2004104931 A JP2004104931 A JP 2004104931A
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gear
motor
rotation
force
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JP2002265248A
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Inventor
Nobuo Nakanishi
中西 延生
Susumu Gomi
五味 進
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Nakagawa Electric Ind Co Ltd
Original Assignee
Nakagawa Electric Ind Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】電動モータの出力部材への駆動力の伝達経路上に配設されたクラッチ手段を安定して伝達/遮断せしめて、復帰力をもった操作対象を初期位置から作動位置に駆動変位および保持せしめた後に初期位置に返戻作動せしめることの出来る、新規な構造のギヤードモータを提供することを目的とする。
【解決手段】出力部材176に駆動力を及ぼす電動モータとして、回転子32に形成された永久磁石38による磁極と固定子36に形成されるコイル巻線による磁極とを対向配置せしめた電動モータ18を採用し、該電動モータ18の出力部材176への駆動力の伝達経路上に配設したクラッチ手段20を継断作動せしめる切換部材22を、かかる電動モータ18への給電を中止した際の回転子32の逆方向への回転と、該切換部材22に対して常時付勢力を及ぼすコイルスプリング等の付勢手段198を利用して、クラッチ手段20を遮断する方向に作動せしめるようにした。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、復帰力を持った操作対象への駆動力を継断して、かかる操作対象を位置制御するためのクラッチ手段を内蔵したギヤードモータに係り、例えば洗濯機の排水弁の開閉のための駆動源等として好適に採用されるギヤードモータに関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、小形の電動モータで有効な出力を得るために、モータ駆動軸に歯車等の減速手段を組付けたギヤードモータが知られており、民生および一般の電気機器等に使用されている。その一種として、例えば、特開平1−194833号公報(特許文献1)や特開平3−198638号公報(特許文献2)等に記載されているように、電動モータにより歯車列等の減速手段を介して出力部材を駆動せしめて、該出力部材に連結される復帰力を持った操作対象を初期位置から作動位置に駆動変位せしめると共に、かかる操作対象を該作動位置へ保持せしめ、更に該操作対象の前記復帰力による該作動位置から該初期位置への返戻作動を許容するギヤードモータが知られている。そして、このようなギヤードモータは、例えば、家庭用洗濯機において排水弁を開閉作動するための駆動手段として、好適に採用されている。
【0003】
ところで、このようなギヤードモータでは、操作対象を初期位置から作動位置まで駆動変位せしめた後、操作対象をかかる作動位置に固定的に保持せしめ、その後、操作対象に対するギヤードモータによる駆動力や拘束力の作用を解除して、操作対象自身の持つ復帰力による操作対象の作動位置から初期位置への返戻作動を許容するようになっていることから、ギヤードモータの駆動力を操作対象に伝達/遮断するクラッチ手段が必要となる。
【0004】
そこで、特開平1−194833号公報(特許文献1)や特開平4−165939号公報(特許文献3)等に記載されているように、電動モータの作動時に電動モータのステータを通る磁束によって、吸着片をステータに吸着せしめて、かかる吸着によりクラッチが繋がった状態となるようにすると共に、電動モータが作動していない状態下においてステータを通る磁束が消滅した時には、吸着片がステータから解放されて、クラッチが切れた状態となるクラッチ手段が採用されている。
【0005】
しかしながら、このようなクラッチ手段においては、電動モータのステータを通る磁束によって駆動される吸着片の操作ストロークが小さいことに加えて、出力が直線的な往復動であって増幅が難しいことから、クラッチ手段の伝達/遮断作動を確実に行うことが難しいという問題があった。
【0006】
また、特開平3―198638号公報(特許文献2)等には、磁気誘導によって回転力が伝達されるように対向配置された永久磁石と誘導リングの一方を電動モータで回転駆動せしめる一方、それら永久磁石と誘導リングの他方により、クラッチ手段を継断するクラッチ操作片を駆動せしめる誘導リング式のクラッチ手段が採用されている。
【0007】
ところが、このような誘導リング式の継断手段においては、クラッチ操作片を駆動するために永久磁石と特定材質の誘導リングを使用することから、製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平1−194833号公報
【特許文献2】特開平3−198638号公報
【特許文献3】特開平4−165939号公報
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、製造コストを抑えると共に、電動モータの出力部材への駆動力の伝達経路上に配設されたクラッチ手段を安定して伝達/遮断(「継断」とも称する。)せしめて、操作対象を作動制御することの出来る、新規な構造のギヤードモータを提供することにある。
【0010】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される各構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用することが出来る。また、本発明の態様および技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0011】
すなわち、本発明の第一の態様は、電動モータにより歯車列等の減速手段を介して出力部材を駆動せしめて、該出力部材に連結される復帰力を持った操作対象を初期位置から作動位置に駆動変位せしめると共に、かかる操作対象を該作動位置へ保持せしめ、更に該操作対象の前記復帰力による該作動位置から該初期位置への返戻作動を許容するようにしたギヤードモータにおいて、前記電動モータの前記出力部材への駆動力の伝達経路上に該電動モータから該出力部材への駆動力を継断するクラッチ手段を設けると共に、往復変位可能に配設されて一方向への移動により該クラッチ手段を継ぐと共に他方向への移動により該クラッチ手段を断つ切換部材を設ける一方、前記電動モータとして、回転子に形成された永久磁石による磁極と固定子に形成されるコイル巻線による磁極とを対向配置せしめた同期モータを採用すると共に、該電動モータによって一方向に回転駆動せしめられる回転作動軸を設けて、該回転作動軸による回転力を摩擦式伝動機構を介して前記切換部材に伝達することにより、該切換部材が該電動モータの回転作動に伴って前記クラッチ手段を継ぐ方向に移動せしめられるようにすると共に、該電動モータへの給電を停止した際に該電動モータの該回転子が該固定子に対する磁力的な安定位置を越えて慣性力で回転し過ぎてから該安定位置まで戻る逆回転を利用して該切換部材が該クラッチ手段を断つ方向に移動せしめられるように為し、更に、該クラッチ手段を断つ方向に向かって該切換部材を補助的に付勢する付勢手段を設けたことを、特徴とする。
