JP2004188676A - 熱転写シート及び捺印層形成方法 - Google Patents
熱転写シート及び捺印層形成方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004188676A JP2004188676A JP2002357162A JP2002357162A JP2004188676A JP 2004188676 A JP2004188676 A JP 2004188676A JP 2002357162 A JP2002357162 A JP 2002357162A JP 2002357162 A JP2002357162 A JP 2002357162A JP 2004188676 A JP2004188676 A JP 2004188676A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- thermal transfer
- layer
- sheet
- protective layer
- image
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Impression-Transfer Materials And Handling Thereof (AREA)
- Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)
Abstract
【課題】熱転写画像が形成された受像シートにおける画像部における耐久性、鮮明性及び光沢性に優れ、かつ受像シートの受像面における捺印性、筆記性が良好となる、基材シート上に少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シート及び捺印層形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されているものと、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートを用いて、該受容層に色材層による熱転写画像を形成し、次に該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写する。
【選択図】 図2
【解決手段】基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されているものと、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートを用いて、該受容層に色材層による熱転写画像を形成し、次に該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートの受容層に色材層による熱転写画像を形成し、該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写し、その後に熱転写受像シートの受像面に、捺印層を熱転写する捺印層形成方法及びそれに使用される熱転写シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、簡便な印刷方法として熱転写方法が広く使用されるようになってきた。
熱転写方法は、基材シートの一方の面に色材層が設けられた熱転写シートと、必要に応じて画像受容層が設けられた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面を画像状に加熱して、色材層に含まれる色材を選択的に移行させて、熱転写受像シート上に画像を形成する方法である。
【0003】
熱転写方法は、溶融転写方式と昇華転写方式に分けられる。溶融転写方式は顔料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融インキ層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチックシート等の熱転写受像シート上に、色材をバインダーと共に転写する画像形成方法である。溶融転写方式による画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字等の2値画像の記録に適している。
【0004】
一方、昇華転写方式は主に昇華により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解、或いは分散させた染料層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチック等の基材シートに必要に応じて染料受容層を設けてなる熱転写受像シート上に、染料のみを転写移行させる画像形成方法である。昇華転写方式は、印加されるエネルギー量に応じて染料の移行量を制御できるため、サーマルヘッドのドット毎に画像濃度を制御した階調画像の形成を行なうことができる。
また、使用する色材が染料であるため、形成される画像には透明性があり、異なる色の染料を重ねた場合の中間色の再現性が優れている。したがって、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の異なる色の熱転写シートを用い、熱転写受像シート上に各色染料を重ねて転写する際にも、中間色の再現性に優れた高画質な写真調フルカラー画像の形成が可能である。
【0005】
これらの熱転写方法では、各種の画像を簡便に形成することができるので、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えば身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真、絵ハガキや、他にメッセージカード、カレンダー、システム手帳等の様々な用途に利用されるようになっている。
【0006】
上記のような熱転写シートで、IDカード等を作成する場合、溶融転写方式は、文字や数字等の2値画像の形成は容易であるが、顔写真等の高画質が要求される画像の形成には不適当である。また得られた画像は耐久性、特に耐摩擦性に劣るという欠点がある。一方、昇華転写方式は顔写真等の階調性画像を形成するのに適しているが、得られた画像は、印刷インキと異なりビヒクルがないため、耐光性、耐候性、耐摩擦性等の耐久性に劣るという欠点がある。
これらの欠点を解決する手段として、基材フィルム上に転写性樹脂層を設けた保護層転写シートを用い、この転写性樹脂層を転写して、得られた画像上の少なくとも一部に保護層を設けることが提案されている。(例えば特許文献1参照)
【0007】
この方法を用いれば耐薬品性、耐光性等の耐久性を向上させることはできるが、保護層上に朱肉やスタンプインキで捺印したり、各種の筆記具で手書きしたり、スタンプインキでナンバリングしたりする場合、捺印や記入した内容が不鮮明になり、判読できないという問題がある。
これに対して、特許文献2では、保護層転写シートの熱転写性保護層として、コロイダルシリカ等の微粒子をバインダー樹脂に分散させた多孔質構造の表面層を有したものが記載されている。
また、特許文献3では、保護層転写シートの熱転写性保護層として、転写後の最表面層がアクリル系樹脂と、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの少なくとも一つとで構成され、また該最表面層が、ひび割れ形状、或いは微細孔を保有する形状であることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−1076号公報
【特許文献2】
特開平8−324140号公報
【特許文献3】
特開2002−2108号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような保護層転写シートでは、熱転写性保護層の耐久性、透明性及び光沢性等を要求される点と、捺印性、筆記性を要求される点の両方を満足するには、十分なものではない。
したがって、本発明は、上記のような問題点を解決し、熱転写画像が形成された受像シートにおける画像部における耐久性、鮮明性及び光沢性に優れ、かつ受像シートの受像面における捺印性、筆記性が良好となる、基材シート上に少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シート及び捺印層形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1として、基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されていることを特徴とする。
請求項2として、請求項1に記載の熱転写保護層は、基材シート側から順番に、少なくとも離型層、熱接着性を有する保護層の2層構成になっていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3として、本発明の捺印層形成方法は、請求項1に記載の熱転写シートを用いて、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートの受容層に色材層による熱転写画像を形成し、該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写して、捺印層を形成することを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明においては、基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されているものと、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートを用いて、該受容層に色材層による熱転写画像を形成し、次に該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写して、捺印層を形成する。これによって、受像シートに形成された熱転写画像部を保護するための熱転写保護層と、受像シートの受像面の任意の場所に捺印や筆記するための捺印層を熱転写捺印層として、2つの層を別個に設けるため、耐久性、透明性及び光沢性等の保護層としての機能と、捺印性、筆記性を有する捺印層としての機能を合わせて所有するのではなく、上記の2つの機能を別個に分けて、1つの層で一つの機能を専用として強力に発揮させることが可能となった。
また、本発明では、一つの基材シート上に、色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層をこの順に面順次に形成しているため、熱転写記録装置(熱転写プリンター)でインラインで、1回通しにて、受像シートに熱転写画像と、該熱転写画像上の熱転写保護層と、さらに受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を形成することができ、無駄の無い、非常に効率的に印画物を作製することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
図1は、本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す概略断面図であり、図示した熱転写シート1は、基材シート2の一方の面に耐熱滑性層6を有し、また基材シート2の反対側の面に、イエロー(Y)色材層31、マゼンタ(M)色材層32、シアン(C)色材層33の3色の色材層3、熱転写保護層4、熱転写捺印層5がこの順に面順序に繰り返し形成されている。
