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JP2004175916A - 含フッ素共重合体 - Google Patents

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Takatsugu Obara
原 崇 嗣 小
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Abstract

【解決手段】(a)テトラフルオロエチレン、(b)式:CF=CFO−Rf−OCF=CF(ここでRfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜15のフルオロアルキレン基を示す。)で表され、二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー、および(c)二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマーを含み、かつ、上記エーテル系モノマー(b)を1.2〜10.0モル%((a)+(b)+(c)=100モル%)の量で含むモノマー混合物を共重合してなる含フッ素共重合体であって、結晶融解熱量(ΔH)が10J/g以下であることを特徴とする含フッ素共重合体。
【効果】耐薬品性、高光透過性、耐屈曲性、熱時強度にバランス良く優れた含フッ素共重合体が提供される。また、上記製法によれば、重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE−TFEホモ結合に由来する結晶部がより低減されており、上記特性の共重合体が効率よく得られる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、含フッ素共重合体に関し、さらに詳しくは、高い光透過性と耐屈曲性を備えつつ熱時強度に優れた含フッ素共重合体およびその製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
含フッ素共重合体は、含フッ素単量体であるフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)などを共重合反応することにより得られ、エラストマー領域から樹脂領域まで様々な特性を有しているが、特に含フッ素体であることにより、高温での熱安定性や極低温での靱性および柔軟性を有し、さらには、耐薬品性に優れ、化学的に非常に安定で、非粘着性、低摩擦特性、電気的な諸特性にも優れるなど、非常に優れた特性を備えている。
【0003】
これらのことから含フッ素共重合体は、半導体、自動車、建築、電気・電子、食品分野など様々な分野に用いられている。
その中でも、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)二元系共重合体(以下、PFAとも言う。)は、主鎖炭素原子に結合した水素原子が全てフッ素原子に置換されたパーフルオロ共重合体であるため特に耐薬品性、耐熱性に優れており、有機溶媒や腐食性液体などの輸送に使用されるチューブ、ホース、パイプ、シリコンウェハーキャリアなどへ応用されている。
【0004】
しかしながら、このPFAにおいては、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)のテトラフルオロエチレンに対する共重合性が低く、テトラフルオロエチレンに対するパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)の共重合比率の高いものを得ることは困難であるため、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)から誘導される成分単位の含有量が1〜3mol%程度の含フッ素共重合体が一般的である。そのため、この含フッ素共重合体は化学的安定性や熱時強度の点では優れるが、結晶性であるため透明性や耐屈曲性に改善の余地がある。
【0005】
また、共重合成分として、テトラフルオロエチレンに対する共重合性が高いパーフルオロ(メチルビニルエーテル)を用いたテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)二元系共重合体(以下、MFAとも言う。)は、テトラフルオロエチレンに対するパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合比率が20mol%以上で、非晶質のエラストマー領域となり、光透過性に関しては向上するものの、熱時強度、耐屈曲性に劣る。また、MFAは、PFAと同一のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)含有量でかつ、同一の比溶融粘度の下で比較した場合、共重合体側鎖のメトキシ基同士の分子相互作用が小さいため、PFAのような高い熱時強度のものを得ることは困難である。
【0006】
また、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)を用いたテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(エチルビニルエーテル)二元系共重合体(以下、EFAとも言う。)についても、MFAと同様に、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)の共重合比率の増加と共に、得られる共重合体の熱時強度の低下が生じる。EFAは、PFAと同一のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)成分単位含有量でかつ、同一の比溶融粘度の下で比較した場合に、PFA中のプロポキシ基同士の分子相互作用に比べて、共重合体側鎖のエトキシ基同士の分子相互作用が小さいため、MFAよりも高い熱時強度は達成できるものの、まだ実用上十分な熱時強度を達成することができない。
【0007】
