しかし、この定着装置においては、
1)定着ベルト203の弾性層に用いられるシリコーンゴム層の熱伝導率が小さく、定着ヒータ204から定着ベルト表面までに多くの部材があることにより定着ヒータ204へ通電した後に、定着ベルト温度が上昇するまでの、いわゆる熱応答性が悪いこと。
2)定着ベルト203の温度を検出する温度検知手段209の位置が定着ニップ部206から離れていることによる定着ニップ部の検知タイミングの遅れがあること。
の2つの理由によるむだ時間(タイムラグ)が比較的大きい。PID制御に代表されるフィードバック制御は、制御量の変動を検知し、それに対応した操作量を加えることによって成り立っているため、制御量の変動検知後、投入電力を加えてから定着ベルト203の温度が適切な温度になるまでに時間がかかる。よって、オーバーシュートやアンダーシュートを起こしやすく、大きなハンチング(温度リップル)を生じやすい。
この問題は特に、a.立ち上げ直後、b.通紙開始時、において顕著であり、これらの問題の対策として、
a.定着装置を立ち上げる際に、定着装置の温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置の温度を安定させるための第二電力レベルの二段階以上の電力レベルを有し、所定時間を定着装置の蓄熱具合を考慮した必要電力値にした後にフィードバック制御に移行する方法
b.通紙開始時の記録材Pの突入タイミングとあわせて、一定時間PID制御を行わず、定着ヒータ16に投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、記録材Pの熱的特性や、定着装置の蓄熱具合を考慮した略必要電力値に補正する方法
が非常に効果的であることがわかっている。
上記のような制御を行う場合、立ち上げ時の第二電力レベルの所定電力値や、通紙開始時に補正する所定電力値は、それぞれ、立ち上げ時に定着装置の温度を目標温度で安定させる為に必要な電力値や、通紙時に必要となる電力値に略等しい必要がある。この所定電力値が必要な電力値と大きく異なる場合には、温度が目標温度と離れてしまい、温度リップルが大きくなってしまう。
本定着装置においては、電力の出力制御として波数制御もしくは位相制御が用いられており、何W出力するという形ではなく、最大供給電力(フル電力)の何%の出力という形で制御される。つまりは温調制御上必要となる電力値を最大供給電力の何%という形で制御しなければならない。
一方、定着ヒータ204への入力電圧のばらつきや定着ヒータ204の抵抗値のばらつきにより、最大供給電力はばらついてしまう。表1に120V圏内における本定着装置での電圧、抵抗、電力のばらつきについて示す。ただし、ここでは入力電圧の範囲が定格電圧の85〜110%、抵抗のばらつきが±7%とした。
このとき、定着ヒータ204への最大供給電力のばらつきは747Wから1441Wまで、およそ2倍ものばらつきを持つことになる。ここで、先ほど述べたaもしくはbの制御を行うにあたって、最大供給電力が中心値となる1107Wであり、所定電力として30%の出力を行う場合には、332Wが出力されることとなるが、これに対して、電力下限である747Wのときには所定電力が224W、1441Wのときには所定電力が432Wとなり、例えば所定電力として332Wの投入が最適である条件において、上記最大供給電力のばらつきに伴う所定電力のばらつきにより、所定電力の入力時に大きな温度リップルを生じてしまうことがあった。
具体的には最大供給電力の上下限においては、温度リップルが約12℃となってしまい、試験に用いたインライン型の電子写真方式カラー画像形成装置においては出力された印刷物のグロスは単色で約7変動し、また、2次色では約11変動し、画質の低下を招いた(表2)。また、記録材や画像パターンによっては大きな温度変動に伴い、ホットオフセットや定着性の悪化などの定着不良が生じてしまうという問題を生じた。
最大供給電力が大きい場合には、立ち上げ時のオーバーシュートが過度に大きくなり、使用を重ねるとより高温での動作が繰り返されることにより、定着装置の寿命が短くなってしまうという問題も生じた。また、過度のオーバーシュートは消費電力の観点から見てもロスが大きく不必要に電力を消費するという無駄も生じる。
ここでは、120V圏において定着ヒータ204の抵抗が13.0Ωとして説明したが、定格電圧が127Vの地域においては、同じ抵抗値を持つ定着ヒータを用いた場合、110%までのばらつきと抵抗値のばらつきを考慮すると、定着ヒータ204への最大供給電力は1614Wまで考慮する必要がある。
さらに、100V圏に使用することを考えた場合、定格電圧は100Vの85%までのばらつきと抵抗値のばらつきを考慮すると、定着ヒータ204への最大供給電力は519Wまで考慮する必要がある。
以上を総合すると、定着ヒータ204への最大供給電力のばらつきは519Wから1614Wまで、およそ3倍ものばらつきを持つことになる。
この場合においては、同様の理由から温度制御はさらに不安定になり、グロス変動による画質の更なる低下、また、記録材や画像パターンによっては、ホットオフセットや定着性の悪化などの定着不良が更に悪化するという問題を生じる。また、最大供給電力が大きい場合には、立ち上げ時のオーバーシュートが更に大きくなり、使用を重ねるとより高温での動作が繰り返されることにより、定着装置の寿命が更に短くなってしまい、また、消費電力も更に大きくなってしまうという問題を生じる。
これに対して、ヒータを各地域の定格電圧にあわせて、定着ヒータ204の抵抗値を分ける方法があるが、この場合には、定着ヒータのコストや管理コストが上がるだけでなく、さらには仕向け地域を越えて、異なる仕向け地域で使用した場合や、誤って異なる仕向けが行われた場合には、上述した問題の発生に伴い、ユーザーに不満を与えることが懸念されるばかりでなく、結果としてサービス費用の増大につながることが懸念される。
ここで、仮に上述したようにヒータを仕分けしたとしても、そもそもの各地域における最大供給電力の上下限における問題は解決しきれない。つまり、定着装置の使用地域には、電源のかなり不安定な地域もあり、入力電力の範囲が定格電圧から大きく異なる場合も存在し、このような場合においても、結局同様の問題を生じることとなる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、定着部材として弾性層を有する定着ベルトを用いた場合においても、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行うことにより、以下の課題を解決することを目的とする。
1)入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができる定着装置および該定着装置を搭載した画像形成装置の提供。
2)入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、耐久性が高く高寿命な定着装置、および該定着装置を搭載した画像形成装置の提供。
3)入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、低消費電力である定着装置、および該定着装置を搭載した画像形成装置の提供。
4)定格電圧の異なる地域においても同一の定着装置を提供することによりコストの削減とサービス費用の削減を可能にする。
本発明は下記の構成を特徴とする定着装置および画像形成装置である。
(1)少なくとも、加熱体と、前記加熱体に電力を供給する電力供給部と、少なくとも1つ以上の温度検出手段と、記録材と共に移動する第一の回転体と、前記記録材と圧接部を形成し、かつ、前記記録材を搬送する第二の回転体と、を有し、前記温度検出手段によって検知された温度を基に前記電力供給部から前記加熱体に供給する電力をフィードバック制御することで前記第一の回転体の温度制御を行い、前記圧接部で画像を担持した記録材を挟持搬送させて加熱する定着装置において、
前記加熱体に供給する加熱に必要な電力は、前記定着装置の安定動作に必要な電力値と略等しい所定電力で補正され、
前記所定電力の出力時には、定着装置への最大供給電力値に基づき、加熱体に供給する通電電力を制御することを特徴とする定着装置。
(2)無端状の第一の回転体と、
前記第一の回転体に圧接される第二の回転体であって、画像を担持した記録材を前記第一,第二の回転体の圧接部で挟持搬送させる第二の回転体と、
電力供給を受けることにより、前記第一の回転体の局所的な部位の温度を上昇させる温度上昇手段と、
前記第一の回転体の回転方向に関して前記圧接部とは異なる位置の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段によって検知された温度に基づいて、前記温度上昇手段に供給する電力をフィードバック制御する第一制御手段と、
所定の通電量で通電したときに前記温度検知手段によって検知される昇温速度に基づいて、前記温度上昇手段に供給すべき電力に応じた設定値を可変設定する設定手段と、
当該定着装置を立ち上げるとき、前記温度検出手段の検出温度が目標温度に到達するタイミング近傍又は記録材の前記圧接部への突入タイミング近傍で、前記設定手段により設定された設定値に応じた電力を一時的に前記温度上昇手段に供給する第二制御手段と、を有することを特徴とする定着装置。
(3)第一の回転体において、回転体外周の移動速度をV、前記圧接部から温度検知位置までの長さをa、前記第一の回転体の外周長をLとしたときに、第二制御手段の行われる時間tは、t≦(a+L)/Vで表されることを特徴とする(2)に記載の定着装置。
(4)前記温度上昇手段は、圧接部近傍に設けられ、通電により発熱するヒータ、又は通電により磁界を発生させることにより、前記第一の回転体に渦電流を発生させるコイルを有することを特徴とする(2)または(3)に記載の定着装置。
(5)前記所定の通電量で通電したときに前記温度検知手段によって検知される昇温速度に応じた値、前記設定手段により設定された設定値を記憶する不揮発性メモリを有することを特徴とする(2)または(3)に記載の定着装置。
