【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は緑色発光材料に関し、更に、緑色発光材料を使用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、モバイルコンピュータ、携帯電話、PDA等の携帯情報端末用表示素子の需要が増し、表示素子の軽量化、低消費電力化が望まれている。自己発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略す。)は、バックライト等を必要とせず、素子の薄型化や軽量化が可能であることや、低駆動電圧で高輝度の発光が得られることから、ブラウン管型表示装置や液晶表示素子等の既存の表示素子に代わる次世代表示メディアとして、研究が進められている。特に最近では、赤色、青色、緑色の有機EL素子を、フルカラーディスプレイへ適用することが検討されている。
【0003】
有機EL素子は、一般に、正電極層、発光物質を含有する発光層、および負電極層が、順に積層した構造からなる。正、負両電極層間に電圧を印加すると、前記発光層に、負電極層から電子が、正電極層から正孔が注入される。注入された電子と正孔は、発光物質中において再結合し、発光物質は励起子を生成する。この励起子が基底状態に失活する際に発光がおこる。
【0004】
発光物質としては蛍光性化合物と燐光性化合物が知られている。現在、有機EL素子用の発光物質として最もよく使用されているのは、熱に安定な蛍光性化合物である。しかし、蛍光性化合物からの発光は一重項励起子が発する蛍光であり、蛍光の発光効率は、有機EL素子の発光効率を示す外部量子効率で最大約5%と、非常に低い。これに対し、燐光性化合物の発光は、三重項励起子が発する燐光であり、燐光の理論上の外部量子効率は最大20%である。このことから、有機EL素子用の発光物質として燐光性化合物を使用することができれば、蛍光性化合物の約4倍もの発光効率を得ることが期待できる。
【0005】
しかし、従来知られていた燐光性化合物は、三重項励起子が熱的に不安定であり、室温で発光させることが困難であった。従って、高い発光効率を有し、室温で発光させることができる赤色、青色、及び緑色の燐光性化合物およびこれを使用した有機EL素子が望まれている。
【0006】
室温で発光する緑色の燐光性化合物を使用した有機EL素子として、イリジウム(III)トリス(2−フェニルピリジン)錯体を発光物質として使用した有機EL素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これは、外部量子効率が8%と、蛍光性化合物を発光物質として使用した有機EL素子と比べ、高い発光効率を示す。しかし、該有機EL素子の発光層は、前記イリジウム(III)錯体と、正孔輸送材料である4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニルとの混合物を共蒸着法で作製しているので、製造効率が低いといった問題や、発光層中の該錯体濃度を高くすると発光効率が低下する(以下、これを「濃度消光」と略す。)問題があった。
【0007】
これに対し、前記イリジウム(III)錯体を、正孔輸送層の材料であるポリパラフェニレン誘導体に、該錯体が会合体を形成しない濃度以下となるようにドーピングし、これを正電極層上に印刷法等の湿式製膜法で塗布して発光層を得る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。高分子の正孔輸送材料に前記イリジウム(III)錯体をドーピングすると、湿式製膜法で発光層を作製することができ、有機EL素子の製造効率が向上する。しかし、この方法では、正電極層からポリパラフェニレン誘導体に注入される正孔のイリジウム(III)錯体に輸送される確率、即ち正孔輸送効率が低いといった問題があった。また、該イリジウム(III)錯体の濃度を、濃度消光を起こさない濃度以下に抑えているため、得られる発光効率に限界があった。
【0008】
【特許文献1】
国際公開第00/70655号パンフレット
【非特許文献1】
「アプライド・フィジックス・レター (Applied Physics Letters)」,2002年3月,第80号,p.2045−2047
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、高い発光効率を示し、湿式製膜法で製膜が可能で、濃度消光が起きにくい発光層を与える緑色発光材料、及び該発光層を有する有機EL素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イリジウム(III)錯体に、電荷輸送材料であるπ共役鎖を導入して、分子内及び分子間での正孔または電子輸送を可能とし、正電極層から注入された正孔あるいは負電極層から注入された電子を、イリジウム(III)錯体へ効率良く輸送させることを可能にした。
また、本発明は、イリジウム(III)錯体にπ共役鎖を導入して結晶性を低下させ、湿式製膜法での製膜を容易にし、更に濃度消光を低減することも可能にした。
【0011】
即ち、本発明は、一般式(1)で表されるイリジウム(III)錯体からなる発光材料を提供する。
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R1およびR2は、水素原子、又はπ共役鎖を表し、R1およびR2の少なくとも一方は、該π共役鎖である。)
また、本発明は、発光層が前記の発光材料を含有する有機EL素子を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の発光材料は、3配位子中の2配位子が置換基としてπ共役鎖を有する2−フェニルピリジンからなり、残る1配位子が1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオンからなるイリジウム(III)錯体(以下、「イリジウム錯体(A)」と略す。)からなる、緑色を示す発光材料である。
【0015】
本発明において、置換基としてπ共役鎖を有する2−フェニルピリジン2分子と1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン1分子とが、イリジウム(III)と錯体を形成することにより、高い色純度の緑色を発光する。また、置換基としてπ共役鎖を有する2−フェニルピリジンのπ共役鎖は電荷を輸送させる役割を有する。該π共役鎖はイリジウム(III)錯体に結合しているので、正電極層から受け取った正孔、あるいは負電極層から受け取った電子を、分子内で発光物質であるイリジウム(III)錯体に輸送することができる。分子内及び分子間で正孔または電子を輸送することができるので輸送効率が高く、従って得られる有機EL素子は高い発光効率を示す。
【0016】
配位子の2−フェニルピリジンの置換基であるπ共役鎖としては、具体的には、例えば、ポリパラフェニレン鎖、ポリパラフェニレンビニレン鎖、ポリチオフェン鎖、ポリピロール鎖、ポリアセチレン鎖、ポリピリジン鎖、ポリキノキサリン鎖、ポリオキサジアゾール鎖等が挙げられる。中でも、ポリパラフェニレン鎖、ポリチオフェン鎖、又はポリピロール鎖は、前記イリジウム(III)錯体の結晶性をより低下させる効果が高い。更に、前記π共役鎖が、置換基としてメトキシ基やブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、メチル基やブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基等を有すると、イリジウム錯体(A)の結晶性をより一層低下させることができる。
【0017】
前記π共役鎖の分子量は、ポリスチレン換算の質量平均分子量(以下、「Mw」と略す。)が500〜50000の範囲であることが好ましい。Mwが500未満であると、得られるイリジウム錯体(A)が結晶化しやすく、Mwが50000より大きいと、得られるイリジウム錯体(A)の溶剤に対する溶解性が低下する傾向にある。
【0018】
イリジウム(III)錯体にかさ高い前記π共役鎖を導入することによって、立体障害の高い化合物を得ることができる。従って、イリジウム錯体(A)の結晶性は低くなり、会合体を形成しにくいため、濃度消光が起きにくい。また溶剤にも溶けやすくなるので、湿式製膜法によって発光層を形成することができる。
【0019】
イリジウム錯体(A)は、国際公開第01/41512号パンフレットや、「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ (Journal of American Chemical Society)」,2001年,第123号,p.4304等に記載の式(2)で表される方法で合成することができる。
【0020】
【化3】
【0021】
具体的には、置換基に前記π共役鎖を有する2−フェニルピリジンとイリジウム化合物とを、水、2−エトキシエタノール、あるいはグリセリン等の溶剤中で、窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下50〜230℃の範囲内で攪拌し、橋かけ構造のイリジウムダイマーを得る。次に、該イリジウムダイマーと、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオンと、炭酸ナトリウムやナトリウムメトキシド等のアルカリとを、1,2−ジクロロエタン、エタノール、あるいは2−エトキシエタノール等の溶剤中で、窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下50℃〜還流温度の範囲内で反応させて得られる。
【0022】
反応に使用できるイリジウム化合物としては、例えば、イリジウム(III)トリクロリドおよびその水和物、イリジウム(III)トリブロミドおよびその水和物、カリウムヘキサクロロイリデート(III)などが挙げられる。
【0023】
置換基として前記π共役鎖を有する2−フェニルピリジンは、ハロゲン化2−フェニルピリジンと、π共役鎖を有するホウ酸化合物とを、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン等の溶剤中で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)やトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の金属触媒下、室温から還流温度の範囲内でカップリング反応させて得られる。
【0024】
ハロゲン化2−フェニルピリジンの例としては、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン、2−(4−クロロフェニル)ピリジン、2−(3−ブロモフェニル)ピリジン、2−(3−クロロフェニル)ピリジン、2−(2−ブロモフェニル)ピリジン、2−(2−クロロフェニル)ピリジン等が挙げられる。中でも、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン、又は2−(4−クロロフェニル)ピリジンから得られる配位子からなるイリジウム(III)錯体が好ましい。
【0025】
π共役鎖を有するホウ酸化合物は、具体的には、例えば、R−B(OH)2(但し、Rはπ共役鎖を表す。)で表される構造の化合物が挙げられる。具体的には、例えば、4−ブロモフェニルホウ酸をカップリング反応させて得られたポリパラフェニレン鎖を有するホウ酸化合物、2,5−ジブトキシ−4−ブロモフェニルホウ酸をカップリング反応させて得られたブトキシ基を置換基に持つポリパラフェニレン鎖を有するホウ酸化合物、2−ブロモチオフェン−5−ホウ酸をカップリング反応させて得られた、ポリチオフェン鎖を有するホウ酸化合物、2,5−ジブロモピロールを重合させて末端に臭素基を有するポリピロールとし、該臭素基の少なくとも一つをホウ酸で置換した、ポリピロール鎖を有するホウ酸化合物が挙げられる。
【0026】
π共役鎖を有するホウ酸化合物のMwは、500〜50000の範囲であることが好ましい。Mwが500未満であると、得られるイリジウム錯体(A)が結晶化しやすく、Mwが50000より大きいと、得られるイリジウム錯体(A)の溶剤に対する溶解性が低下する傾向にある。
