JP2004169327A - 止水材 - Google Patents
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Abstract
【課題】敷設直後から止水機能を発揮することができ、かつ長期間にわたって止水機能を持続することが可能な耐久性を備える止水材を提供する。
【解決手段】コンクリート構造体30の継ぎ目31に沿って配置する止水材(止水ゴム)10として、
コンクリート構造体30間の変位に応じて変形する可撓部11と、可撓部11の長手方向に連なって隣接するコンクリート構造体のそれぞれに固定される一対のフランジ部12と、フランジ部のコンクリート構造体との接触面12aにあって止水材10の長手方向に延びる筋状または帯状の水膨張ゴム13,14と、を備えるものを用いる。水膨張ゴム13,14は、それぞれのフランジ部12につき2本ずつ設けて、同一のフランジ部12に設けられている2本の水膨張ゴムが互いに異なる膨張速度を有するものとする。
【選択図】 図2
【解決手段】コンクリート構造体30の継ぎ目31に沿って配置する止水材(止水ゴム)10として、
コンクリート構造体30間の変位に応じて変形する可撓部11と、可撓部11の長手方向に連なって隣接するコンクリート構造体のそれぞれに固定される一対のフランジ部12と、フランジ部のコンクリート構造体との接触面12aにあって止水材10の長手方向に延びる筋状または帯状の水膨張ゴム13,14と、を備えるものを用いる。水膨張ゴム13,14は、それぞれのフランジ部12につき2本ずつ設けて、同一のフランジ部12に設けられている2本の水膨張ゴムが互いに異なる膨張速度を有するものとする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、止水ゴムや止水板等の止水材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、共同溝、ボックスカルバート、地下通路、シールドトンネル等の地下構造物は、内部の空間を区画するコンクリート構造体(函体、セグメントリング等)を多数連結して構築されるものである。このコンクリート構造体の継ぎ目(連結部)には、内部空間への漏水を防止するために可撓性を備える止水ゴムまたは止水板が設けられている。
【0003】
止水ゴム80は、例えば図5に示すように、コンクリート構造体86の継ぎ目部分に配置されて、コンクリート構造体86間の変位に応じて変形する可撓部81と、可撓部81に連設してなる一対のフランジ部(締着部)82と、を備えるものである。この止水ゴム80は、一対の枠体84で区画される取付溝85内に配置され、コンクリート構造体86中に埋設したアンカーボルト87aをフランジ部82に貫装させることによって固定される。なお、図5中の符号88は、ナット87bと止水ゴム80との間に介在させる押え板を示す。また、符号89はコンクリート構造体86間の継ぎ目部分を封止する目地材を、符号84aは枠体84とコンクリート構造体86との間に配置された水膨張ゴムを、ぞれぞれ示す。
止水板90は、例えば図6に示すように、一対のフランジ部(連結部)92を隣接するコンクリート構造体96のそれぞれの内部に埋設して、両者を連結するものであって、コンクリート構造体96間の変位に応じて変形する可撓部91と、上記一対のフランジ部92と、を備えている。なお、図6中の符号93は目地材を示す。
【0004】
しかしながら、これらの止水ゴム80や止水板90を用いてコンクリート構造体の継ぎ目部分を止水した場合であっても、目地材89,99とコンクリート構造体86,96との隙間等から漏水が生じるおそれがある(図5および図6中の矢印参照)。止水ゴム80や止水板90の表面には、漏水の防止効果をより一層確実なものとする目的で、水膨張ゴム83,93を配置することが広く行なわれているが、公知の、多種多様な水膨張ゴムを用いても、止水ゴムや止水板(以下、これらをまとめて「止水材」という。)の止水性能と耐久性との双方をともに満足のいくものとするのは困難であった。
【0005】
水膨張ゴムのうち膨張速度の大きいものは、通常、水との接触後2〜3日で膨張が完了する(膨張平衡に達する)ものであるが、このような特性を発揮させるには、ゴムの架橋密度を小さくすること(好ましくは、未加硫状態とすること)と、吸水性ポリマーの含有率を高めることが求められる。しかしながら、ゴムの架橋密度を抑制したり、吸水性ポリマーの含有率を高めたりすると、水膨張ゴムの長期的な耐久性が低下する。しかも、応力緩和が大きくなるために、長期間にわたって止水性を保持するのが困難になる。また、コンクリート打設前に降雨等によって水に濡れると、敷設前に膨張が生じてしまい、コンクリート打設後の止水性能に支障をきたす問題がある。
【0006】
一方、水膨張ゴムのうち膨張速度の小さいものについては、水に触れたときから、止水材とコンクリート構造体との間の隙間を埋めて漏水を防止し得る程度にまで膨張するのに時間を要することから、工事完了直後から生じる地下水等の浸透によって水漏れを生じるおそれがある。この水漏れは、水膨張ゴムの膨張が進行するのにつれて徐々に収まるものの、短期間であるとはいえ水漏れが生じるのは好ましいことではない。
【0007】
そこで、特許文献1では、膨張速度の小さい水膨張性加硫ゴム基材の片面または両面に、膨張速度の大きい水膨張性非加硫ゴム層を設けてなる、水膨張性シール材を提案している。
しかしながら、特許文献1のシール材では、漏水発生の原因となる構造物と地盤との隙間部分を、膨張速度が異なる水膨張ゴムの積層体でシールしている。すなわち、同じ部位に膨張速度の大きいゴムと小さいゴムとの両方を備えている。それゆえ、シール材の敷設から長期間の経過により水膨張速度の大きいゴムに劣化が生じた場合には、たとえ膨張速度が小さく耐久性を有する水膨張ゴムが設けられていたとしても、十分な止水性能を維持することが困難になる。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−302329号公報(請求項1,図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、敷設直後から止水機能を発揮することができ、かつ長期間にわたって止水機能を持続することが可能な耐久性を備える止水材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記課題を解決するための本発明の止水材は、コンクリート構造体の継ぎ目に沿って配置されるものであって、
