JP2004086164A - コーナーキューブアレイおよびその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微小で且つ形状精度の高い単位要素を有するマイクロコーナーキューブアレイを作製する。
【解決手段】少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板であって、結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板を用いてコーナーキューブアレイを形成する。この基板の表面を加工して、凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素を所定のパターンで形成する。また、立体形状要素が形成された基板に対して、上述の結晶材料に含まれる元素を含む活性種を供給する。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板であって、結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板を用いてコーナーキューブアレイを形成する。この基板の表面を加工して、凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素を所定のパターンで形成する。また、立体形状要素が形成された基板に対して、上述の結晶材料に含まれる元素を含む活性種を供給する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーナーキューブアレイおよびその作製方法に関し、特に、表示装置などにおいて好適に用いられる微細な構造を持つコーナーキューブアレイの作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロレンズ、マイクロミラー、マイクロプリズムなどの、非常にサイズが小さい光学素子(マイクロ光学素子)の開発が進められており、光通信や表示装置の分野で利用されている。このようなマイクロ光学素子の実現によって、光学技術及びディスプレイ技術の分野が一段と発展・充実することが期待されている。
【0003】
このような光学素子として、立方体の一隅に対応する形状を持ち、互いに直交する3面を有するコーナーキューブを規則的に配列することで得られるコーナーキューブアレイを用いた反射板(コーナーキューブリフレクタ)が知られている。コーナーキューブリフレクタは、入射された光を複数の反射面で反射することによって入射方向にかかわらず光を元の方向に反射させる再帰性反射板の1つである。以下、コーナーキューブアレイの従来の作製方法を説明する。
【0004】
(プレート法)
プレート法では、互いに平行な二平面を持つ平板を複数枚重ねあわせ、この重ね合わせた平板の端面において、平面に対して直角な方向に等しいピッチでV溝を切削し、頂角が約90°の連続する屋根型の突起群を形成する。次に、各々の平板上に形成された屋根型突起群の屋根の頂部が隣接する平板上に形成されたV溝の底部に一致するように各平板を配置させることによってコーナーキューブアレイ用の金型を作製し、これを用いてコーナーキューブアレイを作製する。ただし、この方法では、屋根型の突起が形成された平板を隣接する平板に対して適切な位置関係を有するように精度良く並べ換えて固定する必要があるため、サイズの小さい(例えば100μm以下)コーナーキューブのアレイを作製することは困難である。
【0005】
(ピン結束法)
ピン結束法では、六角柱形状を有する金属のピンの先端に、互いに直交する正方形の3面を有するプリズムを設け、それらを何本も束ねてプリズム集合体を作製する。近接する3つのピンのそれぞれに設けられたプリズムの各1面ずつを用いてコーナーキューブが形成される。ただしこの方法では、別々のピンに形成されたプリズムを集めてコーナーキューブを形成するため、サイズの小さいコーナーキューブを作製することは実際には困難である。この方法を用いて作製できるコーナーキューブの寸法は1mm程度が限界である。
【0006】
(三角プリズム法)
三角プリズム法では、金属等の平板の表面に三方向からV溝を切削することによって三角錐状の複数の突起を形成し、これを型として用いてプリズム集合体を形成する。ただし、この方法では、形成可能なプリズム形状が三角錐状のプリズムに限定される。
【0007】
また、特許文献1には、光化学的な手法を用いてコーナーキューブアレイを作製する方法が記載されている。この方法では、複数の正三角形の透過領域を有するマスクを用いてフォトレジストのパターニングを行なうが、マスクの各透過領域の透過率は、透過領域の中心部から周辺部に向かって次第に減少している。このマスクを用いて露光および現像を行なうことによって、複数の三角錐状のフォトレジストが基板上に形成される。このフォトレジストが形成された基板に対して所定の方法でエッチングを行なうことによって、基板上にはフォトレジストの形状と同様の突起が形成される。これによりコーナーキューブを作製することが可能である。
【0008】
さらに、非特許文献1には、互いに直交する正方形の3面からなる立方体型のコーナーキューブを微細なサイズで作製する技術が記載されている。この文献によれば、シリコン基板の(111)面上に、結晶成長を制御するための酸化膜を局所的に配置し、この基板上で結晶をエピタキシャル成長させることによって、微細なコーナーキューブアレイを作製することが可能である。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−205322号公報
