JP2004185881A - 非水電解質電池用電極材料、電極及び非水電解質電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】放電容量と充放電サイクル寿命の双方に優れる非水電解質電池を実現することが可能な非水電解質電池用電極材料を提供しようとするものである。
【解決手段】一般式(1):SnaCobMcTdXeで表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とする。但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,eは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0<c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20を示す。
【選択図】 なし
【解決手段】一般式(1):SnaCobMcTdXeで表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とする。但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,eは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0<c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20を示す。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質電池用電極材料、電極及び非水電解質電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料などを負極活物質に用いた非水電解質二次電池は、高エネルギー密度電池として期待され、盛んに研究開発が進められている。これまでに、正極活物質にLiCoO2やLiMn2O4などが用いられ、かつ負極活物質にリチウムを吸蔵・放出する炭素材料が用いられたリチウムイオン二次電池が広く実用化されている。
【0003】
一方、リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物を負極に用いた二次電池は、未だ実用化されていない。この主な理由は、リチウム金属を用いた場合、非水電解質とリチウム金属との反応によるリチウムの劣化と、充放電の繰り返しによるデンドライト状(樹枝状)のリチウムの発生による脱離が起きるため、内部短絡やサイクル寿命が短いという問題点を有していることである。
【0004】
このような問題点を解決するためにリチウム合金やリチウム化合物を負極に用いる研究がなされた。とくにリチウム−アルミニウム合金などの合金においては、非水電解質との反応性が抑制されて充放電効率が改善されるものの、深い充放電を繰り返すと電極の微粉化が生じるため、サイクル特性に問題があった。
【0005】
ところで、特開2001−68112号公開公報には、少なくとも3相を含む粒子で構成され、そのうち少なくとも2相はリチウムを吸蔵し、少なくとも1相はリチウムを吸蔵しない相である非水電解質二次電池用負極活物質を用いることにより、リチウム吸蔵放出に伴う膨張・収縮を緩和し、サイクル寿命を向上させることが記載されている。また、特開2001−93524号公開公報には、リチウム吸蔵時の膨張応力の差が小さいA相とB相を有する負極活物質を用いることにより、活物質全体における膨張応力を均一に緩和し、サイクル寿命を向上させることが記載されている。
【0006】
しかしながら、これら公開公報に記載された負極活物質は、いずれもリチウム拡散性が劣るため、十分な充放電サイクル寿命を得られなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−68112号公報(特許請求の範囲、段落[0006]、段落[0031]〜[0043])
【0008】
【特許文献2】
特開2001−93524号公報(特許請求の範囲、段落[0021]、段落[0039]〜[0053])
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、放電容量と充放電サイクル寿命の双方に優れる非水電解質電池を実現することが可能な非水電解質電池用電極材料と、この電極材料を含む電極と、この電極を備えた非水電解質電池を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の非水電解質電池用電極材料は、下記一般式(1)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とするものである。
【0011】
SnaCobMcTdXe (1)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,eは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0<c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20を示す。
【0012】
本発明に係る第2の非水電解質電池用電極材料は、下記一般式(2)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とするものである。
【0013】
Sna(Co1−xFex)bMcTdXe (2)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,e,xは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0≦c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20、0<x≦0.8を示す。
【0014】
本発明に係る電極は、前記第1の非水電解質電池用電極材料及び前記第2の非水電解質電池用電極材料のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る非水電解質電池は、前記第1の非水電解質電池用電極材料及び前記第2の非水電解質電池用電極材料のうちの少なくとも一方を含む負極と、正極と、非水電解質とを具備することを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る第1の非水電解質二次電池用電極材料は、下記一般式(1)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含むことを特徴とするものである。
【0017】
SnaCobMcTdXe (1)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,eは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0<c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20を示す。
【0018】
この電極材料における主相は、六方晶構造の結晶相であることが望ましい。ここで、主相とは、2相からなる合金の場合、50%以上の面積比で占める最も面積割合が多い相であることが望ましく、3相以上からなる合金の場合、34%以上の面積比で占める最も面積割合が多い相であることが好ましい。
【0019】
前述した第1の電極材料を負極活物質として含む負極を備えた非水電解質二次電池は、体積エネルギー密度と充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0020】
前記(1)式で表される合金は、結晶構造が六方晶からなる単相でも、六方晶以外の結晶相を含む複相でもよい。いずれの場合でも、六方晶からなる結晶相はB35タイプ、例えばCoSn型の結晶相が主相であることが望ましい。中でも、CoSn型の結晶相とCo3Sn2型の正方晶を有する結晶相を同時に含むものが、充放電サイクル寿命の点で好ましい。CoSn型の結晶相とCo3Sn2型の結晶相とを含む合金には、さらにCoSn2型の結晶相が少量含まれていても良い。この2相ともLiとは活性相であり、ただし反応速度が異なる。即ち、CoSn相あるいはCo3Sn2相中にLiが入り込むのではなく、Liと反応する場合、それぞれ、以下の(A),(B)の反応式に従って分離し、このあとSnとLiの間で可逆反応が起きる。従って、この2つの反応速度に差があるだけで、Liに対して不活性な相ではない。
