JP2004099941A - マグネシウム基合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量で、高強度と高延性を兼ね備えたMg基合金が求められている。
【構成】合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)であり、母相の結晶が平均粒径5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成され、該結晶中の一部に濃度変調が存在し、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加していることを特徴とするマグネシウム基合金。急速凝固法により製造する。
【選択図】 なし
【構成】合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)であり、母相の結晶が平均粒径5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成され、該結晶中の一部に濃度変調が存在し、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加していることを特徴とするマグネシウム基合金。急速凝固法により製造する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強度及び伸びに優れ、産業上の種々の分野に利用可能なマグネシウム基合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融状態の合金を急冷することにより種々の組成において、非晶質合金又は非常に微細な結晶を有する合金が得られることが知られている。これらの合金は急速凝固合金と呼ばれ、特にナノメートルサイズの微細な結晶からなる合金は、高い冷却速度が容易に実現できる単ロール法によって製造される場合が多く、Fe系、Al系、又はMg系合金について数多くの急速凝固合金材料が得られている。なかでも、Mg系急速凝固合金は他の急速凝固合金に比べて低比重で軽量であり、種々の分野への応用が期待されている。このようなMg系急速凝固合金としてMg−Al−M(MはGa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種以上)系急速凝固合金がある(特許文献1)。
【0003】
しかし、単ロール法によって作製できるMg系急速凝固合金の形状は薄帯に限られており、薄帯形状のままでは応用範囲が限定されるため、棒状などの種々の形状が可能である急速凝固合金材料を開発することが求められている。そのため、アトマイズ法を用いて、粉末形状の急速凝固合金を作製し、ホットプレスや押出し成型等により目的形状に固化成型が容易な合金が開発されている(特許文献2、3)。
本発明者らは、Mg基合金の組成と、その結晶構造を限定し、長周期六方構造を出現させることにより高強度と高延性を兼ね備えたMg基合金が得られることを見出し、特願2001−60978号として出願するとともに、論文として報告した(非特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−171331号公報
【特許文献2】
特開平7−3375号公報
【特許文献3】
特開平7−90462号公報
【0005】
【非特許文献1】
Akihisa Inoue et al.,「Novel hexagonal structure and ultrahigh strength of magnesium solid solution in the Mg−Zn−Y system」,.Mater.Res.,Materials Research Society,July 2001,Vol.16,No.7,p.1894−1900
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−3375号公報や特開平7−90462号公報に開示されているMg系急速凝固合金は550MPa前後の高い引張強度を有しているが、室温に保持した状態で脆化する現象が見られ、また、伸びも2.5%程度であり、従来のマグネシウム合金に比較して延性が良好であるとは言えなかった。そのため、構造材料としての応用範囲が狭く、実用化の観点から、粉末冶金の手法を用いた場合で500MPa以上程度の引張強度を有し、延性が良好なMg基合金が強く求められていた。
【0007】
さらに、特開平7−90462号公報に開示されているようなMg基急速凝固合金は、通常、Mgが95原子%未満であるために比重が高く、Mgの軽量という特性を阻害しており、Mgを93原子%以上、より好ましくは96原子%以上含有し、軽量で、高強度と高延性を兼ね備えたMg基合金が求められている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題に鑑みて、Mg含有量が93原子%以上であり、高強度、高延性のMg基急速凝固合金材料を提供することを目的として、先の発明(特願2001−60978号)の合金について更に鋭意検討を行なったところ、長周期六方構造を生じなくとも、前記のMg基合金と同等以上の強度を有する場合があることを見出し、その高強度が得られる条件についてさらに詳細に検討を行った。
【0009】
