JP2004184966A - 平板レンズ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明な第1の電極を有する第1の基板1、電極を有しない第2の基板2、第2の基板の外部に配置した第2の電極6、及び前記第1の基板と第2の基板との間に収容された、液晶分子を一方向に配向させた液晶層3を備え、第2の電極6が曲面となっていることを特徴とし、前記第1の電極4と第2の電極6との間に電圧を加えて液晶分子の配向制御を行うことで平板レンズが作製される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶セルを構成する基板上に設けた電極と外部に設けた電極間に電圧を印加することにより液晶分子の配向制御を行い、所定の光学特性に調整する平板レンズ、および所定の光学特性に調整した後、重合硬化した平板レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
液体のような流動性を持ち、また電気的光学的特性に異方性を示す液晶は、その分子配向状態を種々制御できるという特徴を利用することで、近年薄型軽量の平板型表示素子として目覚ましい発展を続けている。この液晶分子の配向状態は、液晶素子を構成する2枚の透明導電膜を付けたガラス基板の表面の処理や、外部印加電圧により容易に制御することができ、電圧印加により実効的な屈折率を異常光に対する値から常光に対する値まで連続的に可変できるという、他の光学材料にないすぐれた特性を有している。
【0003】
これまでネマチック液晶における電気光学効果を利用することで、通常の液晶ディスプレイにおける平行平板形の素子構造とは異なり、透明電極付きのガラス基板面が湾曲し液晶層がレンズ構造となるようにし、電極間に電圧を印加することで液晶分子の配向制御を行い、実効的な屈折率を変化させる焦点可変レンズが
【特許文献1】、
【非特許文献1】および
【非特許文献2】で提案されている。
【0004】
次に、光学媒質に空間的な屈折率分布を与えることでレンズ効果を得る方法があり、セルフォックレンズとして市販されている。ネマチック液晶セルにおいて、液晶分子は電界の方向に配向するという性質を利用したもので、円形の穴型パターンを有する電極を用いて軸対称的な不均一電界による液晶分子配向効果を利用することで、空間的な屈折率分布特性を有する液晶レンズを得る方法が
【特許文献2】、
【特許文献3】、
【非特許文献3】および
【非特許文献4】に報告されている。
【0005】
また、
【特許文献4】では、液晶中に網目状の高分子ネットワークをつくることで、特性の改善がなされている。このような液晶を用いたレンズでは、多数の微小なマイクロレンズと呼ばれるレンズを平板状に2次元的に配列したマイクロレンズアレイとすることが比較的容易にできるという特徴がある。
【0006】
さらに、液晶マイクロレンズにおいて、円形穴型パターン電極の外部にさらに1対の電極を配置して電圧を印加することで、レンズの特性が改善されることが
【非特許文献5】で提案されている。また、液晶層と円形の穴型パターン電極との
間に絶縁層を挿入する方法が
【非特許文献6】および
【非特許文献7】において提案されており、液晶マイクロレンズにおいて最良の特性が得られる円形穴型パターンの直径と液晶層の厚みの比が2対1から3対1程度とする必要があるという条件が緩和されることが示されている。
【0007】
一方、結像光学系に収差補正機構を備えた光学系から得られる光学像を撮像装置で検出し、検出された信号から収差および収差を補正する信号を求めることで、大気の揺らぎなどにより発生する光学系の収差を補正し、ゆがみのない光学像を得る光学装置としてレンズミラーなどの代わりに液晶素子を利用する光学装置が
【特許文献5】において提案されている。
【0008】
これらの液晶を用いた光学素子は、通常の受動型の光学素子とは異なり、電極間に電圧を印加して媒質である液晶の実効的な屈折率を可変制御することで、焦点距離などの光学特性や光学系の収差を調節できるレンズが実現される。
【0009】
また、液晶材料として重合硬化型液晶を用いて焦点距離を調節した後重合硬化させることで、
【特許文献6】に示されるように高分子レンズを得ることができる。