【0027】
次に、本発明の有機EL素子およびその製造方法の一例について説明する。本発明の有機EL素子は、少なくとも、基板上に透明な正電極層、イリジウム錯体(A)を含有する発光層、及び負電極層が順に積層した構造を有する。負電極層は透明でなくてもよい。
【0028】
前記基板は、電極層や発光層を形成する際に変質しない透明材料であればよく、例えば、ガラスや高分子フィルム等が挙げられる。高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン等の透明材料を、酸化珪素や窒化珪素等でガスバリアコートしたフィルムを使用することができる。
【0029】
前記透明な正電極層は、インジウムスズオキシド(以下、「ITO」と略す。)等を基板上にスパッタリングや真空蒸着したり、あるいは、ITO微粒子の懸濁液を塗布し、該微粒子を焼結させて得られる。また、電極表面に、紫外線−オゾン処理、酸素雰囲気下のプラズマ処理等の表面処理を施すと、得られる有機EL素子の駆動電圧の低下を防ぎ、発光効率を向上させる効果が得られる。正電極層の膜厚は、10nm〜5μmの範囲であると、光が透過しやすい。中でも、膜厚が20nm〜1μmの範囲が好ましい。
【0030】
前記基板に設けた正電極層上に、イリジウム錯体(A)を含有する発光層を形成する。該発光層は、イリジウム錯体(A)の有機溶剤溶液を、公知のコーティング法、インクジェット法、印刷法によって塗布後、乾燥して得られる。乾燥方法に特に制限はない。発光層の膜厚は特に限定はないが、乾燥後の膜厚を1nm〜1μmとした場合に、高い発光効率が得られる。中でも、膜厚が10nm〜500nmとなるように作製することが好ましい。
【0031】
前記有機溶剤としては、イリジウム錯体(A)を溶解するものであれば特に限定はなく、例えば、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,1,2−トリクロロエタン等を使用することができる。これらの有機溶剤は単独でも混合して使用しても構わない。イリジウム錯体(A)の有機溶剤溶液の濃度は、0.5〜10質量%とすると、乾燥後の発光層の膜厚を、1nm〜1μmとなるように制御しやすい。
【0032】
前記発光層上に負電極層を設ける。負電極層は、例えば、前記発光層上に、リチウムやカリウム等のアルカリ金属、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属、金、銀、アルミニウム、又はリチウム−アルミニウム合金やマグネシウム−銀合金等の合金を、真空蒸着、スパッタリングするか、これらの粉体を含有する塗料を塗布することによって得られる。該負電極層の膜厚は50〜200nmの範囲が好ましい。また、前記負電極層上に、酸化珪素、窒化珪素、二酸化珪素、酸化ゲルマニウム、又は二酸化ゲルマニウム等を、真空蒸着またはスパッタリングするか、これらの粉体を含有する塗料を塗布して保護層を設けることにより、本発明の有機EL素子を劣化させる因子である水分や酸素を遮断することができる。
【0033】
本発明の有機EL素子には、電荷輸送性をより向上させるために、正電極層とイリジウム錯体(A)を含有する発光層との間に正孔輸送層を、イリジウム錯体(A)を含有する発光層と負電極層との間に電子輸送層を設けてもよい。また、電荷輸送性をより向上させるために、イリジウム錯体(A)に正孔輸送材料または電子輸送材料を混合し、発光層を形成することもできる。
【0034】
正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を移動させるために設けられる層である。正孔輸送層に使用する正孔輸送材料としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0035】
正孔輸送層は、正電極層上に作製する。正孔輸送材料が、トリフェニルアミン誘導体等の低分子化合物である場合は、正電極層上に真空蒸着させたり、又は、正孔輸送材料を有機溶媒に溶解した後、正電極層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。また、正孔輸送材料が、ポリビニルカルバゾール誘導体やポリチオフェン誘導体等の高分子化合物である場合は、必要に応じて有機溶媒に溶解した後、正電極層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。正孔輸送層の膜厚は、一般に、5nm〜500nmとなるように作製する。
【0036】
一方、前記電子輸送層に使用する電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、ナフトキノン誘導体、ポリキノキサリン誘導体等が挙げられる。電子輸送層は、前記イリジウム錯体(A)を含有する発光層上に作製する。
【0037】
電子輸送層は、電子輸送材料がオキサジアゾール誘導体やナフトキノン誘導体等である場合は、前記発光層上に真空蒸着したり、又は、電子輸送材料を有機溶媒に溶解した後、前記発光層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。また、電子輸送材料が、ポリキノキサリン誘導体等の高分子化合物である場合は、必要に応じて有機溶媒に溶解した後、前記発光層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。電子輸送層は、乾燥後の膜厚が5nm〜500nmとなるように作製するとよい。
【0038】
また、電子輸送層と負電極層との間に、発光効率を高める目的で、リチウムやカリウム等アルカリ金属のフッ化物層、カルシウムやマグネシウム等アルカリ土類金属のフッ化物層等の絶縁層を、真空蒸着、スパッタリングするか、これらの粉体を含有する塗料を塗布することによって、膜厚0.1〜10nmの範囲となる様に作製することもできる。
【0039】
また、イリジウム錯体(A)に正孔輸送材料または電子輸送材料を混合し発光層を形成する場合は、前記記載の正孔輸送材料または電子輸送材料とイリジウム錯体(A)とを、予めシクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,1,2−トリクロロエタン等の有機溶媒に溶解した後、その溶液を各種コーティング法、インクジェット法、印刷法等によって正電極層上に塗布後、乾燥して得られる。乾燥方法に特に制限はない。正孔輸送材料または電子輸送材料が多すぎると、前記イリジウム錯体(A)の濃度が低くなりすぎて十分な発光輝度が得られにくいことから、前記イリジウム錯体(A)は、混合物全量に対して2%以上混合するのが好ましい。該発光層の膜厚には特に限定はないが、乾燥後1nm〜1μmとなるように作製すると、発光効率をより高めることができる。中でも、膜厚が10nm〜500nmとなるように作製することが好ましい。
【0040】
本発明においては、イリジウム錯体(A)が、電荷輸送材料であるπ共役鎖を有しており、正孔輸送機能または電子輸送機能を有するため、正孔輸送層または電子輸送層がなくても、発光効率の高い有機EL素子を得ることができる。
【0041】
正電極層からの正孔の注入を容易にするために、正電極層と正孔輸送層との間に正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層は、例えば、正電極層上に、フタロシアニン誘導体を、膜厚が10nm以下となるように真空蒸着することや、ポリエチレンジオキシ−チオフェン−スルホネート(PEDOT−PSS)を有機溶媒に溶解した後、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法等によって膜厚が10nm以下となるよう塗布することにより得られる。
【0042】
また、負電極層からの電子の注入を容易にするために、負電極層と電子輸送層との間に電子注入層を設けてもよい。電子注入層は、例えば負電極層上でトリシアノキノジメタンやオキサジアゾール誘導体を、膜厚が10nm以下となるように真空蒸着して得られる。
【0043】
本発明の有機EL素子の発光層には、結晶性が低く、会合体を形成しにくいイリジウム錯体(A)を使用しているので、濃度消光を起こしにくい。また、イリジウム錯体(A)は溶剤に溶けやすいので、発光層を湿式製膜法で簡単に形成することができる。該イリジウム錯体(A)の結晶性が低いことから、本発明の有機EL素子は、時間が経過しても、発光層中でイリジウム錯体(A)が結晶化して析出することがなく、素子が劣化しにくい。
【0044】
本発明の有機EL素子は、緑色の表示素子、ディスプレイ、バックライト、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の用途に、好適に使用することができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の例において、「%」は、特に断りのない限りは質量基準とする。
【0046】
<合成参考例1> 2−(4−ブロモフェニル)ピリジンの合成
反応容器中に、2−ブロモピリジン11gとテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す。)200mlとを仕込み、アルゴン気流下アセトン−ドライアイスバスで冷却しながら、1.5mol/lのターシャリー・ブチルリチウムペンタン溶液92mlを滴下した。滴下終了後直ちに1.0mol/lの塩化亜鉛ジエチルエーテル溶液70mlを滴下した。アセトン−ドライアイスバス中で1時間、0℃で2時間、室温で3時間反応させた後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)800mgを加え、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン19.6gのTHF溶液100mlを滴下した。室温で約68時間反応させた後、反応液に酢酸エチル200mlを加え、10%アンモニア水100mlで1回、蒸留水100mlで2回洗浄し、有機層を濃縮した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)で分離し、溶剤を留去して2−(4−ブロモフェニル)ピリジン9.6gを得た。
【0047】
<合成参考例2> Mwが3400のポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)を有するホウ酸化合物の合成
反応容器中に、2,5−ジブトキシ−1−ブロモ−4−フェニルホウ酸13.8g、1mol/lの炭酸カリウム水溶液80ml、THF200ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)400mgを仕込み、アルゴン気流下、60℃で撹拌した。20分後、フェニルホウ酸4.9gを加え、さらに同温で8時間撹拌して反応を終了した。反応液を1mol/lの塩酸400mlに滴下し、生成した沈殿物を濾集して蒸留水400mlで洗浄した。この沈殿物をジクロロメタン約10mlに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製した。目的の画分の溶液を濃縮し、ポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)を有するホウ酸化合物(以下、「ホウ酸化合物(B)」と略す。)7.2gを得た。ホウ酸化合物(B)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)を用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、Mwが3400、数平均分子量(以下、「Mn」と略す。)が2500であり、Mw/Mnは1.36であった。
【0048】
<合成参考例3> Mwが1600のポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)を有するホウ酸化合物の合成
