JP2004022401A - 有機膜形成装置および有機膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】気相の状態にした有機原料を、温度制御された基板の全面に供給できるようにする。
【解決手段】有機原料12を気化昇華室5で気化または昇華して原料ガスが生成される。この原料ガスにキャリアガスが混合され、原料ガス輸送管6で膜形成チャンバー4に輸送される。原料ガス輸送管6で輸送された原料ガスはインジェクター18から基板3へ向けて放出されるが、基板ホルダ2は回転動作を行うことで基板3を回転させ、原料ガスを基板3の全面に供給できるようにする。また、基板ホルダ2には配管7a,7bによって冷却媒体が供給され、保持している基板3の冷却が行われる。これにより、基板3内での膜厚分布が均一で良好な有機膜を形成できる。
【選択図】 図1
【解決手段】有機原料12を気化昇華室5で気化または昇華して原料ガスが生成される。この原料ガスにキャリアガスが混合され、原料ガス輸送管6で膜形成チャンバー4に輸送される。原料ガス輸送管6で輸送された原料ガスはインジェクター18から基板3へ向けて放出されるが、基板ホルダ2は回転動作を行うことで基板3を回転させ、原料ガスを基板3の全面に供給できるようにする。また、基板ホルダ2には配管7a,7bによって冷却媒体が供給され、保持している基板3の冷却が行われる。これにより、基板3内での膜厚分布が均一で良好な有機膜を形成できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機原料を気相に変化させた原料ガスを、キャリアガスで基板上に輸送して薄膜を形成する有機膜形成装置および有機膜形成方法に関する。詳しくは、基板を移動させながら原料ガスを供給し、かつ、基板の冷却も同時に行うことで、均質で良好な有機膜を形成できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
有機EL(エレクトロルミネンス)素子は発光層に有機物を利用した発光材料である。この有機EL素子は、コンピュータやテレビジョン受信機に使用されるフラットパネルディスプレイや、携帯電話のディスプレイや、PDA(PersonalDigital Assistants)と呼ばれる携帯端末のディスプレイ等の各種表示装置を構成する発光材料として、また、発光ダイオード等の発光素子として用いられる。
【0003】
図7は有機EL素子の構造の一例を示す説明図である。有機EL素子101は、ガラス等の透明基板102の上に陽極であるITO(Indium−Tin Oxide)透明電極103、有機膜104、陰極である背面電極105を順に積層したものである。有機膜104は、ITO透明電極103側から、正孔注入層104a、正孔輸送層104b、発光層104c、電子輸送層104d、そして電子注入層104eを順に積層したものである。
【0004】
ITO透明電極103−背面電極105間に電圧が印加されると、ITO透明電極103からプラス電荷(正孔)が注入され、背面電極105からマイナス電荷(電子)が注入され、それぞれ有機膜104を移動する。そして、発光層104c内で電子−正孔がある確率で再結合し、この再結合の際に所定の波長を持った光が発生するものである。
【0005】
なお、有機膜104の構成としては、正孔注入層104aと正孔輸送層104bを1層で構成したもの、電子輸送層104dと電子注入層104eを1層で構成したもの、発光層104cと電子輸送層104dと電子注入層104eを1層で構成したもの等がある。
【0006】
図8はこのような有機EL素子を用いて構成した有機ELカラーディスプレイの概要を示す平面図、図9は有機ELカラーディスプレイの要部斜視図である。有機カラーディスプレイ106は、透明基板102の上にITO透明電極103がストライプ状に形成される。また、有機膜104がITO透明電極103と直交するようにストライプ状に形成され、有機膜104上に背面電極105が形成されて、ITO透明電極103と有機膜104および背面電極105をマトリクス状に配置する。これにより、電圧が印加されたITO透明電極103と背面電極105の交点の有機膜104が発光する。
【0007】
そして、有機膜104として、赤(R)に発光する有機膜104Rと緑(G)に発光する有機膜104Gと青(B)に発光する有機膜104Bを順に並べることで、RGBによる画素が形成され、カラーの表示が可能となる。
【0008】
そして、図8等に示すカラーディスプレイを作成する場合は、マスクを用いて有機膜の形成を行う。図10はマスクを使用した膜堆積工程の一例を示す断面図である。マスク114は、ストライプ状のパターン115を有する。このマスク114を基板111に密着させるため磁石を用いる。すなわち、マスク114を磁性体で構成し、基板111を保持する図示しない機構に永久磁石や電磁石から構成される磁化部材116を設ける。そして、基板111をこの磁化部材116に載せ、この基板111にマスク114を載せることで、マスク114は磁化部材116の磁力で基板111に密着する。
【0009】
そして、R,G,Bの有機膜を形成するため、まず、マスク114を所定の位置に取り付けて図9に示す有機膜104Rを形成し、次にマスク114の取り付け位置を1/3ピッチずらして有機膜104Gを形成し、次にマスク114の取り付け位置を1/3ピッチずらして有機膜104Bを形成するものである。
【0010】
さて、低分子の有機物を用いた有機膜の形成は、従来は真空蒸着法を用いていた。真空蒸着法とは、原材料を高真空中で加熱蒸発させ、蒸発源と対向する基板上に原材料を吸着させることで薄膜を形成する方法である。
【0011】
これに対して、真空蒸着法とは異なる新しい有機膜形成法として、有機気相蒸着法(organic vapor phase deposition)と呼ばれる方法が、特表2001−523768に開示されている。
【0012】
図11は有機気相蒸着法を用いた従来の有機膜形成装置の説明図で、以下に特表2001−523768に開示されている装置の概要を説明する。チャンバー120は内部を外気と遮断する例えば略筒状の容器であり、内部に基板111を保持する基板ホルダ121が設けられる。
【0013】
チャンバー120には2本の配管122が設けられる。それぞれの配管122の一方の端部は開口しており、この開口部の近傍に原料容器123が設けられる。原料容器123は図示しない通電機構を備え、原料容器123に有機原料を入れて通電すると、原料容器123が抵抗発熱することにより有機原料が間接的に加熱され、気化または昇華して原料ガスが発生する。
【0014】
配管122の他方の端部はタンク124と接続される。また、配管122の途中には、調整バルブ125と、圧力調整器126aと、流量計126bと、切替バルブ126cとを備える。タンク124には各種有機原料に対して不活性なN2(窒素)等のガスが入れられ、圧力および流量が制御されたキャリアガスとして配管122に供給される。
【0015】
これにより、配管122内で有機原料を気化あるいは昇華させて生成した原料ガスは、キャリアガスと混合してチャンバー120内に送られ、基板111に吸着して有機膜を形成する。
【0016】
原料容器123には固相の有機原料が入れられるのに対して、原料槽127には液相の有機原料128が入れられる。この原料槽127にはタンク124とつながる配管122と、チャンバー120とつながる配管129が接続される。この配管122には、圧力調整器126aと、流量計126bと、切替バルブ126cとを備える。
【0017】
これにより、配管122から供給されるキャリアガスは気泡として有機原料128内を通り、蒸気となった有機原料を配管129でチャンバー120内へと送る。また、原料槽127の少なくとも有機原料128が入れられる高さまでを液体130に浸す温度制御槽131を設け、図示しないヒータで液体130の温度を制御することで、原料槽127内の有機原料128の温度を制御する。また、チャンバー120の周囲には加熱冷却器132が設けられる。この加熱冷却器132はチャンバー120内の温度制御を行う。
【0018】
チャンバー120には排気管133が設けられ、この排気管133にトラップタンク134、スロットバルブ135および真空ポンプ136が取り付けられる。真空ポンプ136はチャンバー120内を排気して、該チャンバー120内を真空にする。スロットバルブ135はチャンバー120内の圧力を調整するもので、チャンバー120に取り付けた図示しない圧力計の出力がスロットバルブ135へ電気的にフィードバックされ、チャンバー120内が所望の真空度を維持するように制御される。また、基板111上に吸着しなかった有機原料等はトラップタンク134で凝縮させ、スロットバルブ135や真空ポンプ136に到達しないようにしてある。
【0019】
このような装置を用いる有機気相蒸着法は、減圧下で原料ガスをキャリアガスを用いて基板へと運び、基板上でガスが凝縮して膜形成が行われる有機膜形成方法である。これにより、従来の真空蒸着法ではできなかった、原料を気化または昇華させるための温度制御と、原料を基板へ送るキャリアガスの流量制御等を独立して行えるので、著しく異なる蒸気圧をもつ有機原料を同時蒸着して多成分の薄膜を形成する際に、各成分量を正確に制御することができる。また、減圧下で膜形成を行うため、表面が滑らかな有機膜を形成することができる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
有機気相蒸着法で滑らかな表面性を有する有機膜を形成するには、有機膜の結晶化等は避けなければならないので、高温の原料ガスの輸送による基板の温度上昇を抑制するため、基板の冷却機構が必要である。
【0021】
また、真空蒸着法では、膜厚分布を均一にするため、基板の回転機構が備えられているものがある。しかしながら、有機気相蒸着法でも真空蒸着法でも、膜の形成中に基板の冷却と基板の移動を同時に行ってはいないので、熱による影響を受けずに良好な有機膜を形成することができなかった。
【0022】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、膜厚分布が均一でかつ非晶質な有機膜が形成できる有機膜形成装置および有機膜形成方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明に係る有機膜形成装置は、基板上に有機物の薄膜を形成する有機膜形成装置において、真空ポンプが接続されたチャンバーと、有機原料を気相に変化させて原料ガスを生成する気化昇華手段と、原料ガスとキャリアガスを混合するキャリアガス導入手段と、キャリアガスにより原料ガスを輸送する原料ガス輸送手段と、原料ガス輸送手段で輸送された原料ガスをチャンバー内に放出する放出手段と、少なくとも1枚の基板を保持し、放出手段に対して基板を移動させる保持手段と、この保持手段に設けられ、保持している基板を冷却する冷却手段とを備えたものである。
【0024】