(6)記録材上に画像を形成するとともに、(1)から(5)の何れか1つに記載された定着装置を用いて記録材の画像を定着することを特徴とする画像形成装置。
(7)さらに、定着装置の蓄熱具合を判断する第一の判断手段を有し、前記設定手段は、前記第一の判断手段による判断結果、及び所定の通電量で通電したときに前記温度検知手段によって検知される昇温速度に基づいて、前記温度上昇手段に供給すべき電力に応じた設定値を可変設定することを特徴とする(2)または(3)に記載の定着装置。
(8)さらに、記録材の種類を判断する第二の判断手段を有し、前記設定手段は、前記第二の判断手段による判断結果、及び所定の通電量で通電したときに前記温度検知手段によって検知される昇温速度に基づいて、前記温度上昇手段に供給すべき電力に応じた設定値を可変設定することを特徴とする(2)または(3)に記載の定着装置。
(9)無端状の第一の回転体と、
前記第一の回転体に圧接される第二の回転体であって、画像を担持した記録材を前記第一,第二の回転体の圧接部で挟持搬送させる第二の回転体と、
電力供給を受けることにより、前記第一の回転体の局所的な部位の温度を上昇させる温度上昇手段と、
前記第一の回転体の回転方向に関して前記圧接部とは異なる位置の温度を検知する第一温度検知手段と、
前記圧接部近傍に設けられる第二温度検知手段と、
前記第一温度検知手段によって検知された温度に基づいて、前記温度上昇手段に供給する電力をフィードバック制御する第一制御手段と、
所定の通電量で通電したときに前記第二温度検知手段によって検知される昇温速度に基づいて前記温度上昇手段に供給すべき電力に応じた設定値を可変設定する設定手段と、
当該定着装置を立ち上げるとき、前記温度検出手段の検出温度が目標温度に到達するタイミング近傍又は記録材の前記圧接部への突入タイミング近傍で、前記設定手段により設定された設定値に応じた電力を一時的に前記温度上昇手段に供給する第二制御手段と、を有することを特徴とする定着装置。
(10)第一の回転体において、回転体外周の移動速度をV、前記圧接部から温度検知位置までの長さをa、前記第一の回転体の外周長をLとしたときに、第二制御手段の行われる時間tは、t≦(a+L)/Vで表されることを特徴とする(9)に記載の定着装置。
(11)前記温度上昇手段は、圧接部近傍に設けられ、通電により発熱するヒータ、又は通電により磁界を発生させることにより、前記第一の回転体に渦電流を発生させるコイルを有することを特徴とする(9)または(10)に記載の定着装置。
(12)前記設定手段により設定される設定値を記憶する不揮発性メモリを有することを特徴とする(9)または(10)に記載の定着装置。
(13)記録材上に画像を形成するとともに、(9)から(12)の何れか1つに記載された定着装置を用いて記録材の画像を定着することを特徴とする画像形成装置。
(14)さらに、定着装置の蓄熱具合を判断する第一の判断手段を有し、前記設定手段は、前記第一の判断手段による判断結果、及び所定の通電量で通電したときに前記温度検知手段によって検知される昇温速度に基づいて、前記温度上昇手段に供給すべき電力に応じた設定値を可変設定することを特徴とする(9)または(10)に記載の定着装置。
(15)さらに、記録材の種類を判断する第二の判断手段を有し、前記設定手段は、前記第二の判断手段による判断結果、及び所定の通電量で通電したときに前記温度検知手段によって検知される昇温速度に基づいて、前記温度上昇手段に供給すべき電力に応じた設定値を可変設定することを特徴とする(9)または(10)に記載の定着装置。
(1)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータ(加熱体)の抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
定着部材として弾性層を有する定着ベルトを用いた場合においても、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行うことにより、画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ること、耐久性が高く高寿命なこと、低消費電力であることを達成し、定格電圧の異なる地域においても同一の定着装置を提供することによりコストの削減とサービス費用の削減を可能にすることができる。
(2)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータ(加熱体)の抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(3)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータ(加熱体)の抵抗値のばらつきによらず、定着部材の更なる正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(4)の発明によれば、さらに、オンデマンド性を有する定着装置においても、本発明を適用することができ、入力電圧のばらつきや定着ヒータ(加熱体)の抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(5)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。また、更に、電源のOff−On前後においても安定した温調制御を保つことができる。
(6)の発明によれば、上記(1)〜(5)の何れかの発明の効果を有する定着装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
(7)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、また、更に、定着装置の蓄熱具合によらず、記録材の突入時においても定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(8)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、また、更に、記録剤の種類によらず、記録材の突入時においても定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(9)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、また、記録剤によらず、記録材の突入時においても定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(10)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータ(加熱体)の抵抗値のばらつきによらず、定着部材の更なる正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(11)の発明によれば、さらに、オンデマンド性を有する定着装置においても、本発明を適用することができ、入力電圧のばらつきや定着ヒータ(加熱体)の抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(12)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。また、更に、電源のOff−On前後においても安定した温調制御を保つことができる。
(13)の発明によれば、上記(9)〜(12)の何れかの発明の効果を有する定着装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
(14)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、また、更に、定着装置の蓄熱状態によらず、記録材の突入時においても定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(15)の発明によれば、入力電圧のばらつきや定着ヒータの抵抗値のばらつきによらず、また、記録剤の種類によらず、記録材の突入時においても定着部材の正確な温調制御を行い、その結果画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得られ、また、低消費電力かつ耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
(1)画像形成装置例
図1は、本発明の実施例1に係るカラー画像形成装置を示す概略構成図である。本例の画像形成装置は電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。
この画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部1Yと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部1Mと、シアン色の画像を形成する画像形成部1Cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部1Bkの4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えており、これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。
各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkには、それぞれ感光ドラム2a、2b、2c、2dが設置されている。各感光ドラム2a、2b、2c、2dの周囲には、帯電ローラ3a、3b、3c、3d、現像装置4a、4b、4c、4d、転写ローラ5a、5b、5c、5d、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dがそれぞれ設置されており、帯電ローラ3a、3b、3c、3dと現像装置4a、4b、4c、4d間の上方には露光装置7a、7b、7c、7dがそれぞれ設置されている。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーが収納されている。
