JP2004168974A - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】500℃近辺におけるハンダディップ処理においてもハンダ付着が少なく良好な外観を有し、かつアンモニアガスによる電気的接点の腐食を低減できる成形体を成形できるフェノール樹脂成形材料及びこれを成形してなるトランスボビンを提供する。
【解決手段】(a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及び(b)ゼオライトを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、さらに、ガス吸収性を有する有機基材として、木紛、パルプ、布粉砕粉、紙粉砕粉などの植物繊維あるいはその粉砕物、椰子ガラ粉、モミガラ粉などの植物果殻粉砕物を用いることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及び(b)ゼオライトを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、さらに、ガス吸収性を有する有機基材として、木紛、パルプ、布粉砕粉、紙粉砕粉などの植物繊維あるいはその粉砕物、椰子ガラ粉、モミガラ粉などの植物果殻粉砕物を用いることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノール樹脂成形材料及びこれを成形してなるトランスボビンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランスはあらゆる種類の電気製品に使用されているが、近年はパソコン、携帯電話の普及に伴い急激にその市場は拡大している。テレビを中心とした家電製品には比較的大型のトランスが使用されており、ボビン素材としてはフェノール樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の成形材料が使用されている。また、通信機器を始めとしたチップ化したトランスを使用する製品群においては、ボビン素材としてフェノール樹脂、LCP(全芳香族ポリエステル樹脂、通称、液晶ポリマー)の成形材料等が使用されている。ここで、フェノール樹脂は耐熱性、低反り性が、PET、PBT、LCPはボビンのツバ強度が優れていることが特徴である。
【0003】
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂の成形体は元来、耐熱性、寸法精度に優れ、反りなどの変形も起こしにくいため大型トランスボビンからチップ化されたトランスボビンまで幅広く使用されている。トランスを製造する工程の中には、巻き線皮膜を溶融してボビンのピンにハンダ付けする「ハンダディップ」工程があるが、420℃から500℃の高温のハンダに2〜5秒浸漬するため、PET,PBT、LCPといった樹脂では溶融してしまうことから外観劣化が大きい。そのため本用途にはフェノール樹脂が好適に使用されてきた背景がある。
【0004】
しかし、フェノール樹脂を用いた場合でも、成形材料の配合によってはハンダディップ工程において成形体の内部からガスが発生し、これが成形体表面の平滑性を低下させることにより、ハンダが成形体表面に付着し、成形体の仕上げに工数を要するという問題があった。
また、フェノール樹脂は一般にノボラック樹脂とレゾール樹脂に大別されるが、ノボラック樹脂は硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用し、この硬化剤が分解してアンモニアガスの発生源となり、電気的接点の腐食が生じる等の問題が発生するため電子部品には適用しにくかった。したがって、これらの用途にはノボラック樹脂の方がコストパフォーマンスに優れるにも関わらず、レゾール樹脂が使用されてきた。
【0005】
一方、ゼオライトに関しては、銀等の金属含有ゼオライトを抗菌剤としてフェノール樹脂成形材料に使用することが下記の特許文献1,2に記載されているが、フェノール樹脂成形材料にゼオライトを使用してその成形体から発生するガスを吸収させることについては、知られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平07−109404号公報
【特許文献2】
特開平10−226755号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、500℃近辺におけるハンダディップ処理においてもハンダ付着が少なく良好な外観を有し、かつアンモニアガスによる電気的接点の腐食を低減できる成形体を成形できるフェノール樹脂成形材料及びこれを成形してなるトランスボビンを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(5)により達成される。
(1) (a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及び(b)ゼオライトを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
