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JP2004028031A - 直噴火花点火式エンジンの制御装置及び制御方法 - Google Patents

直噴火花点火式エンジンの制御装置及び制御方法 Download PDF

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JP2004028031A JP2002188410A JP2002188410A JP2004028031A JP 2004028031 A JP2004028031 A JP 2004028031A JP 2002188410 A JP2002188410 A JP 2002188410A JP 2002188410 A JP2002188410 A JP 2002188410A JP 2004028031 A JP2004028031 A JP 2004028031A
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

【課題】始動直後の排気浄化触媒16の暖機要求時に、燃料噴射弁8による燃料噴射を分割して、吸気行程での早期噴射と、圧縮行程後半での後期噴射とを行うことにより、成層ストイキ燃焼を行う場合に、排気温度上昇効果、燃焼安定性、HC性能、及びスモーク性能を総合的に勘案して、より良い制御を実現する。
【解決手段】エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど、燃料噴射弁8による後期噴射の噴射時期を進角すると同時に、点火プラグ9による点火時期を遅角する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直噴火花点火式エンジンの制御装置及び制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術として、特開2000−73820号公報に記載されているものがある。
これは、直噴火花点火式エンジンにおいて、排気浄化触媒が未暖機状態にあるときに、燃料噴射を2回に分割して、吸気行程での早期噴射と、圧縮行程での後期噴射とを実行する一方、触媒未暖機状態において、エンジン温度が所定温度より高くなった場合、エンジン温度が所定温度以下の場合と比べ、後期噴射(圧縮行程噴射)を遅角する。
【0003】
これにより、触媒未暖機時にエンジンからのHC等の排出量を低減し、かつ、排気温度を上昇させて触媒の暖機を促進し、特に触媒未暖機状態のうちでもエンジンの温度状態に応じて燃焼状態を調整することにより、燃焼安定性を確保しつつエミッション改善及び暖機促進の効果を高めるとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術は、燃焼安定性を確保しつつ排気温度を上昇させる作用を得るために、触媒未暖機時にエンジン温度上昇に伴って後期噴射(圧縮行程噴射)を遅角しているが、スモークに着目したものではなく、このように遅角するとスモークが増大してしまう。
【0005】
本発明の課題は、排気浄化触媒の暖機要求時に、排気温度上昇効果、燃焼安定性、HC性能、及びスモーク性能を総合的に勘案して、より良い制御を実現することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明では、排気浄化触媒の暖機要求時に、燃料噴射を分割して、点火時期までに早期噴射と後期噴射とを行い、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど後期噴射の噴射時期を進角する。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、エンジン温度による効果最大の噴射時期を設定することで、燃焼安定性を確保しつつエミッション改善及び暖機促進の効果を高めることができ、特にスモーク性能を大幅に改善できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態のシステム構成を示しており、先ずこれについて説明する。
エンジン1の吸気通路2には、吸入空気量を制御するスロットル弁3が設けられている。スロットル弁3はDCモータ等のスロットルアクチュエータ4により駆動される電制スロットル弁であり、コントロールユニット20からの駆動信号に基づいてスロットル開度が制御される。
【0009】
エンジン1のシリンダヘッド5とピストン6とにより画成される各気筒の燃焼室7には、燃料噴射弁8が臨んでいる。尚、ピストン6の冠面には吸気側に偏心した位置にボウル部(凹部)6aが形成されており、燃料噴射弁8は吸気側から斜め下方にボウル部6aを指向している。
