JP2004187153A - 無線装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】送信出力レベルを大きく変化させた場合でも、歪み補償回路を用いて、送信出力の低歪化と安定化を図ることが可能な送信回路を実現する。
【解決手段】無線制御部11より生成出力された送信信号は、歪み補償部4に入力されて歪み補償、変調及び周波数変換等が行われ、AGCアンプ5で利得調整されて増幅される。その後、バンドパスフィルタ6で不要波が除去され、ドライバアンプ7で電圧増幅された後、パワーアンプ8によって所定の送信出力まで電力増幅される。無線制御部11は、送信出力レベルを変更する場合には、AGCアンプ5の利得を変更するとともに、送信出力の帰還路に設けたレベル調整部9によって送信出力レベルの変化を相補するように帰還系の利得を調整する。これにより、歪み補償部4に帰還する帰還信号の信号レベルは、送信出力レベルの変化量に対して信号レベル変化量が小さくなり、所定範囲内に保持されるように調整される。
【選択図】 図1
【解決手段】無線制御部11より生成出力された送信信号は、歪み補償部4に入力されて歪み補償、変調及び周波数変換等が行われ、AGCアンプ5で利得調整されて増幅される。その後、バンドパスフィルタ6で不要波が除去され、ドライバアンプ7で電圧増幅された後、パワーアンプ8によって所定の送信出力まで電力増幅される。無線制御部11は、送信出力レベルを変更する場合には、AGCアンプ5の利得を変更するとともに、送信出力の帰還路に設けたレベル調整部9によって送信出力レベルの変化を相補するように帰還系の利得を調整する。これにより、歪み補償部4に帰還する帰還信号の信号レベルは、送信出力レベルの変化量に対して信号レベル変化量が小さくなり、所定範囲内に保持されるように調整される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線装置の送信回路に関し、特に、送信出力レベルを安定化させるための歪み補償回路を備えた無線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信における送信回路では、安定して通信を行うために、送信出力の安定化及び低歪み化が必須の条件である。また、移動局端末と固定基地局との間で通信を行う移動体通信システム等においては、通信相手の受信回路において過大入力とならないように自律的、又は通信相手からの指令に基づいて強制的に送信出力レベルを一定の割合で低下させることがある。
【0003】
従来、送信出力の歪みを低減する方法としては、パワーアンプの出力の包絡線と基準信号の包絡線とを比較し、その差信号をパワーアンプの入力に帰還させるもの(第1の従来例)がある(例えば、特許文献1参照)。また、パワーアンプの出力をダイオードを用いて包絡線検波し、そのピーク値と平均値との比を歪みとして検出することにより、パワーアンプへの供給電力を制御するもの(第2の従来例)がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
更に、送信スペクトラムの狭帯域化に用いられる歪み補償回路を備え、パワーアンプの歪み成分を含んだ送信出力の一部を歪み補償回路に帰還させることにより、歪みを補正すると共に、送信出力レベルを安定に保つ方法が従来より知られている。
【0005】
図4は、上記のような歪み補償回路を備えた送信回路の構成例を示すものである。無線制御部41において生成されたベースバンド帯域の送信信号は、歪み補償部42において帰還信号と加算された後、変調されて周波数変換され、RF帯域の送信信号となる。この送信信号はバンドパスフィルタ(BPF)43で不要波が除去され、ドライバアンプ44により電圧増幅されてからパワーアンプ45で所定値まで電力増幅される。電力増幅された送信信号はフィルタ46で送信周波数帯域が制限された後、アンテナ47に供給されて空間に放射される。
【0006】
また、パワーアンプ45で電力増幅された送信信号の一部は、帰還信号として歪み補償部42に線形に帰還され、周波数変換されて復調されてベースバンド帯域の帰還信号が生成される。この帰還信号を送信信号と逆位相で加算することにより、歪み補償がなされるとともに、送信出力レベルの変動が補正され、送信出力レベルが所定値に保持される。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−74552号公報(段落0008、図1)
【特許文献2】
特開2000−4173号公報(段落0025−0032、図2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例のように、送信出力をダイオード等により包絡線検波して歪みを検出する構成では、通信相手の受信回路において受信レベルが飽和しないようにするために送信出力のレベルを大幅に低下させた場合、ダイオード等の検波用素子の特性上、小レベルの信号から歪み成分を安定して検出することが困難である。
【0009】
また、図4に示した歪み補償回路を用いて送信出力レベルを安定化させる構成では、送信出力レベルを大幅に低下させることにより帰還信号のレベルも大幅に低下するので、歪み補償回路において広い範囲で線形性(リニアリティ)を確保した広ダイナミックレンジの回路が必要となる。例えば、送信出力レベルを−20dB低下させた場合は歪み補償回路において20dB以上のリニアリティが要求されるが、このような大きな送信出力レベルの変化に対応可能なように、広範囲にわたってリニアリティを確保可能な歪み補償回路を構成することは実現困難であった。歪み補償回路のリニアリティが崩れると帰還系が正常に機能しなくなり、送信出力レベルが変動してしまうおそれがある。また、部品のばらつきによっては、送信出力レベルだけでなく、歪み特性が劣化してしまい、歪み補償回路の本来の目的を果たせなくなる問題点もあった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、送信出力レベルを大きく変化させた場合でも、歪み補償回路を用いて、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に保つことができる送信回路を備えた無線装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る無線装置は、送信回路から出力される送信出力の帰還信号を基に送信信号の歪み成分の補償を行う歪み補償回路を有する無線装置であって、前記歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベルを調整するレベル調整手段を備え、前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが変更される場合に、この送信出力レベルの変化量に対して前記帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整することを特徴とする。
