JP2004142303A - 透視性装飾材の製造方法、透視性装飾材製造用転写シートの製造方法及び該転写シートを用いた透視性装飾材の製造方法 - Google Patents
透視性装飾材の製造方法、透視性装飾材製造用転写シートの製造方法及び該転写シートを用いた透視性装飾材の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】凹凸面への印刷工程が不要であるので印刷工程が安定化すると共に高精細の絵柄の付与も可能であり、剥離性の面からの微細パターン形状の制約もなく、転写層を微細パターン状に部分的に転写させる工程を伴わないので安定生産が可能な透視性装飾材の製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材1上に、少なくとも隠蔽層22を含む着色層2を剥離可能に設けた後、該着色層2上に硬化性樹脂からなる微細パターン層3を設け、これを硬化させる際の硬化収縮応力を利用して、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を、微細パターン層3と共に透明基材1上から剥離させて除去する。
【選択図】図1
【解決手段】透明基材1上に、少なくとも隠蔽層22を含む着色層2を剥離可能に設けた後、該着色層2上に硬化性樹脂からなる微細パターン層3を設け、これを硬化させる際の硬化収縮応力を利用して、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を、微細パターン層3と共に透明基材1上から剥離させて除去する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表側から見た時と裏側から見た時とで色彩外観が相違し、それぞれ反対側の色彩外観によって干渉されることなく手前側の色彩外観を観察可能であり、しかも、一方の側からは反対側を透視可能であるが他方の側からは反対側を透視不可能な一方向透視性を有していたり、及び/又は、反対側からの光源の有無あるいはその強弱により手前側の色彩外観が明瞭に観察可能な状態と実質的に観察不可能な状態との間で切り替え可能な表示切替機能を有していたりする、特殊な透視性装飾材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の透視性装飾材の製造方法としては従来、透明基材上にまず該透明基材から剥離可能な微細パターン状のマスク層を形成しておき、その上に隠蔽層や絵柄層等を含む複数層からなる着色層を形成し、しかる後に前記マスク層をその上の着色層と共に前記透明基材から剥離する方法が、最もよく知られている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特公平5−30189号公報
【特許文献2】
特公平5−32721号公報
【0004】
しかしこの方法は、微細パターン状のマスク層を透明基材上から容易に剥離可能とするために、マスク層には剥離力に耐える十分な強度を備えるべく一定以上のパターン幅や厚みが要求され、パターンの微細化が困難であるし、また、マスク層は連続パターンでなければならいので、パターン形状の選択幅も狭い。
【0005】
さらに、一定以上(通例、数十μm程度)の厚みを有する微細パターン状のマスク層が設けられた、実質的に表面凹凸状の透明基材上に、隠蔽層や絵柄層等の着色層を均一に(特に、マスク層が設けられていない箇所において、該マスク層の表面に対し凹部となっている透明基材の表面に欠陥無く)形成する必要があるが、この様な条件での隠蔽層や絵柄層の印刷は、特に網点で表現される絵柄層が高精細になるほど、凹部である透明基材の表面において印刷抜けを発生し易いので、表現可能な絵柄の精細度に限界があることなどの問題点がある。
【0006】
上記の問題点を解決可能な方法として、転写技術を応用した製造方法の提案も、既にいくつかなされている(下記特許文献3、4参照)。すなわち、離型性基材シート上に、隠蔽層や絵柄層などからなる着色層及び接着層からなる転写層を剥離可能に設けた転写シートを用意し、この転写シートから転写層を透明基材上に転写するに際し、透明基材と転写層との接着を阻害するための耐熱性樹脂または硬化性樹脂からなる接着阻害層を、予め転写シートの接着層面上若しくは透明基材上に微細パターン状に設けておくことにより、該接着阻害層が設けられていない箇所の透明基材上にのみ、転写シートから転写層が転写されるという原理によるものである。
【0007】
【特許文献3】
特開平6−87299号公報
【特許文献4】
特開平6−286395号公報
【0008】
これらの方法によれば確かに、隠蔽層や絵柄層などの印刷形成は、予め微細パターン状の接着阻害層が設けられていない、離型性基材シートの平滑な表面上に行われるのであるから、前記した方法におけるような高精細絵柄の印刷時の印刷抜けの問題もなければ、接着阻害層には剥離のための強度もパターンの連続性も特に要求されることがないので、前記した方法におけるようなマスク層の剥離性の面からのパターン形状の制約もない。
【0009】
しかし、上記接着阻害層は、転写層と透明基材との接着に対する阻害要因となっているとは言うものの、離型性基材シートの剥離の際に、転写層を透明基材から積極的に剥離させる機能を有している訳ではないので、接着阻害層に阻まれて透明基材と接着していない箇所の転写層が、隣接する接着阻害層のない領域における透明基材と接着した転写層につられて、一緒に離型性基材シートから剥離して透明基材側に転写してしまって、箔バリや抜け不良を発生する場合があり、この現象が製造される透視性装飾材の透視性を減殺する要因となるため、安定生産性に欠ける短所があった。
【0010】
また、上記の方法は転写シートを用いた転写法の利用を前提としているため、転写工程を経ることなく直接、透明基材への表面加工処理により透視性装飾材を得ることは不可能であるので、製造工程の設計上の制約が大きいことや、転写絵付け処理に適さない透明基材を用いた透視性装飾材は製造できないことなどの問題をも有するものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記の様な問題点を解決し、凹凸面への印刷工程が不要であるので印刷工程が安定化すると共に高精細の絵柄の付与も可能であり、剥離性の面からの微細パターン形状の制約もなく、転写層を微細パターン状に部分的に転写させる工程を伴わないので安定生産が可能な透視性装飾材の製造方法を提供するためになされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透明基材上に、該透明基材から剥離可能であり、且つ該透明基材からの剥離強度よりも大きな内部強度を有する、少なくとも隠蔽層を含む着色層を設け、次いで、該着色層上に、該着色層の内部強度よりも大きな該着色層との接着強度と、該着色層の内部強度よりは大きく該着色層との接着強度よりは小さい硬化時の硬化収縮応力とを有する硬化性樹脂からなる微細パターン層を形成し、しかる後に、該微細パターン層を構成する硬化性樹脂を硬化させることにより、該硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して、該微細パターン層が設けられた箇所における前記着色層を該微細パターン層とともに、前記透明基材から剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材の製造方法である。
【0013】
特に、上記の方法において、前記硬化性樹脂の硬化後のヤング率が50〜150GPaであり、硬化収縮率が5〜10%であり、該硬化性樹脂からなる微細パターン層の硬化後の厚みが5〜15μmであることを特徴とする透視性装飾材の製造方法である。
【0014】