【0012】
このような本態様に従う構造とされたギヤードモータにおいては、電動モータに給電している状態では、電動モータで回転作動軸が回転駆動せしめられて、切換部材が摩擦式伝動機構を介してクラッチ手段を継ぐ方向に移動保持されることにより、電動モータの駆動力が出力部材に及ぼされて、操作対象が初期位置から作動位置へ駆動されると共に、作動位置に保持されることとなる。一方、かかる操作対象の作動位置への保持状態から電動モータへの給電を停止すると、電動モータとして特定の同期モータを採用していることから、回転子は、一旦停止した後に所定量だけ僅かに逆方向に回転してから完全に停止することとなる。即ち、電動モータへの給電を中止すると、固定子に形成されるコイル巻線による磁極が消滅することとなり、回転子は、慣性力と、永久磁石による磁極と固定子との間に及ぼされる磁力との釣り合いが取れた位置に瞬間的に停止するが、かかる停止位置で慣性力が消失すると、回転子は、その後、回転子に形成された永久磁石による磁極と固定子との間に及ぼされる磁気吸引作用に基づいて、磁気的に安定して停止することが出来る位置まで所定量だけ逆回転して停止することとなる。本態様においては、かかる回転子の逆方向への回転を利用したのであり、それによって、特別な外部の駆動手段を必要とすることなく、切換部材が、クラッチ手段を断つ方向に移動せしめられるのである。しかも、それに加えて、切換部材は、付勢手段によって、クラッチ手段を断つ方向に付勢されていることから、電動モータにおける回転子の逆方向への回転に伴って、かかる切換手段が安定して作動せしめられ得ることとなり、電動モータへの通電を停止することによるクラッチ手段の切断作動が、高い信頼性をもって確実に行われ得ることとなるのである。
【0013】
従って、本態様に係るギヤードモータにおいては、特定構造の電動モータへの給電を中止する際の回転子の逆回転を巧く利用したことと、付勢手段によって作動の安定性を高めたことによって、クラッチ手段を簡単な構造をもって確実に作動せしめて断つことが出来るのであり、それ故、従来の誘導リング式のものに比して、永久磁石や特別な材質の誘導リングを使用する必要もなく、製造コストを抑えることが出来ると共に、電動モータの出力部材への駆動力伝達経路上に配設されたクラッチ手段を安定して継断せしめて、操作対象を作動制御することが出来るのである。
【0014】
また、本態様に従う構造とされたギヤードモータにおいては、クラッチ手段を継断する切換部材の切換作動が、回転作動軸から摩擦式伝動機構を介して伝達されるようになっていることから、従来の電磁的な力の伝達経路による誘導リングを用いたギヤードモータに比して、多数の増速歯車で回転速度を上げる必要もなく、切換部材への駆動力の伝達効率を向上させて、クラッチの継断作動をより確実に行わせることが出来るのである。
【0015】
なお、本態様における電動モータとしては、例えばインダクタモータやステッピングモータ等が好適に採用される。また、本態様において、回転作動軸は、少なくとも操作対象の作動位置への駆動変位および保持に際して回転駆動せしめられるようになっていれば良い。
【0016】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従う構造とされたギヤードモータであって、前記付勢手段が引張コイルスプリングであり、該引張コイルスプリングによって前記切換部材が他方向への移動端に向かって常時付勢されていることを、特徴とする。このような本態様においては、引張コイルスプリングを採用したことによって、切換部材に対して安定した付勢力を及ぼしつつ、切換部材の移動ストロークを大きく設定することが容易となる。しかも、切換部材に対して他方向への移動端に向かう付勢力が常時及ぼされることから、電動モータへの給電を中止した際に、切換部材がより確実に他方向まで駆動されて、クラッチの切断をより安定して行なうことが可能となる。
【0017】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に従う構造とされたギヤードモータにおいて、前記出力部材の作動位置に応じて前記電動モータの該出力部材への駆動力の伝達を継断するモータ側クラッチを、前記クラッチ手段よりも該電動モータ側に位置して設けて、前記操作対象の初期位置から作動位置への駆動に際して、該モータ側クラッチを継状態とすると共に、該操作対象の作動位置への保持に際して、該モータ側クラッチを断状態とする一方、該モータ側クラッチの継断状態に拘わらず、該電動モータによって前記回転作動軸が直結状態で回転作動せしめられるようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従う構造とされたギヤードモータにおいては、電動モータを回転作動せしめて、切換部材によりクラッチ手段を継いだ状態下で、操作対象を作動位置へ保持せしめることが容易となる。
【0018】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に従う構造とされたギヤードモータにおいて、前記クラッチ手段を、前記電動モータの前記出力部材への駆動力の伝達経路上に配設された前記減速手段の一つとしての遊星歯車機構によって構成して、該遊星歯車機構における太陽歯車を前記電動モータの出力軸によって回転駆動せしめると共に、該太陽歯車に噛合された遊星歯車の支軸が固設されたキャリアの中心軸上に出力用の連結歯車を固設し、該遊星歯車が噛合される内歯歯車を有するケースの回転を、前記切換部材によって、許容状態と阻止状態に切り換えるようにする一方、前記太陽歯車の回転を許容/阻止する係止手段を設けて、少なくとも前記操作対象の作動位置への保持作動に際して該係止手段によって該太陽歯車の回転を阻止せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従う構造とされたギヤードモータにおいては、駆動力の伝達経路の構成手段の一つとして遊星歯車機構を採用したことにより、大きなギヤ比をコンパクトなサイズで設定することが可能となるのであり、しかも、遊星歯車機構を利用してクラッチ手段を構成したことにより、部品点数の削減と構造の簡略化が図られ得ると共に、全体サイズのコンパクト化やコスト低減も達成され得る。
【0019】