その結果、マグネシウム基合金において、マグネシウムに希土類元素及びZnを加えて、その組成を特定し、さらに、母相の結晶である六方晶構造のMg中に希土類元素及びZnの濃度変調部分を生じさせることにより高強度と高延性を兼ね備えたマグネシウム基合金が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)であり、母相の結晶が平均粒径5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成され、該結晶中の一部に濃度変調が存在し、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加していることを特徴とするマグネシウム基合金である。
【0011】
本発明のマグネシウム基合金において、その合金全体の平均の組成において、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素の含有量は0.5原子%以上5原子%以下、好ましくは1.0原子%以上3原子%以下である。
【0012】
本発明において、ミッシュメタル(Mm)とはCeを主成分とする希土類金属の混合体を意味し、安価に希土類金属を用いることができる。Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の元素が0.5原子%未満であると所望の濃度変調を得ることができず強度が低下し実用に供せない。また、5原子%を超えると、材料の脆化がみられるとともに比強度が低下してしまう。
【0013】
Znは0.2原子%以上4原子%以下であり、好ましくは0.5原子%以上2原子%以下である。0.2原子%未満であるとZnの添加効果が見られず強度が低い。4原子%を超えると伸びが低下する。
【0014】
LnとZnの総和は1.5原子%以上7原子%以下であり、好ましくは2原子%以上4.5原子%以下、さらに好ましくは2.5原子%以上4原子%以下である。1.5原子%未満であると、濃度変調を得ることができずに強度が低下してしまい、7原子%を超えると脆化が認められるために実用に供せない。
【0015】
本発明において、形成されるマグネシウム基合金の母相の結晶粒径は5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成されている必要がある。母相の結晶粒径が5μmを超えて粗大化していると強度の低下が顕著であり従来のマグネシウム合金に比べて顕著な強度増加がなくなる。なお、結晶粒径はどのような測定法を用いても構わないが、1μm以上であれば偏光光学顕微鏡により観察を行い、また、1μm未満であれば透過型電子顕微鏡により結晶粒径を観察することにより求めることが可能である。平均の結晶粒径は、各々の結晶が球であると仮定した場合の平均値である。本件明細書において、結晶粒径は、かかる測定法によるものである。
【0016】
さらに、本発明においては、母相の結晶中の一部に濃度変調が存在し、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加している必要がある。好ましくは、合金全体の平均の組成に比べてLnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下の増加であり、濃度変調している部位の溶質組成がLnの合計で2原子%以上8原子%以下かつZnが1原子%以上8原子%以下、残部Mgである。
【0017】
本発明で、濃度変調とは、新たな化合物を析出することなしに結晶粒内で濃度変化することを意味する。この濃度変調の領域は母相の結晶中の一部に存在する必要があるが、本発明において領域の大きさは、通常、体積割合で母相結晶中の10%から50%の領域である。この濃度変調の部分において、Lnの濃度が平均の組成と比べて2原子%未満の増加及びZnの濃度が平均の組成と比べて2原子%未満の増加である場合、この濃度変調による強度増加が顕著でなく、従来のマグネシウム合金に比べて大きな強度増加が得られない。また、Lnの合計が6原子%を超えた増加及び/又はZnが6原子%を超えて増加した部位が存在する場合は、伸びが急激に低下するため実用に供せない。
【0018】
本発明の上記の濃度変調の部分において好ましい結晶構造は、濃度変調を生じている部分の一部が長周期六方構造を有していることである。長周期六方構造を有している領域は、体積割合で濃度変調の部分の50%〜90%の範囲で存在することが好ましい。濃度変調の部分において長周期六方構造を有することにより、濃度変調の領域が安定して存在し、高強度と高延性を兼ね備えたマグネシウム合金となる。この長周期六方構造とは、マグネシウム単位胞c軸長さ(0.52nm)の整数倍を1周期として構造をなすものをいう。通常、その周期は3から7の範囲である。
【0019】
さらに好ましい結晶構造は、上記長周期六方構造において、その長周期の中に原子層レベルで濃度変調が存在することである。例えば、長周期が7周期である場合には、Zn及び/又はLnが多い周期が2周期存在し、その他の5周期はZn及び/又はLnが多くない周期となっている。合金の結晶中の濃度変調は、一般に、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により試料を観察し、顕微鏡付属のEDSなどの分析装置によって測定を行ない、観察することが可能である。
【0020】
例えば、透過型電子顕微鏡で試料を観察する場合は、合金より1mm程度の破片をサンプリングした後、TEMに供する観察試料を作製し、明視野像により観察を行ない、その視野の中にある結晶粒から任意に1つを選択し、さらに分析モードで結晶粒全体の成分をEDSにより測定し、さらに結晶粒内の任意の点についても30nmφ程度の測定スポットにより測定を行なう。結晶粒内の任意の点については、濃度変調がある部位には積層欠陥が生じ易いという特徴を利用し、明視野で観察される積層欠陥の付近を分析することにより、濃度変調がある部位について測定が行ない易くなる。