(2) さらに、(c)有機基材の少なくとも一部として、植物繊維、その粉砕物及び植物果殻粉砕物から選ばれた1種以上を含有する前記(1)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(3) 成形材料全体に対して、
(a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを合わせて30〜60重量%、
(b)ゼオライト10〜30重量%、
を含有する前記(1)または(2)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(4) 成形材料全体に対して、さらに
(c)有機基材を10〜40重量%、
を含有する前記(3)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(5) 前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の成形材料を成形してなるトランスボビン。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のフェノール樹脂成形材料及びトランスボビンについて説明する。
本発明のフェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)は、(a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及び(b)ゼオライトを含有することを特徴とする。また、本発明のトランスボビンは、上記本発明の成形材料を成形してなるものである。
【0010】
まず、本発明の成形材料について説明する。
本発明の成形材料に用いられるフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂としては特に限定されないが、フェノール類とアルデヒド類とを、酸性触媒の存在下で反応させて得られるものであり、その性状については特に限定されるものではない。
本発明の成形材料に用いられるノボラック型フェノール樹脂には、通常と同様に硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンが配合される。ヘキサメチレンテトラミンの配合量としては特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、10〜25重量部であることが好ましい。また、フェノール樹脂の一部としてレゾール型フェノール樹脂を使用することもできる。その量は、通常、フェノール樹脂全体の30重量%以下である。
【0011】
本発明の成形材料に用いられるノボラック型フェノール樹脂の配合量としては特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを合わせて、成形材料全体に対して30〜60重量%であることが好ましい。さらに好ましくは40〜55重量%である。これにより、成形材料に良好な流動性を付与することができる。含有量が前記下限値未満では、流動性が小さいため成形性が低下することがあり、前記上限値を越えると、成形材料が低粘度化するため成形しにくくなることがある。
【0012】
本発明の成形材料には、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを配合するが、この他にも、必要に応じて硬化助剤として酸化マグネシウムあるいは水酸化カルシウムをノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して15重量部以下の割合で用いることができる。なお、水酸化カルシウムは500℃以下で分解するので、添加量はできるだけ少ない方が好ましい。
【0013】
本発明の成形材料には、ゼオライトを配合することを特徴とする。これにより、成形体の耐熱性や機械的強度などを維持して、ガス吸収効果を付与することができる。
本発明で用いられるゼオライトは、ケイ酸・アルミン酸の金属塩であり吸着水を有し、また、このような構造が陽イオン交換性を有している。これらの特性が極性のガス体を吸収する性質を発現する要因となる。この性質を利用して、高温で発生する反応ガスを成形体で吸収させ、成形体表面の外観の低下を抑えることができる。また、アンモニアガスを吸着させることでアンモニアガスに起因する金属やプラスチック絶縁体の腐食を防ぐことができる。
ゼオライトは、天然物と化学反応によって合成する合成物があるが、本発明の成形材料においてはいずれも使用することができ、特に限定されない。
【0014】
本発明の成形材料におけるゼオライトの配合量は特に限定されないが、成形材料全体に対して10〜30重量%配合することが好ましい。さらに好ましくは15〜25重量%である。これにより、成形材料の成形性などを維持することができ、かつ、充分なガス吸収効果を付与することができる。配合量が前記下限値未満では、配合する効果が充分でないことがあり、成形体をハンダディップなどの高温で処理すると外観にフクレやクラックを生じる場合がある。また、前記上限値より多いと、成形材料の成形時の流動性が低下することがある。