反応容器中に、2,5−ジブトキシ−1−ブロモ−4−フェニルホウ酸13.8g、1mol/lの炭酸カリウム水溶液80ml、トルエン200ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)400mgを仕込み、アルゴン気流下、95℃で撹拌し、42時間後にフェニルホウ酸4.88gを加え、さらに同温で8時間撹拌して反応を終了した。これ以降は合成参考例2と同様の後処理工程を行い、Mwが1600、Mnが1400、Mw/Mnが1.14のポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)を有するホウ酸化合物(以下、「ホウ酸化合物(C)」と略す。)3.3gを得た。
【0049】
<合成参考例4> π共役鎖を有する2−フェニルピリジンの合成
反応容器中に、合成参考例1で得た2−(4−ブロモフェニル)ピリジン0.7g、合成参考例2で得たホウ酸化合物(B)4.4g、THF200ml、1mol/lの炭酸カリウム水溶液40ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)35mgを仕込み、アルゴン気流下、60〜65℃で24時間撹拌した。反応溶液の有機層と水層とを分離し、有機層を乾燥、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)で精製し、π共役鎖としてポリパラフェニレン誘導体を有する2−フェニルピリジン誘導体(以下、「ピリジン誘導体(D)」と略す。)3.5gを得た。この化合物について、GPCを用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、Mwが3600、Mnが2600であり、Mw/Mnは1.38であった。
【0050】
(1H−NMRスペクトルデータ:CDCl3、300MHz)
8.7ppm(d,1H,N−CH=)、8.1ppm(d,2H)、
7.8ppm(m,4H、)、7.6ppm(d,2H)、7.4ppm(m,2H)、
7.3ppm(d,1H)、7.2ppm(m,1H)、
7.0−7.1ppm(m,26H)、3.9ppm(t,52H,O−CH 2 −)、
6−1.7ppm(m、52H,−CH 2 −)、
4−1.5ppm(m、52H,−CH 2 −)、
0.9−1.0ppm(t,78H,−CH 3 )
【0051】
<合成参考例5> π共役鎖を有する2−フェニルピリジンの合成
合成参考例4における、ホウ酸化合物(B)4.4gに代えて、ホウ酸化合物(C)1.9gを用いた以外は合成参考例4と同様の操作を行い、Mwが1900、Mnが1600、Mw/Mnが1.18であり、π共役鎖としてポリパラフェニレン誘導体を有する2−フェニルピリジン誘導体(以下、「ピリジン誘導体(E)」と略す。)1.4gを得た。
【0052】
(1H−NMRスペクトルデータ:CDCl3、300MHz)
8.7ppm(d,1H,N−CH=)、8.1ppm(d,2H)、
7.8ppm(m,4H、)、7.6ppm(d,2H)、7.4ppm(m,2H)、
7.3ppm(d,1H)、7.2ppm(m,1H)、
7.0−7.1ppm(m,6H)、3.9ppm(t,12H,O−CH 2 −)、
6−1.7ppm(m、12H,−CH 2 −)、
−1.5ppm(m、12H,−CH 2 −)、
0.9−1.0ppm(t,18H,−CH 3 )
【0053】
<合成例1> π共役鎖を有する2−フェニルピリジン誘導体および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオンを配位子とするイリジウム錯体(A−1)の合成
合成参考例4で得たピリジン誘導体(D)を1.8g、イリジウムクロライド(III)3水和物を71mg、2−メトキシエタノールを20ml、水5mlを仕込み、窒素気流下、120℃で6時間攪拌した。室温に冷却後、1mol/l塩酸50mlを加え、析出した固体を濾別した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)で精製し、テトラキス(2−フェニルピリジン−C2,N’)(μ−ジクロロ)ジイリジウム誘導体の黄色固体を得た。次に、得られた黄色固体500mg、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4,−ペンタンジオン55mg、ナトリウムメトキシドメタノール溶液(28wt%)0.05ml、クロロホルム20mlを混合し、3時間加熱還流した。室温に冷却後、反応溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)で精製し、式(3)で表されるピリジン誘導体(D)および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4,−ペンタンジオンを配位子とするイリジウム錯体(A−1)190mgを得た。この化合物について、GPCを用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、Mwが6800、Mnが5200であり、Mw/Mnは1.31であった。
【0054】
(1H−NMRスペクトルデータ:CDCl3、300MHz)
7.9ppm(d,2H,N−CH=)、7.6−7,8ppm(m,10H)、
7.4−7.5ppm(m,6H、)、7.3ppm(d,2H)、
6.9−7.1ppm(m,50H)、
3.9ppm(m,100H,O−CH 2 )、
1.6−1.7ppm(m、100H,−CH 2 −)、
1.4−1.5ppm(m、100H,−CH 2 −)、
0.9−1.0ppm(m,160H,−CH 3 )
【0055】
【化4】
【0056】
<合成例2>π共役鎖を有する2−フェニルピリジン誘導体および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオンを配位子とするイリジウム錯体(A−2)の合成
合成例1において、ピリジン誘導体(D)1.8gに代えて、ピリジン誘導体(E)0.7gを用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、式(4)で表されるピリジン誘導体(E)および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4,−ペンタンジオンを配位子とするイリジウム錯体(A−2)120mgを得た。この化合物について、GPCを用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、Mwが2600、Mnが2100であり、Mw/Mnは1.24であった。
【0057】
(1H−NMRスペクトルデータ:CDCl3、300MHz)
7.9ppm(d,2H,N−CH=)、
7.6−7,8ppm(m,10H)、
7.4−7.5ppm(m,6H、)、7.3ppm(d,2H)、
6.9−7.1ppm(m,12H)、
3.9ppm(m,24H,O−CH 2 −)、
1.6−1.7ppm(m、24H,−CH 2 −)、
1.4−1.5ppm(m、24H,−CH 2 −)、
0.9−1.0ppm(m,36H,−CH 3 )
【0058】
【化5】
【0059】
<実施例1>
片面に厚さ100nmのITO電極層を有する面積が20mm×20mm、厚さが1.1mmのコーニング社製のガラス板「1737」のITO電極層上に、高砂香料株式会社製のポリ(N−ビニルカルバゾール)(Mw:700000)の20g/Lの1,1,2−トリクロロエタン溶液を、スピンコーターを使用し、1700回転/分で10秒間回転させて塗布した後、減圧下110℃で2時間乾燥させ、厚さ20nmの正孔輸送層を設けた。
前記正孔輸送層上に、合成例1で得たイリジウム錯体(A−1)8.4mgと、電荷輸送材料であるMwが100000のポリ(2−(6−シアノ−6−メチルヘプチルオキシ)−1,4−フェニレン(以下、「CN−PPP」と略す。)31.6mgとを、1,1,2−トリクロロエタンとトルエンとの混合溶液2mlに溶解した溶液を、スピンコーターを使用し、2000回転/分で10秒間塗布した後、真空下110℃で2時間乾燥させ、厚さ100nmの発光層を作製した。得られた発光層中のイリジウム原子の濃度は0.59%であった。
このようにして得られたITO、正孔輸送層、発光層が順に積層されたガラス板を、発光面積が2mm×2mmとなるようにマスクした後、カルシウムを1.0nm/秒の速度で、厚さ10nmとなるように、アルミニウムを0.5nm/秒の速度で、厚さ150nmとなるように負電極をこの順に真空蒸着し、有機EL素子(F)を得た。
【0060】
窒素ガス雰囲気中で、有機EL素子(F)の負電極と正電極をケースレー社製の「237ハイ・ボルテージ・ソース・メジャー・ユニット」に接続し、両電極間に電圧を印可して電流密度・電圧特性を測定した。さらに、(株)トプコン製色彩輝度計「BM−7」を使用して有機EL素子(F)の輝度を、(株)日立製作所製蛍光光度計「F−4500」を使用して有機EL素子(F)の発光スペクトルをそれぞれ測定した。電流密度・電圧・輝度特性および発光スペクトルから、発光波長λmax、最高輝度、外部量子効率を算出した。その結果、有機EL素子(F)は、発光波長λmaxが526nmの緑色発光を示し、最高輝度が3800cd/m2、外部量子効率が1.97%であった。
【0061】
<実施例2>
実施例1における発光層の代わりに、合成例2で得たイリジウム錯体(A−2)3.2mgとCN−PPP36.8mgとを、1,1,2−トリクロロエタンとトルエンとの混合溶液2mlに溶解した溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(G)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は0.59%であった。有機EL素子(G)を実施例1と同様に評価した結果、発光波長λmaxが526nmの緑色発光を示し、最高輝度が4300cd/m2、外部量子効率が2.05%であった。
【0062】
<実施例3>
実施例1における発光層の代わりに、合成例1で得たイリジウム錯体(A−1)21mgと、CN−PPP19mgを1,1,2−トリクロロエタン2mlに溶解した溶液を使用し、スピンコーターの回転数を1500回転として発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(H)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は1.5%であった。有機EL素子(H)を実施例1と同様に評価した結果、発光波長λmaxが526nmの緑色発光を示し、最高輝度が6800cd/m2、外部量子効率が2.12%であった。
【0063】
<実施例4>
実施例1における発光層の代わりに、合成例2で得たイリジウム錯体(A−2)40mgを1,1,2−トリクロロエタン2mlに溶解した溶液を使用し、スピンコーターの回転数を1000回転として発光層を設けた以外は実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(I)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は7.4%であった。有機EL素子(I)を実施例1と同様に評価した結果、発光波長λmaxが526nmの緑色発光を示し、最高輝度が8300cd/m2、外部量子効率が1.86%であった。
【0064】
<比較例1>
実施例1における発光層の代わりに、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)0.8mgと、CN−PPP39.2mgを1,1,2−トリクロロエタン2mlに溶解した溶液を使用し、スピンコーターの回転数を2100回転として発光層を設けた以外は実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(J)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は0.59%であった。有機EL素子(J)を実施例1と同様に評価した結果、発光波長λmaxが513nmの緑色発光を示し、最高輝度が750cd/m2、外部量子効率が1.65%であり、最高輝度および外部量子効率は実施例1〜4で得られた有機EL素子(F)〜(I)よりも低い値となった。