また、本発明の第五の態様は、前記第四の態様に従う構造とされたギヤードモータにおいて、復元力をもって一軸回りに揺動可能に配設された揺動部材に対して、該復元力に抗した揺動方向への変位によって前記ケースの外周面に形成された外歯歯車または該外歯歯車に噛合されたストッパ歯車に対して係止せしめられて該ケースの回転を阻止する係止部を設けることにより、前記切換部材を構成せしめて、前記回転作動軸によって前記摩擦式伝動機構を介して駆動せしめられる該揺動部材の該係止部が該外歯歯車への係止状態に維持されるようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従う構造とされたギヤードモータにおいては、揺動部材の係止部によって、遊星歯車機構を構成するケースの外周面に形成された外歯歯車を係止状態に維持するという、簡単な構造によってクラッチが繋がった状態を維持することが出来るのであり、その結果、揺動部材によってクラッチ手段を継断する切換部材が有利に構成され得ると共に、簡単な構造によってクラッチの継断作動を安定して行うことが可能なギヤードモータが実現され得るのである。
【0020】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に従う構造とされたギヤードモータにおいて、前記操作対象の初期位置から作動位置への駆動および該操作対象の該作動位置への保持に際して、前記電動モータに連続して給電する一方、該操作対象の該初期位置への返戻に際して、該電動モータへの給電を中止する給電スイッチ手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様に従う構造とされたギヤードモータにおいては、給電スイッチ手段を切換作動することよって、操作対象の初期位置から作動位置への駆動,操作対象の作動位置への保持および操作対象の初期位置への返戻を、自動的に行うことが可能となる。
【0021】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1乃至4には、本発明の第一の実施形態としての洗濯機における排水弁の開閉駆動用のギヤードモータ10が示されている。かかるギヤードモータ10は、洗濯機本体に取り付けられる中空箱体構造のハウジング12を有しており、減速手段としての減速歯車列14と、出力部材としてのワイヤ巻上プーリ16が、かかるハウジング12内に収容された状態で組み込まれている。そして、電動モータ18の回転駆動力を、減速歯車列14を介してワイヤ巻上プーリ16に伝達し、ワイヤ巻上プーリ16に巻き掛けられた駆動ワイヤ19を介して、排水弁等の図示しない操作対象を、付勢的に位置決めされた初期位置から作動位置まで復帰力に抗して駆動変位せしめるようになっていると共に、減速歯車列14上にクラッチ手段としての遊星歯車機構20が設けられており、かかる遊星歯車機構20を継断する揺動部材としてのストッパレバー22を摩擦式伝動機構を構成する摩擦歯車24で駆動せしめるようにされている。
【0023】
より詳細には、ハウジング12は、全体として略矩形の開口箱形状を有するハウジング本体26と、ハウジング本体26の開口部に重ね合せられて該開口部を覆蓋する蓋体30によって構成されており、それらハウジング本体26と蓋体30が相互に固着されることによって、中空箱体構造をもって形成されている。
【0024】
そして、ハウジング12に形成された底部凹所に、電動モータ18が収容配置されている。この電動モータ18は、交流同期モータであって、回転子としてのロータ32と、円環形状のコイル34が巻回された固定子としてのステータ36を備えている。ロータ32は、円環ブロック形状の永久磁石38に出力軸40が固定された構造とされており、出力軸40の中心孔42において、ステータ36の中心軸上に立設されたロータ支軸44に回転可能に外挿されている。また、出力軸40には、基端部外周面に係止爪46が設けられており、かかる係止爪46の近くには、係止爪46に対してロータ32の回転方向一方向で係止される係止部材48が、一軸周りで揺動可能に配設されている。そして、これら係止爪46と係止部材48によって、出力軸40の回転方向を規定する逆転防止機構が構成されている。
【0025】
また、永久磁石38の外周面には、周方向で交互に複数対(例えば4対)のN磁極とS磁極が設定されている。一方、コイル34は、電気絶縁材からなる糸巻き形状のボビン50に対してコイル巻線としてのワイヤが巻回された構造とされている。また一方、ステータ36は、それぞれ強磁性材からなる上側ステータ部材52と下側ステータ部材54によって、構成されている。上側ステータ部材52は、全体として薄肉円環板形状を有しており、その内周縁部には、周方向に所定距離を隔てて複数(例えば4つ)の突出片56が形成されており、それぞれ軸方向一方(図2中下方)の側に屈曲されている。一方、下側ステータ部材54は、全体として有底円筒形状を有しており、底壁部から切り起こされた複数(例えば4つ)の突出片57が、同心円上で周方向に所定距離を隔てて突設されている。そして、これら上側ステータ部材52と下側ステータ部材54が、コイル34を上下に挟むようにして固定的に組み付けられることによって、ステータ36がコイル34に固定されており、かかる固定状態下において、上側ステータ部材52に設けられた複数の突出片56と下側ステータ部材54に設けられた複数の突出片57は、コイル34の内周面上において、周方向で相互に離隔して同一円周上に位置せしめられている。
【0026】
而して、これら上側ステータ部材52の複数の突出片56と下側ステータ部材54の複数の突出片57によって、コイル34の内周面上において、周方向に所定距離を隔てて位置せしめられた複数の磁極部が形成されており、コイル34への通電により、上側ステータ部材52の複数の突出片56と下側ステータ部材54の複数の突出片57には、互いに異なる磁極が形成されるようになっている。そして、それら複数の磁極部がロータ32の外周面の磁極に対して径方向で離隔して対向位置せしめられている。これにより、インダクタモータが構成されており、コイル34へ交番電流を通電することによって、ステータ36とロータ32の両磁極部間に作用する磁力に基づいて出力軸40に回転駆動力が及ぼされるようになっている。
【0027】
また、減速歯車列14は、モータ側クラッチとしての回転力継断機構59,遊星歯車機構20および出力車58を含んで構成されている。そこにおいて、回転力継断機構59は、上側継断部材60,下側継断部材62およびコイルスプリング64を含んで構成されている。上側継断部材60は、同軸上に一体形成された上側ピニオン66と係止爪68を有しており、その下面には、係止凹部70が形成されている。一方、下側継断部材62は、下側歯車72を有しており、かかる下側歯車72が電動モータ18の出力軸40に固設された出力ピニオン74に噛合されている。また、下側継断部材62の上下両面の中央部分には、軸方向外方に突出する上側及び下側ボス部76,78がそれぞれ一体形成されていると共に、下側継断部材62の上面において、上側ボス部76の周りには、上側継断部材76の係止凹部70と係合可能な係止片80が、内外周の切欠溝によって軸方向に弾性的に変位可能に形成されている。
【0028】
