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JP2004025726A - 実曝耐候性に優れたポリカーボネート樹脂積層体 - Google Patents

実曝耐候性に優れたポリカーボネート樹脂積層体 Download PDF

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JP2004025726A
JP2004025726A JP2002187969A JP2002187969A JP2004025726A JP 2004025726 A JP2004025726 A JP 2004025726A JP 2002187969 A JP2002187969 A JP 2002187969A JP 2002187969 A JP2002187969 A JP 2002187969A JP 2004025726 A JP2004025726 A JP 2004025726A
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Abstract

【課題】高い実曝耐候性を付与しうる硬化被膜で表面を保護された、耐摩耗性にも優れた性能を有するプラスチック成形体を提供することにある。
【解決手段】透明ポリカーボネート樹脂板の少なくとも一面に、アクリル樹脂層(第一層)とコロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂を含む組成物硬化層(第二層)の2層が順次積層された積層体であって、該積層体の第一層が下記式(1)〜(3)を満足し、かつ濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.25以上である紫外線吸収能を有する化合物を含有することを特徴とする実曝耐候性に優れたポリカーボネート樹脂積層体。
2≦d≦8・・・(1)
0.1≦c≦0.5・・・(2)
0.6≦d×c≦3・・・(3)
(但し、ここでdはμmで表された第一層膜厚であり、cは該層中のg/cmで表された紫外線吸収能を有する化合物に由来する単位の濃度である)
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は表面を保護されたポリカーボネート樹脂積層体に関する。さらに詳しくはポリカーボネート樹脂に特定性能を持った紫外線吸収基を有する化合物を添加及び/又は共重合により導入されたアクリル樹脂層とオルガノシロキサン樹脂の硬化物層とを順次積層することにより、実曝による耐候性に対しての耐久性が著しく改善された、ポリカーボネート樹脂積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック材料は、耐衝撃性、軽量性、加工性等の特長を生かして、多方面の用途で使用されている。特に、透明プラスチックであるアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂等はガラスの代替として幅広く利用されている。しかし、これらの樹脂は耐候性が十分ではなく、長期の屋外の使用において分解・劣化するため物性、外観が損われることが知られている。近年、その軽量性、安全性を活かして窓ガラス、殊に自動車の窓ガラスに有機ガラスとして透明プラスチックシートを適用しようとする動きがある。このような用途に透明プラスチックシートを適用する場合、ガラス並の高度な耐候性が要求される。また、前面ガラスではワイパー作動時のすり傷発生を防止する必要があり、サイドウィンドーではウィンドー昇降時のすり傷発生を防止する必要がある。このような用途では高いレベルの耐摩耗性が要求される。
【0003】
これらの欠点を改良する目的で、従来からプラスチック表面に熱硬化型アクリル樹脂層を設け、さらにその上にシロキサン系の硬化被膜を被覆することにより耐候性、耐久性、耐摩耗性を改良する数多くの提案がなされてきている。
【0004】
例えば、特公平3−65383号公報にはアルコキシシリル基を有するアクリル及び/又はビニル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体、硬化触媒及び架橋剤を含む組成物を被覆硬化して下塗り層となし、コロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサンを含む組成物を上塗り塗料とするコーティング組成物が提案されており、この組成物でポリカーボネート樹脂成形品を被覆することによって、耐摩耗性の優れた被覆ポリカーボネート樹脂成形品が得られている。しかし、添加した紫外線吸収剤量に対して、促進試験では十分な耐候性が得られているが、実曝では予想より下回る耐候性しか得られない事、膜厚によって耐候性にバラツキがあること等の問題があり、実曝にあった紫外線吸収剤種及び濃度の選定、適正な膜厚の設計による、実曝での良好な耐候性を持ったポリカーボネート積層体が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は高い実曝耐候性を付与しうる硬化被膜で表面を保護された、耐摩耗性にも優れた性能を有するプラスチック成形体を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、この目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネートの最大劣化波長が290nmであるため、290nm付近に吸収能の強い紫外線吸収剤を好んで使用されているのに対して、実曝の太陽光スペクトルが300nm以下はオゾン層によりほとんどカットされる事に注目し、300nmの吸収能をある範囲以上持った紫外線吸収基を有する化合物を添加及び/又は共重合により導入されたアクリル樹脂層を特定の膜厚で積層し、オルガノシロキサン樹脂の硬化物層を順次積層することにより、実曝による耐候性に対しての耐久性が著しく改善された透明ポリカーボネート樹脂積層体が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、透明ポリカーボネート樹脂板の少なくとも一面に、アクリル樹脂層(第一層)とコロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂を含む組成物硬化層(第二層)の2層が順次積層された積層体であって、該積層体の第一層が下記式(1)〜(3)を満足し、かつ濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.25以上である紫外線吸収能を有する化合物を含有することを特徴とする実曝耐候性に優れたポリカーボネート樹脂積層体が提供される。