【0065】
<比較例2>
実施例1における発光層の代わりに、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)2.0mgとCN−PPP38mgとを1,1,2−トリクロロエタン2mlに溶解した溶液を使用し、スピンコーターの回転数を2100回転として発光層を設けた以外は実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(K)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は1.5%であった。有機EL素子(K)を実施例1と同様に評価した結果、発光波長λmaxが513nmの緑色発光を示し、最高輝度が1180cd/m2、外部量子効率が1.24%であり、最高輝度および外部量子効率は実施例1〜4で得られた有機EL素子(F)〜(I)よりも低い値となった。さらに、有機EL素子(K)の外部量子効率は、比較例1の有機EL素子(J)よりも低い値となり、濃度消光の影響が認められた。
【0066】
<比較例3>
実施例1における発光層の代わりに、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)10mgとCN−PPP30mgとを1,1,2−トリクロロエタン2mlに溶解した溶液を使用し、スピンコーターの回転数を1,900回転として発光層を設けた以外は実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(L)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は7.4%であった。有機EL素子(L)を目視観察した結果、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)の結晶が析出し均一な発光層が形成されていなかった。この有機EL素子(L)を実施例1と同様に評価したが、電圧を印可すると素子がショートし、最高輝度および外部量子効率を測定することができなかった。
【0067】
実施例1〜4、及び比較例1〜3の結果を表1に示す。実施例1〜4の結果は、比較例1〜3の結果に比べ、最高輝度、発光効率共に高かった。
【表1】
(表1)
【0068】
表1中、Ir(ppy)3は、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)を表す。
【0069】
【発明の効果】
本発明の発光材料は、π共役鎖を有する2−フェニルピリジン誘導体および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオンを配位子とする発光色が緑色のイリジウム(III)錯体からなる。該イリジウム(III)錯体は、高い色純度の緑色を発光し、置換基として正孔または電子輸送機能を持つπ共役鎖を有しているので、分子内及び分子間での正孔または電子輸送が可能となり、正電極層から注入された正孔あるいは負電極から注入された電子を、イリジウム(III)錯体へ効率良く輸送することができる。また、該π共役鎖は非晶性であるので、これらを置換基として有するイリジウム(III)錯体は結晶性が低く、会合体を形成しにくいため、濃度消光が起きにくい。また溶剤にも溶けやすいので、湿式製膜法で発光層を得ることができる。
本発明の有機EL素子は、濃度消光が起きにくく、且つ、時間が経過しても、発光層中でイリジウム(III)錯体が結晶化して析出することがなく、素子が劣化しにくい。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a green light emitting material, and more particularly, to an organic electroluminescent device using the green light emitting material.
[0002]
[Prior art]
In recent years, the demand for display elements for portable information terminals such as mobile computers, mobile phones, PDAs and the like has been increasing, and there is a demand for lighter and lower power consumption display elements. A self-luminous organic electroluminescence element (hereinafter abbreviated as “organic EL element”) does not require a backlight or the like, can be made thinner and lighter, and has a high luminance at a low driving voltage. Because of the emission of light, research is being conducted as a next-generation display medium that replaces existing display elements such as CRT display devices and liquid crystal display elements. Particularly recently, application of red, blue, and green organic EL elements to a full-color display has been studied.
[0003]
The organic EL element generally has a structure in which a positive electrode layer, a light emitting layer containing a light emitting substance, and a negative electrode layer are sequentially stacked. When a voltage is applied between the positive and negative electrode layers, electrons are injected from the negative electrode layer and holes are injected from the positive electrode layer into the light emitting layer. The injected electrons and holes recombine in the luminescent material, and the luminescent material generates excitons. Light emission occurs when the exciton is deactivated to the ground state.
[0004]
Fluorescent compounds and phosphorescent compounds are known as luminescent substances. At present, a fluorescent compound that is stable to heat is most frequently used as a luminescent material for an organic EL device. However, the light emitted from the fluorescent compound is fluorescence emitted from a singlet exciton, and the emission efficiency of the fluorescence is extremely low, at most about 5%, which is the external quantum efficiency indicating the emission efficiency of the organic EL device. On the other hand, light emission of the phosphorescent compound is phosphorescence emitted by triplet excitons, and the theoretical external quantum efficiency of phosphorescence is 20% at the maximum. From this, if a phosphorescent compound can be used as a light emitting substance for an organic EL device, it can be expected that the luminous efficiency is about four times as high as that of a fluorescent compound.
[0005]
However, in the conventionally known phosphorescent compounds, triplet excitons are thermally unstable, and it is difficult to emit light at room temperature. Therefore, a red, blue, and green phosphorescent compound having high luminous efficiency and capable of emitting light at room temperature, and an organic EL device using the same are desired.
[0006]
As an organic EL device using a green phosphorescent compound that emits light at room temperature, an organic EL device using an iridium (III) tris (2-phenylpyridine) complex as a light-emitting substance is known (for example, see Patent Document 1). .). This has an external quantum efficiency of 8%, which is higher than that of an organic EL device using a fluorescent compound as a light emitting substance. However, the light-emitting layer of the organic EL element is formed by a co-evaporation method using a mixture of the iridium (III) complex and 4,4′-N, N′-dicarbazole-biphenyl which is a hole transport material. Therefore, there is a problem that the production efficiency is low and a problem that the luminous efficiency is reduced when the concentration of the complex in the light emitting layer is increased (hereinafter, this is abbreviated as “concentration quenching”).