【0012】
上記構成により、送信回路のパワーアンプ等からの送信出力レベルが変更される場合に、レベル調整手段によって、この送信出力レベルの変化量に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整することにより、歪み補償回路に入力される帰還信号の信号レベルの変化幅が小さくなる。このため、歪み補償回路を用いる場合に、広範囲にわたってリニアリティを確保した広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、歪み成分を抑制し、送信出力レベルを安定化させることができ、高安定かつ歪み特性に優れた送信回路を安価に実現することができる。
【0013】
また、前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが変化した場合に、この送信出力レベルの変化に伴う前記帰還信号の信号レベル変化を補うように前記歪み補償回路への帰還系の利得を変化させることとする。
【0014】
上記構成では、レベル調整手段によって送信出力レベルの変化に伴う帰還信号の信号レベル変化を補うように歪み補償回路への帰還系の利得を変化させることにより、送信出力レベルの変化量に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整され、歪み補償回路への入力信号レベルを所定範囲内に保持することができる。
【0015】
また、前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが低下した場合に、この送信出力レベルの低下に伴う前記帰還信号の信号レベル低下を補うように前記歪み補償回路への帰還系の利得を増加させることとする。
【0016】
上記構成では、レベル調整手段によって送信出力レベルの低下に伴う帰還信号の信号レベル低下を補うように歪み補償回路への帰還系の利得を増加させることにより、送信出力レベルの変化量に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整され、歪み補償回路への入力信号レベルを所定範囲内に保持することができる。
【0017】
また、前記レベル調整手段は、前記歪み補償回路への帰還系の利得を前記送信出力レベルの変化に応じて所定量ごと段階的に変化させることとする。
【0018】
上記構成により、送信出力レベルの変化に対して帰還信号の信号レベルが段階的に調整され、簡単な構成で歪み補償回路への入力信号レベルを所定範囲内に保持することができる。
【0019】
また、前記送信出力のレベルを変更するとともに、この送信出力レベルの変化量に応じて前記レベル調整手段における前記帰還信号の信号レベルの調整量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
上記構成により、制御手段によって送信出力のレベルを変更する送信出力制御を行うとともに、この送信出力制御に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が所定範囲内に収まるようにレベル調整を行うことによって、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に変更でき、歪み補償回路を用いて歪み成分の抑制と送信出力レベルの安定化を図ることができる。またこの際、歪み補償回路は広範囲にわたってリニアリティを確保した広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、高安定かつ歪み特性に優れた送信回路を安価に実現することができる。
【0021】
本発明に係る無線装置の送信出力制御方法は、送信回路から出力される送信出力の帰還信号を基に送信信号の歪み成分の補償を行う歪み補償回路を有する無線装置の送信出力制御方法であって、前記送信回路の送信系の利得を変更して送信出力のレベルを変更するステップと、前記送信出力のレベルの変化量に応じて前記歪み補償回路への帰還系の利得を変化させて前記帰還信号の信号レベルを調整するステップと、前記信号レベルが調整された帰還信号を前記歪み補償回路に帰還して送信信号の歪み成分の補償を行うステップと、を有することを特徴とする。
【0022】
上記手順により、送信出力のレベルを変更する送信出力制御を行うとともに、この送信出力レベル変更に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が所定範囲内に収まるようにレベル調整を行うことによって、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に変更でき、歪み補償回路を用いて歪み成分の抑制と送信出力レベルの安定化を図ることができる。またこの際、歪み補償回路は広範囲にわたってリニアリティを確保した広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、高安定かつ歪み特性に優れた送信回路を安価に実現することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線装置の構成を示すブロック図である。本実施形態では、移動体通信システムにおける移動局端末などの移動可能な無線通信端末に用いられる無線装置の構成例を示す。
【0024】
