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JP2004172286A - 熱伝導シート - Google Patents

熱伝導シート Download PDF

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JP2004172286A
JP2004172286A JP2002335350A JP2002335350A JP2004172286A JP 2004172286 A JP2004172286 A JP 2004172286A JP 2002335350 A JP2002335350 A JP 2002335350A JP 2002335350 A JP2002335350 A JP 2002335350A JP 2004172286 A JP2004172286 A JP 2004172286A
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Japan
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heat conductive
metal heat
metal
porous member
sheet
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JP2002335350A
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English (en)
Inventor
Yoshikazu Irie
美和 入江
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Kyocera Chemical Corp
Original Assignee
Kyocera Chemical Corp
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Publication date
Application filed by Kyocera Chemical Corp filed Critical Kyocera Chemical Corp
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Abstract

【課題】多孔質部材の両主面間に金属熱伝導部を形成した熱伝導シートにおいて、熱伝導シートの主面に接着層を形成する際に金属熱伝導部の表面が接着層により覆われることを抑制し、かつ接着層の表面を平坦にすることにより、発熱体や放熱体との熱伝導性および接着性を向上させること。
【解決手段】厚さ方向に連続した空隙部を有する多孔質部材と、前記多孔質部材の一方の主面から他方の主面にかけて前記空隙部に連続的に形成され、かつ前記多孔質部材の両主面から突出した凸部を有する金属熱伝導部と、前記多孔質部材の両主面に前記金属熱伝導部の凸部を除くようにして設けられ、かつその表面部の高さが前記金属熱伝導部の凸部の高さ以下である接着層とを有するもの。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モーターや半導体素子等の発熱体が動作時に発生した熱を放熱体等へ効率よく伝導するような放熱用途に用いられる熱伝導シートに関し、特に発熱体や放熱体との密着性を向上させ、熱伝導性を向上させた熱伝導シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
集積回路(IC)チップはますます高速化される傾向にあり、これに伴い集積回路チップに使用される電流も増加する傾向にある。また、集積回路チップはより小型化・高集積化される傾向にあり、前記したような高速化による電流の増加と相俟って集積回路チップの単位面積あたりの発熱量は増加する傾向にある。
【0003】
この結果、集積回路チップ周辺の熱膨張による電子回路の動作不良が生じやすくなっており、熱の管理は集積回路チップ周辺の電子回路設計における主な課題となっている。
【0004】
このような課題に対する対策として、集積回路チップに発生した熱をヒートシンクやヒートパイプ、冷却ファン等の熱拡散部材によって拡散する方法が採られている。
【0005】
通常、集積回路チップと熱拡散部材とは直接接合することができないので、接着性のある熱伝導シートをこれらの間に介して両者が接合されているが、上記したような集積回路チップの発熱量の増加に伴い、両者の間に配置される熱伝導シートには優れた熱伝導性が要求されるようになっている。