2≦d≦8・・・(1)
0.1≦c≦0.5・・・(2)
0.6≦d×c≦3・・・(3)
(但し、ここでdはμmで表された第一層膜厚であり、cは該層中のg/cmで表された紫外線吸収能を有する化合物に由来する単位の濃度である)
【0008】
本発明で用いられる第一層のアクリル樹脂層に関して、本発明でいう「第一層中に紫外線吸収能を有する化合物を含有する」とは、「第一層中に紫外線吸収基を有する化合物を添加する及び/又は第一層中のアクリル樹脂中に紫外線吸収基を有する化合物を共重合して導入すること」を意味する。
【0009】
本発明で用いられる第一層のアクリル樹脂は、ポリカーボネート基板及び第二層のコロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂を含む硬化被膜と良好な密着性を示すものであれば特に限定しない。例えばアルキルメタクリレートモノマーとヒドロキシ基を有するアクリレートモノマーを共重合して得られるヒドロキシ基を有するアクリル樹脂に架橋剤としてポリイソシアネート化合物やトリアルコキシシラン加水分解物を溶剤に混合し、加熱硬化させたものや、アルキルメタクリレートモノマーとヒドロキシ基を有するアクリレートモノマーおよび紫外線吸収残基を有するアクリレートモノマーを共重合して得られるヒドロキシ基を有するアクリル樹脂に架橋剤としてポリイソシアネート化合物やトリアルコキシシラン加水分解物を溶剤に混合し、加熱硬化させたもの等が挙げられる。中でも硬化させたものが好ましい。更に(A)下記式(1)
【0010】
【化1】
Figure 2004025726
【0011】
(但し、式中Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)
で示される繰り返し単位を50モル%以上含むアクリル樹脂、
(B)ポリイソシアネート化合物および/またはポリイソシアネート化合物前駆体からの硬化アクリル樹脂が塗液安定性等の特性が優れ好ましい。このアクリル樹脂の具体的例は50モル%以上のアルキルメタクリレートモノマーと50モル%以下のビニル系モノマーを重合して得られるポリマーがあげられる。アルキルメタクリレートモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートおよびブチルメタクリレートが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもメチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートが好ましい。また、他のビニル系モノマーとしてはアルキルメタクリレートモノマーと共重合可能なものであり、殊に接着性あるいは耐候性等の耐久性の面で、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの誘導体が好ましく使用される。具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(2′−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。また、アクリル樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0012】
また、かかるアクリル樹脂は、熱硬化型であることが好ましく、0.01モル%〜50モル%の架橋性の反応基を持つビニル系モノマーを含有することが望ましい。かかる架橋性の反応基を持つビニル系モノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0013】
なかでも、架橋性の反応基をもつビニル系モノマーとして2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基をもつアクリルモノマーを利用し、架橋剤としてポリイソシアネート化合物もしくはその誘導体を生成するポリイソシアネート化合物前駆体を利用した熱硬化型ウレタンアクリル樹脂を好ましく使用することができる。
【0014】
上記アクリル樹脂の分子量は、重量平均分子量で20,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、また、重量平均分子量で1千万以下のものが好ましく使用される。かかる分子量範囲の上記アクリル樹脂は、第一層としての密着性や強度などの性能が十分に発揮され好ましい。
【0015】
本発明に用いる上記塗膜樹脂(第一層)を形成する方法としては、アクリル樹脂等の塗膜樹脂成分および後述する光安定剤や紫外線吸収剤等の添加成分を、基材である透明プラスチックと反応したり該透明プラスチックを溶解したりしない揮発性の溶媒に溶解して、このコーティング組成物を透明プラスチック基材表面に塗布し、次いで該溶媒を加熱等により除去することにより行われる。必要であれば溶媒の除去後にさらに40〜140℃に加熱して架橋性基を架橋させることも好ましく行われる。
【0016】
かかる溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸エトキシエチル等のエステル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、灯油等の炭化水素類、アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。かかるコーティング組成物中の塗膜樹脂からなる固形分の濃度は1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。
【0017】