但し、基材シート上に設ける色材層は、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各層であり、必要に応じてブラックの色材層や、その他の色相の色材層を加えて、3色より多色の色材層としてもよい。
【0014】
尚、図1(1)は平面図、図1(2)は(1)で示した図の断面図である。熱転写シート1において、イエロー色材層31、マゼンタ色材層32、シアン色材層33の3色の色材層3は基材シート2上に直接設けられているが、熱転写保護層4は離型層7と保護層41の2層から構成され、熱転写時に保護層41の基材シート2との剥離性を向上させるために離型層7を設けている。また熱転写捺印層5は、離型層7、捺印層51、接着層8の3層から構成され、熱転写時に捺印層51の基材シート2との剥離性を向上させるために離型層7を設け、また捺印層51が熱転写して、受像シートの保護層面や受容層面との密着性を向上させるために接着層8を設けている。
また、基材シート2の反対側には耐熱滑性層6が設けられ、サーマルヘッド等の加熱手段の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止している。
【0015】
以下に本発明の熱転写シートを構成する各要素について説明する。
(基材シート)
本発明の熱転写シートに用いる基材シート2としては、従来から公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであれば、いずれのものでもよく、例えば、グラシン紙、コンデンサ紙、パラフイン紙等の薄葉紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、セロハン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー等のプラスチックフィルムが挙げられる。この基材シートの厚さは、その強度及び耐熱性等が適切になるように、材料に応じて適宜変更することが出来るが、その厚さは、2〜100μm、好ましくは、10〜80μm程度である。保護層転写後の印画物の表面光沢性を調整するために、マットタイプのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材シートとして使用しても良い。尚、そのマット化の形成手段としては、サンドブラスト、練り込み、内部発泡等が挙げられる。
【0016】
(色材層)
本発明の熱転写シートにおける基材シート上に設ける色材層3は、主に昇華により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解、或いは分散させた染料層の場合と、顔料、染料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融性インキ層の2通りのいずれでも使用でき、また例えばイエロー、マゼンタ、シアンの色材層は昇華型の染料層にして、ブラックの色材層は熱溶融性インキ層を面順次に設けて、両者を組み合わせて使用することも出来る。
【0017】
色材層である染料層は、染料を任意のバインダー樹脂で担持させた層である。使用する染料としては、従来公知の熱転写シートに使用されている染料は、いずれも有効に使用可能であり特に限定されない。例えば、いくつかの好ましい染料としては、マゼンタ染料として、MS RedG、MacrolexRed Violet R、CeresRed7B、Samaron RedHBSL、Resolin Red F3BS等が挙げられ、又、イエローの染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL、PTY−52、マクロレックスイエロー6G等が挙げられ、又、シアン染料としては、カヤセットブルー714、ワクソリンブルーAP−FW、ホロンブリリアントブルーS−R、MSブルー100等が挙げられる。
【0018】
上記の如き染料を担持する為のバインダー樹脂としては、従来公知のものがいずれも使用出来、好ましいものを例示すれば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル等が挙げられるが、これらの中では、セルロース系、アセタール系、ブチラール系及びポリエステル系等が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましいものである。更に染料層中にはその他必要に応じて従来公知の各種の添加剤も包含し得る。
【0019】
このような染料層は、好ましくは適当な溶剤中に前記の昇華性染料、バインダー樹脂及びその他の任意成分を加えて各成分を溶解又は分散させて染料層形成用塗料又はインキを調製し、これを上記の基材シート上に面順次に塗布及び乾燥させて形成する。このようにして形成する染料層は乾燥時0.2〜5.0g/m2、好ましくは0.4〜2.0g/m2程度の厚さであり、又、染料層中の昇華性染料の比率は、染料層に対して5〜90質量%、好ましくは10〜70質量%の量で存在するのが好適である。
【0020】
また、色材層である熱溶融性インキ層としては、着色剤とバインダーからなり、必要に応じて任意の添加剤を加えてもよい。上記の着色剤としては、有機または無機の顔料、もしくは染料のうち、記録材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度などにより変褪色しないものが好ましい。着色剤としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの色相のものが用いられる。使用するバインダーとしては、ワックスを主成分として、その他に乾性油、樹脂、鉱油、セルロースおよびゴムの誘導体などの混合物が用いられる。
【0021】
ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが用いられる。また、熱溶融性インキ層の使用するバインダーとしては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、またはアクリル樹脂、またはアクリル樹脂に塩化ゴム、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース系樹脂等を使用することができる。上記の着色剤、バインダーに必要に応じて、添加剤等を加えた熱溶融性インキ層組成物を用いて、ホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート法等により、乾燥時で厚さは1〜8g/m2程度で形成することができる。
【0022】
(熱転写保護層)
本発明における熱転写シートの基材シート上に設ける熱転写保護層4、41は、従来から保護層形成用樹脂として知られている各種の樹脂で形成することができる。保護層形成用樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物や、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等を例示することができる。このほかに必要に応じて、紫外線吸収剤、有機フィラー及び/又は無機フィラーを適宜添加することができる。
【0023】
電離放射線硬化性樹脂を含有する保護層は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている。電離放射線硬化性樹脂としては公知のものを使用することができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを使用することができる。尚、上記の電離放射線硬化性樹脂は、熱転写保護層と基材シートの間の離型層や、熱転写保護層の上の接着層にも、添加することができる。紫外線遮断性樹脂や、紫外線吸収剤を含有する保護層は、印画物に耐光性を付与することを主目的とする。紫外線遮断性樹脂として、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系の様な従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものを例示することができる。
【0024】
紫外線吸収剤は、従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤で、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系が挙げられる。また、上記の紫外線遮断性樹脂や、紫外線吸収剤を熱転写シートの離型層や接着層にも、添加することができる。有機フィラー及び/又は無機フィラーとしては、具体的にはポリエチレンワックス、ビスアマイド、ナイロン、アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイクロシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ微粉末等が挙げられるが、特に限定はされず何でも使用できる。但し、滑り性が良く、粒径は、10μm以下好ましくは0.1〜3μmの範囲のものが好ましい。フィラーの添加量は、上記のような樹脂分100質量部に対して、0〜100質量部の範囲で、保護層の転写した後に透明性が保たれることが好ましい。
【0025】
熱転写保護層は、上記に記載した保護層形成用樹脂と必要に応じて、紫外線吸収剤、有機フィラー及び/又は無機フィラー等の添加剤を加え、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、熱転写保護層形成用インキを調製し、これを、上記の基材シートに、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥して形成することができる。熱転写保護層の基材シート上への塗布条件は、基材シート上にイエロー、マゼンタ、シアンの3色、必要に応じてブラックやその他の特色等の色材層を面順次に設けて、その色材層の最後に、熱転写保護層を、基材シート上に任意の厚みに形成することができるが、乾燥後の厚みで0.1〜50g/m2であり、好ましくは1〜20g/m2程度である。
【0026】
(離型層)
本発明の熱転写シートでは、基材シート2と保護層41との間に、熱転写保護層の転写性を向上させるために、離型層7を形成することができる。
離型層は、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、弗素樹脂等の如く離型性に優れた材料、或はヒートロール等の熱によって溶融しない比較的高軟化点の樹脂、例えば、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、あるいはこれらの樹脂にワックス等の熱離型剤を含有させたものから形成できる。また、離型層はフィラーを添加することで、剥離力を適宜調整することが可能である。離型層の形成方法は前記熱転写保護層の形成方法と同様でよく、その厚みは0.5〜5g/m2程度で十分である。
【0027】
(接着層)
また、本発明で使用する熱転写シートは、上記の熱転写保護層の表面に、被転写体である印画物への転写性、接着性を良好にするために、接着層8を設けることができる。