【0010】
【特許文献1】
特開昭54−151854号公報
【特許文献2】
特開平11−109303
【特許文献3】
特開平11−109304
【特許文献4】
特開平10−239676号公報
【特許文献5】
特開平03−265819号公報
【特許文献6】
特開平09−005695号公報
【特許文献7】
特開2001−066564号公報
【非特許文献1】
佐藤進(S.Sato),「焦点距離可変液晶レンズセル(Liquid−crystal lens−cell with variable focallength)」,Japanese Journal of Applied Physics,1979年,Vol.18,P.1679−1683
【非特許文献2】
佐藤進、「液晶とその応用」、産業図書株式会社、1984年10月14日、P.204−206
【非特許文献3】
能勢敏明,佐藤進(T.Nose and S.Sato),「不均一電界を用いた液晶マイクロレンズ(Liquid−crystal microlens obtained with a nonuniform electric field)」,Liquid Crystals,1989年,Vol.5,P.1425―1433
【非特許文献4】
佐藤進、「液晶の世界」、産業図書株式会社、1994年4月15日、P.186−189
【非特許文献5】
本間道則,能勢敏明,佐藤進(M.Honma,T.Nose and S。Sato),「積層電極構造による液晶マイクロレンズの開口数の増大(Enhancement of numerical aperture of liquid crystal microlenses using a stacked electrode structure)」,Japanese Journal of Applied Physics,200年8月,Vol.39,No.8,P.4799−4802
【非特許文献6】
葉茂,佐藤進(M.Ye and S.Sato),「任意寸法の液晶レンズの光学的特性(Optical properties of liquid crystal lens of any size)」,第49回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,2002年3月,28p−X−10,P.1277
【非特許文献7】
葉茂,佐藤進(M.Ye and S.Sato),「任意寸法の液晶レンズの光学的特性(Optical properties of liquid crystal lens of any size)」,Japanese Journal of Applied Physics,2002年5月,Vol.41,No.5,P.L571―L573
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液晶層がレンズ構造となるようにした液晶レンズでは、凸レンズではレンズの中央部分が、また凹レンズではレンズの周辺部分における液晶層の厚みが厚くなるため、直径が数mm以上のレンズを構成しようとすると液晶層の厚みが数100ミクロン以上の厚みになってしまい、液晶分子の配向状態が低下するため白濁するなどの難点があり、さらに液晶セルの構造上平板レンズとすることができない。
【0012】
円形穴型パターン電極により生じる、軸対称の不均一電界による液晶分子の空間配向分布特性を利用する液晶マイクロレンズにおいては、円形穴型パターンの直径と液晶層の厚みの比が2対1から3対1程度の場合にレンズとしての特性が良好になることが知られている。レンズの直径が1mm程度になると、液晶層の厚みを数100ミクロン程度としなければならず、前述したように、液晶層が白濁してしまうという問題点があった。ネマチック液晶セルにおいて、電圧印加により液晶分子が電界方向に配向する場合の電界に対する応答特性は、液晶層の厚みの2乗にほぼ比例して長くなるという特性があるため、電圧を加えて焦点距離を可変するのに必要な時間が極めて長くなることが問題であった。この応答時間を改善する方法としては、
【特許文献7】において提案されているように、円形穴型パターン電極をスリットにより分割して、横方向に電界を印加する方法があるが、電極の作製に余分な行程が必要となり、駆動法も複雑になるという難点がある。