[0007]
On the other hand, the iridium (III) complex is doped into a polyparaphenylene derivative, which is a material of the hole transporting layer, so that the concentration of the complex does not form an association, and the iridium (III) complex is formed on the positive electrode layer. A method of obtaining a light emitting layer by applying by a wet film forming method such as a printing method is known (for example, see Non-Patent Document 1). When the iridium (III) complex is doped into a polymer hole transport material, a light emitting layer can be formed by a wet film forming method, and the production efficiency of an organic EL device is improved. However, this method has a problem that the probability that holes injected from the positive electrode layer into the polyparaphenylene derivative are transferred to the iridium (III) complex, that is, the hole transport efficiency is low. In addition, since the concentration of the iridium (III) complex is suppressed to a concentration that does not cause concentration quenching, the luminous efficiency obtained is limited.
[0008]
[Patent Document 1]
International Publication No. 00/70655 pamphlet
[Non-patent document 1]
"Applied Physics Letters", March 2002, No. 80, p. 2045-2047
[0009]
[Problems to be solved by the invention]
The problem to be solved by the present invention is to provide a green light-emitting material which shows a high luminous efficiency, can be formed by a wet film-forming method, and provides a light-emitting layer which hardly causes concentration quenching, and an organic EL element having the light-emitting layer. To provide.
[0010]
[Means for Solving the Problems]
The present invention introduces a π-conjugated chain as a charge transport material into an iridium (III) complex to enable intramolecular and intermolecular transport of holes or electrons, and allows holes or electrons injected from a positive electrode layer to be introduced. Electrons injected from the negative electrode layer can be efficiently transported to the iridium (III) complex.
Further, the present invention makes it possible to introduce a π-conjugated chain into an iridium (III) complex to lower the crystallinity, to facilitate film formation by a wet film formation method, and to further reduce concentration quenching.
[0011]
That is, the present invention provides a light-emitting material comprising an iridium (III) complex represented by the general formula (1).
[0012]
Embedded image
[0013]
(Where R1And R2Represents a hydrogen atom or a π-conjugated chain;1And R2Is at least one of the π-conjugated chains. )
Further, the present invention provides an organic EL device in which the light emitting layer contains the above light emitting material.
[0014]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
In the light emitting material of the present invention, two of the three ligands are composed of 2-phenylpyridine having a π-conjugated chain as a substituent, and the remaining one ligand is 1,1,1,5,5,5. A green light-emitting material composed of an iridium (III) complex composed of -hexafluoro-2,4-pentanedione (hereinafter abbreviated as "iridium complex (A)").
[0015]
In the present invention, two molecules of 2-phenylpyridine having a π-conjugated chain as a substituent and one molecule of 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-2,4-pentanedione are converted to iridium (III). The complex emits green light of high color purity by forming a complex. The π-conjugated chain of 2-phenylpyridine having a π-conjugated chain as a substituent has a role of transporting charge. Since the π-conjugated chain is bonded to the iridium (III) complex, the holes received from the positive electrode layer or the electrons received from the negative electrode layer are transported in the molecule to the iridium (III) complex, which is a luminescent substance. can do. Since holes or electrons can be transported within and between molecules, the transport efficiency is high, and thus the obtained organic EL device exhibits high luminous efficiency.
[0016]
As the π-conjugated chain which is a substituent of 2-phenylpyridine of the ligand, specifically, for example, a polyparaphenylene chain, a polyparaphenylenevinylene chain, a polythiophene chain, a polypyrrole chain, a polyacetylene chain, a polypyridine chain, a polypyridine chain, Quinoxaline chains, polyoxadiazole chains and the like. Among them, a polyparaphenylene chain, a polythiophene chain, or a polypyrrole chain has a high effect of further reducing the crystallinity of the iridium (III) complex. Further, when the π conjugated chain has a C1-10 alkoxy group such as a methoxy group or a butoxy group as a substituent, a C1-10 alkyl group such as a methyl group or a butyl group, a cyano group, The crystallinity of the iridium complex (A) can be further reduced.
[0017]
The molecular weight of the π-conjugated chain is preferably such that the polystyrene equivalent mass average molecular weight (hereinafter abbreviated as “Mw”) is in the range of 500 to 50,000. When Mw is less than 500, the obtained iridium complex (A) tends to crystallize, and when Mw is more than 50,000, the solubility of the obtained iridium complex (A) in a solvent tends to decrease.
[0018]
By introducing the bulky π-conjugated chain into the iridium (III) complex, a compound having high steric hindrance can be obtained. Therefore, the crystallinity of the iridium complex (A) is low, and it is difficult to form an aggregate, so that concentration quenching hardly occurs. Further, since the light emitting layer is easily dissolved in a solvent, the light emitting layer can be formed by a wet film forming method.
[0019]
Iridium complex (A) is described in WO 01/41512 pamphlet or "Journal of American Chemical Society", 2001, No. 123, p. The compound can be synthesized by a method represented by formula (2) described in 4304 and the like.
[0020]
Embedded image
[0021]
Specifically, 2-phenylpyridine having the π-conjugated chain as a substituent and an iridium compound are mixed in a solvent such as water, 2-ethoxyethanol or glycerin under a stream of an inert gas such as nitrogen or argon. Stirring is performed within the range of 230230 ° C. to obtain a bridged iridium dimer. Next, the iridium dimer, 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-2,4-pentanedione, and an alkali such as sodium carbonate and sodium methoxide were converted into 1,2-dichloroethane, ethanol Alternatively, it is obtained by reacting in a solvent such as 2-ethoxyethanol under a flow of an inert gas such as nitrogen or argon at a temperature in the range of 50 ° C. to reflux temperature.
[0022]
Examples of the iridium compound that can be used for the reaction include iridium (III) trichloride and its hydrate, iridium (III) tribromide and its hydrate, and potassium hexachloroiridate (III).
[0023]
The 2-phenylpyridine having a π-conjugated chain as a substituent is obtained by converting a halogenated 2-phenylpyridine and a boric acid compound having a π-conjugated chain into tetrakis (triphenylphosphine) in a solvent such as tetrahydrofuran, toluene, or acetone. ) It is obtained by performing a coupling reaction in the range of room temperature to reflux temperature under a metal catalyst such as palladium (0) or tris (dibenzylideneacetone) dipalladium (0).
[0024]
Examples of halogenated 2-phenylpyridines include 2- (4-bromophenyl) pyridine, 2- (4-chlorophenyl) pyridine, 2- (3-bromophenyl) pyridine, 2- (3-chlorophenyl) pyridine, -(2-bromophenyl) pyridine, 2- (2-chlorophenyl) pyridine and the like. Among them, 2- (4-bromophenyl) pyridine or an iridium (III) complex comprising a ligand obtained from 2- (4-chlorophenyl) pyridine is preferable.
[0025]
The boric acid compound having a π-conjugated chain is specifically, for example, RB (OH)2(Where R represents a π-conjugated chain). Specifically, for example, a boric acid compound having a polyparaphenylene chain obtained by performing a coupling reaction with 4-bromophenylboric acid, and a coupling reaction of 2,5-dibutoxy-4-bromophenylboric acid are performed. A boric acid compound having a polyparaphenylene chain having a butoxy group as a substituent, a boric acid compound having a polythiophene chain obtained by performing a coupling reaction with 2-bromothiophene-5-boric acid, 2,5 A boric acid compound having a polypyrrole chain in which dibromopyrrole is polymerized to obtain a polypyrrole having a bromine group at a terminal, and at least one of the bromine groups is substituted with boric acid.
[0026]
Mw of the boric acid compound having a π-conjugated chain is preferably in the range of 500 to 50,000. When Mw is less than 500, the obtained iridium complex (A) tends to crystallize, and when Mw is more than 50,000, the solubility of the obtained iridium complex (A) in a solvent tends to decrease.
[0027]
Next, an example of the organic EL device of the present invention and a method of manufacturing the same will be described. The organic EL device of the present invention has a structure in which at least a transparent positive electrode layer, a light emitting layer containing an iridium complex (A), and a negative electrode layer are sequentially laminated on a substrate. The negative electrode layer need not be transparent.
[0028]
The substrate may be a transparent material that does not deteriorate when the electrode layer or the light emitting layer is formed, and examples thereof include glass and a polymer film. As the polymer film, a film in which a transparent material such as polyethylene terephthalate, polycarbonate, polycycloolefin, polyether sulfone, or the like is gas-barrier-coated with silicon oxide, silicon nitride, or the like can be used.