また本発明は、離型性基材シート上に、該離型性基材シートから剥離可能であり、且つ該離型性基材シートからの剥離強度よりも大きな内部強度を有する、少なくとも隠蔽層を含む着色層を設け、次いで、該着色層上に、該着色層の内部強度よりも大きな該着色層との接着強度と、該着色層の内部強度よりは大きく該着色層との接着強度よりは小さい硬化時の硬化収縮応力とを有する硬化性樹脂からなる微細パターン層を形成し、しかる後に、該微細パターン層を構成する硬化性樹脂を硬化させることにより、該硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して、該微細パターン層が設けられた箇所における前記着色層を該微細パターン層とともに、前記離型性基材シートから剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材製造用転写シートの製造方法である。
【0015】
特に、上記の方法において、前記硬化性樹脂の硬化後のヤング率が50〜150GPaであり、硬化収縮率が5〜10%であり、該硬化性樹脂からなる微細パターン層の硬化後の厚みが5〜15μmであることを特徴とする透視性装飾材製造用転写シートの製造方法である。
【0016】
また本発明は、上記の透視性装飾材製造用転写シートの前記着色層面を透明基材上に重ね合わせ、前記着色層を前記透明基材の表面に接着させ、しかる後に、前記離型性基材シートを前記透明基材及び前記着色層から剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の透視性装飾材の製造方法及び透視性装飾材製造用転写シートの製造方法を図面に従って説明する。但し、本発明の透視性装飾材の製造方法における透明基材を離型性基材シートで置換すれば、透視性装飾材製造用転写シートを製造することができるので、以下の説明では特に両者を区別する必要がある場合を除き、透視性装飾材の製造方法についてのみ説明することにする。
【0018】
本発明の透視性装飾材の製造方法は、図1に示す様に、透明基材1上に、少なくとも隠蔽層22を含む着色層2を剥離可能に設けた後、該着色層2上に硬化性樹脂からなる微細パターン層3を設け、これを硬化させる際の硬化収縮応力を利用して、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を、微細パターン層3と共に透明基材1上から剥離させて除去することにより、該微細パターン層3が設けられていなかった箇所(微細パターン層3のネガパターン部分)にのみ選択的に、着色層2を透明基材1上に残すことからなる。
【0019】
そして、上記の工程により透視性装飾材を製造するためには、着色層2の透明基材1からの剥離強度T1と、着色層2の内部強度T2(但しこれは、着色層2が1層のみからなる場合はその内部凝集力を意味し、着色層2が多層からなる場合は各層の内部凝集力及び各層間の接着強度のうち最小のものを意味する)と、着色層2と微細パターン層3との接着強度T3と、微細パターン層3を構成する硬化性樹脂の硬化収縮応力T4とが、下記の関係式を満たしている必要がある。
【0020】
T1<T2<T4<T3
【0021】
何となれば、T2がT1より小さければ、着色層2を透明基材1から剥離させる際に着色層2が凝集破壊を発生してうまく剥離できず、T4がT2より小さければ、微細パターン層3を構成する硬化性樹脂を硬化させる際に発生する硬化収縮力T4では着色層2を破断させることができないために、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を、隣接する他の箇所(微細パターン層3が設けられていない箇所)における着色層2から分離して剥離除去することができず、T3がT4より小さければ、微細パターン層3を構成する硬化性樹脂を硬化させた際に、微細パターン層3が着色層2から剥離してしまい、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を透明基材1から剥離させて除去することができないからである。
【0022】
本発明において、透明基材1の材質は、少なくとも反対側が透視可能な程度の透明性を有するものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂や、ガラス、樹脂含浸透明紙等を挙げることができる。その形態は、例えばフィルム状、シート状、薄板状、厚板状等、用途により任意である。
【0023】
なお、透視性装飾材製造用転写シートにおける離型性基材シート1の材質は、必ずしも透明でなくてもよく、従来の各種の転写シートにおける基材シートとして用いられてきた任意の材質が使用可能である。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂フィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムや、それら熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした紙、アルミニウム箔等の金属箔等を使用することができる。その形態は、厚み0.01〜0.3mm程度のフィルム状乃至シート状とされるのが一般的である。
【0024】
透明基材1の表面には、着色層2の剥離性を向上させるための離型層(図示せず)を形成しても良い。この離型層としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を使用することができる。
【0025】
着色層2は、少なくとも1層の隠蔽層22を含むことが必要であるが、その他の層構成には一切制限はない。最も単純な構成は、1層の白色隠蔽層のみからなるもので、これは透視性装飾材の背面側に設置された図柄板を照明の明滅により観察可能な状態と観察不可能な状態との間で切り替える用途などに用いられる。白色隠蔽層のみでは隠蔽性が不十分な場合は、白色隠蔽層の背面側に黒色隠蔽層が設けられる。この構成の透視性装飾材は、白色隠蔽層側からは反対側が透視できないが、黒色隠蔽層側からは反対側を透視できる、一方向透視性機能を有する透視性装飾材としても用いられる。
【0026】
さらに、白色隠蔽層側に単なる透視防止機能だけでなく、任意の図柄の意匠を表示させたい場合には、白色隠蔽層上に絵柄層が設けられる。すなわち、着色層2は黒色隠蔽層/白色隠蔽層/絵柄層の3層構成となる。反対側にも別の図柄の意匠を表示させたい場合には、黒色隠蔽層の代わりに別の絵柄層を設けて、図1に示されている様に、第1絵柄層21/隠蔽層22/第2絵柄層23の3層構成とされる。
【0027】
ここで、隠蔽層22は白色隠蔽層とされるのが一般的であるが、第1絵柄層21及び第2絵柄層23に共通する背景色の隠蔽層としたり、第1絵柄層21の背景色の隠蔽層と第2絵柄層23の背景色の隠蔽層との2層から隠蔽層22を構成したりしてもよい。また、隠蔽層22の隠蔽性をさらに補強するために、図1における隠蔽層22を、白色(又は、第1絵柄層21の背景色)の隠蔽層/黒色隠蔽層/白色(又は、第2絵柄層23の背景色)の隠蔽層の3層から構成してもよい。その他所望により種々の変形が可能である。
【0028】
着色層2は、少なくとも隠蔽層22を含む着色された層を含んでいることが必要であるが、それらの他に着色されていない層を含んでいてもよい。例えば、着色層2全体を透明基材1から容易に剥離可能とするための剥離層(図示せず)が透明基材1との界面側に設けられていてもよい。
【0029】
また、透視性装飾材の場合には、隠蔽層22等の着色された層を保護するための表面保護層(図示せず)が、透明基材1とは反対側に設けられていてもよいし、透視性装飾材製造用転写シートの場合には、着色層2全体を被転写基材である透明基材と接着させるための接着剤層(図示せず)が離型性基材シート1とは反対側に、及び/又は、表面保護層(図示せず)が離型性基材シート1側に、それぞれ設けられていてもよい。勿論、必要に応じて、これら剥離層、表面保護層、接着剤層を適宜着色させることも任意である。
【0030】
