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JP2004010381A - 表面被覆窒化珪素焼結体 - Google Patents

表面被覆窒化珪素焼結体 Download PDF

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JP2004010381A
JP2004010381A JP2002163142A JP2002163142A JP2004010381A JP 2004010381 A JP2004010381 A JP 2004010381A JP 2002163142 A JP2002163142 A JP 2002163142A JP 2002163142 A JP2002163142 A JP 2002163142A JP 2004010381 A JP2004010381 A JP 2004010381A
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silicon nitride
coating layer
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nitride sintered
sio
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JP2002163142A
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Takeo Fukutome
福留 武郎
Yutaka Kubo
久保 豊
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Kyocera Corp
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Kyocera Corp
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Publication date
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Abstract

【課題】、高温燃焼ガス雰囲気中での耐食性に優れ、被覆層の付着力が高く、且つ耐エロージョン性に優れた被覆層を有する表面被覆窒化珪素焼結体を提供する。
【解決手段】窒化珪素焼結体からなる基材と、該基材表面に形成された被覆層とから構成された表面被覆窒化珪素焼結体において、前記被覆層がRESi及び/又はRESiO(REは希土類元素)の結晶相を含み、前記基材と前記被覆層との熱膨張係数の差が30%以下であることを特徴とし、特に前記被覆層に、前記RESi及び/又はRESiO(REは希土類元素)の結晶相よりも熱膨張係数の低い酸化物結晶相を含み、REがDy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温から高温までの強度特性に優れると共に破壊靱性、耐酸化性に優れ、特にピストン、シリンダー、バルブ、カムローラー、ロッカーアーム、ピストンリング、ピストンピンなどの自動車用部品や、タービンロータ、タービンブレード、ノズル、コンバスタ、スクロール、ノズルサポート、シールリング、スプリングリング、ディフューザ、ダクト、シュラウドなどのガスタービンエンジン用部品に好適に使用される表面被覆窒化珪素焼結体に関する。
【0002】
【従来技術】
窒化珪素焼結体は、従来から、強度、硬度、熱的化学的安定性に優れることからエンジニアリングセラミックスとして、特に熱機関構造用材料としてその応用が進められている。このような窒化珪素焼結体は、一般には窒化珪素粉末に対してY、AlあるいはMgOなどの焼結助剤を添加して焼成することにより製造されており、このような焼結助剤の使用により、高密度で高強度の特性が得られている。このような窒化珪素焼結体は、例えばエンジン用部品として使用されているが、エンジン用部品の使用条件が高温化するにしたがい、窒化珪素焼結体の高温における強度及び耐酸化特性のさらなる改善が求められている。
【0003】
かかる要求に対して、これまで焼結助剤、粒界相及び焼成条件等の改良や、焼結体表面での酸化保護膜の形成を中心として、その改善が進められてきた。