前記の硬化アクリル樹脂用のポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、またはこれらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂との付加物、あるいは上記したポリイソシアネート化合物同士の環化重合体、さらにはイソシアネート・ビュレット体等が挙げられ、なかでもヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族および脂環族のポリイソシアネート化合物や脂肪族および/または脂環族ポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂との付加物、脂肪族ポリイソシアネート化合物同志の環化重合体などが特に耐候性が優れ好ましい。
【0018】
前記の硬化アクリル樹脂用のポリイソシアネート化合物前駆体としては、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール類に代表されるブロック化剤を付加させ、熱分解によりポリイソシアネート化合物を生成するブロックイソシアネート化合物が挙げられる。このブロックイソシアネートは熱硬化反応時に初めてイソシアネート基が生成するので塗料組成物の貯蔵安定性に優れ、またイソシアネート基が副反応に消費されることが少なく、特に好ましく使用される。上記ポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物前駆体は単独もしくは2種類以上を混合して使用できる。
【0019】
またポリイソシアネート化合物および/またはポリイソシアネート化合物前駆体の初期および/または生成するイソシアネート基の含有率は好ましく5.0〜60重量%、より好ましくは6.0〜55重量%、最も好ましくは6.0〜50重量%である。イソシアネート基含有率が5.0重量%未満であるとアクリル樹脂に対するポリイソシアネート化合物および/またはポリイソシアネート化合物前駆体の配合量が多くなり、塗膜樹脂中の前記式(1)で表される繰返し単位の割合が低下するため、プラスチック基材との密着性が乏しくなる。また60重量%より多くなると塗膜層の可撓性が低下し、第二層を熱硬化する際に塗膜層にクラックが生じたり、環境の変化に対する耐久性を損うため好ましくない。
【0020】
本発明でいう初期イソシアネート基とは、例えば上記で例示したポリイソシアネート化合物の如く分子末端にフリーに存在しているイソシアネート基であり、また生成するイソシアネート基とは、例えばブロック化剤でイソシアネート基がブロックされているブロックイソシアネート化合物の如くブロックが熱分解し、その時生成されるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基である。
【0021】
前記ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と前記ポリイソシアネート化合物もしくはその誘導体またはポリイソシアネート化合物前駆体との混合量比は(A)のアクリル樹脂のヒドロキシ基1当量に対して、(B)の初期および生成するイソシアネート基の総量が好ましくは0.6〜2.0当量、より好ましくは0.7〜1.75当量、最も好ましくは0.8〜1.5当量である。このような組成に調製することで、かかるアクリル樹脂からなる層は透明プラスチック基材および第二層のオルガノシロキサン樹脂熱硬化層との良好な密着性を保つことができ、また、高水準の架橋密度を持つので紫外線や水、酸素による架橋密度の低下を引き起こしにくく、長期にわたる密着性、環境変化および高温環境下での耐久性を維持でき耐候性に優れる。
【0022】
上記アクリル樹脂中に添加及び/又は第共重合により導入される紫外線吸収基を有する化合物は、濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.25以上であれば特に限定されるものではない。具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシー4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシー4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−(5′−メチル−2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4−6−ビス(1−メチルー1フェニルエチル)フェノール、2−(3′−t−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3′,5′−ジ−t−ブチル−2′−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート類、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート類、ジエチル−p−メトキシベンジリデンマロネート、ビス(2−エチルヘキシル)ベンジリデンマロネート等のベンジリデンマロネート類が挙げられる。これらの剤は単独もしくは2種以上を併用してもよく、アクリル樹脂との相溶性や、溶剤との溶解性が(2)式の範囲で使用可能なものを選択することができる。
【0023】