【0006】
また、集積回路チップや熱拡散部材の主面の粗さや平行度の公差により実接触面積は見かけの接触面積の数分の一以下であることが多く、集積回路チップと熱拡散部材の間に配置される熱伝導シートには高い熱伝導性が要求されるとともに、優れた密着性も要求されている。
【0007】
このような熱伝導性、密着性等の点から、熱伝導シートの材料としてシリコーンゴムシート、シリコーンゲルパッド、フェイズチェンジパッド等のシリコーン系シート、シリコーン系グリス、グラファイトシート等が用いられている。
【0008】
さらに熱伝導シートの熱伝導性を向上させるため、例えば図8、9に示すように、樹脂材料8に例えばアルミニウム、アルミナ、酸化チタン等の熱伝導性に優れる材料からなる粒子状あるいは繊維状の熱伝導フィラー9を分散させることも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、異なる平均粒径を有する熱伝導フィラーを用いるとともに、各熱伝導フィラーの添加率を適切に制御することによって、熱伝導フィラーの充填率を高くすることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−17923号公報
【特許文献2】
特開2001−139733号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8、9に示されることからもわかるように、各熱伝導フィラー9の間には樹脂材料8が介在しており、熱伝導経路は熱伝導性の良くない樹脂材料8によって細かく寸断されているため、結果として高い熱伝導性を得ることは困難であった。
【0012】
また、異なる平均粒径を有する熱伝導フィラーを用いるとともに、各熱伝導フィラーの添加率を適切に制御することによって、熱伝導フィラーの充填率を高くすることが提案されているが、充填率を高くしても依然として各熱伝導フィラーどうしの間には樹脂材料等が介在しており、上記したような課題は依然として解決されておらず、大幅な熱伝導性の向上には到っていない。
【0013】
一方、熱伝導性のみを重視すれば銀や銅からなる箔を使用することが望ましいが、このような箔には装置の接面形状に追随するための軟質性が低く、作業上望ましい粘着または接着性も得られないため、熱伝導シートとして多用されるには到っていない。
【0014】
また、従来の構造の熱伝導シートは設置時や使用時に断片化する場合があり、この断片化したものが集積回路チップの周辺回路を汚染させたり短絡化させる危険性があった。
【0015】
本発明は上記したような課題を解決するためになされたものであって、高い熱伝導性を有し、装置の接面に追随可能な軟質性を有し、かつ製造性に優れた熱伝導シートを提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱伝導シートは、厚さ方向に連続した空隙部を有する多孔質部材と、前記多孔質部材の一方の主面から他方の主面にかけて前記空隙部に連続的に形成され、かつ前記多孔質部材の両主面から突出した凸部を有する金属熱伝導部と、前記多孔質部材の両主面に前記金属熱伝導部の凸部を除くようにして設けられた接着層とを有することを特徴とする。
【0017】
前記接着層の表面部の高さは、前記金属熱伝導部の凸部の高さ以下であることが好ましい。
【0018】
前記金属熱伝導部はめっき法により形成されたものであることが好ましく、前記金属熱伝導部を形成する金属の熱伝導率は50W/m・K以上であることが好ましい。また、前記接着層は、熱伝導フィラーを20〜95重量%含むことが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱伝導シートについて説明する。
【0020】
図1は本発明の熱伝導シートの一例を模式的に示した外観図であり、図2はその断面図を示したものである。本発明の熱伝導シート1は、多孔質部材2と、この多孔質部材2の空隙部の少なくとも一部に、一方の主面から他方の主面まで連続して形成された金属熱伝導部3とを有するものである。
【0021】
通常、多孔質部材には多数の空隙部が存在しており、これらの空隙部は完全に閉じたものではなく、各空隙部どうしは連続的に繋がった構造となっている。このような連続した空隙部を利用して、多孔質部材の一方の主面から他方の主面まで連続的に金属熱伝導部を形成することで熱伝導シートの熱伝導率を向上させることができる。
【0022】