【非特許文献1】
Applied Optics Vol.35, No19 pp3466‐3470”Precision crystal corner cubearrays for optical gratings formed by (100) silicon planes with selective epitaxial growth”
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このようなコーナーキューブリフレクタは、液晶ディスプレイなどの表示装置において用いられ、例えば米国特許第5,182,663号においてコーナーキューブリフレクタを備える液晶表示装置が記載されている。ただし、表示装置に用いる場合、コーナーキューブのサイズは非常小さい(例えば100μm以下)ことが要求される。これは、コーナーキューブ(単位要素)のサイズが表示装置の画素よりも大きいと、再帰反射された光が所望でない画素を通過するおそれがあり、これによって混色の問題などが発生するからである。
【0011】
しかしながら、上述のプレート法、ピン結束法などのような機械的にコーナーキューブを作製する方法では、このような微細なコーナーキューブを形成することは製造工程上困難である。また、上述のような方法を用いてコーナーキューブリフレクタを作製した場合、各反射面の鏡面性が低くなり、反射面の交差部におけるコーナー曲率(R)が大きくなるため、再帰反射させる効率が低くなるという問題も生じる。また、上記の三角プリズム法では、凹部と凸部とを含む立体形状を有する直交する正方形3面から構成される立方体型のコーナーキューブを作製することができない。
【0012】
また、特許文献1に記載されているような光化学的な手法を用いて作製されたマイクロコーナーキューブは、面精度(平面性)を高くすることが困難である。上記手法では、マイクロコーナーキューブの側面の面精度は、基板上に形成する三角錐状のフォトレジストの面精度に依存し、このフォトレジストの面精度を高めるには、マスクの透過率または遮光率の変化率を均一にするなどして、フォトレジストの露光・現像プロセスを厳密に制御する必要がある。しかし、このようなことは実際には困難である。
【0013】
また、シリコンの選択成長を利用した非特許文献1に記載されている手法では、結晶の側方成長を制御することが難しい。また、コーナーキューブのパターンを決定するためにシリコン基板上にはシリコン酸化膜が設けられるが、このシリコン酸化膜と成長させる膜との端面での歪みの影響が大きい。このようなことから、良好な形状を持つマイクロコーナーキューブアレイを作製することは困難である。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、微細で且つ形状精度が高いコーナーキューブアレイおよびその製造方法を提供することをその目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明によるコーナーキューブアレイの作製方法は、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板であって、前記結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板を用意する工程と、前記基板の前記表面を加工して、凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素を所定のパターンで形成する工程と、前記立体形状要素が形成された前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含む活性種を供給する工程とを包含する。
【0016】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素のパターンに対応するパターンで、コーナーキューブの単位要素が形成される。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素を形成する工程は、前記基板の前記表面に対して異方性のエッチング処理を行なう工程を包含する。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記異方性のエッチング処理は、ウェットエッチングを含む。
【0019】
ある好ましい実施形態において、前記異方性のエッチング処理を行なう工程の前に、前記基板の前記表面上にエッチングマスク層を設ける工程をさらに包含し、前記エッチングマスク層のパターンに応じて、コーナーキューブの単位要素のサイズが制御される。なお、ある好ましい実施形態において、前記エッチングマスク層は、それぞれの重心位置が略ハニカム格子点上に位置する複数の前記マスク部を有する。
【0020】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素は前記結晶材料から構成されている。
【0021】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素は、前記結晶材料の{100}面によって規定される面を有する。
【0022】
ある好ましい実施形態において、結晶材料は、閃亜鉛構造またはダイヤモンド構造をとる。