また、アクリル樹脂と共重合可能な紫外線吸収基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーで濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.25以上であるものとしては、具体的には2−(2′−ヒドロキシ−5′−アクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−アクリロキシエトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−アクリロキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−アクリロキシプロポキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−アクリロキシエチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−アクリロキシエチル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−アクリロキシエチル−5′−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−(アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエチル)ベンゾフェノン、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシプロポキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−メタクリロキシエチル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−メタクリロキシエチル−5′−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−(メタクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエチル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0024】
上記の紫外線吸収基を有する化合物が、第一層中に添加及び/又は第一層中のアクリル樹脂中に共重合により導入された加熱硬化した第一層の膜厚d(μm)は、2≦d≦8、好ましくは3≦d≦5で、膜厚が2μm未満であると第二層膜にクラックが発生したり密着性を低下させるため耐候性が乏しくなる。膜厚が8μmより厚くなると熱硬化時の架橋反応が十分進行せず、高湿度下で白化したり密着性の低下を起こしたりする、耐久性に乏しい塗膜層になる。また、上記の紫外線吸収能を有する化合物の第一層中の濃度c(g/cm)は、0.1≦c≦0.5、好ましくは0.2≦c≦0.4で、濃度が0.1g/cm未満であると、紫外線の透過率が高くなり基材の黄変が生じたり密着性を低下させるため耐候性が乏しくなり、0.5g/cmを超えると、ポリカーボネート基材若しくは第二層との密着性が著しく低下し、実曝時に塗膜の自然剥離を起こしやすくなる。良好な実曝耐候性を得るには、上記d×cが、0.6≦d×c≦3、好ましくは0.8≦d×c≦2で、d×cが0.6以下であると紫外線の透過率が高くなり基材の黄変が生じたり密着性を低下させるため耐候性が乏しくなり、3を超えると、ポリカーボネート基材若しくは第二層との密着性が著しく低下し、実曝時に塗膜の自然剥離を起こしやすくなる。
【0025】
第一層に用いるアクリル樹脂層には必要に応じ硬化触媒、光安定剤、シランカップリング剤を添加することができる。
【0026】
光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ジフェニルメタン−p,p′−ジカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3−ジスルホネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)フェニルホスファイト等のヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニルサルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらの剤は単独もしくは2種以上を併用してもよく、実曝耐候性に良好な効果を付与できる場合がある。
【0027】
シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、また上記シランカップリング剤の部分加水分解縮合物も使用できる。かかる剤を添加することにより、ポリカーボネート基材と第一層および第一層と第二層の密着力が長期にわたり持続される。これらの剤は単独もしくは2種以上を併用しても良い。
【0028】
本発明で用いられる第二層のコロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂を含む組成物は、第一層のアクリル樹脂の硬化被膜と良好な密着性を示すものであれば特に限定しない。例えばコロイダルシリカ、トリアルコキシシランの加水分解縮合物からなるオルガノシロキサン樹脂が好ましく、特にコロイダルシリカ、トリアルコキシシランの加水分解縮合物およびテトラアルコキシシランの加水分解縮合物からなるオルガノシロキサン樹脂が好ましい。
【0029】
かかるコロイダルシリカ(以下、a成分と称することがある)は、直径5〜200nm、好ましくは5〜40nmのシリカ微粒子が水または有機溶媒中にコロイド状に分散されたものである。該コロイダルシリカは、水分散型および有機溶媒分散型のどちらでも使用できるが、水分散型のものを用いるのが好ましい。水分散型のコロイダルシリカの場合、シリカ微粒子の表面に多数の水酸基が存在し、これがトリアルコキシシラン加水分解縮合物と強固に結合するため、より耐摩耗性に優れたプラスチック積層体が得られるものと考えられる。
【0030】
また、水分散型コロイダルシリカはさらに酸性水溶液分散型と塩基性水溶液分散型に分かれる。該水分散型コロイダルシリカは酸性水溶液分散型と塩基性水溶液分散型のどちらでも使用できるが硬化触媒選択の多様性、メチルトリアルコキシシランの適切な加水分解、縮合状態の実現の観点から酸性水溶液分散型コロイダルシリカが好ましく使用される。
【0031】
かかるコロイダルシリカとして、具体的には、酸性水溶液中で分散させた商品として日産化学工業(株)のスノーテックスO、触媒化成工業(株)のカタロイドSN、塩基性水溶液中で分散させた商品として日産化学工業(株)のスノーテックス30、スノーテックス40、触媒化成工業(株)のカタロイドS30、カタロイドS40、有機溶剤に分散させた商品として日産化学工業(株)のMA−ST、IPA−ST、NBA−ST、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、NPC−ST、DMAC−ST、触媒化成工業(株)のOSCAL1132、OSCAL1232、OSCAL1332、OSCAL1432、OSCAL1532、OSCAL1632、OSCAL1732等が挙げられる。