着色層2の構成材料は、本発明において特に制限されるものではなく、従来公知の印刷インキ又は塗料等を任意に使用することができる。但し、着色層2のうち少なくとも透明基材1に接して設けられる層は、透明基材1から容易に剥離可能であることが必要であり、微細パターン層3の硬化収縮応力を考慮すると、透明基材1からの剥離強度が概ね100N/m以下、さらに好ましくは20N/m以下であることが望ましい。但し、この剥離強度が概ね1N/mを下回ると、剥離が軽すぎるために、剥離すべきでない箇所における着色層2の予期せぬ剥離事故の原因となるので、却って好ましくない。特に、微細パターン層3の硬化収縮応力による剥離現象を利用して透視性装飾材を直接製造する場合(透視性装飾材製造用転写シートの作製工程及び転写工程を経ない場合)には、透明基材1と着色層2との剥離強度は、得られる透視性装飾材の耐久性に直接影響するから、少なくとも10N/m以上とすることが望ましい。
【0031】
上記着色層2の具体的な構成材料としては、例えば透明基材1がポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである場合には、透明基材1に接して設けられる層を、ポリエチレンテレフタレート樹脂に対して優れた剥離性を示すアクリル系樹脂などから構成すると、良好な結果が得られる。ここで、透明基材1に接して設けられる層とは、その一部が透明基材1に接する層を含むものであり、例えば、図1に示す様に、透明基材1上に第1絵柄層21、隠蔽層22がこの順に設けられる場合には、第1絵柄層21がベタ層でない(ベタ層を含まない)限り、第1絵柄層21のみならず隠蔽層22をも、ポリエチレンテレフタレート樹脂との剥離性に優れたアクリル系樹脂などから構成する必要がある。これに対し、透明基材1と、第1絵柄層21や隠蔽層22との間に、ポリエチレンテレフタレート樹脂との剥離性に優れたアクリル系樹脂などからなる透明な剥離層(図示せず)を全面にベタ状に施しておくと、第1絵柄層21や隠蔽層22の構成材料が、透明基材1との剥離性との観点から制限されることがなくなる利点がある。
【0032】
微細パターン層3は、それを構成する硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して着色層2を透明基材1から部分的に剥離させるために設けられるもので、少なくとも着色層2と透明基材1との剥離強度及び着色層2の内部強度を越える硬化収縮応力を発生するものである必要がある。この硬化収縮応力は、硬化性樹脂の硬化後のヤング率及び硬化収縮率が高い程、また、微細パターン層3の厚みが厚い程大きく、剥離のために有利であるが、あまりヤング率や硬化収縮率が高すぎたり、厚みが厚すぎたりすると、微細パターン層3自体が硬化収縮応力に耐えられずに亀裂を発生したり破断したりして、硬化収縮応力を着色層2の剥離のために十分に活かすことができなくなるので、硬化後のヤング率が50〜150GPa、硬化収縮率が5〜10%程度の硬化性樹脂を使用し、微細パターン層3の厚みは5〜15μm程度とすることが望ましい。
【0033】
上記硬化性樹脂の硬化の機構については、本発明において特に制限されるものではなく、例えば2液反応硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等から任意に選択すればよい。一般的には、硬化過程における硬化性樹脂の内部の応力緩和が少ない様に、硬化速度が高く、しかも、硬化過程において透明基材1や着色層2の応力緩和が少ない様に、常温で硬化可能な硬化性樹脂を使用することが有利であり、その観点からは、紫外線又は電子線等の電離放射線の照射により常温で短時間で硬化する特性を有する、電離放射線硬化性樹脂を用いることが最も望ましいと考えられる。
【0034】
上記電離放射線硬化性樹脂とは、紫外線又は電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に少なくとも一つ有するプレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーを適宜配合してなるものである。係るプレポリマー、オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0035】
また上記モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコール・ε−カプロラクトン付加物(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシエチルフォスフェート、フロロアルキル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単官能モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アセタールグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコール・ε−カプロラクトン付加物ジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリエトキシレート・トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・ポリエトキシレート・トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール・ε−カプロラクトン付加物ヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系多官能モノマー等の(メタ)アクリレート系モノマー類等が挙げられる。
【0036】
上記のほか必要に応じて、ラジカル重合性二重結合を分子中に有しない高分子化合物(非反応性樹脂)を配合することもできる。また、この硬化性樹脂を紫外線の照射により硬化させる場合には、紫外線の照射により容易に開裂して重合反応の基になるラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)や、紫外線のエネルギーを上記重合開始剤に効率良く伝達して感度を向上する増感剤などが適宜配合されるのが一般的である。
【0037】
上記電離放射線硬化性樹脂の硬化後のヤング率や硬化収縮率は、主としてその架橋密度によって制御される。すなわち、分子量当たりの架橋点数の多いプレポリマー、オリゴマーや、低分子量のモノマー、特に低分子量の多官能モノマーを多く使用すれば、架橋密度が高くなるために、硬化後のヤング率や硬化収縮率も高くなり、従って硬化収縮応力も大きくなる。一方、分子量当たりの架橋点数の少ないプレポリマー、オリゴマーや、高分子量のモノマー、特に高分子量の単官能モノマーを多く使用したり、非反応性樹脂を配合したりすれば、架橋密度が低くなるために、硬化後のヤング率や硬化収縮率も低くなり、従って硬化収縮応力も小さくなる。この原理により、上記した各種のプレポリマー、オリゴマー、モノマー、非反応性樹脂等の種類及び配合比率を調節することにより、硬化収縮応力を適宜設計することができる。
【0038】
微細パターン層3のパターン形状としては、従来の同種の透視性装飾材におけるそれと同様のパターン形状を任意に採用することができる。具体的には、例えばドット状、ストライプ状、網状等が代表的なものであり、こうした規則的パターン状であってもよいし、ランダムドット状や迷路状、迷彩状などの不規則的パターン状であってもよい。微細パターン層3の面積率は、低すぎると得られる透視性装飾材が透視性に乏しくなる一方、高すぎても隠蔽効果が不足して反対側が透けて見えるばかりで、透視性装飾材上の絵柄が観察しづらくなったり、照明の切り替えによる可変表示効果が発現しなくなったりするので、使用条件等にもよるが通例20〜80%程度の範囲内で適宜設計するのがよい。
【0039】