画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの各感光ドラム2a、2b、2c、2dの各1次転写部Nに、転写媒体としての無端ベルト状の中間転写体40が当接している。中間転写ベルト40は、駆動ローラ41、支持ローラ42、2次転写対向ローラ43間に張架されており、駆動ローラ41の駆動によって矢印方向(時計方向)に回転(移動)される。
1次転写用の各転写ローラ5a、5b、5c、5dは、各1次転写ニップ部Nにて中間転写ベルト40を介して各感光ドラム2a、2b、2c、2dに当接している。
2次転写対向ローラ43は、中間転写ベルト40を介して2次転写ローラ44と当接して、2次転写部Mを形成している。2次転写ローラ44は、中間転写ベルト40に接離自在に設置されている。
中間転写ベルト40の外側の駆動ローラ41近傍には、中間転写ベルト40の表面に残った転写残トナーを除去して回収するベルトクリーニング装置45が設置されている。
また、2次転写部Mの記録材Pの搬送方向下流側には定着装置12が設置されている。
また、この画像形成装置内には環境センサ50とメディアセンサ51が設置されている。
画像形成動作開始信号(プリント開始信号)が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの各感光ドラム2a、2b、2c、2dは、それぞれ帯電ローラ3a、3b、3c、3dによって一様に本実施例では負極性に帯電される。
そして、露光装置7a、7b、7c、7dは、入力されるカラー色分解された画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光を帯電された各感光ドラム2a、2b、2c、2d上にそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。
そして、まず静電潜像が形成された感光ドラム2a上に、感光ドラム2aの帯電極性(負極性)と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4aによりイエローのトナーを感光体表面の帯電電位に応じて静電吸着させることで静電潜像を顕像化し、現像像とする。このイエローのトナー像は、1次転写部Nにて1次転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された転写ローラ5aにより、回転している中間転写ベルト40上に1次転写される。イエローのトナー像が転写された中間転写ベルト40は画像形成部1M側に回転される。
そして、画像形成部1Mにおいても、前記同様にして感光ドラム2bに形成されたマゼンタのトナー像が、中間転写ベルト40上のイエローのトナー像上に重ね合わせて、1次転写部Nにて転写される。
以下、同様にして中間転写ベルト40上に重畳転写されたイエロー、マゼンタのトナー像上に、画像形成部1C、1Bkの感光ドラム2c、2dで形成されたシアン、ブラックのトナー像を各1次転写部Nにて順次重ね合わせて、フルカラーのトナー像を中間転写ベルト40上に形成する。
そして、中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー像先端が2次転写部Mに移動されるタイミングに合わせて、レジストローラ46により記録材(転写材)Pを2次転写部Mに搬送して、この記録材Pに、2次転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された2次転写ローラ44によりフルカラーのトナー像が一括して2次転写される。フルカラーのトナー像が形成された記録材Pは定着装置12に搬送されて、定着ベルト20と加圧ローラ22間の定着ニップ部でフルカラーのトナー像を加熱、加圧して記録材P表面に溶融定着した後に外部に排出され、画像形成装置の出力画像となる。そして、一連の画像形成動作を終了する。
尚、画像形成装置内には環境センサ50を有しており、帯電、現像、1次転写、2次転写のバイアスや定着条件は画像形成装置内の雰囲気環境(温度、湿度)に応じて変更可能な構成となっており、記録材Pに形成されるトナー像濃度の調整のためや、最適な転写、定着条件を達成するために用いられる。また、画像形成装置内にはメディアセンサ51を有しており、記録材Pの判別を行うことによって、転写バイアスや定着条件は記録材に応じて変更可能な構成となっており、記録材Pに対する最適な転写、定着条件を達成するため用いられる。
上記した1次転写時において、感光ドラム2a、2b、2c、2d上に残留している1次転写残トナーは、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dによって除去されて回収される。また、2次転写後に中間転写ベルト40上に残った2次転写残トナーは、ベルトクリーニング装置45によって除去されて回収される。
(2)定着装置12
図2は本実施例における定着装置12の概略構成模型図である。本例の定着装置12は、定着ベルト加熱方式、加圧用回転体駆動方式(テンションレスタイプ)の加熱装置である。
1)装置12の全体的構成
20は第一の回転体(第一の定着部材)としての定着ベルトであり、ベルト状部材に弾性層を設けてなる円筒状(エンドレスベルト状、スリーブ状)の部材である。この定着ベルト20は後記6)項で詳述する。
22は第二の回転体(第二の定着部材)としての加圧ローラである。17は加熱体保持部材としての、横断面略半円弧状樋型の耐熱性・剛性を有するヒータホルダ、16は加熱体(熱源)としての定着ヒータであり、ヒータホルダ17の下面に該ホルダの長手に沿って配設してある。定着ベルト20はこのヒータホルダ17にルーズに外嵌させてある。定着ヒータ16は本実施例では後記2)項で詳述するようなセラミックヒータである。
ヒータホルダ17は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂で形成し、定着ヒータ16を保持し、定着ベルト20をガイドする役割を果たす。本実施例においては、液晶ポリマーとして、デュポン社のゼナイト7755(商品名)を使用した。ゼナイト7755の最大使用可能温度は、約270℃である。
加圧ローラ22は、ステンレス製の芯金に、射出成形により、厚み約3mmのシリコーンゴム層を形成し、その上に厚み約40μmのPFA樹脂チューブを被覆してなる。この加圧ローラ22は芯金の両端部を装置フレーム24の不図示の奥側と手前側の側板間に回転自由に軸受保持させて配設してある。この加圧ローラ22の上側に、前記の定着ヒータ16・ヒータホルダ17・定着ベルト20等から成る定着ベルトユニットをヒータ16側を下向きにして加圧ローラ22に並行に配置し、ヒータホルダ17の両端部を不図示の加圧機構により片側98N(10kgf)、総圧196N(20kgf)の力で加圧ローラ22の軸線方向に附勢することで、定着ヒータ16の下向き面を定着ベルト20を介して加圧ローラ22の弾性層に該弾性層の弾性に抗して所定の押圧力をもって圧接させ、加熱定着に必要な所定幅の定着ニップ部27を形成させてある。加圧機構は、圧解除機構を有し、ジャム処理時等に、加圧を解除し、記録材Pの除去が容易な構成となっている。
18と19は第一と第二の温度検知手段としてのメインとサブの2つのサーミスタである。第一の温度検知手段としてのメインサーミスタ18は加熱体である定着ヒータ16に非接触に配置され、本実施例ではヒータホルダ17の上方において定着ベルト20の内面に弾性的に接触させてあり、定着ベルト20の内面の温度を検知する。第二の温度検知手段としてのサブサーミスタ19はメインサーミスタ18よりも熱源である定着ヒータ16に近い場所に配置され、本実施例では定着ヒータ16の裏面に接触させてあり、定着ヒータ16裏面の温度を検知する。
メインサーミスタ18は、ヒータホルダ17に固定支持させたステンレス製のアーム25の先端にサーミスタ素子が取り付けられ、アーム25が弾性揺動することにより、定着ベルト20の内面の動きが不安定になった状態においても、サーミスタ素子が定着ベルト20の内面に常に接する状態に保たれる。
図3に、本実施例の定着装置における、定着ヒータ16、メインサーミスタ18、サブサーミスタ19の位置関係をあらわす斜視模型図を示す。メインサーミスタ18は定着ベルト20の長手中央付近に、サブサーミスタ19は定着ヒータ16の端部付近に配設され、それぞれ定着ベルト20の内面、定着ヒータ16の裏面に接触するよう配置されている。
メインサーミスタ18、及びサブサーミスタ19は、その出力がそれぞれA/Dコンバータ64・65を介して制御回路部(CPU)21に接続され、制御回路部21は、メインサーミスタ18、サブサーミスタ19の出力をもとに、定着ヒータ16の温調制御内容を決定し、電力供給部(加熱手段)としてのヒータ駆動回路部28(図2・図4)によって定着ヒータ16への通電を制御する。
23と26は装置フレーム24に組付けた入り口ガイドと定着排紙ローラである。入り口ガイド23は、二次転写ニップを抜けた記録材Pが、定着ヒータ16部分における定着ベルト20と加圧ローラ22との圧接部である定着ニップ部27に正確にガイドされるよう、転写材を導く役割を果たす。本実施例の入り口ガイド23は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂により形成されている。
加圧ローラ22は駆動手段(図不示)により矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。この加圧ローラ22の回転駆動による該加圧ローラ22の外面と定着ベルト20との、定着ニップ部27における圧接摩擦力により円筒状の定着ベルト20に回転力が作用して該定着ベルト20がその内面側が定着ヒータ16の下向き面に密着して摺動しながらヒータホルダ17の外回りを矢印の方向に従動回転状態になる。定着ベルト20内面にはグリスが塗布され、ヒータホルダ17と定着ベルト20内面との摺動性を確保している。