【0021】
CoSn+xLi→Co+LixSn (A)
Co3Sn2+xLi→3Co+2LixSn (B)
すなわち、電池の使用時における負極内の相構成は、CoSn相、Co3Sn2相以外にCo相、Sn相が徐々に存在するようになり、充放電サイクル回数によっては、CoSn相あるいはCo3Sn2相が消失することもある。また、SnとLiの結合分離する可逆反応の中で、一部合金化を生じ、Li−Sn合金が存在する場合もある。
【0022】
さらに、添加元素を含む合金の場合にはCo−Sn−M相、Co−Sn−X相あるいはCo−Sn−T相が含まれていてもよい。この場合、面積比で10%以下が好ましい。
【0023】
本発明の結晶相の平均結晶粒径は10nm以上、20μm以下の範囲内にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。平均結晶粒径を10nm未満にすると、放電容量の立ち上がりが大幅に遅れる恐れがある。一方、平均粒径が20μmを超えると、長寿命を得られない恐れがある。平均結晶粒径のより好ましい範囲は20nm〜10μmである。
【0024】
前記(1)式で表される合金の基本元素は、Co、元素M、およびSnである。
【0025】
1)Co
Coはリチウムとの合金化が起こり難い元素であり、またSnと基本的に1:1近傍の原子比で六方晶を構成することができる。その量は原子%で35%〜55%である。Coの原子比bが35原子%未満あるいは55原子%を超えると、六方晶が主相になり難く、高容量あるいは充放電の長寿命特性が得られない。
【0026】
2)元素M
元素Mの原子%を0<c≦20にすることによって、負極活物質のリチウムの拡散性を高くすることができるため、二次電池の充放電サイクル寿命を向上することができる。また、Co相、Sn相、CoSn2相の形成抑制にも有効である。しかし、原子%で20原子%を超えると活物質のリチウム吸蔵能が低下するために、二次電池の放電容量が低くなる。好ましい範囲は1≦c≦15である。また、元素Mの中でもNiが好ましい。Niは、他の種類の元素Mと同じ添加量で比較した場合、サイクル寿命を向上させる効果がより大きいからである。
【0027】
3)Sn
Snはリチウムと合金を形成することが可能な元素であり、Coと原子比で1:1近傍の割合で六方晶構造を構成することができる。特に、原子%で40〜50%の時に六方晶構造の結晶相を主相とすることができる。40原子%未満にすると、六方晶構造の結晶相の比率が少なくなるため、高容量が得られない。一方、50原子%を超えると、充放電サイクルにおいて長寿命が得られない。
【0028】
4)X元素
X元素もLiと合金を形成することが可能な元素であり、この元素の存在によって、放電容量をあまり低下させずに長寿命化することができる。その量は原子%で0≦e≦20である。20原子%を超えると徐々に容量低下が見られるようになる。この容量低下の一因として、負極活物質の密度低下による単位体積当りの放電容量の低下が挙げられる。好ましくは、15原子%以下である。X元素のうち、Si,Al,Inが好ましく、密度低下抑制にはInが好ましい。
【0029】
5)T元素
T元素は、主相となるB−35型、例えばCoSn型結晶相に固溶することができる。
また、Co、Snなどの構成元素と新規な相を形成することも可能である。希土類元素としては、例えば、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu等を挙げることができる。T元素は、固溶あるいは新規な相の形成等の効果によって、サイクル寿命特性を向上することができる。合金中のT元素の含有量は、原子%で0≦d≦10であることが望ましい。これは、10原子%を超えると、高容量が得られないからである。より好ましくは8原子%以下である。T元素の中でもTi,Nb,Mo,La,Ce,Pr,Nd,Smが好ましく、これらT元素はサイクル寿命特性をより向上させることができる。
【0030】
本発明に係る第2の非水電解質電池用電極材料は、下記一般式(2)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とするものである。
【0031】
Sna(Co1−xFex)bMcTdXe (2)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,e,xは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0≦c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20、0<x≦0.8を示す。
【0032】
前記(2)式で表される合金の基本元素は、CoFeおよびSnである。基本的には(1)式の場合と同じであるが、CoFeを含む部分と元素Mが必須元素でない部分が異なる。この場合、Feもリチウムとの合金化が起こり難い元素であり、また、Coの場合と同じように、Snと基本的に1:1近傍の原子比で六方晶を構成することができる。その量は原子%で35〜55%である。CoとFeの合計原子比bが35原子%未満あるいは55原子%を超えると、六方晶構造の結晶相が主相になり難く、高容量あるいは充放電の長寿命特性が得られない。また、CoとFeの合計原子比を1とした際のFeの原子比xが0.8を超えるのは、合金中にSn析出の可能性が大きくなり、サイクル寿命が短くなるため、好ましくない。Feの原子比xのより好ましい範囲は、0.01≦x≦0.6である。
【0033】
(2)式で表される合金の場合、構成相として(1)式で表される合金において挙げた結晶相以外に六方晶構造のFeSn相(Fe1.3Sn)が含まれていてもよく、さらに異なる比のFe−Sn金属間化合物が存在していても良い。また、FeはM元素と同等の効果を有するため、(2)式で表される合金においては、M元素が含有されていなくても、充放電サイクル寿命と放電容量に優れる二次電池を実現することができる。なお、元素Mの添加により、二次電池の充放電サイクル寿命をさらに向上することができる。
【0034】
前述した第1、第2の非水電解質電池用電極材料の作製法としては、例えば、高周波溶解法、アーク溶解法、焼結法、超急冷法、ストリップキャスト法、アトマイズ法、めっき法、CVD法、スパッタ法、メカニカル処理法、圧延法などが挙げられる。特に好ましくは、超急冷法、ストリップキャスト法、高周波溶解法が挙げられる。
【0035】
これらの方法はいずれも予め量りとった各素材を、不活性雰囲気中において、るつぼ内で溶解し、その後の冷却過程をそれぞれ変えたものである。すなわち、超急冷法は高速回転する冷却体上に合金溶湯を射出し、板厚10〜50μmのフレーク状試料を得る。ストリップキャスト法では、冷却体への単位時間あたりの溶湯供給量を超急冷法に比べて増やして、板厚100〜500μmのフレーク状試料を得る。条件によっては超急冷法で100μmまでの板厚のものも得ることができる。また、ストリップキャスト法では、鋳造する際に回転する冷却板上に溶湯を流し込めばよく、溶湯供給量と冷却板の移動速度で材料板厚を制御し、その結果冷却速度を制御できる。得られたこれらの試料は、熱処理により組織、組成の均質化が実現でき、特にこれは鋳造した試料で顕著であり、ストリップキャスト法、あるいは超急冷法で得た試料は熱処理を行わなくてもよい。また、特にストリップキャスト法で得られた試料では柱状晶組織が得られやすく、寿命の観点からこの組織は好ましい。なお、超急冷法とストリップキャスト法は、共に冷却体(冷却ロールなど)を用いる製造方法である。本発明において、超急冷法とストリップキャスト法の区別は、板厚100μm以下のものを作製するときは超急冷法、板厚100μmを超えるものを作製する時はストリップキャスト法として区別することとした。
【0036】
これら方法で得られた合金中には、酸素が濃度1000ppm以下で含有されていても良い。また、Mgが濃度500ppmまで含有されていてもよい。