このように、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)またはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)との二元系共重合体においては、これまで高い光透過率と耐屈曲性を有し、さらに高い熱時強度のものを得ることは困難であった。
そこで、上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、テトラフルオロエチレン(a)、特定の式で表され二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー(b)、および二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマー(c)を含み、かつ、上記エーテル系モノマー(b)を特定量で含むモノマー混合物を共重合してなる含フッ素共重合体であって、結晶融解熱量(ΔH)が特定の範囲にある含フッ素共重合体では、耐薬品性、高光透過性、耐屈曲性、熱時強度にバランス良く優れることを見出すと共に、上記共重合体の製造に際しては、重合の進行と共に、得るべきポリマー中に含まれている、各モノマー由来の成分単位(ユニット)の組成比と同様の比率で各共重合用モノマーが含まれているモノマー混合物を逐次、反応系に導入すると、共重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE−TFEホモ結合に由来する結晶部がより低減されており、上記特性の共重合体が効率よく得られることなどを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
なお、特開2002−12626号公報(特許文献1)には、「テトラフルオロエチレンの重合単位/2重結合を1個有する含フッ素モノマーの重合単位/2重結合を2個以上有するモノマーの重合単位(モル比)=50〜99/0.99〜49.99/0.01〜1であり、380℃での溶融粘度が1×10〜5×10Pa・sである含フッ素共重合体」が記載されているが、二重結合を2個以上有するエーテル系モノマーが、この公報(特にその実施例)に示すような1.0モル%以下の少ない共重合比率で用いられた場合には、熱時強度(150℃での引張破断強度)、MIT曲げ寿命、光透過率、結晶融解熱量のバランスの点で充分でない。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−12626号公報
【0010】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであて、耐薬品性、高光透過性、耐屈曲性、熱時強度にバランス良く優れた含フッ素共重合体を提供することを目的としている。
また、本発明は、重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE−TFEホモ結合に由来する結晶部がより低減されており、上記特性の共重合体が効率よく得られるような、含フッ素共重合体の製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【発明の概要】
本発明に係る含フッ素共重合体は、
(a)テトラフルオロエチレン、
(b)式:CF=CFO−Rf−OCF=CF(ここでRfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜15のフルオロアルキレン基を示す。)で表され、二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー、および
(c)二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマーを含み、かつ、
上記エーテル系モノマー(b)を1.2〜10.0モル%((a)+(b)+(c)=100モル%)の量で含むモノマー混合物を共重合してなる含フッ素共重合体であって、結晶融解熱量(ΔH)が10J/g以下であることを特徴としている。
【0012】
本発明においては、上記モノマー混合物中には、テトラフルオロエチレン(a)が60.0〜95.0モル%の量で、二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマー(c)が3.8〜35.0モル%の量で含まれていることが好ましい。
本発明においては、二重結合を1個含有する含フッ素モノマー(c)が、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(アルキル基は、炭素数1〜15であり、エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)であることが好ましい。
【0013】
本発明においては、上記エーテル系モノマー(b)が、式:CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CFで表されるモノマーであることが好ましい。
本発明に係る含フッ素加工品は、上記の何れかに記載の含フッ素共重合体を成形してなることを特徴としている。
本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法は、上記の何れかに記載の含フッ素共重合体を製造するに際して、上記共重合用モノマー(a)、(b)及び(c)を、重合の進行と共に、得るべきポリマーの組成比と同様の比率で逐次、反応系に導入することを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、耐薬品性、高光透過性、耐屈曲性、熱時強度にバランス良く優れた含フッ素共重合体が提供される。
また、本発明によれば、共重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE−TFEホモ結合に由来する結晶部がより低減されており、上記のような優れた特性の含フッ素共重合体の効率的な製造方法が提供される。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法について具体的に説明する。