【0004】
例えば、特開平9−183676号公報では、窒化珪素またはサイアロンを主成分とする焼結体表面を、SiOを主体とするガラス層により被覆することにより、高温における機械的強度と耐酸化性を改善することが提案されている。
【0005】
本出願人も、先に窒化珪素焼結体の表面に、耐酸化特性の優れたダイシリケートやモノシリケートなどの結晶相を有する被覆層を形成することによって被覆層の剥離や亀裂の発生を防止できることを提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような表面被覆窒化珪素焼結体からなるエンジン部品は、エンジンの作動中に高速で飛来する微粒子の衝撃を受けてエロージョンが生じ、窒化珪素焼結体の被覆層が消耗するという問題やエンジンの起動停止時の温度分布による熱膨張差でクラックが生じたり、被覆層が剥離したりするという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、高温燃焼ガス雰囲気中での耐食性に優れ、被覆層の付着力が高く、且つ耐エロージョン性に優れた被覆層を有する表面被覆窒化珪素焼結体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材と被覆層との熱膨張係数差を小さくすることによって、の付着力を高めることによって、基材に対する被覆層の付着力を高めることができるとともに、耐エロージョン性を顕著に改善できるという知見に基づくものであり、特に被覆層に酸化物結晶相を含有させることによって熱膨張率を容易に制御でき、また、イオン半径が小さく、高温でも結合状態が安定な希土類酸化物からなる被覆層を用いることによってさらに耐エロージョン性を改善したものである。
【0009】
すなわち、本発明の表面被覆窒化珪素焼結体は、窒化珪素焼結体からなる基材と、該基材表面に形成された被覆層とから構成された表面被覆窒化珪素焼結体において、前記被覆層がRESi及び/又はRESiO(REは希土類元素)の結晶相を含み、前記基材と前記被覆層との熱膨張係数の差が30%以下であることを特徴とするものである。
【0010】
特に、前記被覆層に、前記RESi及び/又はRESiO(REは希土類元素)の結晶相よりも熱膨張係数の低い酸化物結晶相を含むことが好ましく、特に前記酸化物結晶相が、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、スポジューメン、ユークリプタイトのうち少なくとも1種であることが好ましい。これによって、前記基材と前記被覆層との熱膨張係数の差を容易に30%以下に制御することができ、さらに密着性の高い被覆層を具備した表面被覆窒化珪素焼結体を提供することができる。
【0011】
また、前記酸化物結晶相が、全量中に30容量%以下の割合で含まれることが好ましい。これにより、被覆層の耐食性及び耐エロージョン性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0012】
前記RESi及び/又はRESiOを構成するREがDy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの元素は、希土類の中でもイオン半径が小さいため、高温でも結合状態が安定な希土類酸化物からなる被覆層を形成でき、さらに耐エロージョン性を改善することが可能となる。
【0013】
さらに、前記被覆層のビッカース硬度が5.5GPa以上であることが好ましい。これにより、燃焼ガス中の微細な異物衝突による摩耗が原因で部材が消耗するのを抑制し、製品寿命をより長くすることができる。
【0014】
さらに、前記被覆層の気孔率が10%以下であることが好ましい。これによって、被覆層の機械的強度をさらに向上するとともに、耐食性及び耐エロージョン性をさらに向上することができる。
【0015】
さらにまた、前記基材が、窒化珪素粒子の粒界にRESi及び/又はRESiO(REは希土類酸化物)の結晶相を有する焼結体であることが好ましい。これによって、基材との化学的結合性が向上し、基材との付着力がさらに向上すると共に、硬度や破壊靭性値が向上し耐エロージョン性を向上するができる。また、基材との熱膨張差を小さくする効果がより働き、さらに、基材の高融点化により高温での安定性をさらに高めることができる。