本発明に係る有機膜形成装置では、気化昇華手段で有機原料を気相に変化させて原料ガスを生成する。この原料ガスにキャリアガス導入手段でキャリアガスを混合し、このキャリアガスにより、原料ガス輸送手段で原料ガスをチャンバーに輸送する。
【0025】
チャンバー内では放出手段から原料ガスを放出して、基板に原料ガスを供給する。このとき、保持手段は放出手段に対して基板の位置を移動させることで、原料ガスを基板の全面に供給する。また、保持手段で保持されている基板は冷却手段で冷却されており、基板に吸着した原料ガスは急速に冷却されて非晶質な有機膜となる。これにより、膜厚分布の均一性が向上した良好な有機膜を形成することができる。
【0026】
また、本発明に係る有機膜形成方法は、基板上に有機物の薄膜を形成する有機膜形成方法において、有機原料を気相の原料ガスへと変化させる気化昇華工程と、原料ガスとキャリアガスを混合するキャリアガス導入工程と、キャリアガスにより原料ガスを基板上へ輸送する原料ガス輸送工程と、原料ガスの流れを制御し得る減圧下のチャンバー内で基板上に有機膜を形成する有機膜堆積工程と、チャンバーの排気工程とを有し、有機膜堆積工程では、基板を原料ガスの流れる方向と交する方向に移動させながら、かつ、基板を冷却しながら有機膜を形成するものである。
【0027】
本発明に係る有機膜形成方法では、気化昇華工程では有機原料が気相の原料ガスに変化し、キャリアガス導入工程ではこの原料ガスにキャリアガスが混合され、原料ガス輸送工程でキャリアガスにより原料ガスが基板上へと供給される。有機膜堆積工程では供給された原料ガスが基板に吸着して有機膜が形成されるが、このとき、基板を移動させながら、かつ冷却しながら有機膜が形成されるので、基板の全面に原料ガスを供給しつつ、基板に吸着した原料ガスを急速に冷却することで非晶質な有機膜が形成される。これにより、膜厚分布の均一性が向上した良好な有機膜を形成することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の有機膜形成装置の実施の形態を説明する。図1は第1の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成図である。第1の実施の形態の有機膜形成装置1は、回転動作を行う基板ホルダ2で基板3を保持することで、気相の有機原料をキャリアガスを用いて基板3へ供給して有機膜を形成する際の膜厚分布を向上させるものである。ここで、基板3とは、図7等で説明した透明ガラス基板102にITO透明電極を形成したもの、あるいは図示しないTFT(Thin Film Transistor)基板等である。
【0029】
有機膜形成装置1は、基板3を収納する膜形成チャンバー4、有機原料を気化または昇華させる気化昇華室5、気化昇華室5と膜形成チャンバー4をつなぐ原料ガス輸送管6を備える。
【0030】
保持手段を構成する基板ホルダ2は、膜形成チャンバー4に設けられる。基板ホルダ2は表面側に基板3を保持する機構を有する。また、内部は中空構造で、背面側に接続された2系統の配管7a,7bから冷却媒体の供給および排出が行われることで、冷却媒体を用いた冷却手段が設けられている。
【0031】
基板ホルダ2は図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転動作を行うので、配管7a,7bに対して回転自在となるように、例えば磁気シール2aを介して配管7a,7bと基板ホルダ2が接続される。配管7aからは水や不活性ガスを利用した冷却媒体が基板ホルダ2内に供給される。そして、基板3から熱を吸収した冷却媒体が配管7bから排出されるようになっている。ここで、膜形成チャンバー4内で基板3は垂直に保持される。なお、カラーディスプレイに用いる発光材料を製作する場合、図10に示すマスク114が基板3の有機膜形成面に取り付けられる。
【0032】
膜形成チャンバー4にはヒータ8が設けられる。このヒータ8により、膜形成チャンバー4内の温度が、基板3に吸着する前の有機原料が固化しないような温度を保つように制御される。
【0033】
また、膜形成チャンバー4には圧力計9と排気管10が設けられる。この排気管10に排気手段を構成する図示しない真空ポンプが接続され、圧力計9の出力をフィードバックして、膜形成チャンバー4内の圧力が所定の低真空を保つように制御される。
【0034】
なお、膜形成チャンバー4に対して基板3を出し入れ自在とするため、例えば膜形成チャンバー4を開閉構造をもつ分割構造とし、閉じたときは機密性が保たれる構成とする。
【0035】
気化昇華室5は、気化昇華手段を構成し、例えば抵抗加熱法により有機原料を気化または昇華させるもので、チャンバー等の外気と隔離できる容器内にボート形状の原料容器11を備えたものである。また、この原料容器11に通電する図示しない通電機構を備える。
【0036】
原料容器11は、高融点でかつ有機原料と反応しない例えばTa(タンタル)等の材質で作られる。この原料容器11に通電すると、該原料容器11が抵抗となって発熱する。これにより原料容器11に固相(粉末状)の有機原料12を入れて通電すると、原料容器11が発熱することにより有機原料12が間接的に加熱され、気化または昇華する。これにより、H2OやO2等の有機原料を変質させる物質から一切隔離された気化昇華室5内は有機原料のガスで満たされる。
【0037】
気化昇華室5には圧力計13が設けられる。気化昇華室5において有機原料12が減少すると、気化昇華室5内の圧力が低下する。このため、このため、気化昇華室5に圧力計13を設けて気化昇華室5内の圧力を測定し、圧力の低下を検出すると原料補充の指示を出す等の制御によって、有機原料12が枯渇する前に補充が行えるようにする。
【0038】
気化昇華室5には、有機原料12の加熱温度を制御するために、原料容器11の温度を測定する図示しない熱電対が設けられる。また、原料容器11へ通電する際の電流値を計測する図示しない電流計が設けられる。これにより、原料容器11の温度や原料容器11への通電電流値が監視され、有機原料12が気化または昇華する温度が保たれるように制御される。また、気化昇華室5の圧力および温度を測定することで、有機原料12の気化または昇華量を一定に保つように制御される。
【0039】
気化昇華室5には供給管14が接続される。供給管14には流量コントローラ15が設けられる。また、供給管14はタンク16に接続される。タンク16には、キャリアガスとして用いるため、例えば各種有機原料に対して不活性なN2やAr(アルゴン)のガスが入れられる。そして、流量コントローラ15により、気化昇華室5に送るキャリアガスの流量が制御される。以上の説明した気化昇華室5およびこの気化昇華室5にキャリアガスを供給する機構によって、キャリアガス導入手段が構成される。
【0040】
供給管14の流量コントローラ15より下流側にはヒータ17が設けられる。また、供給管14には図示しない温度計が設けられ、供給管14から気化昇華室5に送り込まれるキャリアガスの温度が、有機原料が固化しない温度を保つようにヒータ17が制御される。
【0041】
気化昇華室5には原料ガス輸送手段を構成する原料ガス輸送管6が接続される。この原料ガス輸送管6は膜形成チャンバー4とも接続され、原料ガス輸送管6の膜形成チャンバー4内の端部には、基板3と対向する位置に放出手段を構成するインジェクター18が設けられる。
【0042】
原料ガス輸送管6にはヒータ19が設けられ、輸送される原料ガスおよびインジェクター18が加熱される。また、原料ガス輸送管6には図示しない温度計が設けられ、原料ガス輸送管6を輸送される原料ガスの温度およびインジェクター18の温度が、有機原料が固化しない温度を保つようにヒータ19が制御される。
【0043】
図2は基板3の回転動作とインジェクター18の配置の関係を示す説明図で、図2(a)は有機膜形成装置の要部斜視図、図2(b)は側面図である。膜形成チャンバー4内でインジェクター18は基板ホルダ2に対向して設けられるが、基板ホルダ2の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸が同軸上に配置されるように、基板ホルダ2とインジェクター18の位置が決められている。
【0044】
また、基板3において対角線の交点を基板3の中心としたとき、基板ホルダ2は、回転中心Oaに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。これにより、図示しない駆動手段により基板ホルダ2が回転すると、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転することになる。
【0045】
次に、本発明の有機膜形成方法の実施の形態を、上述した有機膜形成装置1の動作として説明する。本実施の形態の有機膜形成方法は、有機原料を気化または昇華させる気化昇華工程、輸送用のキャリアガスを導入するキャリアガス導入工程、原料ガスを基板3上に輸送する原料ガス輸送工程、基板3上への有機膜堆積工程および排気工程で構成される。
【0046】
気化昇華工程は気化昇華室5で行われる。この気化昇華工程では、有機原料12が入れられた原料容器11に通電し、原料容器11の抵抗発熱で有機原料12を間接的に加熱して気化または昇華させて、原料ガスを生成する。
【0047】
これにより、H2OやO2等の有機原料を変質させる物質から一切隔離された気化昇華室5内は原料ガスで満たされる。そして、気化昇華工程では、原料容器11の温度や原料容器11への通電電流値が監視され、有機原料12の気化または昇華量を一定に保つように制御される。さらに、気化昇華室5内の圧力が圧力計13で監視され、圧力の低下を検出すると、原料補充の指示を出すように制御される。
【0048】
キャリアガス導入工程は気化昇華室5で行われる。このキャリアガス導入工程では、原料ガスの希釈およびキャリアガスの導入が行われる。すなわち、タンク16のキャリアガスが、流量コントローラ15により流量が制御されて、供給管14から気化昇華室5に送り込まれる。そして、気化昇華室5に送り込まれたキャリアガスと原料ガスが混合し、このキャリアガスにより原料ガスが原料ガス輸送管6へ送られる。
【0049】
ここで、キャリアガス導入工程では、気化昇華室5内の原料ガスの温度低下による有機原料の固化を避けるため、ヒータ17により供給管14を加熱することで、キャリアガスおよび原料ガスの温度を制御する。また、流量コントローラ15により、キャリアガスの供給量を一定となるように制御する。このように、気化昇華室5に供給するキャリアガスの量を一定に保ち、気化昇華室5で有機原料12を気化または昇華させる量を一定に保つことで、原料ガス輸送管6に送り込む原料ガスの量を一定に保つことができる。これにより、気化昇華工程で上述したように気化昇華室5の圧力を監視することで、有機原料12の減少を圧力の低下として検出することができ、有機原料12が枯渇する前に補充ができる。
【0050】
原料ガス輸送工程は、原料ガス輸送管6で行われる。原料ガス輸送工程では、キャリアガス導入工程でキャリアガスと混合した原料ガスが、このキャリアガスにより原料ガス輸送管6を輸送される。そして、原料ガス供給管6をキャリアガスにより輸送された原料ガスは、インジェクター18から膜形成チャンバー4内に放出される。