【0015】
本発明の成形材料には、上記のゼオライトのほかにも、無機基材を配合することができる。これにより、耐熱性、寸法精度を向上させることができる。
ゼオライト以外の無機基材としては特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、未焼成クレー等が挙げられる。これらを単独又は二種類以上を併用して用いることができる。上記無機基材の配合量としては特に限定されないが、成形材料全体に対して、20重量%以下とすることが好ましい。
なお、ここで、水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,未焼成クレー等のように、500℃以下で結晶水を有する無機基材は、ハンダディップ処理時に水を解離するため、外観の劣化を起こすことがあるので、難燃性を向上させる目的がある場合などを除いては、その配合量はできるだけ少量にすることが好ましい。
【0016】
本発明の成形材料においては、有機基材を配合することができる。これにより、溶融時の粘度を調整し成形性を向上させることができる。有機基材としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂硬化物の粉砕物、紙繊維基材にフェノール樹脂やメラミン樹脂などを含浸させた積層板や化粧板の粉砕物、あるいは、木紛、パルプ、布粉砕粉、紙粉砕粉などの植物繊維またはその粉砕物、椰子ガラ粉、モミガラ粉などの植物果殻粉砕物等が挙げられる。
上記有機基材の配合量としては特に限定されないが、成形材料全体に対して、10〜40重量%であることが好ましい。さらに好ましくは15〜30重量%である。これにより、熱溶融時に適度な流動性を得ることができる。
【0017】
上記の有機基材としては特に限定されないが、ガス吸収性を有する有機基材を含有するものであることが好ましい。かかる有機基材は、上記ゼオライトと同様に、成形体の高温ハンダディップ処理時、成形体内部から発生する分解ガスを基材内部に取り込む性質があり、処理後の外観の低下を抑える効果を有する。このようなガス吸収性を有する有機基材としては、木紛、パルプ、布粉砕粉、紙粉砕粉などの植物繊維あるいはその粉砕物、椰子ガラ粉、モミガラ粉などの植物果殻粉砕物が挙げられる。
【0018】
さらに、ガス吸収性を有する有機基材の配合量としては特に限定されないが、成形材料全体に対して、5〜40重量%であることが好ましい。さらに好ましくは15〜30重量%である。これにより、ガス吸収効果を向上させることができる。配合量が前記下限値未満では、配合する効果が充分でないことがあり、成形体の高温ハンダディップ処理時、外観にフクレやクラックを生じる場合がある。また、前記上限値を越えると、流動性が小さくなるため成形性が低下することがある。
【0019】
以上に述べたように、本発明の成形材料には、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及びゼオライトを含有することを特徴とする。これにより、そのガス吸収効果により、高温ハンダディップ処理時の、成形体表面の外観の低下を抑えることができる。また、硬化剤として配合するヘキサメチレンテトラミンが分解して発生するアンモニアガスを吸収することにより、電気的接点の腐食を防止することができる。
さらに、ゼオライトとともに好ましくはガス吸収性を有する有機基材を用いることにより、ガス吸収効果を高めることができる。
【0020】
本発明の成形材料を製造する方法は、通常の方法が採用される。すなわち、ノボラック型フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、及びゼオライト、好ましくはガス吸収性を有する有機基材を配合し、さらに必要に応じて他の無機基材、有機基材、硬化助剤、顔料、離型剤を加えて混合した後、加熱ロールなどの装置により溶融混練し、冷却後粉砕または造粒して製造する。
【0021】
次に、本発明のトランスボビンについて説明する。
本発明のトランスボビンは、上記の本発明の成形材料を成形してなるものである。
ここで成形方法としては特に限定されないが、射出成形、移送成形、圧縮成形等の方法を用いることができる、例えば射出成形法を用いた場合は、下記の条件で成形することができる。
(1)金型温度 :160〜185℃
(2)シリンダー温度 :前部80〜90℃、後部40〜50℃
(3)射出圧力 :実効圧 1200kg/cm2
(4)硬化時間 :20〜70秒
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
1.成形材料の製造
表1に示した配合からなる材料を90℃の加熱ロールで6分間混練した。これを冷却後、粉砕して成形材料を得た。表1に示す配合量は全て重量%を表す。
【0023】
【表1】
【0024】
2.トランスボビンの製造
