JP2004027968A - コモンレールおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コモンレール10の中空内は主管孔12とされ、この主管孔12の孔壁には凹孔15が開口し、またこの凹孔15の孔壁には分岐孔16が開口している。凹孔15の孔壁は、コイニング加工により凹球面形状に形成されて表面硬化部Hとなっているため、圧縮残留応力が生じて加圧燃料の内圧に起因する引張り応力が抑制される。また、凹孔15を凹球面形状となした形態面からの関与によっても、加圧燃料の内圧に起因する引張り応力が抑制される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのコモンレール式燃料噴射装置におけるコモンレールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のコモンレール式燃料噴射装置におけるコモンレールとしては、図7に示すものがある。このコモンレール51は、中心部にレール長方向に延びる主管孔52を有するレール本体53を備え、このレール本体53には長さ方向に間隔を空けて複数の分岐孔54が形成され、これら分岐孔54は主管孔52の内壁に開口している。分岐孔54には同軸状に拡径された連通孔55が連通しており、この連通孔55の外周側端部は、インジェクションパイプ(図示せず)との接続部56として外部へテーパ状に開口している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したようなコモンレール51においては、主管孔52と分岐孔54の内壁に対して加圧燃料による内圧がかかるため、この主管孔52と分岐孔54の双方の内壁には引張り応力が発生する。特に、主管孔52の内壁における分岐孔54の開口周辺部では、この主管孔52と分岐孔54の双方の応力が合成されることから、引張り応力の値は他の部分よりも大きくなる。
この引張り応力の発生源である加圧燃料による内圧は、車両の走行状態などに応じて変動することから、引張り応力もそれに応じて変動するものであるが、この変動する引張り応力の値が大きい部分、即ち主管孔52の内壁における分岐孔54の開口周辺部では、金属疲労の発生が懸念される。
【0004】
本願発明は上記事情に鑑みて創案され、レール孔の内壁における分岐孔の開口周辺部の内圧疲労強度を向上させることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、中空内が主管孔とされているレール本体に、前記主管孔に開口する分岐孔を形成してなるコモンレールにおいて、前記主管孔の内壁における前記分岐孔の開口周辺部には、表面硬化部が形成されている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記表面硬化処理は、コイニング加工によるものであり、このコイニング加工により前記主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部は、凹球面形状に形成されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、中空内が主管孔とされているレール本体に、前記主管孔の内壁に開口する分岐孔を形成してなるコモンレールの製造方法において、前記主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部に、表面硬化処理を施す構成としたところに特徴を有する。
【0008】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部には表面硬化処理が施されて表面硬化部が形成されているため、この表面硬化部において圧縮残留応力が付与されて内圧疲労強度が高められる。
【0009】
<請求項2の発明>
コイニング加工により主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部は凹球面形状に形成されているため、コイニング加工自体による内圧疲労強度の向上に加えて、凹球面形状とした形態面からも内圧疲労強度の向上を達成できる。
【0010】
<請求項3の発明>
主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部には表面硬化処理を施すため、この開口周辺部において圧縮残留応力が付与されて内圧疲労強度が高められる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1ないし図4によって説明する。本実施形態は、ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置に適用され、コモンレール10には、燃料ポンプを接続するための供給パイプ(図示せず)と、インジェクタを接続するためのインジェクションパイプ(図示せず)とが接続されることとなる。
【0012】
コモンレール10は、全体が炭素鋼等の鋼製で構成されており、軸方向に短寸の円筒形をなすレール本体11を備え、その中空内には加圧燃料が蓄積された主管孔12が形成されている。また、レール本体11は、主管孔12の側方を取り囲む側壁11Aおよび主管孔12の前方を塞ぐ前壁11Bより一体に形成される有底円筒状の前部11Cと、主管孔12の後方を塞ぐ円盤状の後部11Dとから構成されており、後部11Dは、側壁11Aの突出端縁に整合するよう重ねられ、その合わせ目に溶接がなされることで前部11Bに接合されている。
レール本体11の前壁11Bにおける前面には、レール本体11よりも小径の円筒形をなす分岐用筒部13が軸方向に平行ないし同軸上に突出形成されている。分岐用筒部13は、図2に示すように、前壁11Bの前面の中心位置の1箇所とそこから十字方向に離れた位置の4箇所と合計5箇所に設けられている。夫々の分岐用筒部13の外周には、供給パイプやインジェクションパイプを接続するための雄ネジ部14が形成されている。供給パイプは、前壁11Bの前面の中心位置における分岐用筒部13に対応し、インジェクションパイプは、残りの十字方向に位置する分岐用筒部13に対応している。
【0013】
レール本体11の前壁11Bにおける分岐用筒部13が形成されている領域には、主管孔12の内壁に開口する凹球面形状の凹孔15と、この凹孔15の周面に開口する一定内径の分岐孔16と、この分岐孔16の他端にテーパ孔17を介して連なる一定内径の接続孔18とが連通形成されている。接続孔18の開口縁には、外広がりのテーパ状をなすシール面19が形成され、ここにインジェクションパイプや供給パイプの先端面が密着するようになる。これら凹孔15、分岐孔16、テーパ孔17、及び接続孔18は、互いに同心状に連なり、且つその軸線はレール本体11の軸線に平行ないし同軸上に位置している。特に、分岐孔16は、その軸線上に凹球面形状をなす凹孔15の曲率中心が位置するようにしてある。