【0021】
好ましい結晶形態としての長周期六方構造を観察する場合は、上記明視野観察した際に電子回折図形を得た後に、結晶格子のc軸が晶帯軸と直交する、つまり、電子線入射軸方向と直交する方位となるよう結晶粒を試料傾斜装置を用いて傾斜させる。さらに、得られた回折図形から結晶格子の(0001)面に対応する回折斑点を見出し、回折図形中心と(0001)回折斑点との間において、これを何等分かに内分する位置に回折斑点があれば、c軸方向に長周期構造を持っていると判断できる。また、その周期の長さは、マグネシウム単位胞のc軸長さと内分の積である。
【0022】
本発明のマグネシウム基合金は、急速凝固又は成形や加工などにより目的形状にした後に、結晶粒径及び濃度変調が上述の要件を満たしていれば、延性の改善や強度の上昇のために、熱処理や鍛造などの追加の加工を行なうことが可能であり、従来のMg合金と同等に成型及び加工ができることから、本発明のマグネシウム基合金は工業的に有益である。
【0023】
また、本発明のマグネシウム基合金は、急速凝固時に化合物を生じない程度にNi,Co,Ga,Cu,又はAgの元素を1原子%以下の範囲で添加し、強度や延性をさらに向上させた材料を提供することができる。
【0024】
本発明のマグネシウム基合金を作製する際の急速凝固の方法は、102K/sec以上の冷却速度で凝固さえ行えれば特に限定されず、例えば、単ロール法によりリボン状の急速凝固合金を作製し、粉砕機により粉末形状の合金にした後、該合金を加工しながら成型することにより作製することが可能であり、また、金型鋳造を用いて溶融状態から急速に凝固させてバルク形状の急速凝固合金を作製し、該合金を目的形状に加工することにより作製することも可能である。また、ガスアトマイズ法を用いて、粉末形状の急速凝固合金を作製しても構わない。
【0025】
例えば、代表的な単ロール法においては、孔径0.3〜2mmの黒鉛製ノズルを用い、合金をノズル中で、アルゴン雰囲気下で溶融した後、アルゴン雰囲気中で、200rpmから2000rpmで回転している直径20cm程度の銅ロールの回転面上に噴出圧0.5〜2.0kg/cm2で噴出し、急速凝固させることによりリボン状の合金を得ることができる。さらに、リボン状の合金はローターミルなどの粉砕機により粉体状の合金にする。粉砕中は、粉砕による発熱を防ぐために液体窒素などにより冷却を行ないながら粉砕することが望ましい。粉末状の合金は、最終製品にするための固化成型を容易に行なうために、平均粉末粒径を30μm程度にすることが望ましい。
【0026】
さらに、粉末形状の合金を押出し容器に充填した後、加熱を行ないながら押出し比3〜20の押出し成型を行なうことにより容易に本発明のマグネシウム基合金からなる成型材を作製することができる。押出し比が3未満であると熱間で成型しても粉末が固化されず、押出し比が20を超えると押出し容器の破壊などにより成型が困難になるので好ましくない。
【0027】
さらに、本発明のマグネシウム基合金は製造方法に特に限定されず、前記以外の液体急冷法である双ロール法、溶融抽出法などを用いて、薄帯状やフィラメント状などの目的形状に近い製造方法を選択し、さらに、加工及び熱処理を施すことにより、種々の形状を有する本発明のマグネシウム基合金が容易に得られる。
【0028】
さらに、本発明においては熱処理によっても母相の結晶中の一部に濃度変調を生じさせ、本発明のマグネシウム基合金を作製することができる。すなわち、合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)のマグネシウム合金を溶融状態から104K/sec以上の冷却速度で急速凝固を行ない、母相の結晶が平均粒径5μm下の六方晶構造を有するMgから形成される合金を作製した後に、150〜400℃の温度において熱処理を行ない、結晶中の一部に濃度変調を生じさせるとともに、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下又はZnが1原子%以上6原子%以下増加にすることを特徴とするマグネシウム基合金の製造方法である。
【0029】
本発明の組成を有する合金を急速凝固を行なう際に冷却速度を上げると濃度変調をきたした部位が減少する傾向にあり、上記の温度範囲で熱処理を行なうことにより、濃度変調の部位を増加させることが可能である。熱処理温度が150℃未満であると熱処理の効果が見られず、また400℃以上であると急激に軟化するため高強度のマグネシウム基合金を得ることができない。熱処理の温度の好ましい範囲は、200℃〜350℃である。また、熱処理時間は5分から24時間が好ましい。熱処理時間が5分未満であると合金の内部と外部の熱処理の効果が異なり中心部分まで熱処理を施すことができなくなる。また、24時間を超えると化合物が析出し脆化する傾向にある。
【0030】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
Mg97Y2Zn1(原子%)からなる合金を、アルゴン雰囲気中、先端に孔径1mmのオリフィスを有した黒鉛製ノズル中で10g溶融した後、2000rpmのロール回転数で回転している直径20cmの銅ロールの回転面上に、650℃でアルゴン雰囲気下、噴出圧0.5kg/cm2でノズルから溶湯を噴出させ、急速凝固させて、幅3mm厚さ50μmの連続した薄帯形状の急速凝固合金を作製した。次に、薄帯形状の急速凝固合金をローターミルにより粉末粒径が平均で50μmの粉末状にして押出容器に装入し、押出し成型を行なった。押出しの温度は573K、押出し比10で成型を行なった。成型後の試料は機械加工により容器部分を削除し成型材とした後に、各種試験及び観察に供した。