【0037】
また、高周波溶解法のような通常の鋳造法で得られた合金を熱処理することによっても高特性が得られる。この場合は単相が得られやすく、添加元素による特性向上には添加元素の量は多めに設定した方が好ましい。例えば、急冷プロセスで適した添加量の約1.5〜3倍である。
【0038】
なお、第1あるいは第2の電極材料を負極活物質として含む負極を備えた非水電解質二次電池において、充放電により不可逆容量が生じると、負極内にCo相、Sn相あるいはLiSn相が形成される場合がある。
【0039】
次いで、本発明に係る第1の非水電解質電池用電極材料または第2の非水電解質電池用電極材料を備えた非水電解質電池について説明する。
【0040】
本発明に係る非水電解質電池は、正極と、第1、第2の非水電解質電池用電極材料のうち少なくとも一方を負極活物質として含む負極と、非水電解質とを備えるものである。
【0041】
1)正極
正極は、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布し、乾燥し、プレスして帯状電極にすることにより作製される。
【0042】
前記正極活物質は、種々の酸化物、硫化物が挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn2O4またはLiMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−xCoxO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnxCo1−xO2)、バナジウム酸化物(例えばV2O5) などが挙げられる。
また、導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料などの有機材料も挙げられる。より好ましい正極は、電池電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2O2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LiMnxCo1−xO2)などが挙げられる。
【0043】
導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0044】
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0045】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0046】
2)負極
負極は、例えば、第1、第2の非水電解質電池用電極材料のうち少なくとも一方を含む負極活物質、導電剤及び結着剤からなる負極合剤を適当な溶媒に懸濁して混合し、塗液としたものを集電体の片面もしくは両面に塗布し、乾燥することにより作製される。
【0047】
また、負極活物質として、アルカリ金属の吸蔵能の高い炭素材料を添加し、前述した第1または第2の電極材料と、この炭素材料との混合物とすることで、アルカリ金属の吸蔵量を向上させることができる。このような負極活物質に用いる炭素材料としては黒鉛系の炭素材料が好ましく、より具体的にはメソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが好ましい。
【0048】
さらに、負極には使用される導電剤としては、通常炭素材料が使用される。前述した負極活物質に用いる炭素材料として、アルカリ金属の吸蔵性と導電性との両特性の高いものがあれば、負極活物質として用いる前述の炭素材料を導電剤と兼用させることが可能であるが、例示したメソフェーズピッチカーボンファイバーなどの炭素吸蔵性の高い黒鉛のみでは導電性が低くなるため、導電剤として使用される炭素材料としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック等を負極に使用することが好ましい。
【0049】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
【0050】
前記負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質70〜95重量%、導電剤0〜25重量%、結着剤2〜10重量%の範囲にすることが好ましい。
【0051】
3) 非水電解質
前記非水電解質は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される液体状非水電解質(非水電解液)、高分子材料に前記非水溶媒と前記電解質を含有した高分子ゲル状電解質、高分子材料に前記電解質を含有した高分子固体電解質、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質が挙げられる。
【0052】
液状非水電解質に用いられる非水溶媒としては、リチウム電池で公知の非水溶媒を用いることができ、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートや、環状カーボネートと環状カーボネートより低粘度の非水溶媒(以下第2の溶媒)との混合溶媒を主体とする非水溶媒などを挙げることができる。
【0053】
第2の溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、環状エーテルとしてテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなど、鎖状エーテルとしてジメトキシエタン、ジエトキシエタンなどが挙げられる。
【0054】
電解質としては、アルカリ塩が挙げられるが、とくにリチウム塩が挙げられる。リチウム塩として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)などが挙げられる。とくに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)が好ましい。前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lとすることが好ましい。
【0055】
ゲル状電解質として前記溶媒と前記電解質を高分子材料に溶解しゲル状にしたもので、高分子材料としてはポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PECO)などの単量体の重合体または他の単量体との共重合体が挙げられる。
【0056】
固体電解質としては、前記電解質を高分子材料に溶解し、固体化したものである。高分子材料としてはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PEO)などの単量体の重合体または他の単量体との共重合体が挙げられる。また、無機固体電解質として、リチウムを含有したセラミック材料が挙げられる。なかでもLi3N、Li3PO4−Li2S−SiS2ガラスなどが挙げられる。
【0057】
正極と負極の間には、セパレータを配置することができる。また、このセパレータと併せてゲル状もしくは固体の非水電解質層を用いても良いし、セパレータの代わりにゲル状もしくは固体の非水電解質層を用いることも可能である。
【0058】
セパレータは、正極および負極が接触するのを防止するためのものであり、絶縁性材料で構成される。さらに、正極および負極の間を電解質が移動可能な形状のものが使用される。具体的には、例えば合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムなどを挙げることができる。
【0059】
本発明に係わる非水電解質電池の一実施形態である円筒形非水電解質二次電池の一例を図1に示す。
【0060】
例えばステンレスからなる有底円筒状の容器1の底部には、絶縁体2が配置されている。電極群3は、前記容器1に収納されている。前記電極群3は、正極4、セパレータ5、負極6及セパレータ5を積層した帯状物を前記セパレータ5が外側に位置するように渦巻き状に捲回した構造になっている。
【0061】