【0023】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程は、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なう工程を包含する。
【0024】
ある好ましい実施形態において、前記結晶成長によって、前記結晶材料の{100}面によって規定される面を有するコーナーキューブの単位要素が形成される。
【0025】
ある好ましい実施形態において、前記結晶材料はガリウム砒素であり、前記結晶成長は、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方を原料とする気相成長法によって行なわれる。
【0026】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程は、前記活性種と、前記基板をエッチングすることが可能な種との混合物を前記基板に供給する工程を包含する。
【0027】
ある好ましい実施形態において、前記結晶材料はガリウム砒素であり、前記活性種を供給する工程は、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方、および、ハロゲンまたはハロゲン化合物を前記基板に対して供給する気相加工法によって行なわれる。
【0028】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程によって、互いに直交する3つの前記{100}面によって規定される3面を持つコーナーキューブの単位要素が形成される。
【0029】
ある好ましい実施形態において、前記3面は、互いに直交する略正方形の3面である。
【0030】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程によって前記基板に形成されたコーナーキューブアレイ形状を、他の材料に転写する工程をさらに包含する。
【0031】
本発明による他のコーナーキューブアレイの作製方法は、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなり、前記結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板であって、前記表面に、所定のパターンを有する凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素が設けられている基板を用意する工程と、前記立体形状要素が形成された前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含む第1活性種を供給することによって、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行う工程と前記基板の露出表面の形状を調整する工程とを包含する。
【0032】
ある好ましい実施形態において、前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板の前記露出表面のうち前記結晶材料の{100}面以外の不要な結晶面を減少させる工程である。
【0033】
ある好ましい実施形態において、前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板に対して第1の加工処理を行う工程と、前記基板に対して前記第1の加工処理と異なる第2の加工処理を行う工程とを含み、前記第1の加工処理を行う工程は、前記基板の前記露出表面のうち第1部分に生じた前記不要な結晶面を減少させるとともに、前記基板の前記露出表面のうち前記第1部分と異なる第2部分に前記不要な結晶面を生じ、前記第2の加工処理を行う工程は、前記第2部分に生じた前記不要な結晶面を減少させるとともに、前記第1部分に前記不要な結晶面を生じる。
【0034】
好ましくは、前記不要な結晶面が減少して再帰反射率が95%以上になるまで、前記第1の加工処理と前記第2の加工処理とを交互に行う。
【0035】
前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程を含んでもよい。
【0036】
前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第2活性種を供給することによって、異方性の結晶成長を行なう工程を含んでもよい。
【0037】
前記第1の加工処理を行う工程は、前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程を含み、前記第2の加工処理を行う工程は、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第2活性種を供給することによって、異方性の結晶成長を行なう工程を含んでもよい。
【0038】
前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程は、異方性のエッチングによって行うことが好ましい。
【0039】
前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第3活性種と、前記基板をエッチングすることが可能な種との混合物を供給する工程を含んでもよい。
【0040】