燃料噴射弁8は、吸気行程又は圧縮行程の所定時期において、コントロールユニット20からの噴射パルス信号によりソレノイドに通電されて開弁し、所定の圧力に制御された燃料を燃焼室7内に直接噴射する。
【0010】
また、各気筒の燃焼室7に、シリンダヘッド5の略中央から、臨ませて、点火プラグ9が設けられ、点火プラグ9はコントロールユニット20からの点火信号に基づいて混合気に対して火花点火を行う。
燃料噴射弁8から吸気行程にて燃料噴射される場合、噴射された燃料は、燃焼室7内に拡散して均質な混合気を形成し、点火プラグ9により点火されて燃焼する。かかる燃焼を均質燃焼といい、空燃比制御との組み合わせで、均質ストイキ燃焼、均質リーン燃焼などに分けられる。
【0011】
燃料噴射弁8から圧縮行程(特にその後半)にて燃料噴射される場合、噴射された燃料は、ピストン冠面のボウル部6aを利用したタンブル流に乗るなどして、点火プラグ9周りに集中的に層状の混合気を形成し、点火プラグ9により点火されて燃焼する。かかる燃焼を成層燃焼といい、通常、空燃比は極リーンで、成層リーン燃焼と呼ばれる。
【0012】
燃料噴射弁8への燃料供給系について説明すると、燃料タンク10内の燃料は電動式の低圧燃料ポンプ11によって吸入され、この低圧燃料ポンプ11から吐出された低圧燃料はエンジン駆動される高圧燃料ポンプ12に供給される。
低圧燃料ポンプ11から吐出されて高圧燃料ポンプ12に供給される燃料の圧力は、燃料タンク10に戻るリターン通路に介装された低圧プレッシャレギュレータ13によって所定の低圧に調整される。
【0013】
高圧燃料ポンプ12から吐出された高圧燃料は、燃料噴射弁8に供給され、その燃料圧力は、高圧燃料ポンプ12の吸入側に戻るリターン通路に介装された高圧プレッシャレギュレータ14によって所定の高圧に調整される。
高圧プレッシャレギュレータ14は、コントロールユニット20からの制御信号に基づいて、リターン通路の開口面積を連続的に変化させることができ、これにより燃料噴射弁8への燃料圧力を任意に制御可能である。
【0014】
一方、排気通路15には、排気浄化触媒16が配置されている。排気浄化触媒16としては、ストイキ近傍において排気中のCO、HCの酸化とNOxの還元とを行う三元触媒、或いは排気中のCO、HCの酸化を行う酸化触媒、或いはストイキ近傍において三元機能を発揮し、リーン状態において排気中のNOxをトラップし、ストイキ〜リッチ状態になったときにトラップしたNOxを還元浄化するNOxトラップ触媒等を用いることができる。
【0015】
コントロールユニット20には、エンジンの制御のため、各種センサから信号が入力されている。
クランク角センサ21は、エンジン回転と同期してクランク基準角信号及びクランク単位角信号を発生する。コントロールユニット20では、クランク角センサ21からのクランク基準角信号の周期を計測して、又はクランク単位角信号を一定時間カウントして、エンジン回転数Neを検出できる。
【0016】
アクセルペダルセンサ22は、運転者のアクセルペダル操作量(アクセル開度)APOを検出する。
エアフローメータ23は、吸気通路2のスロットル弁3上流に配置され、吸入空気量Qaを検出する。
スロットルセンサ24は、スロットル弁3の開度TVOを検出する。また、スロットル弁3の全閉位置でONとなるアイドルスイッチも内蔵している。
【0017】
水温センサ25は、エンジン1のウォータジャケットに臨んで、冷却水温度(水温)Twを検出する。
燃圧センサ26は、高圧燃料ポンプ12から燃料噴射弁8への燃料供給通路に配置され、燃料噴射弁8への燃料圧力(燃圧)Pfを検出する。
空燃比センサ27は、排気通路15の排気浄化触媒16の上流側に配置され、排気中の特定成分(例えば酸素)濃度を検出することによって排気延いては吸入混合気の空燃比を検出するもので、空燃比フィードバック制御に用いられる。
【0018】
更に排気浄化触媒16の下流側にも、空燃比センサ28が配置されている。下流側空燃比センサ28は、その検出値に基づいて、空燃比センサ27の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を補正することで、空燃比センサ27の劣化等に伴う制御誤差を抑制する等のために用いられる。
コントロールユニット20は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出カインターフェース等を含んで構成されるマイクロコンピュータを備え、前記各種センサからの信号に基づいて検出される運転状態に応じて、スロットルアクチュエータ4を介してスロットル弁3の開度を制御し、高圧プレッシャレギュレータ14を制御して燃料噴射弁8への燃料圧力を制御し、燃料噴射時期及び燃料噴射量を設定して燃料噴射弁8の燃料噴射を制御し、点火時期を設定して該点火時期で点火プラグ9を点火させる制御を行う。