前記容器1内には、非水電解液が収容されている。中央部が開口された絶縁紙7は、前記容器1内の前記電極群3の上方に配置されている。絶縁封口板8は、前記容器1の上部開口部に配置され、かつ前記上部開口部付近を内側にかしめ加工することにより前記封口板8は前記容器1に固定されている。正極端子9は、前記絶縁封口板8の中央に嵌合されている。正極リード10の一端は、前記正極4に、他端は前記正極端子9にそれぞれ接続されている。前記負極6は、図示しない負極リードを介して負極端子である前記容器1に接続されている。
【0062】
【実施例】
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
【0063】
(実施例1〜32)
<正極の作製>
まず、正極活物質のリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)粉末を91重量%と、アセチレンブラックを2.5重量%と、グラファイトを3重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3.5重量%と、N−メチルピロリドン(NMP)溶液とを混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより電極密度3.0g/cm3の正極を作製した。
【0064】
<負極の作製>
負極活物質としては、下記表1〜表2に示す組成比率で所定量の元素を混合し、以下の(1)〜(3)に説明する方法で作製したものを使用した。
【0065】
(1)単ロール法(超急冷法)
下記表1〜表2に示す組成比率で混合した元素を高周波溶解で溶融後、高速回転する冷却ロール上(30m/s)に射出し、板厚30〜60μmのフレークを作製することにより負極活物質を得た。
【0066】
(2)ストリップキャスト法
下記表1〜表2に示す組成比率で混合した元素を高周波溶解にて溶融後、ゆっくり移動する冷却ロール上(1m/s)に溶湯を流し込み、板厚200〜500μmのフレークを作製することにより負極活物質を得た。
【0067】
(3)高周波溶解法
下記表1〜表2に示す組成比率で混合した元素を高周波溶解にて溶融後、水冷円盤鋳型上に厚さ約10mmで鋳造することにより合金インゴットを得た。得られた合金インゴットを800℃、10時間不活性雰囲気中で熱処理することにより負極活物質を得た。
【0068】
得られた負極活物質の粉末85重量%に導電剤としてのグラファイト5重量%、同じく導電剤としてのアセチレンブラック3重量%、PVdF7重量%とNMP溶液とを加えて混合し、厚さ11μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥し、プレスすることにより負極を作製した。
【0069】
<電極群の作製>
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータ、前記負極、及び前記セパレータをそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回して電極群を作製した。
【0070】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒に(混合体積比率1:2)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/L溶解して非水電解液を調整した。
【0071】
前記電極群及び前記電解液をステンレス製の有底円筒状容器内にそれぞれ収納して前述した図1に示す円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0072】
(比較例1)
合金粉末の代わりに、3250℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長25μm、面間隔d002が0.3355nm、BET法による比表面積が3m2/g)の炭素質粉末を使用すること以外は、前述した実施例1と同様にして円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0073】
(比較例2,4、5)
各元素の粉体またはブロックを下記表3に示す組成で溶解槽に投入し、加熱により溶解し、その溶融物をロール急冷法で急冷、凝固させ、下記表3に示す組成の合金を得た。この合金を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0074】
(比較例3、6、7,8)
各種原料元素の単体を下記表3に示す組成で混合し、アーク溶解炉で鋳造した。得られた鋳造品を、アルゴン雰囲気下、ガスアトマイズ法を用いて球状粒子にした。得られた合金を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0075】
得られた実施例1〜32及び比較例1〜8の二次電池について、以下に説明する方法で合金の金属組織の確認と電池特性の評価を行い、その結果を下記表1〜表3に示す。
【0076】
<X線回折>
得られた合金について粉末X線回折測定を行い、合金を構成する相の確認を行った。なお、主相の面積比率は、X線回折法およびSEM(scanning electron microscope)−EPMA(electron probe microanalysis)法を用いて、相の組成分析を行い、その面積比を画像処理で求めた。また、結晶粒がSEMレベルで評価できないほどの微細化した場合は、TEM(transmission electron microscope)とEDX(energy−dispersive X−ray diffraction)を用いて、各結晶粒ごとに組成分析し、20個以上の結果から面積比を求める。
【0077】
<初期容量と充放電サイクル寿命>
各二次電池について、測定環境温度を60℃と設定し、充電電流1.5Aで4.2Vまで3時間充電後、3.0Vまで1.5Aで放電する試験において、初期容量、およびこの充放電を400回繰り返した時の容量維持率(1回目の容量を1とした時の400サイクル目の容量)を測定した。その結果を下記表1〜表3に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
なお、表1〜表3においては、作製法(1)は、単ロール法、作製法(2)はストリップキャスト法、作製法(3)は鋳造法+熱処理(800℃,10時間)、作製法(4)ガスアトマイズ法を示す。
【0082】
表1〜表3から明らかなように、前述した(1)式で表される組成を有する合金を備えた実施例1〜7、10〜12の二次電池と、前述した(2)式で表される組成を有する合金を備えた実施例8〜9、13〜32の二次電池は、初期容量と400サイクル後の容量維持率の双方に優れていることが理解できる。
【0083】
これに対し、比較例1〜6,8の二次電池は、400サイクル後の容量維持率が0.7以下と低く、また、比較例7の二次電池は、400サイクル後の容量維持率に優れているものの、初期容量が1と低かった。
【0084】
なお、前述した実施例においては、円筒形非水電解質二次電池に適用した例を説明したが、角型非水電解質二次電池、薄型非水電解質二次電池等にも同様に適用できる。また、電池容器内に収納される電極群は、渦巻形に限らず、正極、セパレータ及び負極をこの順序で複数積層した形態にしてもよい。
【0085】
また、前述した実施例では、非水電解質二次電池に適用した例を説明したが、非水電解質一次電池に適用すると、放電容量を向上することができる。
【0086】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、放電容量と充放電サイクル寿命の双方に優れる非水電解質電池を実現することが可能な非水電解質電池用電極材料と、この電極材料を含む電極と、この電極を備えた非水電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる非水電解質電池の一実施形態である円筒形非水電解質二次電池の一例を示す部分断面図。
【符号の説明】
1‥容器
3‥電極群
4‥正極
5‥セパレータ
6‥負極
8‥封口板