本実施形態の無線装置は、アンテナ1、フィルタ2、アンテナ共用器3を備え、このアンテナ共用器3に、送信回路に対応する送信部と受信回路に対応する受信部10とが接続されている。アンテナ共用器3は、フィルタまたはスイッチ素子等により構成され、送信信号と受信信号の経路を切り替えるものである。送信部としては、歪み補償回路に相当する歪み補償部4、可変利得アンプであるAGC(自動利得制御)アンプ5、バンドパスフィルタ(BPF)6、ドライバアンプ7、パワーアンプ8、及びレベル調整部9を備えている。また、送信信号及び受信信号の処理、各部の制御等を行う無線制御部11を備えている。
【0025】
歪み補償部4は、送信信号の歪み成分の除去と信号レベル補正を行うもので、例えば図2に示すような構成となっている。図2は、図1に示した送信部における歪み補償部の構成例を示すブロック図である。歪み補償部4は、加算器21、変調器22、アップコンバートミキサ23、位相器24、ダウンコンバートミキサ25、AGCアンプ26、復調器27を有して構成される。
【0026】
レベル調整部9は、送信信号の一部を帰還する帰還信号の信号レベルを調整するもので、可変型の減衰器などで構成される。図3は、図1に示した送信部におけるレベル調整部の構成例を示すブロック図である。レベル調整部9は、直列接続された複数の減衰器31a,31b,31cと、これらの減衰器31a,31b,31cに並列に接続され各減衰器をオンオフするスイッチ回路32a,32b,32cとを有して構成される。例えば、−10dBの減衰器及びスイッチ回路を3組直列接続して、0〜−30dBまで10dBごとに4段階に信号レベルを調整可能なものを用いる。
【0027】
スイッチ回路32a,32b,32cは、無線制御部11からの減衰制御信号によってそれぞれ独立にオンオフ制御されるようになっており、これによって減衰器31a,31b,31cにおける帰還信号の通過経路を切り替え、歪み補償部4に入力する帰還信号のレベルを調整する。
【0028】
例えば、パワーアンプ8の送信出力が規定値(例えば33dBm、2W)である場合は、スイッチ回路32a,32b,32cを全てオフにして3つの減衰器31a,31b,31cを機能させ、−30dB減衰した帰還信号を歪み補償部4に帰還する。一方、パワーアンプ8の送信出力が規定値より−30dB低下した場合は、スイッチ回路32a,32b,32cを全てオンにして3つの減衰器31a,31b,31cをスルーさせ、減衰しない(0dB減衰)帰還信号を歪み補償部4に帰還する。このように、レベル調整部9によってパワーアンプ8の送信出力に応じて帰還信号の信号レベルを調整することにより、送信出力変化に対して帰還信号のレベル変化が小さくなるように、例えば10dB以内に収まるようにする。
【0029】
以上のように構成された無線装置の動作として、まず、送信部における規定の送信出力レベルによる通常時の送信動作について、図1及び図2を用いて説明する。
【0030】
無線制御部11によって生成されたベースバンド帯域の送信信号は、歪み補償部4に入力されて歪み補償、変調及び周波数変換等が行われる。この歪み補償部4では、加算器21によって送信信号に後述する帰還信号が加算され、変調器22で所定の変調方式の信号に変調された後、アップコンバートミキサ23によりローカル周波数発振器28からのローカル周波数信号と混合することによって周波数変換されて無線周波数にアップコンバートされ、RF帯域の送信信号となる。
【0031】
歪み補償部4から出力される送信信号は、AGCアンプ5において無線制御部11より指示された利得で増幅された後、バンドパスフィルタ6で所定の周波数帯域のみが通過されて不要波が除去される。バンドパスフィルタ6通過後の送信信号はドライバアンプ7で電圧増幅され、パワーアンプ8によって規定の送信電力となるよう所定値まで電力増幅される。パワーアンプ8の出力の送信信号は、アンテナ共用器3を経由してフィルタ2で送信周波数帯域が制限された後、アンテナ1に供給されて空間に放射される。
【0032】
また、パワーアンプ8の出力の送信信号の一部は、帰還信号としてレベル調整部9に入力されて信号レベルを調整された後、歪み補償部4に線形にフィードバックされる。この歪み補償部4では、位相器24によって帰還信号が位相変換された後、ダウンコンバートミキサ25によりローカル周波数発振器29からのローカル周波数信号と混合することによって周波数変換されてベースバンド周波数にダウンコンバートされ、ベースバンド帯域の帰還信号となる。この帰還信号はAGCアンプ26で利得を安定に制御されながら増幅され、更に復調器27によって復調されて先の送信信号とは逆相の帰還信号となる。このようにして得られた帰還信号は、加算器21に入力されて送信信号と加算される。これにより、送信部のパワーアンプ8等の入出力特性から生じる非線形性の歪み成分が抑制されるとともに、送信出力レベルの変動が補正され、送信出力レベルを所定値に保つように安定化することができる。
【0033】
次に、送信部において送信出力レベルを一定の割合で低下させる場合の動作について説明する。例えば、移動局端末などの移動可能な無線装置では、自装置が移動して固定基地局などの通信相手との距離が近づいた場合などに、通信相手の受信回路において過大入力となって受信レベルが飽和しないようにするために、自装置における送信出力制御、または通信相手からの送信出力制御指示によって送信出力レベルを下げる制御が行われる。
【0034】
アンテナ1で受信された受信信号は、アンテナ共用器3で分離された後、受信部10で復調等が行われて無線制御部11に伝えられる。無線制御部11は、受信信号中に通信相手から送られた送信出力制御コマンドがある場合はそれを検出する。この送信出力制御コマンドには、例えば送信出力レベルの低下を指示するコマンドであれば、現在の送信出力レベルに対して低下すべき制御レベル値(低下レベル値)が含まれている。
【0035】
無線制御部11は、検出した送信出力制御コマンド中の制御レベル値に応じて、利得制御信号をAGCアンプ5に出力してこのAGCアンプ5の増幅利得を制御する。例えば、現在の送信出力レベルに対し送信出力を20dB低下させるよう通信相手から要求された場合は、無線制御部11はAGCアンプ5の利得を通常時に比して−20dB低下させる。これにより、AGCアンプ5から出力される送信信号は20dB低下した信号レベルとなる。そして、バンドパスフィルタ6、ドライバアンプ7を経てパワーアンプ8で電力増幅され、通常時の規定の送信電力に比して−20dB低下した送信信号がパワーアンプ8より出力され、アンテナ共用器3及びフィルタ2を介してアンテナ1から空間に放射される。
