JP2004009814A - 車輪駆動力配分制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】燃費性能の向上を図ることが可能な車輪駆動力配分制御システムを提供する。
【解決手段】本発明の車輪駆動力配分制御システム90によれば、渋滞になって発進・停止が繰り返される場合に自動的に、二輪駆動に切り換わることでエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。しかも、二輪駆動で発進してスリップが起きた場合には、四輪駆動になるから悪路における渋滞にも対応することができる。また、渋滞していない場合には、スロットル開度mや前後輪14,15の回転速度差ΔNに基づいてトルク伝達装置30による伝達トルクが決定され、前後輪14,15の間で適正な駆動力配分が行われるから、種々の状況に対応することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の車輪駆動力配分制御システム90によれば、渋滞になって発進・停止が繰り返される場合に自動的に、二輪駆動に切り換わることでエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。しかも、二輪駆動で発進してスリップが起きた場合には、四輪駆動になるから悪路における渋滞にも対応することができる。また、渋滞していない場合には、スロットル開度mや前後輪14,15の回転速度差ΔNに基づいてトルク伝達装置30による伝達トルクが決定され、前後輪14,15の間で適正な駆動力配分が行われるから、種々の状況に対応することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、状況に応じて自動車の常時駆動輪以外の車輪への伝達トルクを変更する車輪駆動力配分制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の四輪駆動車では、状況に応じて二輪駆動への切り換えを行って走行性の向上を図ることが可能になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、四輪駆動の方が二輪駆動より路面を確実に捉える反面、燃費性能が悪く、特に発進時において、四輪駆動と二輪駆動との燃費性能の差が顕著に現れる。しかしながら、従来では、渋滞に巻き込まれて発進・停止が繰り返される事態になっても、手動で二輪駆動への切り換え操作を行わない限り、四輪駆動のまま発進・停止が繰り返され、燃費性能が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、燃費性能の向上を図ることが可能な車輪駆動力配分制御システムの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る車輪駆動力配分制御システムは、状況に応じて自動車を二輪駆動と四輪駆動とに変更する車輪駆動力配分制御システムにおいて、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段を備え、渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には自動車を二輪駆動にするところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明に係る車輪駆動力配分制御システムは、自動車の常時駆動輪に連動して回転する入力部と、常時駆動輪以外の車輪に連動して回転する出力部とを有しかつ入力部から出力部への伝達トルクを変更可能なトルク伝達手段と、状況に応じてトルク伝達手段による伝達トルクを制御する伝達トルク制御手段とを備えた車輪駆動力配分制御システムにおいて、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段を備え、伝達トルク制御手段は、渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には、伝達トルクを通常時より下げるように構成したところに特徴を有する。
【0007】
なお、請求項2及び3の発明における「常時駆動輪」とは、自動車の走行時に常に駆動力を受けて駆動される車輪をいう。
【0008】
請求項3の発明に係る車輪駆動力配分制御システムは、自動車の常時駆動輪に連動して回転する入力部と、常時駆動輪以外の車輪に連動して回転する出力部とを有しかつ入力部から出力部への伝達トルクを変更可能なトルク伝達手段と、自動車に備えたセンサにより検出されたスロットルの開度と各車輪の回転速度とを取り込み、スロットルの開度に応じて予め定められた第1トルク指令値と、常時駆動輪と常時駆動輪以外の車輪との回転速度の差に応じて予め定められた第2トルク指令値とを求め、これら第1及び第2のトルク指令値の和に基づいて、トルク伝達手段の伝達トルクを制御する伝達トルク制御手段と、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段とを備え、伝達トルク制御手段は、渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には、第1トルク指令値を0に保持するように構成したところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の車輪駆動力配分制御システムにおいて、渋滞判別手段は、車速が所定速度以下で、走行と停止とを所定の頻度で繰り返した否かにより、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の車輪駆動力配分制御システムにおいて、渋滞判別手段は、外部から発信された渋滞情報を受信する渋滞情報受信手段を備え、渋滞情報受信手段が受信した渋滞情報に基づき、自動車が渋滞地域を走行しているか否により、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車輪駆動力配分制御システムにおいて、渋滞情報受信手段は、渋滞情報を受信可能なカーナビゲーションで構成されたところに特徴を有する。
【0012】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
請求項1の車輪駆動力配分制御システムによれば、渋滞時には自動的に自動車が二輪駆動になり、渋滞による発進・停止の繰り返しが二輪駆動で行われる。これにより、燃費性能の向上が図られる。
【0013】
<請求項2の発明>
請求項2の車輪駆動力配分制御システムによれば、渋滞により発進・停止が繰り返される場合に、常時駆動輪以外の車輪を駆動するための伝達トルクが自動的に下げられるからエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。
【0014】
<請求項3の発明>
請求項3の車輪駆動力配分制御システムでは、常時駆動輪以外の車輪を駆動するための伝達トルクは、スロットルの開度に起因した第1トルク指令値と、車輪の回転速度の差に起因した第2トルク指令値との和に基づいて決定され、渋滞したときには前記第1トルク指令値が0に保持される。これにより、発進時には常時駆動輪のみが駆動されてエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。しかも、発進時に常時駆動輪がスリップして、車輪の回転速度差が生じた場合には、第2トルク指令値に基づいて、常時駆動輪以外の車輪が駆動されて、悪路の渋滞にも対応することができる。
【0015】
<請求項4乃至6の発明>
渋滞判別手段は、車速が所定速度以下で、走行と停止とを所定の頻度で繰り返した否かにより、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成してもよい(請求項4の発明)。また、渋滞判別手段は、外部から発信された渋滞情報を受信する渋滞情報受信手段を備え、渋滞情報受信手段が受信した渋滞情報に基づき、自動車が渋滞地域を走行しているか否により、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成してもよい(請求項5の発明)。さらに、渋滞情報受信手段を、カーナビゲーションで構成すれば(請求項6の発明)、渋滞情報受信手段とカーナビゲーションとを別々に設けた場合に比べて車内設備の共有化が図られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1には、自動車の駆動系の主要部が示されている。この自動車のフロント側(図1の左側)には、エンジン10に隣接させてトランスアクスル11が設けられており、このトランスアクスル11には、トランスミッション、トランスファー及びフロントディファレンシャル12が一体に組み付けられている。そして、エンジン10の駆動力が、トランスアクスル11のトランスミッション及びフロントディファレンシャル12を介して前輪ドリブンシャフト13,13に伝達され、前輪14,14が駆動される。即ち、本実施形態では、前輪14,14が、自動車の走行時に常に駆動力を受けて駆動される本発明の「常時駆動輪」に相当する。