【0019】
そして、運転状態に応じて、燃焼形態の制御を行う。すなわち、通常運転時(排気浄化触媒16の暖機完了後)には、例えば低負荷領域において、圧縮行程噴射による成層リーン燃焼を行わせる一方、例えば高負荷領域において、吸気行程噴射による均質ストイキ燃焼又は均質リーン燃焼を行わせる。
ここにおいて、本発明では、始動直後の排気浄化触媒16の暖機要求時に、燃料噴射を分割して、吸気行程噴射と圧縮行程噴射とを行うことにより、点火プラグ9周りに比較的リッチな層状の混合気を形成し、これを囲む燃焼室7全体に比較的リーンな混合気を形成し、全体の空燃比は略ストイキとするように制御する。かかる燃焼形態をここでは成層ストイキ燃焼(分割噴射による成層ストイキ燃焼)という。
【0020】
成層燃焼では、例えば、1燃焼サイクル当たりの吸入空気量で略完全燃焼させることができるトータル燃料量(ストイキ空燃比を達成するのに必要な燃料重量)のうち、例えば略50〜90%の燃料重量を、図2(A)に示すように、吸気行程で噴射し、燃焼室全体にストイキよりもリーンな混合気を形成する。そして、残りの略50〜10%の燃料重量を、図2(B)に示すように、圧縮行程後半で噴射し、点火栓9周りにストイキよりもリッチな混合気を層状に形成して、燃焼させる。
【0021】
成層ストイキ燃焼のコンセプトは、次のようである。
(1)吸気行程噴射により燃焼室壁面近傍にリーン混合気を形成し、後燃えに必要なO2 を確保する。
(2)圧縮行程噴射により点火プラグ周りにリッチ混合気を形成し、初期着火性能を向上させることで、燃焼安定性を向上させる。
(3)リッチ混合気の燃焼によりCOを生成し、燃焼室壁面近傍のリーン混合気中のO2 との後燃えを促進して、HC低減、排気温度上昇を図る。
(4)初期着火性能の向上等により点火時期を遅角化可能であり、点火時期の遅角により、後燃え効果による排気温度上昇を更に図る。
【0022】
上記のような成層ストイキ燃焼によれば、従来の均質ストイキ燃焼と比較して排気温度を上昇させることができるだけでなく、燃焼室7から排気通路10に排出されるHC、NOxの量を減少させることができる。従って、始動開始から排気浄化触媒16が活性化するまでの間における大気中へのHC、NOxの排出を抑制しながら、排気浄化触媒16の早期活性化を促進できる。
【0023】
このため、コントロールユニット20では、始動開始から排気浄化触媒16が活性化するまでの間(触媒暖機要求時)において、キースイッチ30の他、前記各種センサからの入力信号を受け、図3及び図4のフローチャートに示すような制御を行う。
図3は始動時燃焼制御のフローチャートである。
【0024】
S1では、キースイッチ30のイグニッション信号がONとなったか(キー位置がイグニッションON位置とされたか)否かを判断する。YESであれば、S2へ進み、NOであれば、本フローを終了する。
S2では、キースイッチ30のスタート信号がONとなったか(キー位置がSTART位置とされたか)否かを判断する。YESであれば、始動のためのクランキング要求があると判断して、S3へ進み、NOであれば、未だクランキング要求はないと判断して、S1ヘ戻る。
【0025】
S3では、始動のため、従来同様に、スタータモータの駆動を開始して、エンジンをクランキングする。
S4では、始動のため、従来同様に、吸気行程噴射による均質燃焼(均質ストイキ燃焼)を行わせる。
S5では、排気浄化触媒16が活性化しているか否かを判断する。当該判断は、排気通路15の排気浄化触媒16下流側に配置される空燃比センサ28が活性化したか(そのリッチ・リーン出力が反転したか)否かによって行うことができる。もちろん、排気浄化触媒16の温度を直接或いは排気温度から間接的に検出して、これに基づいて判断するようにしてもよい。又は、水温Twより排気浄化触媒16の温度を推定し、これに基づいて判断するようにしてもよい。
【0026】
排気浄化触媒16が活性化していなければ(NOであれば)、S6へ進む。一方、排気浄化触媒16が活性化していれば(YESであれば)、触媒活性化促進のための制御の必要はないとして、S8へ進み、燃費改善等のために、従来同様の通常の燃焼制御により、運転状態に応じた燃焼形態(均質ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、成層リーン燃焼など)で燃焼を行わせて、本フローを終了する。
【0027】