さらに、本発明の熱伝導シート1は、金属熱伝導部3が多孔質部材2の両主面より突出するような凸部を有するものであり、この凸部を除くようにして多孔質部材2の両主面に接着層4、5を設けたものである。本発明では、このように金属熱伝導部に凸部を設け、これを除くようにして接着層を設けることにより、金属熱伝導部の凸部先端部に接着材等の熱伝導率が低いものが付着するのを防ぎ、発熱体や放熱体との接合の際に、これらと金属熱伝導部の凸部先端部とを直接的に接触させることができ、熱伝導性を向上させることができる。
【0023】
本発明に用いられる多孔質部材としては、例えば厚さ10μm〜500μmのものを用いることが好ましい。この多孔質部材は、1枚の部材からなるものであってもよいし、複数枚の部材からなるものであってもよい。
【0024】
多孔質部材の空隙率は20〜95%であるものが好ましい。多孔質部材の空隙率が20%未満である場合には、金属熱伝導部の形成が困難となるとともに、軟質性が低下することがあり好ましくない。多孔質部材の空隙率が95%を超える場合には、多孔質部材が過度の軟質性を有するため、作業性が低下するなどの問題があるため好ましくない。
【0025】
多孔質部材の空隙率は、好ましくは50〜95%である。このような空隙率を有する多孔質部材は適度な軟質性を有するため被着体との密着性もよく、また金属熱伝導部の形成も容易である。
【0026】
また、多孔質部材の空隙部の大きさは、直径0.1μm〜10μmとすることが好ましい。空隙部の大きさが直径0.1μm未満の場合、多孔質部材の空隙部への金属熱伝導部の形成が困難となり、空隙部の大きさが直径10μmを超える場合、空隙部の内壁部分のみに金属熱伝導部が形成され、空隙部への金属熱伝導部の充填量が低下し、熱伝導シートの熱伝導率を向上させることが困難となる。
【0027】
このような多孔質部材としては、多数の空隙を有する樹脂シートまたは繊維基材等を用いることができる。
【0028】
多孔質部材を構成する樹脂シートの材料は特に制約されるものではないが、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルフォン、ポリビニリデンフロライド、ポリエステル、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリイミド、ポリアミド等の材料が好ましい。
【0029】
また、多孔質部材を構成する繊維基材としては、織布または不織布からなるものを用いることができる。繊維基材を構成する繊維の長さおよび径については特に制限はなく、所望とする熱伝導シートの特性に応じて適宜選択することが好ましい。
【0030】
多孔質部材を構成する繊維基材の材料は特に制限されるものではなく、例えばレーヨン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリルニトリル、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、羊毛、カーボンファイバ、ガラスファイバー等が使用できる。また、スチールウール等の導電性繊維や、窒化アルミニウム繊維等のセラミックス繊維を使用することもできる。
【0031】
図3は、多孔質部材2に金属熱伝導部3を形成した状態の一例を示した平面図であり、図4はその断面図である。金属熱伝導部3は、上記したような多孔質部材2の連続した空隙部に沿って、一方の主面2aから他方の主面2bまで連続するように形成され、その端部は図4に示すように多孔質部材2の両主面2a、2bから突出し凸部3a、3bを形成する。
【0032】
金属熱伝導部の凸部の高さ、すなわち多孔質部材の主面から金属熱伝導部凸部の先端部までの長さは、5μm〜20μmであることが好ましい。金属熱伝導部の凸部の高さが5μm未満であると、接着層を設けた場合に、接着層の方が凸部の高さより高くなってしまう場合があり、熱伝導シートが接着される発熱体や放熱体等と金属熱伝導部との間に隙間が空いてしまい効率的な熱伝達が行われなくなる可能性がある。また、金属熱伝導部の凸部の高さが20μmを超える場合、例えば発熱体と放熱体との接合に用いた場合、これらの間の距離が延びるため好ましくなく、またこのような高さの凸部を形成することは形成時間等の点からも好ましくない。
【0033】
多孔質部材内部の金属熱伝導部の形状は、例えば円柱状、円錐状、四角柱状、四角錐状等であり、特に制限されるものではない。また、例えば図5に示すように、多孔質部材2の全面にわたって金属熱伝導部3を格子状に連続的に形成してもよい。
【0034】
