JP2004024852A - 角膜内皮様シート、及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】採取した角膜内皮細胞を増殖させた後、羊膜上に播種し培養することにより、羊膜上に角膜内皮由来の細胞からなる細胞層が形成された角膜内皮様のシートを得る。
【選択図】 なし
Description
【産業上の利用分野】
本発明は角膜内皮様シート、及びその作製方法に関する。本発明で提供される角膜内皮様シートは角膜内皮の移植が必要とされる疾患、例えば水疱性角膜症、角膜浮腫、角膜白斑、円錐角膜等の治療における移植材料として利用できる。
【0002】
【従来の技術】
近年、眼内手術件数の増加により術後に角膜内皮に不可逆的な障害を生じ角膜混濁をきたす疾患が急増している。現在のところ、これら角膜内皮疾患に対する治療として用いられているのは全層角膜移植術である。しかし、全層角膜移植術後の内皮型拒絶反応は現在も眼科臨床の場において最大の問題となっており、拒絶反応を防止する新たな治療法の開発が待たれている。
一方、正常の前眼部は免疫抑制環境であることは良く知られている。この免疫抑制環境を構成する因子として角膜、虹彩から産生されるtransforming growth factor beta(TGF−β)、vasoactvie intestinal peptide(VIP)等の免疫抑制物質が重要な役割を果たしている。また、前眼部組織からのこれら免疫抑制物質の産生は実質内を走行する角膜知覚神経と密接に関連しており、全層角膜移植における角膜知覚神経の切断によりその産生が抑制されることが報告されている(Streilein JW, Bradley D, Sano Y, Sonoda Y: Immunosuppressive properties of tissues obtained from eyes with experimentally manipulated corneas. Invest Ophthalmol Vis Sci. 37(2):413−424, 1996. Sano Y, Streilein JW: Effects of corneal surgical wounds on ocular immune privilege. In: Nussenblatt RB, Whitcup SM, Caspi RR, and Gery I eds. Advances in Ocular immunology. Amsterdam, ELSEVIER:207−210, 1994.)。従って、これまで全層角膜移植が行われていた角膜内皮疾患に対し、前眼部の免疫抑制環境の破綻を最小限にとどめるべく、障害された内皮細胞のみを健常な内皮細胞と置き換えることができれば拒絶反応の抑制が期待できる理想的な術式となる。
さらに、角膜裏面だけを置き換えるため、手術後の角膜乱視が少なく、早期からの視力回復が望める。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
角膜内皮細胞を移植するためにはそのキャリアとしての基質が不可欠であることから、基質上に角膜内皮細胞が層をなしたシートをin vitroで作製する必要がある。これまで角膜内皮細胞は増殖能を持たないとされていたが、in vitroではその増殖が確認されており(Hyldahl L: Primary cell cultures from human embryonic corneas. J Cell Sci. 66: 343−351, 1984. Senoo T, Obara Y, Joyce N: EDTA: A promoter of proliferation in human corneal endothelium. Invest Ophthalmol Vis Sci. 41: 2930−2935, 2000. Miyata K, Drake J, Osakabe Y,et al.: Effect of donor age on morphologic variation of cultured human corneal endothelial cells. Cornea. 20: 59−63, 2001 )、適切な基質や培養条件を見出せば角膜内皮細胞シートを作成することが可能であると考えられる。一方、角膜内皮細胞層の周辺部に幹細胞の存在が示唆されはじめている(Bednarz J, Engelmann K: Indication for precursor cells in the adult human corneal endothelium. Invest Ophthalmol Vis Sci. 42(suppl): S274, 2001.)。従って、高い増殖能をもった角膜内皮幹細胞をin vitroで培養し増殖させることができれば、わずかに得られた角膜内皮細胞から移植用材料として利用可能な角膜内皮シートを作製できる可能性がある。特に、自己の残存した角膜内皮細胞を用いれば拒絶反応を全く生じない角膜移植術の開発に発展することが期待される。