【0017】
また、トランスアクスル11のトランスファーにより、トランスミッションと前側プロペラシャフト20の前端部とがギヤ連結されている。その前側プロペラシャフト20の後端部は、自動車の前後方向の中間部に位置し、トルク伝達装置30(本発明に係る「トルク伝達手段」に相当する)の入力部31(図2参照)に固定されている。これにより、トルク伝達装置30の入力部31が、常時駆動輪としての前輪14,14に連動して回転する。
【0018】
前側プロペラシャフト20の延長線上には、トルク伝達装置30を間に挟んで後側プロペラシャフト21が延びており、後側プロペラシャフト21の前端部がトルク伝達装置30の出力部32(図2参照)に固定されている。また、後側プロペラシャフト21の後端部は、リヤディファレンシャル17に連結されており、リヤディファレンシャル17から左右両方向に延びた後輪ドリブンシャフト16,16の先端には、後輪15,15が取り付けられている。これにより、トルク伝達装置30の出力部32が、本発明の「常時駆動輪以外の車輪」としての後輪15,15に連動して回転する。
【0019】
図2には、トルク伝達装置30の基本構成が示されている。
トルク伝達装置30の入力部31は、前側(即ち、自動車のフロント側)に底壁33Tを有した一端有底の円筒状のアウターケース33を備え、その底壁33Tの中心から前側に延設された軸部33Jの先端に、前記前側プロペラシャフト20(図1参照)が固定されている。一方、アウターケース33の開放端の内側にはリヤカバー35が嵌合螺着されると共に、そのリヤカバー35の中心に形成された貫通孔35Aには、出力部32を構成するインナーシャフト34が液密状態に貫通している。
【0020】
インナーシャフト34は、軸方向の移動を規制された状態でアウターケース33に対して回転可能に軸支されており、インナーシャフト34の一端は、アウターケース33の内側奥部まで延び、他端はアウターケース33から外側に突出して前記後側プロペラシャフト21(図1参照)に固定されている。
【0021】
アウターケース33内のリヤカバー35寄り位置には、第1カム円板36がインナーシャフト34に回転可能に嵌合されており、その第1カム円板36の外周面には、複数のインナーパイロットクラッチ板37がスプライン嵌合されている。また、アウターケース33の内周面のリヤカバー35寄り位置には、複数のアウターパイロットクラッチ板38がスプライン嵌合され、これらインナーとアウターの各パイロットクラッチ板37,38が交互に配置されて軸方向で対向している。さらに、リヤカバー35との間でこれら一群のパイロットクラッチ板37,38を挟む位置には、円板状のアーマチャ49がアウターケース33の内周面にスプライン嵌合されている。そして、常には、アーマチャ49とリヤカバー35との間で、インナーとアウターの各パイロットクラッチ板37,38が互いに離間して互いに自由に回転することができる。
【0022】
アウターケース33の外側には、リヤカバー35の後方に電磁コイル39が配置されている。この電磁コイル39は、円環状のヨーク39Aの前面に形成した円環溝の内部に収容されており、ヨーク39Aは図示しない軸受にてリヤカバー35に回転可能に軸支されている。そして、電磁コイル39を励磁することで、アーマチャ49と共にパイロットクラッチ板37,38がリヤカバー35側に引き寄せられ、インナーとアウターの両パイロットクラッチ板37,38が互いに摩擦係合する。また、電磁コイル39の磁力を高くするに従い、両パイロットクラッチ板37,38の係合が深まり、最も係合が深まると両パイロットクラッチ板37,38が一体的に結合した所謂、直結状態になる。上記した両パイロットクラッチ板37,38の摩擦係合又は直結により、第1カム円板36がアウターケース33からの回転トルクを受けて回転する。
【0023】
第1カム円板36の前面には、周方向に沿った複数箇所にV形凹部40が形成されている。図3(A)には、V形凹部40を第1カム円板36の径方向からみた断面図が示されており、同図に示すように、V形凹部40は、幅方向(図3(A)の縦方向)の中央に向かって徐々に深くなるようにV字形に陥没している。また、第1カム円板36の前側(図2及び図3(A)の左側)には、第2カム円板41がインナーシャフト34の外面にスプライン嵌合されており、その第2カム円板41には第1カム円板36のV形凹部40と対称的にV形凹部42が形成されている。そして、これら両V形凹部40,42の間に、カムボール43が挟まれて保持され、第1カム円板36が回転したときには、図3(B)に示すように、カムボール43がV形凹部40,42における浅い位置に移動して、第1及び第2のカム円板36,41を互いに離間させる方向に力が発生する。また、第1カム円板36は、図示しない突き当て部により軸方向への移動が規制されており、これにより、第1カム円板36が回転したときには、第2カム円板41が前側に押されて移動する。
【0024】
図2に示すように、アウターケース33内における第2カム円板41より前側には、複数のインナーメインクラッチ板44がインナーシャフト34の外周面にスプライン嵌合されると共に、複数のアウターメインクラッチ板45がアウターケース33の内周面にスプライン嵌合されている。これらインナーとアウターの各メインクラッチ板44,45は、交互に配置されて軸方向で対向しており、常には、インナーとアウターの各メインクラッチ板44,45が互いに離間して自由に回転可能な状態になっている。そして、前述のように電磁コイル39の磁力に起因して前側に移動した第2カム円板41により、インナーとアウターの各メインクラッチ板44,45がアウターケース33の底壁33T側に押されて互いに摩擦係合し、これらメインクラッチ板44,45を介してアウターケース33からインナーシャフト34へのトルクが伝達される。また、電磁コイル39の磁力を大きくすることに起因して、第2カム円板41の押圧力が増し、メインクラッチ板44,45同士の摩擦係合が深まる。そして、最も係合が深まると、メインクラッチ板44,45同士が一体的に結合した所謂、直結状態になる。
【0025】
以上を纏めると、トルク伝達装置30では、入力部31と出力部32とが、互いに自由に回転可能な断絶状態と、入力部31と出力部32との間に回転差を許容しつつ入力部31から出力部32へと所定のトルクを伝達する状態と、さらには、入力部31と出力部32とが完全に結合した直結状態とに変更することができる。
【0026】
上記した電磁コイル39の駆動は、ECU50(本発明の「伝達トルク制御手段」に相当する)により行われ、このECU50と前記トルク伝達装置30とから、本発明に係る車輪駆動力配分制御システム90(図1参照)が構成されている。
【0027】
図1に示すように、ECU50には、モード切替スイッチ51が接続されており、このモード切替スイッチ51を操作することで、二輪駆動ロックモードと、四輪駆動ロックモードとAUTOモードとに切り換えられる。そして、AUTOモードでは、ECU50は、電磁コイル39の磁力をデューティ制御し、状況に応じてトルク伝達装置30による伝達トルクを適正な大きさにする。ここで、ECU50には、運転操作状況と渋滞状況に関する2種類の情報が取り込まれている。運転操作状況に関する情報としては、図1に示すように、スロットルセンサ60により検出したスロットル開度mと、回転速度センサ61より検出した前輪14,14の回転速度N1,N2及び後輪15,15の回転速度N3,N4とが取り込まれている。
【0028】