【0013】
さらに,
【非特許文献5】で提案されている円形穴型パターン電極の外部に1対の電極を配置する方式や、
【非特許文献6】及び
【非特許文献7】で提案されている液晶層と円形穴型パターン電極の間に絶縁層を設けた構造では、液晶セルにおける幾何学的構造によって軸対称の電界分布の形状が固定されてしまい、収差の補正等も含めた微妙な調整を行うことができないので、レンズ効果を得るための正確な屈折率分布を形成することが難しく、また種々の液晶材料の物性値に対応させた所定の屈折率分布特性を形成することが困難であった。したがって、その結果として電圧印加により屈折率分布を形成した後に重合硬化させる場合においても、レンズとしての特性を精密に調整することが難しいという問題があった。
【0014】
また、
【特許文献5】で提案されている光学系における収差の補正方法では、一定の形状の画素電極に電圧を印加することで液晶の実効的な屈折率を可変して収差の補正を行っているが、限定された領域における屈折率の制御法を用いているので、液晶の屈折率を2次元的に連続に可変制御することができないため、収差の補正は空間的に段階的もしくは不連続に行っており、連続的になめらかな収差の補正を行うことが難しいという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、上述の各問題を解決し、簡単な構造で、きわめて容易に且つ迅速に光学的特性を可変できる平板レンズを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、第1の電極を有する第1の基板、電極を有しない第2の基板、第2の基板の外部に配置した第2の電極、および前記第1の基板と第2の基板との間に収容された、液晶分子を一方向に配向させた液晶層を備え、前記第1の電極と第2の電極との間に電圧を加えて液晶分子の配向制御を行う平板レンズにおいて、第2の電極が曲面となっていることを特徴とする平板レンズを提供する。
【0017】
本発明に係わる平板レンズにおいて、第2の電極を半球面または球面の一部とすることができる。また、第2の電極を正弦波関数または正弦波関数の重畳関数とすることや、べき乗の関数で与えられる形状とすることができる。
【0018】
本発明に係わる平板レンズにおいて、液晶層を絶縁層により分割することができ、また本発明に係わる平板レンズを2次元アレイ状に配置して、平板レンズアレイを構成することができる。
【0019】
本発明に係わる平板レンズにおいて、液晶層は重合硬化性液晶からなり、前記の液晶層に所定の電圧を印加して、液晶分子の配向を制御した状態で紫外線または可視光線を照射して重合硬化させることができる。
【0020】
以上の平板レンズにおいて、両基板もしくはそのいずれかを剥離して平板レンズを構成することができる。
【0021】
以上のように構成される本発明の平板レンズは、構造がきわめて簡単であり、第1および第2の電極間に印加する電圧を調整することで光学特性を種々可変制御することができ、第2の電極の形状を調整することにより容易に収差の補正等を行うことができる。また、電圧を印加して所定の光学特性にした状態で液晶を重合硬化することにより電圧を除去してもその特性が保持される平板レンズを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。始めに、平板レンズを得るために必要な焦点距離可変の液晶レンズにおける実施の形態から説明する。
【0023】
図1は、本発明の1実施形態に係わる平板レンズを得るためのセル構成を示す断面図である。図1において、一対のガラス基板1,2間に液晶層3が挟まれている。下部基板1の液晶層3に対向する面には、第1の電極としてITO(インジウム・スズ酸化物)からなる透明電極4が被覆されている。上部基板2の液晶層3に対向する面とは反対側には、曲面状の電極を形成するための1例として、図1では球面の一部からなる平凸レンズを使用する場合について示してある。すなわち、平凸レンズ5の曲面側に第2の電極としてITO透明電極6が被覆されている平凸レンズ5の平面側が上部基板2に接するように配置されている。また、第2の電極6を被覆させるレンズ5としては、平凸レンズの代わりに凹レンズを用いて、凹面に電極6を被覆し、上部基板2に凹面側を配置する構造とすることもできる。