【0016】
また、前記基材が、窒化珪素を70〜99モル%、希土類元素の少なくとも1種を酸化物換算(RE)で0.5〜10モル%、及び該酸化物換算量に対する過剰酸素の量のモル比SiO/REが2以上であることが好ましい。これによって、表面被覆層との結合性が向上し付着力が向上すると共に熱膨張差を小さくすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の表面被覆窒化珪素焼結体は、窒化珪素焼結体からなる基材と、この基材表面に形成された被覆層とから構成され、前記被覆層がRESi及び/又はRESiO(REは希土類元素)の結晶相を含むことが重要である。
【0018】
このように、被覆層がRESi(ダイシリケート)やRESiO(モノシリケート)で構成されるため、従来のSiO、ZrO、Al、ムライト、コージェライト、YAGなどの保護膜に比べて、高温酸化性雰囲気でも非常に安定で、優れた耐食性を発揮できる。また、上記ダイシリケートや物シリケートは融点も1600〜1800℃と高いために耐熱性に優れ、高温での寿命が長い。
【0019】
被覆層に用いられる希土類元素は、周期律表第3a族元素であり、具体的にはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScを例示できる。
【0020】
そして、REとして希土類元素のうち、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも1種を選択することによって、イオン半径が小さいため、分子間の結合力が大きく高温においても結合力が高く耐エロージョン性に優れる上、硬度や破壊靭性値も高く摩耗の抑制が可能となる。これらの元素は、イオン半径が小さいため、分子間の結合力が大きく高温でも結合状態が安定で、耐エロージョン性に優れる。また、これらの酸化物はそれ自体の熱膨張係数が比較的小さくため、熱膨張係数を調整するための添加物量を少なくすることができ、耐食性や耐エロージョン性を高めるために好ましい。
【0021】
本発明によれば、基材と被覆層との界面の付着力が十分でない場合、エンジンの起動停止などによる熱分布の違いにより熱膨張差による熱応力が発生し、クラックや剥離が発生するため、基材と被覆層との熱膨張係数の差を30%以内にすることによって、上記界面の付着力を高め、耐エロージョン性を高めることができる。
【0022】
基材と被覆層との熱膨張係数の差を30%以内にするため、例えば被覆層中に、その中に含まれる希土類酸化物よりも小さな熱膨張係数を有する酸化物結晶相を含有させることが好ましい。酸化物結晶相は耐酸化性に優れ、耐食性を維持したまま容易に被覆層の熱膨張係数を調整することができる。
【0023】
具体的には、前記酸化物結晶相が、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、スポジューメン、ユークリプタイトのうち少なくとも1種であり、しかもこれらの合計が被覆層の全量中に30容量%以下の割合で含まれるのが良い。
【0024】
これらの酸化物結晶相のうち、低熱膨張係数の点でコージェライト、チタン酸アルミニウム、スポジューメン、ユークリプタイトが特に好ましく、特に熱的安定性からチタン酸アルミニウムが、熱的安定性及び耐食性の点でコージェライトが好ましい。
【0025】
また、上記の酸化物結晶相は、耐食性及び耐エロージョン性を高めるため、結晶が連続して存在せず、粒子状に分散して存在させるのが良く、そのため、全量中30容量%以下、特に20容量%以下、更には10容量%以下の割合で含有させることが望ましい。
【0026】
酸化物結晶相の含有量を10容量%以下で基材と被覆層との熱膨張係数差を容易に30%以下にするため、希土類元素のうちDy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのダイシリケートとモノシリケートの熱膨張係数が小さい点で、これらの希土類元素を用いるのが良い。
【0027】
このように、本発明によれば、被覆層自体の安定性を高めるとともに、基材と被覆層との付着力を高めて複合部材としての耐エロージョン性を高め、両者の効果が相まって優れた耐エロージョン性、耐コロージョン性を有するエンジン部品を実現することが可能となる。