【0032】
アルコキシシランの加水分解縮合物(以下、b成分と称することがある)は、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、なかでもアルキルトリアルコキシシランが好ましく、特にメチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランが好ましい。これらは単独もしくは混合して使用できる。
【0033】
該オルガノシロキサン樹脂組成物は例えば以下のプロセスを経て調製される。ただし、本発明は以下のプロセスに限定されるものではない。
【0034】
コロイダルシリカ分散液中でアルコキシシランを酸性条件下加水分解縮合反応させる。
【0035】
ここで、アルコキシシランの加水分解反応に必要な水は水分散型のコロイダルシリカ分散液を使用した場合はこの分散液から供給され、必要であればさらに水を加えてもよい。アルコキシシラン1当量に対して通常1〜10当量、好ましくは1.5〜7当量、さらに好ましくは3〜5当量の水が用いられる。
【0036】
前述のようにトリアルコキシシランの加水分解縮合反応は、酸性条件下で行う必要がある。かかる条件で加水分解を行なうために一般的には加水分解剤として酸が使用される。かかる酸は、予めアルコキシシランまたはコロイダルシリカ分散液に添加するか、両者を混合後に添加してもよい。また、該添加は1回或いは2回以上に分けることもできる。また酸性水溶液分散型コロイダルシリカを用いる場合、コロイダルシリカ中の酸が反応液を酸性条件下に保つので酸の使用は必ずしも必要ない。かかる酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、pHのコントロールの容易さの観点からギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸等の有機カルボン酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0037】
かかる酸として無機酸を使用する場合は通常0.0001〜2mol/l、好ましくは0.001〜0.1mol/lの濃度で使用し、有機酸を使用する場合はメチルトリアルコキシシラン100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部の範囲で使用される。
【0038】
アルコキシシランの加水分解、縮合反応の条件は使用するアルコキシシランの種類、系中に共存するコロイダルシリカの種類、量によって変化するので一概には云えないが、通常、系の温度が20〜40℃、反応時間が1時間〜数日間である。アルコキシシランの加水分解反応は発熱反応だが、系の温度は最高でも60℃を超えないことが望ましい。このような条件で十分に加水分解反応を進行させた上で、コート剤の安定化のため40〜80℃で1時間〜数日間縮合反応を進行させることも好ましく行われる。
【0039】
本発明において、オルガノシロキサン樹脂固形分であるa、b成分の各成分の混合割合はオルガノシロキサン樹脂組成物の安定性、得られる硬化膜の透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、密着性及びクラック発生の有無等の点から決められ、a成分、b成分の合計100重量%としたとき、この2成分の好ましい混合割合はa成分が10〜60重量%、b成分がR SiO(4−m−n)/2(但し、R、Rはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはメタクリロキシ基、アミノ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、m、nはそれぞれ0、1、2のいずれかの整数であり、m+nは0、1、2のいずれかの整数である)に換算して40〜90重量%、好ましくはa成分が10〜40重量%、b成分がR SiO(4−m−n)/2に換算して60〜90重量%である。
【0040】
第二層の厚みは、通常2〜10μm、好ましくは3〜8μmである。コート層の厚みがかかる範囲であると、熱硬化時に発生する応力のためにコート層にクラックが発生したり、コート層と基材との密着性が低下したりすることがなく、本発明の目的とする十分な耐摩耗性を有するコート層が得られることとなる。
【0041】
上記第一層および第二層のポリカーボネート基材への塗布はバーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材の形状に応じて適宜選択することができる。
【0042】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法等で反応させて得られるポリカーボネート樹脂である。二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等を挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0043】
ポリカーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0044】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0045】
ホスゲンを使用する界面重縮合法は、酸結合剤及び有機溶媒の存在下で反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられ、溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミン又は第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。また、ジフェニルカーボネートを用いる溶融法は、不活性ガス雰囲気下所定割合の二価フェノール成分とジフェニルカーボネートとを加熱しながら攪拌して、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら完結させる。また、反応を促進するために通常のエステル交換反応用触媒を使用することもできる。