さて、渋滞状況に関する情報としては、自動車に備えたカーナビゲーション53(本発明の「渋滞判別手段」に相当する。以下、「カーナビ53」という)から自動車が渋滞エリアに入ったか否かに関する信号がECU50に取り込まれている。具体的には、このカーナビ53は、GPSにより現在位置の検出を行うと共に、外部から渋滞情報(VICS)を受信している。その渋滞情報には、例えば、どの道路のどの範囲でどの方向に渋滞している等の複数の情報が含められており、GPSにより求めた現在位置と進行方向とが、渋滞情報における渋滞範囲と渋滞方向とに一致した場合に、カーナビ53からECU50に渋滞エリア進入検出信号Jが出力されるようになっている。
【0029】
ECU50は、図4に示したメインプログラムMをROM(図示せず)から取り出して所定周期でランする。同図に示すように、メインプログラムMでは、まず、モード切替スイッチ51の設定が3つのモードのうち何れであるかをチェックする(S1,S2)。そして、モード切替スイッチ51の設定が二輪駆動ロックモードであった場合には(S1でYes)、電磁コイル39の励磁を行わず、トルク伝達装置30の入力部31と出力部32とが断絶状態に保持される(S3)。これにより、前輪14,14のみが駆動され、燃費性能に優れた走行が可能になる。
【0030】
モード切替スイッチ51の設定が四輪駆動ロックモードであった場合には(S1でNoでかつS2でYes)、電磁コイル39を一定の励磁状態に保持して、トルク伝達装置30の入力部31と出力部32とを直結状態にする(S4)。これにより、エンジン10からトランスアクスル11に駆動力が伝達された場合には、4つの車輪14,14,15,15が同じように駆動され、悪路に対応することができる。
【0031】
モード切替スイッチ51の設定がAUTOモードであった場合には(S1及びS2で共にNo)、スロットル開度mと車輪14,14,15,15の回転速度N1〜N4とをECU50に取り込み(S5)、車速Vを求める(S6)。なお、車速Vは、スリップの少ない従動輪である後輪15,15の回転速度の平均値(N3+N4)/2として求められる。
【0032】
次いで、ECU50にカーナビ53から渋滞エリア進入検出信号Jが入力されているか否かをチェックすることで、自動車が渋滞しているか否かを判別する(S7)。ここで、渋滞エリア進入検出信号Jの入力が無ければ(S7でNo)、即ち、渋滞していなければ、入力部31から出力部32に伝達するプレトルクTp(本発明の「第1トルク指令値」に相当する)が求められる(S8)。具体的には、ECU50に備えたROM(図示せず)に記憶したマップから、スロットル開度mと車速Vとに対応したプレトルクTpが求められる。一方、ECU50に渋滞エリア進入検出信号Jの入力があった場合(S7でYes)、即ち、渋滞した場合には、プレトルクTpが0に保持される。
【0033】
次いで、回転差トルクTn(本発明の「第2トルク指令値」に相当する)が求められる(S9)。具体的には、前輪14,15の間の回転速度差ΔN(=(N1+N2−N3−N4)/2)が求められ、ROM(図示せず)に記憶したマップから回転速度差ΔNと車速Vとに対応した回転差トルクTnが求められる。
【0034】
次いで、前記プレトルクTpと回転差トルクTnとの和としてトルク指令値Ta(=Tp+Tn)を求め、このトルク指令値Taに対応した伝達トルクがトルク伝達装置30の入力部31から出力部32に伝達されるように、電磁コイル39への通電量をデューティ制御する(S10)。
【0035】
本実施形態の構成は以上であり、次に、本実施形態の自動車をAUTOモードで運転した場合の作用効果について説明する。自動車のアクセルを踏み込むとスロットルが開き、そのスロットル開度mに応じた馬力でエンジン10が駆動トルクをトランスアクスル11に出力する。ここで、自動車が渋滞していないときには、トルク伝達装置30の入力部31から出力部32への伝達トルクが、スロットル開度m及び前後輪14,15の回転速度差ΔNに応じた大きさになるように制御され、前輪14,14と共に後輪15,15が駆動される。従って、アクセルを踏み込んでスロットル開度mが大きくなるほど、前輪14,14と共に後輪15,15の駆動力も上がり、例えば、泥道や雪道のような悪路においても路面を的確に捉えて走行することができる。
【0036】
さて、自動車に備えたカーナビ53では、渋滞を避けたルート案内を行うために渋滞情報を受信している。しかしながら、渋滞を避けることができず渋滞に巻き込まれてしまう場合がある。このような場合、カーナビ53からECU50に渋滞エリア進入検出信号Jが出力される。すると、トルク伝達装置30による伝達トルクが、前後輪14,15の回転速度差ΔNのみに対応した大きさになるように制御され、スロットル開度mとは無関係に決定される。
【0037】
これにより、自動車が停止した状態、即ち、前後輪14,15の回転速度N1〜N4が共に0の状態から発進するときには、アクセルを踏み込んでも、トルク伝達装置30によるトルク伝達は行われず、前輪14,14のみが駆動して発進される。即ち、渋滞に巻き込まれて、発進と停止とを繰り返す場合には、自動的に二輪駆動になり、エンジン10への負荷が低減されて、燃費性能の向上が図られる。
【0038】
ところで、雪道等の悪路で渋滞した場合には、自動車が停止した状態からアクセルを踏み込んで、前輪14,14のみが駆動してスリップする場合がある。すると、スリップにより前後輪14,15の間に回転速度差ΔNが生じ、この回転速度差ΔNを低減させるように、トルク伝達装置30によりトルク伝達が行われ、後輪15,15が駆動される。これにより、渋滞時においても悪路では四輪駆動になり、路面を的確に捉えた発進が可能になる。
【0039】
このように本実施形態の車輪駆動力配分制御システム90によれば、渋滞になって発進・停止が繰り返される場合に、自動的に二輪駆動に切り換わることで、エンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。しかも、二輪駆動で発進してスリップが起きた場合には、四輪駆動になるから悪路における渋滞にも対応することができる。また、渋滞していない場合には、スロットル開度mや前後輪14,15の回転速度差ΔNに基づいてトルク伝達装置30による伝達トルクが決定され、前後輪14,15の間で適正な駆動力配分が行われるから、種々の状況に対応することができる。さらに、本実施形態では、渋滞情報を受信するための手段としてカーナビ53を利用したから、別途、その渋滞情報受信手段を設けた場合に比べて車内設備の共有化が図られ、コストが低減される。
【0040】
<第2実施形態>
本実施形態は、前記第1実施形態のメインプログラムMの一部を変更したものである。以下、第1実施形態と異なる構成に関してのみ説明すると、本実施形態のメインプログラムM’は、図5に示されており、ECU50に渋滞エリア進入検出信号Jが入力された場合に(S7でYes)、二輪駆動ロックモードに切り替わる。即ち、電磁コイル39の励磁を行わず、トルク伝達装置30の入力部31と出力部32とを断絶状態に保持する(S3)。
本実施形態の構成によっても、渋滞になって発進・停止が繰り返すされる場合に、自動的に二輪駆動に切り換わり、燃費性能の向上が図られる。
【0041】
上記した第1及び第2の実施形態では、外部から受信した渋滞情報に基づいて渋滞か否かを判別していたが、以下の第3〜第5実施形態では、外部から渋滞情報を受信せずに、車速推移から渋滞か否かを判別する構成になっている。
【0042】
<第3実施形態>
本実施形態は、前記第1実施形態のメインプログラムM(図4)のうち、ステップS6(車速演算)からステップS9(回転差トルクTn演算)の間を、図6に示した処理に置き換えた構成になっおり、大まかには、車速が所定速度以下で、走行と停止とを所定の頻度で繰り返した否かにより、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別する。詳細には、所定周期でメインプログラムMが実行される度に、以下の処理を行う。
【0043】
即ち、車速演算(S6)を行った後、その車速が所定の閾値(例えば、15Km/h)以下か否かをチェックする(S20)。ここで、車速が閾値より大きかった場合は(S20でNo)、渋滞状態ではないと判断して、後述するカウンタをリセットし、前記第1実施形態におけるステップS8と同様に、プレトルクTpを演算する通常モードを実行する(S29)。
【0044】