[0029]
The transparent positive electrode layer is formed by sputtering or vacuum depositing indium tin oxide (hereinafter abbreviated as “ITO”) on a substrate or applying a suspension of ITO fine particles and sintering the fine particles. It is obtained. Further, when the surface of the electrode is subjected to a surface treatment such as an ultraviolet-ozone treatment or a plasma treatment in an oxygen atmosphere, the driving voltage of the obtained organic EL element is prevented from lowering, and the effect of improving the luminous efficiency is obtained. When the thickness of the positive electrode layer is in the range of 10 nm to 5 μm, light is easily transmitted. Among them, the thickness is preferably in the range of 20 nm to 1 μm.
[0030]
A light emitting layer containing the iridium complex (A) is formed on the positive electrode layer provided on the substrate. The light-emitting layer is obtained by applying a solution of an iridium complex (A) in an organic solvent by a known coating method, an inkjet method, a printing method, and then drying. There is no particular limitation on the drying method. Although the thickness of the light emitting layer is not particularly limited, high luminous efficiency can be obtained when the thickness after drying is 1 nm to 1 μm. In particular, it is preferable to manufacture the film so that the film thickness is 10 nm to 500 nm.
[0031]
The organic solvent is not particularly limited as long as it can dissolve the iridium complex (A), and for example, cyclohexanone, toluene, xylene, chloroform, 1,1,2-trichloroethane and the like can be used. These organic solvents may be used alone or as a mixture. When the concentration of the solution of the iridium complex (A) in the organic solvent is 0.5 to 10% by mass, the thickness of the light emitting layer after drying is easily controlled to be 1 nm to 1 μm.
[0032]
A negative electrode layer is provided on the light emitting layer. The negative electrode layer, for example, on the light emitting layer, an alkali metal such as lithium or potassium, an alkaline earth metal such as calcium or magnesium, gold, silver, aluminum, or an alloy such as a lithium-aluminum alloy or a magnesium-silver alloy Can be obtained by vacuum evaporation, sputtering, or applying a paint containing these powders. The thickness of the negative electrode layer is preferably in the range of 50 to 200 nm. Further, on the negative electrode layer, silicon oxide, silicon nitride, silicon dioxide, germanium oxide, germanium dioxide, or the like is vacuum-deposited or sputtered, or a coating containing these powders is applied to form a protective layer. Thereby, moisture and oxygen, which are factors that deteriorate the organic EL element of the present invention, can be blocked.
[0033]
In the organic EL device of the present invention, in order to further improve the charge transportability, a hole transport layer is provided between the positive electrode layer and the light emitting layer containing the iridium complex (A), and the iridium complex (A) is contained. An electron transport layer may be provided between the light emitting layer and the negative electrode layer. In order to further improve the charge transporting property, a light emitting layer can be formed by mixing a hole transporting material or an electron transporting material with the iridium complex (A).
[0034]
The hole transport layer is a layer provided for moving holes injected from the anode. Examples of the hole transport material used for the hole transport layer include a triphenylamine derivative, a polyvinyl carbazole derivative, a polyaniline derivative, and a polythiophene derivative.
[0035]
The hole transport layer is formed on the positive electrode layer. When the hole transporting material is a low molecular compound such as a triphenylamine derivative, or by vacuum deposition on the positive electrode layer, or after dissolving the hole transporting material in an organic solvent, on the positive electrode layer, It is prepared by applying by various coating methods, inkjet methods, printing methods, and the like. When the hole transporting material is a polymer compound such as a polyvinyl carbazole derivative or a polythiophene derivative, if necessary, after dissolving in an organic solvent, various coating methods, an inkjet method, and a printing method are formed on the positive electrode layer. It is produced by coating with such as. The hole transport layer is generally formed to have a thickness of 5 nm to 500 nm.
[0036]
On the other hand, examples of the electron transporting material used for the electron transporting layer include oxadiazole derivatives, naphthoquinone derivatives, and polyquinoxaline derivatives. The electron transport layer is formed on the light emitting layer containing the iridium complex (A).
[0037]
When the electron transporting material is an oxadiazole derivative, a naphthoquinone derivative, or the like, the electron transporting material is vacuum-deposited on the light emitting layer, or, after dissolving the electron transporting material in an organic solvent, on the light emitting layer. It is manufactured by applying by various coating methods, inkjet methods, printing methods and the like. When the electron transporting material is a polymer compound such as a polyquinoxaline derivative, it is dissolved in an organic solvent as necessary, and then applied on the light emitting layer by various coating methods, an inkjet method, a printing method, or the like. To make. The electron transporting layer is preferably formed so that the film thickness after drying is 5 nm to 500 nm.
[0038]
In addition, between the electron transport layer and the negative electrode layer, for the purpose of enhancing luminous efficiency, an insulating layer such as a fluoride layer of an alkali metal such as lithium or potassium, or a fluoride layer of an alkaline earth metal such as calcium or magnesium, It can also be manufactured to have a film thickness in the range of 0.1 to 10 nm by vacuum evaporation, sputtering, or applying a paint containing these powders.
[0039]
When a hole-transporting material or an electron-transporting material is mixed with the iridium complex (A) to form a light-emitting layer, the hole-transporting material or the electron-transporting material described above and the iridium complex (A) are previously added to cyclohexanone, It is obtained by dissolving in an organic solvent such as toluene, xylene, chloroform, 1,1,2-trichloroethane and the like, applying the solution on the positive electrode layer by various coating methods, inkjet methods, printing methods and the like, and then drying. There is no particular limitation on the drying method. If the amount of the hole transporting material or the electron transporting material is too large, the concentration of the iridium complex (A) becomes too low to obtain a sufficient emission luminance, so that the iridium complex (A) is added to the total amount of the mixture. It is preferable to mix 2% or more. The thickness of the light-emitting layer is not particularly limited, but if it is formed to have a thickness of 1 nm to 1 μm after drying, the luminous efficiency can be further increased. In particular, it is preferable to manufacture the film so that the film thickness is 10 nm to 500 nm.
[0040]
In the present invention, since the iridium complex (A) has a π-conjugated chain as a charge transporting material and has a hole transporting function or an electron transporting function, the iridium complex (A) can be provided without a hole transporting layer or an electron transporting layer. Thus, an organic EL device having high luminous efficiency can be obtained.
[0041]
In order to facilitate injection of holes from the positive electrode layer, a hole injection layer may be provided between the positive electrode layer and the hole transport layer. The hole injection layer is formed by, for example, vacuum-depositing a phthalocyanine derivative on the positive electrode layer so that the film thickness becomes 10 nm or less, or dissolving polyethylene dioxy-thiophene-sulfonate (PEDOT-PSS) in an organic solvent. After that, it is obtained by applying the coating so as to have a film thickness of 10 nm or less by various coating methods, an inkjet method, a printing method or the like.
[0042]
Further, in order to facilitate injection of electrons from the negative electrode layer, an electron injection layer may be provided between the negative electrode layer and the electron transport layer. The electron injection layer is obtained, for example, by vacuum-depositing tricyanoquinodimethane or an oxadiazole derivative on the negative electrode layer so that the film thickness is 10 nm or less.
[0043]
Since the iridium complex (A) having low crystallinity and hardly forming an association is used for the light emitting layer of the organic EL device of the present invention, concentration quenching hardly occurs. Further, since the iridium complex (A) is easily soluble in a solvent, the light emitting layer can be easily formed by a wet film forming method. Due to the low crystallinity of the iridium complex (A), the organic EL device of the present invention does not crystallize and precipitate out of the iridium complex (A) in the light emitting layer even after a lapse of time. Hard to deteriorate.
[0044]
The organic EL element of the present invention can be suitably used for applications such as a green display element, a display, a backlight, an illumination light source, a recording light source, an exposure light source, a reading light source, a sign, a sign, an interior, and an optical communication. .
[0045]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described more specifically with reference to examples. In the following examples, “%” is based on mass unless otherwise specified.
[0046]
<Synthesis Reference Example 1> Synthesis of 2- (4-bromophenyl) pyridine
In a reaction vessel, 11 g of 2-bromopyridine and 200 ml of tetrahydrofuran (hereinafter, abbreviated as “THF”) are charged, and while cooling with an acetone-dry ice bath under an argon stream, 1.5 mol / l tertiary butyl is added. 92 ml of a lithium pentane solution was added dropwise. Immediately after the dropwise addition, 70 ml of a 1.0 mol / l zinc chloride diethyl ether solution was added dropwise. After reacting in an acetone-dry ice bath for 1 hour, at 0 ° C. for 2 hours, and at room temperature for 3 hours, 800 mg of tetrakis (triphenylphosphine) palladium (0) was added, and 19.6 g of 1-bromo-4-iodobenzene was added. Of THF solution was added dropwise. After reacting at room temperature for about 68 hours, 200 ml of ethyl acetate was added to the reaction solution, and the mixture was washed once with 100 ml of 10% ammonia water and twice with 100 ml of distilled water, and the organic layer was concentrated. The residue was separated by silica gel column chromatography (developing solvent: ethyl acetate / hexane), and the solvent was distilled off to obtain 9.6 g of 2- (4-bromophenyl) pyridine.