この接着層は、従来公知の粘着剤や感熱接着剤がいずれも使用できるが、ガラス転移温度(Tg)が50℃〜80℃の熱可塑性樹脂から形成することがより好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等の如く熱時接着性の良好な樹脂から、適当なガラス転移温度を有するものを選択することが好ましい。上記のような接着層を構成する樹脂に必要に応じて、無機または有機フィラー等の添加剤を加えた塗工液を、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の手段により、塗布及び乾燥することによって、好ましくは乾燥時0.1〜10g/m2程度の厚みに形成する。
【0028】
尚、熱転写保護層は熱転写時に基材シートとの剥離性、また被転写体との接着性を有していれば、基材シート上に単層で形成することができる。また、基材シート上に、離型層を介して保護層を形成することができ、この場合は保護層に被転写体との接着性をもたせるために、熱接着性(ヒートシール性)を有する熱可塑性樹脂を主体に保護層を構成することが好ましい。
【0029】
(熱転写捺印層)
本発明における熱転写シートの基材シート上に設ける熱転写捺印層5、51は、朱肉やスタンプインキで捺印したり、水性ペン、ボールペン、万年筆、鉛筆等各種の筆記具で手書きしたり、スタンプインキでナンバリングしたりする場合の捺印性、筆記性を付与させた層である。
捺印層は、バインダー樹脂と無機フィラーを主成分に構成される。バインダー樹脂として、例えば、アクリル酸エステル、飽和ポリエステル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールや、ポリビニルアルコール等が使用できる。これらの樹脂のうちの活性水素を有するものについては、さらにそれらのイソシアネート架橋物をバインダーとすることもできる。
【0030】
無機フィラーとしては、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、この無機フィラーの含有割合は、バインダー樹脂に対して、0.01〜200質量%程度で添加する。
捺印層の形成手段は、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の従来公知の印刷塗工手段でよく、その厚さは、乾燥時で0.5〜20g/m2程度である。
【0031】
尚、熱転写捺印層は熱転写時に基材シートとの剥離性、また被転写体との接着性を有していれば、基材シート上に単層で形成することができる。また、基材シート上に、熱転写保護層で使用したものと同様の離型層を介して捺印層を形成することができ、この場合は捺印層に被転写体との接着性をもたせるために、熱接着性(ヒートシール性)を有する熱可塑性樹脂を主体に捺印層を構成することが好ましい。
また、熱転写シートの熱転写捺印層において、捺印層の上に(熱転写シートの形態としては最表面に)、熱転写保護層で使用したものと同様の接着層を設け、捺印層と被転写体との密着性を向上させることができる。
【0032】
(耐熱滑性層)
本発明の熱転写シートでは、基材シートの裏面、すなわち色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層の設けてある面と反対面に、熱転写手段としてのサーマルヘッドやヒートロール等の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層6を設けることができる。
耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0033】
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加、あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。耐熱滑性層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱滑性層形成用インキを調製し、これを、上記の基材シートの裏面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥して形成することができる。
【0034】
(捺印層形成方法)
本発明の捺印形成方法について、図2を参照して説明する。
(1)基材10上に受容層11を有する熱転写受像シート9を用意し、その受容層11に対して、図示してはいないが別に用意した熱転写シートの色材層により、熱転写画像12を形成する。
(2)次に、前記受容層11に形成された熱転写画像12を覆うように、図示してはいないが別に用意した熱転写シートの熱転写保護層4を熱転写により転写する。
(3)次に、その受像シート9の受像面に熱転写捺印層5を熱転写して、捺印層5を形成する。
これにより、熱転写受像シート9に熱転写画像12と、該熱転写画像12上の保護層4と、さらに受像シートの受像面に、捺印層5が形成されることになる。
【0035】
本発明の捺印形成方法を更に詳しく説明すると、先ず、上述した基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成された熱転写シートと、基材10上に受容層11を有する熱転写受像シート9を用意し、サーマルヘッド等の加熱デバイスとプラテンロールとの間に、熱転写受像シート9の受容層11と、熱転写シートの色材層を接するように圧接し、画像情報に応じて、加熱デバイスの発熱部分を選択的に発熱させ、熱転写シート上の色材層の色材を受容層11に転写させることによって、熱転写画像12を記録する。(図2(1)参照)
【0036】
次に、上記の熱転写シートを用いて、サーマルヘッド等の加熱デバイスとプラテンロールとの間に、上記受容層11と熱転写保護層4を接するように圧接し、加熱デバイスの発熱部分を選択的に発熱させ、所望の領域に、熱転写シートの基材シート上の熱転写保護層4を熱転写受像シートの受容層11に転写させる。(図2(2)参照)
尚、熱転写保護層の受容層への転写は、熱転写画像上に設けられていれば、受容層の全面や、図示した領域とは異なる領域に転写することができる。
【0037】
また、次に上記の熱転写シートを用いて、サーマルヘッド等の加熱デバイスとプラテンロールとの間に、上記の熱転写受像シート9の受像面と熱転写シートの熱転写捺印層5を接するように圧接し、画像情報に応じて、加熱デバイスの発熱部分を選択的に発熱させ、熱転写シートの基材シート上の熱転写捺印層5を熱転写受像シート9の受像面に転写させることによって、熱転写受像シート9に捺印層5を形成する。(図1(3)参照)
尚、熱転写捺印層の熱転写受像シートの受像面への転写は、図示したように受容層11上で、保護層4と重ならない位置に限らず、例えば、保護層の上、あるいは受像シートの基材と接する位置であっても良い。
【0038】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明する。尚、文中部または%とあるのは質量基準である。
(実施例1)
厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、東レ製)を基材シートとし、その背面側に下記組成の耐熱滑性層を乾燥状態の塗工量が2g/m2になるように形成し、かつその基材シートの表面側にポリウレタン系樹脂からなるプライマー層を乾燥状態の塗工量が0.5g/m2になるように形成し、そのプライマー層表面に、下記組成のイエロー、マゼンタ、シアンの各染料層を乾燥状態の塗工量が1.5g/m2になるように、図1に示すような配置で、面順次に繰返し形成した。
【0039】
(耐熱滑性層用塗工液)
ポリビニルブチラール樹脂 3.6部
(積水化学工業(株)製、エスレックBX−1)
ポリイソシアネート 19.2部
(大日本インキ化学工業(株)製、バーノックD750−45)
リン酸エステル系界面活性剤 2.9部
(第一工業製薬(株)製、プライサーフA208S)
リン酸エステル系界面活性剤 0.3部
(東邦化学(株)製、フォスファノールRD720)
タルク(日本タルク(株)製) 0.2部
メチルエチルケトン 33部
トルエン 33部
【0040】
(イエロー染料層用塗工液)
イエロー染料 5.5部
(Fron Brilliant Yellow S−6GL)
ポリビニルアセトアセタール樹脂 4.5部
(KS−5:積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 89部
【0041】
(マゼンタ染料層用塗工液)
上記のイエロー染料に代えてマゼンタ染料(MS Red Gを1.5部、Macrolex Red Violet Rを2.0部)を使用した以外は、イエロー染料層と同じにして調整した。
(シアン染料層用塗工液)
上記のイエロー染料に代えてシアン染料(カヤセットブルー714を4.0部)を使用した以外は、イエロー染料層と同じにして調整した。
【0042】
次に下記組成の離型層を乾燥状態の塗工量が0.5g/m2になるように、図1に示すような配置で、上記基材シート上(プライマー層上)に形成した。
そして、その離型層上に下記組成の保護層を乾燥状態の塗工量が4g/m2になるように、図1に示すような配置で形成した。
(離型層用塗工液)
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−87) 30部
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
【0043】
(保護層用塗工液)
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−87) 77部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 19部
(積水化学工業(株)製、エスレックC)
ポリエチレンワックス 3.5部
(三井化学(株)製、平均粒径5μm)
ポリエステル樹脂 0.5部
(東洋紡績(株)製、バイロン220)
紫外線吸収剤 0.5部
(BASFジャパン社製、UVA635L)
トルエン 250部
メチルエチルケトン 250部
【0044】
次に、上記の塗工した離型層上に、下記組成の捺印層を乾燥状態の塗工量が5g/m2になるように、さらにその捺印層の上に下記組成の接着層を乾燥状態の塗工量が1g/m2になるように、それぞれ図1に示すような配置で形成し、実施例1の熱転写シートを作製した。
(捺印層用塗工液)
ポリビニルブチラール 30部
(#3000−1、電気化学工業(株)製)
ナイロンフィラー(MW−330、神東塗料(株)製) 5部
シリカ(サイリシア250、富士シリシア化学(株)製) 60部
キレート剤(オルガテックスTC−750、松本製薬(株)製) 5部
トルエン/IPA(質量比=l/1) 400部
【0045】
(接着層用塗工液)
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン220) 30部
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
【0046】