これに対し、車速が閾値以下であった場合には(S20でYes)、停止状態から走行状態に切り替わったか或いは、走行状態から停止状態に切り替わったかをチェックする。具体的には、まずは、自動車が「停止中」か「走行中」の何れかをチェックする(S21)。そして、「停止中」であった場合には(S21でYes)、前回、ステップS21を実行したときに自動車が「走行中」であったか否かをチェックし(S22)、「走行中」であった場合には(S22でYes)、カウンタをインクリメントする(S24)。一方、「走行中」であった場合には(S21でNo)、前回、ステップS21を実行したときに自動車が「停止中」であったか否かをチェックし(S23)、「停止中」であった場合には(S23でYes)、カウンタをインクリメントする(S24)。そして、カウンタの値が所定値(例えば、10回)を超えた場合には(S25でYes)、前記第1実施形態におけるステップS11と同様に、プレトルクを0に保持した渋滞モードを実行する(S26)。
【0045】
一方、「停止中」或いは「走行中」が続いた場合は(S22又はS23でNo)、前記通常モードを実行する(S28,S29)。また、カウンタの値が所定値を超えない場合も(S25でNo)、通常モードを実行する(S28)。
【0046】
本実施形態の構成によれば、車速が閾値以下の低速走行を続けている状況下で、停止と発進(走行)を所定回数以上、繰り返した場合に、渋滞モードになる。また、渋滞を抜けて自動車が閾値以上の走行になった場合には、渋滞モードから抜ける。これにより、前記第1実施形態と同様に、エンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。
【0047】
<第4実施形態>
本実施形態は、前記第3実施形態の構成に図7に示したステップS30〜S34を加えた構成になっている。以下、第3実施形態との相違点に関してのみ説明する。
【0048】
本実施形態では、前記ステップS21におけるチェック結果が、「停止中」であった場合に(S21でYes)、ハザードのON/OFFをチェックする(S30)。そして、ハザードがONしていたときには(S30でNo)、通常モードを実行する一方(S29)、ハザードがOFFしていたときには(S30でYes)、「停止中」が継続しているときに(S22でNo)、タイマーをONする(S31)。また、タイマーが、既にON状態の場合にはON状態を保持する。そして、タイマーによる計測時間が3分以上になった場合に(S32でYes)、渋滞モードを実行し(S26)、計測時間が3分以上になっていない場合には(S32でNo)、通常モードを実行する(S29)。
【0049】
なお、タイマーは、車速が閾値を超えた場合(S20でNo)、又は、閾値以下でも、自動車が低速走行した場合(S21のNo)に、リセットされる(S33,S34)。
【0050】
図8には、車速推移に対するモードの切り換え状態が示されている。同図に示すように、自動車が所定時間(3分)以上、継続して停車した場合には、渋滞に巻き込まれたと判断して渋滞モードが実行される。また、低速走行の状況下で、停止と発進とを所定回数(10回)以上、繰り返した場合にも、渋滞モードになる。これに対し、所用によりハザードをONして停車した場合や、信号機等において停車し、3分以内の発進した場合には、通常モードが実行される。このように、本実施形態によれば、前記第3実施形態の作用効果に加え、渋滞か否かをより正確に判別することができる。
【0051】
<第5実施形態>
本実施形態は、前記第4実施形態の構成に図9に示したステップS40〜S46を加えた構成になっている。以下、第4実施形態との相違点に関してのみ説明する。
【0052】
本実施形態では、車速演算(S6)の直後に、フラッグF1に基づいて、現在、渋滞モードになっているか否かをチェックする(S40)。そして、フラッグF1が1でなかった場合、即ち、渋滞モードでなかった場合には(S40でNo)、低速走行の状況下で、所定の頻度で停止と発進を繰り返したか否かに基づいて、通常モードか渋滞モードかを選択実行する(S20〜S29)。そして、渋滞モードが実行された場合には(S26)、フラッグF1を1にセットする(S41)。
【0053】
すると、次にメインプログラムMを実行したときに、このフラッグF1に基づき、渋滞モードになっていると判断される(S40でYes)。そして、車速が前記閾値より大きな第2閾値(例えば、40Km/h)以上か否かをチェックする(S42)。ここで、車速が第2閾値以上であった場合には(S42でYes)、即座に、フラッグF1を0にリセットして(S46)、通常モードに切り換える(S29)。
【0054】
これに対し、車速が第2閾値より小さい場合には(S42でNo)、車速が第3閾値(例えば、20Km/h)以上であるか否かをチェックし(S43)、第3閾値より小さい場合には(S43でNo)、渋滞モードを継続実行する(S26)。一方、車速が第3閾値以上であった場合には(S43でYes)、第2タイマーをONして(S44)、その計測時間が5分以上にならない間は(S45でNo)、渋滞モードを継続実行する一方(S26)、計測時間が5分以上になった場合は(S45でYes)、フラッグF1を0にリセットして(S46)、通常モードに切り換える(S29)。本実施形態によれば、確実に渋滞を抜けたか否かを判別することができる。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更することで、実施することができる。
(1)前記第1及び第2の実施形態では、渋滞時に自動車を発進するときには、自動的に二輪駆動に切り替わる構成であったが、四輪駆動のまま、常時駆動輪以外の車輪への駆動力の配分を下げるだけの構成にしてもよい。このように構成しても、渋滞時のエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。
【0056】
(2)前記第1及び第2の実施形態では、前輪14を本発明に係る「常時駆動輪」とし、後輪15を本発明に係る「常時駆動輪以外の車輪」としていたが、その逆の構成にしてもよい。
【0057】
(3)前記第1及び第2の実施形態では、カーナビ53から直にECU50に渋滞エリア進入検出信号Jを取り込む構成であったが、例えば、自動車に備えたCANの一部に接続したコンピュータを介してECU50に渋滞エリア進入検出信号Jを取り込む構成にしてもよい。
【0058】
(4)前記第1及び第2の実施形態では、渋滞情報受信手段をカーナビゲーションで構成していたが、渋滞情報受信手段は、ナビゲーション機能を備えずに、自動車が単に渋滞エリアに進入したか否かに係る情報を外部から受信する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車の駆動系を示す概念図
【図2】トルク伝達装置の基本構成を示す側断面図
【図3】V形凹部の断面図
【図4】メインプログラムのフローチャート
【図5】第2実施形態のメインプログラムのフローチャート
【図6】第3実施形態のメインプログラムのフローチャート
【図7】第4実施形態のメインプログラムのフローチャート
【図8】車速推移と渋滞モード・通常モードの切り換えを示すグラフ
【図9】第5実施形態のメインプログラムのフローチャート
【符号の説明】
14…前輪(常時駆動輪)
15…後輪(常時駆動輪以外の車輪)
30…トルク伝達装置(トルク伝達手段)
31…入力部
32…出力部
53…カーナビゲーション(渋滞情報受信手段)
90…車輪駆動力配分制御システム
50…ECU(伝達トルク制御手段)
Tp…プレトルク(第1トルク指令値)
Tn…回転差トルク(第2トルク指令値)
【発明の属する技術分野】