【0014】
次に、このコモンレールの製造方法について説明する。本実施形態では、凹孔15をコイニング加工により形成しており、以下、この点を中心に詳述する。
図3に示すように、製造に際しては、まず前工程として、切削加工により接続孔18と分岐孔16とを穿設しておくものの、まだ凹孔16が形成されていない状態のレール本体11における前部11Cを用意する。この状態の前部11Cには、前壁11Bの内側面(後に主管孔12の内壁となる部分)に分岐孔16が開口している。続いて、図4に示すように、この前部11Cをその分岐用筒部13が突出する側から受け台(図示せず)に固定させ、この状態で前壁11Bの内側面における分岐孔16の開口周辺部に対してコイニングポンチ30をその頭部31側から押圧する。コイニングポンチ30の頭部31は、凸球面形状をなしており、このコイニングポンチ30による押圧作用を受けることで、前壁11Bの内側面における分岐孔16の開口周辺部は圧潰される。その後、コイニングポンチ30による押圧を解除すると、前壁11Bの内側面における分岐孔16の開口周辺部には、コイニングポンチ30の頭部31の凸球面形状に対応する凹球面形状の凹孔15が形成される。
こうして凹孔15の孔壁はコイニング加工により表面硬化部Hとなり、この領域に圧縮残留応力を生じさせるようになる。コイニングポンチ30による押圧を解除した後は、前部11Cを受け台から取り外し、次いで、この前部11Cにおける側壁11Aの突出端縁に後部11Dの周端縁を整合状態で重ね合わせ、この合わせ目となる部分の全周に溶接を施して両者を一体的に接合する。前部11Cと後部11Dとが一体的に接合されることにより、中空内に主管孔12が形成されたレール本体11の全体が形成される。
【0015】
上記したように、本実施形態のコモンレール10は、コイニング加工により、主管孔12の内壁における分岐孔16の開口周辺部に圧縮残留応力が付与されるため、この分岐孔16の開口周辺部において加圧燃料の内圧に起因する引張り応力が抑制され、内圧疲労強度が高められることとなる。
【0016】
また、主管孔12の内壁における開口周辺部を凹球面形状に形成することにより、平面形状に形成された領域に加圧燃料の内圧が作用するよりも、その内圧が作用する領域における引張り応力が低減されるようになるため、このような凹球面形状となした形態面からの関与によっても、内圧疲労強度が高められるようになる。さらに付け加えるならば、この凹球面形状をなす凹孔15に連通する分岐孔16は、本実施形態においては主管孔12の軸線と平行ないし同軸状に形成するようにしていたが、分岐孔16の配置はこれに限定されるわけではなく、種々の態様で配置可能である。すなわち、分岐孔16の延びる方向は加圧燃料の内圧のかかる方向と一致させる必要があるが、本実施形態ではこの内圧のかかる面が凹球面形状となっているため、分岐孔16は、この凹孔15における凹球面の曲率中心を中心とした放射位置に配されることが可能となり、もってその配置態様のバリエーションの幅が広がるようになる。
【0017】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図5によって説明する。
第2実施形態では、第1実施形態と異なり、分岐孔16が凹孔15を介さずして主管孔12の内壁に直接に開口するようになっているが、他の構成は、第1実施形態と同様であるため、図面中に同一符号を付して重複した説明は省略する。この第2実施形態では、主管孔12の内壁における分岐孔16の開口周辺部に対して所定の間隔を空けて高周波焼入れコイル35を対向させ、その状態から分岐孔16の開口周辺部に高周波電流を流して局所的な焼入れを行なっており、もって凹孔15を形成することなく表面硬化部Hを形成している。第2実施形態において高周波焼入れ法を採用した理由は、浸炭焼入れのような浸炭層を除去したり防炭したりする手間を回避できること、コモンレールが焼入れ可能な鋼材であること、焼入れコイル35により局所的な焼入れが可能であること、表面硬さの制御が可能であること、複雑な設備を要しないこと等の種々のメリットを考慮したものである。
【0018】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0019】
(1)図6に示すように、主管孔12の内壁における分岐孔16の開口周辺部にレーザービーム36を照射して局部的な焼入れを行なったり、あるいはショットピーニングを行うことにより、表面硬化部Hを形成する態様であっても構わない。
【0020】
(2)コモンレールの形態は、特に限定されず、例えば、円形断面で軸方向に長く延びるレール本体を備えるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の縦断面図
【図2】同じく正面図
【図3】同じく表面硬化部を形成する前の状態をあらわす縦断面図
【図4】同じく表面硬化部を形成した状態をあらわす縦断面図
【図5】第2実施形態の図4相当図
【図6】他の実施形態の図4相当図
【図7】従来例の縦断面図
【符号の説明】
H…表面硬化部
10…コモンレール
11…レール本体
12…主管孔
13…分岐用筒部
15…凹孔
16…分岐孔
Claims (3)
- 中空内が主管孔とされているレール本体に、前記主管孔の内壁に開口する分岐孔を形成してなるコモンレールにおいて、
前記主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部には、表面硬化部が形成されていることを特徴とするコモンレール。 - 前記表面硬化処理は、コイニング加工によるものであり、このコイニング加工により前記主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部は、凹球面形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコモンレール。
- 中空内が主管孔とされているレール本体に、前記主管孔の内壁に開口する分岐孔を形成してなるコモンレールの製造方法において、
前記主管孔の内壁における分岐孔の開口周辺部に、表面硬化処理を施すことを特徴とするコモンレールの製造方法。
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