次に、基材として、厚さ150μmの合成紙(王子油化(株)製 ユポFPG#150)を用い、その一方の面に下記組成の受容層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により塗布(5.0g/m2:固形分)した後、110℃で30秒間乾燥して、熱転写受像シートを得た。
【0047】
(受容層用塗工液)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体 10部
(電気化学工業(株)製 電化ビニル#1000A)
エポキシ変性シリコーン 1部
(信越化学工業(株)製 X−22−3000T)
メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量比) 40部
【0048】
上記の熱転写受像シートの受容層と、上記に作製した熱転写シートの染料層面を重ね合わせて、熱転写シートの背面側からサーマルヘッドを用いて、加熱するプリンターを用いて、図2(1)に示すような位置に、受容層11にフルカラーの熱転写画像12を形成し、次に受容層と上記に作製した熱転写シートの熱転写保護層を重ね合わせて、熱転写シートの背面側から上記と同じプリンターで加熱して、上記熱転写画像12を覆うように、図2(2)に示すような位置に、保護層4を転写した。その後に熱転写受像シート9の受像面と、上記に作製した熱転写シートの熱転写捺印層を重ね合わせて、熱転写シートの背面側から上記と同じプリンターで加熱して、図2(3)に示すような位置に、捺印層5を転写した。
上記の熱転写画像形成、保護層転写、捺印層転写をインラインで、プリンターに熱転写受像シートを1回通すことにより、印画物を作製した。
【0049】
尚、上記のプリンターは記録密度が300dpiのサーマルヘッドを搭載した256階調制御が可能であり、また写真画像等を色分解して得た電気信号に連結したものである。上記のフルカラーの熱転写画像の印字条件は、印字スピードが5ms/lineで、その最大階調時の印加エネルギーが0.65mJ/dotである。
【0050】
(比較例1)
上記の実施例1で作製した熱転写シートにおいて、熱転写保護層を下記条件に変更し、また熱転写捺印層を除いて比較例1のイエロー、マゼンタ、シアンの各染料層と熱転写保護層を基材シート上に面順次に設けた比較例1の熱転写シートを作製した。
<熱転写保護層の条件>
耐熱滑性層付きの基材シートの耐熱滑性層の設けられている面と反対面に、実施例1と同様に離型層を形成し、その離型層の上に、下記組成の保護層を乾燥状態の塗工量が4g/m2になるように、形成し、さらにその保護層上に、実施例1で捺印層上に設けた接着層用塗工液により、乾燥状態の塗工量が1g/m2になるように接着層を形成した。
【0051】
(保護層用塗工液)
ポリビニルアルコール樹脂 10部
(ポバールC−318:クラレ(株)製))
アクリル系樹脂 10部
(アクアブリッド4720、ダイセル化学工業(株)製)
カルボキシメチルセルロース 0.5部
(CMCダイセル1260、ダイセル化学工業(株)製)
シリカ(サイリシア250、富士シリシア化学(株)製) 30部
イオン交換水 10部
イソプロピルアルコ−ル 10部
【0052】
(比較例2)
上記の実施例1で作製した熱転写シートにおいて、熱転写保護層を下記条件に変更し、また熱転写捺印層を除いて比較例2のイエロー、マゼンタ、シアンの各染料層と熱転写保護層を基材シート上に面順次に設けた比較例2の熱転写シートを作製した。
<熱転写保護層の条件>
耐熱滑性層付きの基材シートの耐熱滑性層の設けられている面と反対面に、実施例1と同様に離型層を形成し、その離型層の上に、下記組成の保護層を乾燥状態の塗工量が4g/m2になるように形成した。
【0053】
(保護層用塗工液)
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−87) 20部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 10部
(積水化学工業(株)製、エスレックC)
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
【0054】
実施例1で用意した熱転写受像シートと同様のものを用意し、その受容層と、上記に作製した比較例の熱転写シートの染料層面を重ね合わせて、熱転写シートの背面側からサーマルヘッドを用いて、実施例1で使用したプリンターを用いて受容層にフルカラーの熱転写画像を形成し、次に受容層と上記に作製した比較例の熱転写シートの熱転写保護層を重ね合わせて、熱転写シートの背面側から上記と同じプリンターで加熱して、上記熱転写画像を覆うように、保護層を転写して、印画物を作製した。
【0055】
上記の得られた実施例及び比較例の印画物に対し、捺印性、耐光性及び光沢度の評価を以下の条件にて行なった。
(捺印性)
水性染料インキ(シャチハタ社製)を付着させたスタンプを、実施例の印画物では捺印層上に、比較例の印画物では保護層上に、押し付けて、10分間放置し、インキの定着性、鮮明性を肉眼で観察した。評価は以下の基準による。
◎:インキの定着性、鮮明性ともに非常に良好である。
○:スタンプはあまり滲んでいないが、指で擦ると、薄くなる。
×:スタンプが滲んでいる。
【0056】
(耐光性)
実施例及び比較例で得られた印画物の画像面に、キセノンフェードメーター(アトラス社製 Ci−35A)を用いて、400KJ/m2のエネルギーで照射して、照射前後の色差ΔEab*を下式(1)によって求め、次の基準に従って評価した。
ΔEab*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 …(1)
【0057】
(評価基準)
○:ΔEab*が10未満
△:ΔEab*が10以上15以下
【0058】
(光沢度)
実施例及び比較例で得られた印画物において、保護層転写後の保護層表面の光沢度を、日本電色工業(株)製VGS−1001DPを用いて、入射光45°、反射光(測定光)45°の条件で表面光沢度を測定した。
【0059】
上記の評価結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0060】
上記の熱転写画像上に保護層を有し、かつ捺印層を有する実施例1の印画物は、画像部は鮮明であり、また保護層により覆われているので、耐光性等の耐久性に優れ、かつ受像面の捺印層におけるスタンプインキや朱肉の捺印は定着性、鮮明性ともに非常に良好である。尚、実施例1の捺印層上に、ボールペンで手書きをしたところ、インキのはじきもなく、鮮明であった。また、実施例1の印画物では、捺印層を受像面の任意の場所に転写して形成できる。
それに対し、比較例1の印画物は、保護層が捺印性をある程度有しているが、定着、乾燥性が不十分であり、また耐光性、耐磨耗性等の保護層としての機能が低いものであった。さらに、捺印欄は保護層そのものであり、捺印欄の領域を自由に変更できるものではない。
また、比較例2の印画物は、保護層における捺印性は全くないものであった。
【0061】
【発明の効果】
以上のごとき本発明によれば、基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されているものと、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートを用いて、該受容層に色材層による熱転写画像を形成し、次に該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写して、捺印層を形成する。
【0062】
これによって、受像シートに形成された熱転写画像部を保護するための熱転写保護層と、受像シートの受像面の任意の場所に捺印や筆記するための捺印層を熱転写捺印層として、2つの層を別個に設けるため、耐久性、透明性及び光沢性等の保護層としての機能と、捺印性、筆記性を有する捺印層としての機能を、それぞれ単独の専用の機能として強力に発揮させることが可能となった。
また、本発明では、一つの基材シート上に、色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層をこの順に面順次に形成しているため、熱転写記録装置(熱転写プリンター)でインラインで、1回通しにて、受像シートに熱転写画像と、該熱転写画像上の保護層と、さらに受像シートの受像面の任意の場所に、捺印層を形成することができ、無駄の無い、非常に効率的に印画物を作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の捺印層形成方法を説明する概略図である。
【符号の説明】
1 熱転写シート
2 基材シート
3 色材層
4 熱転写保護層
5 熱転写捺印層
6 耐熱滑性層
7 離型層
8 接着層
9 熱転写受像シート
10 基材
11 受容層
12 熱転写画像
31 イエロー(Y)色材層
32 マゼンタ(M)色材層
33 シアン(C)色材層
41 保護層
51 捺印層
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートの受容層に色材層による熱転写画像を形成し、該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写し、その後に熱転写受像シートの受像面に、捺印層を熱転写する捺印層形成方法及びそれに使用される熱転写シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、簡便な印刷方法として熱転写方法が広く使用されるようになってきた。
熱転写方法は、基材シートの一方の面に色材層が設けられた熱転写シートと、必要に応じて画像受容層が設けられた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面を画像状に加熱して、色材層に含まれる色材を選択的に移行させて、熱転写受像シート上に画像を形成する方法である。
【0003】
熱転写方法は、溶融転写方式と昇華転写方式に分けられる。溶融転写方式は顔料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融インキ層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチックシート等の熱転写受像シート上に、色材をバインダーと共に転写する画像形成方法である。溶融転写方式による画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字等の2値画像の記録に適している。
【0004】
一方、昇華転写方式は主に昇華により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解、或いは分散させた染料層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチック等の基材シートに必要に応じて染料受容層を設けてなる熱転写受像シート上に、染料のみを転写移行させる画像形成方法である。昇華転写方式は、印加されるエネルギー量に応じて染料の移行量を制御できるため、サーマルヘッドのドット毎に画像濃度を制御した階調画像の形成を行なうことができる。