【0051】
この原料ガス輸送工程では、上述したキャリアガス導入工程においてキャリアガスの流量を増加させると、輸送する原料ガスの量を増加させることができる。これにより、基板3へ供給する原料ガスの量を増加させて、基板3上での成膜速度を向上させることが可能となり、真空蒸着法に比較して大幅に成膜速度を向上させることができる。
【0052】
また、原料ガス輸送工程では、原料ガス輸送管6内の原料ガスの温度低下による有機原料の固化を避けるため、ヒータ19により原料ガス輸送管6を加熱することで原料ガスの温度を制御する。
【0053】
有機膜堆積工程は、膜形成チャンバー4で行われる。有機膜堆積工程では、上述した原料ガス輸送工程で原料ガス輸送管6を輸送されてインジェクター18から放出された原料ガスが基板3に吸着して有機膜を形成する。
【0054】
この有機膜堆積工程では、図2(a)に示すように、基板ホルダ2を矢印a方向に回転させる。これにより、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転する。そして、インジェクター18から放出された原料ガスは、図2(b)に示すように、基板3上へと拡散供給されるので、基板3が回転動作(自転)することで、基板3に形成される有機膜の膜厚分布が均一となる。
【0055】
さて、原料ガスは有機原料が気相の状態を保つため、例えば250℃程度の温度となっている。このため、この原料ガスが供給される基板3の温度が上昇する。そこで、有機膜堆積工程では、基板ホルダ2内に配管7aで冷却水等の冷却媒体を供給する。基板3は基板ホルダ2に保持されているので、基板3から基板ホルダ2内の冷却媒体に熱が移動する。そして、熱を吸収した冷却媒体は配管7bから外部へと排出される。このように、原料ガスの熱が基板3に伝わり、基板3の熱が基板ホルダ2に伝わり、基板ホルダ2の熱が冷却媒体に伝わり、そして外部へ排出されるというプロセスが行われることで、基板3は裏面から冷却される。
【0056】
したがって、有機膜堆積工程では、基板3の冷却と基板3の回転動作が同時に行われることになる。よって、基板3の温度を室温付近に保って有機膜の形成が可能であるので、基板3に吸着した有機原料は、高温のガスの状態から急速冷却されることで、非晶質または微結晶な良質な有機膜が形成される。これにより、基板3上に堆積した有機膜の一部あるいは全部が結晶化してしまうことに伴う電気特性の劣化や光学特性の劣化を防ぐことができる。
【0057】
排気工程は、膜形成チャンバー4で行われる。排気工程では、上述した各工程に先立ち、基板3が収納された膜形成チャンバー4を原料ガスの流れを制御し得る102〜103Pa程度の低真空に保つ。また、有機膜堆積工程で発生した残留ガスを排気する。
【0058】
次に、基板3の動作とインジェクター18の配置の変形例を、本発明の第2〜第5の実施の形態として説明する。まず、図3は有機膜形成装置の第2の実施の形態を示す要部構成図で、図3(a)は膜形成チャンバー内の要部斜視図、図3(b)は側断面図である。第1の実施の形態と同様に、膜形成チャンバー4内でインジェクター18は基板ホルダ2に対向して設けられるが、第2の実施の形態の有機膜形成装置では、基板ホルダ2の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸を一致させない。
【0059】
基板ホルダ2は、回転中心Oaに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。これにより、図示しない駆動手段により基板ホルダ2が回転すると、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転することになる。これに対して、インジェクター18からは、基板3の中心からずれた位置に向けて原料ガスが放出される。なお、図示しないが第2の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成は図1に示すものと同じである。
【0060】
以下に、第2の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0061】
この有機膜堆積工程では、図3(a)に示すように、基板ホルダ2を矢印a方向に回転させる。これにより、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転する。このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図3(b)に示すように、基板3の中心からずれた範囲へと拡散供給されるが、基板3が回転動作(自転)しているので、原料ガスは基板3の全面に供給されることになる。
【0062】
このように、基板ホルダ2の回転中心、ここでは基板3の回転中心と、インジェクター18からの原料ガスの入射軸をずらして配置することで、第1の実施の形態と比較して、約2倍の辺長、面積にして約4倍の面積に均一に成膜することが可能であり、基板3に形成される有機膜の膜厚分布の均一性が向上する。なお、第2の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われ、これにより、膜厚が均一で、かつ非晶質または微結晶な良質な有機膜が形成できる。
【0063】
図4は有機膜形成装置の第3の実施の形態を示す要部構成図であり、図4(a)は膜形成チャンバー内の要部斜視図、図4(b)は側断面図である。第3の実施の形態の有機膜形成装置は、複数枚の基板3に対して一度に成膜を行えるようにしたものである。
【0064】
すなわち、基板ホルダ2は、回転中心Oaに対して同一円周上に複数枚の基板3を保持する機構を有する。これにより、図示しない駆動手段により基板ホルダ2が回転すると、各基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転することになる。また、インジェクター18は、複数枚の基板3が並ぶ円周上に入射軸が一致するように、基板ホルダ2と対向配置される。これにより、基板ホルダ2の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸は一致せず、基板ホルダ2が回転することによる各基板3の移動経路に対向してインジェクター18が配置される。なお、図示しないが第3の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成は図1に示すものと同じである。
【0065】
以下に、第3の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0066】
この有機膜堆積工程では、図4(a)に示すように、基板ホルダ2を矢印a方向に回転させる。これにより、各基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転する。このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図4(b)に示すように、インジェクター18の前に位置する基板3へと拡散供給されるが、各基板3が基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転しているので、全ての基板3がインジェクター18の前を通過することになり、各基板3へ原料ガスが供給される。
【0067】
第3の実施の形態では、基板ホルダ2のサイズを第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態の場合と同じとすると、第1の実施の形態と比較して約半分の辺長すなわち約1/4の面積の大きさの基板3を複数個保持できる。そして、一度の有機膜堆積工程で複数枚の基板3に有機膜を形成できることから、小サイズの基板3を大量生産できる。なお、第3の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われ、これにより、非晶質または微結晶な良質な有機膜を、一度の有機膜堆積工程で複数の基板3に形成できる。
【0068】
なお、上述した第1〜第3の実施の形態において、基板ホルダ2の回転は、一方向のみの回転動作、正逆両方向の回転動作、あるいは正逆両方向の回転動作の繰り返し等が行われるものとする。
【0069】
図5は有機膜形成装置の第4の実施の形態を示す要部構成図であり、図5(a)は膜形成チャンバー内の要部斜視図、図5(b)は側断面図である。第4の実施の形態の有機膜形成装置も、複数枚の基板3に対して一度に成膜を行えるようにしたものである。
【0070】
基板ホルダ20は、基板3を保持するホルダ21と、各ホルダ21を回転自在に支持するメインホルダ22と、各ホルダ21に対する冷却媒体の供給および排出を行う背面ホルダ23とから構成される。
【0071】
背面ホルダ23は内部が中空構造で、背面側に接続された2系統の配管7a,7bから冷却媒体の供給および排出が行われる。基板ホルダ20は図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転動作を行うので、配管7a,7bに対して回転自在となるように、例えば磁気シール2aを介して配管7a,7bと背面ホルダ23が接続される。
【0072】
ホルダ21は内部が中空構造で、配管24a,24bで背面ホルダ23と接続されている。ホルダ21は背面ホルダ23に対して回転自在とするので、配管24a,24bに対して回転自在となるように、磁気シール21aを介して配管24a,24bと接続される。
【0073】
メインホルダ22と背面ホルダ23は一体構造で、メインホルダ22は図示しない駆動手段の駆動力を第1のシャフト25で受けて回転する。これにより、基板ホルダ20全体の回転は第1のシャフト25により行われる。第1のシャフト25は中空構造で、第2のシャフト26が回転自在に通されている。そして、第2のシャフト26の先端にはホルダ回転用ギア27が取り付けられている。ホルダ21の外周には図示しないギアが設けられ、このギアとホルダ回転用ギア27がかみ合っている。これにより、ホルダ21は基板ホルダ20の回転中心に対して同一円周上に並んで設けられ、また、第2のシャフト26が回転するとホルダ21が回転する。
【0074】
さて、ホルダ21は、回転中心Obに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。これにより、図示しない駆動手段によりホルダ21が回転すると、基板3はホルダ21の回転中心Obを軸に自転することになる。
【0075】
したがって、第1のシャフト25を回転させることでメインホルダ22を回転させると、基板ホルダ20全体の回転中心Oaを軸に各基板3は公転するとともに、第2のシャフト26を回転させることでホルダ21を回転させると、基板3はホルダ21の回転中心Obを軸に自転することになる。
【0076】