コンクリート構造体間の変位に応じて変形する可撓部と、当該可撓部の長手方向に連なって、隣接するコンクリート構造体のそれぞれに固定される一対のフランジ部と、当該フランジ部のコンクリート構造体との接触面にあって止水材の長手方向に延びる筋状または帯状の水膨張ゴムと、を備え、
当該水膨張ゴムが、それぞれのフランジ部につき少なくとも2本ずつ設けられ、かつ同一のフランジ部に設けられている水膨張ゴムのうちの2本が、互いに異なる膨張速度を有するものである
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の止水材は、一対のフランジ部のそれぞれについて、そのコンクリート構造体との接触面に、長手方向に延びる筋状または帯状の水膨張ゴムを2本ずつ備えており、さらにこの2本の水膨張ゴムの膨張速度が互いに異なるものとなっている。従って、本発明の止水材では、膨張速度が相対的に速く、止水材の敷設後、比較的早い時期から止水機能を発揮して漏水を防止することが可能な水膨張ゴムと、膨張速度が相対的に遅く、比較的長期間にわたって止水機能を持続することが可能な耐久性を備える水膨張ゴムとが組み合わせて配置されることとなって、その結果、初期の止水性が良好で、しかも耐久性と長期にわたる止水性能についても優れたものとなる。
【0012】
従って、本発明の止水材は、共同溝、ボックスカルバート、地下通路、シールドトンネル等の地下構造物を形成するコンクリート構造体(函体、セグメントリング等)の継ぎ目における漏水防止具として好適である。
【0013】
本発明の止水材は、同一のフランジ部に設けられている2本の水膨張ゴムのうち、水膨張速度が大きい方の水膨張ゴムを、止水材の漏水開始点から近い方に配置してなるものであるのが好ましい。
膨張速度が大きく、水との接触によって素早く膨張が進行する方の水膨張ゴムを、漏水開始点、すなわちコンクリート構造体の空間内への水の浸入口になるものと予測される部位に近い方に配置し、一方で、膨張速度が小さく、水との接触に伴う膨張がゆっくりと進行する水膨張ゴムを漏水開始点から遠い方に配置することで、止水ゴムの初期の止水性を良好なものとし、しかも耐久性および長期にわたる止水性能を優れたものにするという本発明の作用効果をより一層確実なものとすることができる。
【0014】
本発明の止水材において、同一のフランジ部に設けられている2本の水膨張ゴムは、
(i) 水膨張速度の大きい方の水膨張ゴムが浸水後3〜7日で膨張平衡に達するものであり、かつ水膨張速度の小さい方の水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で膨張平衡に達するもの、または、
(ii) 水膨張速度の大きい方の水膨張ゴムが浸水後3〜7日で膨張率が300%に達するものであり、かつ水膨張速度の小さい方の水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で膨張率が300%に達するもの
であるのが好ましい。
【0015】
止水ゴムの初期の止水性をより一層良好なものとするには、水膨張ゴムが浸水後3〜7日で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するもの、すなわち水膨張速度が大きなものであるのが好ましい。一方、止水ゴムの耐久性および長期にわたる止水性能をより一層良好なものとするには、水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するもの、すなわち水膨張速度が小さなものであるのが好ましい。
【0016】
本発明の止水材の具体例としては、例えば
(a) 可撓部の断面形状が略U字状、略W字状または波状であり、
一対のフランジ部が略板状で、上記可撓部のそれぞれの裾部から長手方向に連なり、かつ隣接するコンクリート構造体のそれぞれの表面に付設されて止水材全体をコンクリート構造体間に架設するものであり、
水膨張ゴムが、上記フランジ部のコンクリート構造体への接地面に設けられてなるもの(いわゆる止水ゴム)、または
(b) 可撓部が略筒状であり、
一対のフランジ部が略板状で、上記可撓部の長手方向に連なり、かつ隣接するコンクリート構造体のそれぞれの内部に埋設されて止水材全体をコンクリート構造体間に架設するものであり、
水膨張ゴムが、上記フランジ部の表面に配置されて上記可撓部の長手方向に連なるもの(いわゆる止水板)
が挙げられる。
【0017】
上記(a) の止水ゴムは、共同溝、ボックスカルバート、地下通路、シールドトンネル等を形成するコンクリート構造体一般の継ぎ目における漏水防止具として、より具体的には、主として函体、セグメントリング等の止水材として用いられるものであるが、これに限定されるものではない。
また、上記(b) の止水材は、共同溝、ボックスカルバート、地下通路等を形成するコンクリート構造体の継ぎ目における漏水防止具として、より具体的には、主として函体の一次止水材として用いられるものであるが、これに限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の止水材について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔止水ゴムの実施形態〕
本発明に係る止水材のうち、いわゆる止水ゴムについての一実施形態を図1に示し、図1に示す止水ゴム10を用いた止水構造の一例を図2に示す。
止水ゴム10は、断面形状が略U字状である可撓部11と、板状で一対のフランジ部(締着部)12とを備えるものであって、当該一対のフランジ部12を隣接する一対のコンクリート構造体30のそれぞれの表面に取り付けて、コンクリート構造体30間の継ぎ目(連結部)31に可撓部11を架設した状態で用いられる。図2中、符号32は目地材を示す。