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質電池用電極材料、電極及び非水電解質電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料などを負極活物質に用いた非水電解質二次電池は、高エネルギー密度電池として期待され、盛んに研究開発が進められている。これまでに、正極活物質にLiCoO2やLiMn2O4などが用いられ、かつ負極活物質にリチウムを吸蔵・放出する炭素材料が用いられたリチウムイオン二次電池が広く実用化されている。
【0003】
一方、リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物を負極に用いた二次電池は、未だ実用化されていない。この主な理由は、リチウム金属を用いた場合、非水電解質とリチウム金属との反応によるリチウムの劣化と、充放電の繰り返しによるデンドライト状(樹枝状)のリチウムの発生による脱離が起きるため、内部短絡やサイクル寿命が短いという問題点を有していることである。
【0004】
このような問題点を解決するためにリチウム合金やリチウム化合物を負極に用いる研究がなされた。とくにリチウム−アルミニウム合金などの合金においては、非水電解質との反応性が抑制されて充放電効率が改善されるものの、深い充放電を繰り返すと電極の微粉化が生じるため、サイクル特性に問題があった。
【0005】
ところで、特開2001−68112号公開公報には、少なくとも3相を含む粒子で構成され、そのうち少なくとも2相はリチウムを吸蔵し、少なくとも1相はリチウムを吸蔵しない相である非水電解質二次電池用負極活物質を用いることにより、リチウム吸蔵放出に伴う膨張・収縮を緩和し、サイクル寿命を向上させることが記載されている。また、特開2001−93524号公開公報には、リチウム吸蔵時の膨張応力の差が小さいA相とB相を有する負極活物質を用いることにより、活物質全体における膨張応力を均一に緩和し、サイクル寿命を向上させることが記載されている。
【0006】
しかしながら、これら公開公報に記載された負極活物質は、いずれもリチウム拡散性が劣るため、十分な充放電サイクル寿命を得られなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−68112号公報(特許請求の範囲、段落[0006]、段落[0031]〜[0043])
【0008】
【特許文献2】
特開2001−93524号公報(特許請求の範囲、段落[0021]、段落[0039]〜[0053])
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、放電容量と充放電サイクル寿命の双方に優れる非水電解質電池を実現することが可能な非水電解質電池用電極材料と、この電極材料を含む電極と、この電極を備えた非水電解質電池を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の非水電解質電池用電極材料は、下記一般式(1)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とするものである。
【0011】
SnaCobMcTdXe (1)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,eは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0<c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20を示す。
【0012】
本発明に係る第2の非水電解質電池用電極材料は、下記一般式(2)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とするものである。
【0013】
Sna(Co1−xFex)bMcTdXe (2)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,e,xは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0≦c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20、0<x≦0.8を示す。
【0014】
本発明に係る電極は、前記第1の非水電解質電池用電極材料及び前記第2の非水電解質電池用電極材料のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る非水電解質電池は、前記第1の非水電解質電池用電極材料及び前記第2の非水電解質電池用電極材料のうちの少なくとも一方を含む負極と、正極と、非水電解質とを具備することを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る第1の非水電解質二次電池用電極材料は、下記一般式(1)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含むことを特徴とするものである。
【0017】
SnaCobMcTdXe (1)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,eは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0<c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20を示す。
【0018】
この電極材料における主相は、六方晶構造の結晶相であることが望ましい。ここで、主相とは、2相からなる合金の場合、50%以上の面積比で占める最も面積割合が多い相であることが望ましく、3相以上からなる合金の場合、34%以上の面積比で占める最も面積割合が多い相であることが好ましい。
【0019】
前述した第1の電極材料を負極活物質として含む負極を備えた非水電解質二次電池は、体積エネルギー密度と充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0020】
前記(1)式で表される合金は、結晶構造が六方晶からなる単相でも、六方晶以外の結晶相を含む複相でもよい。いずれの場合でも、六方晶からなる結晶相はB35タイプ、例えばCoSn型の結晶相が主相であることが望ましい。中でも、CoSn型の結晶相とCo3Sn2型の正方晶を有する結晶相を同時に含むものが、充放電サイクル寿命の点で好ましい。CoSn型の結晶相とCo3Sn2型の結晶相とを含む合金には、さらにCoSn2型の結晶相が少量含まれていても良い。この2相ともLiとは活性相であり、ただし反応速度が異なる。即ち、CoSn相あるいはCo3Sn2相中にLiが入り込むのではなく、Liと反応する場合、それぞれ、以下の(A),(B)の反応式に従って分離し、このあとSnとLiの間で可逆反応が起きる。従って、この2つの反応速度に差があるだけで、Liに対して不活性な相ではない。
【0021】
CoSn+xLi→Co+LixSn (A)
Co3Sn2+xLi→3Co+2LixSn (B)
すなわち、電池の使用時における負極内の相構成は、CoSn相、Co3Sn2相以外にCo相、Sn相が徐々に存在するようになり、充放電サイクル回数によっては、CoSn相あるいはCo3Sn2相が消失することもある。また、SnとLiの結合分離する可逆反応の中で、一部合金化を生じ、Li−Sn合金が存在する場合もある。
【0022】
さらに、添加元素を含む合金の場合にはCo−Sn−M相、Co−Sn−X相あるいはCo−Sn−T相が含まれていてもよい。この場合、面積比で10%以下が好ましい。
【0023】
本発明の結晶相の平均結晶粒径は10nm以上、20μm以下の範囲内にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。平均結晶粒径を10nm未満にすると、放電容量の立ち上がりが大幅に遅れる恐れがある。一方、平均粒径が20μmを超えると、長寿命を得られない恐れがある。平均結晶粒径のより好ましい範囲は20nm〜10μmである。
【0024】
前記(1)式で表される合金の基本元素は、Co、元素M、およびSnである。
【0025】
1)Co