本発明は以上の背景の下になされたものであって、角膜内皮疾患に対する治療としての角膜内皮移植術に使用できる角膜内皮様シートを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の課題に鑑み鋭意検討を行った。具体的にはin vitroでの角膜内皮細胞の培養に適した基質の選定、及び高い細胞密度の細胞層を形成させる方法を検討した。まず、角膜内皮細胞を採取し、in vitroで培養して増殖させた。増殖した細胞を継代培養するとともに、適宜遠心処理することによって細胞密度の高い細胞浮遊液を作製した。次に、基質(キャリア)としてコラーゲンを主成分とする羊膜を採用し、その上に細胞浮遊液を播種し、所定時間培養した。その結果、角膜内皮細胞由来の細胞が生体と類似した形態の単層化した細胞層が形成され、この細胞層の形態を観察したところ生体の角膜内皮細胞層と同等の細胞密度を有し、かつ角膜内皮細胞層と同様に略六角形状の細胞が規則正しく単層化して構成されるものであった。一方、得られた羊膜及び細胞層からなるシート状組成物を角膜内皮細胞層を一部切除した家兎に移植したところ良好な生着が認められ、当該組成物を角膜内皮細胞移植用の材料として好適に利用できることが確認された。本発明は以上の知見に基づきなされたものであって次の構成を提供する。
[1] コラーゲン層と、該コラーゲン層上に形成された細胞層であって、角膜内皮由来の細胞からなる細胞層と、を備える角膜内皮様シート。
[2] 前記コラーゲン層が羊膜由来である、[1]に記載の角膜内皮様シート。
[3] 前記コラーゲン層が上皮を除去した羊膜からなる、[1]に記載の角膜内皮様シート。
[4] 角膜内皮由来の細胞からなる細胞層を備える角膜内皮様シート。
[5] 前記細胞層が一層構造である、[1]〜[4]のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
[6] 前記細胞層の細胞密度が約2,000〜約4,000個/mm2である、[1]〜[5]のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
[7] 前記角膜内皮由来の細胞の平面視形状が略六角形である、[1]〜[6]のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
[8] 前記細胞層において、前記角膜内皮由来の細胞が規則的に整列している、[1]〜[7]のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
[9] 以下のステップを含んでなる、角膜内皮様シートの作製方法、
a)採取した角膜内皮細胞を培養して増殖させるステップ、
b)増殖した角膜内皮細胞を回収して細胞浮遊液を作製するステップ、及び
c)前記細胞浮遊液をコラーゲン層上に播種し、培養するステップ。
[10] 前記ステップb)の後に、次のステップが行われる、[9]に記載の角膜内皮様シートの作製方法、
b−1)遠心処理によって前記細胞浮遊液の細胞密度を高めるステップ。
[11] 前記ステップc)において、細胞浮遊液を播種した後に遠心処理する、ことを特徴とする[9]又は[10]に記載の角膜内皮様シートの作製方法。
[12] 前記ステップc)が以下のステップを含んでなる、[9]又は[10]に記載の角膜内皮様シートの作製方法。
c−1)培養容器内に、培養液を通過可能なポアサイズの膜からなる底面を有する容器を留置するステップ、
c−2)前記容器の前記底面上にコラーゲン層を形成するステップ、
c−3)前記細胞浮遊液をコラーゲン層上に播種するステップ、
c−4)遠心処理するステップ、及び
c−5)培養するステップ。
[13] 前記コラーゲン層が羊膜由来である、[9]〜[12]のいずれかに記載の角膜内皮様シートの作製方法。
[14] 前記コラーゲン層が上皮を除去した羊膜からなる、[9]〜[12]のいずれかに記載の角膜内皮様シートの作製方法。
尚、本明細書において「角膜内皮様シート」とは角膜内皮細胞層に類似する特徴を有し、角膜内皮細胞層の再建のために移植に供され得る組成物を意味する用語として使用される。また、特に記載のない限り、「角膜内皮細胞」とは角膜内皮細胞層に含まれる細胞を包括した表現として使用され、即ち角膜内皮幹細胞をも含む。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は角膜内皮様シートに関し、その構成はコラーゲン層と、該コラーゲン層上に形成された細胞層であって、角膜内皮由来の細胞からなる細胞層とを備える。
ここでのコラーゲン層を構成するコラーゲンの種類は特に限定されないが、コラーゲン層が羊膜由来であることが好ましい。更には、コラーゲン層が羊膜から掻爬処理などにより上皮を除去したものからなることが好ましい。コラーゲン層がこのような上皮を除去した羊膜を原材料としたものであることは、コラーゲン層に羊膜上皮層の細胞が含まれていないことを調べることによって確認できる。羊膜としてヒト羊膜を用いることが特に好ましい。尚、「羊膜由来である」とは広く羊膜を出発原料としていることを意味する。