また、使用する色材が染料であるため、形成される画像には透明性があり、異なる色の染料を重ねた場合の中間色の再現性が優れている。したがって、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の異なる色の熱転写シートを用い、熱転写受像シート上に各色染料を重ねて転写する際にも、中間色の再現性に優れた高画質な写真調フルカラー画像の形成が可能である。
【0005】
これらの熱転写方法では、各種の画像を簡便に形成することができるので、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えば身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真、絵ハガキや、他にメッセージカード、カレンダー、システム手帳等の様々な用途に利用されるようになっている。
【0006】
上記のような熱転写シートで、IDカード等を作成する場合、溶融転写方式は、文字や数字等の2値画像の形成は容易であるが、顔写真等の高画質が要求される画像の形成には不適当である。また得られた画像は耐久性、特に耐摩擦性に劣るという欠点がある。一方、昇華転写方式は顔写真等の階調性画像を形成するのに適しているが、得られた画像は、印刷インキと異なりビヒクルがないため、耐光性、耐候性、耐摩擦性等の耐久性に劣るという欠点がある。
これらの欠点を解決する手段として、基材フィルム上に転写性樹脂層を設けた保護層転写シートを用い、この転写性樹脂層を転写して、得られた画像上の少なくとも一部に保護層を設けることが提案されている。(例えば特許文献1参照)
【0007】
この方法を用いれば耐薬品性、耐光性等の耐久性を向上させることはできるが、保護層上に朱肉やスタンプインキで捺印したり、各種の筆記具で手書きしたり、スタンプインキでナンバリングしたりする場合、捺印や記入した内容が不鮮明になり、判読できないという問題がある。
これに対して、特許文献2では、保護層転写シートの熱転写性保護層として、コロイダルシリカ等の微粒子をバインダー樹脂に分散させた多孔質構造の表面層を有したものが記載されている。
また、特許文献3では、保護層転写シートの熱転写性保護層として、転写後の最表面層がアクリル系樹脂と、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの少なくとも一つとで構成され、また該最表面層が、ひび割れ形状、或いは微細孔を保有する形状であることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−1076号公報
【特許文献2】
特開平8−324140号公報
【特許文献3】
特開2002−2108号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような保護層転写シートでは、熱転写性保護層の耐久性、透明性及び光沢性等を要求される点と、捺印性、筆記性を要求される点の両方を満足するには、十分なものではない。
したがって、本発明は、上記のような問題点を解決し、熱転写画像が形成された受像シートにおける画像部における耐久性、鮮明性及び光沢性に優れ、かつ受像シートの受像面における捺印性、筆記性が良好となる、基材シート上に少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シート及び捺印層形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1として、基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されていることを特徴とする。
請求項2として、請求項1に記載の熱転写保護層は、基材シート側から順番に、少なくとも離型層、熱接着性を有する保護層の2層構成になっていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3として、本発明の捺印層形成方法は、請求項1に記載の熱転写シートを用いて、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートの受容層に色材層による熱転写画像を形成し、該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写して、捺印層を形成することを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明においては、基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されているものと、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートを用いて、該受容層に色材層による熱転写画像を形成し、次に該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写して、捺印層を形成する。これによって、受像シートに形成された熱転写画像部を保護するための熱転写保護層と、受像シートの受像面の任意の場所に捺印や筆記するための捺印層を熱転写捺印層として、2つの層を別個に設けるため、耐久性、透明性及び光沢性等の保護層としての機能と、捺印性、筆記性を有する捺印層としての機能を合わせて所有するのではなく、上記の2つの機能を別個に分けて、1つの層で一つの機能を専用として強力に発揮させることが可能となった。
また、本発明では、一つの基材シート上に、色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層をこの順に面順次に形成しているため、熱転写記録装置(熱転写プリンター)でインラインで、1回通しにて、受像シートに熱転写画像と、該熱転写画像上の熱転写保護層と、さらに受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を形成することができ、無駄の無い、非常に効率的に印画物を作製することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
図1は、本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す概略断面図であり、図示した熱転写シート1は、基材シート2の一方の面に耐熱滑性層6を有し、また基材シート2の反対側の面に、イエロー(Y)色材層31、マゼンタ(M)色材層32、シアン(C)色材層33の3色の色材層3、熱転写保護層4、熱転写捺印層5がこの順に面順序に繰り返し形成されている。
但し、基材シート上に設ける色材層は、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各層であり、必要に応じてブラックの色材層や、その他の色相の色材層を加えて、3色より多色の色材層としてもよい。
【0014】
尚、図1(1)は平面図、図1(2)は(1)で示した図の断面図である。熱転写シート1において、イエロー色材層31、マゼンタ色材層32、シアン色材層33の3色の色材層3は基材シート2上に直接設けられているが、熱転写保護層4は離型層7と保護層41の2層から構成され、熱転写時に保護層41の基材シート2との剥離性を向上させるために離型層7を設けている。また熱転写捺印層5は、離型層7、捺印層51、接着層8の3層から構成され、熱転写時に捺印層51の基材シート2との剥離性を向上させるために離型層7を設け、また捺印層51が熱転写して、受像シートの保護層面や受容層面との密着性を向上させるために接着層8を設けている。
また、基材シート2の反対側には耐熱滑性層6が設けられ、サーマルヘッド等の加熱手段の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止している。
【0015】
以下に本発明の熱転写シートを構成する各要素について説明する。
(基材シート)
本発明の熱転写シートに用いる基材シート2としては、従来から公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであれば、いずれのものでもよく、例えば、グラシン紙、コンデンサ紙、パラフイン紙等の薄葉紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、セロハン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー等のプラスチックフィルムが挙げられる。この基材シートの厚さは、その強度及び耐熱性等が適切になるように、材料に応じて適宜変更することが出来るが、その厚さは、2〜100μm、好ましくは、10〜80μm程度である。保護層転写後の印画物の表面光沢性を調整するために、マットタイプのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材シートとして使用しても良い。尚、そのマット化の形成手段としては、サンドブラスト、練り込み、内部発泡等が挙げられる。
【0016】
(色材層)
本発明の熱転写シートにおける基材シート上に設ける色材層3は、主に昇華により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解、或いは分散させた染料層の場合と、顔料、染料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融性インキ層の2通りのいずれでも使用でき、また例えばイエロー、マゼンタ、シアンの色材層は昇華型の染料層にして、ブラックの色材層は熱溶融性インキ層を面順次に設けて、両者を組み合わせて使用することも出来る。
【0017】
色材層である染料層は、染料を任意のバインダー樹脂で担持させた層である。使用する染料としては、従来公知の熱転写シートに使用されている染料は、いずれも有効に使用可能であり特に限定されない。例えば、いくつかの好ましい染料としては、マゼンタ染料として、MS RedG、MacrolexRed Violet R、CeresRed7B、Samaron RedHBSL、Resolin Red F3BS等が挙げられ、又、イエローの染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL、PTY−52、マクロレックスイエロー6G等が挙げられ、又、シアン染料としては、カヤセットブルー714、ワクソリンブルーAP−FW、ホロンブリリアントブルーS−R、MSブルー100等が挙げられる。
【0018】
上記の如き染料を担持する為のバインダー樹脂としては、従来公知のものがいずれも使用出来、好ましいものを例示すれば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル等が挙げられるが、これらの中では、セルロース系、アセタール系、ブチラール系及びポリエステル系等が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましいものである。更に染料層中にはその他必要に応じて従来公知の各種の添加剤も包含し得る。
【0019】
このような染料層は、好ましくは適当な溶剤中に前記の昇華性染料、バインダー樹脂及びその他の任意成分を加えて各成分を溶解又は分散させて染料層形成用塗料又はインキを調製し、これを上記の基材シート上に面順次に塗布及び乾燥させて形成する。このようにして形成する染料層は乾燥時0.2〜5.0g/m2、好ましくは0.4〜2.0g/m2程度の厚さであり、又、染料層中の昇華性染料の比率は、染料層に対して5〜90質量%、好ましくは10〜70質量%の量で存在するのが好適である。