また、金属熱伝導部の凸部は、例えば円柱状、円錐状、四角柱状、四角錐状等である。この金属熱伝導部の凸部は、多孔質部材内部の金属熱伝導部の形状をそのまま延長して得られる形状でもよいし、これとは異なる形状としてもよい。また、金属熱伝導部の凸部の先端部の形状は半球状等になっていてもよいが、発熱体と放熱体との接触をよくするために平面状となっていることが好ましい。
【0035】
凸部を含めた金属熱伝導部の構成材料としては、メッキが可能な金属であれば特に制限されるものではないが、熱伝導シートには高い熱伝導性が要求されていることから、単体での熱伝導率が高いものが好ましい。
【0036】
具体的には、熱伝導率が50W/m・K以上である金属材料を使用することが望ましい。以下に、金属熱伝導部の構成材料として好ましい金属材料の一例とその熱伝導率を示す。
【0037】
銀 : 427 W/m・K
銅 : 398 W/m・K
金 : 315 W/m・K
亜鉛 : 121 W/m・K
カドミウム : 96.8 W/m・K
ニッケル : 90.5 W/m・K
クロム : 90.3 W/m・K
パラジウム : 75.5 W/m・K
白金 : 71.4 W/m・K
すず : 66.6 W/m・K
【0038】
このような金属熱伝導部の凸部が形成された多孔質部材の主面には、発熱体や放熱体等との接着のために接着層が設けられる。接着層は、接着性あるいは粘着性を有する液状の材料を主面に塗布あるいは含浸させて形成してもよいし、接着性あるいは粘着性を有する材料からなるシート状等の部材を主面に接合して形成してもよい。また、接着層は熱により溶融し接着性あるいは粘着性を有するものであってもよい。
【0039】
接着性あるいは粘着性を有する液状の材料を主面に設ける場合には、金属熱伝導部の凸部の先端部が覆われないように塗布あるいは含浸させることが好ましい。一般にこのような接着性または粘着性を有する材料は金属に比べて熱伝導率が低いため、金属熱伝導部の凸部の先端部にこのような材料があると熱伝導を妨げるからである。
【0040】
接着性あるいは粘着性を有する液状の材料を主面に塗布あるいは含浸させる場合に金属熱伝導部の凸部の先端部が覆われないようにするには、例えば金属熱伝導部の凸部の先端部にマスクを介した状態で、接着性あるいは粘着性を有する液状の材料を塗布あるいは含浸させればよい。
【0041】
また、接着性あるいは粘着性を有する材料からなるシート状等の部材を主面に接合する場合には、このシート状等の部材のうち金属熱伝導部の凸部が位置する部分をあらかじめ打ち抜いておき、これを金属熱伝導部の凸部が形成された多孔質部材の主面に接合する。
【0042】
図6、図7は接着性あるいは粘着性を有する材料からなるシート状部材の一例を示したものである。図6は接着性あるいは粘着性を有する材料からなるシート状部材を主面側から見た平面図であり、図7はその側面側から見た断面図である。
【0043】
図6、図7に示されるように、シート状部材6の厚さ方向には、例えば円柱状に孔部7が設けられている。このようなシート状部材6は、例えば図3、4に示されるような金属熱伝導部の凸部が円柱状に形成された多孔質部材2との接合に用いられる。例えば、多孔質部材2の主面2aにシート状部材6を接合する場合、シート状部材6に形成された各円柱状の金属熱伝導部の凸部3aとシート状部材6の各孔部7との位置が一致するようにして、金属熱伝導部の凸部3aをシート状部材6の各孔部7に挿入する。
【0044】
このような接着層の形成においては、接着層の表面部の高さが金属熱伝導部の凸部の先端部の高さと同等、あるいはそれよりも低くなっていることが好ましい。接着層の表面部の高さが金属熱伝導部の凸部の先端部の高さよりも高い場合、発熱体や放熱体等と熱伝導シートとの接着の際に、発熱体や放熱体等と金属熱伝導部との間に隙間ができてしまい効率的な熱伝導が行われなくなる可能性がある。
【0045】
また、効率的な熱伝導の点からは、接着層の表面部に露出する金属熱伝導部の凸部の面積が、金属熱伝導部の凸部の面積も含んだ接着層の全面積の0.5%以上となっていることが好ましい。少なくともこのような面積の金属熱伝導部が露出していることで、熱伝導シートが接着される発熱体や放熱体等との効率的な熱伝導が可能性となる。また、接着層の表面部に露出する金属熱伝導部の凸部の面積が、30%以上であればより好ましい。
【0046】
接着性または粘着性を有する材料としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等をエラストマー成分とするゴム系あるいはアクリル系材料が挙げられる。
【0047】