[含フッ素共重合体]
本発明に係る含フッ素共重合体は、
(a)テトラフルオロエチレン、
(b)式:CF=CFO−Rf−OCF=CF(ここでRfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜15のフルオロアルキレン基を示す。)で表され、炭素・炭素二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー、および
(c)炭素・炭素二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマーを、含むモノマー混合物を共重合してなる。
<二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー(b)>
二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー(b)としては、例えばCF=CFO−Rf−OCF=CF(ここでRfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキレン基を示す。)で表される。
【0016】
このエーテル系モノマー(b)として、好ましくは
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)O(CFOCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)O(CFOCF(CF)CFOCF=CF
などが挙げられ、特にCF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CFが望ましい。
【0017】
これらのエーテル系モノマーは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。
<含フッ素モノマー(c)>
本発明において、二重結合を1個含有する含フッ素モノマー(c)としては、例えばパーフルオロ(アルキルビニルエーテル){但し、アルキル基は直鎖状でも分岐を有していてもよく、該アルキル基の炭素数は1〜15、好ましくは1〜10であり、エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。}が挙げられる。
【0018】
このような二重結合を1個含有する含フッ素モノマー(c)としては、具体的には、例えば、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(メトキシプロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(メトキシイソプロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロポキシイソプロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロポキシイソプロポキシイソプロピルビニルエーテル)、などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類が挙げられる。これらの含フッ素モノマーは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0019】
本発明においては、上記モノマー混合物中には、上記エーテル系モノマー(b)を1.2〜10.0モル%、好ましくは1.2〜8.5モル%の量で含むことが、熱時強度(150℃での引張破断強度)、MIT曲げ寿命、光透過率、結晶融解熱量のバランスの点で望ましく、特に好ましくは1.2〜5.0モル%((a)+(b)+(c)=100モル%)の量で含むことが成形性と熱時強度などのバランスの点で望ましい。
【0020】
本発明のさらに好ましい態様では、上記モノマー混合物中には、テトラフルオロエチレン(a)が60.0〜95.0モル%、好ましくは75.0〜95.0モル%の量で、
エーテル系モノマー(b)が上記量で、二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマー(c)が3.8〜35.0モル%、好ましくは3.8〜25.0モル%の量で含まれていることが望ましい。
【0021】
上記モノマー混合物中におけるテトラフルオロエチレン(a)量が特に60.0モル%より少ない場合は、得られる成形体の熱時強度、耐熱性、耐薬品性などが低下する傾向がある。また、95.0モル%を超えると耐屈曲性や光透過率に劣る成形体となる傾向がある。
二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー(b)が上記範囲の量で用いられると、得られる含フッ素共重合体は、熱時強度の改善効果が見られ、重合中にゲル化が生じることもなく、生産性に優れる。
【0022】
なお、特開2002−12626号公報には、「テトラフルオロエチレンの重合単位/2重結合を1個有する含フッ素モノマーの重合単位/2重結合を2個以上有するモノマーの重合単位(モル比)=50〜99/0.99〜49.99/0.01〜1であり、380℃での溶融粘度が1×10〜5×10Pa・sである含フッ素共重合体」が記載され、二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー(b)が、この公報(特にその実施例)に示すような1.0モル%以下の少ない共重合比率で用いられた場合には、熱時強度(150℃での引張破断強度)、MIT曲げ寿命、光透過率、結晶融解熱量のバランスの点で改善効果がほとんど確認できない。
【0023】
また、用いられるモノマー混合物中におけるエーテル系モノマー(b)量が10.0モル%を超えると重合中にゲル化が生じてしまい、生産性の悪いものとなってしまう。
また、用いられるモノマー混合物中における二重結合を1個有する、(a)以外の含フッ素モノマー(c)量が35.0モル%より多い場合は、得られる成形体の熱時強度、耐熱性、耐薬品性などが低下する傾向がある。また、3.8モル%未満であると耐屈曲性や光透過率に劣る成形体となる傾向がある。