【0046】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜50,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0047】
かかるポリカーボネート樹脂を製造する際に、必要に応じて亜燐酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステル等の安定剤、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェノール等の難燃剤、着色剤、滑剤等を添加することができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが本発明はもとよりこれに限定されるものではない。なお、実施例中各種物性の測定、評価は以下の方法によって行った。また、実施例中の部および%は重量部および重量%を意味する。
【0049】
(1)紫外線吸収能を有する化合物の濃度測定
各実施例及び比較例を実施する時、記載した紫外線吸収能を有する化合物の濃度(c:単位g/cm)が分かっている第一層用組成物を帝人化成(株)製透明ポリカーボネート樹脂板(PC−1151:紫外線吸収剤無添加)5.0mmにディップコート法で各実施例及び比較例で記載した厚さに塗布し、20分間室温で放置後の380nmの吸光度(I)を測定した(硬化前測定)。次に130℃で1時間熱硬化させた後、硬化前測定個所と同じ所の380nmの吸光度(I)を再び測定した。これらの値を用いて下記式(イ)に従って塗膜中の紫外線吸収能を有する化合物の濃度(c)を計算した。
c=c×(I/I) …(イ)
尚、I及びIの測定値は別にPC−1151単独の380nmの吸光度を測定して補償した。
(2)外観評価:目視にて試験片の1面のコート層外観(異物の有無)、ひび割れ(クラック)の有無を確認した。
(3)密着性:両面コート層の1面にカッターナイフで1mm間隔の100個の碁盤目を作りニチバン製粘着テープ(商品名“セロテープ”)を圧着し、垂直に強く引き剥がして基材上に残った碁盤目の数で評価した(JIS K5400に準拠)。
(4)耐摩耗性:JIS K6735に準じて、両面コート層の1面をCalibrase社製CS−10Fの摩耗輪を用い、荷重500gで1000回転テーバー摩耗試験を行い、テーバー摩耗試験後のヘーズとテーバー摩耗試験前のヘーズとの差△Hを測定して評価した。但し、磨耗輪のリフェースは研磨紙AA−400に代えて研磨紙S−11を用いて25回転で行った。
(ヘーズ=Td/Tt×100、Td:散乱光線透過率、Tt:全光線透過率)(5)促進試験:紫外線照射面を変更することなくスガ試験機製(株)スーパーキセノンウェザーメーターSX−75を用いて、UV照射強度180W/m、ブラックパネル温度63℃、120分中18分降雨条件下で1500時間暴露し、試験片を取り出して紫外線照射面の外観、黄色度(△YI)を評価した。
(6)実曝試験:試験片を松山南面45°に設置し、5年間の曝露面を変更することなく実曝後、試験片を取り出して曝露面の外観、黄変度(△YI)を評価した。
【0050】
(アクリル樹脂(I)〜(IV)の合成)
[参考例1]
エチルセロソルブ400部、メタアクリル酸エチル190部及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部の混合物を窒素雰囲気下75℃に保ちつつ、ベンゾイルパーオキサイド1.0部をエチルセロソルブ200部に溶解した溶液を2時間かけて加え、更に6時間同温度に保持しアクリル樹脂(I)を得た。
【0051】
[参考例2]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にメチルメタクリレート(以下MMAと略称する)80.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略称する)13部、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略称する)0.14部及び1,2−ジメトキシエタン200部を添加混合し、溶解させた。次いで、窒素気流中70℃で6時間攪拌下に反応させた。得られた反応液をn−ヘキサンに添加して再沈精製し、アクリル樹脂(II)80部を得た。
【0052】
[参考例3]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと略称する)91.3部、HEMA19.5部、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール(以下MEBTと略称する。濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.43)16.2部、AIBN0.25部及びメチルイソブチルケトン100部および2−ブタノール50部を添加混合し、溶解させた。次いで、窒素気流中70℃で6時間攪拌下に反応させた。得られた反応液をn−ヘキサンに添加して再沈精製し、アクリル樹脂(III)100部を得た。
【0053】
[参考例4]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にEMA91.3部、HEMA19.5部、UVA−ST1(BASF製高分子紫外線吸収剤。濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.21)15部、AIBN0.25部及びメチルイソブチルケトン100部および2−ブタノール50部を添加混合し、溶解させた。次いで、窒素気流中70℃で6時間攪拌下に反応させた。得られた反応液をn−ヘキサンに添加して再沈精製し、アクリル樹脂(IV)100部を得た。
【0054】
(第二層用組成物の調製)
[参考例5]