【0028】
また、被覆層の破壊靭性値を2MPam1/2以上、特に2.2MPam1/2以上、更には2.5MPam1/2以上にすることが好ましい。破壊靭性値を上記の範囲に設定することによって、微少な飛来物が衝突した際にクラックの発生を抑制でき、表面被覆層の剥離を抑制することができる。
【0029】
さらに、被覆層のビッカース硬度が5.5GPa以上、特に7.0GPa以上、更には8.0GPa以上にすることが好ましい。ビッカース硬度を上記の範囲に設定することによって、微少な飛来物による摩耗を抑制することができる。
【0030】
また、上述した被覆層は、気孔率が10%以下、特に好適には5%以下、さらには2%以下、最も好適には1%以下であるのがよい。気孔率をこのような範囲に制御することにより、被覆層は閉気孔が主となるため、被覆層の機械的強度をさらに向上するとともに、表面の表面積を小さくして耐食性をさらに向上し、燃焼ガス中の微細な異物衝突によって被覆層から脱落する粒子の数を低減して耐エロージョン性をさらに向上することができる。
【0031】
本発明において、前記被覆層を表面に有する基材が、主相である窒化珪素結晶粒子の粒界に、結晶相を有する窒化珪素焼結体であることが好ましい。
【0032】
即ち、基材である窒化珪素質焼結体の表面に被覆層を設けたとしても、長い期間にわたって被覆層中の粒界等を介して酸素が内部に拡散し、窒化珪素質焼結体に到達し、該焼結体が酸化されると、その機械的特性が劣化してしまうことがある。例えば、窒化珪素結晶は酸化珪素に変化し、最終的にはSiOとなって飛散してしまうため、減肉の原因となる。
【0033】
しかるに、窒化珪素質焼結体における窒化珪素結晶の粒界に結晶相を存在させることにより、窒化珪素結晶を酸化や腐食から保護することができ、例えば、窒化珪素質焼結体の酸化速度を遅くし、上記酸素の焼結体内部への拡散による酸化に起因する機械的特性の低下や減肉を効果的に制御し、窒化珪素質焼結体の特性を最大限に引き出すとともに、その寿命を飛躍的に延ばすことができる。
【0034】
また、窒化珪素結晶の粒界に存在する上記結晶相は、例えば希土類元素(RE)、Si(珪素)及びO(酸素)からなる結晶であることが好ましく、さらに好適には、前記被覆層と同様、化学式:RESi或いはRESiOで表されるダイシリケート相もしくはモノシリケート相であることが望ましい。即ち、このような結晶相を窒化珪素結晶粒子の粒界に存在させることにより、窒化珪素質焼結体からなる基材に対する前記被覆層の濡れ性が良好となり、粒界結晶相が基材から被覆層に連続しているので、両者の付着力が強固となり、また、基材と被覆層間の熱膨張差を低減でき、被覆層の剥がれを一層効果的に防止できる。
【0035】
本発明で使用される希土類元素は、周期律表第3a族元素であり、具体的にはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScが挙げられる。
【0036】
中でも、特にDy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも1種を用いたものが好ましく、これらの元素はイオン半径が小さく、高温での安定性に優れるため、優れた高温強度と耐酸化性を提供でき、更に、Yb、Lu及びErは、易焼結性、高強度の点で有利であり、更にYbは経済性の点で、更にLuは耐酸化性の点で特に好ましい。
【0037】
具体的には、窒化珪素を70〜99モル%、上記の希土類元素のうち少なくとも1種を酸化物換算(RE)で0.5〜10モル%、及び該酸化物換算量に対する過剰酸素の量のモル比SiO/REが2以上である窒化珪素焼結体を例示できる。
【0038】
本発明において、基材として用いる窒化珪素質焼結体は、主成分である窒化珪素以外に、希土類元素及び過剰酸素を含有することが好適である。
【0039】
具体的に、窒化珪素の含有量は、高温強度を十分に発現させるために、70〜99モル%、特に85〜99モル%の範囲にあることが望ましい。また、この窒化珪素中には、AlやOが固溶して、サイアロン(SIALON)を形成していても良い。
【0040】