【0024】
なお、本発明に係る含フッ素共重合体では、用いられた各モノマー(a)、(b)、(c)量に対応する量で、各モノマーに由来する成分単位(a)、(b)、(c)がランダムにあるいは規則的に配列して存在している。
また、この含フッ素共重合体中においては、用いられた各モノマーは、その炭素・炭素2重結合部位で2重結合が開裂して単結合のモノマーユニット(重合単位、成分単位などとも言う。)となり、隣接するモノマーユニットと互いに結合(連結)しているものと考えられる。なお、2個以上の二重結合を有するエーテル系モノマー(b)では、これら複数の2重結合部位の一部〜全部が開裂して単結合となり、これら複数の2重結合部位で隣接するモノマーユニットと結合して、一部架橋構造が形成されているものと考えられる。
【0025】
本発明では、上記含フッ素共重合体としては、その結晶融解熱量ΔHが完全非晶質である0J/gに近づくほど、光透過性に有利となる傾向があり、本発明では、上記含フッ素共重合体の結晶融解熱量ΔHが10J/g以下、好ましくは8J/g以下であることが高い熱時強度と光透過性の両方に優れた含フッ素共重合体となる点で望ましい。なお、結晶融解熱が8J/gを超え、特に10J/gを超えると、得られる含フッ素共重合体は優れた高熱時強度を有するものの光透過率が低下してしまい、高熱時強度と高光透過率を両立させることが困難となってしまう。
【0026】
本発明に係る上記含フッ素共重合体は、耐薬品性、高光透過性、耐屈曲性、熱時強度にバランス良く優れている。
[含フッ素共重合体の製造]
本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法では、上記の含フッ素共重合体を製造するに際して、上記共重合用モノマー(a)、(b)及び(c)を、重合の進行と共に、得るべきポリマー中の各成分単位の組成比(すなわち、各モノマー(a)、(b)、(c)由来の成分単位の組成比)と同様の比率で逐次、反応系に導入することが好ましい。このようにして含フッ素共重合体を製造することにより、共重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE−TFEホモ結合に由来する結晶部をより低減することができるなどの特徴を有している。
【0027】
なお、本発明では、用いられる共重合用モノマー(a)、(b)、(c)には、共重合性に差異があることが多い。そのため、例えば、重合開始時等の共重合反応の初期においては、テトラフルオロエチレンなどに比して、共重合性の低いコモノマーであるパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(FEVE)等のビニルエーテルモノマーが存在すると、目標とする共重合体中の各成分単位(a)、(b)、(c)の組成比と同様の組成比で、コモノマー(a)、(b)、(c)を仕込んでも、意図したものとは異なり、共重合体中の各成分単位の組成分布が不均一となってしまう。
【0028】
そこで、本発明では、共重合反応の初期例えば、仕込み時には、共重合されにくいコモノマー例えば、FEVE等のビニルエーテルモノマー量が高い配合比(組成比)となるようにコモノマー(a)、(b)、(c)を仕込んで共重合反応させ、その後、上記のように、目標とする共重合体の組成比と同様の共重合用モノマー組成比で、モノマー(a)、(b)、(c)を含むモノマー混合物を反応系内に適時、添加して共重合反応を進行させる、いわゆる「分添」を行うことが好ましい。このようにして共重合反応を行うと、含フッ素共重合体中の各成分単位の組成分布が均一なものが得られる傾向がある。
【0029】
以下、本発明で好ましく用いられる、含フッ素共重合体の製造方法について詳述する。
本発明の含フッ素共重合体の製造方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法が採用されるが、重合原料由来の不純物含有量をより低減しやすい溶液重合および懸濁重合が好ましい。
【0030】
溶液重合の場合には、重合溶媒として、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール、ハイドロカーボン、パーフルオロ化合物等を用いることができる。また、懸濁重合の場合には、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール、ハイドロカーボン、パーフルオロ化合物などの媒体に水を加えたものを重合溶媒として用いることができる。これらの溶媒と水との混合比については、重合温度、重合圧力、原料モノマーの仕込量などに応じて任意に変更することができるが、重合熱の除去、共重合組成の均一化の観点から、有機溶媒の0.2〜10倍重量の水を共存させることが好ましい。
【0031】
重合開始剤としては、例えばジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートおよびアゾ系のものを用いることができる。共重合体の耐熱性を考慮すると、含フッ素系、好ましくはパーフルオロ系のラジカル開始剤が好ましい。ラジカル開始剤の使用量は、用いる溶媒、重合条件、重合温度によって異なり、一概には決定できないが、通常、重合に用いるモノマーに対し、0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%に相当するラジカル開始剤を仕込み時に添加することができる。また、重合条件、モノマー組成比によっては重合が進行し難い場合があるが、このような場合は重合途中で再度ラジカル開始剤を追加して重合を促進させるようにしても良い。
【0032】
また、含フッ素共重合体を得るために必要な原料モノマーの仕込み方法としては、重合モノマーを「分添」仕込みすること、つまり、重合反応の進行と共に重合モノマーを、得るべきポリマー中に存在する、各モノマー由来の成分単位の組成比と同様の比率で逐次、反応系に導入することが重要である。このことにより、上記したように、共重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE−TFEホモ結合に由来する結晶部をより低減することができる。