一方、本発明において「角膜内皮由来の細胞」とは、採取した角膜内皮細胞を培養した結果、増殖、分化等をすることによって生じた細胞をいう。
【0006】
本発明の角膜内皮様シートは、好ましくは以下の性状ないし特徴のいくつかを備えるものである。特に好ましくは、以下の全ての性状ないし特徴を備えるものである。
(1)細胞層が一層構造(単層構造)である。これは生体の角膜内皮細胞層が備える特徴の一つである。
(2)生体の角膜内皮細胞層の細胞密度はヒト新生児で約4,000細胞/mm2といわれ、成長、加齢とともに低下し、成人では正常な状態で約2,000〜約3,000細胞/mm2である。このことを考慮すれば、本発明の角膜内皮様シートを構成する細胞層における細胞密度は約2,000〜約4,000細胞/mm2であることが好ましい。特に、成人をレシピエント(移植者)とする場合には約2,000〜約3,000細胞/mm2であることが好ましい。
(3)細胞層を構成する細胞の平面視形状が略六角形である。これは生体における角膜内皮細胞層を構成する細胞が備える特徴の一つである。この特徴が認められることにより、本発明の角膜内皮様シートは生体の角膜内皮細胞層に類似し、角膜内皮細胞層と同様の機能を発揮することが期待される。
(4)細胞層において細胞が規則正しく整列している。生体の角膜内皮細胞層においてはそれを構成する細胞は規則正しく整列しており、これによって高い透明性が維持され、また角膜の水分調整機能が適切に発揮されると考えられている。したがって、このような形態的な特徴を備えることにより、本発明の角膜内皮様シートは生体における角膜内皮細胞層と同様の機能を発揮することが期待される。
【0007】
本発明の角膜内皮様シートは例えば以下の方法により作製することができる。
<1>角膜内皮細胞の採取、及び増殖
角膜内皮細胞はレシピエント自身又は適当なドナーの角膜から常法で採取される。例えば、角膜組織のデスメ膜と内皮細胞層を角膜実質から剥離した後、培養皿に移し、ディスパーゼなどで処理する。これによって角膜内皮細胞はデスメ膜より脱落する。デスメ膜に残存している角膜内皮細胞はピペッティングなどによって脱落させることができる。デスメ膜を除去した後、角膜内皮細胞が成育できる適当な培養液中で角膜内皮細胞を培養する。培養液としては例えば市販のDMEM(Dullbecco’s Modified Eagle’s Medium)にFBS(ウシ胎仔血清)、b−FGF(basic−fibloblast growth factor)、EGF(epidermal growth factor)、insulin、及びペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質を適宜添加したものを使用することができる。培養容器(培養皿)にはその表面にI型コラーゲン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、又はウシ内皮細胞の細胞外マトリックスなどをコーティングしてあるものを使用することが好ましい。角膜内皮細胞の培養容器表面への接着が促され、良好な増殖が行われるからである。
【0008】
角膜内皮細胞を培養する際の温度条件は角膜内皮細胞が成育する限りにおいて特に限定されないが、例えば約25℃〜約45℃、増殖効率を考慮すれば好ましくは約30℃〜約40℃、更に好ましくは約37℃である。培養時間は使用する細胞の状態などによっても異なるが、例えば7〜14日間である。
【0009】
ここで、利用可能な場合にはレシピエント自身の角膜内皮細胞を用いることが好ましい。移植に供した際に免疫拒絶反応の惧れが無い角膜内皮様シートの作製が可能となり、即ち免疫拒絶反応を伴わない移植術が可能となるからである。レシピエント自身の角膜内皮細胞が入手できないか或は入手が困難な場合にはレシピエント以外の角膜内皮細胞を用いることもできるが、この場合には免疫適合性を考慮してドナーを選択することが好ましい。
【0010】
<2>継代培養、細胞浮遊液の作製
培養に供された角膜内皮細胞が増殖した後に継代培養を行うことができる。好ましくはサブコンフルエントないしコンフルエントになった時点で継代培養を行う。継代培養は次のように行うことができる。まずtrypsin−EDTA等で処理することによって細胞を培養容器表面から剥がし、次いで細胞を回収する。回収した細胞に培養液を加えて細胞浮遊液とする。細胞を回収する際、或は回収後に遠心処理を行うことが好ましい。かかる遠心処理によって細胞密度の高い細胞浮遊液を調製することができる。尚、ここでの遠心処理の条件としては、例えば 500 rpm(30g)〜1000 rpm(70g)、1〜10分を挙げることができる。
細胞浮遊液は上記の初期培養と同様に培養容器に播種され、培養に供される。継代培養は上記の初期培養と同様の培養条件で行うことができる。培養時間は使用する細胞の状態などによっても異なるが、例えば7〜21日間である。以上の継代培養は必要に応じて複数回行うことができる。継代培養を繰り返すことにより細胞数を増加でき、また細胞密度の高い細胞浮遊液を調製することができる。最終的に約5×105細胞/ml〜20×105細胞/mlの細胞密度を有する細胞浮遊液を調製することが好ましい。