希土類元素成分は、焼結助剤に由来するものであり、また上述した粒界結晶相の構成成分である。かかる希土類元素としては、被覆層を形成する結晶相中に存在するものと同じ物を例示することができ、焼結体基材中の希土類元素含有量は、緻密で高温強度と高温クリープに優れた窒化珪素質焼結体を得るために、酸化物換算で0.5〜10モル%が適する。特に1〜7モル%が望ましい。例えば、希土類元素含有量が、上記範囲よりも少ないと、焼結性が低下し、緻密な窒化珪素質焼結体からなる基材をえることが困難となり、また、上記範囲よりも多量に希土類元素を含有する場合には、高温強度及び高温クリープの特性が劣化する傾向がある。
【0041】
また、過剰酸素とは、主としてSiOとして存在するものであり、窒化珪素質焼結体中の全酸素量より、希土類元素の酸化物に使用する酸素量を差し引いた酸素量を意味する。本発明において、この過剰酸素量は、下記式:
SiO/RE
式中SiOは、SiO換算での過剰酸素量(モル)を示し、
REは、酸化物換算での前記希土類元素含有量(モル)を示す、
で表されるモル比が2以上、特に2〜3.5、更には2.1〜2.7の範囲にあることが望ましい。即ち、このような量で過剰酸素を含むことにより、酸化及び腐食に対する耐性の高いダイシリケート相やモノシリケート相を粒界に形成することができる。例えば、過剰酸素量が上記範囲よりも少ないと、このような結晶相を粒界に析出することが難しい。
【0042】
このような窒化珪素焼結体は、被覆層の熱膨張係数(40〜1000℃)は、被覆層に含まれる希土類によっても異なるが、3.2〜3.8×10−6/℃、特に3.4〜3.6×10−6/℃であることから、被覆層の熱膨張係数の下限値は、2.2×10−6/℃、特に3×10−6/℃、更には3.2×10−6/℃であり、上限値は4.9×10−6/℃、特に4.4×10−6/℃、更には3.8×10−6/℃であることが望ましい。
【0043】
次に、本発明の表面被覆窒化珪素焼結体の製造方法について説明する。本発明によれば、基材を製造し、次いで該基材表面に上述した被覆層を形成することにより表面被覆窒化珪素焼結体が製造される。
【0044】
まず、基材の出発原料として、窒化珪素粉末と希土類元素(周期律表第3a族元素)の酸化物(RE)粉末との混合粉末が使用されるが、この混合粉末には、必要により、粒界結晶相を析出させるためのSiO粉末が混合される。
【0045】
窒化珪素粉末は、α型、β型のいずれでも使用することができ、その粒径は0.4〜1.2μm、陽イオン不純物量は1質量%以下、特に0.5質量%以下、不純物酸素量は0.5〜2質量%が適当であり、直接窒化法、イミド分解法などのいずれの製法によるものであってもかまわない。また、サイアロン粉末を用いることもできる。
【0046】
また、RE粉末やSiO粉末の代わりに、REとSiOとの複合酸化物の粉末を使用することもできるし、窒化珪素とREとSiOとの化合物粉末を用いることもできる。
【0047】
上記粉末を調合するにあたっては、上述した基材の組成を満足するように、各粉末の混合比率が調整される。例えば、過剰酸素量が所定のSiO/REモル比を満足するためには、窒化珪素中に不可避に含まれる酸素あるいは製造過程で吸着される酸素分等をSiO分として考慮して、Luなどの希土類酸化物量やSiO粉末の添加量を調整する。
【0048】
所定の割合で各粉末を秤量し、振動ミル、回転ミル、バレルミルなどで十分に混合した後、得られた混合粉末を所望の成形手段、例えば、金型プレス、鋳込み成形、排泥成形、押し出し成形、射出成形、冷間静水圧プレス等により任意の形状に成形し、この成形体を焼成することにより、本発明で使用する基材を得ることができる。
【0049】
焼成は、通常、窒素ガスによる加圧下で行われ、焼成温度は、1800〜2000℃の範囲が適当である。このような条件での焼成によって、相対密度が98%以上に緻密化した焼結体を得ることができる。焼成温度が2000℃を越えると窒化珪素結晶が粒成長し、強度劣化を引き起こす恐れがあり、焼成温度が1800℃よりも低いと、緻密化が困難になることがある。
【0050】
また、この焼成後に、熱間静水圧焼成(HIP)法で処理し、さらに緻密化することができる。さらに、上記の焼成後の冷却過程で徐冷するか、または焼結体を1000〜1700℃で熱処理することにより粒界の結晶化を図り特性のさらなる改善を行うことが出来る。また、場合によっては、ガラスカプセル熱間静水圧プレス(HIP)法あるいはガラス浴熱間静水圧プレス(HIP)法により焼結体を得ることも可能である。