加圧ローラ22が回転駆動され、それに伴って円筒状の定着ベルト20が従動回転状態になり、また定着ヒータ16に通電がなされ、該定着ヒータ16が昇温して所定の温度に立ち上げ温調された状態において、定着ニップ部27の定着ベルト20と加圧ローラ22との間に未定着トナー像を担持した記録材Pが入り口ガイド23に沿って案内されて導入され、定着ニップ部27において記録材Pのトナー像担持面側が定着ベルト20の外面に密着して定着ベルト20と一緒に定着ニップ部27を挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において、定着ヒータ16の熱が定着ベルト20を介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像tが記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。定着ニップ部27を通過した記録材Pは定着ベルト20から曲率分離され、定着排紙ローラ26で排出される。
2)メインサーミスタ18
メインサーミスタ18は図2,3に示すように、定着ベルト20の長手中央付近に配置され、定着ベルト20の内面に接触するよう配置されている。このメインサーミスタ18は、定着ニップ部の温度により近い温度である定着ベルト20の温度を検出する手段として用いている。よって、通常の動作においては、メインサーミスタ18の検知温度が目標温度になるよう、温調制御される。
3)サブサーミスタ19
サブサーミスタ19は図3に示すように、定着ヒータ16の端部付近に配設され、定着ヒータ16の裏面に接触するよう配置されている。このサブサーミスタ19は、加熱体である定着ヒータ16の温度を検出し、定着ヒータの温度が所定温度以上にならないようにモニターする、安全装置としての役割を果たしている。
また、サブサーミスタ19により、立ち上げ時の定着ヒータ16の温度のオーバーシュートや、端部の昇温をモニターし、例えば端部の昇温により定着ヒータ20の端部の温度が所定の温度を超えた場合には、それ以上に端部昇温が悪化しないようにスループットを落とす等の制御を行う為の判断に用いられる。
4)定着ヒータ16
熱源としての定着ヒータ16は、本実施例では、窒化アルミの基板上に、銀・パラジウム合金を含んだ導電ペーストをスクリーン印刷法によって均一な厚さの膜状に塗布することで抵抗発熱体を形成した上に耐圧ガラスによるガラスコートを施した、セラミックヒータを使用している。
図4はそのようなセラミックヒータの一例の構造模型図であり、(a)は一部切欠き表面模型図、(b)は裏面模型図、(c)は拡大横断面模型図である。
この定着ヒータ16は、
a.通紙方向と直交する方向を長手とする横長の窒化アルミ基板a、
b.上記の窒化アルミ基板aの表面側に長手に沿ってスクリーン印刷により線状あるいは帯状に塗工した、電流が流れることにより発熱する銀パラジウム(Ag/Pd)合金を含んだ導電ペーストの、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の抵抗発熱体層b、
c.上記の抵抗発熱体層bに対する給電パターンとして、同じく窒化アルミ基板aの表面側に銀ペーストのスクリーン印刷等によりパターン形成した、第1と第2の電極部c・d及び延長電路部e・f、
d.抵抗発熱体層bと延長電路部e・fの保護と絶縁性を確保するためにそれ等の上に形成した、定着ベルト20との摺擦に耐えることが可能な、厚み10μm程度の薄肉のガラスコートg、
e.窒化アルミ基板aの裏面側に設けたサブサーミスタ19
等からなる。
上記の定着ヒータ16は表面側を下向きに露呈させてヒータホルダ17に固定して支持させてある。
上記定着ヒータ16の第1と第2の電極部c・d側には給電用コネクタ30が装着される。ヒータ駆動回路部28から上記の給電用コネクタ30を介して第1と第2の電極部c・dに給電されることで抵抗発熱体層bが発熱して定着ヒータ16が迅速に昇温する。ヒータ駆動回路部28は制御回路部(CPU)21により制御される。
通常使用においては、加圧ローラ22の回転開始とともに、定着ベルト20の従動回転が開始し、定着ヒータ16の温度の上昇とともに、定着ベルト20の内面温度も上昇していく。定着ヒータ16への通電は、PID制御によりコントロールされ、定着ベルト20の内面温度、すなわち、メインサーミスタ18の検知温度が190℃になるように、入力電力が制御される。
5)定着ヒータ駆動回路部28
図5は定着手段の温度制御手段としての制御回路部(CPU)21と定着ヒータ駆動回路部28のブロック図である。上記定着ヒータ16の給電用電極部c・dは給電コネクタ(不図示)を介してこの定着ヒータ駆動回路部28に接続されている。
定着ヒータ駆動回路部28において、60は交流電源、61はトライアック、62はゼロクロス発生回路、21は制御回路部(CPU)である。トライアック61は制御回路部21により制御される。トライアック61は定着ヒータ16の発熱抵抗体層bに対する通電・遮断を行う。
交流電源60はゼロクロス検知回路62を介して制御回路部21にゼロクロス信号を送出する。制御回路部21はこのゼロクロス信号を基にトライアック61を制御する。このようにして定着ヒータ駆動回路部28から定着ヒータ16の発熱抵抗体層bに通電されることで、定着ヒータ16の全体が急速昇温する。
定着ベルト20の温度を検知するメインサーミスタ18と定着ヒータ16の温度を検知するサブサーミスタ19の出力はそれぞれA/Dコンバータ64・65を介して制御回路部(CPU)21に取り込まれる。
制御回路部21はメインサーミスタ18からの定着ヒータ16の温度情報をもとにトライアック61により定着ヒータ16に通電するAC電圧を位相、波数制御等により、ヒータ通電電力を制御して定着ヒータ16の温度が所定の制御目標温度(設定温度)に維持されるように制御する。
すなわち、メインサーミスタ18、サブサーミスタ19の温度は電圧値として制御回路部21でモニターされ、これにより定着ベルト20の温度が所定の設定温度に温調維持されるように、また定着ヒータの16が所定温度内で駆動されるように定着ヒータ16への通電電力の制御が行われる。
代表的な温度制御方式としてはPID制御が用いられる。また電力の制御法としては、波数制御や位相制御などがあるが、ここでは位相制御を用いて説明する。
すなわちメインサーミスタ18の温度を制御回路部21が2μsecごとに検知し、制御回路部21内で所望の温調温度に制御するようにPID制御にて定着ヒータ16への電力供給量を決定する。たとえば電力の指定を5%刻みで行うには、一般に電源から供給される交流波形の1半波にたいして5%刻みの通電角を用いて行われる。通電角はゼロクロス発生回路62にてゼロクロス信号を検知したときを起点にトライアック61をONするタイミングとして求められる。
6)定着ベルト20
本実施例において、定着ベルト20はベルト状部材に弾性層を設けてなる円筒状(エンドレスベルト状)の部材である。
具体的には、SUSにより、厚み30μmの円筒状に形成したエンドレスベルト(ベルト基材)上に、厚み約300μmのシリコーンゴム層(弾性層)を、リングコート法により形成した上に、厚み30μmのPFA樹脂チューブ(最表面層)を被覆してなる。このような構成で作成した定着ベルト20の熱容量を測定したところ、12.2×10−2J/cm2・℃(定着ベルト1cm2あたりの熱容量)であった。
a.定着ベルトの基層
定着ベルト20の基層にはポリイミドなどの樹脂を用いることも出来るが、ポリイミドよりもSUSやニッケルといった、金属のほうが、熱伝導率がおよそ10倍と大きく、より高いオンデマンド性を得られることから、本実施例においては、定着ベルト20の基層には、金属であるSUSを用いた。
b.定着ベルトの弾性層
定着ベルト20の弾性層には、比較的熱伝導率の高いゴム層を用いている。これはより高いオンデマンド性を得る為である。本実施例で用いた材質は比熱が約12.2×10−1J/g・℃である。
c.定着ベルトの離形層
定着ベルト20の表面には、フッ素樹脂層を設けることで、表面の離型性を向上し、定着ベルト20表面にトナーが一旦付着し、再度記録材Pに移動することで発生するオフセット現象を防止することができる。また、定着ベルト20の表面のフッ素樹脂層を、PFAチューブとすることで、より簡便に、均一なフッ素樹脂層を形成することが可能となる。
d.定着ベルトの熱容量
一般に、定着ベルト20の熱容量が大きくなると、温度立ち上がりが鈍くなり、オンデマンド性が損なわれる。たとえば、定着装置の構成にも拠るが、スタンバイ温調無しで、1分以内での立ち上がりを想定した場合、定着ベルト20の熱容量は約4.2J/cm2・℃以下である必要があることが分かっている。
本実施例においては、室温状態からの立ち上げの際に、定着ヒータ16に約1000Wの電力を投入して、定着ベルト20が190℃に20秒以内に立ち上がる様に設計してある。シリコーンゴム層には、比熱が約12.2×10−1J/g・℃の材質を用いており、このとき、シリコーンゴムの厚みは500μm以下でなければならなく、定着ベルト20の熱容量は約18.9×10−2J/cm2・℃以下である必要がある。また、逆に、4.2×10−2J/cm2・℃以下にしようとすると、定着ベルト20のゴム層が極端に薄くなり、OHT透過性やグロスムラなどの画質の点において、弾性層を持たないオンデマンド定着装置と同等になってしまう。
本実施例においては、OHT透過性やグロスの設定など高画質な画像を得るために必要なシリコーンゴムの厚みは200μm以上であった。この際の熱容量は8.8×10−2J/cm2・℃であった。
つまり、本実施例と同様の定着装置の構成における、定着ベルト20の熱容量は4.2×10−2J/cm2・℃以上4.2J/cm2・℃以下が一般的に対象となる。この中で、よりオンデマンド性と高画質の両立を図ることができる、熱容量8.8×10−2J/cm2・℃以上18.9×10−2J/cm2・℃以下の定着ベルトを用いることとした。
(3)定着装置への入力される最大供給電力の予測方法
本実施例では、定着ヒータ16に通電開始してからメインサーミスタ18の検知温度の上昇時間に従い、定着ヒータ16への最大供給電力値を予測し、定着装置の安定動作に必要な電力値の出力時に、出力電力を最大供給電力値に従い補正することによって、入力電圧のばらつきや定着ヒータ16の抵抗値のばらつきによらず、オーバーシュート/アンダーシュートを防止し、立ち上げ時や通紙開始時においても安定した温度制御を行う。上記の制御は制御回路部(CPU)21でなされる。