【0031】
引張り試験にはインストロン引張試験機を用い、ひずみ速度5×10−4s−1で試験し、強度及び伸びを測定した。結晶粒径及び長周期六方構造の測定は、試料中から5ヵ所サンプルを行い観察試料とし、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−3000F)を用いて観察を行った。結晶粒径については各々の観察試料から20000倍の観察において5視野の観察を行い結晶粒径とした。
【0032】
また、濃度変調においては、合金全体の平均組成を求めるために2万倍の視野でEDXによる組成分析を行った後の観察試料から結晶を任意に選択し、結晶中の積層欠陥が観察される部位の周辺を5点抽出し、EDXによる組成分析を行なった。測定の結果、平均の結晶粒径は120nmであり、組成はMg97Zn1Y2(原子%)であった。電子線を20nmにしてさらにEDXの分析を行なったところ、結晶粒内の積層欠陥が観察される部位でY及びZnの濃度が一番高い部分はMg86Y7Zn7(原子%)であった。その他、Mg90Y5Zn5やMg93Y3Zn4の組成を有する部分も観察された。
【0033】
さらに、YとZnの濃度が高かった部位について制限視野電子回折図形を得た。この回折図形を見ながら、Mgのc軸が電子線入射方向と直交するよう結晶粒を透過電顕の試料傾斜装置を用いて傾斜させた。[010]入射となるよう傾斜させ、カメラ定数を150cmとして回折図形を撮影した。濃度がMg86Y7Zn7及びMg90Y5Zn5の組成である部分から得られた回折図形からは、回折図形中心と(001)Mg回折斑点との間において、これを3等分に内分する位置に回折斑点が見出された。
【0034】
これよりMgのc軸方向に長周期六方構造を持っており、その周期の長さはMg単位胞c軸長さの3倍(1.56nm)であることが判った。それ以外の部位については、長周期構造が観察されなかった。以上の試験及び観察より、濃度変調が存在する部位はYが1〜5at%、Znが3〜6at%の濃度増加を示していた。また、最大の濃度変調があった部位には3周期の長周期六方構造を有しており本発明のマグネシウム基合金であった。引張り試験の結果、実施例1で作製した材料の降伏強度は590MPaであり延びは4%であった。
【0035】
実施例2〜4及び比較例1〜4
実施例1と同様に表1に示す組成について、単ロール法で薄帯を作製し粉砕して粉末状の急速凝固合金を作製した後に、押出し温度573K、押し出し比10の条件にて押出し加工を行ない成型材を作製し、各種試験及び観察に供した。
【0036】
【表1】
【0037】
比較例5
実施例1と同様にMg97Y2Zn1の組成を有する合金を単ロール法で薄帯を作製し粉砕して粉末状の急速凝固合金を作製した後に、押出し温度423K、押出し比5の条件で押出し加工を行ない成型材を作製し、各種観察及び試験を行なった。比較例5の場合、透過型電子顕微鏡により微小分析を行なったが、顕著な濃度変調が見られなかった。また、降伏強度は300MPaであり、実施例1と比べて降伏強度が高いとは言えない。
【0038】
比較例6
市販のマグネシウム合金(AZ91)を実施例1と同じ工程で成型材を作製し、引張り試験を行なった。降伏強度は240MPa、伸びは3.8%であった。
【0039】
実施例1〜4及び比較例1〜6から明らかなように、実施例1〜4の成型材は、本発明のマグネシウム基合金であるので、500MPa以上の降伏強度を有し、かつ3%以上の伸びを有しており、比較例6に示す従来のマグネシウム合金に比べて高強度を有しており、延性も保持している。比較例1〜4は本発明のマグネシウム基合金の組成範囲から逸脱しているため、強度が低く、また、比較例5は、濃度変調が見られず、本発明のマグネシウム基合金ではないため350MPa程度の強度しか得られなかった。
【0040】
実施例5
Mg97Zn1Y2の組成からなる合金を溶融し、単ロール法により幅1mm厚さ25μmである急冷凝固リボン材を作製した。リボン材を作製する条件は、ロール:Cu製200mmφ、ロール回転速度:6000rpm、ノズル孔径:0.5mmφである。
【0041】
その後、急速凝固リボン材を200℃、300℃、400℃の各温度で20分の熱処理を行なった後、強度の指標としてビッカース硬度計により硬度(Hv)を測定した。また、密着曲げ試験により延性の評価を行なった。密着曲げ試験はリボン材をマイクロメータにUの字状にはさみこみ、破断するまで間隔を狭めることにより試験を行い、最後まで破断せずに180度密着曲げできたものを密着曲げ可と判断した。また、実施例1と同様に濃度変調が最大の部位についてEDXによる分析も行なった。その結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例5〜7の合金は硬度(Hv)140以上を有し、高強度とともに延性を兼ね備えていることが分かる。比較例8の合金は、熱処理温度が本発明の製造方法より低いために、急冷材に比べて濃度変調が少なく硬度も低い、また、比較例9の合金は温度が高いために軟化を起こし硬度が低くなる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のマグネシウム合金は高強度と高延性を兼ね備えているため、従来のマグネシウム合金では使用が不可能であった部位などにおいても本発明の合金が使用できるとともに、従来、マグネシウム合金を使用していた部位においても小型化が可能になる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、強度及び伸びに優れ、産業上の種々の分野に利用可能なマグネシウム基合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融状態の合金を急冷することにより種々の組成において、非晶質合金又は非常に微細な結晶を有する合金が得られることが知られている。