そして、上側継断部材60と下側継断部材62がコイルスプリング64を挟んで互いに軸方向に重ね合わされて、同一の支軸に外挿されることにより組み付けられており、コイルスプリング64の付勢力によって弾性的に相互に離隔して対向配置されている。また、上側継断部材60と下側継断部材62が、コイルスプリング64の付勢力に抗して軸方向で接近せしめられて、上側継断部材60の係止凹部70と下側継断部材62の係止片80が係合された状態下において、上側継断部材60と下側継断部材62が一体的に回転するようになっており、電動モータ18の出力軸40に固設された出力ピニオン74の回転駆動力が上側継断部材60の上側ピニオン66に伝達されるようになっている。なお、上側継断部材60の係止凹部70と下側継断部材62の係止片80の係合は、電動モータ18の正回転方向では維持されるようになっている一方、逆回転方向では解除されるラチェット構造とされている。
【0029】
また、遊星歯車機構20は、ケース82と遊星歯車部材84によって構成されている。ケース82は、全体として有底円筒形状を有しており、その筒壁部の内周面と外周面には、それぞれ、内歯歯車86と外歯歯車88が形成されていると共に、その底壁部には、中心軸上に中心孔が貫設されている。また、遊星歯車部材84は、互いに軸方向に離隔して対向配置されたキャリアとしての上側及び下側の円板92,94を有しており、それら上側及び下側の円板92,94が、中心軸回りで対向面間に跨って配設された複数本の歯車ピン96によって相互に固定されていると共に、各歯車ピン96には、それぞれ、遊星歯車98が回転可能に装着されている。更に、上側円板92および下側円板94には、中心軸上を貫通して延びる中心孔挿通孔がそれぞれ形成されている。そして、遊星歯車部材84がケース82に対して回転可能に嵌め込まれた状態で、ケース82の中心孔に上側継断部材60の上側ピニオン66が挿入されており、上側ピニオン66と遊星歯車98が噛合されていると共に、遊星歯車98と内歯歯車86が噛合されている。即ち、本実施形態では、上側ピニオン66によって遊星歯車機構20の太陽歯車が構成されているのである。また、遊星歯車部材84の上側円板92の中心軸上には、連結歯車104が上方に突出して一体形成されている。
【0030】
ここにおいて、本実施形態では、遊星歯車機構20を構成するケース82の回転が阻止された状態において、電動モータ18の回転駆動力がワイヤ巻上プーリ16に伝達されるようになっていると共に、ケース82の回転が許容された状態において、電動モータ18の回転駆動力がワイヤ巻上プーリ16に伝達されないようになっている。即ち、ケース82の回転が阻止された状態が、クラッチが繋がった状態とされていると共に、ケース82の回転が許容された状態が、クラッチが切れた状態とされるようになっているのである。
【0031】
また、出力車58は、同軸上に一体形成された大径の出力歯車106と小径の出力ピニオン108を有しており、その出力歯車106が遊星歯車機構20の連結歯車104に噛合されている一方、出力ピニオン108がワイヤ巻上プーリ16の外周面に一体形成された駆動歯車112と噛合されている。これによって、電動モータ18の駆動力が、回転力継断機構54,遊星歯車機構20,出力車58およびワイヤ巻上プーリ16を介して駆動ワイヤ19にに伝達されるようになっている。
【0032】
なお、駆動歯車112は、駆動ワイヤ19が巻き付けられたワイヤプーリ113に対して、周方向に所定長さで延びる円弧形状乃至は扇形状で一体形成されている。また、駆動歯車112には、下方に突出するカム116が一体形成されており、このカム116けに対して後述するカムレバー124が摺接されるようになっている。また、ワイヤ巻上プーリ16に巻き付けられた駆動ワイヤ19は、ハウジング12の周壁部に貫設された挿通孔114を通じて、外部に突出せしめられており、その突出側端部に対して、操作対象としての洗濯機の排水弁が連結されるようになっている。
【0033】
また、出力車58の軸方向下方には、カムレバー124が支軸126回りで揺動可能に配設されている。このカムレバー124は、円筒形状の軸部の外周面上に軸直角方向外方に突出する摺接部128と突出部130を有しており、摺接部128の突出先端部分が、ワイヤ巻上プーリ16のカム116に対して摺接されるようになっている。また、突出部130の突出先端部分には、突出部130と略直交する方向に延びる操作部132が一体形成されている。かかる操作部132は、全体として段付きの長手板形状を有しており、長手方向に延びる通孔134が形成されている。また、操作部132は、長手方向中央部分で板厚方向で段差状に屈曲されており、操作部132の先端部136が基端部138よりも下方に位置せしめられている。そして、操作部132の通孔134が、遊星歯車機構20および回転力継断機構59の支軸126に対して遊挿されており、操作部132の上面に下側継断部材62の下側ボス部78が摺動可能に当接されている。また、カムレバー124の軸部の外周面上には、一対の突出片140,140が周方向に所定の隙間を有するように形成されている。
【0034】
そして、摺接部128がワイヤ巻上プーリ16のカム116におけるカム溝141に係合していないカムレバー124の回動位置においては、下側継断部材62の下側ボス部78が操作部132の基端部138に当接せしめられて上方に持ち上げられることにより、下側継断部材62の係止片80と上側継断部材60の係止凹部70が係止されて、出力ピニオン74の回転駆動力が遊星歯車機構20に伝達されるようになっている。一方、摺接部128がワイヤ巻上プーリ16のカム溝141に係合して図1中の右方向に回動せしめられた位置においては、下側ボス部78が、操作部132の先端部136に当接せしめられて、下側継断部材62が上側継断部材60から離隔して下方に位置せしめられることにより、下側継断部材62の係止片80と上側継断部材60の係止凹部70の係止が解除されて、出力ピニオン74の回転駆動力が遊星歯車機構20に伝達されないようになっている。
【0035】
また、カムレバー124の近くには、係止手段としての係止レバー142が、カムレバー124の揺動中心軸と平行な中心軸回りで揺動可能に配設されている。この係止レバー142は、軸直角方向に延びる係止爪144を有しており、かかる係止爪144が上側継断部材60の係止爪68に係止され得るようになっている。また、係止レバー142の軸方向下端部には、突出片146が一体形成されており、かかる突出片146がカムレバー124の突出片140,140に係合せしめられて、カムレバー124の揺動に対して係止レバー142が連動するようになっている。即ち、本実施形態では、カムレバー124の摺接部128がワイヤ巻上プーリ16のカム溝141に係合していない状態では、係止レバー142の係止爪144は、上側継断部材60の係止爪68に係止されていないことから、上側継断部材60の回転を許容するようになっていると共に、カムレバー124の摺接部128がワイヤ巻上プーリ16のカム溝141に係合した状態では、係止レバー142の係止爪144は、上側継断部材60の係止爪68に係止されており、上側継断部材60の回転を阻止し得るようになっている。