S6では、触媒活性化促進のための分割噴射による成層ストイキ燃焼の許可条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、例えば、下記(1)〜(3)の条件が全て成立しているとき、成層ストイキ燃焼が許可される。
(1)空燃比センサ27が活性化していること(完爆から所定時間が経過していることで代替してもよい)。成層ストイキ燃焼中に空燃比フィードバック制御を行う場合に必要である。尚、空燃比センサ27は、触媒16の上流側に設けられ、かつ熱容量も小さいので、触媒16に比べれば、活性化速度は極めて速い。また、空燃比センサ27を電熱ヒータ等により強制的に昇温(活性化)させることもできるから、成層ストイキ燃焼中(触媒16の暖機過程中)に、当該空燃比センサ27の検出結果に基づく空燃比フィードバック制御を行うことは可能である。
【0028】
(2)アイドル状態であること。具体的には、アイドルスイッチがONで、エンジン回転数Ne、吸入空気量Qaがそれぞれ予め定めた上限値〜下限値の範囲内にあることを確認する。
(3)水温Twが所定値以上であること。水温Twが所定値未満の極低温状態では、ピストン冠面温度が低く、当該ピストン冠面を利用した成層混合気の霧化・気化促進などが良好に行われなくなるからである。
【0029】
成層ストイキ燃焼の許可条件が成立していない場合は、分割噴射による成層ストイキ燃焼への移行を禁止し、吸気行程噴射による均質燃焼を継続すべく、S4へ戻る。
成層ストイキ燃焼の許可条件が成立している場合は、S7へ進む。
S7では、分割噴射による成層ストイキ燃焼を行わせて、排気浄化触媒16の早期活性化を促進する。ここでの詳細な制御は、均質燃焼→成層ストイキ燃焼への切換時制御、暖機完了後の成層ストイキ燃焼→均質燃焼への切換時制御も含め、後述する図4のフローチャートに従って行われる。
【0030】
このような成層ストイキ燃焼中、排気浄化触媒16が活性化したか否かを判断していて(図4のフローのS22)、活性化していなければ、成層ストイキ燃焼を継続するが、活性化していれば、成層ストイキ燃焼を終了してS8へ進む。
S8では、通常の燃焼制御として、運転状態に応じた燃焼形態(均質ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、成層リーン燃焼など)へ移行させた後、本フローを終了する。
【0031】
図4は成層ストイキ燃焼制御のフローチャートであり、図3のフローのS7にて実行される。
S11では、均質燃焼→成層ストイキ燃焼への切換えに先立ち、燃料噴射弁8への燃料圧力(燃圧)を成層ストイキ燃焼を行うのに要求される燃圧に切換える制御を行う(図11のa参照)。成層ストイキ燃焼では吸気行程と圧縮行程とに分割して燃料噴射するので、各噴射のパルス幅が燃料噴射量に対してリニアリティを確保できる大きさ以上となるように、1回で噴射する場合に比較して燃圧を低下させるように切換制御する。
【0032】
具体的には、燃圧センサ26により検出される実際の燃圧と、目標燃圧とを比較しつつ、高圧プレッシャレギュレータ14への開弁デューティをフィードバック制御しているので、目標燃圧を予め定めた低圧側の値に変更することで、開弁デューティを増大させ、リターン流量を増大させて、燃圧を低下させる。そして、実際の燃圧が目標燃圧に達して安定した後に、S12へ進む。
【0033】
S12では、点火時期を徐々に遅角する(図11のb参照)。
均質燃焼から成層ストイキ燃焼に切換える場合は、熱効率が低い成層ストイキ燃焼への切換時のトルク低下を無くすためにトルクを増大補正する必要があるが、現在の均質燃焼では、点火時期は、所定の燃費(或いはエンジン安定性)を達成できるように、MBT(最大トルク発生点火時期)に制御されているので、そのままではトルクを増大補正するための点火時期の進角補正代がない。
【0034】
そこで、先ず、S12で、燃焼切換時のトルク増大補正が可能な進角補正代を確保できるまで点火時期を徐々に遅角する。詳細には、エンジン回転数及び負荷などに基づいて、進角補正代を確保できる目標遅角点火時期をマップからの検索等で算出し、この目標遅角点火時期となるまで所定の遅角割合で徐々に遅角していく。
【0035】
S13では、点火時期が目標遅角点火時期に到達したか否かを判定し、到達していない場合は、S12へ戻って点火時期を更に遅角する。この結果、目標遅角点火時期に到達した場合は、均質燃焼から成層ストイキ燃焼に切換えるため、S13からS14へ進む。
S14では、成層ストイキ燃焼での圧縮行程噴射時期をエンジン温度に相関するパラメータである水温Twに応じ、水温Twが高いほど進角するように設定する(例えば60°BTDC〜70°BTDCの範囲)。尚、吸気行程噴射時期は一定とする(例えば50°ATDC)。