前記混合物を供給する工程では、前記基板の前記露出表面に対して、異方性のエッチングを行うとともに異方性の結晶成長を行うことができる。
【0041】
前記基板の前記露出表面の形状を調整する工程は、前記結晶材料の面方位に依存してエッチングまたは結晶成長を行う工程を含むことが好ましい。
【0042】
あるいは、本発明のコーナーキューブアレイは、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板に形成されたコーナーキューブアレイであって、前記結晶材料の{111}面において所定のパターンで形成された凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状単位要素と、前記立体形状要素上に成長させられた結晶層であって、前記結晶材料に含まれる元素を含む活性種を用いて、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なうことによって形成された結晶層とを有する。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明によるコーナーキューブアレイの作製方法では、閃亜鉛構造を有する化合物半導体やダイヤモンド構造を有する結晶材料から形成した基板などの、立方晶系の結晶材料からなる単結晶基板(以下、「立方晶単結晶基板」と呼ぶ場合もある)を用いてコーナーキューブアレイを作製する。なお、本明細書において「結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板」は、結晶材料の{111}面に対して平行な表面を有する基板だけでなく、0°〜10°傾いた表面を有する基板を含むものとする。また、本明細書において、立方晶単結晶基板は、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板であればよく、非晶質や多結晶の材料からなる支持基板の上に単結晶層を有する基板を含むものとする。また、平板状のものだけでなく、平坦な表面を含む限り種々の立体形状を有し得る。
【0044】
より具体的には、表面が結晶材料の{111}面と実質的に平行に配置されている立方晶単結晶基板を用意し、この基板の表面において所定のパターンで配列される凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせ(立体形状要素)を形成する。その後、このように凹部や凸部が形成された基板に対して、上記の立方晶系の結晶材料(以下、基板材料ともいう)に含まれる元素を含む活性種を基板に対して供給することによってコーナーキューブアレイを作製する。なお、立方晶系の結晶材料に含まれる活性種を基板に対して供給するという場合、典型的には、結晶材料に含まれる元素と同じ元素を含むガスや液体などを基板に接触させることを言う。例えば、基板がガリウム砒素単結晶基板の場合に、上述の活性種は、トリメチルガリウムや、AsCl3であり得る。
【0045】
この活性種を供給する工程は、例えば、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なう工程を包含する。この場合、供給された活性種によって所定の結晶面が選択的に成長され得るが、このとき、基板に形成された立体形状要素の形状や配列パターンによって結晶成長が生じる場所などが規制され得る。従って、立体形状要素を適切なパターンや形状で形成しておけば、成長した結晶の所定の結晶面によって構成される、所望の形状およびパターンを有する凹凸が設けられた基板を得ることが可能である。このような方法を利用することによって、所定の結晶面で構成された凹凸からなるコーナーキューブアレイを基板上に作製することができる。
【0046】
得られたコーナーキューブアレイは、立方晶系結晶の結晶面に沿う形状を有しており、その形状精度が非常に高い。各コーナーキューブを構成する3面の平面性は良好であり、各面が交わる部分(角部または稜)の形状はシャープである。上記のコーナーキューブアレイは、規則的に配列された複数の凹凸を含む立体形状をとり得るが、各凹凸の頂点の高さレベルが揃っており、これらが略同一の面内に位置する。このようなコーナーキューブアレイを用いることで、再帰反射性の良好な再帰性反射板が得られる。
【0047】
また、本発明の方法によって作製されるコーナーキューブアレイにおける単位要素(1つのコーナーキューブ)のサイズは、基板に形成される立体形状要素の配列ピッチなどを適切に選択することによって制御される。この立体形状要素は、例えば、所定のエッチングマスクを用いてウェットエッチングなどによって形成することが可能であり、その配列ピッチは数十μm以下に設定され得る。この場合、数十μm以下のサイズを有するコーナーキューブのアレイを作製することが可能である。従って、液晶表示装置などに用いられる再帰性反射板として好適に使用される微細なコーナーキューブアレイが得られる。
【0048】
なお、本願出願人と同一の出願人によって、立方晶系の単結晶基板に異方性エッチング処理のみでマイクロコーナーキューブアレイを作製する方法が特願2001−181167号に記載されている。ただしこの方法では、エッチング条件が適切に選択されていないと、コーナーキューブ形状が得られない、または、コーナーキューブを構成する面の歪みが大きくなるという問題が生じる。このため、所望のコーナーキューブアレイを得るために適切なエッチング条件を選択することが必要となるが、このことは比較的容易ではない。