【0024】
なお、曲面状の電極6としては、球面の一部のみならず、種々の収差や位相リターデーションの非対称性に基づくレンズ特性の低下を補正するために、正弦波関数やべき乗関数により表される形状とすることも可能である。曲面の形状を関数で表示することにより、曲面の整形や加工が容易になる。また、曲面状の電極6としては、必要な電極形状と同一の形状に加工した金型等を用いて作製した透明な薄板状のプラスチック板に透明電極6を被覆したものを使用することもできる。
【0025】
また、液晶層3として重合硬化性液晶用いて、下部基板側から紫外光を照射することで重合硬化性液晶を重合硬化させる場合には、曲面状の電極は必ずしも透明である必要はなく、たとえばアルミニウム薄膜や金属板を整形加工した金属電極を用いることもできる。さらに、加熱により重合硬化させる場合には、電極4および電極6は透明である必要はないが、重合硬化前に液晶セルが所定のレンズ特性になっているかを確認するためには、両電極が透明であることが望ましい。
【0026】
下部基板1のITO透明電極4の面、および上部基板2の液晶層3に対向する面は、それぞれ液晶の配向膜として図示されていないポリイミド膜が被覆されており、それらの表面は、液晶分子が均一に配列するように一方向にラビングされている。図1において、液晶層3には、電極間に電圧を印加していない状態で細長い形状の液晶分子が基板に平行に配向している様子を模式的に示している。
【0027】
なお、第2の電極6を被覆するために用いた平凸レンズの平面側が直接液晶層3に接するようにすることで、上部基板2を省くこともできる。
【0028】
本実施形態に係わる平板レンズにおいて、液晶層3の厚みは300μm、下部基板1の厚みは1.3mm、上部基板2の厚みは300μm、平凸レンズの直径は2mm、曲面の曲率半径は20mmとしたが、これらの値は種々変えることが可能である。
【0029】
なお、レンズの直径は、数μm〜数10mm程度が望ましいが、特に限定されるものではない。
【0030】
以上のように構成される、図1に示す液晶レンズにおいて、平凸レンズ5の曲面上に被覆された電極6と液晶層3との間には上部基板2や平凸レンズ5が介在しており、従って、両者には場所と共に距離が変化するので、ITO透明電極4と電極6の間に電源7から印加された電圧により生じた不均一な電界が、液晶層3の広い領域全体にわたって分布し、屈折率の勾配の分布がその領域に形成される。このようにして電極6に対応する構造寸法のレンズが実現される。なお、電源の周波数は100Hzから10kHz程度の範囲が好ましい。
【0031】
電界による液晶分子の配向効果に基づく屈折率分布は、印加電圧や、第2の電極6の形状および上部基板2の厚みにより変化するので、レンズの焦点距離は外部電圧や電極6の形状および上部基板の厚みを調整することによって任意に変えることが可能である。
【0032】
液晶層3として重合硬化性液晶用いた場合には、印加電圧を調整してレンズの焦点距離を所定の値にした後、下部基板側から紫外光を照射して重合硬化型液晶を重合硬化させ、曲面構造の第2の電極を被覆した部分を除去することで平板レンズが得られる。重合硬化型液晶として、熱重合性の材料を用いることもできる。この場合には加熱処理により重合硬化を行うために、紫外光を照射する必要はないので、下部基板上の電極は特に透明である必要はない。
【0033】
重合硬化前の液晶レンズの特性を調べるために、標準として用いられているネマチック液晶材料であるK15(メルク社製)を用いて図1に示した構成の液晶レンズを、偏光軸が直交する2枚の偏光板の間に配置した。また、下側基板上のITO電極4および上側基板2の液晶層3側に被覆したポリイミド膜のラビング方向を、2枚の偏光板それぞれの偏光軸とπ/4の角度をなすようにした。
【0034】
図2は、第1および第2の電極間に周波数1kHzの40Vrmsまたは55Vrmsの電圧を印加した場合の、異常光線と常光線の間の干渉パターンを示す。干渉縞の数と位置は、印加される電圧により変化する。2つの隣接する干渉縞の間の位相差は、2πである。常光線の位相リターデーションは、液晶層のどこでも同一であるので、干渉パターンはラビングの方向に偏光した入射光すなわち異常光の位相リターデーション特性を表している。