【0020】
また、色材層である熱溶融性インキ層としては、着色剤とバインダーからなり、必要に応じて任意の添加剤を加えてもよい。上記の着色剤としては、有機または無機の顔料、もしくは染料のうち、記録材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度などにより変褪色しないものが好ましい。着色剤としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの色相のものが用いられる。使用するバインダーとしては、ワックスを主成分として、その他に乾性油、樹脂、鉱油、セルロースおよびゴムの誘導体などの混合物が用いられる。
【0021】
ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが用いられる。また、熱溶融性インキ層の使用するバインダーとしては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、またはアクリル樹脂、またはアクリル樹脂に塩化ゴム、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース系樹脂等を使用することができる。上記の着色剤、バインダーに必要に応じて、添加剤等を加えた熱溶融性インキ層組成物を用いて、ホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート法等により、乾燥時で厚さは1〜8g/m2程度で形成することができる。
【0022】
(熱転写保護層)
本発明における熱転写シートの基材シート上に設ける熱転写保護層4、41は、従来から保護層形成用樹脂として知られている各種の樹脂で形成することができる。保護層形成用樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物や、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等を例示することができる。このほかに必要に応じて、紫外線吸収剤、有機フィラー及び/又は無機フィラーを適宜添加することができる。
【0023】
電離放射線硬化性樹脂を含有する保護層は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている。電離放射線硬化性樹脂としては公知のものを使用することができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを使用することができる。尚、上記の電離放射線硬化性樹脂は、熱転写保護層と基材シートの間の離型層や、熱転写保護層の上の接着層にも、添加することができる。紫外線遮断性樹脂や、紫外線吸収剤を含有する保護層は、印画物に耐光性を付与することを主目的とする。紫外線遮断性樹脂として、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系の様な従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものを例示することができる。
【0024】
紫外線吸収剤は、従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤で、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系が挙げられる。また、上記の紫外線遮断性樹脂や、紫外線吸収剤を熱転写シートの離型層や接着層にも、添加することができる。有機フィラー及び/又は無機フィラーとしては、具体的にはポリエチレンワックス、ビスアマイド、ナイロン、アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイクロシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ微粉末等が挙げられるが、特に限定はされず何でも使用できる。但し、滑り性が良く、粒径は、10μm以下好ましくは0.1〜3μmの範囲のものが好ましい。フィラーの添加量は、上記のような樹脂分100質量部に対して、0〜100質量部の範囲で、保護層の転写した後に透明性が保たれることが好ましい。
【0025】
熱転写保護層は、上記に記載した保護層形成用樹脂と必要に応じて、紫外線吸収剤、有機フィラー及び/又は無機フィラー等の添加剤を加え、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、熱転写保護層形成用インキを調製し、これを、上記の基材シートに、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥して形成することができる。熱転写保護層の基材シート上への塗布条件は、基材シート上にイエロー、マゼンタ、シアンの3色、必要に応じてブラックやその他の特色等の色材層を面順次に設けて、その色材層の最後に、熱転写保護層を、基材シート上に任意の厚みに形成することができるが、乾燥後の厚みで0.1〜50g/m2であり、好ましくは1〜20g/m2程度である。
【0026】
(離型層)
本発明の熱転写シートでは、基材シート2と保護層41との間に、熱転写保護層の転写性を向上させるために、離型層7を形成することができる。
離型層は、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、弗素樹脂等の如く離型性に優れた材料、或はヒートロール等の熱によって溶融しない比較的高軟化点の樹脂、例えば、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、あるいはこれらの樹脂にワックス等の熱離型剤を含有させたものから形成できる。また、離型層はフィラーを添加することで、剥離力を適宜調整することが可能である。離型層の形成方法は前記熱転写保護層の形成方法と同様でよく、その厚みは0.5〜5g/m2程度で十分である。
【0027】
(接着層)
また、本発明で使用する熱転写シートは、上記の熱転写保護層の表面に、被転写体である印画物への転写性、接着性を良好にするために、接着層8を設けることができる。
この接着層は、従来公知の粘着剤や感熱接着剤がいずれも使用できるが、ガラス転移温度(Tg)が50℃〜80℃の熱可塑性樹脂から形成することがより好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等の如く熱時接着性の良好な樹脂から、適当なガラス転移温度を有するものを選択することが好ましい。上記のような接着層を構成する樹脂に必要に応じて、無機または有機フィラー等の添加剤を加えた塗工液を、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の手段により、塗布及び乾燥することによって、好ましくは乾燥時0.1〜10g/m2程度の厚みに形成する。
【0028】
尚、熱転写保護層は熱転写時に基材シートとの剥離性、また被転写体との接着性を有していれば、基材シート上に単層で形成することができる。また、基材シート上に、離型層を介して保護層を形成することができ、この場合は保護層に被転写体との接着性をもたせるために、熱接着性(ヒートシール性)を有する熱可塑性樹脂を主体に保護層を構成することが好ましい。
【0029】
(熱転写捺印層)
本発明における熱転写シートの基材シート上に設ける熱転写捺印層5、51は、朱肉やスタンプインキで捺印したり、水性ペン、ボールペン、万年筆、鉛筆等各種の筆記具で手書きしたり、スタンプインキでナンバリングしたりする場合の捺印性、筆記性を付与させた層である。
捺印層は、バインダー樹脂と無機フィラーを主成分に構成される。バインダー樹脂として、例えば、アクリル酸エステル、飽和ポリエステル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールや、ポリビニルアルコール等が使用できる。これらの樹脂のうちの活性水素を有するものについては、さらにそれらのイソシアネート架橋物をバインダーとすることもできる。
【0030】
無機フィラーとしては、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、この無機フィラーの含有割合は、バインダー樹脂に対して、0.01〜200質量%程度で添加する。
捺印層の形成手段は、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の従来公知の印刷塗工手段でよく、その厚さは、乾燥時で0.5〜20g/m2程度である。
【0031】
尚、熱転写捺印層は熱転写時に基材シートとの剥離性、また被転写体との接着性を有していれば、基材シート上に単層で形成することができる。また、基材シート上に、熱転写保護層で使用したものと同様の離型層を介して捺印層を形成することができ、この場合は捺印層に被転写体との接着性をもたせるために、熱接着性(ヒートシール性)を有する熱可塑性樹脂を主体に捺印層を構成することが好ましい。
また、熱転写シートの熱転写捺印層において、捺印層の上に(熱転写シートの形態としては最表面に)、熱転写保護層で使用したものと同様の接着層を設け、捺印層と被転写体との密着性を向上させることができる。
【0032】
(耐熱滑性層)
本発明の熱転写シートでは、基材シートの裏面、すなわち色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層の設けてある面と反対面に、熱転写手段としてのサーマルヘッドやヒートロール等の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層6を設けることができる。
耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0033】
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加、あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。耐熱滑性層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱滑性層形成用インキを調製し、これを、上記の基材シートの裏面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥して形成することができる。
【0034】
(捺印層形成方法)
本発明の捺印形成方法について、図2を参照して説明する。
(1)基材10上に受容層11を有する熱転写受像シート9を用意し、その受容層11に対して、図示してはいないが別に用意した熱転写シートの色材層により、熱転写画像12を形成する。
(2)次に、前記受容層11に形成された熱転写画像12を覆うように、図示してはいないが別に用意した熱転写シートの熱転写保護層4を熱転写により転写する。
(3)次に、その受像シート9の受像面に熱転写捺印層5を熱転写して、捺印層5を形成する。
これにより、熱転写受像シート9に熱転写画像12と、該熱転写画像12上の保護層4と、さらに受像シートの受像面に、捺印層5が形成されることになる。