【0036】
具体的には、図5のフローチャートに示すように、S101で図6のマップを参照してエンジン回転数と噴射パルス幅とから成層ストイキ燃焼用の基本圧縮行程噴射時期(基本IT;圧縮TDCからの進角値)を設定し、S102で図7のテーブルを参照して水温Twより基本ITに対する進角側への補正値(ΔIT)を設定し、S103で基本ITにΔITを加算して、成層ストイキ燃焼用の圧縮行程噴射時期(IT=基本IT+ΔIT)を算出する。
【0037】
S15では、通常の燃料噴射(吸気行程噴射のみ)から、吸気行程噴射と圧縮行程噴射との分割噴射に切換え、圧縮行程噴射についてはS14で設定した時期に行うことで、成層ストイキ燃焼を開始する(図11のc参照)。
S16では、成層ストイキ燃焼への切換えと同時に、点火時期を一気に進角させて(遅角補正分を0として)、点火時期を遅角補正開始前のMBTに戻す(図11のc参照)。これにより、燃焼切換時のトルク段差の発生を解消して、安定した運転性を確保する。
【0038】
S17では、成層ストイキ燃焼での最適な点火時期(目標値)をエンジン温度に相関するパラメータである水温Twに応じ、水温Twが高いほど遅角するように設定する(例えば7°BTDC〜0°BTDCの範囲)。
具体的には、図8のフローチャートに示すように、S201で図9のマップを参照してエンジン回転数と負荷とから成層ストイキ燃焼用の基本点火時期(基本ADV;圧縮TDCからの進角値)を設定し、S202で図10のテーブルを参照して水温Twより基本ADVに対する遅角側への補正値(ΔADV)を設定し、S203で基本ADVからΔADVを減算して、成層ストイキ燃焼用の点火時期(ADV=基本ADV−ΔADV)を算出する。
【0039】
S18では、点火時期を徐々に遅角する(図11のd参照)。すなわち、S17にて設定した成層ストイキ燃焼での最適な点火時期(目標値)まで徐々に遅角する制御を行う。尚、成層ストイキ燃焼での最適な点火時期は、燃焼安定性、HC性能、スモーク性能などの限界内で最大限遅角するようになっており、これにより最大限排気温度を上昇させることができる。
【0040】
このようにすれば、始動用の均質燃焼から排気温度上昇用の成層ストイキ燃焼への切換時のトルク段差を解消しながら、切換後は成層ストイキ燃焼による排気浄化触媒16の活性化を最大限促進することができる。
S19では、点火時期が成層ストイキ燃焼での最適な点火時期(目標値)に到達したか否かを判定し、到達していない場合は、S18へ戻って点火時期を更に遅角する。この結果、目標遅角点火時期に到達した場合は、S19からS20へ進む。
【0041】
S20では、S14と同様、図5のフローチャートに従って、成層ストイキ燃焼での圧縮行程噴射時期を暖機促進と共に徐々に上昇する水温Twに応じ、水温Twが高くなるほど進角するように再設定する(図11のe参照)。
S21では、S17と同様、図8のフローチャートに従って、成層ストイキ燃焼での点火時期を暖機促進と共に徐々に上昇する水温Twに応じ、水温Twが高くなるほど遅角するように再設定する(図11のf参照)。
【0042】
S22では、排気浄化触媒16が活性化したか(暖機完了か)否かを判断する。当該判断は、図3のフローのS5と同様に行う。
排気浄化触媒16が活性化していなければ(NOであれば)、S20、S21へ戻る。従って、水温Twより圧縮行程噴射時期及び点火時期を再設定しつつ、成層ストイキ燃焼を継続する。
【0043】
一方、排気浄化触媒16が活性化していれば(YESであれば)、S23以降へ進み、成層ストイキ燃焼を終了させるべく、成層ストイキ燃焼→均質燃焼への切換時制御を開始する(図11のg参照)。
S23では、点火時期を徐々に進角する。すなわち、均質燃焼→成層ストイキ燃焼への切換時制御とは、全く逆に、燃焼切換時のトルク増大を抑制するため、燃焼切換時に点火時期を遅角制御するための遅角補正代を確保するため徐々に進角する(図11のh参照)。
【0044】
S24では、点火時期が目標進角点火時期に到達したか否かを判定し、到達していない場合は、S23へ戻って点火時期を更に進角する。この結果、目標進角点火時期に到達した場合は、S24からS25へ進む。
S25では、通常の燃料噴射に対応させるため、燃料噴射弁8への燃料圧力(燃圧)を上昇させるように切換制御する(図11のi参照)。具体的には、燃圧センサ26により検出される実際の燃圧と、目標燃圧とを比較しつつ、高圧プレッシャレギュレータ14への開弁デューティをフィードバック制御しているので、目標燃圧を予め定めた高圧の値に戻すことで、開弁デューティを減少させ、リターン流量を減少させて、燃圧を上昇させる。
【0045】
S26では、分割噴射を終了することで、通常の均質燃焼に切換える(図11のi参照)。