【0019】
図1に示す止水ゴム10は、そのフランジ部12のコンクリート構造体30と当接する方の表面(接地面)12aにおいて、それぞれのフランジ部12について2本ずつ、止水ゴム10の長手方向xに延びる水膨張ゴム13,14を備えている。
図1に示す止水ゴム10では、図2に示す止水構造より明らかなように、フランジ部の接地面12aのうち、可撓部11に近い箇所(可撓部の付け根11aの辺り)が、地盤33からの漏水の起点となる箇所(漏水開始点34)となる。それゆえ、フランジ部の接地面12aに設けられる2本の水膨張ゴム13,14については、可撓部11(付け根11a)に近い方の水膨張ゴム(第1の水膨張ゴム)13を膨張速度の大きいものとし、可撓部11よりも遠い方の水膨張ゴム(第2の水膨張ゴム)14を膨張速度の小さいものとするのが好ましい。水膨張ゴム13,14を上記のとおり配置することで、止水ゴム10の初期の止水性、耐久性および長期にわたる止水性能を、いずれもより一層優れたものとすることができる。
【0020】
止水ゴム10のフランジ部12は、図2に示すように、コンクリート構造体30の表面に当接させた状態で、コンクリート構造体30中に埋設されたアンカーボルト35、押え板36およびナット37によって強固に固定される。
フランジ部12の接地面12aには、止水ゴム10の長手方向xに延びる凸条(リブ)を設けてもよい。この凸条は、フランジ部12を押え板36、アンカーボルト35等でコンクリート構造体に圧接したときに押し潰された状態となり、その結果、フランジ部の設置面12aとコンクリート構造体との間での漏水の防止効果をより一層高めることができる。
【0021】
〔止水板の実施形態〕
本発明に係る止水材のうち、いわゆる止水板についての一実施形態を図3に示し、図3に示す止水板20を用いた止水構造の一例を図4に示す。
止水板20は、断面形状が略O字状である可撓部21と、略板状で一対のフランジ部(連結部)22とを備えるものであって、コンクリート構造体30の継ぎ目(連結部)31に可撓部21を配置し、当該継ぎ目31を挟んで相対するコンクリート構造体30のそれぞれにフランジ部22を埋設した状態で用いられる。なお、図3に示す止水板20は、コンクリート構造体30から引抜きにくくするために、フランジ部22の各端部に止水板20の長手方向xに延びる凸条(突縁部)24が設けられている。図4中、符号32は目地材を示す。
【0022】
止水板は、それぞれのフランジ部22についてその表面に2本ずつ、図3に示す止水板20では、それぞれのフランジ部22についてその表面22aと凸条24部とに、止水板20の長手方向xに延びる水膨張ゴム23,24aが設けられている。
図3に示す止水板20では、図4に示す止水構造より明らかなように、フランジ部の表面22a,22bのうち、地盤32側に配置される方の表面22aであって、かつ可撓部21に近い箇所が、地盤32からの漏水の起点となる箇所(漏水開始点34)となる。それゆえ、図3および図4に示す止水板20の場合は、2本の水膨張ゴムのうち、フランジ部の表面22aに設けられる水膨張ゴム(第1の水膨張ゴム)23を膨張速度の大きいものとし、凸条24に設けられる水膨張ゴム(第2の水膨張ゴム)24aを膨張速度の小さいものとするのが好ましい。水膨張ゴム23,24aを上記のとおり配置することで、止水板20の初期の止水性、耐久性および長期にわたる止水性能を、いずれもより一層優れたものとすることができる。
なお、止水板20における水膨張ゴムのは一例は、図3に示すものに限定されるものではなく、例えば凸条24部分に膨張速度の大きい第1の水膨張ゴムを配置し、フランジ部の他方の表面22bに膨張速度の小さい第2の水膨張ゴムを配置してもよい。
【0023】
〔止水材本体〕
本発明の止水材は、耐候性、耐老化性、耐オゾン性、弾力性等の各特性に優れたものであるのが好ましい。具体的には、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)等のゴムを用いて形成するのが好ましい。
【0024】
止水材の内部には、耐圧性能を向上させるという観点から、補強基布を入れることができる。この場合、止水材に亀裂が生じた時に亀裂の伝搬を阻止し、止水性能の低下を抑制することができる。
特に、止水ゴムや止水板のフランジ部には、その内部に複数枚の補強基布を配置するのが好ましい。この場合、例えば止水材を枠体に固定するのに用いられるボルトで締着部に破損等が、十分な抵抗力を発揮させることができる。
補強基布の配向は、特に限定されるものではないが、クロス構造とするよりも、ラジアル構造とするのが好ましい。この場合、剪断変形がかかった時にシワ等が発生することが少なく、耐久性に優れるという利点が得られる。
【0025】
〔水膨張ゴム〕
水膨張ゴムは、例えば基材となるゴム(弾性体)に吸水性ポリマーを練り込んで、圧縮、加硫等の(成形)処理を施すことによって得られる。
基材となるゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。また、上記例示のゴムに代えて、エラストマー、樹脂材料等の弾性体を用いることもできる。
【0026】
吸水性ポリマーとしては、例えばポリアクリル酸ソーダ(高分子電解質)等が挙げられる。
水膨張ゴムの水膨張速度は、例えば基材となるゴムに対する吸水性ポリマーの配合比率等によって適宜調節することができる。
【0027】
本発明に用いられる水膨張ゴムのうち水膨張速度の大きいものとしては、前述のように、浸水後3〜7日、好ましくは3〜6日で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するものであるのが好ましい。
水膨張速度が大きい方の水膨張ゴムとして、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を超えるものを用いたときには、止水材の初期止水性能が低下する。逆に、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を下回る水膨張ゴムについては、それを得るのが困難であったり、たとえそのような水膨張ゴムが得られたとしても十分な強度を得ることができないといったおそれが極めて高い。それゆえ、止水材の耐久性や止水機能の保持性が低下するといった問題を生じる。