また、インジェクター18は、複数のホルダ21が並ぶ円周上に入射軸が一致するように、基板ホルダ20と対向配置される。これにより、基板ホルダ20全体の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸は一致せず、基板ホルダ20が回転することによる各基板3の移動経路に対向してインジェクター18が配置される。したがって、ある基板3がインジェクター18と対向する位置にあるとき、ホルダ21の回転中心Obとインジェクター18からの原料ガスの入射軸は一致する。なお、図示しないが第3の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成は図1に示すものと同じである。
【0077】
以下に、第4の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0078】
この有機膜堆積工程では、図5(a)に示すように、第1のシャフト25を矢印a方向に回転させることで、基板ホルダ20全体を矢印a方向に回転させる。これにより、各基板3は基板ホルダ20全体の回転中心Oaを軸に公転する。また、第2のシャフト26を矢印b方向にさせると、図5(b)に示すように、ホルダ回転用ギア27とホルダ21の図示しないギアとのかみ合いにより、各ホルダ21は矢印c方向に回転する。これにより、各基板3は、基板ホルダ20全体の回転中心Oaに対して公転しながら自転を行う。
【0079】
このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図5(b)に示すように、インジェクター18の前に位置する基板3へと拡散供給されるが、各基板3が基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転しているので、全ての基板3がインジェクター18の前を通過することになり、各基板3へ原料ガスが供給される。
【0080】
第4の実施の形態でも、一度の有機膜堆積工程で複数枚の基板3に有機膜を形成できることから、小サイズの基板3を大量生産できる。そして、基板3へ原料ガスを供給しているときは、基板3は自転もしているので、膜厚分布が均一となる。なお、第4の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われる、すなわち、背面ホルダ23内に配管7aから供給された冷却水等の冷却媒体は、各配管24aから各ホルダ21へと供給される。基板3はホルダ21に保持されているので、基板3からホルダ21内の冷却媒体に熱が移動する。そして、熱を吸収した冷却媒体は配管24bから背面ホルダ23へ排出され、背面ホルダ23から配管7bを通り外部へと排出される。これにより、非晶質または微結晶な良質な有機膜を、一度の有機膜堆積工程で複数の基板3に形成できる。ここで、インジェクター18による原料ガスの入射軸を基板3の自転軸とずらして配置することとしても良い。また、基板ホルダ20の回転は、一方向のみの回転動作、正逆両方向の回転動作、あるいは正逆両方向の回転動作の繰り返し等が行われるものとする。同様に、ホルダ21の回転は、一方向のみの回転動作、正逆両方向の回転動作、あるいは正逆両方向の回転動作の繰り返し等が行われるものとする。
【0081】
図6は有機膜形成装置の第5の実施の形態を示す要部構成図であり、図6(a)は膜形成チャンバー内の要部正面図、図6(b)は側断面図である。基板ホルダ28は内部が中空構造で、背面側に接続された2系統の配管29a,29bから冷却媒体の供給および排出が行われる。
【0082】
基板ホルダ28は図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転動作を行うので、配管29a,29bに対して回転自在となるように、例えば磁気シール2aを介して配管29a,29bと基板ホルダ28が接続される。また、基板ホルダ28はスライド動作も行うので、配管29a,29bは可撓性を有する材質が用いられる。配管29aからは水や不活性ガスを利用した冷却媒体が基板ホルダ28内に供給される。そして、基板3から熱を吸収した冷却媒体が配管29bから排出されるようになっている。
【0083】
基板ホルダ28の外周にはギア30が設けられ、このギア30とかみ合うラックギア31が膜形成チャンバー4内に設けられる。これにより、図示しない駆動手段が基板ホルダ28に例えば+X方向の力を加えると、ギア30とラックギア31のかみ合いで、基板ホルダ28は矢印d方向に回転しながら、矢印e方向にスライド移動する。
【0084】
また、基板ホルダ28は、回転動作を行う際の回転中心Oaに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。基板ホルダ28はスライド移動するので、回転中心Oaは平行移動するが、このスライド移動に伴う基板ホルダ28の回転で、基板3は基板ホルダ28の回転中心Oaを軸に自転することになる。
【0085】
インジェクター18は基板ホルダ2に対向して設けられるが、平行移動する基板ホルダ28の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸が一致しない位置となるように、インジェクター18の位置が決められている。
【0086】
以下に、第5の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0087】
この有機膜堆積工程では、図6(a)に示すように、基板ホルダ28に+X方向の力を加えると、ギア30とラックギア31のかみ合いで、基板ホルダ28は矢印d方向に回転しながら、矢印e方向にスライド移動する。これにより、基板3は基板ホルダ28の回転中心Oaを軸に自転しながらスライド移動する。このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図6(b)に示すように、基板3の中心からずれた範囲へと拡散供給されるが、基板3が自転かつスライド移動しているので、基板3上における原料ガスの供給位置が変化し、原料ガスは基板3の全面に供給されることになる。
【0088】
同様にして、基板ホルダ28に−X方向の力を加えると、基板ホルダ28は矢印a方向に回転しながら、矢印f方向にスライド移動する。以上の動作の繰り返しで、基板3はインジェクター18の前を繰り返し通過することになる。
【0089】
以上のように、基板3の回転を伴うスライド動作が簡単な構造で実現でき、基板3に形成される有機膜の膜厚分布の均一性が向上する。なお、第5の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われ、これにより、膜厚が均一で、かつ非晶質または微結晶な良質な有機膜が形成できる。
【0090】
なお、第5の実施の形態の構成と第4の実施の形態の構成を組み合わせることで、基板3を自公転させながら、スライド移動させることも可能となる。すなわち、基板ホルダ28に図5に示すような構成で駆動される図示しないホルダを設ける。そして、基板ホルダ28の回転に伴うスライド移動とともに、各ホルダが基板ホルダ28に対して回転する構成とすることで、複数の基板3がそれぞれは自転しながら、基板ホルダ28の回転中心Oaを軸に公転しつつ、スライド移動する、とい動作を実現できる。また、インジェクター18の位置も図6に示す位置に限るものではない。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、減圧下のチャンバー内に基板を保持し、有機原料を気相に変化させた原料ガスをキャリアガスを用いてチャンバー内に輸送して基板上に有機膜を形成する際に、原料ガスが供給される基板を移動させつつ、かつ、基板の冷却を行うものである。
【0092】
これにより、基板の全面に原料ガスを供給しつつ、基板に吸着した原料ガスを急速に冷却することで非結晶な有機膜を形成できる。したがって、膜厚分布の均一性が向上し、熱の影響を受けていない良好な有機膜を形成することができる。よって、大画面の有機ELディスプレイに用いられる有機EL発光材料等の製作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成図である。
【図2】基板の回転動作とインジェクターの配置の関係を示す説明図である。
【図3】有機膜形成装置の第2の実施の形態を示す要部構成図である。
【図4】有機膜形成装置の第3の実施の形態を示す要部構成図である。
【図5】有機膜形成装置の第4の実施の形態を示す要部構成図である。
【図6】有機膜形成装置の第5の実施の形態を示す要部構成図である。
【図7】有機EL素子の構造の一例を示す説明図である。
【図8】有機ELカラーディスプレイの概要を示す平面図である。
【図9】有機ELカラーディスプレイの要部斜視図である。
【図10】マスクを使用した膜堆積工程の一例を示す断面図である。
【図11】従来の有機膜形成装置の説明図である。
【符号の説明】
1・・・有機膜形成装置、2・・・基板ホルダ、2a・・・磁気シール、3・・・基板、4・・・膜形成チャンバー、5・・・気化昇華室、6・・・原料ガス輸送管、7a,7b・・・配管、8・・・ヒータ、9・・・圧力計、10・・・排気管、11・・・原料容器、12・・・有機原料、13・・・圧力計、14・・・供給管、15・・・流量コントローラ、16・・・タンク、17・・・ヒータ、18・・・インジェクター、19・・・ヒータ、20・・・基板ホルダ、21・・・ホルダ、21a・・・シール、22・・・メインホルダ、23・・・サブホルダ、24a,24b・・・配管、25・・・第1のシャフト、26・・・第2のシャフト、27・・・ホルダ回転用ギア、28・・・基板ホルダ、29a,29b・・・配管、30・・・ギア、31・・・ラックギア
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機原料を気相に変化させた原料ガスを、キャリアガスで基板上に輸送して薄膜を形成する有機膜形成装置および有機膜形成方法に関する。詳しくは、基板を移動させながら原料ガスを供給し、かつ、基板の冷却も同時に行うことで、均質で良好な有機膜を形成できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
有機EL(エレクトロルミネンス)素子は発光層に有機物を利用した発光材料である。この有機EL素子は、コンピュータやテレビジョン受信機に使用されるフラットパネルディスプレイや、携帯電話のディスプレイや、PDA(PersonalDigital Assistants)と呼ばれる携帯端末のディスプレイ等の各種表示装置を構成する発光材料として、また、発光ダイオード等の発光素子として用いられる。
【0003】
図7は有機EL素子の構造の一例を示す説明図である。有機EL素子101は、ガラス等の透明基板102の上に陽極であるITO(Indium−Tin Oxide)透明電極103、有機膜104、陰極である背面電極105を順に積層したものである。有機膜104は、ITO透明電極103側から、正孔注入層104a、正孔輸送層104b、発光層104c、電子輸送層104d、そして電子注入層104eを順に積層したものである。