実施例及び比較例で得られた成形材料を、下記の条件で成形し、トランスボビンを得た。
(1)成形機 東芝製 IR−100
(2)金型温度 175℃
(3)シリンダー温度 先端90℃/後45℃
(4)射出圧力、速度 充填時間2秒間になるように設定
(5)硬化時間 20秒
(6)射出量 20g/1ショット
(7)取り数 14ヶ/1ショット
(8)成形体形状 ツバ部12×13mm 高さ15mmのコイルボビン
【0025】
3.評価
上記方法で得られたトランスボビンについて、特性評価を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
【0026】
4.評価方法
(1)高温ハンダ特性
500℃のハンダ槽に5秒間ディップ処理した後の、ディップ処理面のフクレ、クラック、反りの発生状況を目視で判定した。
(2)ウレタン被膜絶縁特性保持率(発生ガスの影響による)
実施例及び比較例で得られた成形材料を、上記に準じた射出成形法(但し、取り数は3コ/1ショットである)により成形し、12.7mm×1mm×127mmの成形体(テストピース)を得た。
容器にウレタン被膜された電線2本を撚ったものと、上記テストピース3枚を入れて密閉した。これを150℃で2週間放置後、2本の電線間の絶縁破壊強さを、JISK 6911で規定された「短時間法」に従って昇圧して測定し、処理前の絶縁破壊強さに対する保持率を算出した。
【0027】
実施例1は、無機基材としてゼオライト、焼成クレー、有機基材として木粉を用いており、実施例2は無機基材としてゼオライトのみを用いた。この結果、500℃ハンダ浸漬処理後の外観はいずれも良好であり、ウレタン被膜の絶縁特性保持率も高かった。一方、比較例1はゼオライトを用いておらず、ハンダ浸漬処理後の成形体にクラックが多く発生している。また、ウレタン被膜の絶縁特性の低下も著しい。
【0028】
【発明の効果】
本発明のフェノール樹脂成形材料は、無機基材としてゼオライトを使用し、有機基材と組み合わせることでガス吸収効果、特にアンモニアガスの吸着を狙ったものであり、本発明を用いたトランスボビン成形体では、500℃近辺におけるハンダディップ処理を行っても外観にフクレ、クラック等の異常が無く、かつ電気的接点の腐食を生じない成形体を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノール樹脂成形材料及びこれを成形してなるトランスボビンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランスはあらゆる種類の電気製品に使用されているが、近年はパソコン、携帯電話の普及に伴い急激にその市場は拡大している。テレビを中心とした家電製品には比較的大型のトランスが使用されており、ボビン素材としてはフェノール樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の成形材料が使用されている。また、通信機器を始めとしたチップ化したトランスを使用する製品群においては、ボビン素材としてフェノール樹脂、LCP(全芳香族ポリエステル樹脂、通称、液晶ポリマー)の成形材料等が使用されている。ここで、フェノール樹脂は耐熱性、低反り性が、PET、PBT、LCPはボビンのツバ強度が優れていることが特徴である。
【0003】
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂の成形体は元来、耐熱性、寸法精度に優れ、反りなどの変形も起こしにくいため大型トランスボビンからチップ化されたトランスボビンまで幅広く使用されている。トランスを製造する工程の中には、巻き線皮膜を溶融してボビンのピンにハンダ付けする「ハンダディップ」工程があるが、420℃から500℃の高温のハンダに2〜5秒浸漬するため、PET,PBT、LCPといった樹脂では溶融してしまうことから外観劣化が大きい。そのため本用途にはフェノール樹脂が好適に使用されてきた背景がある。
【0004】
しかし、フェノール樹脂を用いた場合でも、成形材料の配合によってはハンダディップ工程において成形体の内部からガスが発生し、これが成形体表面の平滑性を低下させることにより、ハンダが成形体表面に付着し、成形体の仕上げに工数を要するという問題があった。
また、フェノール樹脂は一般にノボラック樹脂とレゾール樹脂に大別されるが、ノボラック樹脂は硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用し、この硬化剤が分解してアンモニアガスの発生源となり、電気的接点の腐食が生じる等の問題が発生するため電子部品には適用しにくかった。したがって、これらの用途にはノボラック樹脂の方がコストパフォーマンスに優れるにも関わらず、レゾール樹脂が使用されてきた。
【0005】
一方、ゼオライトに関しては、銀等の金属含有ゼオライトを抗菌剤としてフェノール樹脂成形材料に使用することが下記の特許文献1,2に記載されているが、フェノール樹脂成形材料にゼオライトを使用してその成形体から発生するガスを吸収させることについては、知られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平07−109404号公報