【0028】
一方、本発明に用いられる水膨張ゴムのうち水膨張速度の小さいものとしては、前述のように、浸水後15日〜2月、好ましくは15日〜1月で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するものであるのが好ましい。
水膨張速度が小さい方の水膨張ゴムとして、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を下回るものを用いたときには、水膨張速度が大きい方の水膨張ゴムとの水膨張速度の差異が極めて小さなものとなる。それゆえ、止水ゴムの初期の止水性を良好なものとし、しかも耐久性および長期にわたる止水性能を優れたものにする、という本発明の作用効果が得られなくなるおそれが高い。逆に、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を超えるものを用いたときは、止水機能を長期にわたって維持できなくなるおそれが高い。
【0029】
〔止水材の製造方法〕
本発明の止水材は、所定の寸法に成型された未加硫ゴム、水膨張ゴム等を金型内に仕込んだ(配置した)後、加圧および加硫を施すこと(圧縮加硫成型)によって得られる。
水膨張ゴムは、あらかじめ止水材の本体を形成した上で、接着等の手段によってフランジ部等に配置してもよい。
【0030】
止水材本体を形成するゴム材料の加硫条件については特に限定されるものではなく、使用するゴム材料の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常、130〜160℃の温度範囲で、加圧面圧は40〜60kgf/cm2 の範囲で、それぞれ設定すればよい。加硫時間は、使用するゴム材料、加硫系配合剤の種類等に応じて、さらには止水材の形状に応じて、適宜設定すればよい。
【0031】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を説明する。
〔可撓ゴム継手の製造〕
実施例1
図1に示す可撓ゴム継手10のうち、断面形状が略U字状である可撓部11と、板状で一対のフランジ部(締着部)12とに対応する部分を形成すべく、天然ゴムを主成分とするゴム組成物を金型内に敷き詰めて、150℃で60分間加硫した。可撓部11およびフランジ部12内には綿製の補強基布を配置した。
次いで、水膨張ゴム13,14を個々に成形した後、これらを一対のフランジ部12の接地面12a側にそれぞれ加硫接着して、図1に示す可撓ゴム継手10を得た。
【0032】
2つの水膨張ゴム13,14には、互いに膨張速度が異なるものを使用した。実施例1では、可撓部11の付け根11a側に近い方の水膨張ゴム13における膨張速度を、他方の水膨張ゴム14よりも大きく設定した。付け根11a側に近い方の水膨張ゴム13には、浸水後7日で膨張率が300%に達して、膨張平衡に達するものを使用した。また、付け根11a側から遠い方の水膨張ゴム14には、浸水後30日で膨張率が300%に達して、膨張平衡に達するものを使用した。
【0033】
なお、上記実施例では、可撓部11と一対のフランジ部11とに対応する部分と、水膨張ゴム13,14に対応する部分とをそれぞれ別々に成形して、これらを加硫接着によって一体化したが、金型内にそれぞれの部分を形成するゴム組成物を配置した上で、一度に加硫成形することによって、可撓ゴム継手10全体を一体成形することも可能である。
【0034】
こうして得られた可撓ゴム継手10は、フランジ部12と水膨張ゴム(未膨張状態)13,14との厚みが合計20mm、水膨張ゴム13,14自体の厚み(未膨張状態)がそれぞれ4mmであった。水膨張ゴム13の幅は20mm、水膨張ゴム14の幅は60mmであった。可撓ゴム継手10の長手方向xの長さは600mmであった。
【0035】
〔可撓ゴム継手の物性〕
上記実施例1で得た可撓ゴム継手10を図7に示す鋼製の筐体中41に配置し、コンクリート67を打設することによって、図8(a),(b) に示す止水テスト用の試験治具40を得た。なお、図6中、符号64はアンカーボルトを、符号63は押え板を、符号65は目地材を、それぞれ示す。
次いで、可撓ゴム継手10の湾曲部11と目地材65との間の空間81内に水圧を負荷して、可撓ゴム継手10の止水性を評価するための試験を行った。
【0036】
地下構造物用の(特に、開削トンネルが埋設される深さで用いる)可撓ゴム継手には、一般に0.1〜0.15MPa程度の耐水圧が必要とされるが、上記実施例1の可撓ゴム継手では、0.2MPaの水圧を負荷したときにも漏水を生じることがなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る止水材の一実施形態を示す図であって、(a) はその斜視図、(b) はその断面図である。
【図2】図1に示す止水材の使用状態の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る止水材の他の実施形態を示す図であって、(a) はその斜視図、(b) はその断面図である。
【図4】図3に示す止水材の使用状態の一例を示す断面図である。
【図5】従来の止水ゴムの一例を示す断面図である。
【図6】従来の止水板の一例を示す断面図である。
【図7】(a) は実施例の止水テストに使用した試験治具を示す斜視図であって、(b) はその断面図である。
【符号の説明】
10 止水ゴム
11,21 可撓部
12,22 フランジ部(締着部)
13,23 (第1の)水膨張ゴム
14 (第2の)水膨張ゴム
20 止水板
24 凸条
24a (第2の)水膨張ゴム
30 コンクリート構造体
31 継ぎ目(連結部)
34 漏水開始点
【発明の属する技術分野】
本発明は、止水ゴムや止水板等の止水材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、共同溝、ボックスカルバート、地下通路、シールドトンネル等の地下構造物は、内部の空間を区画するコンクリート構造体(函体、セグメントリング等)を多数連結して構築されるものである。このコンクリート構造体の継ぎ目(連結部)には、内部空間への漏水を防止するために可撓性を備える止水ゴムまたは止水板が設けられている。