【0036】
また、パワーアンプ8の出力の送信信号の一部は、帰還信号としてレベル調整部9に入力されて信号レベルの調整が行われる。このときレベル調整部9に入力される帰還信号は、パワーアンプ8からの送信出力レベルの低下に対応して、−20dB低下している。レベル調整部9では、このように低下した帰還信号の信号レベルを相補するようにレベル調整を行う。
【0037】
すなわち、送信出力レベルが−20dB低下した場合は、レベル調整部9における減衰量を通常時(送信出力レベル低下前)に対して+20dB増加させ、通常時の場合とほぼ同様の信号レベルの帰還信号を歪み補償部4に帰還する。これにより、歪み補償部4に入力される帰還信号の信号レベルの変化幅が小さくなり、常にほぼ一定レベルの帰還信号がフィードバックされることになる。図3の構成のようにレベル調整部9における調整幅が10dB単位の場合は、歪み補償部4に入力される帰還信号は10dBの範囲内に信号レベルが調整される。
【0038】
レベル調整部9を設けない場合は、送信出力レベルが−20dB低下すると帰還信号の信号レベルも−20dB低下するため、歪み補償部4による歪み成分除去と送信出力レベル安定化を正常に機能させるためには、歪み補償部4において−20dBまでリニアリティを確保する必要がある。一方、本実施形態のようにレベル調整部9によって帰還信号の信号レベルを調整することにより、歪み補償部4において必要なリニアリティのレンジが小さくて済む。
【0039】
そして、歪み補償部4において、帰還信号が位相器24で位相変換され、ダウンコンバートミキサ25で周波数変換された後、AGCアンプ26を経て復調器27で復調され、送信信号とは逆相の帰還信号が生成される。この帰還信号を加算器21で送信信号に加算することにより、送信部のパワーアンプ8等の入出力特性から生じる非線形性の歪み成分が抑制されるとともに、送信出力レベルの変動が補正されて所定値に保持される。
【0040】
上述した本実施形態では、パワーアンプ8の送信出力から帰還信号を歪み補償部4にフィードバックして送信出力の安定化及び低歪化を図る送信回路において、帰還路にレベル調整部9を設け、送信出力レベルを低下させる場合にはその低下分を補うように帰還信号のレベルを調整する。これにより、歪み補償部4には常に所定範囲内でほぼ一定レベルの帰還信号が入力され、入力信号レベルを所定範囲内に保持することができるので、歪み補償部4において広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、安価に高安定かつ低歪みの送信回路を構成することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施し得るものである。上記実施形態では、レベル調整部9の可変減衰器として複数の減衰器を切り替えて介挿する構成を用いたが、これに限るものではなく、信号レベルを調整可能な他の手段を用いてもよい。また、レベル調整部9において、−10dBの減衰器を3段直列に接続し、帰還系の利得を−10dBごと段階的に可変する構成としたが、減衰器の数はこれに限るものではなく、また、減衰値の異なる複数の減衰器を組み合わせて用いることもできる。これによって、帰還信号のより細かいレベル調整が可能となる。
【0042】
また、上記実施形態では、通信相手において受信レベルの飽和を防ぐために送信出力レベルを低下させるなどの送信出力制御を行う場合に、通信相手からの送信出力制御コマンドを受信することによって送信出力を調整する例について説明した。代わりに、自装置において受信レベルを検出し、受信レベルが大きい場合は通信相手が近いと判断して、自ら送信電力を低下させるように送信出力制御を行うこともでき、このような構成にも同様に適用可能である。
【0043】
上述したように、本実施形態によれば、歪み補償部への帰還路に帰還信号の信号レベルを調整するレベル調整部を設けることにより、送信出力レベルを大きく変化させた場合でも、歪み補償回路を用いて、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に保つことができる送信回路を実現可能となる。この場合、送信出力レベルを大きく変化させても帰還信号の信号レベルの変化を小さくできるので、歪み補償回路に広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、安価な構成で高安定かつ低歪みの送信回路を実現できる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、送信出力レベルを大きく変化させた場合でも、歪み補償回路を用いて、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に保つことが可能な送信回路を備えた無線装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る無線装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施形態の送信部における歪み補償部の構成例を示すブロック図
【図3】本実施形態の送信部におけるレベル調整部の構成例を示すブロック図
【図4】従来の歪み補償回路を備えた送信回路の構成例を示すブロック図
【符号の説明】
1 アンテナ
2 フィルタ
3 アンテナ共用器
4 歪み補償部
5 AGCアンプ
6 バンドパスフィルタ
7 ドライバアンプ
8 パワーアンプ
9 レベル調整部
10 受信部
11 無線制御部
21 加算器
22 変調器
23 アップコンバートミキサ
24 位相器
25 ダウンコンバートミキサ
26 AGCアンプ
27 復調器
31a,31b,31c 減衰器