S27では、均質燃焼への切換えと同時に、点火時期を一気に遅角する(図11のi参照)。これにより、燃焼切換時のトルク段差の発生を解消して、安定した運転性を確保する。
【0046】
S28では、点火時期を徐々に進角する(図11のj参照)。すなわち、切換後の燃焼に見合ったMBTまで徐々に進角する。
S29では、点火時期がMBTに到達したか否かを判定し、到達していない場合は、S28へ戻って点火時期を更に進角する。この結果、MBTに到達した場合は、S29からリターンする。
【0047】
以上の均質燃焼から成層ストイキ燃焼、成層ストイキ燃焼から均質燃焼への切換時の一連の制御の様子を図11に示している。
次に本発明における成層ストイキ燃焼での燃料噴射時期(特に圧縮行程噴射時期)及び点火時期の制御について更に詳しく説明する。
成層ストイキ燃焼時の圧縮行程噴射時期ITは、燃焼性能に影響を及ぼすので、従来は暖機後の成層リーン燃焼における噴射時期をベースにして、運転性、燃焼安定性を確保した上で、効果最大となるように設定行っている。
【0048】
しかし、図12に示すように、エンジン温度(水温)により成層ストイキ燃焼の成立可能な圧縮行程噴射時期ITの範囲が変化する(A1〜A3)。従って、水温を無視する場合には、全ての温度範囲で成層ストイキ燃焼が成立するように極めて狭い領域内でITを設定しなければならず、IT遅角による排温上昇効果を十分には達成できない。
【0049】
従って、圧縮行程噴射時期ITはエンジン温度(水温)に応じて定めるのが望ましい。
また、成層ストイキ燃焼時に分割噴射における燃料噴射弁の噴射時間確保のために燃圧を低下させる場合、図2(B)にEXで示すように、燃圧が低いことで、燃料噴射弁8の噴霧貫徹力が低下して、燃料噴霧が拡がり、ピストン冠面のボウル部6aを経て、点火プラグ9周りに達する燃料噴霧が減少する。
【0050】
従って、エンジン温度(水温)が低いほど、圧縮行程噴射時期を遅角して、点火プラグ周りへの燃料量を確保する必要がある。
その一方、エンジン温度(水温)が高くなるに従って、燃料の霧化が良くなるので、点火プラグ周りの空燃比がオーバーリッチになり、燃え残りとしてスモークが発生する。
【0051】
従って、エンジン温度(水温)の上昇に伴って、圧縮行程噴射時期を進角することにより、オーバーリッチを防止する。
このため、触媒暖機要求時の成層ストイキ燃焼においては、エンジン温度(水温)が高くなるほど、圧縮行程噴射時期ITを進角する。
また、成層ストイキ燃焼時の圧縮行程噴射時期ITだけでなく、点火時期ADVについても同様で、エンジン温度(水温)に応じて、最適となるように制御する。
【0052】
図13は、点火時期ADVを横軸、圧縮行程噴射時期ITを縦軸として、成層ストイキ燃焼時の燃焼安定性限界、スモーク限界、HC限界について、水温Tw=20℃の時(冷機時)を太線で、水温Tw=40℃の時(暖機過程)を細線で示している。
これによれば、3つの限界線により囲まれる略3角形の設定可能領域が、水温Twにより変化することがわかる。
【0053】
また、3つの限界線により囲まれる略3角形(設定可能領域内)において、排気温度上昇効果が最大となる噴射時期IT遅角側、点火時期ADV遅角側の頂点が、効果ベスト点であり、水温Tw=20℃での効果ベストに対し、水温Tw=40℃での効果ベスト点は、左下方向(噴射時期IT進角方向かつ点火時期ADV遅角方向)に移動している。
【0054】
従って、エンジン温度(水温)の上昇に伴わせて、圧縮行程噴射時期ITを進角し、点火時期ADVを遅角することで、効果最大の設定となる。
次に成層ストイキ燃焼時の圧縮行程噴射時期の設定について更に詳しく説明する。
図14(A)は、水温Tw=20℃での、成層ストイキ燃焼時の圧縮行程噴射時期ITに対する、燃焼安定性、スモーク、HC、排温の変化を示している。
【0055】
圧縮行程噴射時期ITを遅角すると、点火プラグ周りがリッチになることで、CO大になり、吸気行程で噴射して形成したリーン混合気中のO2 との後燃えを促進でき、HC低減、排温上昇が得られる。
但し、圧縮行程噴射時期ITを遅角しすぎると、点火プラグ周りの空燃比がリッチ限界を超えて(略A/F<9)、燃焼が不安定になるのと同時に、燃料が燃え残り、結果としてスモークが発生する。
【0056】
よって、燃焼安定性が成立し、スモーク発生のない圧縮行程噴射時期ITに設定する必要があり、図14(A)の場合、圧縮行程噴射時期ITは、燃焼安定性限界により決まる。
図14(B)は、水温Tw=40℃での、成層ストイキ燃焼時の圧縮行程噴射時期ITに対する、燃焼安定性、スモーク、HC、排温の変化を示している。
【0057】