【0003】
止水ゴム80は、例えば図5に示すように、コンクリート構造体86の継ぎ目部分に配置されて、コンクリート構造体86間の変位に応じて変形する可撓部81と、可撓部81に連設してなる一対のフランジ部(締着部)82と、を備えるものである。この止水ゴム80は、一対の枠体84で区画される取付溝85内に配置され、コンクリート構造体86中に埋設したアンカーボルト87aをフランジ部82に貫装させることによって固定される。なお、図5中の符号88は、ナット87bと止水ゴム80との間に介在させる押え板を示す。また、符号89はコンクリート構造体86間の継ぎ目部分を封止する目地材を、符号84aは枠体84とコンクリート構造体86との間に配置された水膨張ゴムを、ぞれぞれ示す。
止水板90は、例えば図6に示すように、一対のフランジ部(連結部)92を隣接するコンクリート構造体96のそれぞれの内部に埋設して、両者を連結するものであって、コンクリート構造体96間の変位に応じて変形する可撓部91と、上記一対のフランジ部92と、を備えている。なお、図6中の符号93は目地材を示す。
【0004】
しかしながら、これらの止水ゴム80や止水板90を用いてコンクリート構造体の継ぎ目部分を止水した場合であっても、目地材89,99とコンクリート構造体86,96との隙間等から漏水が生じるおそれがある(図5および図6中の矢印参照)。止水ゴム80や止水板90の表面には、漏水の防止効果をより一層確実なものとする目的で、水膨張ゴム83,93を配置することが広く行なわれているが、公知の、多種多様な水膨張ゴムを用いても、止水ゴムや止水板(以下、これらをまとめて「止水材」という。)の止水性能と耐久性との双方をともに満足のいくものとするのは困難であった。
【0005】
水膨張ゴムのうち膨張速度の大きいものは、通常、水との接触後2〜3日で膨張が完了する(膨張平衡に達する)ものであるが、このような特性を発揮させるには、ゴムの架橋密度を小さくすること(好ましくは、未加硫状態とすること)と、吸水性ポリマーの含有率を高めることが求められる。しかしながら、ゴムの架橋密度を抑制したり、吸水性ポリマーの含有率を高めたりすると、水膨張ゴムの長期的な耐久性が低下する。しかも、応力緩和が大きくなるために、長期間にわたって止水性を保持するのが困難になる。また、コンクリート打設前に降雨等によって水に濡れると、敷設前に膨張が生じてしまい、コンクリート打設後の止水性能に支障をきたす問題がある。
【0006】
一方、水膨張ゴムのうち膨張速度の小さいものについては、水に触れたときから、止水材とコンクリート構造体との間の隙間を埋めて漏水を防止し得る程度にまで膨張するのに時間を要することから、工事完了直後から生じる地下水等の浸透によって水漏れを生じるおそれがある。この水漏れは、水膨張ゴムの膨張が進行するのにつれて徐々に収まるものの、短期間であるとはいえ水漏れが生じるのは好ましいことではない。
【0007】
そこで、特許文献1では、膨張速度の小さい水膨張性加硫ゴム基材の片面または両面に、膨張速度の大きい水膨張性非加硫ゴム層を設けてなる、水膨張性シール材を提案している。
しかしながら、特許文献1のシール材では、漏水発生の原因となる構造物と地盤との隙間部分を、膨張速度が異なる水膨張ゴムの積層体でシールしている。すなわち、同じ部位に膨張速度の大きいゴムと小さいゴムとの両方を備えている。それゆえ、シール材の敷設から長期間の経過により水膨張速度の大きいゴムに劣化が生じた場合には、たとえ膨張速度が小さく耐久性を有する水膨張ゴムが設けられていたとしても、十分な止水性能を維持することが困難になる。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−302329号公報(請求項1,図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、敷設直後から止水機能を発揮することができ、かつ長期間にわたって止水機能を持続することが可能な耐久性を備える止水材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記課題を解決するための本発明の止水材は、コンクリート構造体の継ぎ目に沿って配置されるものであって、
コンクリート構造体間の変位に応じて変形する可撓部と、当該可撓部の長手方向に連なって、隣接するコンクリート構造体のそれぞれに固定される一対のフランジ部と、当該フランジ部のコンクリート構造体との接触面にあって止水材の長手方向に延びる筋状または帯状の水膨張ゴムと、を備え、
当該水膨張ゴムが、それぞれのフランジ部につき少なくとも2本ずつ設けられ、かつ同一のフランジ部に設けられている水膨張ゴムのうちの2本が、互いに異なる膨張速度を有するものである
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の止水材は、一対のフランジ部のそれぞれについて、そのコンクリート構造体との接触面に、長手方向に延びる筋状または帯状の水膨張ゴムを2本ずつ備えており、さらにこの2本の水膨張ゴムの膨張速度が互いに異なるものとなっている。従って、本発明の止水材では、膨張速度が相対的に速く、止水材の敷設後、比較的早い時期から止水機能を発揮して漏水を防止することが可能な水膨張ゴムと、膨張速度が相対的に遅く、比較的長期間にわたって止水機能を持続することが可能な耐久性を備える水膨張ゴムとが組み合わせて配置されることとなって、その結果、初期の止水性が良好で、しかも耐久性と長期にわたる止水性能についても優れたものとなる。
【0012】
従って、本発明の止水材は、共同溝、ボックスカルバート、地下通路、シールドトンネル等の地下構造物を形成するコンクリート構造体(函体、セグメントリング等)の継ぎ目における漏水防止具として好適である。
【0013】
本発明の止水材は、同一のフランジ部に設けられている2本の水膨張ゴムのうち、水膨張速度が大きい方の水膨張ゴムを、止水材の漏水開始点から近い方に配置してなるものであるのが好ましい。