微細パターン層3の硬化後、その硬化収縮力により透明基材1から剥離した着色層2を微細パターン層3と共に透明基材1から除去する際、微細パターン層3の硬化収縮が十分に大きい時には、透明基材1を裏返すか又は傾ける程度で自然に剥離する場合もあるが、そうでない場合には、微細パターン層3が設けられていない箇所の着色層2が透明基材1から剥離しない程度に、微細パターン層3面に空気を吹き付けたり、微細パターン層3面を柔らかいスポンジ又はブラシ等で軽く摩擦したり、透明基材1からの着色層2の剥離力よりは弱い程度の粘着力を有する弱粘着性テープを微細パターン層3面に貼着させた後に剥離させる等の措置を講じてもよい。また、透明基材1が可撓性のフィルム乃至シートである場合には、例えば図2に示す様に、微細パターン層3の硬化後、微細パターン層3が設けられていない箇所の着色層2が透明基材1から剥離しない程度の範囲で、着色層2側を外側に向けて透明基材1を撓ませる(ガイドロール62の箇所)ことによっても、微細パターン層3が設けられた箇所の着色層2の安定的な剥離を促進させることができる。
【0040】
前に述べた通り、以上に説明した製造手順において、透明基材1に代えて離型性基材シート1を用いれば、透視性装飾材製造用転写シートを得ることができる。この透視性装飾材製造用転写シートを使用して透視性装飾材を製造するためには、透視性装飾材製造用転写シートの着色層2側の面を透明基材の表面に重ね合わせて、着色層2を該透明基材の表面に接着させ、しかる後に、該着色層2を透明基材上に残すようにして、透視性装飾材製造用転写シートの離型性基材シート1のみを剥離除去すればよい。この転写工程において、着色層2の離型性基材シート1とは反対側の面が、透明基材との接着性を有していない場合には、着色層2上及び/又は透明基材上に予め接着剤を施しておくことも差し支えない。また、この方法における透明基材の材質や形態については、前記した透視性装飾材の直接製造法における透明基材1と同様であり、特に限定されない。
【0041】
上記の直接製造法又は転写法により製造した透視性装飾材の着色層2面には、この着色層2を保護するために必要に応じて、透明塗料による塗装を施したり、透明熱可塑性樹脂フィルムからなる保護フィルムを被覆したり、他の透明基材と積層したりすることもできる。
【0042】
【実施例】
実施例1
厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの表面に、アクリル系樹脂をバインダーとする印刷インキを使用して、第一の絵柄層と、白色の隠蔽層と、前記第一の絵柄層とは異なる絵柄の第二の絵柄層とを順次印刷して着色層を形成し、次いで、紫外線硬化性樹脂(硬化後のヤング率120GPa、硬化収縮率5%)を使用して、ドット直径1mm(円形)、ピッチ1.5mm(トライアングル配置)のドットパターンを非画線部とする網状(面積率約35%)に、厚さ12μmの微細パターン層を印刷形成し、紫外線を照射したところ、微細パターン層の硬化と同時に、該微細パターン層がその下の着色層と共にフィルム表面から脱落し、隠蔽層を挟んで第一及び第二の絵柄層が正確に同調整合したドットパターン状の着色層を有する透視性装飾材が得られた。
【0043】
実施例2
厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの表面に、アクリル系樹脂からなる透明な剥離層と、アクリル系樹脂をバインダーとする印刷インキによる第一の絵柄層、白色の隠蔽層、及び第二の絵柄層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる透明な接着剤層とからなる着色層を形成し、次いで、上記実施例1に使用したものと同一の紫外線硬化性樹脂を使用して、線幅300μm、ピッチ1mmのストライプ状(面積率30%)に、厚さ12μmの微細パターン層を印刷形成し、紫外線を照射したところ、微細パターン層の硬化と同時に、該微細パターン層がその下の着色層と共にフィルム表面から脱落し、隠蔽層を挟んで第一及び第二の絵柄層が正確に同調整合し、且つ、フィルムとの界面には剥離層、反対側には接着剤層を備えた、ストライプ状の着色層を有する透視性装飾材製造用転写シートが得られた。また、この透視性装飾材製造用転写シートを使用して、厚さ1mmの透明アクリル樹脂板の表面に着色層を転写させ、該着色層面に厚さ100μmの透明アクリル樹脂フィルムをラミネートして、透視性装飾材を得ることができた。
【0044】
なお、上記実施例1及び実施例2における微細パターン層の硬化及び剥離の工程は、図2に示す様に、紫外線照射部においては水平方向より30〜75゜の角度で下方向に印刷済みのシート(透明基材又は離型性基材シート)が移動し、照射直後のガイドロール62でシートの移動方向が120〜150゜方向に変わるように構成した製造装置を使用して行った。その結果、紫外線照射装置5から照射した紫外線により硬化した微細パターン層は、シートの移動方向を変えるガイドロール62によりシートが撓んだ際に、その下の着色層と共にシートから自然に剥離脱落して、微細な剥離片7として落下し、微細パターン層の剥離抜けは殆ど認められなかった。
【0045】
比較例1
上記実施例2において、着色層の形成後、紫外線硬化性樹脂の代わりにメラミン系熱硬化性樹脂を使用して、上記微細パターン層と同一パターンの接着阻害層を硬化後の厚み1μmに印刷形成して、透視性装飾材製造用転写シートを得た。この透視性装飾材製造用転写シートを使用して、上記実施例2と同一の要領で透視性装飾材を得ようとしたが、接着阻害層が形成された箇所の着色層が、接着阻害層が形成されていない隣接する箇所の着色層から切断されずに、接着阻害層と共に透明基材側へ転写されてしまう転写不良現象が発生し、外観及び透視性効果の良好な透視性装飾材を得ることができなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳細に説明した様に、本発明によれば、隠蔽層や絵柄層の印刷前に剥離用のマスク層を形成しておく必要がないので、凹凸面への印刷工程に伴う印刷抜けやインキ流れ、インキ潰れ等の不安定要素がなく、安定した印刷加工が可能であると共に、転写工程を伴わずに透明基材上に隠蔽層等の着色層を直接形成する直接製造法と、隠蔽層等の着色層を転写シートから透明基材上に転写させる転写法との双方が適用可能であり、所望される透視性装飾材の構成や用途、製造上の都合等による製造工程の選択の幅が広く、また特に、転写法を採用した場合にあっても、転写工程の前に既に着色層を微細パターン化してあるので、転写工程における抜け不良などの転写不良の問題もなく、品質の良好な製品を安定的に製造可能であるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透視性装飾材(又は透視性装飾材製造用転写シート)の製造方法の実施の形態を工程順に示す模式図。
【図2】本発明の透視性装飾材(又は透視性装飾材製造用転写シート)の製造方法の実施の形態における硬化性樹脂層の硬化工程及び剥離工程を示す模式図。
【符号の説明】
1……………………透明基材(又は離型性基材シート)
2………………………………………………………着色層
21………………………………………………第1絵柄層
22……………………………………………………隠蔽層
23………………………………………………第2絵柄層
3……………………………………………微細パターン層
4………印刷済みの透明基材(又は離型性基材シート)
5……………………………………………紫外線照射装置
61、62、63……………………………ガイドロール
7………………………………………………………剥離片
【発明の属する技術分野】