【0004】
ITO透明電極103−背面電極105間に電圧が印加されると、ITO透明電極103からプラス電荷(正孔)が注入され、背面電極105からマイナス電荷(電子)が注入され、それぞれ有機膜104を移動する。そして、発光層104c内で電子−正孔がある確率で再結合し、この再結合の際に所定の波長を持った光が発生するものである。
【0005】
なお、有機膜104の構成としては、正孔注入層104aと正孔輸送層104bを1層で構成したもの、電子輸送層104dと電子注入層104eを1層で構成したもの、発光層104cと電子輸送層104dと電子注入層104eを1層で構成したもの等がある。
【0006】
図8はこのような有機EL素子を用いて構成した有機ELカラーディスプレイの概要を示す平面図、図9は有機ELカラーディスプレイの要部斜視図である。有機カラーディスプレイ106は、透明基板102の上にITO透明電極103がストライプ状に形成される。また、有機膜104がITO透明電極103と直交するようにストライプ状に形成され、有機膜104上に背面電極105が形成されて、ITO透明電極103と有機膜104および背面電極105をマトリクス状に配置する。これにより、電圧が印加されたITO透明電極103と背面電極105の交点の有機膜104が発光する。
【0007】
そして、有機膜104として、赤(R)に発光する有機膜104Rと緑(G)に発光する有機膜104Gと青(B)に発光する有機膜104Bを順に並べることで、RGBによる画素が形成され、カラーの表示が可能となる。
【0008】
そして、図8等に示すカラーディスプレイを作成する場合は、マスクを用いて有機膜の形成を行う。図10はマスクを使用した膜堆積工程の一例を示す断面図である。マスク114は、ストライプ状のパターン115を有する。このマスク114を基板111に密着させるため磁石を用いる。すなわち、マスク114を磁性体で構成し、基板111を保持する図示しない機構に永久磁石や電磁石から構成される磁化部材116を設ける。そして、基板111をこの磁化部材116に載せ、この基板111にマスク114を載せることで、マスク114は磁化部材116の磁力で基板111に密着する。
【0009】
そして、R,G,Bの有機膜を形成するため、まず、マスク114を所定の位置に取り付けて図9に示す有機膜104Rを形成し、次にマスク114の取り付け位置を1/3ピッチずらして有機膜104Gを形成し、次にマスク114の取り付け位置を1/3ピッチずらして有機膜104Bを形成するものである。
【0010】
さて、低分子の有機物を用いた有機膜の形成は、従来は真空蒸着法を用いていた。真空蒸着法とは、原材料を高真空中で加熱蒸発させ、蒸発源と対向する基板上に原材料を吸着させることで薄膜を形成する方法である。
【0011】
これに対して、真空蒸着法とは異なる新しい有機膜形成法として、有機気相蒸着法(organic vapor phase deposition)と呼ばれる方法が、特表2001−523768に開示されている。
【0012】
図11は有機気相蒸着法を用いた従来の有機膜形成装置の説明図で、以下に特表2001−523768に開示されている装置の概要を説明する。チャンバー120は内部を外気と遮断する例えば略筒状の容器であり、内部に基板111を保持する基板ホルダ121が設けられる。
【0013】
チャンバー120には2本の配管122が設けられる。それぞれの配管122の一方の端部は開口しており、この開口部の近傍に原料容器123が設けられる。原料容器123は図示しない通電機構を備え、原料容器123に有機原料を入れて通電すると、原料容器123が抵抗発熱することにより有機原料が間接的に加熱され、気化または昇華して原料ガスが発生する。
【0014】
配管122の他方の端部はタンク124と接続される。また、配管122の途中には、調整バルブ125と、圧力調整器126aと、流量計126bと、切替バルブ126cとを備える。タンク124には各種有機原料に対して不活性なN2(窒素)等のガスが入れられ、圧力および流量が制御されたキャリアガスとして配管122に供給される。
【0015】
これにより、配管122内で有機原料を気化あるいは昇華させて生成した原料ガスは、キャリアガスと混合してチャンバー120内に送られ、基板111に吸着して有機膜を形成する。
【0016】
原料容器123には固相の有機原料が入れられるのに対して、原料槽127には液相の有機原料128が入れられる。この原料槽127にはタンク124とつながる配管122と、チャンバー120とつながる配管129が接続される。この配管122には、圧力調整器126aと、流量計126bと、切替バルブ126cとを備える。
【0017】
これにより、配管122から供給されるキャリアガスは気泡として有機原料128内を通り、蒸気となった有機原料を配管129でチャンバー120内へと送る。また、原料槽127の少なくとも有機原料128が入れられる高さまでを液体130に浸す温度制御槽131を設け、図示しないヒータで液体130の温度を制御することで、原料槽127内の有機原料128の温度を制御する。また、チャンバー120の周囲には加熱冷却器132が設けられる。この加熱冷却器132はチャンバー120内の温度制御を行う。
【0018】
チャンバー120には排気管133が設けられ、この排気管133にトラップタンク134、スロットバルブ135および真空ポンプ136が取り付けられる。真空ポンプ136はチャンバー120内を排気して、該チャンバー120内を真空にする。スロットバルブ135はチャンバー120内の圧力を調整するもので、チャンバー120に取り付けた図示しない圧力計の出力がスロットバルブ135へ電気的にフィードバックされ、チャンバー120内が所望の真空度を維持するように制御される。また、基板111上に吸着しなかった有機原料等はトラップタンク134で凝縮させ、スロットバルブ135や真空ポンプ136に到達しないようにしてある。
【0019】
このような装置を用いる有機気相蒸着法は、減圧下で原料ガスをキャリアガスを用いて基板へと運び、基板上でガスが凝縮して膜形成が行われる有機膜形成方法である。これにより、従来の真空蒸着法ではできなかった、原料を気化または昇華させるための温度制御と、原料を基板へ送るキャリアガスの流量制御等を独立して行えるので、著しく異なる蒸気圧をもつ有機原料を同時蒸着して多成分の薄膜を形成する際に、各成分量を正確に制御することができる。また、減圧下で膜形成を行うため、表面が滑らかな有機膜を形成することができる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
有機気相蒸着法で滑らかな表面性を有する有機膜を形成するには、有機膜の結晶化等は避けなければならないので、高温の原料ガスの輸送による基板の温度上昇を抑制するため、基板の冷却機構が必要である。
【0021】
また、真空蒸着法では、膜厚分布を均一にするため、基板の回転機構が備えられているものがある。しかしながら、有機気相蒸着法でも真空蒸着法でも、膜の形成中に基板の冷却と基板の移動を同時に行ってはいないので、熱による影響を受けずに良好な有機膜を形成することができなかった。
【0022】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、膜厚分布が均一でかつ非晶質な有機膜が形成できる有機膜形成装置および有機膜形成方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明に係る有機膜形成装置は、基板上に有機物の薄膜を形成する有機膜形成装置において、真空ポンプが接続されたチャンバーと、有機原料を気相に変化させて原料ガスを生成する気化昇華手段と、原料ガスとキャリアガスを混合するキャリアガス導入手段と、キャリアガスにより原料ガスを輸送する原料ガス輸送手段と、原料ガス輸送手段で輸送された原料ガスをチャンバー内に放出する放出手段と、少なくとも1枚の基板を保持し、放出手段に対して基板を移動させる保持手段と、この保持手段に設けられ、保持している基板を冷却する冷却手段とを備えたものである。
【0024】
本発明に係る有機膜形成装置では、気化昇華手段で有機原料を気相に変化させて原料ガスを生成する。この原料ガスにキャリアガス導入手段でキャリアガスを混合し、このキャリアガスにより、原料ガス輸送手段で原料ガスをチャンバーに輸送する。
【0025】
チャンバー内では放出手段から原料ガスを放出して、基板に原料ガスを供給する。このとき、保持手段は放出手段に対して基板の位置を移動させることで、原料ガスを基板の全面に供給する。また、保持手段で保持されている基板は冷却手段で冷却されており、基板に吸着した原料ガスは急速に冷却されて非晶質な有機膜となる。これにより、膜厚分布の均一性が向上した良好な有機膜を形成することができる。
【0026】
また、本発明に係る有機膜形成方法は、基板上に有機物の薄膜を形成する有機膜形成方法において、有機原料を気相の原料ガスへと変化させる気化昇華工程と、原料ガスとキャリアガスを混合するキャリアガス導入工程と、キャリアガスにより原料ガスを基板上へ輸送する原料ガス輸送工程と、原料ガスの流れを制御し得る減圧下のチャンバー内で基板上に有機膜を形成する有機膜堆積工程と、チャンバーの排気工程とを有し、有機膜堆積工程では、基板を原料ガスの流れる方向と交する方向に移動させながら、かつ、基板を冷却しながら有機膜を形成するものである。
【0027】
本発明に係る有機膜形成方法では、気化昇華工程では有機原料が気相の原料ガスに変化し、キャリアガス導入工程ではこの原料ガスにキャリアガスが混合され、原料ガス輸送工程でキャリアガスにより原料ガスが基板上へと供給される。有機膜堆積工程では供給された原料ガスが基板に吸着して有機膜が形成されるが、このとき、基板を移動させながら、かつ冷却しながら有機膜が形成されるので、基板の全面に原料ガスを供給しつつ、基板に吸着した原料ガスを急速に冷却することで非晶質な有機膜が形成される。これにより、膜厚分布の均一性が向上した良好な有機膜を形成することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の有機膜形成装置の実施の形態を説明する。図1は第1の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成図である。第1の実施の形態の有機膜形成装置1は、回転動作を行う基板ホルダ2で基板3を保持することで、気相の有機原料をキャリアガスを用いて基板3へ供給して有機膜を形成する際の膜厚分布を向上させるものである。ここで、基板3とは、図7等で説明した透明ガラス基板102にITO透明電極を形成したもの、あるいは図示しないTFT(Thin Film Transistor)基板等である。
【0029】
有機膜形成装置1は、基板3を収納する膜形成チャンバー4、有機原料を気化または昇華させる気化昇華室5、気化昇華室5と膜形成チャンバー4をつなぐ原料ガス輸送管6を備える。