本実施例においては、定着装置に入力される最大供給電力の予測方法として、立ち上がり温調中にフル電力(100%)を供給し、加熱体である定着ヒータ16の昇温時間を、サブサーミスタ19の検知温度から測定することにより、最大供給電力の予測をおこなう。具体的には、立ち上がり温調中にサブサーミスタ19の検知温度が150℃から210℃まで昇温するのにかかる時間T(msec)を測定し、予想される最大供給電力E(W)を以下の(1)式にて算出する。
E=2000−0.76×T+0.00010×T2・・・(1)
ここで用いた予想式は、本実施例で説明した構成をとった定着装置において、最適化されたものであり、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。もちろん、立ち上がり上昇カーブの時間を測定する温度範囲によって変化することは言うまでもない。
つまりは、立ち上がり上昇カーブの時間と投入電力の関係として、
E=α+β×T+λ×T2・・・(2)
を用いることとし、本実施例で説明した構成をとった定着装置において、サブサーミスタ19の検知温度が150℃から210℃まで昇温するのにかかる昇温時間と投入電力の関係を示すときには、(1)式のように係数を採った場合がよく一致することからこのような予想式を用いることとした。また、制御回路部(CPU)21への負担を低減する為に簡単な係数を用いた。予想式には必ずしも2次の多項式を用いなければいけないわけではなく、定着装置の構成によっては、2次の項を省略することや、更に高次の項を用いる、もしくは他の形の式を用いてもかまわない。
図5に上記の予想式と実測値を比較した結果を示す。サブサーミスタ19の検知温度が150℃から210℃まで昇温するのにかかる時間は、試験に用いたインライン型の電子写真方式カラー画像形成装置内において、サーミスタの出力をA/D変換して、測定される。一方、実際に供給される電力についてはYOKOGAWA製WT200 DIGITAL POWER METERを介して電力値の出力を同じくキーエンス製PC用温度レコーダーNR250にてA/D変換しPCに取り込むことにより測定した。
図5に示すように、実測値と予想式は良く一致し、本実施例を用いることで、最大供給電力が精度良く求まる事が分かる。
本実施例においては、立ち上がり温調を利用した最大供給電力の予測は、立ち上げ温調前に、サブサーミスタ19の検知温度が測定範囲を超えている場合は、予測値を算出できない為、立ち上げ温調前に、サブサーミスタ19の検知温度が140℃以上の時には予測値の更新を行わないこととしてある。
図16に本実施例における定着装置へ入力される最大供給電力の予測方法についてのフローチャートを示す。このようにしてサブサーミスタの検知温度を用いることによって、最大供給電力を精度良く求める事ができる。
本実施例においては、立ち上がり上昇カーブの時間を測定する温度範囲として、サブサーミスタ19の検知温度が150℃から210℃までとして説明した。この範囲は、以下のような条件から決定される。
1)温度範囲の低温下限について
・下限はサブサーミスタの初期温度であり、少なくとも使用温度環境以上となる
・低温側を用いた場合、上昇カーブが急峻すぎて電力予想の誤差が大きくなる
・使用温度環境や、定着装置の蓄熱状態に影響を受ける(場合によっては補正
を必要とする)
2)温度範囲の高温上限について
・上限は立ち上げ時の最大駆動温度となる
・上限が高いほど上昇カーブの測定時間が長くなる為、電力予想の反映が遅く
なる
このような観点から、立ち上がり上昇カーブの時間を測定する温度範囲として、サブサーミスタ19の検知温度が150℃から210℃までを最も好ましい条件として使用した。上昇カーブの温度範囲は、上記条件から70℃以上230℃以下の何れかの範囲を用いることが好適であったが、その範囲以内で使用する必要は必ずしもない。
(4)定着装置の温度制御
本実施例では、定着ベルト20の内面にメインサーミスタ18を当接させることにより、定着ベルトの温度を検出し、PID制御などのフィードバック制御により定着ヒータ16の投入電力を制御する方法を基本として温調制御を行っている。
一方、定着装置の立ち上げ時と通紙開始時においては、更なる温調精度の向上とオーバーシュート/アンダーシュートの防止のために、次のような制御を行っている。以下に詳細を述べる。
1)立ち上げ時の温度制御
本実施例においては、速やかに、且つ、過度のオーバーシュートを発生させること無く立ち上げる為に、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、複数電力レベルを用いて電力制御を行うことによって、オーバーシュートを生じることなく、安定した温度制御を行っている。
本実施例においては、複数の電力レベルとして、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、オーバーシュートを防止し、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルとを用い、立ち上げ温調中に所定タイミングで切り替えている。
また、第二電力レベルは、定着装置の蓄熱具合を考慮した必要電力値に適宜補正している。
具体的には以下に述べるような制御を行っている。
本実施例においては、「立ち上げ第一電力出力(100%フル出力)」→「昇温時間検知(最大供給電力予測)」→「補正した立ち上げ第一電力投入」→「所定温度検知」→「補正した立ち上げ第二電力投入」→「補正したPID制御」、と立ち上げ制御を行う。
まず、電力の補正方法について述べる。
電力の補正には以下のような補正式を用いることとした。
ここで、基準とする最大供給電力として、1050Wを用いたのは、使用条件での典型的な最大供給電力である為である。この基準は適宜変更しても良い。
前述した補正を行った場合の結果を表3に示す。例えば、最大供給電力が1050Wのときに、出力電力が50%の出力を行うべきところで、最大供給電力がそれぞれ750W、1500Wの時には、それぞれ、フル電力の67.8%、38.5%を出力することにより、結果として同じ電力を出力する。このような補正を行わないと、最大供給電力が750W、1500Wの時にそれぞれ325W、750Wの電力が出力されてしまう。ただし、最大供給電力であるフル電力(100%)以上は出力できないので、その場合は100%の出力とする。
ここで示すのは、普通紙モードとOHTモードの温調温度である。このように、カウント数が進むにつれ、つまりは加圧ローラ22の予想温度が上がるにつれて、温調温度を下げるようにした。
以上説明したように、定着装置の立ち上げ回数に従ったカウント値を用いることで、定着装置の使用状態によらず、加圧ローラ温度を精度良く予想し、その加圧ローラの温度に従った温調温度を選択することによって、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良を発生させることや記録材の巻きつきを発生させることが無く、良好な定着性を示し、グロス値などの印字品質ムラがない高画質な画像を得ることができる。
このように、予想される最大供給電力に従い、出力電力率を補正することにより、最大供給電力のばらつきによらず、安定した温度制御を行うことができる。従って、電力制御を最大供給電力が1050Wのときに最適になるように、制御パラメータを最適化すれば、その他の電力の場合においても、前述した補正を行うことにより最適な制御が行われることとなる。
次に、立ち上げ第一電力や第二電力の出力タイミングについて述べる。
立ち上げ第一電力(100%)出力後、立ち上げ第一電力の補正のタイミングは、サブサーミスタ19の検知温度が150℃から210℃まで昇温するのにかかる時間を測定して、前述した方法により、最大供給電力の予測値が決定した時点で行われることとした。補正した立ち上げ第一電力出力後、第二電力に切り替えるタイミングと、第二電力の投入時間は、表4に示すようにすることとした。表に示した以外の電力においてはこの表にある電力から線形補間したものを用いる。
このように、最大供給電力によって切り替えタイミングを変える理由は次のとおりである。
・最大供給電力が大きい場合には、フル電力を投入し、サブサーミスタ19により最大供給電力の予想を終えるまでの間の定着ヒータ16の昇温の大きさが大きいことを考慮して、早めに第二電力に切り替える。その分、第二電力の投入時間は長く取る。
・最大供給電力が小さい場合には、最大供給電力の予想が終わった後、補正される出力電力率は100%以上を出力できないため、立ち上げ時間を早めるために、第一電力の投入時間を出来るだけ長くする。その分、第二電力の投入時間は短くする。
このようにすることにより、最大供給電力のばらつきによらずオーバーシュートの小さい温度制御を行うことができる。
2)通紙開始時の温度制御
本実施例においては、通紙開始時の記録材Pの突入タイミングとあわせて、一定時間PID制御を行わず、定着ヒータ16に投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、記録材Pの熱的特性や、定着装置の蓄熱具合を考慮した略必要電力値に補正することによって、温度検知のむだ時間(タイムラグ)による通紙開始時の記録材Pの突入に伴う温度変動を生じることなく、安定した温度制御を行っている。
具体的には、通紙前後にPID制御を行い、通紙開始時の記録材突入前の約0.3秒から約0.7秒間はPID制御を行わず通紙時に必要な略必要電力値を投入し、その後PID制御に移行するようにした。例えば、室温状態からの立ち上げ直後の普通紙通紙においては約500Wである。つまりは、基準とする最大供給電力が1050Wの場合においては約47.5%の出力となる。
電力の補正には先述した補正式を同様に用いる。つまり、約500Wを必要とする場面においては、最大供給電力がそれぞれ750W、1500Wの時には、それぞれ、フル電力の約66.5%、33.25%を出力することにより、結果として同じ電力(500W)を出力する。この場合においても、電力制御を最大供給電力が1050Wのときに最適になるように制御パラメータを最適化すれば、その他の電力においても補正することにより最適な制御が行われることとなる。