水分散型コロイダルシリカ分散液(日産化学工業(株)製 スノーテックス30 固形分濃度30重量%)100部に蒸留水2部、酢酸20部を加えて攪拌し、この分散液に氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン130部を加えた。この混合液を25℃で1時間攪拌して得られた反応液に、硬化触媒として酢酸ナトリウム2部を氷水冷却下で混合し、イソプロパノール200部で希釈して得たコーティング用組成物(T−1)を得た。
【0055】
[実施例1]
アクリル樹脂(I)にエチルセロソルブ1486部、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.33)30部、硬化触媒としてアルミニウムアセチルアセトネート2部及び架橋剤として1,6−ヘキサンジオール2.4部を加えて第一層用塗料とした。この塗料を紫外線吸収剤無添加の5mm厚の帝人化成(株)製透明ポリカーボネート樹脂板PC−1151(以下、PC−1151と略称する)にディップ方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、130℃で1時間加熱硬化した。このとき第一層は、膜厚3.0μm、膜中に残っている2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン濃度が0.30g/cmであった。更に、第二層組成物(T−1)をディップコート方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、120℃で1時間熱硬化させた。第二層の膜厚は5.0μmだった。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0056】
[実施例2]
前記アクリル樹脂(II)8.9部および2−(2′−ヒドロキシー5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.45)4.0部をメチルエチルケトン20部、メチルイソブチルケトン30部および2−プロパノール30部からなる混合溶媒に溶解し、さらにこの溶液に前記アクリル樹脂(II)のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.5当量となるようにヘキサメチレンジイソシアネート1.1部を添加して25℃で5分間攪拌し第一層用塗料とした。この塗料を5mm厚のPC−1151にディップ方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、130℃で1時間加熱硬化した。このとき第一層は、膜厚3.2μm、膜中に残っている2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール濃度が0.20g/cmであった。更に、第二層組成物(T−1)をディップコート方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、120℃で1時間熱硬化させた。第二層の膜厚は5.1μmだった。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0057】
[実施例3]
実施例2の添加紫外線吸収基を有する化合物を、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール6.7部とした以外は、実施例2と同様の組成で第一層用塗料とした。この塗料を5mm厚のPC−1151にディップ方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、130℃で1時間加熱硬化した。このとき第一層は、膜厚7.2μm、膜中に残っている2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール濃度が0.40g/cmであった。更に、第二層組成物(T−1)をディップコート方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、120℃で1時間熱硬化させた。第二層の膜厚は5.1μmだった。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0058】
[実施例4]
実施例2の添加紫外線吸収基を有する化合物を、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール3.0部と2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.38)1.6部の併用とした以外は、実施例2と同様の組成で第一層用塗料とした。この塗料を5mm厚のPC−1151にディップ方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、130℃で1時間加熱硬化した。このとき第一層は、膜厚2.3μm、膜中に残っている2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール濃度が0.13g/cm、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4−6−ビス(1−メチル−1フェニルエチル)フェノール濃度が0.16g/cmであった。更に、第二層組成物(T−1)をディップコート方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、120℃で1時間熱硬化させた。第二層の膜厚は4.9μmだった。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0059】
[実施例5]