本発明は、状況に応じて自動車の常時駆動輪以外の車輪への伝達トルクを変更する車輪駆動力配分制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の四輪駆動車では、状況に応じて二輪駆動への切り換えを行って走行性の向上を図ることが可能になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、四輪駆動の方が二輪駆動より路面を確実に捉える反面、燃費性能が悪く、特に発進時において、四輪駆動と二輪駆動との燃費性能の差が顕著に現れる。しかしながら、従来では、渋滞に巻き込まれて発進・停止が繰り返される事態になっても、手動で二輪駆動への切り換え操作を行わない限り、四輪駆動のまま発進・停止が繰り返され、燃費性能が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、燃費性能の向上を図ることが可能な車輪駆動力配分制御システムの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る車輪駆動力配分制御システムは、状況に応じて自動車を二輪駆動と四輪駆動とに変更する車輪駆動力配分制御システムにおいて、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段を備え、渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には自動車を二輪駆動にするところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明に係る車輪駆動力配分制御システムは、自動車の常時駆動輪に連動して回転する入力部と、常時駆動輪以外の車輪に連動して回転する出力部とを有しかつ入力部から出力部への伝達トルクを変更可能なトルク伝達手段と、状況に応じてトルク伝達手段による伝達トルクを制御する伝達トルク制御手段とを備えた車輪駆動力配分制御システムにおいて、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段を備え、伝達トルク制御手段は、渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には、伝達トルクを通常時より下げるように構成したところに特徴を有する。
【0007】
なお、請求項2及び3の発明における「常時駆動輪」とは、自動車の走行時に常に駆動力を受けて駆動される車輪をいう。
【0008】
請求項3の発明に係る車輪駆動力配分制御システムは、自動車の常時駆動輪に連動して回転する入力部と、常時駆動輪以外の車輪に連動して回転する出力部とを有しかつ入力部から出力部への伝達トルクを変更可能なトルク伝達手段と、自動車に備えたセンサにより検出されたスロットルの開度と各車輪の回転速度とを取り込み、スロットルの開度に応じて予め定められた第1トルク指令値と、常時駆動輪と常時駆動輪以外の車輪との回転速度の差に応じて予め定められた第2トルク指令値とを求め、これら第1及び第2のトルク指令値の和に基づいて、トルク伝達手段の伝達トルクを制御する伝達トルク制御手段と、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段とを備え、伝達トルク制御手段は、渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には、第1トルク指令値を0に保持するように構成したところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の車輪駆動力配分制御システムにおいて、渋滞判別手段は、車速が所定速度以下で、走行と停止とを所定の頻度で繰り返した否かにより、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の車輪駆動力配分制御システムにおいて、渋滞判別手段は、外部から発信された渋滞情報を受信する渋滞情報受信手段を備え、渋滞情報受信手段が受信した渋滞情報に基づき、自動車が渋滞地域を走行しているか否により、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車輪駆動力配分制御システムにおいて、渋滞情報受信手段は、渋滞情報を受信可能なカーナビゲーションで構成されたところに特徴を有する。
【0012】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
請求項1の車輪駆動力配分制御システムによれば、渋滞時には自動的に自動車が二輪駆動になり、渋滞による発進・停止の繰り返しが二輪駆動で行われる。これにより、燃費性能の向上が図られる。
【0013】
<請求項2の発明>
請求項2の車輪駆動力配分制御システムによれば、渋滞により発進・停止が繰り返される場合に、常時駆動輪以外の車輪を駆動するための伝達トルクが自動的に下げられるからエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。
【0014】
<請求項3の発明>
請求項3の車輪駆動力配分制御システムでは、常時駆動輪以外の車輪を駆動するための伝達トルクは、スロットルの開度に起因した第1トルク指令値と、車輪の回転速度の差に起因した第2トルク指令値との和に基づいて決定され、渋滞したときには前記第1トルク指令値が0に保持される。これにより、発進時には常時駆動輪のみが駆動されてエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。しかも、発進時に常時駆動輪がスリップして、車輪の回転速度差が生じた場合には、第2トルク指令値に基づいて、常時駆動輪以外の車輪が駆動されて、悪路の渋滞にも対応することができる。
【0015】
<請求項4乃至6の発明>
渋滞判別手段は、車速が所定速度以下で、走行と停止とを所定の頻度で繰り返した否かにより、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成してもよい(請求項4の発明)。また、渋滞判別手段は、外部から発信された渋滞情報を受信する渋滞情報受信手段を備え、渋滞情報受信手段が受信した渋滞情報に基づき、自動車が渋滞地域を走行しているか否により、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成してもよい(請求項5の発明)。さらに、渋滞情報受信手段を、カーナビゲーションで構成すれば(請求項6の発明)、渋滞情報受信手段とカーナビゲーションとを別々に設けた場合に比べて車内設備の共有化が図られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1には、自動車の駆動系の主要部が示されている。この自動車のフロント側(図1の左側)には、エンジン10に隣接させてトランスアクスル11が設けられており、このトランスアクスル11には、トランスミッション、トランスファー及びフロントディファレンシャル12が一体に組み付けられている。そして、エンジン10の駆動力が、トランスアクスル11のトランスミッション及びフロントディファレンシャル12を介して前輪ドリブンシャフト13,13に伝達され、前輪14,14が駆動される。即ち、本実施形態では、前輪14,14が、自動車の走行時に常に駆動力を受けて駆動される本発明の「常時駆動輪」に相当する。
【0017】
また、トランスアクスル11のトランスファーにより、トランスミッションと前側プロペラシャフト20の前端部とがギヤ連結されている。その前側プロペラシャフト20の後端部は、自動車の前後方向の中間部に位置し、トルク伝達装置30(本発明に係る「トルク伝達手段」に相当する)の入力部31(図2参照)に固定されている。これにより、トルク伝達装置30の入力部31が、常時駆動輪としての前輪14,14に連動して回転する。
【0018】
前側プロペラシャフト20の延長線上には、トルク伝達装置30を間に挟んで後側プロペラシャフト21が延びており、後側プロペラシャフト21の前端部がトルク伝達装置30の出力部32(図2参照)に固定されている。また、後側プロペラシャフト21の後端部は、リヤディファレンシャル17に連結されており、リヤディファレンシャル17から左右両方向に延びた後輪ドリブンシャフト16,16の先端には、後輪15,15が取り付けられている。これにより、トルク伝達装置30の出力部32が、本発明の「常時駆動輪以外の車輪」としての後輪15,15に連動して回転する。
【0019】
図2には、トルク伝達装置30の基本構成が示されている。
トルク伝達装置30の入力部31は、前側(即ち、自動車のフロント側)に底壁33Tを有した一端有底の円筒状のアウターケース33を備え、その底壁33Tの中心から前側に延設された軸部33Jの先端に、前記前側プロペラシャフト20(図1参照)が固定されている。一方、アウターケース33の開放端の内側にはリヤカバー35が嵌合螺着されると共に、そのリヤカバー35の中心に形成された貫通孔35Aには、出力部32を構成するインナーシャフト34が液密状態に貫通している。
【0020】
インナーシャフト34は、軸方向の移動を規制された状態でアウターケース33に対して回転可能に軸支されており、インナーシャフト34の一端は、アウターケース33の内側奥部まで延び、他端はアウターケース33から外側に突出して前記後側プロペラシャフト21(図1参照)に固定されている。
【0021】