【0051】
また、高い寸法精度が要求される場合には、窒化珪素粉末の一部をSi粉末に置き換えて成形体を作製し、これを窒素含有雰囲気中、800〜1500℃で熱処理しSiを反応生成して成形体密度を高めたうえで、前述した焼成条件で焼成することにより、焼成時の収縮を小さくすることが出来る。
【0052】
次に、上記のようにして得られた基材の表面に、前述した被覆層を形成する。被覆層を構成する主結晶相は、希土類元素のモノシリケート相或いはダイシリケート相であり、基材と被覆層との熱膨張係数差を小さくするため、副成分として主結晶相よりも熱膨張係数の低い酸化物結晶を含む場合を例として説明する。
【0053】
被覆層の形成は、蒸着法、CVD法、EB(Electron Beam)−PVD法、スパッタ法等の薄膜形成法、溶射法、スラリー塗布法を用いて行うことができるが、被覆層中の過剰SiO量を厳密に制御する点において、溶射法又はスラリー塗布法が望ましく、さらには簡単に形成できる点でスラリー塗布法が望ましい。
【0054】
例えば、SiO粉末とRE粉末と酸化物粉末との複合混合粉末、或いはSiO粉末とRE粉末と酸化物粉末との混合粉末を用い、こられの粉末中の過剰SiO量を所定の範囲に調整し、その粉末のスラリーを調製する。
【0055】
酸化物粉末は、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、スポジューメン、ユークリプタイトのうち少なくとも1種を、30容量%以下の割合で含む組成になるように、上記混合粉末を調製する。
【0056】
このスラリーを、上記で製造された基材表面に塗布法、即ち、スプレーによりスラリーを吹き付けるか、或いはディッピング法により焼結体表面にスラリーを均一に塗布し、次いで熱処理することにより、目的とする結晶相からなる被覆層を形成することができる。
【0057】
熱処理温度は、用いるREの種類にもよるが、一般的には、1300〜1800℃、特に1400〜1750℃の温度とするのが良い。熱処理温度が上記範囲よりも低いと、所望の結晶相を析出させることが困難となり、或いは得られる被覆層には、気孔が多数残存し、この被覆層が基材の保護膜としての用をなさない。また、熱処理温度が上記範囲よりも高いと、SiOが揮散してしまい、所定の結晶相を析出することができず、また、粘性が低くなりすぎ、被覆層が形成されにくくなってしまう。
【0058】
なお、原料として用いるSiO粉末及びRE粉末等は、いずれも純度95%以上であることが望ましい。また、被覆層の過剰SiOを低減し、耐食性の変化の少ない被覆層を実現するため、上記混合粉末等の組成は、SiO/REモル比を1.9〜3.0、特に2.0〜2.5、さらには2.1〜2.3に設定することが好ましい。
【0059】
また、上述したスラリーを、焼結体基材の製造工程で作成された成形体表面に、上記と同様の方法で均一塗布し、これを焼成することにより、基材と表面被覆層とを同時に形成させることも可能である。
【0060】
熱処理温度は、用いるREの種類にもよるが、一般的には、1300〜1800℃、特に1400〜1750℃の温度とするのが良い。
【0061】
このようにして得られる本発明の表面被覆窒化珪素焼結体は、被覆層と焼結体基材との付着力が高く、優れた耐酸化性、耐コロージョン性、耐エロージョン性、機械的特性を示し、例えば800〜1500℃付近の高温域において長時間使用されるエンジン用部品として、極めて有用である。
【0062】
【実施例】
基材の原料粉末として、下記の窒化珪素粉末、希土類元素酸化物粉末、酸化珪素粉末及び酸化アルミニウム粉末を用いた。
窒化珪素粉末:
BET比表面積;9m/g
窒化珪素のα率;99%
酸素量;1.1質量%
Al、Mg、Ca、Feなどの陽イオン金属不純物量;30ppm以下
希土類元素酸化物(RE)粉末:
RE;Yb
純度;96%
平均粒径;1.5μm
酸化珪素粉末:
純度;99.9%
平均粒径;2μm
酸化アルミニウム粉末:
純度;99%
平均粒径;1μm