【0030】
保持手段を構成する基板ホルダ2は、膜形成チャンバー4に設けられる。基板ホルダ2は表面側に基板3を保持する機構を有する。また、内部は中空構造で、背面側に接続された2系統の配管7a,7bから冷却媒体の供給および排出が行われることで、冷却媒体を用いた冷却手段が設けられている。
【0031】
基板ホルダ2は図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転動作を行うので、配管7a,7bに対して回転自在となるように、例えば磁気シール2aを介して配管7a,7bと基板ホルダ2が接続される。配管7aからは水や不活性ガスを利用した冷却媒体が基板ホルダ2内に供給される。そして、基板3から熱を吸収した冷却媒体が配管7bから排出されるようになっている。ここで、膜形成チャンバー4内で基板3は垂直に保持される。なお、カラーディスプレイに用いる発光材料を製作する場合、図10に示すマスク114が基板3の有機膜形成面に取り付けられる。
【0032】
膜形成チャンバー4にはヒータ8が設けられる。このヒータ8により、膜形成チャンバー4内の温度が、基板3に吸着する前の有機原料が固化しないような温度を保つように制御される。
【0033】
また、膜形成チャンバー4には圧力計9と排気管10が設けられる。この排気管10に排気手段を構成する図示しない真空ポンプが接続され、圧力計9の出力をフィードバックして、膜形成チャンバー4内の圧力が所定の低真空を保つように制御される。
【0034】
なお、膜形成チャンバー4に対して基板3を出し入れ自在とするため、例えば膜形成チャンバー4を開閉構造をもつ分割構造とし、閉じたときは機密性が保たれる構成とする。
【0035】
気化昇華室5は、気化昇華手段を構成し、例えば抵抗加熱法により有機原料を気化または昇華させるもので、チャンバー等の外気と隔離できる容器内にボート形状の原料容器11を備えたものである。また、この原料容器11に通電する図示しない通電機構を備える。
【0036】
原料容器11は、高融点でかつ有機原料と反応しない例えばTa(タンタル)等の材質で作られる。この原料容器11に通電すると、該原料容器11が抵抗となって発熱する。これにより原料容器11に固相(粉末状)の有機原料12を入れて通電すると、原料容器11が発熱することにより有機原料12が間接的に加熱され、気化または昇華する。これにより、H2OやO2等の有機原料を変質させる物質から一切隔離された気化昇華室5内は有機原料のガスで満たされる。
【0037】
気化昇華室5には圧力計13が設けられる。気化昇華室5において有機原料12が減少すると、気化昇華室5内の圧力が低下する。このため、このため、気化昇華室5に圧力計13を設けて気化昇華室5内の圧力を測定し、圧力の低下を検出すると原料補充の指示を出す等の制御によって、有機原料12が枯渇する前に補充が行えるようにする。
【0038】
気化昇華室5には、有機原料12の加熱温度を制御するために、原料容器11の温度を測定する図示しない熱電対が設けられる。また、原料容器11へ通電する際の電流値を計測する図示しない電流計が設けられる。これにより、原料容器11の温度や原料容器11への通電電流値が監視され、有機原料12が気化または昇華する温度が保たれるように制御される。また、気化昇華室5の圧力および温度を測定することで、有機原料12の気化または昇華量を一定に保つように制御される。
【0039】
気化昇華室5には供給管14が接続される。供給管14には流量コントローラ15が設けられる。また、供給管14はタンク16に接続される。タンク16には、キャリアガスとして用いるため、例えば各種有機原料に対して不活性なN2やAr(アルゴン)のガスが入れられる。そして、流量コントローラ15により、気化昇華室5に送るキャリアガスの流量が制御される。以上の説明した気化昇華室5およびこの気化昇華室5にキャリアガスを供給する機構によって、キャリアガス導入手段が構成される。
【0040】
供給管14の流量コントローラ15より下流側にはヒータ17が設けられる。また、供給管14には図示しない温度計が設けられ、供給管14から気化昇華室5に送り込まれるキャリアガスの温度が、有機原料が固化しない温度を保つようにヒータ17が制御される。
【0041】
気化昇華室5には原料ガス輸送手段を構成する原料ガス輸送管6が接続される。この原料ガス輸送管6は膜形成チャンバー4とも接続され、原料ガス輸送管6の膜形成チャンバー4内の端部には、基板3と対向する位置に放出手段を構成するインジェクター18が設けられる。
【0042】
原料ガス輸送管6にはヒータ19が設けられ、輸送される原料ガスおよびインジェクター18が加熱される。また、原料ガス輸送管6には図示しない温度計が設けられ、原料ガス輸送管6を輸送される原料ガスの温度およびインジェクター18の温度が、有機原料が固化しない温度を保つようにヒータ19が制御される。
【0043】
図2は基板3の回転動作とインジェクター18の配置の関係を示す説明図で、図2(a)は有機膜形成装置の要部斜視図、図2(b)は側面図である。膜形成チャンバー4内でインジェクター18は基板ホルダ2に対向して設けられるが、基板ホルダ2の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸が同軸上に配置されるように、基板ホルダ2とインジェクター18の位置が決められている。
【0044】
また、基板3において対角線の交点を基板3の中心としたとき、基板ホルダ2は、回転中心Oaに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。これにより、図示しない駆動手段により基板ホルダ2が回転すると、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転することになる。
【0045】
次に、本発明の有機膜形成方法の実施の形態を、上述した有機膜形成装置1の動作として説明する。本実施の形態の有機膜形成方法は、有機原料を気化または昇華させる気化昇華工程、輸送用のキャリアガスを導入するキャリアガス導入工程、原料ガスを基板3上に輸送する原料ガス輸送工程、基板3上への有機膜堆積工程および排気工程で構成される。
【0046】
気化昇華工程は気化昇華室5で行われる。この気化昇華工程では、有機原料12が入れられた原料容器11に通電し、原料容器11の抵抗発熱で有機原料12を間接的に加熱して気化または昇華させて、原料ガスを生成する。
【0047】
これにより、H2OやO2等の有機原料を変質させる物質から一切隔離された気化昇華室5内は原料ガスで満たされる。そして、気化昇華工程では、原料容器11の温度や原料容器11への通電電流値が監視され、有機原料12の気化または昇華量を一定に保つように制御される。さらに、気化昇華室5内の圧力が圧力計13で監視され、圧力の低下を検出すると、原料補充の指示を出すように制御される。
【0048】
キャリアガス導入工程は気化昇華室5で行われる。このキャリアガス導入工程では、原料ガスの希釈およびキャリアガスの導入が行われる。すなわち、タンク16のキャリアガスが、流量コントローラ15により流量が制御されて、供給管14から気化昇華室5に送り込まれる。そして、気化昇華室5に送り込まれたキャリアガスと原料ガスが混合し、このキャリアガスにより原料ガスが原料ガス輸送管6へ送られる。
【0049】
ここで、キャリアガス導入工程では、気化昇華室5内の原料ガスの温度低下による有機原料の固化を避けるため、ヒータ17により供給管14を加熱することで、キャリアガスおよび原料ガスの温度を制御する。また、流量コントローラ15により、キャリアガスの供給量を一定となるように制御する。このように、気化昇華室5に供給するキャリアガスの量を一定に保ち、気化昇華室5で有機原料12を気化または昇華させる量を一定に保つことで、原料ガス輸送管6に送り込む原料ガスの量を一定に保つことができる。これにより、気化昇華工程で上述したように気化昇華室5の圧力を監視することで、有機原料12の減少を圧力の低下として検出することができ、有機原料12が枯渇する前に補充ができる。
【0050】
原料ガス輸送工程は、原料ガス輸送管6で行われる。原料ガス輸送工程では、キャリアガス導入工程でキャリアガスと混合した原料ガスが、このキャリアガスにより原料ガス輸送管6を輸送される。そして、原料ガス供給管6をキャリアガスにより輸送された原料ガスは、インジェクター18から膜形成チャンバー4内に放出される。
【0051】
この原料ガス輸送工程では、上述したキャリアガス導入工程においてキャリアガスの流量を増加させると、輸送する原料ガスの量を増加させることができる。これにより、基板3へ供給する原料ガスの量を増加させて、基板3上での成膜速度を向上させることが可能となり、真空蒸着法に比較して大幅に成膜速度を向上させることができる。
【0052】
また、原料ガス輸送工程では、原料ガス輸送管6内の原料ガスの温度低下による有機原料の固化を避けるため、ヒータ19により原料ガス輸送管6を加熱することで原料ガスの温度を制御する。
【0053】
有機膜堆積工程は、膜形成チャンバー4で行われる。有機膜堆積工程では、上述した原料ガス輸送工程で原料ガス輸送管6を輸送されてインジェクター18から放出された原料ガスが基板3に吸着して有機膜を形成する。
【0054】
この有機膜堆積工程では、図2(a)に示すように、基板ホルダ2を矢印a方向に回転させる。これにより、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転する。そして、インジェクター18から放出された原料ガスは、図2(b)に示すように、基板3上へと拡散供給されるので、基板3が回転動作(自転)することで、基板3に形成される有機膜の膜厚分布が均一となる。
【0055】
さて、原料ガスは有機原料が気相の状態を保つため、例えば250℃程度の温度となっている。このため、この原料ガスが供給される基板3の温度が上昇する。そこで、有機膜堆積工程では、基板ホルダ2内に配管7aで冷却水等の冷却媒体を供給する。基板3は基板ホルダ2に保持されているので、基板3から基板ホルダ2内の冷却媒体に熱が移動する。そして、熱を吸収した冷却媒体は配管7bから外部へと排出される。このように、原料ガスの熱が基板3に伝わり、基板3の熱が基板ホルダ2に伝わり、基板ホルダ2の熱が冷却媒体に伝わり、そして外部へ排出されるというプロセスが行われることで、基板3は裏面から冷却される。
【0056】
したがって、有機膜堆積工程では、基板3の冷却と基板3の回転動作が同時に行われることになる。よって、基板3の温度を室温付近に保って有機膜の形成が可能であるので、基板3に吸着した有機原料は、高温のガスの状態から急速冷却されることで、非晶質または微結晶な良質な有機膜が形成される。これにより、基板3上に堆積した有機膜の一部あるいは全部が結晶化してしまうことに伴う電気特性の劣化や光学特性の劣化を防ぐことができる。
【0057】
排気工程は、膜形成チャンバー4で行われる。排気工程では、上述した各工程に先立ち、基板3が収納された膜形成チャンバー4を原料ガスの流れを制御し得る102〜103Pa程度の低真空に保つ。また、有機膜堆積工程で発生した残留ガスを排気する。