本発明は、表側から見た時と裏側から見た時とで色彩外観が相違し、それぞれ反対側の色彩外観によって干渉されることなく手前側の色彩外観を観察可能であり、しかも、一方の側からは反対側を透視可能であるが他方の側からは反対側を透視不可能な一方向透視性を有していたり、及び/又は、反対側からの光源の有無あるいはその強弱により手前側の色彩外観が明瞭に観察可能な状態と実質的に観察不可能な状態との間で切り替え可能な表示切替機能を有していたりする、特殊な透視性装飾材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の透視性装飾材の製造方法としては従来、透明基材上にまず該透明基材から剥離可能な微細パターン状のマスク層を形成しておき、その上に隠蔽層や絵柄層等を含む複数層からなる着色層を形成し、しかる後に前記マスク層をその上の着色層と共に前記透明基材から剥離する方法が、最もよく知られている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特公平5−30189号公報
【特許文献2】
特公平5−32721号公報
【0004】
しかしこの方法は、微細パターン状のマスク層を透明基材上から容易に剥離可能とするために、マスク層には剥離力に耐える十分な強度を備えるべく一定以上のパターン幅や厚みが要求され、パターンの微細化が困難であるし、また、マスク層は連続パターンでなければならいので、パターン形状の選択幅も狭い。
【0005】
さらに、一定以上(通例、数十μm程度)の厚みを有する微細パターン状のマスク層が設けられた、実質的に表面凹凸状の透明基材上に、隠蔽層や絵柄層等の着色層を均一に(特に、マスク層が設けられていない箇所において、該マスク層の表面に対し凹部となっている透明基材の表面に欠陥無く)形成する必要があるが、この様な条件での隠蔽層や絵柄層の印刷は、特に網点で表現される絵柄層が高精細になるほど、凹部である透明基材の表面において印刷抜けを発生し易いので、表現可能な絵柄の精細度に限界があることなどの問題点がある。
【0006】
上記の問題点を解決可能な方法として、転写技術を応用した製造方法の提案も、既にいくつかなされている(下記特許文献3、4参照)。すなわち、離型性基材シート上に、隠蔽層や絵柄層などからなる着色層及び接着層からなる転写層を剥離可能に設けた転写シートを用意し、この転写シートから転写層を透明基材上に転写するに際し、透明基材と転写層との接着を阻害するための耐熱性樹脂または硬化性樹脂からなる接着阻害層を、予め転写シートの接着層面上若しくは透明基材上に微細パターン状に設けておくことにより、該接着阻害層が設けられていない箇所の透明基材上にのみ、転写シートから転写層が転写されるという原理によるものである。
【0007】
【特許文献3】
特開平6−87299号公報
【特許文献4】
特開平6−286395号公報
【0008】
これらの方法によれば確かに、隠蔽層や絵柄層などの印刷形成は、予め微細パターン状の接着阻害層が設けられていない、離型性基材シートの平滑な表面上に行われるのであるから、前記した方法におけるような高精細絵柄の印刷時の印刷抜けの問題もなければ、接着阻害層には剥離のための強度もパターンの連続性も特に要求されることがないので、前記した方法におけるようなマスク層の剥離性の面からのパターン形状の制約もない。
【0009】
しかし、上記接着阻害層は、転写層と透明基材との接着に対する阻害要因となっているとは言うものの、離型性基材シートの剥離の際に、転写層を透明基材から積極的に剥離させる機能を有している訳ではないので、接着阻害層に阻まれて透明基材と接着していない箇所の転写層が、隣接する接着阻害層のない領域における透明基材と接着した転写層につられて、一緒に離型性基材シートから剥離して透明基材側に転写してしまって、箔バリや抜け不良を発生する場合があり、この現象が製造される透視性装飾材の透視性を減殺する要因となるため、安定生産性に欠ける短所があった。
【0010】
また、上記の方法は転写シートを用いた転写法の利用を前提としているため、転写工程を経ることなく直接、透明基材への表面加工処理により透視性装飾材を得ることは不可能であるので、製造工程の設計上の制約が大きいことや、転写絵付け処理に適さない透明基材を用いた透視性装飾材は製造できないことなどの問題をも有するものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記の様な問題点を解決し、凹凸面への印刷工程が不要であるので印刷工程が安定化すると共に高精細の絵柄の付与も可能であり、剥離性の面からの微細パターン形状の制約もなく、転写層を微細パターン状に部分的に転写させる工程を伴わないので安定生産が可能な透視性装飾材の製造方法を提供するためになされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透明基材上に、該透明基材から剥離可能であり、且つ該透明基材からの剥離強度よりも大きな内部強度を有する、少なくとも隠蔽層を含む着色層を設け、次いで、該着色層上に、該着色層の内部強度よりも大きな該着色層との接着強度と、該着色層の内部強度よりは大きく該着色層との接着強度よりは小さい硬化時の硬化収縮応力とを有する硬化性樹脂からなる微細パターン層を形成し、しかる後に、該微細パターン層を構成する硬化性樹脂を硬化させることにより、該硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して、該微細パターン層が設けられた箇所における前記着色層を該微細パターン層とともに、前記透明基材から剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材の製造方法である。
【0013】
特に、上記の方法において、前記硬化性樹脂の硬化後のヤング率が50〜150GPaであり、硬化収縮率が5〜10%であり、該硬化性樹脂からなる微細パターン層の硬化後の厚みが5〜15μmであることを特徴とする透視性装飾材の製造方法である。
【0014】
また本発明は、離型性基材シート上に、該離型性基材シートから剥離可能であり、且つ該離型性基材シートからの剥離強度よりも大きな内部強度を有する、少なくとも隠蔽層を含む着色層を設け、次いで、該着色層上に、該着色層の内部強度よりも大きな該着色層との接着強度と、該着色層の内部強度よりは大きく該着色層との接着強度よりは小さい硬化時の硬化収縮応力とを有する硬化性樹脂からなる微細パターン層を形成し、しかる後に、該微細パターン層を構成する硬化性樹脂を硬化させることにより、該硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して、該微細パターン層が設けられた箇所における前記着色層を該微細パターン層とともに、前記離型性基材シートから剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材製造用転写シートの製造方法である。
【0015】
特に、上記の方法において、前記硬化性樹脂の硬化後のヤング率が50〜150GPaであり、硬化収縮率が5〜10%であり、該硬化性樹脂からなる微細パターン層の硬化後の厚みが5〜15μmであることを特徴とする透視性装飾材製造用転写シートの製造方法である。
【0016】
また本発明は、上記の透視性装飾材製造用転写シートの前記着色層面を透明基材上に重ね合わせ、前記着色層を前記透明基材の表面に接着させ、しかる後に、前記離型性基材シートを前記透明基材及び前記着色層から剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の透視性装飾材の製造方法及び透視性装飾材製造用転写シートの製造方法を図面に従って説明する。但し、本発明の透視性装飾材の製造方法における透明基材を離型性基材シートで置換すれば、透視性装飾材製造用転写シートを製造することができるので、以下の説明では特に両者を区別する必要がある場合を除き、透視性装飾材の製造方法についてのみ説明することにする。
【0018】
本発明の透視性装飾材の製造方法は、図1に示す様に、透明基材1上に、少なくとも隠蔽層22を含む着色層2を剥離可能に設けた後、該着色層2上に硬化性樹脂からなる微細パターン層3を設け、これを硬化させる際の硬化収縮応力を利用して、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を、微細パターン層3と共に透明基材1上から剥離させて除去することにより、該微細パターン層3が設けられていなかった箇所(微細パターン層3のネガパターン部分)にのみ選択的に、着色層2を透明基材1上に残すことからなる。