【0035】
図3は、干渉パターンから求められた光の相対位相リターデーションの特性を示す。図中で三角は40Vrms、丸は55Vrmsの電圧を印加したときの測定点であり、曲線は二次曲線である。黒三角および黒丸はラビング方向に沿って測定した結果を示し、白三角および白丸はそれと垂直方向に沿って測定した結果を示している。
【0036】
干渉パターンの最外部にある縞は位相リターデーションがゼロに対応していると考えられる。位相リターデーションが近似的に二次曲線で与えられることは、この液晶レンズは光学レンズと同様の特性を持っていることを示している。
【0037】
従来の液晶マイクロレンズにおける場合と同様に、ラビング方向に沿った位相リターデーション特性と、ラビングに垂直な方向に沿った位相リターデーション特性は少し異なっている。さらに、ラビング方向に垂直方向に沿った位相リターデーション特性は対称であり、一方、ラビング方向に沿った位相リターデーション特性はポリイミド配向膜表面におけるプレチルト角のために非対称となっている。この非対称性はプレチルト角を小さくすることで軽減される。ラビング方向による位相リターデーションの差異、およびプレチルト角に由来する位相リターデーション特性の非対称性は、第2の電極であるITO透明電極6における曲面の形状を調整することで解消される。
【0038】
液晶セルの焦点距離は印加電圧により可変することができる。図4はレンズの集束力として評価される焦点距離の逆数であるジオプトリの印加電圧による変化を示している。集束力は電圧により変化し、25Vrms近傍で最大となる。すなわち、最小の焦点距離が得られる。電圧をさらに大きくすると、レンズ部の中央付近における液晶のダイレクタが電界方向に沿って配向するので、すでに電界方向に沿って配向しているレンズの周辺部との位相リターデーションの差が小さくなるため、屈折率の分布特性は平坦化し、レンズとしての集束力は低下し、焦点距離はより長くなる。
【0039】
位相リターデーションの分布特性は、絶縁層となる第2の基板2の厚み、および第2の電極となる曲面状の電極の形状により調整することができる。曲面状電極の形状として、球面の一部を用いる場合には、曲率半径を選定することで位相リターデーションの分布特性を調整することができる。
【0040】
この液晶セルの構造における液晶中の電界の分布は、従来の液晶マイクロレンズとは異なっている。従来の液晶マイクロレンズでは、レンズ部の境界となる電極に設けた穴の境界における電界が傾斜しているため、ラビング方向に対応する穴の直径方向において、液晶のダイレクタが穴の両側で互いに逆方向に回転する可能性がある。その結果、高電圧印加時にディスクリネーションラインと呼ばれる液晶分子配向の欠陥領域が生じるため、レンズとしての光学特性が低下するという問題がみられた。本発明の液晶レンズのセル構造では、液晶レンズの任意の位置にあるダイレクタと電界との間の角度は殆ど同一であり、すべてのダイレクタは同じ方向に回転する傾向があるので、ディスクリネーションの発生を抑制することができる。
【0041】
液晶層を絶縁層で分割することで、液晶層の実効的な厚みを薄くできるので、電界に対する応答を改善することができ、さらに液晶層が白濁する効果も改善することができる。
【0042】
液晶層を2層に分割する構造の液晶レンズにおいて、それぞれの液晶層のダイレクタが互いに直交するように配置する、すなわち液晶層に対面する配向膜に対するラビング方向を、それぞれの液晶層において直交させることにより、偏光板を配置することなく、偏光無依存の液晶レンズを動作させることが可能である。
【0043】
入射光の波面の歪みを補正するために必要な屈折率分布に対応する分子配向状態となる電界を形成するように外部電極の形状を整形加工することで、波面の補正を行うこともできる。
【0044】