【0035】
本発明の捺印形成方法を更に詳しく説明すると、先ず、上述した基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成された熱転写シートと、基材10上に受容層11を有する熱転写受像シート9を用意し、サーマルヘッド等の加熱デバイスとプラテンロールとの間に、熱転写受像シート9の受容層11と、熱転写シートの色材層を接するように圧接し、画像情報に応じて、加熱デバイスの発熱部分を選択的に発熱させ、熱転写シート上の色材層の色材を受容層11に転写させることによって、熱転写画像12を記録する。(図2(1)参照)
【0036】
次に、上記の熱転写シートを用いて、サーマルヘッド等の加熱デバイスとプラテンロールとの間に、上記受容層11と熱転写保護層4を接するように圧接し、加熱デバイスの発熱部分を選択的に発熱させ、所望の領域に、熱転写シートの基材シート上の熱転写保護層4を熱転写受像シートの受容層11に転写させる。(図2(2)参照)
尚、熱転写保護層の受容層への転写は、熱転写画像上に設けられていれば、受容層の全面や、図示した領域とは異なる領域に転写することができる。
【0037】
また、次に上記の熱転写シートを用いて、サーマルヘッド等の加熱デバイスとプラテンロールとの間に、上記の熱転写受像シート9の受像面と熱転写シートの熱転写捺印層5を接するように圧接し、画像情報に応じて、加熱デバイスの発熱部分を選択的に発熱させ、熱転写シートの基材シート上の熱転写捺印層5を熱転写受像シート9の受像面に転写させることによって、熱転写受像シート9に捺印層5を形成する。(図1(3)参照)
尚、熱転写捺印層の熱転写受像シートの受像面への転写は、図示したように受容層11上で、保護層4と重ならない位置に限らず、例えば、保護層の上、あるいは受像シートの基材と接する位置であっても良い。
【0038】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明する。尚、文中部または%とあるのは質量基準である。
(実施例1)
厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、東レ製)を基材シートとし、その背面側に下記組成の耐熱滑性層を乾燥状態の塗工量が2g/m2になるように形成し、かつその基材シートの表面側にポリウレタン系樹脂からなるプライマー層を乾燥状態の塗工量が0.5g/m2になるように形成し、そのプライマー層表面に、下記組成のイエロー、マゼンタ、シアンの各染料層を乾燥状態の塗工量が1.5g/m2になるように、図1に示すような配置で、面順次に繰返し形成した。
【0039】
(耐熱滑性層用塗工液)
ポリビニルブチラール樹脂 3.6部
(積水化学工業(株)製、エスレックBX−1)
ポリイソシアネート 19.2部
(大日本インキ化学工業(株)製、バーノックD750−45)
リン酸エステル系界面活性剤 2.9部
(第一工業製薬(株)製、プライサーフA208S)
リン酸エステル系界面活性剤 0.3部
(東邦化学(株)製、フォスファノールRD720)
タルク(日本タルク(株)製) 0.2部
メチルエチルケトン 33部
トルエン 33部
【0040】
(イエロー染料層用塗工液)
イエロー染料 5.5部
(Fron Brilliant Yellow S−6GL)
ポリビニルアセトアセタール樹脂 4.5部
(KS−5:積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 89部
【0041】
(マゼンタ染料層用塗工液)
上記のイエロー染料に代えてマゼンタ染料(MS Red Gを1.5部、Macrolex Red Violet Rを2.0部)を使用した以外は、イエロー染料層と同じにして調整した。
(シアン染料層用塗工液)
上記のイエロー染料に代えてシアン染料(カヤセットブルー714を4.0部)を使用した以外は、イエロー染料層と同じにして調整した。
【0042】
次に下記組成の離型層を乾燥状態の塗工量が0.5g/m2になるように、図1に示すような配置で、上記基材シート上(プライマー層上)に形成した。
そして、その離型層上に下記組成の保護層を乾燥状態の塗工量が4g/m2になるように、図1に示すような配置で形成した。
(離型層用塗工液)
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−87) 30部
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
【0043】
(保護層用塗工液)
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−87) 77部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 19部
(積水化学工業(株)製、エスレックC)
ポリエチレンワックス 3.5部
(三井化学(株)製、平均粒径5μm)
ポリエステル樹脂 0.5部
(東洋紡績(株)製、バイロン220)
紫外線吸収剤 0.5部
(BASFジャパン社製、UVA635L)
トルエン 250部
メチルエチルケトン 250部
【0044】
次に、上記の塗工した離型層上に、下記組成の捺印層を乾燥状態の塗工量が5g/m2になるように、さらにその捺印層の上に下記組成の接着層を乾燥状態の塗工量が1g/m2になるように、それぞれ図1に示すような配置で形成し、実施例1の熱転写シートを作製した。
(捺印層用塗工液)
ポリビニルブチラール 30部
(#3000−1、電気化学工業(株)製)
ナイロンフィラー(MW−330、神東塗料(株)製) 5部
シリカ(サイリシア250、富士シリシア化学(株)製) 60部
キレート剤(オルガテックスTC−750、松本製薬(株)製) 5部
トルエン/IPA(質量比=l/1) 400部
【0045】
(接着層用塗工液)
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン220) 30部
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
【0046】
次に、基材として、厚さ150μmの合成紙(王子油化(株)製 ユポFPG#150)を用い、その一方の面に下記組成の受容層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により塗布(5.0g/m2:固形分)した後、110℃で30秒間乾燥して、熱転写受像シートを得た。
【0047】
(受容層用塗工液)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体 10部
(電気化学工業(株)製 電化ビニル#1000A)
エポキシ変性シリコーン 1部
(信越化学工業(株)製 X−22−3000T)
メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量比) 40部
【0048】
上記の熱転写受像シートの受容層と、上記に作製した熱転写シートの染料層面を重ね合わせて、熱転写シートの背面側からサーマルヘッドを用いて、加熱するプリンターを用いて、図2(1)に示すような位置に、受容層11にフルカラーの熱転写画像12を形成し、次に受容層と上記に作製した熱転写シートの熱転写保護層を重ね合わせて、熱転写シートの背面側から上記と同じプリンターで加熱して、上記熱転写画像12を覆うように、図2(2)に示すような位置に、保護層4を転写した。その後に熱転写受像シート9の受像面と、上記に作製した熱転写シートの熱転写捺印層を重ね合わせて、熱転写シートの背面側から上記と同じプリンターで加熱して、図2(3)に示すような位置に、捺印層5を転写した。
上記の熱転写画像形成、保護層転写、捺印層転写をインラインで、プリンターに熱転写受像シートを1回通すことにより、印画物を作製した。
【0049】
尚、上記のプリンターは記録密度が300dpiのサーマルヘッドを搭載した256階調制御が可能であり、また写真画像等を色分解して得た電気信号に連結したものである。上記のフルカラーの熱転写画像の印字条件は、印字スピードが5ms/lineで、その最大階調時の印加エネルギーが0.65mJ/dotである。
【0050】
(比較例1)
上記の実施例1で作製した熱転写シートにおいて、熱転写保護層を下記条件に変更し、また熱転写捺印層を除いて比較例1のイエロー、マゼンタ、シアンの各染料層と熱転写保護層を基材シート上に面順次に設けた比較例1の熱転写シートを作製した。
<熱転写保護層の条件>
耐熱滑性層付きの基材シートの耐熱滑性層の設けられている面と反対面に、実施例1と同様に離型層を形成し、その離型層の上に、下記組成の保護層を乾燥状態の塗工量が4g/m2になるように、形成し、さらにその保護層上に、実施例1で捺印層上に設けた接着層用塗工液により、乾燥状態の塗工量が1g/m2になるように接着層を形成した。
【0051】
(保護層用塗工液)
ポリビニルアルコール樹脂 10部
(ポバールC−318:クラレ(株)製))
アクリル系樹脂 10部
(アクアブリッド4720、ダイセル化学工業(株)製)
カルボキシメチルセルロース 0.5部
(CMCダイセル1260、ダイセル化学工業(株)製)
シリカ(サイリシア250、富士シリシア化学(株)製) 30部
イオン交換水 10部
イソプロピルアルコ−ル 10部
【0052】
(比較例2)
上記の実施例1で作製した熱転写シートにおいて、熱転写保護層を下記条件に変更し、また熱転写捺印層を除いて比較例2のイエロー、マゼンタ、シアンの各染料層と熱転写保護層を基材シート上に面順次に設けた比較例2の熱転写シートを作製した。
<熱転写保護層の条件>
耐熱滑性層付きの基材シートの耐熱滑性層の設けられている面と反対面に、実施例1と同様に離型層を形成し、その離型層の上に、下記組成の保護層を乾燥状態の塗工量が4g/m2になるように形成した。
【0053】
(保護層用塗工液)
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−87) 20部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 10部
(積水化学工業(株)製、エスレックC)
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
【0054】
実施例1で用意した熱転写受像シートと同様のものを用意し、その受容層と、上記に作製した比較例の熱転写シートの染料層面を重ね合わせて、熱転写シートの背面側からサーマルヘッドを用いて、実施例1で使用したプリンターを用いて受容層にフルカラーの熱転写画像を形成し、次に受容層と上記に作製した比較例の熱転写シートの熱転写保護層を重ね合わせて、熱転写シートの背面側から上記と同じプリンターで加熱して、上記熱転写画像を覆うように、保護層を転写して、印画物を作製した。
【0055】
上記の得られた実施例及び比較例の印画物に対し、捺印性、耐光性及び光沢度の評価を以下の条件にて行なった。
(捺印性)
水性染料インキ(シャチハタ社製)を付着させたスタンプを、実施例の印画物では捺印層上に、比較例の印画物では保護層上に、押し付けて、10分間放置し、インキの定着性、鮮明性を肉眼で観察した。評価は以下の基準による。