アウターケース33内のリヤカバー35寄り位置には、第1カム円板36がインナーシャフト34に回転可能に嵌合されており、その第1カム円板36の外周面には、複数のインナーパイロットクラッチ板37がスプライン嵌合されている。また、アウターケース33の内周面のリヤカバー35寄り位置には、複数のアウターパイロットクラッチ板38がスプライン嵌合され、これらインナーとアウターの各パイロットクラッチ板37,38が交互に配置されて軸方向で対向している。さらに、リヤカバー35との間でこれら一群のパイロットクラッチ板37,38を挟む位置には、円板状のアーマチャ49がアウターケース33の内周面にスプライン嵌合されている。そして、常には、アーマチャ49とリヤカバー35との間で、インナーとアウターの各パイロットクラッチ板37,38が互いに離間して互いに自由に回転することができる。
【0022】
アウターケース33の外側には、リヤカバー35の後方に電磁コイル39が配置されている。この電磁コイル39は、円環状のヨーク39Aの前面に形成した円環溝の内部に収容されており、ヨーク39Aは図示しない軸受にてリヤカバー35に回転可能に軸支されている。そして、電磁コイル39を励磁することで、アーマチャ49と共にパイロットクラッチ板37,38がリヤカバー35側に引き寄せられ、インナーとアウターの両パイロットクラッチ板37,38が互いに摩擦係合する。また、電磁コイル39の磁力を高くするに従い、両パイロットクラッチ板37,38の係合が深まり、最も係合が深まると両パイロットクラッチ板37,38が一体的に結合した所謂、直結状態になる。上記した両パイロットクラッチ板37,38の摩擦係合又は直結により、第1カム円板36がアウターケース33からの回転トルクを受けて回転する。
【0023】
第1カム円板36の前面には、周方向に沿った複数箇所にV形凹部40が形成されている。図3(A)には、V形凹部40を第1カム円板36の径方向からみた断面図が示されており、同図に示すように、V形凹部40は、幅方向(図3(A)の縦方向)の中央に向かって徐々に深くなるようにV字形に陥没している。また、第1カム円板36の前側(図2及び図3(A)の左側)には、第2カム円板41がインナーシャフト34の外面にスプライン嵌合されており、その第2カム円板41には第1カム円板36のV形凹部40と対称的にV形凹部42が形成されている。そして、これら両V形凹部40,42の間に、カムボール43が挟まれて保持され、第1カム円板36が回転したときには、図3(B)に示すように、カムボール43がV形凹部40,42における浅い位置に移動して、第1及び第2のカム円板36,41を互いに離間させる方向に力が発生する。また、第1カム円板36は、図示しない突き当て部により軸方向への移動が規制されており、これにより、第1カム円板36が回転したときには、第2カム円板41が前側に押されて移動する。
【0024】
図2に示すように、アウターケース33内における第2カム円板41より前側には、複数のインナーメインクラッチ板44がインナーシャフト34の外周面にスプライン嵌合されると共に、複数のアウターメインクラッチ板45がアウターケース33の内周面にスプライン嵌合されている。これらインナーとアウターの各メインクラッチ板44,45は、交互に配置されて軸方向で対向しており、常には、インナーとアウターの各メインクラッチ板44,45が互いに離間して自由に回転可能な状態になっている。そして、前述のように電磁コイル39の磁力に起因して前側に移動した第2カム円板41により、インナーとアウターの各メインクラッチ板44,45がアウターケース33の底壁33T側に押されて互いに摩擦係合し、これらメインクラッチ板44,45を介してアウターケース33からインナーシャフト34へのトルクが伝達される。また、電磁コイル39の磁力を大きくすることに起因して、第2カム円板41の押圧力が増し、メインクラッチ板44,45同士の摩擦係合が深まる。そして、最も係合が深まると、メインクラッチ板44,45同士が一体的に結合した所謂、直結状態になる。
【0025】
以上を纏めると、トルク伝達装置30では、入力部31と出力部32とが、互いに自由に回転可能な断絶状態と、入力部31と出力部32との間に回転差を許容しつつ入力部31から出力部32へと所定のトルクを伝達する状態と、さらには、入力部31と出力部32とが完全に結合した直結状態とに変更することができる。
【0026】
上記した電磁コイル39の駆動は、ECU50(本発明の「伝達トルク制御手段」に相当する)により行われ、このECU50と前記トルク伝達装置30とから、本発明に係る車輪駆動力配分制御システム90(図1参照)が構成されている。
【0027】
図1に示すように、ECU50には、モード切替スイッチ51が接続されており、このモード切替スイッチ51を操作することで、二輪駆動ロックモードと、四輪駆動ロックモードとAUTOモードとに切り換えられる。そして、AUTOモードでは、ECU50は、電磁コイル39の磁力をデューティ制御し、状況に応じてトルク伝達装置30による伝達トルクを適正な大きさにする。ここで、ECU50には、運転操作状況と渋滞状況に関する2種類の情報が取り込まれている。運転操作状況に関する情報としては、図1に示すように、スロットルセンサ60により検出したスロットル開度mと、回転速度センサ61より検出した前輪14,14の回転速度N1,N2及び後輪15,15の回転速度N3,N4とが取り込まれている。
【0028】
さて、渋滞状況に関する情報としては、自動車に備えたカーナビゲーション53(本発明の「渋滞判別手段」に相当する。以下、「カーナビ53」という)から自動車が渋滞エリアに入ったか否かに関する信号がECU50に取り込まれている。具体的には、このカーナビ53は、GPSにより現在位置の検出を行うと共に、外部から渋滞情報(VICS)を受信している。その渋滞情報には、例えば、どの道路のどの範囲でどの方向に渋滞している等の複数の情報が含められており、GPSにより求めた現在位置と進行方向とが、渋滞情報における渋滞範囲と渋滞方向とに一致した場合に、カーナビ53からECU50に渋滞エリア進入検出信号Jが出力されるようになっている。
【0029】
ECU50は、図4に示したメインプログラムMをROM(図示せず)から取り出して所定周期でランする。同図に示すように、メインプログラムMでは、まず、モード切替スイッチ51の設定が3つのモードのうち何れであるかをチェックする(S1,S2)。そして、モード切替スイッチ51の設定が二輪駆動ロックモードであった場合には(S1でYes)、電磁コイル39の励磁を行わず、トルク伝達装置30の入力部31と出力部32とが断絶状態に保持される(S3)。これにより、前輪14,14のみが駆動され、燃費性能に優れた走行が可能になる。
【0030】
モード切替スイッチ51の設定が四輪駆動ロックモードであった場合には(S1でNoでかつS2でYes)、電磁コイル39を一定の励磁状態に保持して、トルク伝達装置30の入力部31と出力部32とを直結状態にする(S4)。これにより、エンジン10からトランスアクスル11に駆動力が伝達された場合には、4つの車輪14,14,15,15が同じように駆動され、悪路に対応することができる。
【0031】
モード切替スイッチ51の設定がAUTOモードであった場合には(S1及びS2で共にNo)、スロットル開度mと車輪14,14,15,15の回転速度N1〜N4とをECU50に取り込み(S5)、車速Vを求める(S6)。なお、車速Vは、スリップの少ない従動輪である後輪15,15の回転速度の平均値(N3+N4)/2として求められる。
【0032】
次いで、ECU50にカーナビ53から渋滞エリア進入検出信号Jが入力されているか否かをチェックすることで、自動車が渋滞しているか否かを判別する(S7)。ここで、渋滞エリア進入検出信号Jの入力が無ければ(S7でNo)、即ち、渋滞していなければ、入力部31から出力部32に伝達するプレトルクTp(本発明の「第1トルク指令値」に相当する)が求められる(S8)。具体的には、ECU50に備えたROM(図示せず)に記憶したマップから、スロットル開度mと車速Vとに対応したプレトルクTpが求められる。一方、ECU50に渋滞エリア進入検出信号Jの入力があった場合(S7でYes)、即ち、渋滞した場合には、プレトルクTpが0に保持される。
【0033】
次いで、回転差トルクTn(本発明の「第2トルク指令値」に相当する)が求められる(S9)。具体的には、前輪14,15の間の回転速度差ΔN(=(N1+N2−N3−N4)/2)が求められ、ROM(図示せず)に記憶したマップから回転速度差ΔNと車速Vとに対応した回転差トルクTnが求められる。