【特許文献2】
特開平10−226755号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、500℃近辺におけるハンダディップ処理においてもハンダ付着が少なく良好な外観を有し、かつアンモニアガスによる電気的接点の腐食を低減できる成形体を成形できるフェノール樹脂成形材料及びこれを成形してなるトランスボビンを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(5)により達成される。
(1) (a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及び(b)ゼオライトを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
(2) さらに、(c)有機基材の少なくとも一部として、植物繊維、その粉砕物及び植物果殻粉砕物から選ばれた1種以上を含有する前記(1)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(3) 成形材料全体に対して、
(a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを合わせて30〜60重量%、
(b)ゼオライト10〜30重量%、
を含有する前記(1)または(2)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(4) 成形材料全体に対して、さらに
(c)有機基材を10〜40重量%、
を含有する前記(3)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(5) 前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の成形材料を成形してなるトランスボビン。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のフェノール樹脂成形材料及びトランスボビンについて説明する。
本発明のフェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)は、(a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及び(b)ゼオライトを含有することを特徴とする。また、本発明のトランスボビンは、上記本発明の成形材料を成形してなるものである。
【0010】
まず、本発明の成形材料について説明する。
本発明の成形材料に用いられるフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂としては特に限定されないが、フェノール類とアルデヒド類とを、酸性触媒の存在下で反応させて得られるものであり、その性状については特に限定されるものではない。
本発明の成形材料に用いられるノボラック型フェノール樹脂には、通常と同様に硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンが配合される。ヘキサメチレンテトラミンの配合量としては特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、10〜25重量部であることが好ましい。また、フェノール樹脂の一部としてレゾール型フェノール樹脂を使用することもできる。その量は、通常、フェノール樹脂全体の30重量%以下である。
【0011】
本発明の成形材料に用いられるノボラック型フェノール樹脂の配合量としては特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを合わせて、成形材料全体に対して30〜60重量%であることが好ましい。さらに好ましくは40〜55重量%である。これにより、成形材料に良好な流動性を付与することができる。含有量が前記下限値未満では、流動性が小さいため成形性が低下することがあり、前記上限値を越えると、成形材料が低粘度化するため成形しにくくなることがある。
【0012】
本発明の成形材料には、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを配合するが、この他にも、必要に応じて硬化助剤として酸化マグネシウムあるいは水酸化カルシウムをノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して15重量部以下の割合で用いることができる。なお、水酸化カルシウムは500℃以下で分解するので、添加量はできるだけ少ない方が好ましい。
【0013】
本発明の成形材料には、ゼオライトを配合することを特徴とする。これにより、成形体の耐熱性や機械的強度などを維持して、ガス吸収効果を付与することができる。