32a,32b,32c スイッチ回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線装置の送信回路に関し、特に、送信出力レベルを安定化させるための歪み補償回路を備えた無線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信における送信回路では、安定して通信を行うために、送信出力の安定化及び低歪み化が必須の条件である。また、移動局端末と固定基地局との間で通信を行う移動体通信システム等においては、通信相手の受信回路において過大入力とならないように自律的、又は通信相手からの指令に基づいて強制的に送信出力レベルを一定の割合で低下させることがある。
【0003】
従来、送信出力の歪みを低減する方法としては、パワーアンプの出力の包絡線と基準信号の包絡線とを比較し、その差信号をパワーアンプの入力に帰還させるもの(第1の従来例)がある(例えば、特許文献1参照)。また、パワーアンプの出力をダイオードを用いて包絡線検波し、そのピーク値と平均値との比を歪みとして検出することにより、パワーアンプへの供給電力を制御するもの(第2の従来例)がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
更に、送信スペクトラムの狭帯域化に用いられる歪み補償回路を備え、パワーアンプの歪み成分を含んだ送信出力の一部を歪み補償回路に帰還させることにより、歪みを補正すると共に、送信出力レベルを安定に保つ方法が従来より知られている。
【0005】
図4は、上記のような歪み補償回路を備えた送信回路の構成例を示すものである。無線制御部41において生成されたベースバンド帯域の送信信号は、歪み補償部42において帰還信号と加算された後、変調されて周波数変換され、RF帯域の送信信号となる。この送信信号はバンドパスフィルタ(BPF)43で不要波が除去され、ドライバアンプ44により電圧増幅されてからパワーアンプ45で所定値まで電力増幅される。電力増幅された送信信号はフィルタ46で送信周波数帯域が制限された後、アンテナ47に供給されて空間に放射される。
【0006】
また、パワーアンプ45で電力増幅された送信信号の一部は、帰還信号として歪み補償部42に線形に帰還され、周波数変換されて復調されてベースバンド帯域の帰還信号が生成される。この帰還信号を送信信号と逆位相で加算することにより、歪み補償がなされるとともに、送信出力レベルの変動が補正され、送信出力レベルが所定値に保持される。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−74552号公報(段落0008、図1)
【特許文献2】
特開2000−4173号公報(段落0025−0032、図2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例のように、送信出力をダイオード等により包絡線検波して歪みを検出する構成では、通信相手の受信回路において受信レベルが飽和しないようにするために送信出力のレベルを大幅に低下させた場合、ダイオード等の検波用素子の特性上、小レベルの信号から歪み成分を安定して検出することが困難である。
【0009】
また、図4に示した歪み補償回路を用いて送信出力レベルを安定化させる構成では、送信出力レベルを大幅に低下させることにより帰還信号のレベルも大幅に低下するので、歪み補償回路において広い範囲で線形性(リニアリティ)を確保した広ダイナミックレンジの回路が必要となる。例えば、送信出力レベルを−20dB低下させた場合は歪み補償回路において20dB以上のリニアリティが要求されるが、このような大きな送信出力レベルの変化に対応可能なように、広範囲にわたってリニアリティを確保可能な歪み補償回路を構成することは実現困難であった。歪み補償回路のリニアリティが崩れると帰還系が正常に機能しなくなり、送信出力レベルが変動してしまうおそれがある。また、部品のばらつきによっては、送信出力レベルだけでなく、歪み特性が劣化してしまい、歪み補償回路の本来の目的を果たせなくなる問題点もあった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、送信出力レベルを大きく変化させた場合でも、歪み補償回路を用いて、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に保つことができる送信回路を備えた無線装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る無線装置は、送信回路から出力される送信出力の帰還信号を基に送信信号の歪み成分の補償を行う歪み補償回路を有する無線装置であって、前記歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベルを調整するレベル調整手段を備え、前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが変更される場合に、この送信出力レベルの変化量に対して前記帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整することを特徴とする。
【0012】
上記構成により、送信回路のパワーアンプ等からの送信出力レベルが変更される場合に、レベル調整手段によって、この送信出力レベルの変化量に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整することにより、歪み補償回路に入力される帰還信号の信号レベルの変化幅が小さくなる。このため、歪み補償回路を用いる場合に、広範囲にわたってリニアリティを確保した広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、歪み成分を抑制し、送信出力レベルを安定化させることができ、高安定かつ歪み特性に優れた送信回路を安価に実現することができる。
【0013】
また、前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが変化した場合に、この送信出力レベルの変化に伴う前記帰還信号の信号レベル変化を補うように前記歪み補償回路への帰還系の利得を変化させることとする。
【0014】
上記構成では、レベル調整手段によって送信出力レベルの変化に伴う帰還信号の信号レベル変化を補うように歪み補償回路への帰還系の利得を変化させることにより、送信出力レベルの変化量に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整され、歪み補償回路への入力信号レベルを所定範囲内に保持することができる。