【0019】
そして、上記の工程により透視性装飾材を製造するためには、着色層2の透明基材1からの剥離強度T1と、着色層2の内部強度T2(但しこれは、着色層2が1層のみからなる場合はその内部凝集力を意味し、着色層2が多層からなる場合は各層の内部凝集力及び各層間の接着強度のうち最小のものを意味する)と、着色層2と微細パターン層3との接着強度T3と、微細パターン層3を構成する硬化性樹脂の硬化収縮応力T4とが、下記の関係式を満たしている必要がある。
【0020】
T1<T2<T4<T3
【0021】
何となれば、T2がT1より小さければ、着色層2を透明基材1から剥離させる際に着色層2が凝集破壊を発生してうまく剥離できず、T4がT2より小さければ、微細パターン層3を構成する硬化性樹脂を硬化させる際に発生する硬化収縮力T4では着色層2を破断させることができないために、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を、隣接する他の箇所(微細パターン層3が設けられていない箇所)における着色層2から分離して剥離除去することができず、T3がT4より小さければ、微細パターン層3を構成する硬化性樹脂を硬化させた際に、微細パターン層3が着色層2から剥離してしまい、微細パターン層3が設けられた箇所における着色層2を透明基材1から剥離させて除去することができないからである。
【0022】
本発明において、透明基材1の材質は、少なくとも反対側が透視可能な程度の透明性を有するものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂や、ガラス、樹脂含浸透明紙等を挙げることができる。その形態は、例えばフィルム状、シート状、薄板状、厚板状等、用途により任意である。
【0023】
なお、透視性装飾材製造用転写シートにおける離型性基材シート1の材質は、必ずしも透明でなくてもよく、従来の各種の転写シートにおける基材シートとして用いられてきた任意の材質が使用可能である。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂フィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムや、それら熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした紙、アルミニウム箔等の金属箔等を使用することができる。その形態は、厚み0.01〜0.3mm程度のフィルム状乃至シート状とされるのが一般的である。
【0024】
透明基材1の表面には、着色層2の剥離性を向上させるための離型層(図示せず)を形成しても良い。この離型層としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を使用することができる。
【0025】
着色層2は、少なくとも1層の隠蔽層22を含むことが必要であるが、その他の層構成には一切制限はない。最も単純な構成は、1層の白色隠蔽層のみからなるもので、これは透視性装飾材の背面側に設置された図柄板を照明の明滅により観察可能な状態と観察不可能な状態との間で切り替える用途などに用いられる。白色隠蔽層のみでは隠蔽性が不十分な場合は、白色隠蔽層の背面側に黒色隠蔽層が設けられる。この構成の透視性装飾材は、白色隠蔽層側からは反対側が透視できないが、黒色隠蔽層側からは反対側を透視できる、一方向透視性機能を有する透視性装飾材としても用いられる。
【0026】
さらに、白色隠蔽層側に単なる透視防止機能だけでなく、任意の図柄の意匠を表示させたい場合には、白色隠蔽層上に絵柄層が設けられる。すなわち、着色層2は黒色隠蔽層/白色隠蔽層/絵柄層の3層構成となる。反対側にも別の図柄の意匠を表示させたい場合には、黒色隠蔽層の代わりに別の絵柄層を設けて、図1に示されている様に、第1絵柄層21/隠蔽層22/第2絵柄層23の3層構成とされる。
【0027】
ここで、隠蔽層22は白色隠蔽層とされるのが一般的であるが、第1絵柄層21及び第2絵柄層23に共通する背景色の隠蔽層としたり、第1絵柄層21の背景色の隠蔽層と第2絵柄層23の背景色の隠蔽層との2層から隠蔽層22を構成したりしてもよい。また、隠蔽層22の隠蔽性をさらに補強するために、図1における隠蔽層22を、白色(又は、第1絵柄層21の背景色)の隠蔽層/黒色隠蔽層/白色(又は、第2絵柄層23の背景色)の隠蔽層の3層から構成してもよい。その他所望により種々の変形が可能である。
【0028】
着色層2は、少なくとも隠蔽層22を含む着色された層を含んでいることが必要であるが、それらの他に着色されていない層を含んでいてもよい。例えば、着色層2全体を透明基材1から容易に剥離可能とするための剥離層(図示せず)が透明基材1との界面側に設けられていてもよい。
【0029】
また、透視性装飾材の場合には、隠蔽層22等の着色された層を保護するための表面保護層(図示せず)が、透明基材1とは反対側に設けられていてもよいし、透視性装飾材製造用転写シートの場合には、着色層2全体を被転写基材である透明基材と接着させるための接着剤層(図示せず)が離型性基材シート1とは反対側に、及び/又は、表面保護層(図示せず)が離型性基材シート1側に、それぞれ設けられていてもよい。勿論、必要に応じて、これら剥離層、表面保護層、接着剤層を適宜着色させることも任意である。
【0030】
着色層2の構成材料は、本発明において特に制限されるものではなく、従来公知の印刷インキ又は塗料等を任意に使用することができる。但し、着色層2のうち少なくとも透明基材1に接して設けられる層は、透明基材1から容易に剥離可能であることが必要であり、微細パターン層3の硬化収縮応力を考慮すると、透明基材1からの剥離強度が概ね100N/m以下、さらに好ましくは20N/m以下であることが望ましい。但し、この剥離強度が概ね1N/mを下回ると、剥離が軽すぎるために、剥離すべきでない箇所における着色層2の予期せぬ剥離事故の原因となるので、却って好ましくない。特に、微細パターン層3の硬化収縮応力による剥離現象を利用して透視性装飾材を直接製造する場合(透視性装飾材製造用転写シートの作製工程及び転写工程を経ない場合)には、透明基材1と着色層2との剥離強度は、得られる透視性装飾材の耐久性に直接影響するから、少なくとも10N/m以上とすることが望ましい。
【0031】
上記着色層2の具体的な構成材料としては、例えば透明基材1がポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである場合には、透明基材1に接して設けられる層を、ポリエチレンテレフタレート樹脂に対して優れた剥離性を示すアクリル系樹脂などから構成すると、良好な結果が得られる。ここで、透明基材1に接して設けられる層とは、その一部が透明基材1に接する層を含むものであり、例えば、図1に示す様に、透明基材1上に第1絵柄層21、隠蔽層22がこの順に設けられる場合には、第1絵柄層21がベタ層でない(ベタ層を含まない)限り、第1絵柄層21のみならず隠蔽層22をも、ポリエチレンテレフタレート樹脂との剥離性に優れたアクリル系樹脂などから構成する必要がある。これに対し、透明基材1と、第1絵柄層21や隠蔽層22との間に、ポリエチレンテレフタレート樹脂との剥離性に優れたアクリル系樹脂などからなる透明な剥離層(図示せず)を全面にベタ状に施しておくと、第1絵柄層21や隠蔽層22の構成材料が、透明基材1との剥離性との観点から制限されることがなくなる利点がある。
【0032】