尚、本実施例においては、所定電力の投入時間0.7秒は、最大供給電力によって変更できるものとした。これは、最大供給電力が大きい場合には、昇温時間が短いことから比較的予測値の誤差が大きくなり、また、最大供給電力が小さい場合には、昇温時間が長いことから定着装置の蓄熱具合や使用環境等の影響を受け、予測値の誤差が大きくなる為である。つまり、予想式によって求まった予測値の実際の最大供給電力との差分の影響を小さくする為に、最大供給電力が基準とした1050Wから離れている場合には、所定電力の投入時間を若干短くした。具体的には、最大供給電力が1500W以上もしくは700W以下の時には所定電力の投入時間を通紙開始時の記録材突入前の約0.3秒から約0.5秒間とした。
3)立ち上げ時の第二電力と、通紙開始時の所定電力投入時間
立ち上げ時の第二電力と、通紙開始時の所定電力投入時間について述べる。
前述したように、定着装置の立ち上げ時と通紙開始時における、サーミスタの検出温度が目標温度に到達するタイミング近傍または記録材の定着ニップ27への突入タイミング近傍に温度変動防止の為の電力の投入を行う必要のあるのは、以下の理由による。
a.定着ベルト20の弾性層に用いられるシリコーンゴム層の熱伝導率が小さく、定着ヒータ16から定着ベルト表面までに多くの部材があることにより定着ヒータ16へ通電した後に、定着ベルト温度が上昇するまでの、いわゆる熱応答性が悪いこと。
b.定着ベルト20の温度を検出する温度検知手段18の位置が定着ニップ27から離れていることによる定着ニップ部の検知タイミングの遅れがあること。
aに示すように定着ベルト温度が上昇するまでの、熱応答性が悪いことから、立ち上げ時や、通紙開始時の電力投入時において、定着ベルトは満遍なく暖める為、定着ベルトが略1周分回転する間、必要な電力値を投入していることが望ましい。また、bに示すように、定着ニップ部の温度検知タイミングの遅れがあることから、立ち上げ時や、通紙開始時の電力投入時において、略遅れ時間の分だけ必要な電力値を投入していることが望ましい。
よって、定着ベルト20の外周の移動速度として、プロセススピードをV、圧接部から温度検知位置までの長さをa、定着ベルト20外周長をLとしたときに、立ち上げ時の温度を安定させ、通紙開始時に温度挙動を安定させる為に必要な電力の理想的な投入時間は、(a+L)/V近傍である。
一方、実機での使用においては、定着装置の蓄熱具合や使用環境等、そして定着装置の部材・構成のばらつきなどの影響を受け、必要となる電力値と、予測した電力値に誤差が生じる場合がある。誤差を生じている場合、電力を投入している時間が長いほど温調温度は変動してしまう。また、立ち上がりの時間の制約上早期に立ち上げる為に長く電力を投入しつづけられない場合がある。このような理由から、実際の電力の投入時間は、上記の理想的な投入時間よりも短い時間で用いることが望ましい。
これらの根拠から、立ち上げ時や、通紙開始時の必要な電力の電力の投入時間として、より好ましい時間tは、以下の式で表すことができる。
t≦(a+L)/V
本実施例においては、プロセススピード87mm/sec、であり、圧接部から温度検知位置までの長さは20mm、定着ベルト20外周長は77.6mmである為、電力の投入時間は1.12sec以内が好ましい時間である。
もちろん、上記の時間に限定されることなく、本発明を適用することはことはできる。
4)PID制御
本実施例においては、PID制御によって制御される電力についても、予想される最大供給電力に従い出力電力率を補正することとした。PID制御により決定された出力電力率を先述した補正式を同様に用いて補正する。
従来の定着装置において、PID制御では、例えば目標温度に対して、メインサーミスタの検知温度が2℃足りない場合には、出力電力率を2.5%増加する、というように制御している。本実施例においては、目標温度に対して、メインサーミスタの検知温度が2℃足りない場合には、最大供給電力が750W、1050W、1500Wにおいて、出力電力率をそれぞれ1.79%、2.5%、3.57%増加する。これにより、メインサーミスタの検知温度が2℃足りない場合には、最大供給電力によらず、電力を約26.25W増加させることとなる。
この場合においても、電力制御を最大供給電力が1050Wのときに最適になるように制御パラメータを最適化すれば、その他の電力においても補正することにより最適な制御が行われることとなる。
図17に予測される最大投入電力に基づいた定着装置の温度制御のフローチャートを示す。このように、予測される最大投入電力に基づいて電力制御を行うことにより、入力電圧のばらつきや定着ヒータ16の抵抗値のばらつきに伴う最大投入電力の変化によらず、安定した温度制御を行うことができる。
(5)本実施例を用いた場合の実験結果
次に、本実施例を用いた場合の実験結果を示す。
1)実験方法
室温状態の定着装置を用いて、立ち上げ後、一枚印字した時のメイン・サブサーミスタ検知温度と定着ヒータ16への投入電力の様子を最大供給電力がそれぞれ800W、880W、1030W、1190W、1440Wの時について、測定した。
各サーミスタの検知温度は、試験に用いたインライン型の電子写真方式カラー画像形成装置内において、サーミスタの出力をA/D変換して、測定される。一方、実際に供給される電力についてはYOKOGAWA製WT200 DIGITAL POWER METERを介して電力値の出力を同じくキーエンス製PC用温度レコーダーNR250にてA/D変換しPCに取り込むことにより測定した。
定着後画像のグロスについては、次の方法を用いて測定を行った。測定器として、日本電色工業株式会社製の光沢計PG―3Dを使用し、JIS Z 8741における75度鏡面光沢測定方法により測定を行った。記録材上のトナー量としては、Y,M,C,BKのいわゆる1次色のべた画像部のトナー量が約0.5〜0.6mg/cm2、R,G,Bのいわゆる2次色のべた部が約1.0〜1.2mg/cm2の状態で定着を行い、定着後画像のグロスを測定した。
また、最大供給電力がそれぞれ800W、880W、1030W、1190W、1440Wのそれぞれの場合において、耐久試験として、本実施例における定着装置を用い、2枚間欠の連続印字を150k枚プリントを行い、耐久後の駆動ローラのトルクを測定した。
2)実験結果
図6に本実施例を用いた場合の定着装置において、最大供給電力がそれぞれ800W、880W、1030W、1190W、1440Wの場合における、室温状態からの立ち上げ後、一枚印字した際のメイン・サブサーミスタ検知温度を示す。
このように、最大供給電力の違いによらず、約10秒以内にメイン・サブサーミスタ共に、適切な状態に精度良く立ち上がっていることが分かる。また、通紙中においても同様に精度良く温調出来ている事が分かる。これにより、出力された印刷物のグロスは単色で約4以内の変動幅であり、また、2次色では約6以内の変動幅であった。また、記録材や画像パターンによらず、ホットオフセットや定着性の悪化などの定着不良が生じる事も無かった。
さらに、最大供給電力の違いによらず、サブサーミスタ19の検知温度が260℃を超えることは無かった。また、耐久試験後の、駆動トルクを測定したところ約24.5〜31.3N・cm(約2.5〜3.2kgf・cm)であった。このとき定着装置の不具合は見られなかった。
(6)比較例
比較例として挙げる、従来の定着装置の制御について説明する。
従来の定着装置においては「立ち上げ電力(100%フル出力)」投入後、メインサーミスタ18の検知温度が所定温度(目標温度−38℃:本実施例では、目標温度は195℃であるため、195℃−38℃=157℃)に達したときに、約0.6秒間、「第二の電力レベルである所定電力」を37.5%出力に固定して投入した後に「PID制御」に移行した。また、室温状態からの立ち上げ直後の普通紙通紙においては、通紙開始時の記録材突入前の約0.3秒から約0.7秒間はPID制御を行わず、通紙時に必要な略必要電力値である所定電力として約47.5%の電力を出力し、再びPID制御により定着ヒータ16への投入電力を制御した。
1)実験方法
本実施例を用いた場合の実験と同様にして行ったのでここでは省略する。ただし、従来の定着装置における制御は上述したとおりである。
2)実験結果
図7に従来の定着装置において、最大供給電力がそれぞれ750W、1050W、1440Wの場合における、室温状態からの立ち上げ後、一枚印字した際のメイン・サブサーミスタ検知温度を示す。
このように、最大供給電力が大きいときには立ち上がりは早いものの、温度リップルは大きいまま収束することなく一枚目の通紙となってしまう。また、通紙中においては、最大供給電力がそれぞれ750W、1050W、1440Wのすべての場合において所望の温度リップル(約7℃)に抑えることができずに、最大では約12℃となってしまい、試験に用いたインライン型の電子写真方式カラー画像形成装置においては、出力された印刷物のグロスは単色で約7変動し、また、2次色では約11変動し、画質の低下を招いた。また、記録材や画像パターンによっては大きな温度変動に伴い、ホットオフセットや定着性の悪化などの定着不良が生じてしまうという問題を生じた。
さらに、最大供給電力が大きい場合にはオーバーシュートが大きく、最大供給電力が1440Wの場合には、サブサーミスタ19の検知温度が290℃を超えていた。このような駆動を繰り返した場合、定着装置の各部材の熱劣化が発生する。最大供給電力が1440Wの場合において、耐久試験後の駆動トルクを測定したところ約43.1N・cmであった。このとき、条件によっては定着装置の駆動中に定着ベルトのスリップが発生することがあった。
(7)考 察
まず、オーバーシュートと温度リップルについて述べる。
従来の定着装置を用いた場合と、本実施例の定着装置を用いた場合とで、先ほどの実験を行った場合の電力制御の状態について以下に示す。
図8に本実施例を用いた場合の定着装置において、最大供給電力がそれぞれ800W、880W、1030W、1190W、1440Wの場合における、室温状態からの立ち上げ後、一枚印字した際の定着ヒータ16への投入電力率を示す。