【0033】
本発明では、このような共重合反応は、重合温度:約0〜80℃、好ましくは10〜50℃の温度範囲で行われる。また、重合圧力:約0.2〜3.0Mpa・G、好ましくは0.3〜2.0Mpaの圧力範囲で行われる。
反応終了後は、得られた重合混合物から有機溶媒を減圧留去し、減圧濾過、遠心分離器などにより水層の分離、減圧乾燥を行うことによりより、所定の含フッ素共重合体を回収することができる。
【0034】
[含フッ素加工品]
得られた含フッ素共重合体は、成形温度における溶融粘度値に応じて、圧縮成形、押し出し成形、カレンダー成形、ブロー成形、射出成形などを行い、さらには、二次加工としての切削加工、溶接加工、溶融加工などを行うことにより、フィルム、シート、チューブ、ホースなどの各種成形体(含フッ素加工品)に加工することができる。
【0035】
すなわち、本発明に係る含フッ素加工品は、上記の何れかに記載の含フッ素共重合体を成形してなることを特徴としている。
特に、このようにして得られた含フッ素加工品は、上記含フッ素共重合体の優れた特性を保持しており、例えば、耐熱性が要求されるような成形体に適している。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、耐薬品性、高光透過性、耐屈曲性、熱時強度にバランス良く優れた含フッ素共重合体が提供される。
また、本発明によれば、重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE−TFEホモ結合に由来する結晶部がより低減されており、上記特性の共重合体が効率よく得られるような、含フッ素共重合体の製造方法が提供される。
【0037】
本発明によれば、上記含フッ素共重合体を用いて100μmの厚さに成形されたフィルムの250〜650nmにおける光透過率は、85%以上と透明性に優れており、また、150℃における引っ張り破断強度が10Mpa以上と常温および高温熱時の強度にも優れた成型品を与えるため、フィルム、シート、チューブ、ホースなどの各種成形材料として好適に使用することができる。
【0038】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
〈共重合体組成比の測定〉
赤外線吸収スペクトル測定機(日本分光工業社製)を用いて測定した。
〈MIT曲げ寿命の測定〉
ASTM D−2176に準拠したMIT折り畳み耐久試験機(東洋精機製作所製)を用いた。厚さ200μmのフィルムを用い試験を行い、50万サイクルまでにフィルムの損傷が確認されない場合を○、50万サイクルまでにフィルムの損傷が確認された場合を×とした。
〈光透過率の測定〉
日本分光工業社製の紫外可視分光光度計を用い、厚さ100μmのフィルムについて、波長250nmまたは650nmで測定した。
〈引っ張り破断強度の測定〉
ASTM−D−1708に準拠し、引っ張り速度200mm/min.における、25℃および150℃の破断時の強度を求めた。
〈溶融粘度の測定〉
東洋精機製作所のメルトインデクサーを用いて試料の溶融粘度を測定した。測定の際には、得られた共重合体を内径9.5mmのシリンダーに入れ、350℃の温度に5分間保った後、5kgのピストン加重下に内径2.095mm、長さ8.00mmのオリフィスを通して押し出したときの押し出し速度を測定して、共重合体の溶融粘度を求めた。
〈結晶融解熱量ΔHの測定〉
セイコーインスツルメント社製DSC220C型により測定した。温度プログラムは、30℃から10℃/min.の昇温速度で350℃まで試料を加熱した後、10℃/min.の降温速度で30℃まで冷却し、再度350℃まで10℃/min.で昇温する際の吸熱ピークの吸熱熱量を結晶融解熱量とした。
【0039】
【実施例1】
攪拌機付きの内容量3LのSUS316製オートクレーブを真空まで脱気し、
イオン交換水 1,200 g(1.2 kg)、
パーフルオロ(2−n−ブチルテトラヒドロフラン) 531 g、
2−プロパノール 0.1 g、
を仕込んだ後、オートクレーブを液体窒素で冷却し、内容物を固化した後、十分に脱気を行った。さらに窒素を0.1MPaの圧力まで導入し、そのまま内容物が溶解するまで昇温した(昇温の終点:10℃)。
【0040】
この操作を3回繰り返しオートクレーブ中の酸素を十分に除去した後、初期仕込みとして、
テトラフルオロエチレン[TFE] 170 g (49.8mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 367 g (49.7mol%)、
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF[3PO−DV] 8 g (0.5mol%)、
をそれぞれ仕込み、30℃に加温すると、オートクレーブの内圧は0.85MPa・Gとなった。ついで、開始剤としてビスパーフルオロイソブチリルパーオキサイドの(CClFCFCHClF)溶液を定量ポンプにより導入し重合を開始させた。
【0041】
重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が0.8MPa・Gまで低下したら内圧が0.85MPa・GになるまでTFEを追加供給する操作を、TFEの分添量が170gになるまで繰り返した。その際、他の共重合用モノマーも、TFEの分添量(TFE/FEVE/3PO−DVの所望の配合比率に応じて逐次供給されるTFE量(モル%))に応じてTFE/FEVE/3PO−DV=90.0/8.8/1.2(モル%)の組成比で均一分添(供給)した。上記のような所定の配合比率での各原料モノマーの逐次供給(すなわち分添)を終了した後、0.5Pa・Gまでエージングを行い、重合を完結させた。
【0042】
その後、オートクレーブに、溶媒および未反応モノマーを冷却捕集するためのトラップを介して設けられた真空ポンプを駆動させることにより、オートクレーブ内を撹拌しつつ減圧し、溶媒および未反応モノマーを完全に除去した。