【0034】
次いで、前記プレトルクTpと回転差トルクTnとの和としてトルク指令値Ta(=Tp+Tn)を求め、このトルク指令値Taに対応した伝達トルクがトルク伝達装置30の入力部31から出力部32に伝達されるように、電磁コイル39への通電量をデューティ制御する(S10)。
【0035】
本実施形態の構成は以上であり、次に、本実施形態の自動車をAUTOモードで運転した場合の作用効果について説明する。自動車のアクセルを踏み込むとスロットルが開き、そのスロットル開度mに応じた馬力でエンジン10が駆動トルクをトランスアクスル11に出力する。ここで、自動車が渋滞していないときには、トルク伝達装置30の入力部31から出力部32への伝達トルクが、スロットル開度m及び前後輪14,15の回転速度差ΔNに応じた大きさになるように制御され、前輪14,14と共に後輪15,15が駆動される。従って、アクセルを踏み込んでスロットル開度mが大きくなるほど、前輪14,14と共に後輪15,15の駆動力も上がり、例えば、泥道や雪道のような悪路においても路面を的確に捉えて走行することができる。
【0036】
さて、自動車に備えたカーナビ53では、渋滞を避けたルート案内を行うために渋滞情報を受信している。しかしながら、渋滞を避けることができず渋滞に巻き込まれてしまう場合がある。このような場合、カーナビ53からECU50に渋滞エリア進入検出信号Jが出力される。すると、トルク伝達装置30による伝達トルクが、前後輪14,15の回転速度差ΔNのみに対応した大きさになるように制御され、スロットル開度mとは無関係に決定される。
【0037】
これにより、自動車が停止した状態、即ち、前後輪14,15の回転速度N1〜N4が共に0の状態から発進するときには、アクセルを踏み込んでも、トルク伝達装置30によるトルク伝達は行われず、前輪14,14のみが駆動して発進される。即ち、渋滞に巻き込まれて、発進と停止とを繰り返す場合には、自動的に二輪駆動になり、エンジン10への負荷が低減されて、燃費性能の向上が図られる。
【0038】
ところで、雪道等の悪路で渋滞した場合には、自動車が停止した状態からアクセルを踏み込んで、前輪14,14のみが駆動してスリップする場合がある。すると、スリップにより前後輪14,15の間に回転速度差ΔNが生じ、この回転速度差ΔNを低減させるように、トルク伝達装置30によりトルク伝達が行われ、後輪15,15が駆動される。これにより、渋滞時においても悪路では四輪駆動になり、路面を的確に捉えた発進が可能になる。
【0039】
このように本実施形態の車輪駆動力配分制御システム90によれば、渋滞になって発進・停止が繰り返される場合に、自動的に二輪駆動に切り換わることで、エンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。しかも、二輪駆動で発進してスリップが起きた場合には、四輪駆動になるから悪路における渋滞にも対応することができる。また、渋滞していない場合には、スロットル開度mや前後輪14,15の回転速度差ΔNに基づいてトルク伝達装置30による伝達トルクが決定され、前後輪14,15の間で適正な駆動力配分が行われるから、種々の状況に対応することができる。さらに、本実施形態では、渋滞情報を受信するための手段としてカーナビ53を利用したから、別途、その渋滞情報受信手段を設けた場合に比べて車内設備の共有化が図られ、コストが低減される。
【0040】
<第2実施形態>
本実施形態は、前記第1実施形態のメインプログラムMの一部を変更したものである。以下、第1実施形態と異なる構成に関してのみ説明すると、本実施形態のメインプログラムM’は、図5に示されており、ECU50に渋滞エリア進入検出信号Jが入力された場合に(S7でYes)、二輪駆動ロックモードに切り替わる。即ち、電磁コイル39の励磁を行わず、トルク伝達装置30の入力部31と出力部32とを断絶状態に保持する(S3)。
本実施形態の構成によっても、渋滞になって発進・停止が繰り返すされる場合に、自動的に二輪駆動に切り換わり、燃費性能の向上が図られる。
【0041】
上記した第1及び第2の実施形態では、外部から受信した渋滞情報に基づいて渋滞か否かを判別していたが、以下の第3〜第5実施形態では、外部から渋滞情報を受信せずに、車速推移から渋滞か否かを判別する構成になっている。
【0042】
<第3実施形態>
本実施形態は、前記第1実施形態のメインプログラムM(図4)のうち、ステップS6(車速演算)からステップS9(回転差トルクTn演算)の間を、図6に示した処理に置き換えた構成になっおり、大まかには、車速が所定速度以下で、走行と停止とを所定の頻度で繰り返した否かにより、自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別する。詳細には、所定周期でメインプログラムMが実行される度に、以下の処理を行う。
【0043】
即ち、車速演算(S6)を行った後、その車速が所定の閾値(例えば、15Km/h)以下か否かをチェックする(S20)。ここで、車速が閾値より大きかった場合は(S20でNo)、渋滞状態ではないと判断して、後述するカウンタをリセットし、前記第1実施形態におけるステップS8と同様に、プレトルクTpを演算する通常モードを実行する(S29)。
【0044】
これに対し、車速が閾値以下であった場合には(S20でYes)、停止状態から走行状態に切り替わったか或いは、走行状態から停止状態に切り替わったかをチェックする。具体的には、まずは、自動車が「停止中」か「走行中」の何れかをチェックする(S21)。そして、「停止中」であった場合には(S21でYes)、前回、ステップS21を実行したときに自動車が「走行中」であったか否かをチェックし(S22)、「走行中」であった場合には(S22でYes)、カウンタをインクリメントする(S24)。一方、「走行中」であった場合には(S21でNo)、前回、ステップS21を実行したときに自動車が「停止中」であったか否かをチェックし(S23)、「停止中」であった場合には(S23でYes)、カウンタをインクリメントする(S24)。そして、カウンタの値が所定値(例えば、10回)を超えた場合には(S25でYes)、前記第1実施形態におけるステップS11と同様に、プレトルクを0に保持した渋滞モードを実行する(S26)。
【0045】
一方、「停止中」或いは「走行中」が続いた場合は(S22又はS23でNo)、前記通常モードを実行する(S28,S29)。また、カウンタの値が所定値を超えない場合も(S25でNo)、通常モードを実行する(S28)。
【0046】
本実施形態の構成によれば、車速が閾値以下の低速走行を続けている状況下で、停止と発進(走行)を所定回数以上、繰り返した場合に、渋滞モードになる。また、渋滞を抜けて自動車が閾値以上の走行になった場合には、渋滞モードから抜ける。これにより、前記第1実施形態と同様に、エンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。
【0047】
<第4実施形態>
本実施形態は、前記第3実施形態の構成に図7に示したステップS30〜S34を加えた構成になっている。以下、第3実施形態との相違点に関してのみ説明する。
【0048】
本実施形態では、前記ステップS21におけるチェック結果が、「停止中」であった場合に(S21でYes)、ハザードのON/OFFをチェックする(S30)。そして、ハザードがONしていたときには(S30でNo)、通常モードを実行する一方(S29)、ハザードがOFFしていたときには(S30でYes)、「停止中」が継続しているときに(S22でNo)、タイマーをONする(S31)。また、タイマーが、既にON状態の場合にはON状態を保持する。そして、タイマーによる計測時間が3分以上になった場合に(S32でYes)、渋滞モードを実行し(S26)、計測時間が3分以上になっていない場合には(S32でNo)、通常モードを実行する(S29)。
【0049】
なお、タイマーは、車速が閾値を超えた場合(S20でNo)、又は、閾値以下でも、自動車が低速走行した場合(S21のNo)に、リセットされる(S33,S34)。
【0050】
図8には、車速推移に対するモードの切り換え状態が示されている。同図に示すように、自動車が所定時間(3分)以上、継続して停車した場合には、渋滞に巻き込まれたと判断して渋滞モードが実行される。また、低速走行の状況下で、停止と発進とを所定回数(10回)以上、繰り返した場合にも、渋滞モードになる。これに対し、所用によりハザードをONして停車した場合や、信号機等において停車し、3分以内の発進した場合には、通常モードが実行される。このように、本実施形態によれば、前記第3実施形態の作用効果に加え、渋滞か否かをより正確に判別することができる。