【0015】
また、前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが低下した場合に、この送信出力レベルの低下に伴う前記帰還信号の信号レベル低下を補うように前記歪み補償回路への帰還系の利得を増加させることとする。
【0016】
上記構成では、レベル調整手段によって送信出力レベルの低下に伴う帰還信号の信号レベル低下を補うように歪み補償回路への帰還系の利得を増加させることにより、送信出力レベルの変化量に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整され、歪み補償回路への入力信号レベルを所定範囲内に保持することができる。
【0017】
また、前記レベル調整手段は、前記歪み補償回路への帰還系の利得を前記送信出力レベルの変化に応じて所定量ごと段階的に変化させることとする。
【0018】
上記構成により、送信出力レベルの変化に対して帰還信号の信号レベルが段階的に調整され、簡単な構成で歪み補償回路への入力信号レベルを所定範囲内に保持することができる。
【0019】
また、前記送信出力のレベルを変更するとともに、この送信出力レベルの変化量に応じて前記レベル調整手段における前記帰還信号の信号レベルの調整量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
上記構成により、制御手段によって送信出力のレベルを変更する送信出力制御を行うとともに、この送信出力制御に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が所定範囲内に収まるようにレベル調整を行うことによって、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に変更でき、歪み補償回路を用いて歪み成分の抑制と送信出力レベルの安定化を図ることができる。またこの際、歪み補償回路は広範囲にわたってリニアリティを確保した広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、高安定かつ歪み特性に優れた送信回路を安価に実現することができる。
【0021】
本発明に係る無線装置の送信出力制御方法は、送信回路から出力される送信出力の帰還信号を基に送信信号の歪み成分の補償を行う歪み補償回路を有する無線装置の送信出力制御方法であって、前記送信回路の送信系の利得を変更して送信出力のレベルを変更するステップと、前記送信出力のレベルの変化量に応じて前記歪み補償回路への帰還系の利得を変化させて前記帰還信号の信号レベルを調整するステップと、前記信号レベルが調整された帰還信号を前記歪み補償回路に帰還して送信信号の歪み成分の補償を行うステップと、を有することを特徴とする。
【0022】
上記手順により、送信出力のレベルを変更する送信出力制御を行うとともに、この送信出力レベル変更に対して歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベル変化が所定範囲内に収まるようにレベル調整を行うことによって、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に変更でき、歪み補償回路を用いて歪み成分の抑制と送信出力レベルの安定化を図ることができる。またこの際、歪み補償回路は広範囲にわたってリニアリティを確保した広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、高安定かつ歪み特性に優れた送信回路を安価に実現することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線装置の構成を示すブロック図である。本実施形態では、移動体通信システムにおける移動局端末などの移動可能な無線通信端末に用いられる無線装置の構成例を示す。
【0024】
本実施形態の無線装置は、アンテナ1、フィルタ2、アンテナ共用器3を備え、このアンテナ共用器3に、送信回路に対応する送信部と受信回路に対応する受信部10とが接続されている。アンテナ共用器3は、フィルタまたはスイッチ素子等により構成され、送信信号と受信信号の経路を切り替えるものである。送信部としては、歪み補償回路に相当する歪み補償部4、可変利得アンプであるAGC(自動利得制御)アンプ5、バンドパスフィルタ(BPF)6、ドライバアンプ7、パワーアンプ8、及びレベル調整部9を備えている。また、送信信号及び受信信号の処理、各部の制御等を行う無線制御部11を備えている。
【0025】
歪み補償部4は、送信信号の歪み成分の除去と信号レベル補正を行うもので、例えば図2に示すような構成となっている。図2は、図1に示した送信部における歪み補償部の構成例を示すブロック図である。歪み補償部4は、加算器21、変調器22、アップコンバートミキサ23、位相器24、ダウンコンバートミキサ25、AGCアンプ26、復調器27を有して構成される。
【0026】
レベル調整部9は、送信信号の一部を帰還する帰還信号の信号レベルを調整するもので、可変型の減衰器などで構成される。図3は、図1に示した送信部におけるレベル調整部の構成例を示すブロック図である。レベル調整部9は、直列接続された複数の減衰器31a,31b,31cと、これらの減衰器31a,31b,31cに並列に接続され各減衰器をオンオフするスイッチ回路32a,32b,32cとを有して構成される。例えば、−10dBの減衰器及びスイッチ回路を3組直列接続して、0〜−30dBまで10dBごとに4段階に信号レベルを調整可能なものを用いる。
【0027】
スイッチ回路32a,32b,32cは、無線制御部11からの減衰制御信号によってそれぞれ独立にオンオフ制御されるようになっており、これによって減衰器31a,31b,31cにおける帰還信号の通過経路を切り替え、歪み補償部4に入力する帰還信号のレベルを調整する。
【0028】