膨張速度が大きく、水との接触によって素早く膨張が進行する方の水膨張ゴムを、漏水開始点、すなわちコンクリート構造体の空間内への水の浸入口になるものと予測される部位に近い方に配置し、一方で、膨張速度が小さく、水との接触に伴う膨張がゆっくりと進行する水膨張ゴムを漏水開始点から遠い方に配置することで、止水ゴムの初期の止水性を良好なものとし、しかも耐久性および長期にわたる止水性能を優れたものにするという本発明の作用効果をより一層確実なものとすることができる。
【0014】
本発明の止水材において、同一のフランジ部に設けられている2本の水膨張ゴムは、
(i) 水膨張速度の大きい方の水膨張ゴムが浸水後3〜7日で膨張平衡に達するものであり、かつ水膨張速度の小さい方の水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で膨張平衡に達するもの、または、
(ii) 水膨張速度の大きい方の水膨張ゴムが浸水後3〜7日で膨張率が300%に達するものであり、かつ水膨張速度の小さい方の水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で膨張率が300%に達するもの
であるのが好ましい。
【0015】
止水ゴムの初期の止水性をより一層良好なものとするには、水膨張ゴムが浸水後3〜7日で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するもの、すなわち水膨張速度が大きなものであるのが好ましい。一方、止水ゴムの耐久性および長期にわたる止水性能をより一層良好なものとするには、水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するもの、すなわち水膨張速度が小さなものであるのが好ましい。
【0016】
本発明の止水材の具体例としては、例えば
(a) 可撓部の断面形状が略U字状、略W字状または波状であり、
一対のフランジ部が略板状で、上記可撓部のそれぞれの裾部から長手方向に連なり、かつ隣接するコンクリート構造体のそれぞれの表面に付設されて止水材全体をコンクリート構造体間に架設するものであり、
水膨張ゴムが、上記フランジ部のコンクリート構造体への接地面に設けられてなるもの(いわゆる止水ゴム)、または
(b) 可撓部が略筒状であり、
一対のフランジ部が略板状で、上記可撓部の長手方向に連なり、かつ隣接するコンクリート構造体のそれぞれの内部に埋設されて止水材全体をコンクリート構造体間に架設するものであり、
水膨張ゴムが、上記フランジ部の表面に配置されて上記可撓部の長手方向に連なるもの(いわゆる止水板)
が挙げられる。
【0017】
上記(a) の止水ゴムは、共同溝、ボックスカルバート、地下通路、シールドトンネル等を形成するコンクリート構造体一般の継ぎ目における漏水防止具として、より具体的には、主として函体、セグメントリング等の止水材として用いられるものであるが、これに限定されるものではない。
また、上記(b) の止水材は、共同溝、ボックスカルバート、地下通路等を形成するコンクリート構造体の継ぎ目における漏水防止具として、より具体的には、主として函体の一次止水材として用いられるものであるが、これに限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の止水材について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔止水ゴムの実施形態〕
本発明に係る止水材のうち、いわゆる止水ゴムについての一実施形態を図1に示し、図1に示す止水ゴム10を用いた止水構造の一例を図2に示す。
止水ゴム10は、断面形状が略U字状である可撓部11と、板状で一対のフランジ部(締着部)12とを備えるものであって、当該一対のフランジ部12を隣接する一対のコンクリート構造体30のそれぞれの表面に取り付けて、コンクリート構造体30間の継ぎ目(連結部)31に可撓部11を架設した状態で用いられる。図2中、符号32は目地材を示す。
【0019】
図1に示す止水ゴム10は、そのフランジ部12のコンクリート構造体30と当接する方の表面(接地面)12aにおいて、それぞれのフランジ部12について2本ずつ、止水ゴム10の長手方向xに延びる水膨張ゴム13,14を備えている。
図1に示す止水ゴム10では、図2に示す止水構造より明らかなように、フランジ部の接地面12aのうち、可撓部11に近い箇所(可撓部の付け根11aの辺り)が、地盤33からの漏水の起点となる箇所(漏水開始点34)となる。それゆえ、フランジ部の接地面12aに設けられる2本の水膨張ゴム13,14については、可撓部11(付け根11a)に近い方の水膨張ゴム(第1の水膨張ゴム)13を膨張速度の大きいものとし、可撓部11よりも遠い方の水膨張ゴム(第2の水膨張ゴム)14を膨張速度の小さいものとするのが好ましい。水膨張ゴム13,14を上記のとおり配置することで、止水ゴム10の初期の止水性、耐久性および長期にわたる止水性能を、いずれもより一層優れたものとすることができる。
【0020】
止水ゴム10のフランジ部12は、図2に示すように、コンクリート構造体30の表面に当接させた状態で、コンクリート構造体30中に埋設されたアンカーボルト35、押え板36およびナット37によって強固に固定される。
フランジ部12の接地面12aには、止水ゴム10の長手方向xに延びる凸条(リブ)を設けてもよい。この凸条は、フランジ部12を押え板36、アンカーボルト35等でコンクリート構造体に圧接したときに押し潰された状態となり、その結果、フランジ部の設置面12aとコンクリート構造体との間での漏水の防止効果をより一層高めることができる。
【0021】
〔止水板の実施形態〕
本発明に係る止水材のうち、いわゆる止水板についての一実施形態を図3に示し、図3に示す止水板20を用いた止水構造の一例を図4に示す。