図6、図8より、最大供給電力が大きい場合には、早く第二電力に移行することと、出力電力率の補正により、オーバーシュートを過度に生じることは無いと考えられる。また、約10秒で電力の制御が収束しており、出力電力率の補正が効果的に働いていると考えられる。さらに、通紙開始時においても、出力電力率の乱れはほとんど生じておらず、補正が効果的に働いていると考えられる。
比較例として、図9に従来の定着装置において、最大供給電力がそれぞれ750W、1050W、1440Wの場合における、室温状態からの立ち上げ後、一枚印字した際の定着ヒータ16への投入電力率を示す。
図7、図9より、最大供給電力が広い範囲に対して、一定の制御を行った場合、立ち上げ時において、最大供給電力が大きい場合(1440W)には、非常に大きなオーバーシュートを生じることがわかる。また、最大供給電力が750Wと1440Wの場合には、所定電力を1050Wで最適化しているため、必要電力値と一致していないことから、電力の制御が収束しないまま通紙が開始しており、温度が安定していないことが分かる。さらに、通紙時においても、最大供給電力が750Wと1440Wの場合には、同様に通紙開始時の所定電力が必要電力値と一致していないことから、通紙中に出力電力率は大きく乱れており、これにより、定着ベルト20の温度が乱れていると考えられる。
次に、定着部材の耐久性について述べる。
従来例のように立ち上げにおいてサブサーミスタ19の検知温度が約290℃を超えるような駆動を繰り返した場合、定着装置の熱劣化に伴うトルク上昇により、定着ベルト20のスリップが発生してしまうため、定着ベルト20や加圧ローラ22をはじめとする定着部材の耐久寿命が短くなってしまう。
定着ベルト20のスリップは、定着ベルト20と、定着ヒータ16をはじめとする定着ベルト20内部の構成物との動摩擦力が、加圧ローラ22、もしくは記録材Pとの最大静止摩擦力を超えた場合に発生する。定着ベルト20と、定着ヒータ16をはじめとするベルト内部の構成物との動摩擦力は、特にグリスの状態に大きく影響され、グリスが不必要な部位に移動することにより量が減少した場合や、グリス自体が劣化した場合には、この動摩擦力が大きくなることが知られている。定着装置の耐久が進むにつれ、グリスは量が減少したり劣化を生じたりする為、この動摩擦力は大きくなる。特に過度の高温駆動はグリスへのダメージが大きい。
定着ベルト20と、定着ヒータ16をはじめとする定着ベルト20内部の構成物との動摩擦力は、定着装置の駆動時における、駆動手段への負荷のなかでも最も大きな要因である。即ち、定着装置の駆動トルクを測定することによって、定着ベルト20のスリップしやすさを予測することができる。
この定着装置の初期状態における駆動トルクは約14.7N・cmであり、定着ベルト20のスリップは、この駆動トルクが約14.7N・cmを超えたあたりで発生する場合があることが分かっている。
従来の定着装置を用いた場合、耐久試験後の駆動トルクは約43.12N・cmであったのに対して、本実施例における定着装置を用いた場合、駆動トルクは約24.5〜31.36N・cmであった。このとき、従来例の定着装置では、定着ベルト20のスリップが発生したのに対して、本実施例の定着装置においては不具合は見られなかった。
このように、立ち上げにおいて定着ベルト20の表面温度のオーバーシュートがほとんど発生しないので、過度の高温駆動を課すことも無く耐久寿命を大幅に伸ばすことができる。
ここでは、耐久寿命が短くなる顕著なものして、定着ベルト20のスリップを例として上げたが、定着装置のオーバーシュートが大きい場合には、定着装置内の各部材に過度の負担を強いることから、本実施例を用いてオーバーシュートを防止することで、定着装置内の各部材の寿命を伸ばす効果があることは言うまでもない。
尚、ここで用いる補正電力は必要となる所定電力と厳密に一致していなくても、略同一であればよい。これは、一定時間の所定電力投入後はPID制御に戻ることによって、定着ベルト20の温度が、再び目標温度に近づくように制御されるからである。つまり、補正電力と必要となる所定電力とが厳密に一致していない場合には、定着ベルト20の温度が目標温度から遠ざかることになるが、その後再び近づく様に制御されるわけである。そのときの温度変動が所望の温度リップル内であれば良い。また、実験においては、基準となる電力を1050Wとして、最大供給電力が750Wから1440Wのいくつかの場合において本発明が効果的に適用できることを示したが、原理的に最大供給電力の範囲はこれより広い範囲に適用できることは言うまでもない。
(8)まとめ
以上、本実施例では、定着ヒータ16に通電開始してから、サブサーミスタ19の検知温度の上昇時間に従い、定着ヒータ16への最大供給電力値を予測し、定着装置の安定動作に必要な電力値の出力時に、出力電力を最大供給電力値に従い補正することによって、入力電圧のばらつきや定着ヒータ16の抵抗値のばらつきによらず、オーバーシュート/アンダーシュートを防止し、立ち上げ時や通紙開始時においても、安定した温度制御を行うことができた。
本実施例では、これまでに実施例1、2、3において説明した定着装置とは異なる方式の定着装置においても、本実施例における最大供給電力の予想方法を適用でき、同様の効果が得られることを示す。
本実施例で説明した定着装置とは別の定着装置として、いわゆる誘導加熱方式の定着装置を用いた。図13に電磁誘導加熱方式の定着装置の概略構成模型図を示す。
磁場発生手段は磁性コア62a・62b・62c及び励磁コイル63からなる。
磁性コア62a・62b・62cは高透磁率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる材料がよく、より好ましくは100kHz以上でも損失の少ないフェライトを用いるのがよい。
67は電力供給部(給電部)である高周波発信回路部であり、20kHzから500kHzの高周波をスイッチング電源で発生できるようになっている。励磁コイル63はこの電力供給部67から供給される交番電流(高周波電流)によって交番磁束を発生する。
61a,61bは横断面略半円弧状樋型のベルトガイド部材であり、開口側を互いに向かい合わせて略円柱体を構成し、外側に円筒状の電磁誘導性発熱ベルトである定着ベルト(定着スリーブ、第一の回転体)20をルーズに外嵌させてある。前記ベルトガイド部材61aは、磁場発生手段としての磁性コア62a・62b・62cと励磁コイル63を内側に保持している。また、ベルトガイド部材61aには摺動部材65がニップ部27の加圧ローラ22との対向面側で、定着ベルト20の内側に配設してある。
64はベルトガイド部材61bの内面平面部に当接させて配設した横長の加圧用剛性ステイである。
66は磁性コア62a・62b・62c及び励磁コイル63と加圧用剛性ステイ64の間を絶縁するための絶縁部材である。
加圧用剛性ステイ64は図不示の加圧機構により押し下げ力を作用させている。これによりベルトガイド部材61aの下面の摺動部材65と加圧ローラ22とが定着ベルト20を挟んで圧接して所定幅の定着ニップ部27が形成される。
加圧ローラ22は駆動手段(図不示)により矢示の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ22の回転駆動による前記加圧ローラ22と定着ベルト20の外面との摩擦力で定着ベルト20に回転力が作用し、前記定着ベルト20がその内面が定着ニップ27において摺動部材65の下面に密着して摺動しながら矢示の時計方向に加圧ローラ22の回転周速度にほぼ対応した周速度をもってベルトガイド部材61a,61bの外回りを回転状態になる。この場合、定着ニップ部27における摺動部材65の下面と定着ベルト20の内面との相互摺動摩擦力を低減化させるために定着ニップ部27の摺動部材65の下面と定着ベルト20の内面との間に耐熱性グリスなどの潤滑剤を介在させることができる。
磁性コア62a・62b・62cに導かれた交番磁束は、磁性コア62aと磁性コア62bとの間、そして磁性コア62aと磁性コア62cとの間において定着ベルト20の加熱体としての電磁誘導発熱層(図不示)に渦電流を発生させる。この渦電流は、後述する定着ベルト20内の電磁誘導発熱層の固有抵抗によって電磁誘導発熱層にジュール熱(渦電流損)を発生させる。ここで、発熱域は最大発熱量をQとした場合、発熱量がQ/e以上の領域と定義する。これは、定着に必要な発熱量が得られる領域である。
本実施例に示す、電磁誘導加熱方式の定着装置において、ここで用いられる定着ベルト20は、電磁誘導発熱性の定着ベルト20の基層となる金属ベルト等でできた発熱層(図不示)と、その外面に積層した弾性層(図不示)と、その外面に積層した離型層(図不示)の複合層構造のものである。発熱層と弾性層との間の接着、弾性層と離型層との間の接着のため、各層間にプライマー層(不図示)を設けてもよい。略円筒形状である定着ベルト20において発熱層が内面側であり、離型層が外面側である。前述したように、発熱層に交番磁束が作用することで前記発熱層に渦電流が発生して前記発熱層が発熱する。その熱が弾性層・離型層を介して定着ニップ部27を加熱し、前記定着ニップ部27に通紙される被加熱材としての記録材Pを加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。
この定着ベルト20の温度は温度検知手段であるメインサーミスタ18とサブサーミスタ19を含む温調系21・67により励磁コイル63に対する電流供給が制御されることで所定の温度が維持されるように温調される。即ち、メインサーミスタ18は定着ベルト20の温度を検知する温度検知手段であり、本実施例においては、このメインサーミスタ18を定着ベルト20内面の発熱域Hにベルトガイド部材61aの外面に露呈させて配設してある。このメインサーミスタ18が定着ベルト20の内面に接触して定着ベルト20の温度を検知する。メインサーミスタ18で測定した定着ベルト20の温度情報は制御回路CPU21に入力される。制御回路CPU21はその入力温度情報をもとに電力供給部67から励磁コイル63に対する電流供給を制御し定着ベルト20の温度すなわち定着ニップ部27の温度を所定の温度に温調する。