本発明で用いられるゼオライトは、ケイ酸・アルミン酸の金属塩であり吸着水を有し、また、このような構造が陽イオン交換性を有している。これらの特性が極性のガス体を吸収する性質を発現する要因となる。この性質を利用して、高温で発生する反応ガスを成形体で吸収させ、成形体表面の外観の低下を抑えることができる。また、アンモニアガスを吸着させることでアンモニアガスに起因する金属やプラスチック絶縁体の腐食を防ぐことができる。
ゼオライトは、天然物と化学反応によって合成する合成物があるが、本発明の成形材料においてはいずれも使用することができ、特に限定されない。
【0014】
本発明の成形材料におけるゼオライトの配合量は特に限定されないが、成形材料全体に対して10〜30重量%配合することが好ましい。さらに好ましくは15〜25重量%である。これにより、成形材料の成形性などを維持することができ、かつ、充分なガス吸収効果を付与することができる。配合量が前記下限値未満では、配合する効果が充分でないことがあり、成形体をハンダディップなどの高温で処理すると外観にフクレやクラックを生じる場合がある。また、前記上限値より多いと、成形材料の成形時の流動性が低下することがある。
【0015】
本発明の成形材料には、上記のゼオライトのほかにも、無機基材を配合することができる。これにより、耐熱性、寸法精度を向上させることができる。
ゼオライト以外の無機基材としては特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、未焼成クレー等が挙げられる。これらを単独又は二種類以上を併用して用いることができる。上記無機基材の配合量としては特に限定されないが、成形材料全体に対して、20重量%以下とすることが好ましい。
なお、ここで、水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,未焼成クレー等のように、500℃以下で結晶水を有する無機基材は、ハンダディップ処理時に水を解離するため、外観の劣化を起こすことがあるので、難燃性を向上させる目的がある場合などを除いては、その配合量はできるだけ少量にすることが好ましい。
【0016】
本発明の成形材料においては、有機基材を配合することができる。これにより、溶融時の粘度を調整し成形性を向上させることができる。有機基材としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂硬化物の粉砕物、紙繊維基材にフェノール樹脂やメラミン樹脂などを含浸させた積層板や化粧板の粉砕物、あるいは、木紛、パルプ、布粉砕粉、紙粉砕粉などの植物繊維またはその粉砕物、椰子ガラ粉、モミガラ粉などの植物果殻粉砕物等が挙げられる。
上記有機基材の配合量としては特に限定されないが、成形材料全体に対して、10〜40重量%であることが好ましい。さらに好ましくは15〜30重量%である。これにより、熱溶融時に適度な流動性を得ることができる。
【0017】
上記の有機基材としては特に限定されないが、ガス吸収性を有する有機基材を含有するものであることが好ましい。かかる有機基材は、上記ゼオライトと同様に、成形体の高温ハンダディップ処理時、成形体内部から発生する分解ガスを基材内部に取り込む性質があり、処理後の外観の低下を抑える効果を有する。このようなガス吸収性を有する有機基材としては、木紛、パルプ、布粉砕粉、紙粉砕粉などの植物繊維あるいはその粉砕物、椰子ガラ粉、モミガラ粉などの植物果殻粉砕物が挙げられる。
【0018】
さらに、ガス吸収性を有する有機基材の配合量としては特に限定されないが、成形材料全体に対して、5〜40重量%であることが好ましい。さらに好ましくは15〜30重量%である。これにより、ガス吸収効果を向上させることができる。配合量が前記下限値未満では、配合する効果が充分でないことがあり、成形体の高温ハンダディップ処理時、外観にフクレやクラックを生じる場合がある。また、前記上限値を越えると、流動性が小さくなるため成形性が低下することがある。
【0019】
以上に述べたように、本発明の成形材料には、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及びゼオライトを含有することを特徴とする。これにより、そのガス吸収効果により、高温ハンダディップ処理時の、成形体表面の外観の低下を抑えることができる。また、硬化剤として配合するヘキサメチレンテトラミンが分解して発生するアンモニアガスを吸収することにより、電気的接点の腐食を防止することができる。
さらに、ゼオライトとともに好ましくはガス吸収性を有する有機基材を用いることにより、ガス吸収効果を高めることができる。
【0020】
本発明の成形材料を製造する方法は、通常の方法が採用される。すなわち、ノボラック型フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、及びゼオライト、好ましくはガス吸収性を有する有機基材を配合し、さらに必要に応じて他の無機基材、有機基材、硬化助剤、顔料、離型剤を加えて混合した後、加熱ロールなどの装置により溶融混練し、冷却後粉砕または造粒して製造する。
【0021】