[0047]
<Synthesis Reference Example 2> Synthesis of boric acid compound having poly (2,5-dibutoxy-1,4-phenylene) having Mw of 3400
A reaction vessel was charged with 13.8 g of 2,5-dibutoxy-1-bromo-4-phenylboric acid, 80 ml of a 1 mol / l aqueous solution of potassium carbonate, 200 ml of THF, 400 mg of tetrakis (triphenylphosphine) palladium (0), and an argon gas flow. Then, the mixture was stirred at 60 ° C. After 20 minutes, 4.9 g of phenylboric acid was added, and the mixture was further stirred at the same temperature for 8 hours to complete the reaction. The reaction solution was added dropwise to 400 ml of 1 mol / l hydrochloric acid, and the resulting precipitate was collected by filtration and washed with 400 ml of distilled water. This precipitate was dissolved in about 10 ml of dichloromethane, and purified by silica gel column chromatography (developing solvent: ethyl acetate / hexane). The solution of the target fraction was concentrated to obtain 7.2 g of a boric acid compound having poly (2,5-dibutoxy-1,4-phenylene) (hereinafter abbreviated as “boric acid compound (B)”). . The boric acid compound (B) was measured for molecular weight distribution in terms of polystyrene using gel permeation chromatography (hereinafter abbreviated as “GPC”), and found to have a Mw of 3400 and a number average molecular weight (hereinafter “Mn”). Mn / Mn was 1.36.
[0048]
<Synthesis Reference Example 3> Synthesis of boric acid compound having poly (2,5-dibutoxy-1,4-phenylene) having Mw of 1600
A reaction vessel was charged with 13.8 g of 2,5-dibutoxy-1-bromo-4-phenylboronic acid, 80 ml of a 1 mol / l aqueous solution of potassium carbonate, 200 ml of toluene, and 400 mg of tetrakis (triphenylphosphine) palladium (0), and charged with argon. The mixture was stirred at 95 ° C. in an air stream, and after 42 hours, 4.88 g of phenylboric acid was added, and the mixture was further stirred at the same temperature for 8 hours to complete the reaction. Thereafter, the same post-treatment process as in Synthesis Reference Example 2 was performed, and boric acid containing poly (2,5-dibutoxy-1,4-phenylene) having Mw of 1600, Mn of 1400, and Mw / Mn of 1.14 was obtained. 3.3 g of a compound (hereinafter abbreviated as "boric acid compound (C)") was obtained.
[0049]
<Synthesis Reference Example 4> Synthesis of 2-phenylpyridine having a π-conjugated chain
In a reaction vessel, 0.7 g of 2- (4-bromophenyl) pyridine obtained in Synthesis Reference Example 1, 4.4 g of boric acid compound (B) obtained in Synthesis Reference Example 2, 200 mL of THF, and 1 mol / l potassium carbonate An aqueous solution (40 ml) and tetrakis (triphenylphosphine) palladium (0) (35 mg) were charged, and the mixture was stirred at 60 to 65 ° C for 24 hours under an argon stream. The organic layer and the aqueous layer of the reaction solution are separated, and the organic layer is dried and concentrated, and then purified by silica gel column chromatography (developing solvent: dichloromethane / hexane) to obtain 2-phenyl having a polyparaphenylene derivative as a π-conjugated chain. 3.5 g of a pyridine derivative (hereinafter abbreviated as "pyridine derivative (D)") was obtained. When the molecular weight distribution of this compound in terms of polystyrene was measured using GPC, Mw was 3,600, Mn was 2,600, and Mw / Mn was 1.38.
[0050]
(1H-NMR spectrum data: CDCl3, 300MHz)
8.7 ppm (d, 1H, N-CH=), 8.1 ppm (d, 2H),
7.8 ppm (m, 4H), 7.6 ppm (d, 2H), 7.4 ppm (m, 2H),
7.3 ppm (d, 1H), 7.2 ppm (m, 1H),
7.0-7.1 ppm (m, 26H), 3.9 ppm (t, 52H, O-CH 2 −),
6-1.7 ppm (m, 52H,-CH 2 −),
4-1.5 ppm (m, 52H,-CH 2 −),
0.9-1.0 ppm (t, 78H,-CH 3 )
[0051]
<Synthesis Reference Example 5> Synthesis of 2-phenylpyridine having a π-conjugated chain
The same operation as in Synthesis Reference Example 4 was performed except that 1.9 g of the boric acid compound (C) was used instead of 4.4 g of the boric acid compound (B) in Synthesis Reference Example 4. 1600, Mw / Mn was 1.18, and 1.4 g of a 2-phenylpyridine derivative (hereinafter abbreviated as “pyridine derivative (E)”) having a polyparaphenylene derivative as a π-conjugated chain was obtained.
[0052]
(1H-NMR spectrum data: CDCl3, 300MHz)
8.7 ppm (d, 1H, N-CH=), 8.1 ppm (d, 2H),
7.8 ppm (m, 4H), 7.6 ppm (d, 2H), 7.4 ppm (m, 2H),
7.3 ppm (d, 1H), 7.2 ppm (m, 1H),
7.0-7.1 ppm (m, 6H), 3.9 ppm (t, 12H, O-CH 2 −),
6-1.7 ppm (m, 12H,-CH 2 −),
−1.5 ppm (m, 12H, −CH 2 −),
0.9-1.0 ppm (t, 18H,-CH 3 )
[0053]
<Synthesis Example 1> 2-phenylpyridine derivative having a π-conjugated chain and iridium complex (A-1) having 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-2,4-pentanedione as a ligand Synthesis of
1.8 g of the pyridine derivative (D) obtained in Synthesis Reference Example 4, 71 mg of iridium chloride (III) trihydrate, 20 ml of 2-methoxyethanol, and 5 ml of water were charged, and the mixture was heated at 120 ° C. for 6 hours under a nitrogen stream. Stirred. After cooling to room temperature, 50 ml of 1 mol / l hydrochloric acid was added, and the precipitated solid was separated by filtration. Purified by silica gel column chromatography (developing solvent: dichloromethane), tetrakis (2-phenylpyridine-C2, N ') (μ-dichloro) diiridium derivative as a yellow solid. Next, 500 mg of the obtained yellow solid, 55 mg of 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-2,4, -pentanedione, 0.05 ml of a sodium methoxide methanol solution (28 wt%) and 20 ml of chloroform were added. Mix and heat to reflux for 3 hours. After cooling to room temperature, the reaction solution was purified by silica gel column chromatography (developing solvent: dichloromethane / hexane), and the pyridine derivative (D) represented by the formula (3) and 1,1,1,5,5,5- 190 mg of an iridium complex (A-1) having hexafluoro-2,4, -pentanedione as a ligand was obtained. When the molecular weight distribution of this compound in terms of polystyrene was measured using GPC, Mw was 6,800, Mn was 5,200, and Mw / Mn was 1.31.
[0054]
(1H-NMR spectrum data: CDCl3, 300MHz)
7.9 ppm (d, 2H, N-CH=), 7.6-7,8 ppm (m, 10H),
7.4-7.5 ppm (m, 6H,), 7.3 ppm (d, 2H),
6.9-7.1 ppm (m, 50H),
3.9 ppm (m, 100H, O-CH 2 ),
1.6-1.7 ppm (m, 100H,-CH 2 −),
1.4-1.5 ppm (m, 100H,-CH 2 −),
0.9-1.0 ppm (m, 160H,-CH 3 )
[0055]
Embedded image
[0056]
<Synthesis Example 2> 2-phenylpyridine derivative having a π-conjugated chain and iridium complex having 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-2,4-pentanedione as a ligand (A-2) Synthesis of
A pyridine derivative represented by the formula (4) was obtained by performing the same operation as in Synthesis Example 1 except that 0.7 g of the pyridine derivative (E) was used instead of 1.8 g of the pyridine derivative (D) in Synthesis Example 1. (E) and 120 mg of an iridium complex (A-2) having 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-2,4, -pentanedione as a ligand were obtained. When the molecular weight distribution of this compound in terms of polystyrene was measured using GPC, Mw was 2,600, Mn was 2,100, and Mw / Mn was 1.24.