微細パターン層3は、それを構成する硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して着色層2を透明基材1から部分的に剥離させるために設けられるもので、少なくとも着色層2と透明基材1との剥離強度及び着色層2の内部強度を越える硬化収縮応力を発生するものである必要がある。この硬化収縮応力は、硬化性樹脂の硬化後のヤング率及び硬化収縮率が高い程、また、微細パターン層3の厚みが厚い程大きく、剥離のために有利であるが、あまりヤング率や硬化収縮率が高すぎたり、厚みが厚すぎたりすると、微細パターン層3自体が硬化収縮応力に耐えられずに亀裂を発生したり破断したりして、硬化収縮応力を着色層2の剥離のために十分に活かすことができなくなるので、硬化後のヤング率が50〜150GPa、硬化収縮率が5〜10%程度の硬化性樹脂を使用し、微細パターン層3の厚みは5〜15μm程度とすることが望ましい。
【0033】
上記硬化性樹脂の硬化の機構については、本発明において特に制限されるものではなく、例えば2液反応硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等から任意に選択すればよい。一般的には、硬化過程における硬化性樹脂の内部の応力緩和が少ない様に、硬化速度が高く、しかも、硬化過程において透明基材1や着色層2の応力緩和が少ない様に、常温で硬化可能な硬化性樹脂を使用することが有利であり、その観点からは、紫外線又は電子線等の電離放射線の照射により常温で短時間で硬化する特性を有する、電離放射線硬化性樹脂を用いることが最も望ましいと考えられる。
【0034】
上記電離放射線硬化性樹脂とは、紫外線又は電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に少なくとも一つ有するプレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーを適宜配合してなるものである。係るプレポリマー、オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0035】
また上記モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコール・ε−カプロラクトン付加物(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシエチルフォスフェート、フロロアルキル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単官能モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アセタールグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコール・ε−カプロラクトン付加物ジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリエトキシレート・トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・ポリエトキシレート・トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール・ε−カプロラクトン付加物ヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系多官能モノマー等の(メタ)アクリレート系モノマー類等が挙げられる。
【0036】
上記のほか必要に応じて、ラジカル重合性二重結合を分子中に有しない高分子化合物(非反応性樹脂)を配合することもできる。また、この硬化性樹脂を紫外線の照射により硬化させる場合には、紫外線の照射により容易に開裂して重合反応の基になるラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)や、紫外線のエネルギーを上記重合開始剤に効率良く伝達して感度を向上する増感剤などが適宜配合されるのが一般的である。
【0037】
上記電離放射線硬化性樹脂の硬化後のヤング率や硬化収縮率は、主としてその架橋密度によって制御される。すなわち、分子量当たりの架橋点数の多いプレポリマー、オリゴマーや、低分子量のモノマー、特に低分子量の多官能モノマーを多く使用すれば、架橋密度が高くなるために、硬化後のヤング率や硬化収縮率も高くなり、従って硬化収縮応力も大きくなる。一方、分子量当たりの架橋点数の少ないプレポリマー、オリゴマーや、高分子量のモノマー、特に高分子量の単官能モノマーを多く使用したり、非反応性樹脂を配合したりすれば、架橋密度が低くなるために、硬化後のヤング率や硬化収縮率も低くなり、従って硬化収縮応力も小さくなる。この原理により、上記した各種のプレポリマー、オリゴマー、モノマー、非反応性樹脂等の種類及び配合比率を調節することにより、硬化収縮応力を適宜設計することができる。
【0038】
微細パターン層3のパターン形状としては、従来の同種の透視性装飾材におけるそれと同様のパターン形状を任意に採用することができる。具体的には、例えばドット状、ストライプ状、網状等が代表的なものであり、こうした規則的パターン状であってもよいし、ランダムドット状や迷路状、迷彩状などの不規則的パターン状であってもよい。微細パターン層3の面積率は、低すぎると得られる透視性装飾材が透視性に乏しくなる一方、高すぎても隠蔽効果が不足して反対側が透けて見えるばかりで、透視性装飾材上の絵柄が観察しづらくなったり、照明の切り替えによる可変表示効果が発現しなくなったりするので、使用条件等にもよるが通例20〜80%程度の範囲内で適宜設計するのがよい。
【0039】
微細パターン層3の硬化後、その硬化収縮力により透明基材1から剥離した着色層2を微細パターン層3と共に透明基材1から除去する際、微細パターン層3の硬化収縮が十分に大きい時には、透明基材1を裏返すか又は傾ける程度で自然に剥離する場合もあるが、そうでない場合には、微細パターン層3が設けられていない箇所の着色層2が透明基材1から剥離しない程度に、微細パターン層3面に空気を吹き付けたり、微細パターン層3面を柔らかいスポンジ又はブラシ等で軽く摩擦したり、透明基材1からの着色層2の剥離力よりは弱い程度の粘着力を有する弱粘着性テープを微細パターン層3面に貼着させた後に剥離させる等の措置を講じてもよい。また、透明基材1が可撓性のフィルム乃至シートである場合には、例えば図2に示す様に、微細パターン層3の硬化後、微細パターン層3が設けられていない箇所の着色層2が透明基材1から剥離しない程度の範囲で、着色層2側を外側に向けて透明基材1を撓ませる(ガイドロール62の箇所)ことによっても、微細パターン層3が設けられた箇所の着色層2の安定的な剥離を促進させることができる。
【0040】
前に述べた通り、以上に説明した製造手順において、透明基材1に代えて離型性基材シート1を用いれば、透視性装飾材製造用転写シートを得ることができる。この透視性装飾材製造用転写シートを使用して透視性装飾材を製造するためには、透視性装飾材製造用転写シートの着色層2側の面を透明基材の表面に重ね合わせて、着色層2を該透明基材の表面に接着させ、しかる後に、該着色層2を透明基材上に残すようにして、透視性装飾材製造用転写シートの離型性基材シート1のみを剥離除去すればよい。この転写工程において、着色層2の離型性基材シート1とは反対側の面が、透明基材との接着性を有していない場合には、着色層2上及び/又は透明基材上に予め接着剤を施しておくことも差し支えない。また、この方法における透明基材の材質や形態については、前記した透視性装飾材の直接製造法における透明基材1と同様であり、特に限定されない。
【0041】
上記の直接製造法又は転写法により製造した透視性装飾材の着色層2面には、この着色層2を保護するために必要に応じて、透明塗料による塗装を施したり、透明熱可塑性樹脂フィルムからなる保護フィルムを被覆したり、他の透明基材と積層したりすることもできる。
【0042】
【実施例】
実施例1
厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの表面に、アクリル系樹脂をバインダーとする印刷インキを使用して、第一の絵柄層と、白色の隠蔽層と、前記第一の絵柄層とは異なる絵柄の第二の絵柄層とを順次印刷して着色層を形成し、次いで、紫外線硬化性樹脂(硬化後のヤング率120GPa、硬化収縮率5%)を使用して、ドット直径1mm(円形)、ピッチ1.5mm(トライアングル配置)のドットパターンを非画線部とする網状(面積率約35%)に、厚さ12μmの微細パターン層を印刷形成し、紫外線を照射したところ、微細パターン層の硬化と同時に、該微細パターン層がその下の着色層と共にフィルム表面から脱落し、隠蔽層を挟んで第一及び第二の絵柄層が正確に同調整合したドットパターン状の着色層を有する透視性装飾材が得られた。
【0043】
実施例2
厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの表面に、アクリル系樹脂からなる透明な剥離層と、アクリル系樹脂をバインダーとする印刷インキによる第一の絵柄層、白色の隠蔽層、及び第二の絵柄層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる透明な接着剤層とからなる着色層を形成し、次いで、上記実施例1に使用したものと同一の紫外線硬化性樹脂を使用して、線幅300μm、ピッチ1mmのストライプ状(面積率30%)に、厚さ12μmの微細パターン層を印刷形成し、紫外線を照射したところ、微細パターン層の硬化と同時に、該微細パターン層がその下の着色層と共にフィルム表面から脱落し、隠蔽層を挟んで第一及び第二の絵柄層が正確に同調整合し、且つ、フィルムとの界面には剥離層、反対側には接着剤層を備えた、ストライプ状の着色層を有する透視性装飾材製造用転写シートが得られた。また、この透視性装飾材製造用転写シートを使用して、厚さ1mmの透明アクリル樹脂板の表面に着色層を転写させ、該着色層面に厚さ100μmの透明アクリル樹脂フィルムをラミネートして、透視性装飾材を得ることができた。
【0044】
なお、上記実施例1及び実施例2における微細パターン層の硬化及び剥離の工程は、図2に示す様に、紫外線照射部においては水平方向より30〜75゜の角度で下方向に印刷済みのシート(透明基材又は離型性基材シート)が移動し、照射直後のガイドロール62でシートの移動方向が120〜150゜方向に変わるように構成した製造装置を使用して行った。その結果、紫外線照射装置5から照射した紫外線により硬化した微細パターン層は、シートの移動方向を変えるガイドロール62によりシートが撓んだ際に、その下の着色層と共にシートから自然に剥離脱落して、微細な剥離片7として落下し、微細パターン層の剥離抜けは殆ど認められなかった。
【0045】
比較例1
上記実施例2において、着色層の形成後、紫外線硬化性樹脂の代わりにメラミン系熱硬化性樹脂を使用して、上記微細パターン層と同一パターンの接着阻害層を硬化後の厚み1μmに印刷形成して、透視性装飾材製造用転写シートを得た。この透視性装飾材製造用転写シートを使用して、上記実施例2と同一の要領で透視性装飾材を得ようとしたが、接着阻害層が形成された箇所の着色層が、接着阻害層が形成されていない隣接する箇所の着色層から切断されずに、接着阻害層と共に透明基材側へ転写されてしまう転写不良現象が発生し、外観及び透視性効果の良好な透視性装飾材を得ることができなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳細に説明した様に、本発明によれば、隠蔽層や絵柄層の印刷前に剥離用のマスク層を形成しておく必要がないので、凹凸面への印刷工程に伴う印刷抜けやインキ流れ、インキ潰れ等の不安定要素がなく、安定した印刷加工が可能であると共に、転写工程を伴わずに透明基材上に隠蔽層等の着色層を直接形成する直接製造法と、隠蔽層等の着色層を転写シートから透明基材上に転写させる転写法との双方が適用可能であり、所望される透視性装飾材の構成や用途、製造上の都合等による製造工程の選択の幅が広く、また特に、転写法を採用した場合にあっても、転写工程の前に既に着色層を微細パターン化してあるので、転写工程における抜け不良などの転写不良の問題もなく、品質の良好な製品を安定的に製造可能であるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透視性装飾材(又は透視性装飾材製造用転写シート)の製造方法の実施の形態を工程順に示す模式図。
【図2】本発明の透視性装飾材(又は透視性装飾材製造用転写シート)の製造方法の実施の形態における硬化性樹脂層の硬化工程及び剥離工程を示す模式図。
【符号の説明】
1……………………透明基材(又は離型性基材シート)
2………………………………………………………着色層
21………………………………………………第1絵柄層
22……………………………………………………隠蔽層
23………………………………………………第2絵柄層
3……………………………………………微細パターン層
4………印刷済みの透明基材(又は離型性基材シート)
5……………………………………………紫外線照射装置
61、62、63……………………………ガイドロール
7………………………………………………………剥離片
Claims (5)
- 透明基材上に、該透明基材から剥離可能であり、且つ該透明基材からの剥離強度よりも大きな内部強度を有する、少なくとも隠蔽層を含む着色層を設け、次いで、該着色層上に、該着色層の内部強度よりも大きな該着色層との接着強度と、該着色層の内部強度よりは大きく該着色層との接着強度よりは小さい硬化時の硬化収縮応力とを有する硬化性樹脂からなる微細パターン層を形成し、しかる後に、該微細パターン層を構成する硬化性樹脂を硬化させることにより、該硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して、該微細パターン層が設けられた箇所における前記着色層を該微細パターン層とともに、前記透明基材から剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材の製造方法。
- 前記硬化性樹脂の硬化後のヤング率が50〜150GPaであり、硬化収縮率が5〜10%であり、該硬化性樹脂からなる微細パターン層の硬化後の厚みが5〜15μmであることを特徴とする、請求項1に記載の透視性装飾材の製造方法。
- 離型性基材シート上に、該離型性基材シートから剥離可能であり、且つ該離型性基材シートからの剥離強度よりも大きな内部強度を有する、少なくとも隠蔽層を含む着色層を設け、次いで、該着色層上に、該着色層の内部強度よりも大きな該着色層との接着強度と、該着色層の内部強度よりは大きく該着色層との接着強度よりは小さい硬化時の硬化収縮応力とを有する硬化性樹脂からなる微細パターン層を形成し、しかる後に、該微細パターン層を構成する硬化性樹脂を硬化させることにより、該硬化性樹脂の硬化収縮応力を利用して、該微細パターン層が設けられた箇所における前記着色層を該微細パターン層とともに、前記離型性基材シートから剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材製造用転写シートの製造方法。
- 前記硬化性樹脂の硬化後のヤング率が50〜150GPaであり、硬化収縮率が5〜10%であり、該硬化性樹脂からなる微細パターン層の硬化後の厚みが5〜15μmであることを特徴とする、請求項3に記載の透視性装飾材製造用転写シートの製造方法。
- 請求項3又は請求項4に記載の透視性装飾材製造用転写シートの前記着色層面を透明基材上に重ね合わせ、前記着色層を前記透明基材の表面に接着させ、しかる後に、前記離型性基材シートを前記透明基材及び前記着色層から剥離除去することを特徴とする、透視性装飾材の製造方法。
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