また、この接着性または粘着性を有する材料には、熱伝導率を向上させるために熱伝導フィラーを含有させてもよい。熱伝導フィラーとしては、金属あるいはセラミックスからなるものが挙げられる。熱伝導フィラーの具体的例としては、銀、銅、ニッケル、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素、酸化チタン等からなる粒子状あるいは繊維状のものが挙げられる。
【0048】
本発明では、多孔質部材の一方の主面から他方の主面まで連続するように金属熱伝導部を形成し、この多孔質部材の両主面から金属熱伝導部が突出するように凸部状の金属熱伝導部を形成し、さらに前記多孔質部材の両主面に前記金属熱伝導部の凸部を除くようにして接着層を設けることで、熱伝導シート自体の熱伝導率を10W/m・K以上とすることが可能となるとともに、発熱体や放熱体等と熱伝導シートの金属熱伝導部とを直接的に接触させ、発熱体や放熱体等と熱伝導シートとの熱伝導も向上させることができる。また、本発明の熱伝導シートでは、例えばその主面に金属部材を接合し、熱伝導性に優れた複合部材とすることも可能である。
【0049】
次に、本発明の熱伝導シートの作製について説明する。
【0050】
まず、多孔質部材として、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルフォン、ポリビニリデンフロライド、ポリエステル、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリイミド、ポリアミド等の材料からなるものを用意する。
【0051】
次に、この多孔質部材に金属熱伝導部を形成する。本発明では各種のメッキ法を用いて金属熱伝導部を作製することができるが、一例としてイオン交換性基を利用してめっきを行う金属化処理方法を用いた場合について以下に説明する。
【0052】
まず、多孔質部材の金属熱伝導部を形成しようとする多孔質部材の空隙部に、光照射によりイオン交換性基を生成するオニウム塩誘導体、スルフォニウムエステル誘導体、カルボン酸誘導体およびナフトキノンジアジド誘導体のうちの少なくとも1種の誘導体、または光照射によってイオン交換性基を消失する化合物を含有する感光性組成物を被着させる。
【0053】
多孔質部材の空隙部に感光性組成物層が被着された状態で、所定パターンが形成されたマスクを介して上記多孔質部材の空隙部に被着された感光性組成物層をパターン露光し、露光部にイオン交換性基を生成あるいは消失させる。
【0054】
パターン露光により生成したイオン交換性基部分に銅や銀等の金属あるいはその金属イオンを結合させて多孔質部材の一方の主面から他方の主面まで連続する金属熱伝導部を形成する。
【0055】
さらに、この金属熱伝導部を多孔質部材の主面に突出させ、凸部状の金属熱伝導部を形成するためには、例えば多孔質部材内部に金属熱伝導部を形成した後、その状態でさらに所定の時間保持することにより形成することができる。また、金属熱伝導部の凸部の高さ等の調整は、保持時間を調整したり、触媒等を添加して金属熱伝導部の生成速度(析出速度)を調整したり、あるいは、温度を調整することにより金属熱伝導部の生成速度(析出速度)調整することにより行うことができる。
【0056】
次に、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等をエラストマー成分とするゴム系あるいはアクリル系材料等の接着性あるいは粘着性を有する材料を所定の厚さのシート状に成形して接着層となるべきシート状部材を作製し、多孔質部材の金属熱伝導部の凸部をはめ合わせるための孔部を打ち抜く。
【0057】
その後、このシート状部材と金属熱伝導部の凸部が形成された多孔質部材とを、多孔質部材の主面に形成された金属熱伝導部の凸部とシート状部材の孔部とが一致するようにして接合する。
【0058】
【実施例】
以下、本発明について実施例を参照して詳説する。
【0059】
(実施例1)
多孔質部材としてポリテトラフルオロエチレン多孔質樹脂シートを用意した。このポリテトラフルオロエチレン多孔質樹脂シートの厚さは30μm、空孔径は0.4μm、空隙率は80%であった。
【0060】
一方、感光剤溶液として、側鎖にナフトキノンジアジド基を有するピロガロール樹脂(ナフトキノンジアジド基の導入率;50当量mol%)をアセトンに溶解して、1wt%のアセトン溶液を調製した。
【0061】