【0011】
<3>細胞浮遊液の播種、培養
細胞浮遊液はコラーゲン層上に播種され、培養に供される。この際、最終的に作製される角膜内皮様シートにおいて所望の細胞密度の細胞層が形成されるように播種する細胞数が調整される。具体的には細胞密度が約2,000〜約4,000細胞/mm2の細胞層が形成されるように、例えば1 mm2あたり約3,000個〜約7,500個、好ましくは約5,000個〜 7,500個の細胞を播種する。培養は上記の初期培養などと同様の条件で行うことができる。培養時間は使用する細胞の状態などによっても異なるが、例えば3〜21日間である。
【0012】
ここで、コラーゲン層の原材料となるコラーゲンの種類は特に限定されず、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、VIII型コラーゲンなどを用いることができる。複数の種類のコラーゲンが混在するものを用いることもできる。これらのコラーゲンはブタ、ウシ、ヒツジなどの動物の皮膚、軟骨などの結合組織から酸可溶化法、アルカリ可溶化法、酵素可溶化法などにより抽出、精製することができる。尚、抗原性を低下させる目的から、ペプシンやトリプシンなどの分解酵素で処理することによりテロペプチドを除去した、いわゆるアテロコラーゲンとしたものを用いることが好ましい。
【0013】
コラーゲン層として羊膜由来、特にヒト羊膜由来のものを用いることが特に好ましい。ここで、「羊膜由来」とは広く羊膜を出発原料として得られたものであることを意味する。ヒト羊膜は子宮と胎盤の最表層を覆う膜であって、コラーゲンに富む実質組織上に基底膜及び上皮層が形成されて構成される。ヒト羊膜は例えば分娩時に後産として得られるヒト胎仔膜、胎盤などから採取することができる。具体的には、分娩直後に得られるヒト胎仔膜、胎盤及び臍帯からなる一体物を処理、精製することによりヒト羊膜を調製することができる。処理、精製方法は特開平5−5698号に記載される方法などの公知の方法を採用できる。即ち、分娩時に得られる胎仔膜より羊膜を剥離し、超音波洗浄等の物理的処理及び酵素処理などにより残存組織を除去し、適宜洗浄工程を経てヒト羊膜を調製することができる。
【0014】
このように調製したヒト羊膜を使用時まで凍結して保存しておくことができる。ヒト羊膜の凍結は例えば−80℃、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)とグリセロールとを体積比で等量混合した液中で行うことができる。凍結保存することにより操作性が向上することは勿論のこと、抗原性が低下することも期待できる。
【0015】
羊膜をそのままコラーゲン層として利用することもできるが、羊膜から掻爬処理などによって上皮を除去したものを利用することが好ましい。例えば、上記のように凍結保存したヒト羊膜を解凍した後、EDTAやタンパク分解酵素で処理して細胞間の接着を緩め、そしてセルスクレイパーなどを用いて上皮を掻爬することにより、上皮が除去されたヒト羊膜を調製することができる。
コラーゲン層として上皮を除去したヒト羊膜を利用する場合には、上皮を除去して表出した面側(即ち、基底膜側)に角膜内皮細胞を播種することが好ましい。この面側にはIV型コラーゲンが多量に含まれており、播種された角膜内皮細胞の増殖、接着を良好に行うことができると考えられるからである。
【0016】
コラーゲン層上での角膜内皮細胞の培養は例えば次のようにして行うことができる。まず、培養液を通過可能なポアサイズの膜からなる底面を有する容器(以下、「カルチャーインサート」ともいう)を底面を下にして培養容器内に留置する。続いて、カルチャーインサートの底面上(カルチャーインサート内側)にコラーゲン層を形成する。そして、コラーゲン層上に細胞浮遊液を播種し、培養する。尚、カルチャーインサートの底面に予めコラーゲン層を形成しておくこともできる。即ち、例えばカルチャーインサートの底面に上皮を除去した羊膜をのせ(この状態で一旦乾燥処理を行ってもよい)、このカルチャーインサートを培養容器内に設置し、その後細胞浮遊液の播種、培養を行ってもよい。
カルチャーインサートの底面に使用できる膜の例としてはポリカーボネート製、ポアサイズが約0.4μm〜3.0μmの膜を挙げることができる。この他、ポリエステル製の膜などを使用することもできる。このような膜は市販されており容易に入手することができる。
【0017】
カルチャーインサート内に細胞浮遊液を播種した後に遠心処理を行うことができる。これによりコラーゲン層上の細胞密度を高めることができる。また、コラーゲン層表面への細胞の接着も良好なものとなる。さらに、細胞密度の偏りが小さくなるといった効果も得られる。尚、ここでの遠心処理の条件としては例えば500rpm(30g)〜1,000rpm(70g)、1〜10分を挙げることができる。
【0018】