これらの合金は急速凝固合金と呼ばれ、特にナノメートルサイズの微細な結晶からなる合金は、高い冷却速度が容易に実現できる単ロール法によって製造される場合が多く、Fe系、Al系、又はMg系合金について数多くの急速凝固合金材料が得られている。なかでも、Mg系急速凝固合金は他の急速凝固合金に比べて低比重で軽量であり、種々の分野への応用が期待されている。このようなMg系急速凝固合金としてMg−Al−M(MはGa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種以上)系急速凝固合金がある(特許文献1)。
【0003】
しかし、単ロール法によって作製できるMg系急速凝固合金の形状は薄帯に限られており、薄帯形状のままでは応用範囲が限定されるため、棒状などの種々の形状が可能である急速凝固合金材料を開発することが求められている。そのため、アトマイズ法を用いて、粉末形状の急速凝固合金を作製し、ホットプレスや押出し成型等により目的形状に固化成型が容易な合金が開発されている(特許文献2、3)。
本発明者らは、Mg基合金の組成と、その結晶構造を限定し、長周期六方構造を出現させることにより高強度と高延性を兼ね備えたMg基合金が得られることを見出し、特願2001−60978号として出願するとともに、論文として報告した(非特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−171331号公報
【特許文献2】
特開平7−3375号公報
【特許文献3】
特開平7−90462号公報
【0005】
【非特許文献1】
Akihisa Inoue et al.,「Novel hexagonal structure and ultrahigh strength of magnesium solid solution in the Mg−Zn−Y system」,.Mater.Res.,Materials Research Society,July 2001,Vol.16,No.7,p.1894−1900
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−3375号公報や特開平7−90462号公報に開示されているMg系急速凝固合金は550MPa前後の高い引張強度を有しているが、室温に保持した状態で脆化する現象が見られ、また、伸びも2.5%程度であり、従来のマグネシウム合金に比較して延性が良好であるとは言えなかった。そのため、構造材料としての応用範囲が狭く、実用化の観点から、粉末冶金の手法を用いた場合で500MPa以上程度の引張強度を有し、延性が良好なMg基合金が強く求められていた。
【0007】
さらに、特開平7−90462号公報に開示されているようなMg基急速凝固合金は、通常、Mgが95原子%未満であるために比重が高く、Mgの軽量という特性を阻害しており、Mgを93原子%以上、より好ましくは96原子%以上含有し、軽量で、高強度と高延性を兼ね備えたMg基合金が求められている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題に鑑みて、Mg含有量が93原子%以上であり、高強度、高延性のMg基急速凝固合金材料を提供することを目的として、先の発明(特願2001−60978号)の合金について更に鋭意検討を行なったところ、長周期六方構造を生じなくとも、前記のMg基合金と同等以上の強度を有する場合があることを見出し、その高強度が得られる条件についてさらに詳細に検討を行った。
【0009】
その結果、マグネシウム基合金において、マグネシウムに希土類元素及びZnを加えて、その組成を特定し、さらに、母相の結晶である六方晶構造のMg中に希土類元素及びZnの濃度変調部分を生じさせることにより高強度と高延性を兼ね備えたマグネシウム基合金が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)であり、母相の結晶が平均粒径5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成され、該結晶中の一部に濃度変調が存在し、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加していることを特徴とするマグネシウム基合金である。
【0011】
本発明のマグネシウム基合金において、その合金全体の平均の組成において、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素の含有量は0.5原子%以上5原子%以下、好ましくは1.0原子%以上3原子%以下である。
【0012】
本発明において、ミッシュメタル(Mm)とはCeを主成分とする希土類金属の混合体を意味し、安価に希土類金属を用いることができる。Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の元素が0.5原子%未満であると所望の濃度変調を得ることができず強度が低下し実用に供せない。また、5原子%を超えると、材料の脆化がみられるとともに比強度が低下してしまう。
【0013】
Znは0.2原子%以上4原子%以下であり、好ましくは0.5原子%以上2原子%以下である。0.2原子%未満であるとZnの添加効果が見られず強度が低い。4原子%を超えると伸びが低下する。