上記の窒化珪素粉末89.5モル%と、RE粉末3モル%と、酸化珪素粉末7.5モル%とからなる混合粉末を調合し、バインダー及び溶媒のメタノールを添加し、窒化珪素ボールを用いて50時間回転ミルで混合粉砕し、スラリーを調製した(窒化珪素A)。一方、窒化珪素粉末87モル%とRE粉末5モル%、酸化珪素粉末4モル%、酸化アルミニウム粉末4モル%からなる混合粉末も調合し、バインダー及び溶媒のメタノールを添加し、窒化珪素ボールを用いて50時間回転ミルで混合粉砕し、スラリーを調製した(窒化珪素B)。
【0063】
得られたスラリーを、乾燥後、298MPaの圧力でラバープレス成形し、直径60mm、厚み20mmの形状の成形体を作製した。
【0064】
この成形体を、表1に示す焼成方法及び焼成条件にて焼成し、基材を得た。酸化アルミニウムの入っていない基材には、粒界にRESi(ダイシリケート)の結晶相が析出していた。一方、酸化アルミニウムの含まれる焼結体の粒界相は非晶質であった。
【0065】
なお、表1で示す焼成方法において、「G」は、ガス圧焼成(GPS)を示し、「H」は、ガラス浴熱間静水圧プレス(HIP)による焼成を示し、「N」は、常圧焼成を示し、「G+H」は、1900℃でガス圧焼成を行った後、1700℃、窒素圧196MPaで1時間HIP焼成したことを示す(焼成のトータル時間は10時間)。
【0066】
なお、表1中の基材中のSiO量は、基材を粉砕し、化学分析によって全酸素量を求め、添加した希土類酸化物及び場合によっては酸化アルミニウム中の酸素量を除いた酸素量をSiO換算して算出した値である。
【0067】
次に、表1に示す条件で、RE(RE=Yb)粉末とSiO粉末と酸化物粉末との混合粉末を、それぞれPVAを溶解した蒸留水に分散させてスラリーを作製し、スプレーによって前記で得られた基材表面に、均一になるように塗布した。次いで乾燥した後、窒素雰囲気中で、表1に示す条件で熱処理し、表面被覆窒化珪素焼結体を得た。
酸化物粉末:
コージェライト;純度99%、平均粒径1.2μm
ムライト;純度99.9%、平均粒径0.8μm
ジルコン;純度98%、平均粒径1.5μm
チタン酸アルミニウム;純度99.9%、平均粒径1.2μm
スポジューメン;純度97%、平均粒径1.5μm
ユークリプタイト;純度97%、平均粒径1μm
なお、RE粉末は、純度96%、平均粒径1.5μmのものを用いた。
【0068】
さらに、比較のため、上記混合粉末の代わりに、SiO粉末、ZrO粉末又はAl粉末を使用し、上記と同様にして表面被覆窒化珪素焼結体を得た。
【0069】
得られた焼結体について、以下の方法で各種特性等を測定し、その結果を表1に示した。
【0070】
気孔率:
アルキメデス法により表面被覆層の気孔率を算出した。
【0071】
破壊靭性:
各コーティング材質の99%以上の緻密体をホットプレス法で作製し、JIS−R1607に基づき、ビッカース圧痕を用いる方法で測定した。
【0072】
ビッカース硬度:
各コーティング材質の99%以上の緻密体をホットプレス法で作製し、JIS−R1610に基づき、ビッカース硬度を測定した。
【0073】
熱膨張係数:
各コーティング材質の99%以上の緻密体をホットプレス法で作製し、JIS−R1618に基づき、室温から1300℃までの熱膨張係数を測定した。
【0074】
減肉量:
試料の表面被覆焼結体を1200℃、圧力0.4MPa、ガス流速50m/sのガス気流中に100時間曝し、その減肉量を測定した。
【0075】
結晶の同定:
基材の粒界相の結晶及び被覆層の結晶を、X線回折測定により同定した。表1において、モノシリケート相をRS、ダイシリケート相をR2S、非晶質をAMで示した。
【0076】
耐エロージョン性:
表面被覆窒化珪素焼結体に平均粒径100μmのガラス粉末を圧力2kg/cmの空気で吹き付け、試験前後の重量変化量から耐エロージョン性を評価した。
【0077】
熱サイクル試験:
1300℃と300℃の熱サイクルをかけ、顕微鏡観察によりクラックが確認される回数により表面被覆層の密着性を評価した。試験は試験片3本の平均回数で評価した。
【0078】
【表1】
Figure 2004010381
【0079】
本発明の試料No.1〜18は、耐エロージョン性が4%以下で、熱サイクル試験によるクラック発生が200回以上で曝露試験による減肉量が3μm以下であった。
【0080】