得られた感光剤溶液を、前述のポリテトラフルオロエチレン多孔質樹脂シートにディップ法によりコーティングし、多孔質樹脂シートの空孔部内面を感光剤で被覆した。この多孔質樹脂シートに、オーク製作所製露光装置(HMW−201B)を用いて、ビア径5.0mm、ビア間隔5.0mmの格子状配置ビアパターンのマスクを介して、1.2J/cmの照射量で露光し、露光部にイオン交換性基を生成させた。これにより、感光剤層には、イオン交換性基からなるパターン潜像が形成された。
【0062】
潜像が形成された多孔質樹脂シートを、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に30分間浸漬した後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。つづいて0.5Mに調整した酢酸銅水溶液に30分間浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。
【0063】
さらに、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。これを無電解銅めっき液(荏原コージライト社製PS−503)に40℃で3時間浸漬して銅めっきを施すことによって、多孔質樹脂シートの一方の主面から他方の主面まで連続する金属熱伝導部を形成し、次いでめっき液の温度を50℃に保った状態で2時間浸漬し、多孔質樹脂シートの主面上に高さ10μm、直径5.0mmの円柱状の金属熱伝導部の凸部を形成した。
【0064】
この多孔質樹脂シートの断面をSEM観察し、金属熱伝導部内部の銅充填率を調べたところ、約50%であった。また、この熱伝導シートの熱伝導率を測定したところ30W/m・Kの数値が得られた。
【0065】
さらに、この多孔質樹脂シートの主面に、シリコーン系粘着材(GE東芝シリコーン社製TSR1512:100重量部と同社製LR50:1重量部との混合物)をシルク印刷法により金属熱伝導部の凸部を形成した部分を除いて塗布し、120℃、5分間の熱処理を行い溶媒をとばすとともに、架橋させ接着層を形成し熱伝導シートを作製した。なお、接着層の表面部の高さは、金属熱伝導部の凸部の高さと同じとした。
【0066】
この熱伝導シートの熱抵抗を測定したところ0.2℃/Wという低抵抗化を達成することができた。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様の多孔質樹脂シートを用い、同様の条件で金属熱伝導部およびその凸部を形成した。さらに、この多孔質樹脂シートの主面に、高熱伝導率を有する窒化アルミニウムフィラーを30重量%混ぜ込んだシリコーン系粘着材(GE東芝シリコーン社製TSR1512:100重量部と同社製LR50:1重量部との混合物)をシルク印刷法により金属熱伝導部の凸部を形成した部分を除いて塗布し、120℃5分間の熱処理を行い溶媒をとばすとともに、架橋させ接着層を形成し熱伝導シートを作製した。なお、接着層の表面部の高さは、金属熱伝導部の凸部の高さと同じとした。
【0068】
この熱伝導シートの熱抵抗を測定したところ0.15℃/Wという低抵抗化を達成することができた。
【0069】
(比較例1)
多孔質部材としてポリテトラフルオロエチレン多孔質樹脂シートを用意した。
このポリテトラフルオロエチレン多孔質樹脂シートの厚さは30μm、空孔径は0.4μm、空隙率は80%であった。
【0070】
一方、感光剤溶液として、側鎖にナフトキノンジアジド基を有するピロガロール樹脂(ナフトキノンジアジド基の導入率;50当量mol%)をアセトンに溶解して、1wt%のアセトン溶液を調製した。
【0071】
得られた感光剤溶液を、前述のポリテトラフルオロエチレン多孔質樹脂シートにディップ法によりコーティングし、多孔質樹脂シートの空孔部内面を感光剤で被覆した。この多孔質樹脂シートに、オーク製作所製露光装置(HMW−201B)を用いて、ビア径5.0mm、ビア間隔5.0mmの格子状配置ビアパターンのマスクを介して、1.2J/cmの照射量で露光し、露光部にイオン交換性基を生成させた。これにより、感光剤層には、イオン交換性基からなるパターン潜像が形成された。
【0072】
潜像が形成された多孔質樹脂シートを、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に30分間浸漬した後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。つづいて0.5Mに調整した酢酸銅水溶液に30分間浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。
【0073】