【0049】
これに対し、本発明のように基板に立体形状要素を形成した後に活性種を供給するようにすれば、所望の形状のコーナーキューブアレイを比較的容易に作製することが可能である。
【0050】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、図面を通じて同様の部材には同一の参照符号を付している。
【0051】
(実施形態1)
本実施形態1では、立方晶単結晶基板として、閃亜鉛構造を有するガリウム砒素結晶から形成される基板を用い、この基板にウェットエッチングによって所定のパターンで立体形状要素を形成した後、異方性の結晶成長プロセスを行なうことによって、マイクロコーナーキューブアレイを作製する。
【0052】
図1(a)〜(e)および図2(a)〜(e)は、本実施形態のマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示している。まず、表面が{111}B面と実質的に平行であるガリウム砒素基板1を用意する。なお、ガリウムが形成する{111}面が{111}A面であり、砒素が形成する{111}面が{111}B面である。この基板1の表面は、鏡面に仕上げられる(図1(a)および図2(a))。
【0053】
次に、基板表面上に、スピンコート法によって厚さ約1μmのポジ型フォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層の材料としては例えばOFPR−800(東京応化社製)を用いることができる。このフォトレジスト層を約100度で30分間プリベークした後、フォトレジスト層上にフォトマスクを配置して露光を行う。
【0054】
フォトマスクとしては、図3に示すように、正三角形の遮光領域5aおよび透過領域5bが三角形の辺方向のそれぞれにおいて互いに逆向きに交互に設けられたフォトマスク5を用いることができる。フォトマスク5は、遮光領域5aのパターンである正三角形のいずれかの一辺が、ガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように基板上に配置される。なお、本実施形態では、遮光領域5aのパターンである正三角形の一辺の長さを約10μmにしている。
【0055】
このレジスト層を、現像液(例えば、NMD−32.38%(東京応化社製))を用いて現像することによって、図1(b)または図2(b)に示すように、基板1上にはパターニングされたレジスト膜2が形成される。上述のようなフォトマスク5を用いて形成された略正三角形のレジスト膜2は、その一辺がガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように配置される。すなわち、レジスト膜2の各辺が、結晶の{100}面と平行になるように配置される。なお、本明細書では、レジスト膜2をマスク部と呼ぶことがあり、また、このマスク部と、レジスト層が除去された部分である開口部とを合わせてエッチングマスク層と呼ぶことがある。
【0056】
本実施形態では、このレジスト膜2の配列パターンに応じて、形成されるコーナーキューブのサイズが制御され得る。より具体的には、形成されるコーナーキューブのサイズは、レジスト膜2のピッチP0(ここでは約10μm)と略同等のサイズとなる。
【0057】
なお、エッチングマスク層のパターンは、図2(b)に示すものに限らず、種々のものとすることができる。ただし、コーナーキューブを好適に作製するためには、エッチングマスク層のマスク部(残存するレジスト膜2)における所定の点(例えば重心位置)が、ハニカム格子点上に配列されることが望ましい。ここでハニカム格子点とは、合同な正六角形を隙間なく敷きつめた場合における、各正六角形の頂点と各正六角形の重心点とに対応する点を指す。あるいは、第1の方向に延びる等間隔(所定間隔)の複数の平行線と、上記第1の方向とは60°異なる第2の方向に延びる、等間隔かつ上記所定間隔と同一の間隔の複数の平行線との交点に対応する点を指す。また、エッチングマスク層のマスク部は、好適には、三角形または六角形などの3回の回転対称形状を有している。
【0058】
次に、磁石攪拌器でエッチング液を攪拌させながらウェットエッチング工程を行う(図1(c)および図2(c))。エッチング液としては、例えば、NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液を使用することができ、エッチング温度は約20度とし、エッチング時間は約60秒とすることができる。
【0059】
このエッチング工程において、ガリウム砒素結晶の{100}面((100)面、(010)面、および(001)面)は、他の結晶面に比べてエッチングされにくいため、この{100}面が露出するように異方性のエッチングが進行する。ただし、このエッチング工程では、{111}B面と{100}面とのエッチング速度比R{111}/R{100}が1.7程度であるため、開口部から{111}B面方向にエッチングされる量d1と{100}面方向にエッチングされる量d2とは図4に示すような関係になる。
【0060】
この結果、頂点3aが形成された段階で底面(平坦部)3bが残った立体形状3が形成されることになる。このように、本実施形態では、図1(c)および図2(c)に示すように、立体形状要素として、マスク部2の下に頂点を有する凸部3が基板1に形成される。
【0061】