Coはリチウムとの合金化が起こり難い元素であり、またSnと基本的に1:1近傍の原子比で六方晶を構成することができる。その量は原子%で35%〜55%である。Coの原子比bが35原子%未満あるいは55原子%を超えると、六方晶が主相になり難く、高容量あるいは充放電の長寿命特性が得られない。
【0026】
2)元素M
元素Mの原子%を0<c≦20にすることによって、負極活物質のリチウムの拡散性を高くすることができるため、二次電池の充放電サイクル寿命を向上することができる。また、Co相、Sn相、CoSn2相の形成抑制にも有効である。しかし、原子%で20原子%を超えると活物質のリチウム吸蔵能が低下するために、二次電池の放電容量が低くなる。好ましい範囲は1≦c≦15である。また、元素Mの中でもNiが好ましい。Niは、他の種類の元素Mと同じ添加量で比較した場合、サイクル寿命を向上させる効果がより大きいからである。
【0027】
3)Sn
Snはリチウムと合金を形成することが可能な元素であり、Coと原子比で1:1近傍の割合で六方晶構造を構成することができる。特に、原子%で40〜50%の時に六方晶構造の結晶相を主相とすることができる。40原子%未満にすると、六方晶構造の結晶相の比率が少なくなるため、高容量が得られない。一方、50原子%を超えると、充放電サイクルにおいて長寿命が得られない。
【0028】
4)X元素
X元素もLiと合金を形成することが可能な元素であり、この元素の存在によって、放電容量をあまり低下させずに長寿命化することができる。その量は原子%で0≦e≦20である。20原子%を超えると徐々に容量低下が見られるようになる。この容量低下の一因として、負極活物質の密度低下による単位体積当りの放電容量の低下が挙げられる。好ましくは、15原子%以下である。X元素のうち、Si,Al,Inが好ましく、密度低下抑制にはInが好ましい。
【0029】
5)T元素
T元素は、主相となるB−35型、例えばCoSn型結晶相に固溶することができる。
また、Co、Snなどの構成元素と新規な相を形成することも可能である。希土類元素としては、例えば、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu等を挙げることができる。T元素は、固溶あるいは新規な相の形成等の効果によって、サイクル寿命特性を向上することができる。合金中のT元素の含有量は、原子%で0≦d≦10であることが望ましい。これは、10原子%を超えると、高容量が得られないからである。より好ましくは8原子%以下である。T元素の中でもTi,Nb,Mo,La,Ce,Pr,Nd,Smが好ましく、これらT元素はサイクル寿命特性をより向上させることができる。
【0030】
本発明に係る第2の非水電解質電池用電極材料は、下記一般式(2)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とするものである。
【0031】
Sna(Co1−xFex)bMcTdXe (2)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,e,xは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0≦c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20、0<x≦0.8を示す。
【0032】
前記(2)式で表される合金の基本元素は、CoFeおよびSnである。基本的には(1)式の場合と同じであるが、CoFeを含む部分と元素Mが必須元素でない部分が異なる。この場合、Feもリチウムとの合金化が起こり難い元素であり、また、Coの場合と同じように、Snと基本的に1:1近傍の原子比で六方晶を構成することができる。その量は原子%で35〜55%である。CoとFeの合計原子比bが35原子%未満あるいは55原子%を超えると、六方晶構造の結晶相が主相になり難く、高容量あるいは充放電の長寿命特性が得られない。また、CoとFeの合計原子比を1とした際のFeの原子比xが0.8を超えるのは、合金中にSn析出の可能性が大きくなり、サイクル寿命が短くなるため、好ましくない。Feの原子比xのより好ましい範囲は、0.01≦x≦0.6である。
【0033】
(2)式で表される合金の場合、構成相として(1)式で表される合金において挙げた結晶相以外に六方晶構造のFeSn相(Fe1.3Sn)が含まれていてもよく、さらに異なる比のFe−Sn金属間化合物が存在していても良い。また、FeはM元素と同等の効果を有するため、(2)式で表される合金においては、M元素が含有されていなくても、充放電サイクル寿命と放電容量に優れる二次電池を実現することができる。なお、元素Mの添加により、二次電池の充放電サイクル寿命をさらに向上することができる。
【0034】
前述した第1、第2の非水電解質電池用電極材料の作製法としては、例えば、高周波溶解法、アーク溶解法、焼結法、超急冷法、ストリップキャスト法、アトマイズ法、めっき法、CVD法、スパッタ法、メカニカル処理法、圧延法などが挙げられる。特に好ましくは、超急冷法、ストリップキャスト法、高周波溶解法が挙げられる。
【0035】
これらの方法はいずれも予め量りとった各素材を、不活性雰囲気中において、るつぼ内で溶解し、その後の冷却過程をそれぞれ変えたものである。すなわち、超急冷法は高速回転する冷却体上に合金溶湯を射出し、板厚10〜50μmのフレーク状試料を得る。ストリップキャスト法では、冷却体への単位時間あたりの溶湯供給量を超急冷法に比べて増やして、板厚100〜500μmのフレーク状試料を得る。条件によっては超急冷法で100μmまでの板厚のものも得ることができる。また、ストリップキャスト法では、鋳造する際に回転する冷却板上に溶湯を流し込めばよく、溶湯供給量と冷却板の移動速度で材料板厚を制御し、その結果冷却速度を制御できる。得られたこれらの試料は、熱処理により組織、組成の均質化が実現でき、特にこれは鋳造した試料で顕著であり、ストリップキャスト法、あるいは超急冷法で得た試料は熱処理を行わなくてもよい。また、特にストリップキャスト法で得られた試料では柱状晶組織が得られやすく、寿命の観点からこの組織は好ましい。なお、超急冷法とストリップキャスト法は、共に冷却体(冷却ロールなど)を用いる製造方法である。本発明において、超急冷法とストリップキャスト法の区別は、板厚100μm以下のものを作製するときは超急冷法、板厚100μmを超えるものを作製する時はストリップキャスト法として区別することとした。
【0036】
これら方法で得られた合金中には、酸素が濃度1000ppm以下で含有されていても良い。また、Mgが濃度500ppmまで含有されていてもよい。
【0037】
また、高周波溶解法のような通常の鋳造法で得られた合金を熱処理することによっても高特性が得られる。この場合は単相が得られやすく、添加元素による特性向上には添加元素の量は多めに設定した方が好ましい。例えば、急冷プロセスで適した添加量の約1.5〜3倍である。
【0038】
なお、第1あるいは第2の電極材料を負極活物質として含む負極を備えた非水電解質二次電池において、充放電により不可逆容量が生じると、負極内にCo相、Sn相あるいはLiSn相が形成される場合がある。
【0039】
次いで、本発明に係る第1の非水電解質電池用電極材料または第2の非水電解質電池用電極材料を備えた非水電解質電池について説明する。
【0040】
本発明に係る非水電解質電池は、正極と、第1、第2の非水電解質電池用電極材料のうち少なくとも一方を負極活物質として含む負極と、非水電解質とを備えるものである。
【0041】
1)正極
正極は、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布し、乾燥し、プレスして帯状電極にすることにより作製される。
【0042】
前記正極活物質は、種々の酸化物、硫化物が挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn2O4またはLiMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−xCoxO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnxCo1−xO2)、バナジウム酸化物(例えばV2O5) などが挙げられる。