◎:インキの定着性、鮮明性ともに非常に良好である。
○:スタンプはあまり滲んでいないが、指で擦ると、薄くなる。
×:スタンプが滲んでいる。
【0056】
(耐光性)
実施例及び比較例で得られた印画物の画像面に、キセノンフェードメーター(アトラス社製 Ci−35A)を用いて、400KJ/m2のエネルギーで照射して、照射前後の色差ΔEab*を下式(1)によって求め、次の基準に従って評価した。
ΔEab*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 …(1)
【0057】
(評価基準)
○:ΔEab*が10未満
△:ΔEab*が10以上15以下
【0058】
(光沢度)
実施例及び比較例で得られた印画物において、保護層転写後の保護層表面の光沢度を、日本電色工業(株)製VGS−1001DPを用いて、入射光45°、反射光(測定光)45°の条件で表面光沢度を測定した。
【0059】
上記の評価結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0060】
上記の熱転写画像上に保護層を有し、かつ捺印層を有する実施例1の印画物は、画像部は鮮明であり、また保護層により覆われているので、耐光性等の耐久性に優れ、かつ受像面の捺印層におけるスタンプインキや朱肉の捺印は定着性、鮮明性ともに非常に良好である。尚、実施例1の捺印層上に、ボールペンで手書きをしたところ、インキのはじきもなく、鮮明であった。また、実施例1の印画物では、捺印層を受像面の任意の場所に転写して形成できる。
それに対し、比較例1の印画物は、保護層が捺印性をある程度有しているが、定着、乾燥性が不十分であり、また耐光性、耐磨耗性等の保護層としての機能が低いものであった。さらに、捺印欄は保護層そのものであり、捺印欄の領域を自由に変更できるものではない。
また、比較例2の印画物は、保護層における捺印性は全くないものであった。
【0061】
【発明の効果】
以上のごとき本発明によれば、基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されているものと、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートを用いて、該受容層に色材層による熱転写画像を形成し、次に該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写して、捺印層を形成する。
【0062】
これによって、受像シートに形成された熱転写画像部を保護するための熱転写保護層と、受像シートの受像面の任意の場所に捺印や筆記するための捺印層を熱転写捺印層として、2つの層を別個に設けるため、耐久性、透明性及び光沢性等の保護層としての機能と、捺印性、筆記性を有する捺印層としての機能を、それぞれ単独の専用の機能として強力に発揮させることが可能となった。
また、本発明では、一つの基材シート上に、色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層をこの順に面順次に形成しているため、熱転写記録装置(熱転写プリンター)でインラインで、1回通しにて、受像シートに熱転写画像と、該熱転写画像上の保護層と、さらに受像シートの受像面の任意の場所に、捺印層を形成することができ、無駄の無い、非常に効率的に印画物を作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の捺印層形成方法を説明する概略図である。
【符号の説明】
1 熱転写シート
2 基材シート
3 色材層
4 熱転写保護層
5 熱転写捺印層
6 耐熱滑性層
7 離型層
8 接着層
9 熱転写受像シート
10 基材
11 受容層
12 熱転写画像
31 イエロー(Y)色材層
32 マゼンタ(M)色材層
33 シアン(C)色材層
41 保護層
51 捺印層
Claims (3)
- 基材シートの一方の面に耐熱滑性層を有し、該基材シートの反対側の面に、少なくとも色材層と剥離可能な熱転写保護層が形成されている熱転写シートにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの各色材層、熱転写保護層、熱転写捺印層がこの順に面順次に形成されていることを特徴とする熱転写シート。
- 請求項1に記載の熱転写保護層は、基材シート側から順番に、少なくとも離型層、熱接着性を有する保護層の2層構成になっていることを特徴とする熱転写シート。
- 請求項1に記載の熱転写シートを用いて、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートの受容層に色材層による熱転写画像を形成し、該熱転写画像を覆うように、熱転写保護層を熱転写して保護層を形成し、その後に熱転写受像シートの受像面の任意の場所に、熱転写捺印層を熱転写して、捺印層を形成することを特徴とする捺印層形成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002357162A JP2004188676A (ja) | 2002-12-09 | 2002-12-09 | 熱転写シート及び捺印層形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002357162A JP2004188676A (ja) | 2002-12-09 | 2002-12-09 | 熱転写シート及び捺印層形成方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004188676A true JP2004188676A (ja) | 2004-07-08 |
Family
ID=32757288
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002357162A Withdrawn JP2004188676A (ja) | 2002-12-09 | 2002-12-09 | 熱転写シート及び捺印層形成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004188676A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011152678A (ja) * | 2010-01-26 | 2011-08-11 | Dainippon Printing Co Ltd | 熱転写シート |
JP2011201092A (ja) * | 2010-03-25 | 2011-10-13 | Dainippon Printing Co Ltd | 熱転写シート |
JP2011212987A (ja) * | 2010-03-31 | 2011-10-27 | Dainippon Printing Co Ltd | 熱転写シート、及び印画物の形成方法 |
JP7257005B1 (ja) * | 2021-07-07 | 2023-04-13 | 大日本印刷株式会社 | 熱転写シート |
JP7505358B2 (ja) | 2020-09-30 | 2024-06-25 | 大日本印刷株式会社 | 熱転写シートと画像形成用シートとの組み合わせ、及び焼成体の製造方法 |
-
2002
- 2002-12-09 JP JP2002357162A patent/JP2004188676A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011152678A (ja) * | 2010-01-26 | 2011-08-11 | Dainippon Printing Co Ltd | 熱転写シート |
JP2011201092A (ja) * | 2010-03-25 | 2011-10-13 | Dainippon Printing Co Ltd | 熱転写シート |
JP2011212987A (ja) * | 2010-03-31 | 2011-10-27 | Dainippon Printing Co Ltd | 熱転写シート、及び印画物の形成方法 |
JP7505358B2 (ja) | 2020-09-30 | 2024-06-25 | 大日本印刷株式会社 | 熱転写シートと画像形成用シートとの組み合わせ、及び焼成体の製造方法 |
JP7257005B1 (ja) * | 2021-07-07 | 2023-04-13 | 大日本印刷株式会社 | 熱転写シート |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0333873B1 (en) | Thermal transfer sheet | |
JP2004122756A (ja) | 保護層熱転写シートおよびマット調印画物 | |
US7033974B2 (en) | Thermal transfer sheet | |
JP2009083146A (ja) | 熱転写シート及び画像形成方法 | |
JP3963555B2 (ja) | 接着層転写シートおよび印画物 | |
EP1293357B1 (en) | Thermal transfer film, process for producing the same and method for image formation using said thermal transfer film | |
JP3395090B2 (ja) | 保護層転写シート及び印画物 | |
JP3800568B2 (ja) | 保護層転写シート | |
JP3830985B2 (ja) | 保護層転写フィルム及び印画物 | |
JP2002274064A (ja) | 熱転写シートおよび印画物 | |
WO2005032842A1 (en) | Transfer of protective overcoat to a thermal dye transfer image | |
JP3052249B2 (ja) | 熱転写フイルム及びカードの製造方法 | |
JP3096691B2 (ja) | 熱転写カバーフイルム | |
JP2004188676A (ja) | 熱転写シート及び捺印層形成方法 | |
JP2000071632A (ja) | 蛍光潜像転写フィルム | |
JP2001199162A (ja) | 保護層転写シート | |
JP6657697B2 (ja) | 熱転写シート | |
JPH11180052A (ja) | 受容層転写シートおよび画像形成方法 | |
JP2006327193A (ja) | 保護層転写フィルム、及び印画物 | |
JP2999515B2 (ja) | 熱転写カバーフイルム | |
JP3012995B2 (ja) | Idカード及びid冊子並びにその作成装置 | |
JP2004195941A (ja) | 画像形成方法、熱転写シート、画像形成物及び中間転写記録媒体 | |
JP3183533B2 (ja) | 感熱転写画像記録体およびその製造方法 | |
JP3544683B2 (ja) | 受像シートおよび受像シートの製造方法 | |
JPH07205560A (ja) | 受容層転写シート |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060307 |