止水板20は、断面形状が略O字状である可撓部21と、略板状で一対のフランジ部(連結部)22とを備えるものであって、コンクリート構造体30の継ぎ目(連結部)31に可撓部21を配置し、当該継ぎ目31を挟んで相対するコンクリート構造体30のそれぞれにフランジ部22を埋設した状態で用いられる。なお、図3に示す止水板20は、コンクリート構造体30から引抜きにくくするために、フランジ部22の各端部に止水板20の長手方向xに延びる凸条(突縁部)24が設けられている。図4中、符号32は目地材を示す。
【0022】
止水板は、それぞれのフランジ部22についてその表面に2本ずつ、図3に示す止水板20では、それぞれのフランジ部22についてその表面22aと凸条24部とに、止水板20の長手方向xに延びる水膨張ゴム23,24aが設けられている。
図3に示す止水板20では、図4に示す止水構造より明らかなように、フランジ部の表面22a,22bのうち、地盤32側に配置される方の表面22aであって、かつ可撓部21に近い箇所が、地盤32からの漏水の起点となる箇所(漏水開始点34)となる。それゆえ、図3および図4に示す止水板20の場合は、2本の水膨張ゴムのうち、フランジ部の表面22aに設けられる水膨張ゴム(第1の水膨張ゴム)23を膨張速度の大きいものとし、凸条24に設けられる水膨張ゴム(第2の水膨張ゴム)24aを膨張速度の小さいものとするのが好ましい。水膨張ゴム23,24aを上記のとおり配置することで、止水板20の初期の止水性、耐久性および長期にわたる止水性能を、いずれもより一層優れたものとすることができる。
なお、止水板20における水膨張ゴムのは一例は、図3に示すものに限定されるものではなく、例えば凸条24部分に膨張速度の大きい第1の水膨張ゴムを配置し、フランジ部の他方の表面22bに膨張速度の小さい第2の水膨張ゴムを配置してもよい。
【0023】
〔止水材本体〕
本発明の止水材は、耐候性、耐老化性、耐オゾン性、弾力性等の各特性に優れたものであるのが好ましい。具体的には、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)等のゴムを用いて形成するのが好ましい。
【0024】
止水材の内部には、耐圧性能を向上させるという観点から、補強基布を入れることができる。この場合、止水材に亀裂が生じた時に亀裂の伝搬を阻止し、止水性能の低下を抑制することができる。
特に、止水ゴムや止水板のフランジ部には、その内部に複数枚の補強基布を配置するのが好ましい。この場合、例えば止水材を枠体に固定するのに用いられるボルトで締着部に破損等が、十分な抵抗力を発揮させることができる。
補強基布の配向は、特に限定されるものではないが、クロス構造とするよりも、ラジアル構造とするのが好ましい。この場合、剪断変形がかかった時にシワ等が発生することが少なく、耐久性に優れるという利点が得られる。
【0025】
〔水膨張ゴム〕
水膨張ゴムは、例えば基材となるゴム(弾性体)に吸水性ポリマーを練り込んで、圧縮、加硫等の(成形)処理を施すことによって得られる。
基材となるゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。また、上記例示のゴムに代えて、エラストマー、樹脂材料等の弾性体を用いることもできる。
【0026】
吸水性ポリマーとしては、例えばポリアクリル酸ソーダ(高分子電解質)等が挙げられる。
水膨張ゴムの水膨張速度は、例えば基材となるゴムに対する吸水性ポリマーの配合比率等によって適宜調節することができる。
【0027】
本発明に用いられる水膨張ゴムのうち水膨張速度の大きいものとしては、前述のように、浸水後3〜7日、好ましくは3〜6日で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するものであるのが好ましい。
水膨張速度が大きい方の水膨張ゴムとして、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を超えるものを用いたときには、止水材の初期止水性能が低下する。逆に、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を下回る水膨張ゴムについては、それを得るのが困難であったり、たとえそのような水膨張ゴムが得られたとしても十分な強度を得ることができないといったおそれが極めて高い。それゆえ、止水材の耐久性や止水機能の保持性が低下するといった問題を生じる。
【0028】
一方、本発明に用いられる水膨張ゴムのうち水膨張速度の小さいものとしては、前述のように、浸水後15日〜2月、好ましくは15日〜1月で、(i) 膨張平衡に達するかまたは(ii)膨張率が300%に達するものであるのが好ましい。
水膨張速度が小さい方の水膨張ゴムとして、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を下回るものを用いたときには、水膨張速度が大きい方の水膨張ゴムとの水膨張速度の差異が極めて小さなものとなる。それゆえ、止水ゴムの初期の止水性を良好なものとし、しかも耐久性および長期にわたる止水性能を優れたものにする、という本発明の作用効果が得られなくなるおそれが高い。逆に、膨張平衡に達するのに要する日数や膨張率が300%に達するのに要する日数が上記の期間を超えるものを用いたときは、止水機能を長期にわたって維持できなくなるおそれが高い。
【0029】
〔止水材の製造方法〕
本発明の止水材は、所定の寸法に成型された未加硫ゴム、水膨張ゴム等を金型内に仕込んだ(配置した)後、加圧および加硫を施すこと(圧縮加硫成型)によって得られる。
水膨張ゴムは、あらかじめ止水材の本体を形成した上で、接着等の手段によってフランジ部等に配置してもよい。
【0030】
止水材本体を形成するゴム材料の加硫条件については特に限定されるものではなく、使用するゴム材料の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常、130〜160℃の温度範囲で、加圧面圧は40〜60kgf/cm2 の範囲で、それぞれ設定すればよい。加硫時間は、使用するゴム材料、加硫系配合剤の種類等に応じて、さらには止水材の形状に応じて、適宜設定すればよい。
【0031】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を説明する。