オートクレーブから取り出された重合物を、水層からろ別した後、減圧乾燥させて白色粉末状の含フッ素共重合体を得た。
【0043】
含フッ素共重合体の組成(すなわち含フッ素共重合体中における各モノマー由来の成分単位量の組成)はTFE/FEVE/3PO−DV=90/8.8/1.2(モル%)、DSCによる結晶融解熱は7J/g、溶融粘度は5g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0044】
【実施例2】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 165 g (49.3mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 356 g (49.2mol%)、
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF[3PO−DV] 23 g (1.5mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FEVE/3PO−DV=89.0/9.5/1.5モル%で行い、全分添モノマー量が175gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。
【0045】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FEVE/3PO−DV=89.2/9.4/1.4モル%、DSCによる結晶融解熱は8J/g、溶融粘度は2g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0046】
【実施例3】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 96 g (30.0mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 449 g (65.0mol%)、
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF[3PO−DV] 73 g (5.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FEVE/3PO−DV=80.0/15.0/5.0モル%で行い、全分添モノマー量が130gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。
【0047】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FEVE/3PO−DV=79.9/15.0/5.1モル%、DSCによる結晶融解熱は8J/g、溶融粘度は0g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0048】
【実施例4】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 82 g (30.0mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 367 g (62.0mol%)、
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF[3PO−DV] 348 g (8.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FEVE/3PO−DV=77.0/15.0/8.0モル%で行い、全分添モノマー量が124gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。
【0049】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FEVE/3PO−DV=77.0/14.8/8.2モル%、DSCによる結晶融解熱は2J/g、溶融粘度は0g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0050】
【比較例1】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 170 g (50.0mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 367 g (50.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FEVE=90.0/10.0モル%で行い、全分添モノマー量が170gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FEVE=90.0/10.0モル%、DSCによる結晶融解熱は8J/g、溶融粘度は5g/10min.であった。
【0051】
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0052】
【比較例2】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 149 g (50. 1mol%)、
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[FPVE] 395 g (49.9mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FPVE=90.0/10.0モル%で行い、全分添モノマー量が191gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。
【0053】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FPVE=98.8/1.2モル%、DSCによる結晶融解熱は22J/g、溶融粘度は3g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0054】