【0036】
ここにおいて、回転力継断機構59と遊星歯車機構20の支軸126や、出力車58およびカムレバー124の支軸148は、何れも、電動モータ18のロータ支軸44と平行に延びる状態でハウジング12に固設されている。
【0037】
また、ハウジング12内には、調速機構154が配設されている。この調速機構154は、調速回動体155を有しており、この調速回動体155が、電動モータ18のロータ支軸44と平衡な中心軸回りに回動可能に配されていると共に、該調速回動体155に一体形成された調速ピニオン156が遊星歯車機構20を構成するケース82の外周面に形成された外歯歯車88に噛合されている一方、調速ピニオン156の軸方向上端部には、調速歯車158が一体形成されている。また、この調速歯車158の上面には、周上の複数箇所(本実施形態では2箇所)において、軸方向上方に向って突出する支持ピン160,160が固設されており、これら各支持ピン160に対して摺動材162が外挿されて取り付けられている。かかる摺動材162は、全体として略三日月形乃至は円弧形のブロック形状を有しており、その周方向一方の端部に貫設された孔164において、支持ピン160に外挿されることにより、支持ピン160回りに揺動可能に組み付けられている。そして、各摺動材162は、調速歯車158が中心軸回りに回転せしめられた際に、支持ピン160回りで遠心力によって径方向外方に広がるようになっている。摺動材162の外周面は、周方向に湾曲した摺接面とされており、遠心力によって径方向外方に広がった際に、蓋体30に一体形成された朝底の逆カップ形状の摺動筒部166の内周面によって形成された摺動面に摺接されるようになっており、操作対象が作動位置から初期位置に返戻する際のスピードを調節するようになっている。なお、摺動材162,162には、遠心力が働かない状態で摺動材162,162を摺動筒部166から内方に離隔した位置に保持せしめる付勢部材を装着しても良い。
【0038】
また、ハウジング12内には、クラッチ手段としての遊星歯車機構20と共に回動せしめられて、その回転が、切換部材としてのストッパレバー22の係脱によって許容/阻止されることによりクラッチ手段としての遊星歯車機構20を継断せしめて駆動力の伝達/遮断を切り換えるストッパ歯車169が配設されており、該ストッパ歯車169が、調速回動体155の調速歯車158に噛合されている。また、ストッパ歯車169の下部には、係止突部173が一体形成されている。
【0039】
更にまた、ハウジング12内には、クラッチ継断機構174が配設されている。このクラッチ継断機構174は、伝動歯車177と摩擦歯車24を含んで構成されており、それら電動歯車177と摩擦歯車24が、電動モータ18のロータ支軸44と平衡な中心軸回りに回動可能に配されている。伝動歯車177は、係止部材48の上方に配設されており、出力ピニオン74に噛合されている。また、電動歯車177には、上面中央部分に係止突部183が一体形成されており、この係止突部183に外挿された状態で、摺動リング186が組み付けられている。この摺動リング186は、係止突部183よりも大径のC字形状に湾曲された金属ばねであって、両端開口部に一体形成された係止部が係止突部183に形成された係止溝に係止されることにより、周方向変位が制限された状態で電動歯車177に組み付けられている。更にまた、電動歯車177には、上方から摩擦歯車24が組み付けられている。この摩擦歯車24には、下方に突出する円筒形状の摺接筒部184が一体形成されており、かかる摺接筒部184に対して、摺動リング186が収容配置されている。
【0040】
ここにおいて、摺動リング186は、外力が及ぼされない自由状態下での外径寸法が摺接筒部184の内径寸法よりも所定寸法だけ大きくされており、摺接筒部184への配設状態下で、常時、摺動リング186の外周面が摺接筒部184の周壁部の内周面に対して摺動可能に当接されている。これにより、クラッチ継断機構174においては、摺動リング186の摺接筒部184に対する摺動抵抗よりも小さな回転力が及ぼされた場合には、摺動リング186での連結状態が維持されて、電動歯車177と摩擦歯車24が一体的に回転せしめられるようになっており、摺動リング186の摺接筒部184に対する摺動抵抗よりも大きな回転力が及ぼされた場合にだけ、摺動リング186の摺接筒部184に対する摺動に基づいて、電動歯車177と摩擦歯車24が中心軸回りに相対回転して、回転作動力の伝達が制限されるようになっている。
【0041】
また、摩擦歯車24の側方には、揺動歯車192が配設されている。この揺動歯車192は、週報孔に所定長さで延びる円弧形状乃至は扇形状を有しており、摩擦歯車24と平衡な中心軸回りに回動可能に支持されて、摩擦歯車24に噛合されている。そして、この揺動歯車192において、軸直角方向に広がって延びるストッパレバー22が一体形成されている。かかるストッパレバー22には、回動方向一方の側に向かって突出する係止部200が一体形成されていると共に、付勢手段としての引張コイルスプリング198が装着されている。この引張コイルスプリング198は、引張タイプのものであり、その一端部がストッパレバー22に係止されている一方、他端部がハウジング本体26に形成された係止ピン193に係止されている。
【0042】
要するに、引張コイルスプリング198は、ストッパレバー22に対して、係止部200の突出方向と反対の回転方向に向って付勢力を及ぼすようになっており、ストッパレバー22が引張コイルスプリング198の復帰力に抗して回動せしめられた際に、前述のストッパ歯車169に設けられた係止突部173に対して、係止部200が係止されることとなり、それによって、ストッパ歯車169に噛合された調速歯車158の回転を阻止して、調速ピニオン156に噛合された外歯歯車88を有する遊星歯車機構20におけるケース82の回転を阻止するようになっている。なお、ストッパレバー22が、引張コイルスプリング198の付勢力の作用で初期位置に位置せしめられている状態において、係止部200は、回転作動せしめられるストッパ歯車169の係止突部173に干渉しないように弾性的に位置決め保持されるようになっている。
【0043】
要するに、本実施形態では、ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止された状態において、クラッチ手段としての遊星歯車機構20を構成するケース82の回転が阻止されて、クラッチが繋がった状態とされる一方、ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止されていない状態において、遊星歯車機構20を構成するケース82の回転が許容されて、クラッチが切れた状態とされるのである。
【0044】
次に、上述の如き構造とされたギヤードモータ10における作動を説明する。先ず、ギヤードモータ10に電源が接続されていない初期状態では、操作対象が初期位置とされて駆動ワイヤ19がケース12からの引出端に位置せしめられている。かかる初期状態下、ギヤードモータ10に電源が接続されると、電動モータ18のコイル34に給電されて、ロータ32が回転せしめられる。