[0057]
(1H-NMR spectrum data: CDCl3, 300MHz)
7.9 ppm (d, 2H, N-CH=),
7.6-7,8 ppm (m, 10H),
7.4-7.5 ppm (m, 6H,), 7.3 ppm (d, 2H),
6.9-7.1 ppm (m, 12H),
3.9 ppm (m, 24H, O-CH 2 −),
1.6-1.7 ppm (m, 24H,-CH 2 −),
1.4-1.5 ppm (m, 24H,-CH 2 −),
0.9-1.0 ppm (m, 36H,-CH 3 )
[0058]
Embedded image
[0059]
<Example 1>
On one side, an ITO electrode layer having a thickness of 100 nm has an area of 20 mm × 20 mm and a thickness of 1.1 mm. A glass plate “1737” manufactured by Corning Incorporated has a poly (N- A 1,2,2-trichloroethane solution of 20 g / L of vinyl carbazole) (Mw: 700,000) was applied by spinning at 1700 rpm for 10 seconds using a spin coater, and then applied at 110 ° C. under reduced pressure for 2 hours. After drying, a hole transport layer having a thickness of 20 nm was provided.
8.4 mg of the iridium complex (A-1) obtained in Synthesis Example 1 and poly (2- (6-cyano-6-methylheptyloxy) having a Mw of 100,000 as a charge transport material were formed on the hole transport layer. Using a spin coater, a solution obtained by dissolving 31.6 mg of -1,4-phenylene (hereinafter abbreviated as “CN-PPP”) in 2 ml of a mixed solution of 1,1,2-trichloroethane and toluene was used. After coating at 2000 revolutions / minute for 10 seconds, it was dried under vacuum at 110 ° C. for 2 hours to form a light emitting layer having a thickness of 100 nm, and the concentration of iridium atoms in the obtained light emitting layer was 0.59%. .
After masking the thus obtained glass plate on which the ITO, the hole transport layer, and the light emitting layer are laminated in order so that the light emitting area is 2 mm × 2 mm, calcium is applied at a speed of 1.0 nm / sec. Aluminum was vacuum-deposited at a rate of 0.5 nm / sec so as to have a thickness of 10 nm and a thickness of 150 nm in this order to obtain an organic EL device (F).
[0060]
In a nitrogen gas atmosphere, the negative electrode and the positive electrode of the organic EL element (F) were connected to a Keithley “237 High Voltage Source Measure Unit”, and a voltage was applied between both electrodes to obtain a current density. -Voltage characteristics were measured. Further, the luminance of the organic EL element (F) was measured using a color luminance meter “BM-7” manufactured by Topcon Corporation, and the organic EL element was measured using a fluorometer “F-4500” manufactured by Hitachi, Ltd. The emission spectrum of (F) was measured. The emission wavelength λmax, the maximum brightness, and the external quantum efficiency were calculated from the current density / voltage / luminance characteristics and the emission spectrum. As a result, the organic EL element (F) emits green light having an emission wavelength λmax of 526 nm and a maximum luminance of 3800 cd / m.2And the external quantum efficiency was 1.97%.
[0061]
<Example 2>
Instead of the light emitting layer in Example 1, 3.2 mg of the iridium complex (A-2) obtained in Synthesis Example 2 and 36.8 mg of CN-PPP were added to 2 ml of a mixed solution of 1,1,2-trichloroethane and toluene. An organic EL device (G) was obtained in the same manner as in Example 1, except that the light emitting layer was provided using the dissolved solution. The concentration of iridium atoms in the light emitting layer was 0.59%. The organic EL element (G) was evaluated in the same manner as in Example 1. As a result, the organic EL element (G) emitted green light having an emission wavelength λmax of 526 nm and had a maximum luminance of 4300 cd / m.2And the external quantum efficiency was 2.05%.
[0062]
<Example 3>
Instead of the light emitting layer in Example 1, a solution prepared by dissolving 21 mg of the iridium complex (A-1) obtained in Synthesis Example 1 and 19 mg of CN-PPP in 2 ml of 1,1,2-trichloroethane was used. An organic EL device (H) was obtained in the same manner as in Example 1, except that the number of revolutions was set to 1500 and the light emitting layer was provided. The concentration of iridium atoms in the light emitting layer was 1.5%. The organic EL device (H) was evaluated in the same manner as in Example 1. As a result, the organic EL device (H) emitted green light having an emission wavelength λmax of 526 nm and had a maximum luminance of 6800 cd / m 2.2And the external quantum efficiency was 2.12%.
[0063]
<Example 4>
A solution obtained by dissolving 40 mg of the iridium complex (A-2) obtained in Synthesis Example 2 in 2 ml of 1,1,2-trichloroethane was used in place of the light emitting layer in Example 1, and the rotation number of the spin coater was set to 1000. An organic EL device (I) was obtained in the same manner as in Example 1 except that the light emitting layer was provided. The concentration of iridium atoms in the light emitting layer was 7.4%. As a result of evaluating the organic EL element (I) in the same manner as in Example 1, the organic EL element (I) emitted green light having an emission wavelength λmax of 526 nm and had a maximum luminance of 8300 cd / m 2.2And the external quantum efficiency was 1.86%.
[0064]
<Comparative Example 1>
Instead of the light emitting layer in Example 1, a solution obtained by dissolving 0.8 mg of iridium tris (2-phenylpyridine) and 39.2 mg of CN-PPP in 2 ml of 1,1,2-trichloroethane was used. The organic EL device (J) was obtained by performing the same operation as in Example 1 except that the light emitting layer was provided at 2100 rotations. The concentration of iridium atoms in the light emitting layer was 0.59%. The organic EL element (J) was evaluated in the same manner as in Example 1. As a result, the organic EL element (G) emitted green light having an emission wavelength λmax of 513 nm and had a maximum luminance of 750 cd / m.2, The external quantum efficiency was 1.65%, and the maximum luminance and the external quantum efficiency were lower than those of the organic EL devices (F) to (I) obtained in Examples 1 to 4.
[0065]
<Comparative Example 2>
Instead of the light emitting layer in Example 1, a solution prepared by dissolving 2.0 mg of iridium tris (2-phenylpyridine) and 38 mg of CN-PPP in 2 ml of 1,1,2-trichloroethane was used. An organic EL element (K) was obtained in the same manner as in Example 1, except that the light emitting layer was provided as rotation. The concentration of iridium atoms in the light emitting layer was 1.5%. As a result of evaluating the organic EL device (K) in the same manner as in Example 1, the organic EL device (K) emitted green light having an emission wavelength λmax of 513 nm and a maximum luminance of 1180 cd / m.2, The external quantum efficiency was 1.24%, and the maximum luminance and the external quantum efficiency were lower than those of the organic EL devices (F) to (I) obtained in Examples 1 to 4. Further, the external quantum efficiency of the organic EL device (K) was lower than that of the organic EL device (J) of Comparative Example 1, and the effect of concentration quenching was recognized.
[0066]
<Comparative Example 3>
Instead of the light emitting layer in Example 1, a solution in which 10 mg of iridium tris (2-phenylpyridine) and 30 mg of CN-PPP were dissolved in 2 ml of 1,1,2-trichloroethane was used, and the number of revolutions of the spin coater was 1,900. An organic EL device (L) was obtained in the same manner as in Example 1, except that the light emitting layer was provided as rotation. The concentration of iridium atoms in the light emitting layer was 7.4%. As a result of visual observation of the organic EL device (L), crystals of iridium tris (2-phenylpyridine) were precipitated and a uniform light emitting layer was not formed. The organic EL device (L) was evaluated in the same manner as in Example 1. However, when a voltage was applied, the device was short-circuited, and the maximum luminance and external quantum efficiency could not be measured.
[0067]
Table 1 shows the results of Examples 1 to 4 and Comparative Examples 1 to 3. The results of Examples 1 to 4 were higher in both the maximum luminance and the luminous efficiency than the results of Comparative Examples 1 to 3.
[Table 1]
(Table 1)
[0068]
In Table 1, Ir (ppy)3Represents iridium tris (2-phenylpyridine).
[0069]
【The invention's effect】
The luminescent material of the present invention has a green luminescent color using a 2-phenylpyridine derivative having a π-conjugated chain and 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-2,4-pentanedione as a ligand. Consists of an iridium (III) complex. The iridium (III) complex emits green light of high color purity and has a π-conjugated chain having a hole or electron transport function as a substituent, so that the hole or electron transport within a molecule or between molecules is performed. And the holes injected from the positive electrode layer or the electrons injected from the negative electrode can be efficiently transported to the iridium (III) complex. In addition, since the π-conjugated chain is amorphous, the iridium (III) complex having these as a substituent has low crystallinity and is unlikely to form an aggregate, so that concentration quenching hardly occurs. Further, since it is easily dissolved in a solvent, the light emitting layer can be obtained by a wet film forming method.
In the organic EL device of the present invention, concentration quenching hardly occurs, and even if time passes, the iridium (III) complex does not crystallize and precipitate in the light emitting layer, and the device is hardly deteriorated.