【0058】
次に、基板3の動作とインジェクター18の配置の変形例を、本発明の第2〜第5の実施の形態として説明する。まず、図3は有機膜形成装置の第2の実施の形態を示す要部構成図で、図3(a)は膜形成チャンバー内の要部斜視図、図3(b)は側断面図である。第1の実施の形態と同様に、膜形成チャンバー4内でインジェクター18は基板ホルダ2に対向して設けられるが、第2の実施の形態の有機膜形成装置では、基板ホルダ2の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸を一致させない。
【0059】
基板ホルダ2は、回転中心Oaに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。これにより、図示しない駆動手段により基板ホルダ2が回転すると、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転することになる。これに対して、インジェクター18からは、基板3の中心からずれた位置に向けて原料ガスが放出される。なお、図示しないが第2の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成は図1に示すものと同じである。
【0060】
以下に、第2の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0061】
この有機膜堆積工程では、図3(a)に示すように、基板ホルダ2を矢印a方向に回転させる。これにより、基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に自転する。このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図3(b)に示すように、基板3の中心からずれた範囲へと拡散供給されるが、基板3が回転動作(自転)しているので、原料ガスは基板3の全面に供給されることになる。
【0062】
このように、基板ホルダ2の回転中心、ここでは基板3の回転中心と、インジェクター18からの原料ガスの入射軸をずらして配置することで、第1の実施の形態と比較して、約2倍の辺長、面積にして約4倍の面積に均一に成膜することが可能であり、基板3に形成される有機膜の膜厚分布の均一性が向上する。なお、第2の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われ、これにより、膜厚が均一で、かつ非晶質または微結晶な良質な有機膜が形成できる。
【0063】
図4は有機膜形成装置の第3の実施の形態を示す要部構成図であり、図4(a)は膜形成チャンバー内の要部斜視図、図4(b)は側断面図である。第3の実施の形態の有機膜形成装置は、複数枚の基板3に対して一度に成膜を行えるようにしたものである。
【0064】
すなわち、基板ホルダ2は、回転中心Oaに対して同一円周上に複数枚の基板3を保持する機構を有する。これにより、図示しない駆動手段により基板ホルダ2が回転すると、各基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転することになる。また、インジェクター18は、複数枚の基板3が並ぶ円周上に入射軸が一致するように、基板ホルダ2と対向配置される。これにより、基板ホルダ2の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸は一致せず、基板ホルダ2が回転することによる各基板3の移動経路に対向してインジェクター18が配置される。なお、図示しないが第3の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成は図1に示すものと同じである。
【0065】
以下に、第3の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0066】
この有機膜堆積工程では、図4(a)に示すように、基板ホルダ2を矢印a方向に回転させる。これにより、各基板3は基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転する。このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図4(b)に示すように、インジェクター18の前に位置する基板3へと拡散供給されるが、各基板3が基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転しているので、全ての基板3がインジェクター18の前を通過することになり、各基板3へ原料ガスが供給される。
【0067】
第3の実施の形態では、基板ホルダ2のサイズを第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態の場合と同じとすると、第1の実施の形態と比較して約半分の辺長すなわち約1/4の面積の大きさの基板3を複数個保持できる。そして、一度の有機膜堆積工程で複数枚の基板3に有機膜を形成できることから、小サイズの基板3を大量生産できる。なお、第3の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われ、これにより、非晶質または微結晶な良質な有機膜を、一度の有機膜堆積工程で複数の基板3に形成できる。
【0068】
なお、上述した第1〜第3の実施の形態において、基板ホルダ2の回転は、一方向のみの回転動作、正逆両方向の回転動作、あるいは正逆両方向の回転動作の繰り返し等が行われるものとする。
【0069】
図5は有機膜形成装置の第4の実施の形態を示す要部構成図であり、図5(a)は膜形成チャンバー内の要部斜視図、図5(b)は側断面図である。第4の実施の形態の有機膜形成装置も、複数枚の基板3に対して一度に成膜を行えるようにしたものである。
【0070】
基板ホルダ20は、基板3を保持するホルダ21と、各ホルダ21を回転自在に支持するメインホルダ22と、各ホルダ21に対する冷却媒体の供給および排出を行う背面ホルダ23とから構成される。
【0071】
背面ホルダ23は内部が中空構造で、背面側に接続された2系統の配管7a,7bから冷却媒体の供給および排出が行われる。基板ホルダ20は図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転動作を行うので、配管7a,7bに対して回転自在となるように、例えば磁気シール2aを介して配管7a,7bと背面ホルダ23が接続される。
【0072】
ホルダ21は内部が中空構造で、配管24a,24bで背面ホルダ23と接続されている。ホルダ21は背面ホルダ23に対して回転自在とするので、配管24a,24bに対して回転自在となるように、磁気シール21aを介して配管24a,24bと接続される。
【0073】
メインホルダ22と背面ホルダ23は一体構造で、メインホルダ22は図示しない駆動手段の駆動力を第1のシャフト25で受けて回転する。これにより、基板ホルダ20全体の回転は第1のシャフト25により行われる。第1のシャフト25は中空構造で、第2のシャフト26が回転自在に通されている。そして、第2のシャフト26の先端にはホルダ回転用ギア27が取り付けられている。ホルダ21の外周には図示しないギアが設けられ、このギアとホルダ回転用ギア27がかみ合っている。これにより、ホルダ21は基板ホルダ20の回転中心に対して同一円周上に並んで設けられ、また、第2のシャフト26が回転するとホルダ21が回転する。
【0074】
さて、ホルダ21は、回転中心Obに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。これにより、図示しない駆動手段によりホルダ21が回転すると、基板3はホルダ21の回転中心Obを軸に自転することになる。
【0075】
したがって、第1のシャフト25を回転させることでメインホルダ22を回転させると、基板ホルダ20全体の回転中心Oaを軸に各基板3は公転するとともに、第2のシャフト26を回転させることでホルダ21を回転させると、基板3はホルダ21の回転中心Obを軸に自転することになる。
【0076】
また、インジェクター18は、複数のホルダ21が並ぶ円周上に入射軸が一致するように、基板ホルダ20と対向配置される。これにより、基板ホルダ20全体の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸は一致せず、基板ホルダ20が回転することによる各基板3の移動経路に対向してインジェクター18が配置される。したがって、ある基板3がインジェクター18と対向する位置にあるとき、ホルダ21の回転中心Obとインジェクター18からの原料ガスの入射軸は一致する。なお、図示しないが第3の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成は図1に示すものと同じである。
【0077】
以下に、第4の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0078】
この有機膜堆積工程では、図5(a)に示すように、第1のシャフト25を矢印a方向に回転させることで、基板ホルダ20全体を矢印a方向に回転させる。これにより、各基板3は基板ホルダ20全体の回転中心Oaを軸に公転する。また、第2のシャフト26を矢印b方向にさせると、図5(b)に示すように、ホルダ回転用ギア27とホルダ21の図示しないギアとのかみ合いにより、各ホルダ21は矢印c方向に回転する。これにより、各基板3は、基板ホルダ20全体の回転中心Oaに対して公転しながら自転を行う。
【0079】
このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図5(b)に示すように、インジェクター18の前に位置する基板3へと拡散供給されるが、各基板3が基板ホルダ2の回転中心Oaを軸に公転しているので、全ての基板3がインジェクター18の前を通過することになり、各基板3へ原料ガスが供給される。
【0080】
第4の実施の形態でも、一度の有機膜堆積工程で複数枚の基板3に有機膜を形成できることから、小サイズの基板3を大量生産できる。そして、基板3へ原料ガスを供給しているときは、基板3は自転もしているので、膜厚分布が均一となる。なお、第4の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われる、すなわち、背面ホルダ23内に配管7aから供給された冷却水等の冷却媒体は、各配管24aから各ホルダ21へと供給される。基板3はホルダ21に保持されているので、基板3からホルダ21内の冷却媒体に熱が移動する。そして、熱を吸収した冷却媒体は配管24bから背面ホルダ23へ排出され、背面ホルダ23から配管7bを通り外部へと排出される。これにより、非晶質または微結晶な良質な有機膜を、一度の有機膜堆積工程で複数の基板3に形成できる。ここで、インジェクター18による原料ガスの入射軸を基板3の自転軸とずらして配置することとしても良い。また、基板ホルダ20の回転は、一方向のみの回転動作、正逆両方向の回転動作、あるいは正逆両方向の回転動作の繰り返し等が行われるものとする。同様に、ホルダ21の回転は、一方向のみの回転動作、正逆両方向の回転動作、あるいは正逆両方向の回転動作の繰り返し等が行われるものとする。