【0045】
かかる初期位置からのロータ32の回動作動時には、カムレバー124の摺接部128がワイヤ巻上プーリ16のカム溝141に係合した状態となっており、カムレバー124における操作部132の基端部138によって、下側継断部材62がコイルスプリング64の復帰力に抗して、軸方向上方に押し上げられて、下側継断部材62の係止片80が上側継断部材60の係止凹部70に係止されることにより、回転力継断機構59が継状態とされている。また一方、係止レバー142の係止爪144は、上側継断部材60の係止爪68に係止されておらず、上側継断部材60の回転が許容されていることによって、出力ピニオン74の回転駆動力が、遊星歯車機構20,出力車58を介してワイヤ巻上プーリ16に伝達されて、ワイヤ巻上プーリ16に巻き付けられた駆動ワイヤ19に連結された操作対象が初期位置から作動位置に駆動変位せしめられることとなる。
【0046】
また、電動モータ18のコイル34に給電されて、ロータ32が回転すると、図5に示されているように、出力ピニオン74に噛合された電動歯車177も回転することとなり、摩擦歯車24が摺動抵抗により回転せしめられる。それによって、摩擦歯車24に噛合された揺動歯車192が引張コイルスプリング198の復帰力に抗してストッパ歯車169の回転方向と逆方向に回動する。これにより、図6に示されているように、揺動歯車192のストッパレバー22に設けられた係止部200がストッパ歯車169に設けられた係止突部173に係止されて、ストッパ歯車169に噛合された調速歯車158の回転が阻止されることとなり、調速ピニオン156と噛合されている外歯歯車88を有する遊星歯車機構20のケース82の回転を阻止する。その結果、クラッチが繋がった状態となって、電動モータ18の回転力を、回転力継断機構59,遊星歯車機構20および出力車58を介してワイヤ巻上プーリ16に伝達することが可能となり、駆動ワイヤ19を巻き上げて操作対象を初期位置から作動位置に駆動変位せしめることが出来るのである。
【0047】
また、ストッパレバー22の係止部200にストッパ歯車169の係止突部173が係止されて、摩擦歯車24の回転が阻止された状態下において、電動歯車177は、摩擦歯車24に対して摺動リング186の摺動作用に基づいて相対回転が許容されていることから、電動モータ18の駆動力が及ぼされる電動歯車177が摩擦歯車24に対して空転することとなる。なお、電動歯車177が摩擦歯車24に対して空転している状態下でも、電動モータ18からのトルクの伝達は維持されることから、ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止された状態が安定して保持される。
【0048】
そして、操作対象を作動位置まで駆動変位せしめると、カムレバー124の摺接部128がワイヤ巻上プーリ16のカム116で回転駆動せしめられることとなり、カムレバー124の回動中心軸回りで(図1中の右回転方向)に回動する。それによって、カムレバー124の操作部132における先端部136が下側ボス部78に当接せしめられることとなる。その結果、コイルスプリング64の付勢力に抗して軸方向上方に押し上げられていた下側継断部材62がコイルスプリング64の付勢力により、軸方向下方に押し下げられて上側継断部材60の係止凹部70と下側継断部材62の係止片80との係止状態が解除されることとなり、出力ピニオン74の回転駆動力が連結歯車104に伝達されないようにされる。ここにおいて、操作対象は、それ自身の有する復帰力によって初期位置に向って返戻作動を開始しようとするが、上述の如き摺動リング186の摺動作用に基づくトルクの伝達によりストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173への係止状態に維持されると共に、係止レバー142の係止爪144が上側継断部材60の係止爪68に係止されて、上側継断部材60の逆方向への回転が阻止される結果、連結歯車104の逆方向への回転が阻止されて、操作対象が作動位置に保持せしめられた状態に維持され得る。
【0049】
そして、所定の保持時間が経過した後、電動モータ18のコイル34への給電が中止されると、ロータ32に設けられた永久磁石38の磁極とステータ36の磁極を形成する突出片56,57の間での磁力がロータ32の回転に対する制動力として作用することとなり、その結果、ロータ32は、ロータ32自身の有する慣性力と、ロータ32に設けられた永久磁石38の磁極とステータ36の突出片56,57の間に及ぼされる磁力との釣り合いが取れた位置まで回転して、一旦停止する。その後、ロータ32は、慣性力がなくなることによって永久磁石38とステータ36の磁気吸引作用に基づいて逆方向に回転し、永久磁石38とステータ36の磁気吸引作用に基づく安定した位置まで戻って停止することとなる。
【0050】
このように電動モータ18への給電中止に伴い、ロータ32が正方向回転時に制動されて一旦停止するまでの正方向への回転時には、摺動リング186の摺動作用に基づいて、ストッパレバー22の係止部200におけるストッパ歯車169の係止突部173への係止状態が維持されることとなる一方、ロータ32の一旦停止後の逆方向回転時には、電動モータ18の回転駆動力が電動歯車177から摺動リング186と摩擦歯車24を介してストッパレバー22に対して逆方向(図1中、左回り方向)の回転力として及ぼされることとなり、ストッパレバー22が逆方向に揺動作動せしめられる。
【0051】
その結果、図7に示されているように、ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止されていない状態となり、調速歯車158の回転が許容されて、調速ピニオン156に噛合された外歯歯車88を有するケース82の回転も許容される。これにより、クラッチが切れた状態となり、係止レバー142が上側継断部材60の係止爪68に係止されることによって発揮される上側継断部材60の逆回転阻止力がワイヤ巻上プーリ16に伝達されなくなり、操作対象がそれ自身の有する復帰力により、駆動ワイヤ19の引出しを伴って作動位置から初期位置に返戻作動するようになっている。
【0052】
なお、操作対象の返戻作動が開始されるとカムレバー124の摺接部128がカム溝14から出てカム116の外周面に摺接せしめられて、操作部132の基端部138が下側ボス部78に当接されることとなり、下側継断部材62がコイルスプリング64の復帰力に抗して軸方向に押し上げられて、上側継断部材60の係止凹部70と下側継断部材62の係止片80が係止状態とされることとなる。その結果、操作対象の作動位置から初期位置への返戻作動時には、上側継断部材60の係止凹部70と下側継断部材62の係止片80が係止されて、電動モータ18の磁力によるロータ32の位置決め力(ディテントトルク)が上側継断部材60に伝達されることにより、上側継断部材60の逆方向への回転が阻止された状態となる。