以上のようにして培養を行うことにより、コラーゲン層上に角膜内皮由来の細胞からなる細胞層が形成された角膜内皮様のシートが形成される。この角膜内皮様シートは角膜内皮の移植が必要な疾患、例えば水疱性角膜症、角膜浮腫、角膜白斑、円錐角膜の治療における移植材料(角膜内皮の代替)として用いることができる。尚、コラーゲン層の一部を除去したもの又は全部を除去したもの(即ち、細胞層のみ)を移植片として用いることもできる。このコラーゲン層の除去はEDTA等による化学処理、タンパク分解酵素等による酵素処理、ピンセット等による掻爬などの物理的処理を適宜組み合わせて行うことができる。
【0019】
角膜内皮細胞の培養(初期培養、継代培養、及びコラーゲン層上での培養を含む)を支持細胞の共存下で行うことができる。支持細胞とはfeeder細胞とも呼ばれ、培養液中に成長因子等などを供給する。支持細胞との共存下で培養することにより、角膜内皮細胞の増殖効率の向上、分化促進などの効果が期待できる。支持細胞には、例えば10T1/2線維芽細胞(Hyldahl L: Primary cell cultures from human embryonic corneas. J Cell Sci. 66: 343−351, 1984.)、3T3細胞(スイスマウス3T3細胞、マウスNIH3T3細胞、3T3J2細胞など)、角膜実質細胞などを用いることができる。
支持細胞の共存下で角膜内皮細胞の培養を行う場合には、角膜内皮細胞と支持細胞との間に支持細胞が通過できないポアサイズの隔離膜を介在させることが好ましい。この隔離膜の利用によって培養時に角膜内皮細胞側に支持細胞が侵入することを防止できる。その結果、最終的に得られる角膜内皮様シート内に支持細胞が混在するおそれが無くなる。このことは、支持細胞による免疫拒絶の問題のない角膜内皮様シートの作製が可能になることを意味し、臨床上極めて有意義である。
【0020】
支持細胞を使用する場合には、支持細胞を予めマイトマイシンCなどを用いて不活性化しておくことが好ましい。支持細胞自体が増殖することによって角膜内皮細胞の増殖が阻害されることを防止するためである。このような不活性化は放射線処理などによっても行うことができる。
【0021】
隔離膜としては上記のカルチャーインサートに使用される膜と同様のものを採用することができる。即ち、例えばポリカーボネート、ポリエステルなどからなりポアサイズが約0.4μm〜3.0μmの膜を用いることができる。
【0022】
支持細胞の細胞密度は、例えば約1×102個/cm2以上、好ましくは約1×102個/cm2〜約1×107個/cm2、更に好ましくは約1×103個/cm2〜約1×105個/cm2とすることができる。支持細胞数が少ないと角膜内皮細胞の増殖率が低下することが考えられ好ましくない。一方、支持細胞数が多すぎる場合には、かえって角膜内皮細胞の増殖率を低下させることとなり好ましくない。
【0023】
移植方法の例としては全層トレパネーション法及び深層角膜切除法を挙げることができる。前者の方法はトレパンを用いて一旦角膜全層を採取し、角膜内皮細胞層を本発明の角膜内皮様シートで置き換えた後にレシピエントに戻す方法であって、具体的には次のように行うことができる。まず、レシピエント(ホスト)の角膜をトレパンにて全層切開し、角膜の一部(又は全部)をボタン状に採取する。次に採取された角膜片からデスメ膜、及び角膜内皮細胞層を剥離する。露出された角膜実質上に本発明の角膜内皮様シートを接着させる。この際、コラーゲン層が実質側となるようにする。その後、角膜片をレシピエントに戻し、縫合糸を用いて固定する。
他方、深層角膜切除法は角膜全層を摘出するのではなく角膜深層部のみを切除するものであって、レシピエントへの負担がより少ない方法と考えられる。具体的には次のように行うことができる。まず、レシピエントの角膜実質の一部を剥離し、角膜実質深層の一部とデスメ膜及び内皮細胞層の一部を切除する。尚、内皮細胞層のみ、又は内皮細胞層及びデスメ膜のみを剥離切除してもよい。次に、本発明の角膜内皮様シートをスパーテルなどを用いて切除部に挿入する。必要に応じて前房内に空気を注入して移植片の固定を行う。さらに、コラーゲン層の無い角膜内皮層の場合には、傷害されたレシピエント角膜内皮細胞だけを剥離しても良い。
尚、移植した角膜内皮様シートが生体における角膜内皮細胞層と同様にバリアー機能、ポンプ機能を発揮するか否かは、例えば移植後の角膜厚の変化、浮腫の発生を調べることによって確認することができる。
【0024】
【実施例】
<実施例1> 羊膜の採取
羊膜は、全身的合併症のない帝王切開予定の妊婦に対して事前に産婦人科医とともに十分なインフォームドコンセントを行った後、手術室で帝王切開時に採取した。操作は清潔に気をつけ、手術操作に準じて手洗いの後に専用ガウンを装用した。分娩前に清潔な羊膜採取用のバットと洗浄用の生理食塩水を準備した。分娩後に胎盤組織をバットに移し、用手的に羊膜組織を胎盤より剥離した。羊膜と胎盤との癒着が強い部分はハサミで切除した。
【0025】
<実施例2> 羊膜の処理
羊膜処理の過程は(1)洗浄、(2)トリミング、(3)保存の順で行った。すべての過程において、操作は清潔なドラフト内で行うのが望ましく、使用する容器や器具もすべて滅菌されたものを使用し、シャーレ等は滅菌された使い捨て(ディスポーザブル)タイプのものを使用した。採取した羊膜に付着した血液成分を生理食塩水にて洗浄しながら除去し、さらに十分量の生理食塩水(0.005% ofloxacin添加)にて洗浄した。次に羊膜をシャーレ内のリン酸緩衝液(PBS)に移し、ハサミを用いて約4×3cm程度のサイズに分割した。分割後さらに数個のシャーレに保存液を浸し、その中で状態のよい羊膜を選別した。