例えば、パワーアンプ8の送信出力が規定値(例えば33dBm、2W)である場合は、スイッチ回路32a,32b,32cを全てオフにして3つの減衰器31a,31b,31cを機能させ、−30dB減衰した帰還信号を歪み補償部4に帰還する。一方、パワーアンプ8の送信出力が規定値より−30dB低下した場合は、スイッチ回路32a,32b,32cを全てオンにして3つの減衰器31a,31b,31cをスルーさせ、減衰しない(0dB減衰)帰還信号を歪み補償部4に帰還する。このように、レベル調整部9によってパワーアンプ8の送信出力に応じて帰還信号の信号レベルを調整することにより、送信出力変化に対して帰還信号のレベル変化が小さくなるように、例えば10dB以内に収まるようにする。
【0029】
以上のように構成された無線装置の動作として、まず、送信部における規定の送信出力レベルによる通常時の送信動作について、図1及び図2を用いて説明する。
【0030】
無線制御部11によって生成されたベースバンド帯域の送信信号は、歪み補償部4に入力されて歪み補償、変調及び周波数変換等が行われる。この歪み補償部4では、加算器21によって送信信号に後述する帰還信号が加算され、変調器22で所定の変調方式の信号に変調された後、アップコンバートミキサ23によりローカル周波数発振器28からのローカル周波数信号と混合することによって周波数変換されて無線周波数にアップコンバートされ、RF帯域の送信信号となる。
【0031】
歪み補償部4から出力される送信信号は、AGCアンプ5において無線制御部11より指示された利得で増幅された後、バンドパスフィルタ6で所定の周波数帯域のみが通過されて不要波が除去される。バンドパスフィルタ6通過後の送信信号はドライバアンプ7で電圧増幅され、パワーアンプ8によって規定の送信電力となるよう所定値まで電力増幅される。パワーアンプ8の出力の送信信号は、アンテナ共用器3を経由してフィルタ2で送信周波数帯域が制限された後、アンテナ1に供給されて空間に放射される。
【0032】
また、パワーアンプ8の出力の送信信号の一部は、帰還信号としてレベル調整部9に入力されて信号レベルを調整された後、歪み補償部4に線形にフィードバックされる。この歪み補償部4では、位相器24によって帰還信号が位相変換された後、ダウンコンバートミキサ25によりローカル周波数発振器29からのローカル周波数信号と混合することによって周波数変換されてベースバンド周波数にダウンコンバートされ、ベースバンド帯域の帰還信号となる。この帰還信号はAGCアンプ26で利得を安定に制御されながら増幅され、更に復調器27によって復調されて先の送信信号とは逆相の帰還信号となる。このようにして得られた帰還信号は、加算器21に入力されて送信信号と加算される。これにより、送信部のパワーアンプ8等の入出力特性から生じる非線形性の歪み成分が抑制されるとともに、送信出力レベルの変動が補正され、送信出力レベルを所定値に保つように安定化することができる。
【0033】
次に、送信部において送信出力レベルを一定の割合で低下させる場合の動作について説明する。例えば、移動局端末などの移動可能な無線装置では、自装置が移動して固定基地局などの通信相手との距離が近づいた場合などに、通信相手の受信回路において過大入力となって受信レベルが飽和しないようにするために、自装置における送信出力制御、または通信相手からの送信出力制御指示によって送信出力レベルを下げる制御が行われる。
【0034】
アンテナ1で受信された受信信号は、アンテナ共用器3で分離された後、受信部10で復調等が行われて無線制御部11に伝えられる。無線制御部11は、受信信号中に通信相手から送られた送信出力制御コマンドがある場合はそれを検出する。この送信出力制御コマンドには、例えば送信出力レベルの低下を指示するコマンドであれば、現在の送信出力レベルに対して低下すべき制御レベル値(低下レベル値)が含まれている。
【0035】
無線制御部11は、検出した送信出力制御コマンド中の制御レベル値に応じて、利得制御信号をAGCアンプ5に出力してこのAGCアンプ5の増幅利得を制御する。例えば、現在の送信出力レベルに対し送信出力を20dB低下させるよう通信相手から要求された場合は、無線制御部11はAGCアンプ5の利得を通常時に比して−20dB低下させる。これにより、AGCアンプ5から出力される送信信号は20dB低下した信号レベルとなる。そして、バンドパスフィルタ6、ドライバアンプ7を経てパワーアンプ8で電力増幅され、通常時の規定の送信電力に比して−20dB低下した送信信号がパワーアンプ8より出力され、アンテナ共用器3及びフィルタ2を介してアンテナ1から空間に放射される。
【0036】
また、パワーアンプ8の出力の送信信号の一部は、帰還信号としてレベル調整部9に入力されて信号レベルの調整が行われる。このときレベル調整部9に入力される帰還信号は、パワーアンプ8からの送信出力レベルの低下に対応して、−20dB低下している。レベル調整部9では、このように低下した帰還信号の信号レベルを相補するようにレベル調整を行う。
【0037】
すなわち、送信出力レベルが−20dB低下した場合は、レベル調整部9における減衰量を通常時(送信出力レベル低下前)に対して+20dB増加させ、通常時の場合とほぼ同様の信号レベルの帰還信号を歪み補償部4に帰還する。これにより、歪み補償部4に入力される帰還信号の信号レベルの変化幅が小さくなり、常にほぼ一定レベルの帰還信号がフィードバックされることになる。図3の構成のようにレベル調整部9における調整幅が10dB単位の場合は、歪み補償部4に入力される帰還信号は10dBの範囲内に信号レベルが調整される。
【0038】
レベル調整部9を設けない場合は、送信出力レベルが−20dB低下すると帰還信号の信号レベルも−20dB低下するため、歪み補償部4による歪み成分除去と送信出力レベル安定化を正常に機能させるためには、歪み補償部4において−20dBまでリニアリティを確保する必要がある。一方、本実施形態のようにレベル調整部9によって帰還信号の信号レベルを調整することにより、歪み補償部4において必要なリニアリティのレンジが小さくて済む。
【0039】
そして、歪み補償部4において、帰還信号が位相器24で位相変換され、ダウンコンバートミキサ25で周波数変換された後、AGCアンプ26を経て復調器27で復調され、送信信号とは逆相の帰還信号が生成される。この帰還信号を加算器21で送信信号に加算することにより、送信部のパワーアンプ8等の入出力特性から生じる非線形性の歪み成分が抑制されるとともに、送信出力レベルの変動が補正されて所定値に保持される。