【比較例3】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 206 g (60.0mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 293 g (39.5mol%)、
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF[3PO−DV] 8 g (0.5mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FEVE/3PO−DV=98.0/1.5/0.5モル%で行い、全分添モノマー量が185gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。
【0055】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FEVE/3PO−DV=98.0/1.5/0.5モル%、DSCによる結晶融解熱は21J/g、溶融粘度は2g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0056】
【比較例4】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 170 g (49.9mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 367 g (49.9mol%)、
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF[3PO−DV] 4 g (0.3mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FEVE/3PO−DV=90.0/9.7/0.3モル%で行い、全分添モノマー量が170gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。
【0057】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FEVE/3PO−DV=90.1/9.6/0.3モル%、DSCによる結晶融解熱は7J/g、溶融粘度は5g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0058】
【比較例5】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 96 g (31.6mol%)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE] 449 g (68.4mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/FEVE=80.0/20.0モル%で行い、全分添モノマー量が130gになったところで分添を終了とした以外は、同様の操作を行った。
【0059】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/FEVE=79.8/20.2モル%、DSCによる結晶融解熱は1J/g、溶融粘度は12g/10min.であった。
該含フッ素共重合体の組成(各モノマー由来の成分単位量の組成比(モル%))、結晶融解熱量ΔH(J/g)、MIT曲げ寿命、各波長(250nm、650nm)における光透過率(%)、引張破断強度(MPa)を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 2004175916

Claims (6)

  1. (a)テトラフルオロエチレン、
    (b)式:CF=CFO−Rf−OCF=CF(ここでRfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜15のフルオロアルキレン基を示す。)で表され、二重結合を2個以上有するエーテル系モノマー、および
    (c)二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマーを含み、かつ、
    上記エーテル系モノマー(b)を1.2〜10.0モル%((a)+(b)+(c)=100モル%)の量で含むモノマー混合物を共重合してなる含フッ素共重合体であって、結晶融解熱量(ΔH)が10J/g以下であることを特徴とする含フッ素共重合体。
  2. 上記モノマー混合物中には、テトラフルオロエチレン(a)が60.0〜95.0モル%の量で、二重結合を1個含有する、(a)以外の含フッ素モノマー(c)が3.8〜35.0モル%の量で含まれていることを特徴とする請求項1記載の含フッ素共重合体。
  3. 上記二重結合を1個含有する含フッ素モノマー(c)が、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(アルキル基は、炭素数1〜15であり、エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)である請求項1〜2の何れかに記載の含フッ素共重合体。
  4. 上記エーテル系モノマー(b)が、式:CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CFで表されるモノマーである請求項1〜3の何れかに記載の含フッ素共重合体。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の含フッ素共重合体を成形してなる含フッ素加工品。
  6. 請求項1〜4の何れかに記載の含フッ素共重合体を製造するに際して、上記共重合用モノマー(a)、(b)及び(c)を、重合の進行と共に、得るべきポリマーの組成比と同様の比率で逐次、反応系に導入することを特徴とする含フッ素共重合体の製造方法。
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