而して、定着ベルト20が回転し、電力供給部67から励磁コイル63への給電により上記のように定着ベルト20の電磁誘導発熱がなされて定着ニップ部27が所定の温度に立ち上がって温調された状態において、画像形成手段部から搬送された未定着トナー画像tが形成された記録材Pが定着ニップ部27の定着ベルト20と加圧ローラ22との間に画像面が上向き、即ち定着ベルト面に対向して導入され、定着ニップ部27において画像面が定着ベルト20の外面に密着して定着ベルト20と一緒に定着ニップ部27を挟持搬送されていく。この定着ニップ部27を定着ベルト20と一緒に記録材Pが挟持搬送されていく過程において定着ベルト20の電磁誘導発熱で加熱されて記録材P上の未定着トナー画像tが加熱定着される。記録材Pは定着ニップ部27を通過すると定着ベルト20の外面から分離して排出搬送されていく。記録材上の加熱定着トナー画像は定着ニップ部通過後、冷却して永久固着像となる。
以上に示した電磁誘導加熱方式を用いた定着装置においても同様に、加熱した定着ベルト20の昇温を、定着ベルト20に当接したメインサーミスタ18の検知温度から測定することにより、励磁コイル63への最大供給電力の予測をおこなう。本実施例で説明した定着装置と同様に、メインサーミスタ18の検知温度が90℃から130℃まで昇温するのにかかる時間T(msec)として、これと予想される最大供給電力E(W)の関係は以下のような式であらわすことができる。
E=1900−0.62+0.000086×T2・・・(6)
図12に上記の予想式と実測値を比較した結果を示す。このように、本実施例で説明した定着装置とは別の定着装置においても、実測値と予想式(6)は良く一致し、本実施例を用いることで、最大供給電力が精度良く求まる事が分かる。
図20に本実施例における定着装置へ入力される最大供給電力の予測方法についてのフローチャートを示す。このようにしてメインサーミスタの検知温度を用いることによって、最大供給電力を精度良く求める事ができる。 ここで、本実施例においても実施例2と同様に、立ち上がり上昇カーブの時間を測定する温度範囲として、メインサーミスタ18の検知温度が、90℃から130℃までを最も好ましい条件として使用した。しかし、上昇カーブの温度範囲は、実施例2と同様に70℃以上150℃以下の何れかの範囲を用いることが好適であり、また、その範囲以内で使用する必要は必ずしもない。
このようにして、励磁コイル63への最大供給電力の予測値から温調制御時の制御電力を補正することができる。
もちろん、ここで示した2つの方式による定着装置とは別の方式を用いた場合においても、同様の原理により同様の効果が得られることは言うまでもない。
以上、本実施例では、これまでに実施例1、2、3において説明した定着装置とは異なる定着装置として、いわゆる電磁誘導加熱方式の定着装置を用いた場合においても、本実施例における最大供給電力の予想方法を適用でき、励磁コイル63への最大供給電力値を予測し、この予測値から温調制御時の制御電力を補正することができる。これにより、入力電圧のばらつきのばらつきなどによらず、オーバーシュート/アンダーシュートを防止し、立ち上げ時や通紙開始時においても、安定した温度制御を行うことができた。
〈その他〉
1)このように、上述した各実施例において、プロセススピードは87mm/sec、プリントスピードは16枚/分、温調温度は195℃、通紙開始時における所定電力の投入時間は、記録材突入前の約0.3秒から約0.7秒間(もしくは約0.5秒間)として説明した。しかし、記録材の種類や得たい画像の画質によっては、もしくはより良好な定着性を得る為などの条件によっては、プロセススピードやプリントスピード、温調温度、を異なる設定にしたほうが良い場合が考えられる。このような場合においても、本発明法を適用することによって、温度変動の小さい精度の良い温調を行うことが可能であり、同様の効果が得られる。このとき、補正される所定電力の値と所定電力の投入時間は、プロセススピード、プリントスピード、温調温度によって異なることは言うまでもない。また、立ち上げ後の第二電力への切り替えタイミングや第二電力の投入時間についても同様である。
2)また、上述した各実施例において、測定された昇温時間から、予測式を用いて、最大供給電力を予想した。これは、簡単な制御アルゴリズムを用いて、最大供給電力を参照する為に用いたものである。よって、その他の方法、例えば、昇温時間と最大供給電力の関係を実験的に求めたテーブル等を用いて予想しても良く、同様の効果が得られる。
3)また、上述した各実施例において、メインサーミスタやサブサーミスタによって測定された昇温時間から、最大供給電力を予想した。これは、すでに画像形成装置が有している機能を活用することによって、複雑な構成と制御を追加することなく単純な構成でかつ安価に本発明を適用する為である。よって、実際に定着装置に電流検知手段、電圧検知手段を設けて、最大供給電力を直接測定して補正してもよい。この場合、最大供給電力を測定する為の時間が短い為、瞬時に電力制御に反映できるというメリットがある。電流検知手段、もしくは電圧検知手段により、測定された電流I(A)もしくは電圧V(V)として、定着ヒータ16に供給される電力は
E=I×V=I2×R=V2/R・・・(7)
で表される。電流検知手段、電圧検知手段の両方を備えた場合には、正確な電力が測定できる為、所定電力の正確な補正が可能となる。片方のみを備えた場合には、定着ヒータ16のばらつきは約7%であり、(7)式より、そのまま電力値を算出した際の誤差となるが、あらかじめ定着ヒータの抵抗値を測定しておくことにより算出することも可能である。
4)また、上述した各実施例において、温度制御を行う為の電力制御として基本的にPID制御を用いる場合について説明した。これは目標温度に素早く近づけ、尚且つ外乱に対しても強い制御方法として用いたものである。よって、P制御、PI制御、またその他のフィードバック制御を用いても温度制御を行うことができ、同様の効果が得られる。
5)また、上述した各実施例において、定着ベルト20の熱容量は少なくとも4.2×10−2J/cm2・℃以上4.2J/cm2・℃のもので構成される定着装置を用いて説明した。これは、定着ベルト20の熱容量が4.2×10−2J/cm2・℃以上の場合にはメインサーミスタ18の温度検知部の温度が定着ニップ位置の温度と近い為、温調の精度がより良いということと、定着ベルト20の熱容量が4.2J/cm2・℃以下の場合には、応答性が良いことから記録材Pの突入タイミングとあわせて電力を補正することがより効果的であることから、定着ベルト20の熱容量が4.2×10−2J/cm2・℃以上4.2J/cm2・℃の場合に、本発明を適用することにより、ひときわおおきな効果が得られるからであって、その範囲以外の熱容量を有する定着ベルトを有する定着装置であっても本発明を適用することができ、同様の効果が得られる。
6)また、上述した各実施例において、定着装置に入力される最大供給電力の予測方法として、立ち上がり温調中にフル電力(100%)を供給し、メインサーミスタ18またはサブサーミスタ19にて検知される昇温速度を測定する方法について説明した。これは、フル電力を用いることで、より高いオンデマンド性を確保する為である。よって、75%、50%等の電力供給を行い、メインサーミスタ18またはサブサーミスタ19にて検知される昇温速度を測定する方法を用いても本発明を適用することができ、同等の効果が得られる。
7)また、実施例4において、発熱域H内にある、メインサーミスタ18で検知される昇温速度を検知する場合について説明した。これは、発熱域H外にある、例えばサブサーミスタ19で検知される昇温速度を用いた場合に比べて、定着装置のばらつきに起因して精度が若干落ちる事を避けるためである。よって、発熱域H外にある、サブサーミスタ19を用いて昇温速度を測定することで最大供給電力を予測することもでき、同等の効果が得られる。
8)また、定着ベルト20に弾性層を設けた定着装置において説明した。これはより高画質なカラー画質を得ることができることから弾性層を設けた定着装置を用いたからであり、金属ベルトなどの弾性層を有さない定着ベルト有する定着装置であっても本発明を適用することができ、同様の効果が得られる。
9)また、加熱体としてセラミック基板上に抵抗発熱体を形成してなるセラミックヒータを用いる定着装置と、電磁誘導加熱方式を用いた定着装置において説明した。これはローコストなカラー用オンデマンド定着装置の加熱体として用いる為であり、加熱体にハロゲンランプを用いた定着装置や例示したものとは異なった形態の電磁誘導加熱方式を用いた定着装置についても用いることもでき、同様の効果が得られる。
10)定着ニップを形成させる第一と第二の定着部材は実施例の定着ベルトや加圧ローラの形態に限られるものではない。第一と第二の定着部材の両方に加熱体(熱源)を具備させた形態の装置にすることもできる。
11)加熱体は必ずしも定着ニップ部27に位置していなくてもよい。例えば、熱源を定着ニップ部27よりも定着ベルト移動方向上流側に位置させて配設することも出来る。
12)実施例の定着装置は加圧用回転体駆動方式であるが、エンドレスの定着ベルトの内周面に駆動ローラを設け、定着ベルトにテンションを加えながら駆動する方式の装置であってもよい。
13)本発明において定着装置には、未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる定着装置ばかりでなく、未定着画像を記録材上に仮定着させる像加熱装置、画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する像加熱装置なども包含される。
14)画像形成装置の作像方式は電子写真方式に限られず、静電記録方式、磁気記録方式等であってもよいし、また転写方式でも直接方式でもよい。
以上、本発明の様々な例と実施例が示され説明されたが、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲は本明細書内の特定の説明と図に限定されるのではなく、本願特許請求の範囲に全て述べられた様々の修正と変更に及ぶことが理解されるであろう。