【0053】
また、操作対象の作動位置から初期位置への返戻作動時には、出力車58および遊星歯車機構20を構成する遊星歯車部材84に設けられた連結歯車104が逆方向に回転せしめられるが、ケース82の回転が許容されていると共に、上側ピニオン66(太陽歯車)の逆方向への回転が阻止されていることから、ケース82の回転が調速ピニオン156に伝達されて、調速ピニオン156が回転するようになっている。そして、調速ピニオン156が回転することによって、調速ピニオン156と一体形成された調速歯車158が回転せしめられ、各摺動材162が支持ピン160回りで、遠心力によって径方向外方に広がって摺動筒部166の摺接面に摺接されることにより、操作対象の返戻作動時のスピードが各摺動材162の摺動抵抗に基づいて調節されるようになっている。
【0054】
従って、このような構造とされたギヤードモータ10においては、電動モータ18への給電を中止した際に慣性力で安定位置より更に前方に行き過ぎた(正方向へ回転し過ぎた)ロータ32が、当該行き過ぎて一時停止した位置から逆方向へ所定量だけ回転せしめられることによって、ストッパレバー22を逆方向に揺動させて、該ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止されていない状態、即ち、クラッチが切れた状態とすることが出来るのであり、それ故、従来の誘導リング式のものに比して、永久磁石や特別な材質の誘導リングを使用する必要もないのであり、製造コストを抑えることが出来ると共に、クラッチの継断作動を安定して行うことが出来るのである。
【0055】
しかも、ストッパレバー22には、常時、引張コイルスプリング198による付勢力が、ストッパレバー22を逆方向(ストッパ部材169の係止突部173への係止を解除する方向)へ回動せしめるように及ぼされていることから、電動モータ18への給電が停止されて電動モータ18のロータ32が慣性力で安定位置を越えて行き過ぎた位置に一旦停止せしめられた後、逆回転する際、かかるコイルスプリング198の付勢力がストッパレバー22のストッパ部材169への係止状態からの離脱作動を補助する方向に作用せしめられることとなる。それ故、電動モータ18の戻り力が弱い場合等でも、ストッパレバー22のストッパ部材169への係止状態からの離脱作動が安定して実現され得ることとなり、作動の信頼性が向上され得るのである。
【0056】
続いて、ロータ32が逆回転することよって、ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止されていない状態となる条件と、引張コイルスプリング198の作用について、説明を加える。
【0057】
図8において、ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止された状態から、ロータ32の安定位置迄の逆回転作動のみによってかかる係止を解かれるためには、ロータ32の逆回転に基づくストッパレバー22の揺動角度:θ1が、ストッパレバー22の係止部200がストッパ歯車169の係止突部173に係止された状態を維持し得るストッパレバー22の逆方向への最大の揺動角度:θ2よりも大きくすることが必要である。そこにおいて、ロータ32の逆回転に基づくストッパレバー22の揺動角度:θ1は、ロータ32の慣性力による停止位置から安定位置までの逆方向への回転角度をθ3、出力ピニオン74の歯数をz1、作動歯車178の歯数をz2、摩擦歯車188の歯数をz3、揺動歯車192の歯数をz4とすると、以下の(1)式のように表すことが出来る。なお、揺動歯車192の歯数:z4は、揺動歯車192が円板形状と仮定した場合の全周の歯数である。
【0058】
θ1=(θ3・z1・z3)/(z2・z4)・・・・・(1)
【0059】
また、ロータ32の逆方向への回転角度:θ3は、例えば、ステータ36の内径が24mm,ロータ32の外径が23.4mm,ロータ32の重量が15gとされている8極のインダクタモータでは、ステータ36に設けられた複数の突出片56および複数の突出片57の配列を適当に調節することにより、15度〜30度に設定出来る。
【0060】
いま、θ3を20度に設定すると共に、θ2を8度に設定した場合について考える。そこにおいて、z1を20、z2を50、z3を40、z4を30に設定すると、(1)式よりθ1=10.67度となり、θ1をθ2よりも大きくすることが出来る。従って、このような条件であれば、電動モータ18への給電を中止した際のロータ32の逆方向への回転に伴うストッパレバー22の逆方向への揺動によって、ストッパレバー22の係止部200のストッパ歯車169の係止突部173への係止状態を解除することが出来るのである。
【0061】
それに加えて、ストッパレバー22には、引張コイルスプリング198の付勢力が逆回転方向に及ぼされているのであり、ストッパレバー22が、慣性力による一旦停止位置から、電動モータ18の逆回転に伴って僅かでも逆方向に回動せしめられると、ストッパレバー22の係止部200とストッパ部材169の係止突部173の間に作用していた最大静止摩擦力が動摩擦力となって小さくなり、その状態下ででは、かかる引張コイルスプリング198による付勢力がそれ程大きくなくても、ストッパレバー22を逆方向に回動させるに有効な外力となり得るのである。そして、この引張コイルスプリング198の付勢力がストッパレバー22に作用せしめられることにより、ストッパレバー22の逆回転後の最終的な安定位置が、電動モータ18の回転子と固定子の磁気的な安定位置よりも更に逆回転方向とされ得ることとなる。
【0062】
従って、例えば、電動モータ18の逆回転量が小さく、電動モータ18の磁気的な釣り合いによる安定位置までの逆回転だけを考えた場合には、θ1≦θ2となる場合でも、引張コイルスプリング198の付勢力が及ぼされることによって、実際には、電動モータ18の逆回転量をθ2よりも大きくして、ストッパレバー22の係止部200のストッパ歯車169の係止突部173への係止状態を解除することが可能となるのである。なお、引張コイルスプリング198の付勢力が、電動モータ18の磁力による逆回転力に加えて動的に及ぼされることにより、ストッパレバー22の逆回転作動は、摺動リング186の摺接筒部184に対する摺動によって、電動モータ18のロータ32の逆回転量よりも大きく許容され得る。或いはまた、引張コイルスプリング198の付勢力が静的に及ぼされることにより、電動モータ18のロータ32が、磁気的な安定位置よりも引張コイルスプリング198の付勢力に相当する分だけ、逆回転方向に偏倚して最終的に位置せしめられることによって、ストッパレバー22に対して大きな逆回転量が許容され得ることとなる。
【0063】
最後に、上述の如き本実施形態のギヤードモータ10における洗濯機の排水弁の作動制御態様を、参考のために〔表1〕にまとめて示しておく。
【0064】
【表1】
Figure 2004104931
【0065】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0066】