この凸部3は、互いに直交する3つの{100}面で規定される直角二等辺三角形の面を備えた三角錐形状(すなわち、立方体の一隅に対応する三角錐形状)をなす。また、この凸部3は、ハニカム格子点上に形成され、これらの配列ピッチは、マスク部2のピッチP0と同様になる。
【0062】
なお、上記のウェットエッチング工程によって形成される凹凸形状は、エッチング液の種類や、エッチング時間などのエッチング条件に応じて変化し得る。例えば、上記のエッチング速度比R{111}/R{100}がより大きい場合(例えば、1.8以上の場合)には、図4に示した場合に比べて平坦部3bの面積はより小さくなる。また、上述のような凸部ではなく、凹部または凹部と凸部とを組み合わせた立体形状要素が配列される場合もある。本発明において基板上に形成される立体形状要素は、このように三角錐状凸部以外の形状を有する立体形状要素であり得るが、これらはハニカム格子点上に配列されることが望ましい。
【0063】
次に、上述の異方性のエッチングにより三角錐状の凸部3が所定のパターンで形成された基板1を、アセトンなどの有機溶媒中で超音波洗浄することによって、基板1上に残存しする不要なレジスト膜などを除去する(図1(d)および図2(d))。
【0064】
その後、気相成膜装置を用いて、立体形状要素が形成された基板面において異方性の結晶成長プロセスを行なう。なお、気相成膜装置としては、VPE(気相薄膜成長法)、MBE(分子線薄膜成長法)、MOVPE(有機金属気相薄膜成長法)などのエピタキシャル成長法による薄膜形成のために用いられる公知の装置を利用することができる。気相成膜装置内には、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)およびアルシン(AsH3)が導入される。これらのガスを、例えば、10Torrの減圧環境下、基板を630℃に加熱した状態で100分間流すことによって所望の結晶成長プロセスを実行することができる。
【0065】
この結晶成長プロセスにおいて、ガリウム砒素基板を形成する結晶材料(ガリウムおよび砒素)と同じ元素を含むガスが基板面に接触させられる(すなわち、基板に対して活性種が供給される)が、基板に予め形成されている立体形状要素(凸部3)の影響により、結晶の{111}B面の法線方向には結晶成長が生じず、{100}面の法線方向に沿って選択的にガリウム砒素結晶が成長する。すなわち、トリメチルガリウムガスおよびアルシンに含まれる活性種が底面の{111}B面では反応を生じさせず、側壁をなす{100}面において優先的に成長が起こり、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長が行なわれる。
【0066】
このような結晶成長工程において、所定の結晶面({100}面)が選択的に成長するが、このとき、立体形状要素によって、結晶成長が生じる場所などが決定され得る。このため、上述のように、基板に予め適切な形状の立体形状要素を適切なパターンで形成しておけば、所定の結晶面によって構成されるコーナーキューブのアレイを形成することが可能である。
【0067】
なお、結晶成長を生じさせるために用いられる活性種は、典型的には、基板を構成する結晶材料と同じ元素(本実施形態では、ガリウムまたは砒素)を含むガスとして供給される。このように活性種を含むガスとしては、典型的には、上述のトリメチルガリウムガスやアルシンなどのように、基板を構成する材料と同じ元素を含む分子(ガリウムまたはガリウム化合物と砒素または砒素化合物との少なくとも一方)のガスが用いられる。これは、基板の表面部分を構成する結晶材料と格子整合した結晶を適切に成長させることができるからである。
【0068】
このような異方性の選択的な結晶成長が生じる結果、結晶層4が凸部3上に形成される。これによって、図5(a)および(b)に示すように、成長した結晶の{100}面によって規定される3面S1〜S3を有するコーナーキューブの単位要素10Uがアレイ状に形成され、コーナーキューブアレイ10を得ることができる(図1(e)および図2(e))。コーナーキューブの単位要素10Uを構成する3面S1〜S3は、互いに直交する3つの略正方形の面である。また、このようにして作製されたコーナーキューブアレイ10は、図5(a)および(b)からわかるように凸部10aと凹部10bとが組み合わさった立体形状を有している。このコーナーキューブ単位要素は、上面からみたときには正六角形を示す。
【0069】
また、コーナーキューブの単位要素10Uは、凸部3の配列パターンに対応するパターンで形成される。すなわち、コーナーキューブの単位要素のサイズは、凸部3の配列パターン(配列ピッチ)によって規定され得、これを十数μm程度と非常に小さくすることができる。
【0070】
以上、本実施形態のコーナーキューブアレイの作製方法について説明したが、上記とは異なるエッチングマスク層を用いた場合にもコーナーキューブアレイを作製することができる。例えば、上記には図2(b)に示すように、何れかの辺が結晶の<01−1>方向に平行に配置されたマスク部2を用いてエッチングを行なう形態を説明したが、マスク部2の正三角形のいずれか一辺が、ガリウム砒素結晶の<011>方向に平行となるように配置されたエッチングマスク層を用いてもよい。
【0071】