前記アクリル樹脂(III)10.0部メチルイソブチルケトン50部および2−ブタノール30部からなる混合溶媒に溶解し、さらにこの溶液に前記アクリル樹脂(III)のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量となるようにVESTANAT B1358/100(デグサジャパン製アダクト型ポリイソシアネート化合物前駆体) 4.04部を添加し、さらにモノブチルチントリス(2−エチルヘキサノエート)0.001部を添加して25℃で30分間攪拌し第一層用塗料をとした。この塗料を5mm厚のPC−1151にディップ方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、130℃で1時間加熱硬化した。このとき第一層は、膜厚6.0μm、膜中に残っている2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾールに相当する濃度が0.11g/cmであった。更に、第二層組成物(T−1)をディップコート方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、120℃で1時間熱硬化させた。第二層の膜厚は4.9μmだった。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0060】
[実施例6]
実施例5の添加紫外線吸収基を有する化合物、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール3.0部を添加した以外は、実施例5と同様の組成で第一層用塗料とした。この塗料を5mm厚のPC−1151にディップ方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、130℃で1時間加熱硬化した。このとき第一層は、膜厚3.5μm、膜中に残っている2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾールに相当する濃度が0.11g/cm、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール濃度が0.13g/cmであった。更に、第二層組成物(T−1)をディップコート方式でコーティングし、25℃で20分間静置後、120℃で1時間熱硬化させた。第二層の膜厚は4.2μmだった。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0061】
[比較例1]
実施例1の第一層の膜厚を1.5μmとした以外は、実施例1と同様に試験片を作成した。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0062】
[比較例2]
実施例2の添加紫外線吸収基を有する化合物、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.45)3.0部添加し、膜中に残っている2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール濃度が0.15g/cmであった以外は実施例2と同様に試験片を作成した。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0063】
[比較例3]
実施例3の添加紫外線吸収基を有する化合物、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.45)7.5部添加し、膜中に残っている2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール濃度が0.45g/cmであった以外は実施例3と同様に試験片を作成した。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0064】
[比較例4]
実施例2の第一層の膜厚を9.0μmとした以外は実施例2と同様に試験片を作成した。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0065】
[比較例5]
実施例2の添加紫外線吸収基を有する化合物、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの変わりに2,4−ジ−ベンチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.003)4部添加し、膜中に残っている2,4−ジ−ベンチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート濃度が0.30g/cmであった以外は実施例2と同様に試験片を作成した。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0066】
[比較例6]
実施例5のアクリル樹脂(III)の代わりにアクリル樹脂(IV)を使用した以外は、実施例5と同様に同様に試験片を作成した。得られたポリカーボネート樹脂成形体の評価結果を表1に示した。
【0067】
【表1】
Figure 2004025726
【0068】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート積層体は、外観、密着性、耐摩耗性が良好で、高いレベルの実曝耐候性を有し、殊に両面を保護されたポリカーボネート積層体は自動車用窓ガラスやサンルーフに好適に使用され、その奏する工業的効果は格別である。

Claims (1)

  1. 透明ポリカーボネート樹脂板の少なくとも一面に、アクリル樹脂層(第一層)とコロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂を含む組成物硬化層(第二層)の2層が順次積層された積層体であって、該積層体の第一層が下記式(1)〜(3)を満足し、かつ濃度10mg/Lのクロロホルム溶液、光路長1.0cmで測定した、波長300nmにおける吸光度が0.25以上である紫外線吸収能を有する化合物を含有することを特徴とする実曝耐候性に優れたポリカーボネート樹脂積層体。
    2≦d≦8・・・(1)
    0.1≦c≦0.5・・・(2)
    0.6≦d×c≦3・・・(3)
    (但し、ここでdはμmで表された第一層膜厚であり、cは該層中のg/cmで表された紫外線吸収能を有する化合物に由来する単位の濃度である)
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