【0026】
<実施例3> 羊膜の保存
2ccの滅菌クライオチューブに1ccずつ保存液を入れ、そこに採取、洗浄して選別された羊膜を1枚ずついれラベルした後、−80℃の冷蔵庫に保存した。保存液には50%滅菌済みグリセロール in DMEM (Dulbecco’s Modofied Eagle’s Medium: GIBCOBRL社製)を使用した。保存された羊膜の使用期限は3ヶ月とし、期限が過ぎれば焼却処分した。
【0027】
<実施例4> 羊膜上皮の処理
羊膜はその上皮を処理した後、培養に使用した。まず、−80℃で保存していた羊膜を室温で解凍した後、シャーレ内の滅菌済みリン酸緩衝液(PBS)で十分に洗浄した。洗浄後0.02%EDTA溶液 (Nacalai tesque社)に2時間37℃で保存した後、cell scraper (Nunc社 USA)を用いて機械的に上皮を掻爬し、培養の基質として使用した。尚、この処理方法によって、1層の羊膜上皮が完全に掻爬されたことを光学的及び電子顕微鏡的操作(走査型電子顕微鏡)において確認した。
【0028】
<実施例5> ヒト角膜内皮細胞の採取、初期培養
ヒト(47歳、男性)角膜組織からデスメ膜と内皮細胞層を実質より鑷子にて剥離した後、35mm培養皿に留置し、カルシウムを含まないPBSで2倍希釈したディスパーゼ(dispase) 1ml(最終濃度1.2 U/ml)にて37℃、5% CO2の条件で60分間処理した。この処理にて角膜内皮細胞の多くはデスメ膜より脱落する。デスメ膜に残存している角膜内皮細胞を脱落させるためにピペッティング処理を行った。次にデスメ膜を除去し、角膜内皮細胞を15 ccの遠心チューブへ移した。培養液を加えて全液量5 mlとした後、1,000rpm、70g、3分の条件で遠心した。培養液にはDMEM(GIBCOBRL社製)に10% FBS(大日本製薬株式会社製)、b−FGF(Invitrogen社製)2ng/ml、ペニシリン(50 U/ml)−ストレプトマイシン(50μg/ml)(ナカライ社製)を添加したものを使用した。上澄み液を除去した後、培養液を加えて約1mlの細胞浮遊液とした。この細胞浮遊液をIV型コラーゲンコートされた24穴培養皿に播種し、37℃、5% CO2の条件で培養した。以後、48時間ごとに培養液を交換した。
【0029】
<実施例6> 内皮細胞の継代培養
培養された細胞がコンフルエント(confluent)となった時点で培養液を除去し、カルシウムを含まないPBS 1mlを用いて細胞を3回洗浄した。洗浄後、0.05%トリプシン(trypsin)−EDTAを200μl加え37℃、5% CO2の条件で3分間静置した。この処理によって培養皿の底に接着した内皮細胞が浮遊する。培養液5mlを加えた後、15cc遠心チューブに細胞浮遊液を移し、1,000rpm、70g、3分の条件で遠心処理した。上澄み液を除去した後、培養液を加えて約2mlの細胞浮遊液とした。この細胞浮遊液をIV型コラーゲンコートされた35mm培養皿に播種し、37℃、5% CO2の条件で培養した。以後、48時間ごとに培養液を交換した。細胞がコンフルエントとなった時点で上記と同様の操作を行い、必要な細胞数が得られるまで継代を繰り返した。継代培養を5回繰り返した後の細胞密度を計測したところ500〜1,000個/mm2であった。尚、以上の操作で継代培養することにより、少なくとも10代まで継代培養することが可能であった。
【0030】
<実施例7> 高密度培養角膜内皮細胞層の作製
継代培養された細胞を0.05% trypsin−EDTAにて処理した後、細胞数をカウントした。次いで遠心処理して上澄み液を除去した後、細胞密度が約2.0×106個/mlとなるように培養液を添加した。得られた細胞浮遊液を用いて角膜内皮細胞層を以下の手順で作製した。培養器具としては6穴培養皿(Corning社製、 NY)とカルチャーインサート(culture insert:培養挿入容器、ポリカーボネート製、平均ポアサイズ3.0μm、Corning社製、 NY)を用いた。培養液は上記で使用したものと同じものを用いた。
【0031】
まず、培養皿内にカルチャーインサートを留置した。次に、カルチャーインサート内に約5,000個/mm2となるように細胞浮遊液を播種した。その後、培養皿を遠心器(kendro社製)を用いて1,000rpm、70g、3分の条件で遠心した。遠心後、37℃、5%CO2の条件で培養した。その結果、14日間の培養で細胞密度が約3,000個/mm2の細胞層が得られた。また、2週間の培養にて細胞に形態的変化は認められなかった。
尚、図5は培養中の状態を示した模式断面図である。培養皿1内にカルチャーインサート2が留置され、カルチャーインサート2内で角膜内皮細胞3が培養される状態が示される。符号5は培地である。
【0032】
<実施例8> 羊膜を基質とした角膜内皮様シートの作製