【0081】
図6は有機膜形成装置の第5の実施の形態を示す要部構成図であり、図6(a)は膜形成チャンバー内の要部正面図、図6(b)は側断面図である。基板ホルダ28は内部が中空構造で、背面側に接続された2系統の配管29a,29bから冷却媒体の供給および排出が行われる。
【0082】
基板ホルダ28は図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転動作を行うので、配管29a,29bに対して回転自在となるように、例えば磁気シール2aを介して配管29a,29bと基板ホルダ28が接続される。また、基板ホルダ28はスライド動作も行うので、配管29a,29bは可撓性を有する材質が用いられる。配管29aからは水や不活性ガスを利用した冷却媒体が基板ホルダ28内に供給される。そして、基板3から熱を吸収した冷却媒体が配管29bから排出されるようになっている。
【0083】
基板ホルダ28の外周にはギア30が設けられ、このギア30とかみ合うラックギア31が膜形成チャンバー4内に設けられる。これにより、図示しない駆動手段が基板ホルダ28に例えば+X方向の力を加えると、ギア30とラックギア31のかみ合いで、基板ホルダ28は矢印d方向に回転しながら、矢印e方向にスライド移動する。
【0084】
また、基板ホルダ28は、回転動作を行う際の回転中心Oaに基板3の中心が一致するようにこの基板3を保持する機構を備えている。基板ホルダ28はスライド移動するので、回転中心Oaは平行移動するが、このスライド移動に伴う基板ホルダ28の回転で、基板3は基板ホルダ28の回転中心Oaを軸に自転することになる。
【0085】
インジェクター18は基板ホルダ2に対向して設けられるが、平行移動する基板ホルダ28の回転中心Oaとインジェクター18からの原料ガスの入射軸が一致しない位置となるように、インジェクター18の位置が決められている。
【0086】
以下に、第5の実施の形態の有機膜形成装置の動作を説明する。なお、気化昇華工程、キャリアガス導入工程、原料ガス輸送工程および排気工程は第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0087】
この有機膜堆積工程では、図6(a)に示すように、基板ホルダ28に+X方向の力を加えると、ギア30とラックギア31のかみ合いで、基板ホルダ28は矢印d方向に回転しながら、矢印e方向にスライド移動する。これにより、基板3は基板ホルダ28の回転中心Oaを軸に自転しながらスライド移動する。このとき、インジェクター18から放出された原料ガスは、図6(b)に示すように、基板3の中心からずれた範囲へと拡散供給されるが、基板3が自転かつスライド移動しているので、基板3上における原料ガスの供給位置が変化し、原料ガスは基板3の全面に供給されることになる。
【0088】
同様にして、基板ホルダ28に−X方向の力を加えると、基板ホルダ28は矢印a方向に回転しながら、矢印f方向にスライド移動する。以上の動作の繰り返しで、基板3はインジェクター18の前を繰り返し通過することになる。
【0089】
以上のように、基板3の回転を伴うスライド動作が簡単な構造で実現でき、基板3に形成される有機膜の膜厚分布の均一性が向上する。なお、第5の実施の形態においても、有機膜堆積工程で基板3の冷却も同時に行われ、これにより、膜厚が均一で、かつ非晶質または微結晶な良質な有機膜が形成できる。
【0090】
なお、第5の実施の形態の構成と第4の実施の形態の構成を組み合わせることで、基板3を自公転させながら、スライド移動させることも可能となる。すなわち、基板ホルダ28に図5に示すような構成で駆動される図示しないホルダを設ける。そして、基板ホルダ28の回転に伴うスライド移動とともに、各ホルダが基板ホルダ28に対して回転する構成とすることで、複数の基板3がそれぞれは自転しながら、基板ホルダ28の回転中心Oaを軸に公転しつつ、スライド移動する、とい動作を実現できる。また、インジェクター18の位置も図6に示す位置に限るものではない。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、減圧下のチャンバー内に基板を保持し、有機原料を気相に変化させた原料ガスをキャリアガスを用いてチャンバー内に輸送して基板上に有機膜を形成する際に、原料ガスが供給される基板を移動させつつ、かつ、基板の冷却を行うものである。
【0092】
これにより、基板の全面に原料ガスを供給しつつ、基板に吸着した原料ガスを急速に冷却することで非結晶な有機膜を形成できる。したがって、膜厚分布の均一性が向上し、熱の影響を受けていない良好な有機膜を形成することができる。よって、大画面の有機ELディスプレイに用いられる有機EL発光材料等の製作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の有機膜形成装置の全体構成図である。
【図2】基板の回転動作とインジェクターの配置の関係を示す説明図である。
【図3】有機膜形成装置の第2の実施の形態を示す要部構成図である。
【図4】有機膜形成装置の第3の実施の形態を示す要部構成図である。
【図5】有機膜形成装置の第4の実施の形態を示す要部構成図である。
【図6】有機膜形成装置の第5の実施の形態を示す要部構成図である。
【図7】有機EL素子の構造の一例を示す説明図である。
【図8】有機ELカラーディスプレイの概要を示す平面図である。
【図9】有機ELカラーディスプレイの要部斜視図である。
【図10】マスクを使用した膜堆積工程の一例を示す断面図である。
【図11】従来の有機膜形成装置の説明図である。
【符号の説明】
1・・・有機膜形成装置、2・・・基板ホルダ、2a・・・磁気シール、3・・・基板、4・・・膜形成チャンバー、5・・・気化昇華室、6・・・原料ガス輸送管、7a,7b・・・配管、8・・・ヒータ、9・・・圧力計、10・・・排気管、11・・・原料容器、12・・・有機原料、13・・・圧力計、14・・・供給管、15・・・流量コントローラ、16・・・タンク、17・・・ヒータ、18・・・インジェクター、19・・・ヒータ、20・・・基板ホルダ、21・・・ホルダ、21a・・・シール、22・・・メインホルダ、23・・・サブホルダ、24a,24b・・・配管、25・・・第1のシャフト、26・・・第2のシャフト、27・・・ホルダ回転用ギア、28・・・基板ホルダ、29a,29b・・・配管、30・・・ギア、31・・・ラックギア
Claims (14)
- 基板上に有機物の薄膜を形成する有機膜形成装置において、
真空ポンプが接続されたチャンバーと、
有機原料を気相に変化させて原料ガスを生成する気化昇華手段と、
前記原料ガスとキャリアガスを混合するキャリアガス導入手段と、
前記キャリアガスにより前記原料ガスを輸送する原料ガス輸送手段と、
前記原料ガス輸送手段で輸送された前記原料ガスを前記チャンバー内に放出する放出手段と、
少なくとも1枚の前記基板を保持し、前記放出手段に対して前記基板を移動させる保持手段と、
前記保持手段に設けられ、保持している前記基板を冷却する冷却手段と
を備えたことを特徴とする有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、保持している前記基板の面に対して直交する軸を中心に回転し、前記基板を回転動作させる
ことを特徴とする請求項1記載の有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、保持している前記基板の面に沿った方向に移動し、前記基板をスライド移動させる
ことを特徴とする請求項1記載の有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、前記軸を中心とした自転を行う位置に1枚の前記基板を保持する
ことを特徴とする請求項2記載の有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、前記軸を中心とした同一円周上に複数枚の前記基板を保持し、前記各基板を前記軸を中心に公転させる
ことを特徴とする請求項2記載の有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、前記軸を中心とした同一円周上に前記基板を保持して回転する複数のホルダを備え、前記各基板を自転させながら公転させる
ことを特徴とする請求項2記載の有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、前記基板の面に対して直交する軸を有し、前記軸を中心とした自転を行う位置に1枚の前記基板を保持して、保持している前記基板を自転させながらスライド移動させる
ことを特徴とする請求項3記載の有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、前記基板の面に対して直交する軸を有し、前記軸を中心とした同一円周上に複数枚の前記基板を保持して、保持している前記各基板を公転させながらスライド移動させる
ことを特徴とする請求項3記載の有機膜形成装置。 - 前記保持手段は、前記基板の面に対して直交する軸を有し、前記軸を中心とした同一円周上に前記基板を保持して回転する複数のホルダを備えて、保持している前記各基板を自公転させながらスライド移動させる
ことを特徴とする請求項3記載の有機膜形成装置。 - 基板上に有機物の薄膜を形成する有機膜形成方法において、
有機原料を気相の原料ガスへと変化させる気化昇華工程と、
前記原料ガスとキャリアガスを混合するキャリアガス導入工程と、
前記キャリアガスにより前記原料ガスを前記基板上へ輸送する原料ガス輸送工程と、
前記原料ガスの流れを制御し得る減圧下のチャンバー内で前記基板上に有機膜を形成する有機膜堆積工程と、
前記チャンバーの排気工程とを有し、
前記有機膜堆積工程では、前記基板を前記原料ガスの流れる方向と交する方向に移動させながら、かつ、前記基板を冷却しながら有機膜を形成する
ことを特徴とする有機膜形成方法。 - 前記有機膜堆積工程では、前記基板を一方向に回転させる
ことを特徴とする請求項10記載の有機膜形成方法。 - 前記有機膜堆積工程では、前記基板を正逆両方向に回転させる
ことを特徴とする請求項10記載の有機膜形成方法。 - 前記有機膜堆積工程では、前記基板を回転させながら、一方向にスライド移動させる
ことを特徴とする請求項10記載の有機膜形成方法。 - 前記有機膜堆積工程では、前記基板を回転させながら、双方向にスライド移動させる
ことを特徴とする請求項10記載の有機膜形成方法。
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