〔可撓ゴム継手の製造〕
実施例1
図1に示す可撓ゴム継手10のうち、断面形状が略U字状である可撓部11と、板状で一対のフランジ部(締着部)12とに対応する部分を形成すべく、天然ゴムを主成分とするゴム組成物を金型内に敷き詰めて、150℃で60分間加硫した。可撓部11およびフランジ部12内には綿製の補強基布を配置した。
次いで、水膨張ゴム13,14を個々に成形した後、これらを一対のフランジ部12の接地面12a側にそれぞれ加硫接着して、図1に示す可撓ゴム継手10を得た。
【0032】
2つの水膨張ゴム13,14には、互いに膨張速度が異なるものを使用した。実施例1では、可撓部11の付け根11a側に近い方の水膨張ゴム13における膨張速度を、他方の水膨張ゴム14よりも大きく設定した。付け根11a側に近い方の水膨張ゴム13には、浸水後7日で膨張率が300%に達して、膨張平衡に達するものを使用した。また、付け根11a側から遠い方の水膨張ゴム14には、浸水後30日で膨張率が300%に達して、膨張平衡に達するものを使用した。
【0033】
なお、上記実施例では、可撓部11と一対のフランジ部11とに対応する部分と、水膨張ゴム13,14に対応する部分とをそれぞれ別々に成形して、これらを加硫接着によって一体化したが、金型内にそれぞれの部分を形成するゴム組成物を配置した上で、一度に加硫成形することによって、可撓ゴム継手10全体を一体成形することも可能である。
【0034】
こうして得られた可撓ゴム継手10は、フランジ部12と水膨張ゴム(未膨張状態)13,14との厚みが合計20mm、水膨張ゴム13,14自体の厚み(未膨張状態)がそれぞれ4mmであった。水膨張ゴム13の幅は20mm、水膨張ゴム14の幅は60mmであった。可撓ゴム継手10の長手方向xの長さは600mmであった。
【0035】
〔可撓ゴム継手の物性〕
上記実施例1で得た可撓ゴム継手10を図7に示す鋼製の筐体中41に配置し、コンクリート67を打設することによって、図8(a),(b) に示す止水テスト用の試験治具40を得た。なお、図6中、符号64はアンカーボルトを、符号63は押え板を、符号65は目地材を、それぞれ示す。
次いで、可撓ゴム継手10の湾曲部11と目地材65との間の空間81内に水圧を負荷して、可撓ゴム継手10の止水性を評価するための試験を行った。
【0036】
地下構造物用の(特に、開削トンネルが埋設される深さで用いる)可撓ゴム継手には、一般に0.1〜0.15MPa程度の耐水圧が必要とされるが、上記実施例1の可撓ゴム継手では、0.2MPaの水圧を負荷したときにも漏水を生じることがなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る止水材の一実施形態を示す図であって、(a) はその斜視図、(b) はその断面図である。
【図2】図1に示す止水材の使用状態の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る止水材の他の実施形態を示す図であって、(a) はその斜視図、(b) はその断面図である。
【図4】図3に示す止水材の使用状態の一例を示す断面図である。
【図5】従来の止水ゴムの一例を示す断面図である。
【図6】従来の止水板の一例を示す断面図である。
【図7】(a) は実施例の止水テストに使用した試験治具を示す斜視図であって、(b) はその断面図である。
【符号の説明】
10 止水ゴム
11,21 可撓部
12,22 フランジ部(締着部)
13,23 (第1の)水膨張ゴム
14 (第2の)水膨張ゴム
20 止水板
24 凸条
24a (第2の)水膨張ゴム
30 コンクリート構造体
31 継ぎ目(連結部)
34 漏水開始点
Claims (6)
- コンクリート構造体の継ぎ目に沿って配置される止水材であって、
コンクリート構造体間の変位に応じて変形する可撓部と、当該可撓部の長手方向に連なって、隣接するコンクリート構造体のそれぞれに固定される一対のフランジ部と、当該フランジ部のコンクリート構造体との接触面にあって止水材の長手方向に延びる筋状または帯状の水膨張ゴムと、を備え、
当該水膨張ゴムが、それぞれのフランジ部につき少なくとも2本ずつ設けられ、かつ同一のフランジ部に設けられている水膨張ゴムのうちの2本が、互いに異なる膨張速度を有するものである止水材。 - 同一のフランジ部に設けられている2本の水膨張ゴムのうち、水膨張速度が大きい方の水膨張ゴムを、止水材の漏水開始点から近い方に配置してなる請求項1記載の止水材。
- 同一のフランジ部に設けられている2本の水膨張ゴムのうち、水膨張速度の大きい方の水膨張ゴムが浸水後3〜7日で膨張平衡に達するものであり、かつ水膨張速度の小さい方の水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で膨張平衡に達するものである請求項1または2記載の止水材。
- 同一のフランジ部に設けられている2本の水膨張ゴムのうち、水膨張速度の大きい方の水膨張ゴムが浸水後3〜7日で膨張率が300%に達するものであり、かつ水膨張速度の小さい方の水膨張ゴムが浸水後15日〜2月で膨張率が300%に達するものである請求項1または2記載の止水材。
- 上記可撓部の断面形状が略U字状、略W字状または波状であり、
上記一対のフランジ部が略板状で、上記可撓部のそれぞれの裾部から長手方向に連なり、かつ隣接するコンクリート構造体のそれぞれの表面に付設されて止水材全体をコンクリート構造体間に架設するものであり、
上記水膨張ゴムが、上記フランジ部のコンクリート構造体への接地面に設けられてなるものである
請求項1〜4のいずれかに記載の止水材。 - 上記可撓部が略筒状であり、
上記一対のフランジ部が略板状で、上記可撓部の長手方向に連なり、かつ隣接するコンクリート構造体のそれぞれの内部に埋設されて止水材全体をコンクリート構造体間に架設するものであり、
上記水膨張ゴムが、上記フランジ部の表面に配置されて上記可撓部の長手方向に連なるものである
請求項1〜4のいずれかに記載の止水材。
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