さらに、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。これを無電解銅めっき液(荏原コージライト社製PS−503)に40℃で3時間浸漬して銅めっきを施すことによって、多孔質樹脂シートの一方の主面から他方の主面まで連続する金属熱伝導部を形成した。このときの金属熱伝導部の表面は、多孔質樹脂シートの主面と同じ高さであった。
【0074】
この多孔質樹脂シートの断面をSEM観察し、金属熱伝導部内部の銅充填率を調べたところ、約50%であった。また、この熱伝導シートの熱伝導率を測定したところ30W/m・Kの数値が得られた。
【0075】
さらに、この多孔質樹脂シートの主面に、シリコーン系粘着材(GE東芝シリコーン社製TSR1512:100重量部と同社製LR50:1重量部との混合物)を全面に塗布し、120℃、5分間の熱処理を行い溶媒をとばすとともに、架橋させ接着層を形成し熱伝導シートを作製した。このときの接着層の表面部の高さは、多孔質樹脂シートの主面の金属熱伝導部の表面から30μmの高さとした。この熱伝導シートの熱抵抗を測定したところ5℃/Wとなった。
【0076】
(比較例2)
比較例1と同様の多孔質樹脂シートを用い、同様の条件で金属熱伝導部を形成した。さらに、この多孔質樹脂シートの主面のうち金属熱伝導部が露出した部分を除いて、シリコーン系粘着材(GE東芝シリコーン社製TSR1512:100重量部と同社製LR50:1重量部との混合物)をシルク印刷法により塗布し、120℃、5分間の熱処理を行い溶媒をとばすとともに、架橋させ接着層を形成し熱伝導シートを作製した。このときの接着層の表面部の高さは、多孔質樹脂シートの主面の金属熱伝導部の表面から30μmの高さとした。この熱伝導シートの熱抵抗を測定したところ10℃/Wとなった。
【0077】
【発明の効果】
本発明の熱伝導シートでは、多孔質部材の主面に金属熱伝導部の凸部を形成し、これを除くようにして接着層を設けることにより、熱伝導シートの表面を平坦にし発熱体や放熱体との接着性を高めるとともに、金属熱伝導部の凸部先端部に接着材等の熱伝導率が低いものが付着するのを抑制し、発熱体や放熱体と金属熱伝導部の凸部先端部とを直接的に接触させ、熱伝導性を大幅に向上させることができる。
【0078】
また、本発明の熱伝導シートでは、多孔質部材を用い、その空隙部に沿ってめっきを行う金属化処理方法等を用いて銅や銀等の金属を析出させるため、従来の熱伝導シートに比べて作製が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱伝導シートの一例を模式的に示した外観図
【図2】本発明の熱伝導シートの一例を模式的に示した断面図
【図3】多孔質部材に凸部を有する金属熱伝導部を形成した一例を示した平面図
【図4】多孔質部材に凸部を有する金属熱伝導部を形成した一例を示した断面図
【図5】多孔質部材に凸部を有する金属熱伝導部を形成した他の例を示した平面図
【図6】シート状部材の一例を示した平面図
【図7】シート状部材の一例を示した断面図
【図8】従来の粒状の熱伝導フィラーを有する熱伝導シートを示した断面図
【図9】従来の繊維状の熱伝導フィラーを有する熱伝導シートを示した断面図
【符号の説明】
1……熱伝導シート、2……多孔質部材、2a,2b……多孔質部材の主面、3……金属熱伝導部、3a,3b……金属熱伝導部の凸部、4,5……接着層

Claims (5)

  1. 厚さ方向に連続した空隙部を有する多孔質部材と、
    前記多孔質部材の一方の主面から他方の主面にかけて前記空隙部に連続的に形成され、かつ前記多孔質部材の両主面から突出した凸部を有する金属熱伝導部と、
    前記多孔質部材の両主面に前記金属熱伝導部の凸部を除くようにして設けられた接着層と
    を有することを特徴とする熱伝導シート。
  2. 前記接着層の表面部の高さが前記金属熱伝導部の凸部の高さ以下であることを特徴とする請求項1記載の熱伝導シート。
  3. 前記金属熱伝導部は、めっき法により形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の熱伝導シート。
  4. 前記金属熱伝導部を形成する金属の熱伝導率は、50W/m・K以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の熱伝導シート。
  5. 前記接着層は、熱伝導フィラーを20〜95重量%含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の熱伝導シート。
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