【0051】
<第5実施形態>
本実施形態は、前記第4実施形態の構成に図9に示したステップS40〜S46を加えた構成になっている。以下、第4実施形態との相違点に関してのみ説明する。
【0052】
本実施形態では、車速演算(S6)の直後に、フラッグF1に基づいて、現在、渋滞モードになっているか否かをチェックする(S40)。そして、フラッグF1が1でなかった場合、即ち、渋滞モードでなかった場合には(S40でNo)、低速走行の状況下で、所定の頻度で停止と発進を繰り返したか否かに基づいて、通常モードか渋滞モードかを選択実行する(S20〜S29)。そして、渋滞モードが実行された場合には(S26)、フラッグF1を1にセットする(S41)。
【0053】
すると、次にメインプログラムMを実行したときに、このフラッグF1に基づき、渋滞モードになっていると判断される(S40でYes)。そして、車速が前記閾値より大きな第2閾値(例えば、40Km/h)以上か否かをチェックする(S42)。ここで、車速が第2閾値以上であった場合には(S42でYes)、即座に、フラッグF1を0にリセットして(S46)、通常モードに切り換える(S29)。
【0054】
これに対し、車速が第2閾値より小さい場合には(S42でNo)、車速が第3閾値(例えば、20Km/h)以上であるか否かをチェックし(S43)、第3閾値より小さい場合には(S43でNo)、渋滞モードを継続実行する(S26)。一方、車速が第3閾値以上であった場合には(S43でYes)、第2タイマーをONして(S44)、その計測時間が5分以上にならない間は(S45でNo)、渋滞モードを継続実行する一方(S26)、計測時間が5分以上になった場合は(S45でYes)、フラッグF1を0にリセットして(S46)、通常モードに切り換える(S29)。本実施形態によれば、確実に渋滞を抜けたか否かを判別することができる。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更することで、実施することができる。
(1)前記第1及び第2の実施形態では、渋滞時に自動車を発進するときには、自動的に二輪駆動に切り替わる構成であったが、四輪駆動のまま、常時駆動輪以外の車輪への駆動力の配分を下げるだけの構成にしてもよい。このように構成しても、渋滞時のエンジン負荷が低減され、燃費性能の向上が図られる。
【0056】
(2)前記第1及び第2の実施形態では、前輪14を本発明に係る「常時駆動輪」とし、後輪15を本発明に係る「常時駆動輪以外の車輪」としていたが、その逆の構成にしてもよい。
【0057】
(3)前記第1及び第2の実施形態では、カーナビ53から直にECU50に渋滞エリア進入検出信号Jを取り込む構成であったが、例えば、自動車に備えたCANの一部に接続したコンピュータを介してECU50に渋滞エリア進入検出信号Jを取り込む構成にしてもよい。
【0058】
(4)前記第1及び第2の実施形態では、渋滞情報受信手段をカーナビゲーションで構成していたが、渋滞情報受信手段は、ナビゲーション機能を備えずに、自動車が単に渋滞エリアに進入したか否かに係る情報を外部から受信する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車の駆動系を示す概念図
【図2】トルク伝達装置の基本構成を示す側断面図
【図3】V形凹部の断面図
【図4】メインプログラムのフローチャート
【図5】第2実施形態のメインプログラムのフローチャート
【図6】第3実施形態のメインプログラムのフローチャート
【図7】第4実施形態のメインプログラムのフローチャート
【図8】車速推移と渋滞モード・通常モードの切り換えを示すグラフ
【図9】第5実施形態のメインプログラムのフローチャート
【符号の説明】
14…前輪(常時駆動輪)
15…後輪(常時駆動輪以外の車輪)
30…トルク伝達装置(トルク伝達手段)
31…入力部
32…出力部
53…カーナビゲーション(渋滞情報受信手段)
90…車輪駆動力配分制御システム
50…ECU(伝達トルク制御手段)
Tp…プレトルク(第1トルク指令値)
Tn…回転差トルク(第2トルク指令値)
Claims (6)
- 状況に応じて自動車を二輪駆動と四輪駆動とに変更する車輪駆動力配分制御システムにおいて、
前記自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段を備え、前記渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には自動車を二輪駆動にすることを特徴とする車輪駆動力配分制御システム。 - 自動車の常時駆動輪に連動して回転する入力部と、前記常時駆動輪以外の車輪に連動して回転する出力部とを有しかつ前記入力部から前記出力部への伝達トルクを変更可能なトルク伝達手段と、
状況に応じて前記トルク伝達手段による前記伝達トルクを制御する伝達トルク制御手段とを備えた車輪駆動力配分制御システムにおいて、
前記自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段を備え、前記伝達トルク制御手段は、前記渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には、前記伝達トルクを通常時より下げるように構成したことを特徴とする車輪駆動力配分制御システム。 - 自動車の常時駆動輪に連動して回転する入力部と、前記常時駆動輪以外の車輪に連動して回転する出力部とを有しかつ前記入力部から前記出力部への伝達トルクを変更可能なトルク伝達手段と、
前記自動車に備えたセンサにより検出されたスロットルの開度と各車輪の回転速度とを取り込み、前記スロットルの開度に応じて予め定められた第1トルク指令値と、前記常時駆動輪と前記常時駆動輪以外の車輪との回転速度の差に応じて予め定められた第2トルク指令値とを求め、これら第1及び第2のトルク指令値の和に基づいて、前記トルク伝達手段の伝達トルクを制御する伝達トルク制御手段と、
前記自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するための渋滞判別手段とを備え、
前記伝達トルク制御手段は、前記渋滞判別手段の判別結果に基づき、渋滞時には、前記第1トルク指令値を0に保持するように構成したことを特徴とする車輪駆動力配分制御システム。 - 前記渋滞判別手段は、車速が所定速度以下で、走行と停止とを所定の頻度で繰り返した否かにより、前記自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車輪駆動力配分制御システム。
- 前記渋滞判別手段は、外部から発信された渋滞情報を受信する渋滞情報受信手段を備え、前記渋滞情報受信手段が受信した渋滞情報に基づき、前記自動車が渋滞地域を走行しているか否により、前記自動車が渋滞に巻き込まれたか否かを判別するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車輪駆動力配分制御システム。
- 前記渋滞情報受信手段は、前記渋滞情報を受信可能なカーナビゲーションで構成されたことを特徴とする請求項5に記載の車輪駆動力配分制御システム。
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Cited By (5)
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JP2008230465A (ja) * | 2007-03-22 | 2008-10-02 | Jtekt Corp | 駆動力配分装置 |
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JP2017053268A (ja) * | 2015-09-09 | 2017-03-16 | 株式会社デンソー | エンジン制御装置 |
-
2002
- 2002-06-05 JP JP2002164027A patent/JP2004009814A/ja active Pending
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