次に、本発明のトランスボビンについて説明する。
本発明のトランスボビンは、上記の本発明の成形材料を成形してなるものである。
ここで成形方法としては特に限定されないが、射出成形、移送成形、圧縮成形等の方法を用いることができる、例えば射出成形法を用いた場合は、下記の条件で成形することができる。
(1)金型温度 :160〜185℃
(2)シリンダー温度 :前部80〜90℃、後部40〜50℃
(3)射出圧力 :実効圧 1200kg/cm2
(4)硬化時間 :20〜70秒
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
1.成形材料の製造
表1に示した配合からなる材料を90℃の加熱ロールで6分間混練した。これを冷却後、粉砕して成形材料を得た。表1に示す配合量は全て重量%を表す。
【0023】
【表1】
【0024】
2.トランスボビンの製造
実施例及び比較例で得られた成形材料を、下記の条件で成形し、トランスボビンを得た。
(1)成形機 東芝製 IR−100
(2)金型温度 175℃
(3)シリンダー温度 先端90℃/後45℃
(4)射出圧力、速度 充填時間2秒間になるように設定
(5)硬化時間 20秒
(6)射出量 20g/1ショット
(7)取り数 14ヶ/1ショット
(8)成形体形状 ツバ部12×13mm 高さ15mmのコイルボビン
【0025】
3.評価
上記方法で得られたトランスボビンについて、特性評価を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
【0026】
4.評価方法
(1)高温ハンダ特性
500℃のハンダ槽に5秒間ディップ処理した後の、ディップ処理面のフクレ、クラック、反りの発生状況を目視で判定した。
(2)ウレタン被膜絶縁特性保持率(発生ガスの影響による)
実施例及び比較例で得られた成形材料を、上記に準じた射出成形法(但し、取り数は3コ/1ショットである)により成形し、12.7mm×1mm×127mmの成形体(テストピース)を得た。
容器にウレタン被膜された電線2本を撚ったものと、上記テストピース3枚を入れて密閉した。これを150℃で2週間放置後、2本の電線間の絶縁破壊強さを、JISK 6911で規定された「短時間法」に従って昇圧して測定し、処理前の絶縁破壊強さに対する保持率を算出した。
【0027】
実施例1は、無機基材としてゼオライト、焼成クレー、有機基材として木粉を用いており、実施例2は無機基材としてゼオライトのみを用いた。この結果、500℃ハンダ浸漬処理後の外観はいずれも良好であり、ウレタン被膜の絶縁特性保持率も高かった。一方、比較例1はゼオライトを用いておらず、ハンダ浸漬処理後の成形体にクラックが多く発生している。また、ウレタン被膜の絶縁特性の低下も著しい。
【0028】
【発明の効果】
本発明のフェノール樹脂成形材料は、無機基材としてゼオライトを使用し、有機基材と組み合わせることでガス吸収効果、特にアンモニアガスの吸着を狙ったものであり、本発明を用いたトランスボビン成形体では、500℃近辺におけるハンダディップ処理を行っても外観にフクレ、クラック等の異常が無く、かつ電気的接点の腐食を生じない成形体を得ることができる。
Claims (5)
- (a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン、及び(b)ゼオライトを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
- さらに、(c)有機基材の少なくとも一部として、植物繊維、その粉砕物及び植物果殻粉砕物から選ばれた1種以上を含有する請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
- 成形材料全体に対して、
(a)ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを合わせて30〜60重量%、
(b)ゼオライト10〜30重量%、
を含有する請求項1または2に記載のフェノール樹脂成形材料。 - 成形材料全体に対して、さらに
(c)有機基材を10〜40重量%、
を含有する請求項3に記載のフェノール樹脂成形材料。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の成形材料を成形してなるトランスボビン。
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
JP2009167306A (ja) * | 2008-01-17 | 2009-07-30 | Panasonic Corp | モールド材およびモールド成形体 |
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-
2002
- 2002-11-22 JP JP2002339234A patent/JP2004168974A/ja active Pending
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