水温Tw=40℃でも、HC、排温については、絶対値は変わるものの、水温Tw=20℃のときと同様の傾向である。燃焼安定性、スモークについては、スモーク限界が進角側に移行して、燃焼安定性限界と逆転する。従って、図14(B)の場合、圧縮行程噴射時期ITは、スモーク限界により決まる。
従って、図14(A)での効果ベスト点(燃焼性安定限界)と図14(B)での効果ベスト点(スモーク限界)との比較から明らかなように、エンジン温度(水温)の上昇に伴わせて、圧縮行程噴射時期ITを進角するのが良いことがわかる。
【0058】
次に成層ストイキ燃焼時の点火時期の設定について更に詳しく説明する。
図15は、例えば水温Tw=20℃での、成層ストイキ燃焼時の点火時期ADVに対する、燃焼安定性、スモーク、HC、排温の変化を示している。
点火時期ADVを遅角すると、後燃えを促進でき、HC低減、排温上昇が得られる。また、スモークも減少する。但し、点火時期ADVを遅角しすぎると、燃焼が不安定となる。従って、設定すべき点火時期ADVは、燃焼安定性限界により決まる。
【0059】
燃焼安定性限界については、エンジン温度(水温)の上昇に伴って、より遅角側となる。これは、エンジン温度(水温)の上昇により、燃料霧化が促進され、点火プラグ周り及び燃焼室壁面部などに良好な混合気が確保されることで、燃焼安定化が進み、燃焼安定性限界に余裕が生まれるからである。
従って、エンジン温度(水温)の上昇による燃焼安定性限界の遅角側への移行に伴わせて、点火時期ADVを遅角するのが良いことがわかる。
【0060】
以上説明したように本実施形態によれば、排気浄化触媒の暖機要求時に、燃料噴射を分割して、点火時期までに吸気行程での早期噴射と圧縮行程後半での後期噴射とを行い、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど後期噴射の噴射時期を進角することにより、燃焼安定性を確保しつつエミッション改善及び暖機促進の効果を高めることができ、特にスモーク性能を大幅に改善できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、排気浄化触媒の暖機要求時に、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど点火時期を遅角することにより、噴射時期制御との組み合わせで、排温上昇効果、燃焼安定性、HC性能、及びスモーク性能をより総合的に勘案した制御を行うことができる。
また、本実施形態によれば、排気浄化触媒の暖機要求時に分割噴射を行う際、通常の1回噴射よりも燃料圧力を低下させることにより、分割噴射における各噴射での噴射時間を長くして、噴射パルス幅−燃料噴射量特性の直線領域にて各噴射を行うことが可能となり、制御精度を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、エンジン温度に相関するパラメータとして、エンジン水温を用いることにより、特別なセンサの追加なしに簡易に実施できる。
尚、以上の実施形態では、エンジン温度に相関するパラメータとして、エンジン水温を用いたが、燃焼性能に直結するピストン冠面温度(特にピストン6の冠面に凹設したボウル部6aの表面温度)を用いるようにしてもよい。
【0063】
ピストン冠面温度は、ピストン6(特にその冠面)に埋め込んだサーモカップル等により直接検出してもよいし、エンジン水温Twに基づく擬似水温として推定してもよい。
ピストン冠面温度に相当する疑似水温は、始動時冷却水温度に応じた初期値と、所定周期毎の吸入空気量に応じた遅れ補正係数とに基づいて、エンジン水温の変化に対して遅れを持たせて算出することができる。
【0064】
具体的な推定方法を図16により説明する。
ピストン冠面温度と相関のある疑似水温TWF[t] (tはイグニッション信号ON後の経過時間)は、始動時水温TWe0に応じて、疑似水温初期値TWF0から始まり、単位時間毎に吸入空気量Qaによって決まる遅れ補正係数Ktwfずつ一次遅れでエンジン水温Tweに向かって収束する。
【0065】
TWF[t] =TWe[t] −(TWe[t] −TWF[t−1] )×(1−Ktwf)ここで、、TWF[0] =TWe[0] 、tはIGN/SW−ON後の経過時間である。尚、疑似水温初期値TWF0は、始動時水温TWe0に基づき図16に示すテーブル等を参照することで求めることができ、遅れ補正係数Ktwfは吸入空気量Qaに基づき図16に示すテーブル等を参照して求めることができるものである。
【0066】