【0014】
LnとZnの総和は1.5原子%以上7原子%以下であり、好ましくは2原子%以上4.5原子%以下、さらに好ましくは2.5原子%以上4原子%以下である。1.5原子%未満であると、濃度変調を得ることができずに強度が低下してしまい、7原子%を超えると脆化が認められるために実用に供せない。
【0015】
本発明において、形成されるマグネシウム基合金の母相の結晶粒径は5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成されている必要がある。母相の結晶粒径が5μmを超えて粗大化していると強度の低下が顕著であり従来のマグネシウム合金に比べて顕著な強度増加がなくなる。なお、結晶粒径はどのような測定法を用いても構わないが、1μm以上であれば偏光光学顕微鏡により観察を行い、また、1μm未満であれば透過型電子顕微鏡により結晶粒径を観察することにより求めることが可能である。平均の結晶粒径は、各々の結晶が球であると仮定した場合の平均値である。本件明細書において、結晶粒径は、かかる測定法によるものである。
【0016】
さらに、本発明においては、母相の結晶中の一部に濃度変調が存在し、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加している必要がある。好ましくは、合金全体の平均の組成に比べてLnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下の増加であり、濃度変調している部位の溶質組成がLnの合計で2原子%以上8原子%以下かつZnが1原子%以上8原子%以下、残部Mgである。
【0017】
本発明で、濃度変調とは、新たな化合物を析出することなしに結晶粒内で濃度変化することを意味する。この濃度変調の領域は母相の結晶中の一部に存在する必要があるが、本発明において領域の大きさは、通常、体積割合で母相結晶中の10%から50%の領域である。この濃度変調の部分において、Lnの濃度が平均の組成と比べて2原子%未満の増加及びZnの濃度が平均の組成と比べて2原子%未満の増加である場合、この濃度変調による強度増加が顕著でなく、従来のマグネシウム合金に比べて大きな強度増加が得られない。また、Lnの合計が6原子%を超えた増加及び/又はZnが6原子%を超えて増加した部位が存在する場合は、伸びが急激に低下するため実用に供せない。
【0018】
本発明の上記の濃度変調の部分において好ましい結晶構造は、濃度変調を生じている部分の一部が長周期六方構造を有していることである。長周期六方構造を有している領域は、体積割合で濃度変調の部分の50%〜90%の範囲で存在することが好ましい。濃度変調の部分において長周期六方構造を有することにより、濃度変調の領域が安定して存在し、高強度と高延性を兼ね備えたマグネシウム合金となる。この長周期六方構造とは、マグネシウム単位胞c軸長さ(0.52nm)の整数倍を1周期として構造をなすものをいう。通常、その周期は3から7の範囲である。
【0019】
さらに好ましい結晶構造は、上記長周期六方構造において、その長周期の中に原子層レベルで濃度変調が存在することである。例えば、長周期が7周期である場合には、Zn及び/又はLnが多い周期が2周期存在し、その他の5周期はZn及び/又はLnが多くない周期となっている。合金の結晶中の濃度変調は、一般に、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により試料を観察し、顕微鏡付属のEDSなどの分析装置によって測定を行ない、観察することが可能である。
【0020】
例えば、透過型電子顕微鏡で試料を観察する場合は、合金より1mm程度の破片をサンプリングした後、TEMに供する観察試料を作製し、明視野像により観察を行ない、その視野の中にある結晶粒から任意に1つを選択し、さらに分析モードで結晶粒全体の成分をEDSにより測定し、さらに結晶粒内の任意の点についても30nmφ程度の測定スポットにより測定を行なう。結晶粒内の任意の点については、濃度変調がある部位には積層欠陥が生じ易いという特徴を利用し、明視野で観察される積層欠陥の付近を分析することにより、濃度変調がある部位について測定が行ない易くなる。
【0021】
好ましい結晶形態としての長周期六方構造を観察する場合は、上記明視野観察した際に電子回折図形を得た後に、結晶格子のc軸が晶帯軸と直交する、つまり、電子線入射軸方向と直交する方位となるよう結晶粒を試料傾斜装置を用いて傾斜させる。さらに、得られた回折図形から結晶格子の(0001)面に対応する回折斑点を見出し、回折図形中心と(0001)回折斑点との間において、これを何等分かに内分する位置に回折斑点があれば、c軸方向に長周期構造を持っていると判断できる。また、その周期の長さは、マグネシウム単位胞のc軸長さと内分の積である。
【0022】
本発明のマグネシウム基合金は、急速凝固又は成形や加工などにより目的形状にした後に、結晶粒径及び濃度変調が上述の要件を満たしていれば、延性の改善や強度の上昇のために、熱処理や鍛造などの追加の加工を行なうことが可能であり、従来のMg合金と同等に成型及び加工ができることから、本発明のマグネシウム基合金は工業的に有益である。
【0023】
また、本発明のマグネシウム基合金は、急速凝固時に化合物を生じない程度にNi,Co,Ga,Cu,又はAgの元素を1原子%以下の範囲で添加し、強度や延性をさらに向上させた材料を提供することができる。
【0024】