例えば、前記第一の実施形態において、遊星歯車機構20を構成するケース82の回転は、調速機構154およびストッパ歯車169を介して阻止されていたが、ストッパレバー22を利用して、該ストッパレバー22で直接に阻止するようにしても良い。
【0067】
また、歯車列の構造や各歯車対の減速比の他、歯車列を構成する歯車の数等は、前記第一及び第二の実施形態のものに限定されるものではない。更に、電動モータのコイルの数や具体的形状は、前記第一及び第二の実施形態のものに限定されるものではない。
【0068】
また、出力部材として、外周面にワイヤが巻きつけられた、例示の如きプーリの他、ラック等を採用することも可能である。
【0069】
加えて、前記第一および第二の実施形態では、本発明を洗濯機の排水弁の開閉のための駆動源に適用したものの具体例を示したが、本発明の適用範囲は特に限定されるものでなく、例えば、特開平1−194833号公報等に示されているように、換気扇のシャッタの開閉のための駆動源等としての各種のギヤードモータに対して適用することが可能である。
【0070】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0071】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたギヤードモータにおいては、電動モータへの給電を中止した際の電動モータ自体の特性による回転子の逆方向への所定量の回転を巧く利用したことに加えて、引張コイルスプリングの常時付勢力を利用したことにより、電動モータの出力部材への駆動力の伝達経路上に配設されたクラッチ手段を継状態から断状態に、高い信頼性のもとで安定して切り換えることが可能となり、また、従来の誘導リング式のものに比して、部品点数と製造コストを抑えることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのギヤードモータにおける動力伝達系の構造を説明するための組立説明図である。
【図2】図1に示されたギヤードモータの一部を示す縦断面説明図である。
【図3】図1に示されたギヤードモータの別の一部を示す縦断面説明図である。
【図4】図1に示されたギヤードモータの開蓋状態を示す平面図である。
【図5】図1に示されたギヤードモータの一作動状態を示す説明図である。
【図6】図1に示されたギヤードモータの別の作動状態を示す説明図である。
【図7】図1に示されたギヤードモータの更に別の作動状態を示す説明図である。
【図8】図1に示されたギヤードモータの更に別の作動状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 ギヤードモータ
14 減速歯車列
16 ワイヤ巻上プーリ
18 電動モータ
20 遊星歯車機構
22 ストッパレバー
24 摩擦歯車
32 ロータ
34 コイル
36 ステータ
38 永久磁石
59 回転力継断機構
169 ストッパ歯車
177 伝動歯車
186 摺動リング

Claims (6)

  1. 電動モータにより歯車列等の減速手段を介して出力部材を駆動せしめて、該出力部材に連結される復帰力を持った操作対象を初期位置から作動位置に駆動変位せしめると共に、かかる操作対象を該作動位置へ保持せしめ、更に該操作対象の前記復帰力による該作動位置から該初期位置への返戻作動を許容するようにしたギヤードモータにおいて、
    前記電動モータの前記出力部材への駆動力の伝達経路上に該電動モータから該出力部材への駆動力を継断するクラッチ手段を設けると共に、往復変位可能に配設されて一方向への移動により該クラッチ手段を継ぐと共に他方向への移動により該クラッチ手段を断つ切換部材を設ける一方、前記電動モータとして、回転子に形成された永久磁石による磁極と固定子に形成されるコイル巻線による磁極とを対向配置せしめた同期モータを採用すると共に、該電動モータによって一方向に回転駆動せしめられる回転作動軸を設けて、該回転作動軸による回転力を摩擦式伝動機構を介して前記切換部材に伝達することにより、該切換部材が該電動モータの回転作動に伴って前記クラッチ手段を継ぐ方向に移動せしめられるようにすると共に、該電動モータへの給電を停止した際に該電動モータの該回転子が該固定子に対する磁力的な安定位置を越えて慣性力で回転し過ぎてから該安定位置まで戻る逆回転を利用して該切換部材が該クラッチ手段を断つ方向に移動せしめられるように為し、更に、該クラッチ手段を断つ方向に向かって該切換部材を補助的に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とするギヤードモータ。
  2. 前記付勢手段が引張コイルスプリングであり、該引張コイルスプリングによって前記切換部材が他方向への移動端に向かって常時付勢されている請求項1に記載のギヤードモータ。
  3. 前記出力部材の作動位置に応じて前記電動モータの該出力部材への駆動力の伝達を継断するモータ側クラッチを、前記クラッチ手段よりも該電動モータ側に位置して設けて、前記操作対象の初期位置から作動位置への駆動に際して、該モータ側クラッチを継状態とすると共に、該操作対象の作動位置への保持に際して、該モータ側クラッチを断状態とする一方、該モータ側クラッチの継断状態に拘わらず、該電動モータによって前記回転作動軸が回転作動せしめられるようにした請求項1又は2に記載のギヤードモータ。
  4. 前記クラッチ手段を、前記電動モータの前記出力部材への駆動力の伝達経路上に配設された前記減速手段の一つとしての遊星歯車機構によって構成して、該遊星歯車機構における太陽歯車を前記電動モータの出力軸によって回転駆動せしめると共に、該太陽歯車に噛合された遊星歯車の支軸が固設されたキャリアの中心軸上に出力用の連結歯車を固設し、該遊星歯車が噛合される内歯歯車を有するケースの回転を、前記切換部材によって、許容状態と阻止状態に切り換えるようにする一方、前記太陽歯車の回転を許容/阻止する係止手段を設けて、少なくとも前記操作対象の作動位置への保持作動に際して該係止手段によって該太陽歯車の回転を阻止せしめるようにした請求項1乃至3の何れかに記載のギヤードモータ。
  5. 復元力をもって一軸回りに揺動可能に配設された揺動部材に対して、該復元力に抗した揺動方向への変位によって前記ケースの外周面に形成された外歯歯車または該外歯歯車に噛合されたストッパ歯車に対して係止せしめられて該ケースの回転を阻止する係止部を設けることにより、前記切換部材を構成せしめて、前記回転作動軸によって前記摩擦式伝動機構を介して駆動せしめられる該揺動部材の該係止部が該外歯歯車への係止状態に維持されるようにした請求項4に記載のギヤードモータ。
  6. 前記操作対象の初期位置から作動位置への駆動および該操作対象の該作動位置への保持に際して、前記電動モータに連続して給電する一方、該操作対象の該初期位置への返戻に際して、該電動モータへの給電を中止する給電スイッチ手段を設けた請求項1乃至5の何れかに記載のギヤードモータ。
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