以上、本発明において、平板レンズを得るために必要な焦点距離可変の液晶レンズにおける実施の形態について、ネマチック液晶材料としてK15(メルク社製)を標準として用いた場合について説明した。ネマチック液晶材料として、紫外光重合硬化型液晶として、UCL−001液晶(大日本インキ化学工業株式会社製)を使用して、図1に示した構成で液晶セルを作製した。電極間に1kHzの電圧を印加して液晶レンズの焦点距離を所定の値にした後、電圧を印加した状態で第1の基板1側から超高圧水銀ランプを光源とした紫外光(365nm、30mW/cm2)を10分間照射することで、液晶層を重合硬化させた。この場合に、紫外光重合硬化型液晶であるUCL−001液晶は、重合硬化することで複屈折の値が重合硬化前の値の60%程度に減少するため、レンズとして使用する場合には入射光に対する集束力も同程度減少するので、あらかじめこの効果を勘案して所定の焦点距離の値に設定することが必要である。紫外光による重合硬化後に曲面構造の第2の電極部を除去することで、平板レンズが得られる。また、基板を剥離することで、平板レンズの厚みをより薄くすることができる。両基板を剥離するか、またはプラスチック製の基板を用いることで、可撓性のある柔軟な平板レンズとすることも可能である。
【0045】
【非特許文献6】および
【非特許文献7】で提案されている、液晶層と円形穴型パターン電極との間に絶縁層を設けた構造の液晶レンズにおいて、円形穴型パターン電極の外部にさらに曲面形状の電極を挿入することもできる。この場合には、曲面構造の電極により収差の補性等の微調整をより正確に行うことが可能となる。
【0046】
曲面構造の第2の電極と同一の電極を多数配置することで、容易に平板レンズをアレイ化することができるので、密着型イメージセンサ等へ使用することができる。また、この第2の電極は繰り返し使用することが可能であるので、平板レンズアレイの工業生産における製造においても有利であるという利点を有する。
【0047】
【発明の効果】
本発明によると、簡単な構成できわめて容易に平板レンズやレンズ等の光学素子における収差や波面の補正を行う素子、およびこれらを多数集積した平板レンズアレイなどの光学素子を提供することができ、また工業生産においても極めて有利であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における平板レンズを製造する一実施の形態の構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる液晶レンズを2枚の偏光板により挟み、電圧を印加することにより得た干渉パターンを示す写真。
【図3】干渉パターンから求められた光の位相リターデーションの分布を示す特性図。
【図4】印加電圧と焦点距離の逆数であるジオプトリの関係を示す特性図。
【符号の説明】
1 下部基板
2 上部基板
3 液晶層
4 透明電極
5 平凸レンズ
6 曲面形状の電極
7 電源
Claims (8)
- 第1の電極を有する第1の基板、電極を有しない第2の基板、第2の基板の外部に配置した第2の電極、および前記第1の基板と第2の基板との間に収容された、液晶分子を一方向に配向させた液晶層を備え、前記第1の電極と第2の電極との間に電圧を加えて液晶分子の配向制御を行うことで動作する平板レンズにおいて、第2の電極が曲面となっていることを特徴とする平板レンズ。
- 請求項1に記載の平板レンズにおいて、第2の電極の形状が半球面または球面の一部であることを特徴とする平板レンズ。
- 請求項1に記載の平板レンズにおいて、第2の電極の形状が正弦波関数または正弦波関数の重畳関数で与えられることを特徴とする平板レンズ。
- 請求項1に記載の平板レンズにおいて、第2の電極の形状がべき乗の関数で与えられることを特徴とする平板レンズ。
- 請求項1、2、3または4のいずれかの項に記載の平板レンズにおいて、液晶層が絶縁層により分割されていることを特徴とする平板レンズ。
- 請求項1、2、3、4または5のいずれかの項に記載の平板レンズを2次元アレイ状に配置したことを特徴とする平板レンズ。
- 請求項1、2、3、4、5または6のいずれかの項に記載の平板レンズの液晶層は重合硬化性液晶からなり、前記の液晶層に所定の電界を印加して、液晶分子の配向を制御した状態で紫外線または可視光線を照射して重合硬化させてなる平板レンズ。
- 請求項7に記載の平板レンズにおいて、両基板もしくはそのいずれかを剥離して得る平板レンズ。
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