このように、エンジン温度に相関するパラメータとして、ピストン冠面温度を用いることにより、ピストン冠面を利用して点火プラグ周りにリッチ混合気を形成する場合に、成層ストイキ燃焼の正否に直結する温度を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエンジンのシステム図
【図2】成層ストイキ燃焼の説明図
【図3】始動時燃焼制御のフローチャート
【図4】成層ストイキ燃焼制御のフローチャート
【図5】成層ストイキ燃焼用圧縮行程噴射時期設定のフローチャート
【図6】成層ストイキ燃焼用圧縮行程噴射時期の基本値マップ
【図7】成層ストイキ燃焼用圧縮行程噴射時期の補正値テーブル
【図8】成層ストイキ燃焼用点火時期設定のフローチャート
【図9】成層ストイキ燃焼用点火時期の基本値マップ
【図10】成層ストイキ燃焼用点火時期の補正値テーブル
【図11】始動から成層ストイキ燃焼切換えのタイミングチャート
【図12】水温によるIT成立領域を示す図
【図13】IT、ADVの設定可能領域を示す図
【図14】ITによる性能変化を示す図
【図15】ADVによる性能変化を示す図
【図16】ピストン冠面温度推定方法の説明図
【符号の説明】
1 エンジン
2 吸気通路
3 スロットル弁
6 ピストン
6a ボウル部
7 燃焼室
8 燃料噴射弁
9 点火プラグ
12 高圧燃料ポンプ
14 高圧プレッシャレギュレータ
15 排気通路
16 排気浄化触媒
20 コントロールユニット
25 水温センサ

Claims (11)

  1. 筒内に直接臨んで燃料噴射弁が配設された直噴火花点火式エンジンにおいて、排気浄化触媒の暖機要求時に、燃料噴射を分割して、点火時期までに早期噴射と後期噴射とを行い、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど後期噴射の噴射時期を進角することを特徴とする直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  2. 早期噴射は吸気行程で、後期噴射は圧縮行程で行うことを特徴とする請求項1記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  3. 後期噴射は圧縮行程の後半で行うことを特徴とする請求項2記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  4. 排気浄化触媒の暖機要求時に、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど点火時期を遅角することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  5. ピストン冠面にボウル部が形成され、燃料噴射弁はボウル部を指向して燃料を噴射し、後期噴射は、圧縮行程の後半において、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど進角することを特徴とする請求項1記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  6. 排気浄化触媒の暖機要求時に、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど点火時期を遅角することを特徴とする請求項5記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  7. 排気浄化触媒の暖機要求時に分割噴射を行う際、通常の1回度噴射よりも燃料圧力を低下させることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  8. エンジン温度に相関するパラメータはエンジン冷却水温度であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  9. エンジン温度に相関するパラメータはピストン冠面温度であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の直噴火花点火式エンジンの制御装置。
  10. 排気浄化触媒の暖機要求時に、燃料噴射を分割して、吸気行程での早期噴射と圧縮行程での後期噴射とを行い、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど後期噴射の噴射時期を進角することを特徴とする直噴火花点火式エンジンの制御方法。
  11. 排気浄化触媒の暖機要求時に、エンジン温度に相関するパラメータがエンジン温度が高いことを示すほど点火時期を遅角することを特徴とする請求項10記載の直噴火花点火式エンジンの制御方法。
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