一方、被覆層がモノシリケートやダイシリケートで形成されていない本発明の範囲外のNo.19〜22は、減肉量が200μm以上と大きく、耐腐食性が著しく劣っていた。
【0081】
【発明の効果】
本発明の表面被覆窒化珪素焼結体は、窒化珪素焼結体からなる基材と、該基材表面に形成された被覆層とから構成され、前記被覆層をRESi及び/又はRESiO(REは希土類元素で、特にDy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも1種が好ましい)の結晶相を含み、前記基材と前記被覆層との熱膨張係数の差を30%以下にすることによって、被覆層と基材との密着性を高めることができる。
【0082】
また、熱膨張係数の差による熱応力で発生するクラックや剥離を防止することによって、耐食性と耐エロージョン性を改善でき、長期信頼性の高い表面被覆窒化珪素焼結体を提供することができる。
【0083】
特に、低熱膨張係数を有するコージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、スポジューメン、ユークリプタイト等の酸化物結晶相を被覆層に含有させることによって、被覆層の熱膨張係数を容易に制御でき、かつ耐食性及び耐エロージョン性も高めることができる。
【0084】
さらに、イオン半径が小さく、高温でも結合状態が安定な希土類酸化物からなる被覆層を用いることによってさらに耐エロージョン性を改善できる。

Claims (9)

  1. 窒化珪素焼結体からなる基材と、該基材表面に形成された被覆層とから構成された表面被覆窒化珪素焼結体において、前記被覆層がRESi及び/又はRESiO(REは希土類元素)の結晶相を含み、前記基材と前記被覆層との熱膨張係数の差が30%以下であることを特徴とする表面被覆窒化珪素焼結体。
  2. 前記被覆層に、前記RESi及び/又はRESiO(REは希土類元素)の結晶相よりも熱膨張係数の低い酸化物結晶相を含むことを特徴とする請求項1記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
  3. 前記酸化物結晶相が、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、スポジューメン、ユークリプタイトのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
  4. 前記酸化物結晶相が、全量中に30容量%以下の割合で含まれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
  5. 前記RESi及び/又はRESiOを構成するREがDy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
  6. 前記被覆層のビッカース硬度が5.5GPa以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
  7. 前記被覆層の気孔率が10%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
  8. 前記基材が、窒化珪素粒子の粒界にRESi及び/又はRESiO(REは希土類酸化物)の結晶相を有する焼結体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
  9. 前記基材が、窒化珪素を70〜99モル%、希土類元素の少なくとも1種を酸化物換算(RE)で0.5〜10モル%、及び該酸化物換算量に対する過剰酸素の量のモル比SiO/REが2以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN100415641C (zh) * 2005-12-21 2008-09-03 北京科技大学 一种层状布料燃烧合成均质氮化硅粉体的方法
JP2009521079A (ja) * 2005-12-23 2009-05-28 ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング 内燃機関および/または加熱装置用グロー素子、スパーク素子または加熱素子
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