また、導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料などの有機材料も挙げられる。より好ましい正極は、電池電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2O2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LiMnxCo1−xO2)などが挙げられる。
【0043】
導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0044】
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0045】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0046】
2)負極
負極は、例えば、第1、第2の非水電解質電池用電極材料のうち少なくとも一方を含む負極活物質、導電剤及び結着剤からなる負極合剤を適当な溶媒に懸濁して混合し、塗液としたものを集電体の片面もしくは両面に塗布し、乾燥することにより作製される。
【0047】
また、負極活物質として、アルカリ金属の吸蔵能の高い炭素材料を添加し、前述した第1または第2の電極材料と、この炭素材料との混合物とすることで、アルカリ金属の吸蔵量を向上させることができる。このような負極活物質に用いる炭素材料としては黒鉛系の炭素材料が好ましく、より具体的にはメソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが好ましい。
【0048】
さらに、負極には使用される導電剤としては、通常炭素材料が使用される。前述した負極活物質に用いる炭素材料として、アルカリ金属の吸蔵性と導電性との両特性の高いものがあれば、負極活物質として用いる前述の炭素材料を導電剤と兼用させることが可能であるが、例示したメソフェーズピッチカーボンファイバーなどの炭素吸蔵性の高い黒鉛のみでは導電性が低くなるため、導電剤として使用される炭素材料としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック等を負極に使用することが好ましい。
【0049】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
【0050】
前記負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質70〜95重量%、導電剤0〜25重量%、結着剤2〜10重量%の範囲にすることが好ましい。
【0051】
3) 非水電解質
前記非水電解質は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される液体状非水電解質(非水電解液)、高分子材料に前記非水溶媒と前記電解質を含有した高分子ゲル状電解質、高分子材料に前記電解質を含有した高分子固体電解質、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質が挙げられる。
【0052】
液状非水電解質に用いられる非水溶媒としては、リチウム電池で公知の非水溶媒を用いることができ、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートや、環状カーボネートと環状カーボネートより低粘度の非水溶媒(以下第2の溶媒)との混合溶媒を主体とする非水溶媒などを挙げることができる。
【0053】
第2の溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、環状エーテルとしてテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなど、鎖状エーテルとしてジメトキシエタン、ジエトキシエタンなどが挙げられる。
【0054】
電解質としては、アルカリ塩が挙げられるが、とくにリチウム塩が挙げられる。リチウム塩として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)などが挙げられる。とくに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)が好ましい。前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lとすることが好ましい。
【0055】
ゲル状電解質として前記溶媒と前記電解質を高分子材料に溶解しゲル状にしたもので、高分子材料としてはポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PECO)などの単量体の重合体または他の単量体との共重合体が挙げられる。
【0056】
固体電解質としては、前記電解質を高分子材料に溶解し、固体化したものである。高分子材料としてはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PEO)などの単量体の重合体または他の単量体との共重合体が挙げられる。また、無機固体電解質として、リチウムを含有したセラミック材料が挙げられる。なかでもLi3N、Li3PO4−Li2S−SiS2ガラスなどが挙げられる。
【0057】
正極と負極の間には、セパレータを配置することができる。また、このセパレータと併せてゲル状もしくは固体の非水電解質層を用いても良いし、セパレータの代わりにゲル状もしくは固体の非水電解質層を用いることも可能である。
【0058】
セパレータは、正極および負極が接触するのを防止するためのものであり、絶縁性材料で構成される。さらに、正極および負極の間を電解質が移動可能な形状のものが使用される。具体的には、例えば合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムなどを挙げることができる。
【0059】
本発明に係わる非水電解質電池の一実施形態である円筒形非水電解質二次電池の一例を図1に示す。
【0060】
例えばステンレスからなる有底円筒状の容器1の底部には、絶縁体2が配置されている。電極群3は、前記容器1に収納されている。前記電極群3は、正極4、セパレータ5、負極6及セパレータ5を積層した帯状物を前記セパレータ5が外側に位置するように渦巻き状に捲回した構造になっている。
【0061】
前記容器1内には、非水電解液が収容されている。中央部が開口された絶縁紙7は、前記容器1内の前記電極群3の上方に配置されている。絶縁封口板8は、前記容器1の上部開口部に配置され、かつ前記上部開口部付近を内側にかしめ加工することにより前記封口板8は前記容器1に固定されている。正極端子9は、前記絶縁封口板8の中央に嵌合されている。正極リード10の一端は、前記正極4に、他端は前記正極端子9にそれぞれ接続されている。前記負極6は、図示しない負極リードを介して負極端子である前記容器1に接続されている。
【0062】
【実施例】
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
【0063】
(実施例1〜32)
<正極の作製>
まず、正極活物質のリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)粉末を91重量%と、アセチレンブラックを2.5重量%と、グラファイトを3重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3.5重量%と、N−メチルピロリドン(NMP)溶液とを混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより電極密度3.0g/cm3の正極を作製した。
【0064】
<負極の作製>
負極活物質としては、下記表1〜表2に示す組成比率で所定量の元素を混合し、以下の(1)〜(3)に説明する方法で作製したものを使用した。
【0065】
(1)単ロール法(超急冷法)
下記表1〜表2に示す組成比率で混合した元素を高周波溶解で溶融後、高速回転する冷却ロール上(30m/s)に射出し、板厚30〜60μmのフレークを作製することにより負極活物質を得た。
【0066】
(2)ストリップキャスト法