本発明のマグネシウム基合金を作製する際の急速凝固の方法は、102K/sec以上の冷却速度で凝固さえ行えれば特に限定されず、例えば、単ロール法によりリボン状の急速凝固合金を作製し、粉砕機により粉末形状の合金にした後、該合金を加工しながら成型することにより作製することが可能であり、また、金型鋳造を用いて溶融状態から急速に凝固させてバルク形状の急速凝固合金を作製し、該合金を目的形状に加工することにより作製することも可能である。また、ガスアトマイズ法を用いて、粉末形状の急速凝固合金を作製しても構わない。
【0025】
例えば、代表的な単ロール法においては、孔径0.3〜2mmの黒鉛製ノズルを用い、合金をノズル中で、アルゴン雰囲気下で溶融した後、アルゴン雰囲気中で、200rpmから2000rpmで回転している直径20cm程度の銅ロールの回転面上に噴出圧0.5〜2.0kg/cm2で噴出し、急速凝固させることによりリボン状の合金を得ることができる。さらに、リボン状の合金はローターミルなどの粉砕機により粉体状の合金にする。粉砕中は、粉砕による発熱を防ぐために液体窒素などにより冷却を行ないながら粉砕することが望ましい。粉末状の合金は、最終製品にするための固化成型を容易に行なうために、平均粉末粒径を30μm程度にすることが望ましい。
【0026】
さらに、粉末形状の合金を押出し容器に充填した後、加熱を行ないながら押出し比3〜20の押出し成型を行なうことにより容易に本発明のマグネシウム基合金からなる成型材を作製することができる。押出し比が3未満であると熱間で成型しても粉末が固化されず、押出し比が20を超えると押出し容器の破壊などにより成型が困難になるので好ましくない。
【0027】
さらに、本発明のマグネシウム基合金は製造方法に特に限定されず、前記以外の液体急冷法である双ロール法、溶融抽出法などを用いて、薄帯状やフィラメント状などの目的形状に近い製造方法を選択し、さらに、加工及び熱処理を施すことにより、種々の形状を有する本発明のマグネシウム基合金が容易に得られる。
【0028】
さらに、本発明においては熱処理によっても母相の結晶中の一部に濃度変調を生じさせ、本発明のマグネシウム基合金を作製することができる。すなわち、合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)のマグネシウム合金を溶融状態から104K/sec以上の冷却速度で急速凝固を行ない、母相の結晶が平均粒径5μm下の六方晶構造を有するMgから形成される合金を作製した後に、150〜400℃の温度において熱処理を行ない、結晶中の一部に濃度変調を生じさせるとともに、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下又はZnが1原子%以上6原子%以下増加にすることを特徴とするマグネシウム基合金の製造方法である。
【0029】
本発明の組成を有する合金を急速凝固を行なう際に冷却速度を上げると濃度変調をきたした部位が減少する傾向にあり、上記の温度範囲で熱処理を行なうことにより、濃度変調の部位を増加させることが可能である。熱処理温度が150℃未満であると熱処理の効果が見られず、また400℃以上であると急激に軟化するため高強度のマグネシウム基合金を得ることができない。熱処理の温度の好ましい範囲は、200℃〜350℃である。また、熱処理時間は5分から24時間が好ましい。熱処理時間が5分未満であると合金の内部と外部の熱処理の効果が異なり中心部分まで熱処理を施すことができなくなる。また、24時間を超えると化合物が析出し脆化する傾向にある。
【0030】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
Mg97Y2Zn1(原子%)からなる合金を、アルゴン雰囲気中、先端に孔径1mmのオリフィスを有した黒鉛製ノズル中で10g溶融した後、2000rpmのロール回転数で回転している直径20cmの銅ロールの回転面上に、650℃でアルゴン雰囲気下、噴出圧0.5kg/cm2でノズルから溶湯を噴出させ、急速凝固させて、幅3mm厚さ50μmの連続した薄帯形状の急速凝固合金を作製した。次に、薄帯形状の急速凝固合金をローターミルにより粉末粒径が平均で50μmの粉末状にして押出容器に装入し、押出し成型を行なった。押出しの温度は573K、押出し比10で成型を行なった。成型後の試料は機械加工により容器部分を削除し成型材とした後に、各種試験及び観察に供した。
【0031】
引張り試験にはインストロン引張試験機を用い、ひずみ速度5×10−4s−1で試験し、強度及び伸びを測定した。結晶粒径及び長周期六方構造の測定は、試料中から5ヵ所サンプルを行い観察試料とし、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−3000F)を用いて観察を行った。結晶粒径については各々の観察試料から20000倍の観察において5視野の観察を行い結晶粒径とした。
【0032】
また、濃度変調においては、合金全体の平均組成を求めるために2万倍の視野でEDXによる組成分析を行った後の観察試料から結晶を任意に選択し、結晶中の積層欠陥が観察される部位の周辺を5点抽出し、EDXによる組成分析を行なった。測定の結果、平均の結晶粒径は120nmであり、組成はMg97Zn1Y2(原子%)であった。電子線を20nmにしてさらにEDXの分析を行なったところ、結晶粒内の積層欠陥が観察される部位でY及びZnの濃度が一番高い部分はMg86Y7Zn7(原子%)であった。その他、Mg90Y5Zn5やMg93Y3Zn4の組成を有する部分も観察された。
【0033】