実施例7で使用される細胞浮遊液(細胞密度約2.0×106個/ml)を用いて角膜内皮様シートを以下の手順で作製した。培養器具は実施例7と同様のものを用いた。
まず、培養皿内にカルチャーインサートを留置した。次に、カルチャーインサート内(底面上)に実施例4で得られた上皮を掻爬した羊膜を、掻爬した側を上にして伸展させ敷いた。続いて、羊膜上に約5,000個/mm2となるように細胞浮遊液を播種した。その後、培養皿を を用いて1,000rpm、70g、3分の条件で遠心した。遠心後、37℃、5%CO2の条件で約14日間培養したところ羊膜上に生体と同様に連続的な単層の細胞層が構築された(図1A)。得られた細胞層の細胞密度を計測したところ3,340個/mm2であり、実施例7で得られた細胞層と同様の密度であった(図1B)。また、走査型電子顕微鏡で形態観察を行ったところ、細胞層を構成する細胞は六角形の扁平な形態を有し、生体の内皮細胞に近似していた(図1C、D)。また、この六角形状の細胞がほぼ均一に整列して細胞層が構成されていることが認められた。
尚、図6は培養中の状態を示した模式断面図である。培養皿1内にカルチャーインサート2が留置される。また、カルチャーインサート2の底面上に羊膜4が伸展され、その上に角膜内皮細胞3が培養される状態が示される。符号5は培地である。
【0033】
<実施例9> 角膜内皮様シートの移植
a.全層トレパネーションでの移植
家兎(6週令、日本白色)の角膜(ホスト角膜)中央部を7〜8mm径のトレパンにて全層切開した。ボタン上に採取されホスト角膜片のデスメ膜を内皮細胞層ごと剥離した。実施例8で得られた角膜内皮様シートを鑷子にて培養皿から取り出した後、6〜8mmのトレパンにて切開し、それをデスメ膜および内皮細胞層が剥離されたホスト角膜片の実質上に留置した。この際縫合糸は用いず、スポンジにて水分を吸収し軽度に乾燥させることにより角膜内皮様シートを角膜実質に接着させた。羊膜上角膜内皮シートが留置されたホスト角膜片を10−0ナイロン糸にてホスト角膜に縫合した。その後、術後7日目まで毎日移植部の角膜厚、浮腫の状態を観察した。尚、比較対照として、角膜内皮様シートの代わりに羊膜を用いる群(AM群)、及びデスメ膜を剥離して得られたホスト角膜片をそのまま移植する群(コントロール群)を用いた。
術後4日目の移植部の状態を図2に示す。全層トレパネーション後、デスメ膜を剥離して移植した群(コントロール群)では著明な浮腫が生じていた(図2A)。また、羊膜を用いた群(AM群)もコントロール群と同様に著明な浮腫が認められた(図2B)。一方、角膜内皮様シートを移植した角膜ではコントロール群などに比較して顕著に浮腫が軽減されており、透明性が維持されていた。術後7日目の観察では、角膜内皮様シートを移植した角膜ではコントロール群(図3A)及びAM群(図3B)に比較した浮腫の軽減が認められ、また透明性が維持されていた(図3C)。また、角膜内皮様シートを移植した角膜ではその角膜厚がコントロール群及びAM群に比較して有意に減少していることが認められた(図4)。以上の結果より、ヒト角膜内皮細胞由来の細胞が羊膜上で生体に極めて近似した形態を有することが示唆された。また、遠心処理を用いることにより、3,000cells/mm2以上の細胞密度を得ることができた。さらには、この手法により作製された角膜内皮様シートは生体においてもその機能を発揮することが示された。
【0034】
b. 深層角膜切除法による移植
家兎(6週令、日本白色)の角膜(ホスト角膜)実質を剥離し、中央部7〜8mm径の実質深層を内皮細胞層を含めて切除した。あるいは前房内から中央部7〜8mm径の内皮細胞およびデスメ膜のみを剥離除去した。実施例8で得られた角膜内皮様シートをスパーテルにて実質層間あるいは前房内より挿入し、切除範囲にあわせて留置した。その後、前房内に空気を注入して移植片を固定した。その後、術後7日目まで毎日移植部の角膜厚、浮腫の状態を観察した。その結果、角膜内皮様シートを移植した群では、全層トレパネーション同様、羊膜のみを移植した群(AM群)、あるいは角膜内皮を除去したのみのコントロール群に比較して、角膜厚、角膜浮腫は有意に減少していた。
【0035】
以上の実施例により、角膜内皮様シートが生体内でもその機能を有することが確認された。即ち、上述の方法により作製される角膜内皮様シートは角膜内皮の代替として良好に機能するものであって、角膜内皮の損傷、欠損などの場合に角膜内皮を再建するための移植材料として好適に利用できるものであることが確認された。また、このシートを用いることにより、前眼部の免疫抑制環境の破綻を最小限にとどめ、障害された角膜内皮細胞のみを健常な内皮細胞と置き換える理想的な術式が可能となることが示された。
【0036】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0037】
【発明の効果】