下記表1〜表2に示す組成比率で混合した元素を高周波溶解にて溶融後、ゆっくり移動する冷却ロール上(1m/s)に溶湯を流し込み、板厚200〜500μmのフレークを作製することにより負極活物質を得た。
【0067】
(3)高周波溶解法
下記表1〜表2に示す組成比率で混合した元素を高周波溶解にて溶融後、水冷円盤鋳型上に厚さ約10mmで鋳造することにより合金インゴットを得た。得られた合金インゴットを800℃、10時間不活性雰囲気中で熱処理することにより負極活物質を得た。
【0068】
得られた負極活物質の粉末85重量%に導電剤としてのグラファイト5重量%、同じく導電剤としてのアセチレンブラック3重量%、PVdF7重量%とNMP溶液とを加えて混合し、厚さ11μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥し、プレスすることにより負極を作製した。
【0069】
<電極群の作製>
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータ、前記負極、及び前記セパレータをそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回して電極群を作製した。
【0070】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒に(混合体積比率1:2)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/L溶解して非水電解液を調整した。
【0071】
前記電極群及び前記電解液をステンレス製の有底円筒状容器内にそれぞれ収納して前述した図1に示す円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0072】
(比較例1)
合金粉末の代わりに、3250℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長25μm、面間隔d002が0.3355nm、BET法による比表面積が3m2/g)の炭素質粉末を使用すること以外は、前述した実施例1と同様にして円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0073】
(比較例2,4、5)
各元素の粉体またはブロックを下記表3に示す組成で溶解槽に投入し、加熱により溶解し、その溶融物をロール急冷法で急冷、凝固させ、下記表3に示す組成の合金を得た。この合金を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0074】
(比較例3、6、7,8)
各種原料元素の単体を下記表3に示す組成で混合し、アーク溶解炉で鋳造した。得られた鋳造品を、アルゴン雰囲気下、ガスアトマイズ法を用いて球状粒子にした。得られた合金を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして円筒形非水電解質二次電池を組み立てた。
【0075】
得られた実施例1〜32及び比較例1〜8の二次電池について、以下に説明する方法で合金の金属組織の確認と電池特性の評価を行い、その結果を下記表1〜表3に示す。
【0076】
<X線回折>
得られた合金について粉末X線回折測定を行い、合金を構成する相の確認を行った。なお、主相の面積比率は、X線回折法およびSEM(scanning electron microscope)−EPMA(electron probe microanalysis)法を用いて、相の組成分析を行い、その面積比を画像処理で求めた。また、結晶粒がSEMレベルで評価できないほどの微細化した場合は、TEM(transmission electron microscope)とEDX(energy−dispersive X−ray diffraction)を用いて、各結晶粒ごとに組成分析し、20個以上の結果から面積比を求める。
【0077】
<初期容量と充放電サイクル寿命>
各二次電池について、測定環境温度を60℃と設定し、充電電流1.5Aで4.2Vまで3時間充電後、3.0Vまで1.5Aで放電する試験において、初期容量、およびこの充放電を400回繰り返した時の容量維持率(1回目の容量を1とした時の400サイクル目の容量)を測定した。その結果を下記表1〜表3に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
なお、表1〜表3においては、作製法(1)は、単ロール法、作製法(2)はストリップキャスト法、作製法(3)は鋳造法+熱処理(800℃,10時間)、作製法(4)ガスアトマイズ法を示す。
【0082】
表1〜表3から明らかなように、前述した(1)式で表される組成を有する合金を備えた実施例1〜7、10〜12の二次電池と、前述した(2)式で表される組成を有する合金を備えた実施例8〜9、13〜32の二次電池は、初期容量と400サイクル後の容量維持率の双方に優れていることが理解できる。
【0083】
これに対し、比較例1〜6,8の二次電池は、400サイクル後の容量維持率が0.7以下と低く、また、比較例7の二次電池は、400サイクル後の容量維持率に優れているものの、初期容量が1と低かった。
【0084】
なお、前述した実施例においては、円筒形非水電解質二次電池に適用した例を説明したが、角型非水電解質二次電池、薄型非水電解質二次電池等にも同様に適用できる。また、電池容器内に収納される電極群は、渦巻形に限らず、正極、セパレータ及び負極をこの順序で複数積層した形態にしてもよい。
【0085】
また、前述した実施例では、非水電解質二次電池に適用した例を説明したが、非水電解質一次電池に適用すると、放電容量を向上することができる。
【0086】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、放電容量と充放電サイクル寿命の双方に優れる非水電解質電池を実現することが可能な非水電解質電池用電極材料と、この電極材料を含む電極と、この電極を備えた非水電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる非水電解質電池の一実施形態である円筒形非水電解質二次電池の一例を示す部分断面図。
【符号の説明】
1‥容器
3‥電極群
4‥正極
5‥セパレータ
6‥負極
8‥封口板
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とする非水電解質電池用電極材料。
SnaCobMcTdXe (1)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,eは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0<c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20を示す。 - 下記一般式(2)で表され、かつ六方晶構造の結晶相を含有する合金を含むことを特徴とする非水電解質電池用電極材料。
Sna(Co1−xFex)bMcTdXe (2)
但し、Mは、Ni、Cu、Mn、V及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、Tは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で、Xは、Si、Al、Sb及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a,b,c,d,e,xは、それぞれ、a+b+c+d+e=100原子%、40≦a≦50、35≦b≦55、0≦c≦20、0≦d≦10、0≦e≦20、0<x≦0.8を示す。 - 請求項1または請求項2記載の非水電解質電池用電極材料を含むことを特徴とする電極。
- 請求項1または請求項2記載の非水電解質電池用電極材料を含む負極と、正極と、非水電解質とを具備することを特徴とする非水電解質電池。
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2002
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