【0040】
上述した本実施形態では、パワーアンプ8の送信出力から帰還信号を歪み補償部4にフィードバックして送信出力の安定化及び低歪化を図る送信回路において、帰還路にレベル調整部9を設け、送信出力レベルを低下させる場合にはその低下分を補うように帰還信号のレベルを調整する。これにより、歪み補償部4には常に所定範囲内でほぼ一定レベルの帰還信号が入力され、入力信号レベルを所定範囲内に保持することができるので、歪み補償部4において広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、安価に高安定かつ低歪みの送信回路を構成することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施し得るものである。上記実施形態では、レベル調整部9の可変減衰器として複数の減衰器を切り替えて介挿する構成を用いたが、これに限るものではなく、信号レベルを調整可能な他の手段を用いてもよい。また、レベル調整部9において、−10dBの減衰器を3段直列に接続し、帰還系の利得を−10dBごと段階的に可変する構成としたが、減衰器の数はこれに限るものではなく、また、減衰値の異なる複数の減衰器を組み合わせて用いることもできる。これによって、帰還信号のより細かいレベル調整が可能となる。
【0042】
また、上記実施形態では、通信相手において受信レベルの飽和を防ぐために送信出力レベルを低下させるなどの送信出力制御を行う場合に、通信相手からの送信出力制御コマンドを受信することによって送信出力を調整する例について説明した。代わりに、自装置において受信レベルを検出し、受信レベルが大きい場合は通信相手が近いと判断して、自ら送信電力を低下させるように送信出力制御を行うこともでき、このような構成にも同様に適用可能である。
【0043】
上述したように、本実施形態によれば、歪み補償部への帰還路に帰還信号の信号レベルを調整するレベル調整部を設けることにより、送信出力レベルを大きく変化させた場合でも、歪み補償回路を用いて、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に保つことができる送信回路を実現可能となる。この場合、送信出力レベルを大きく変化させても帰還信号の信号レベルの変化を小さくできるので、歪み補償回路に広ダイナミックレンジの回路を必要とせず、安価な構成で高安定かつ低歪みの送信回路を実現できる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、送信出力レベルを大きく変化させた場合でも、歪み補償回路を用いて、歪み特性を損なうことなく送信出力レベルを安定に保つことが可能な送信回路を備えた無線装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る無線装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施形態の送信部における歪み補償部の構成例を示すブロック図
【図3】本実施形態の送信部におけるレベル調整部の構成例を示すブロック図
【図4】従来の歪み補償回路を備えた送信回路の構成例を示すブロック図
【符号の説明】
1 アンテナ
2 フィルタ
3 アンテナ共用器
4 歪み補償部
5 AGCアンプ
6 バンドパスフィルタ
7 ドライバアンプ
8 パワーアンプ
9 レベル調整部
10 受信部
11 無線制御部
21 加算器
22 変調器
23 アップコンバートミキサ
24 位相器
25 ダウンコンバートミキサ
26 AGCアンプ
27 復調器
31a,31b,31c 減衰器
32a,32b,32c スイッチ回路
Claims (6)
- 送信回路から出力される送信出力の帰還信号を基に送信信号の歪み成分の補償を行う歪み補償回路を有する無線装置であって、
前記歪み補償回路に帰還する帰還信号の信号レベルを調整するレベル調整手段を備え、
前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが変更される場合に、この送信出力レベルの変化量に対して前記帰還信号の信号レベル変化が小さくなるように調整することを特徴とする無線装置。 - 前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが変化した場合に、この送信出力レベルの変化に伴う前記帰還信号の信号レベル変化を補うように前記歪み補償回路への帰還系の利得を変化させることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
- 前記レベル調整手段は、前記送信出力のレベルが低下した場合に、この送信出力レベルの低下に伴う前記帰還信号の信号レベル低下を補うように前記歪み補償回路への帰還系の利得を増加させることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
- 前記レベル調整手段は、前記歪み補償回路への帰還系の利得を前記送信出力レベルの変化に応じて所定量ごと段階的に変化させることを特徴とする請求項2または3に記載の無線装置。
- 前記送信出力のレベルを変更するとともに、この送信出力レベルの変化量に応じて前記レベル調整手段における前記帰還信号の信号レベルの調整量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無線装置。
- 送信回路から出力される送信出力の帰還信号を基に送信信号の歪み成分の補償を行う歪み補償回路を有する無線装置の送信出力制御方法であって、
前記送信回路の送信系の利得を変更して送信出力のレベルを変更するステップと、
前記送信出力のレベルの変化量に応じて前記歪み補償回路への帰還系の利得を変化させて前記帰還信号の信号レベルを調整するステップと、
前記信号レベルが調整された帰還信号を前記歪み補償回路に帰還して送信信号の歪み成分の補償を行うステップと、
を有することを特徴とする無線装置の送信出力制御方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
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