本発明により提供される角膜内皮様シートは生体の角膜内皮細胞層に類似した構造を有し、角膜内皮細胞の移植が必要とされる各種疾患における移植材料として用いることができる。この角膜内皮様シートは移植後の生着が良好であって、かつ角膜内皮細胞層の機能、即ちバリア機能及びポンプ機能を発揮し、損傷した角膜内皮細胞層の再建に極めて有用なものである。一方、この角膜内皮様シートは採取した角膜内皮細胞をin vitroで培養、増殖させることによって形成される。したがって、僅かな角膜内皮細胞をもとに移植材料を作製することが可能であり、角膜内皮細胞数が減少した患者においても自己の角膜内皮細胞から移植材料を作製できる。このことは拒絶反応を生じない角膜移植術を実現できることを意味する。また、障害された部位のみを置換する角膜内皮移植術が可能となり、これまでの全層角膜移植で問題となっていた術中、術後の合併症を生じない理想的な手術法の実現を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は上皮を除去した羊膜上に形成された角膜内皮様細胞層の形態を示す図であり、AはHE(ヘマトキシリン−エオシン)染色像、Bはアリザリン染色像、C及びDは走査型電子顕微鏡像である。
【図2】図2は全層トレパネーションでの移植術後4日目の前眼部スリット写真を表した図であり、Aはコントロール群(デスメ膜を剥離した群)、Bは羊膜を用いた群(AM群)、Cは実施例の角膜内皮様シートを用いた群である。
【図3】図3は全層トレパネーションでの移植術後7日目の前眼部スリット写真を表した図であり、Aはコントロール群(デスメ膜を剥離した群)、Bは羊膜を用いた群(AM群)、Cは実施例の角膜内皮様シートを用いた群である。
【図4】図4は全層トレパネーションでの移植前、移植後の角膜厚の変化を示したグラフである。グラフ中の※はp<0.05を表す。角膜内皮様シートを用いた群では、コントロール群、羊膜を用いた群(AM群)に比較して有意に(p<0.05)角膜厚の減少が認められる。
【図5】図5は角膜内皮細胞を培養する際の器具等の状態を模式的に示した断面図である。培養皿1内にカルチャーインサート2が留置される。また、カルチャーインサート2の底面上に角膜内皮細胞3が培養される状態が示される。符号5は培地である。
【図6】図6は羊膜上に角膜内皮細胞を培養する際の器具等の状態を模式的に示した断面図である。培養皿1内にカルチャーインサート2が留置される。また、カルチャーインサート2の底面上に羊膜4が伸展され、その上に角膜内皮細胞由来の細胞3が培養される状態が示される。符号5は培地である。
【符号の説明】
1 培養皿
2 カルチャーインサート(培養挿入容器)
3 角膜内皮細胞由来の細胞
4 羊膜
5 培地
Claims (14)
- コラーゲン層と、
該コラーゲン層上に形成された細胞層であって、角膜内皮由来の細胞からなる細胞層と、を備える角膜内皮様シート。 - 前記コラーゲン層が羊膜由来である、請求項1に記載の角膜内皮様シート。
- 前記コラーゲン層が上皮を除去した羊膜からなる、請求項1に記載の角膜内皮様シート。
- 角膜内皮由来の細胞からなる細胞層を備える角膜内皮様シート。
- 前記細胞層が一層構造である、請求項1〜4のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
- 前記細胞層の細胞密度が約2,000〜約4,000個/mm2である、請求項1〜5のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
- 前記角膜内皮由来の細胞の平面視形状が略六角形である、請求項1〜6のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
- 前記細胞層において、前記角膜内皮由来の細胞が規則的に整列している、請求項1〜7のいずれかに記載の角膜内皮様シート。
- 以下のステップを含んでなる、角膜内皮様シートの作製方法、
a)採取した角膜内皮細胞を培養して増殖させるステップ、
b)増殖した角膜内皮細胞を回収して細胞浮遊液を作製するステップ、及び
c)前記細胞浮遊液をコラーゲン層上に播種し、培養するステップ。 - 前記ステップb)の後に、次のステップが行われる、請求項9に記載の角膜内皮様シートの作製方法、
b−1)遠心処理によって前記細胞浮遊液の細胞密度を高めるステップ。 - 前記ステップc)において、細胞浮遊液を播種した後に遠心処理する、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の角膜内皮様シートの作製方法。
- 前記ステップc)が以下のステップを含んでなる、請求項9又は10に記載の角膜内皮様シートの作製方法。
c−1)培養容器内に、培養液を通過可能なポアサイズの膜からなる底面を有する容器を留置するステップ、
c−2)前記容器の前記底面上にコラーゲン層を形成するステップ、
c−3)前記細胞浮遊液をコラーゲン層上に播種するステップ、
c−4)遠心処理するステップ、及び
c−5)培養するステップ。 - 前記コラーゲン層が羊膜由来である、請求項9〜12のいずれかに記載の角膜内皮様シートの作製方法。
- 前記コラーゲン層が上皮を除去した羊膜からなる、請求項9〜12のいずれかに記載の角膜内皮様シートの作製方法。
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