さらに、YとZnの濃度が高かった部位について制限視野電子回折図形を得た。この回折図形を見ながら、Mgのc軸が電子線入射方向と直交するよう結晶粒を透過電顕の試料傾斜装置を用いて傾斜させた。[010]入射となるよう傾斜させ、カメラ定数を150cmとして回折図形を撮影した。濃度がMg86Y7Zn7及びMg90Y5Zn5の組成である部分から得られた回折図形からは、回折図形中心と(001)Mg回折斑点との間において、これを3等分に内分する位置に回折斑点が見出された。
【0034】
これよりMgのc軸方向に長周期六方構造を持っており、その周期の長さはMg単位胞c軸長さの3倍(1.56nm)であることが判った。それ以外の部位については、長周期構造が観察されなかった。以上の試験及び観察より、濃度変調が存在する部位はYが1〜5at%、Znが3〜6at%の濃度増加を示していた。また、最大の濃度変調があった部位には3周期の長周期六方構造を有しており本発明のマグネシウム基合金であった。引張り試験の結果、実施例1で作製した材料の降伏強度は590MPaであり延びは4%であった。
【0035】
実施例2〜4及び比較例1〜4
実施例1と同様に表1に示す組成について、単ロール法で薄帯を作製し粉砕して粉末状の急速凝固合金を作製した後に、押出し温度573K、押し出し比10の条件にて押出し加工を行ない成型材を作製し、各種試験及び観察に供した。
【0036】
【表1】
【0037】
比較例5
実施例1と同様にMg97Y2Zn1の組成を有する合金を単ロール法で薄帯を作製し粉砕して粉末状の急速凝固合金を作製した後に、押出し温度423K、押出し比5の条件で押出し加工を行ない成型材を作製し、各種観察及び試験を行なった。比較例5の場合、透過型電子顕微鏡により微小分析を行なったが、顕著な濃度変調が見られなかった。また、降伏強度は300MPaであり、実施例1と比べて降伏強度が高いとは言えない。
【0038】
比較例6
市販のマグネシウム合金(AZ91)を実施例1と同じ工程で成型材を作製し、引張り試験を行なった。降伏強度は240MPa、伸びは3.8%であった。
【0039】
実施例1〜4及び比較例1〜6から明らかなように、実施例1〜4の成型材は、本発明のマグネシウム基合金であるので、500MPa以上の降伏強度を有し、かつ3%以上の伸びを有しており、比較例6に示す従来のマグネシウム合金に比べて高強度を有しており、延性も保持している。比較例1〜4は本発明のマグネシウム基合金の組成範囲から逸脱しているため、強度が低く、また、比較例5は、濃度変調が見られず、本発明のマグネシウム基合金ではないため350MPa程度の強度しか得られなかった。
【0040】
実施例5
Mg97Zn1Y2の組成からなる合金を溶融し、単ロール法により幅1mm厚さ25μmである急冷凝固リボン材を作製した。リボン材を作製する条件は、ロール:Cu製200mmφ、ロール回転速度:6000rpm、ノズル孔径:0.5mmφである。
【0041】
その後、急速凝固リボン材を200℃、300℃、400℃の各温度で20分の熱処理を行なった後、強度の指標としてビッカース硬度計により硬度(Hv)を測定した。また、密着曲げ試験により延性の評価を行なった。密着曲げ試験はリボン材をマイクロメータにUの字状にはさみこみ、破断するまで間隔を狭めることにより試験を行い、最後まで破断せずに180度密着曲げできたものを密着曲げ可と判断した。また、実施例1と同様に濃度変調が最大の部位についてEDXによる分析も行なった。その結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例5〜7の合金は硬度(Hv)140以上を有し、高強度とともに延性を兼ね備えていることが分かる。比較例8の合金は、熱処理温度が本発明の製造方法より低いために、急冷材に比べて濃度変調が少なく硬度も低い、また、比較例9の合金は温度が高いために軟化を起こし硬度が低くなる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のマグネシウム合金は高強度と高延性を兼ね備えているため、従来のマグネシウム合金では使用が不可能であった部位などにおいても本発明の合金が使用できるとともに、従来、マグネシウム合金を使用していた部位においても小型化が可能になる。
Claims (3)
- 合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)であり、母相の結晶が平均粒径5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成され、該結晶中の一部に濃度変調が存在し、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加していることを特徴とするマグネシウム基合金。
- 濃度変調を生じている部分の一部が長周期六方構造を有していることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム基合金。
- 合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)のマグネシウム合金を溶融状態から104K/sec以上の冷却速度で急速凝固を行ない、母相の結晶が平均粒径5μm以下の六方晶構造を有するMgから形成される合金を作製した後に、150〜400℃の温度において熱処理を行ない、結晶中の一部に濃度変調を生じさせるとともに、その濃度変調が合金全体の平均組成と比べて、Lnの合計が1原子%以上6原子%以下及び/又はZnが1原子%以上6原子%以下増加させることを特徴とするマグネシウム基合金の製造方法。
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