このようなエッチングマスク層を用いて、上記と同様のウェットエッチング工程を行なった場合(すなわち、エッチング速度比R(111)/R(100)が約1.7の場合)には、底点と頂点とを有した、凹部と凸部とから構成される立体形状要素が形成される。ただし、この場合には、立体形状要素を構成する面に歪みが生じることがある。しかしながら、この基板を上記と同様の条件で気相成膜装置にて結晶成長されれば、{100}面を選択的に成長させることができるため、平坦な{100}の3面からなるコーナーキューブアレイ10を得ることが可能である。
【0072】
以上のようにして作製されたコーナーキューブアレイを再帰性反射板として用いる場合、上記凹凸が形成されたガリウム砒素基板上に、例えば蒸着法などによって、凹凸の表面形状に沿うように略一様な厚さ(例えば200nm)でアルミニウムや銀などの反射性材料の薄膜を形成する。これにより、直交する3つの略正方形の反射面を備える再帰性反射板(コーナーキューブリフレクタ)を作製することができる。作製されたコーナーキューブリフレクタは、例えば、反射型液晶表示装置(例えば、高分子分散型液晶表示装置(米国特許第5,182.663号に記載)や、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどにおいて好適に用いられ得る。
【0073】
なお、コーナーキューブアレイ10が形成された基板1から、電鋳法などによってコーナーキューブアレイの金型を作製してもよい。このようにして形成された金型を用いて、ローラなどを用いて樹脂材料などに基板1の表面形状を転写するようにすれば、コーナーキューブアレイを量産することが可能である。
【0074】
なお、以上にはガリウム砒素単結晶基板を用いる例を説明したが、InP、InAs、ZnS、GaPなどの他の閃亜鉛構造をとる化合物から形成される単結晶基板を用いることも可能である。さらに、ゲルマニウム結晶などのダイヤモンド構造を有する単結晶基板を用いることも可能である。
【0075】
(実施形態2)
本実施形態2では、ガリウム砒素基板にウェットエッチングによって所定のパターンで立体形状要素(凸部)を形成した後、基板を構成する結晶材料に含まれる元素と同じ元素を含む活性種を基板に供給しながらドライエッチングを行なうことによって、マイクロコーナーキューブアレイを作製する。
【0076】
図6(a)〜(e)および図7(a)〜(e)は、本実施形態のマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示している。まず、実施形態1と同様に、表面が{111}B面と実質的に平行であるガリウム砒素基板21を用意し、この表面を、鏡面に仕上げる(図6(a)および図7(a))。
【0077】
次に、実施形態1と同様に、基板21上にスピンコート法によって厚さ約1μmのフォトレジスト層を形成した後、図3に示すフォトマスク5を用いて、露光工程および現像工程を行う。ただし、フォトマスク5は、遮光領域5aのパターンである正三角形のいずれかの一辺がガリウム砒素結晶の<011>方向と平行になるように基板上に配置される。これによって、図6(b)または図7(b)に示すように、その一辺がガリウム砒素結晶の<011>方向と平行な略正三角形のレジスト膜(マスク部)22のパターンが基板上に形成される。なお、本実施形態においても、マスク部22の正三角形の一辺の長さを約10μmにしている。
【0078】
次に、磁石攪拌器でエッチング液を攪拌させながらウェットエッチング工程を行う(図6(c)および図7(c))。エッチング液としては、例えば、NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液を使用することができ、エッチング温度は約20度とし、エッチング時間は約60秒とすることができる。
【0079】
このエッチング工程において、ガリウム砒素単結晶の{100}面((100)面、(010)面、および(001)面)は、他の結晶面に比べてエッチングされにくいため、この{100}面が露出するように異方性のエッチングが進行する。ただしこのエッチング工程では、マスク部22の辺を<011>方向と平行に設けているために、底点と頂点とを有した、凹部と凸部とから構成される立体形状要素が形成される。また、形成される面に歪みが生じる。このようにして、図6(c)および図7(c)に示すような、コーナーキューブアレイ形状に類似した丸みを帯びた立体形状23が基板に形成される。
【0080】
この立体形状23を有する基板1を、アセトンなどの有機溶媒中で約10分間超音波洗浄することによって、基板1上に残存する不要なレジスト膜などを除去する(図6(d)および図7(d))。次に、レジスト膜が除去された基板1に対して、エタノール置換を行ない、純水流水洗浄を約10分間行った後、これを気相加工装置内に収容する。なお、気相加工装置としては、例えば、公知のドライエッチング装置を利用することができる。
【0081】
気相加工装置において、装置内を10−8Torrのオーダーまで排気し、減圧環境下で基板1を約600℃に加熱した後、エッチングガスと、基板と同じ元素を含む付加的なガス(活性種)とを約60分間流す。このようにして、エッチングガスと付加的なガスとを同時に基板に接触させるようなドライエッチング工程を行なう。本実施形態では、エッチングガスとして三塩化砒素ガスが用いられており、付加的なガスとしてトリメチルガリウムが用いられている。
【0082】
このドライエッチング工程では、使用するエッチングガスが基板表面と化学的に反応するが、基板における結晶面のそれぞれに対するエッチングガスの反応性が異なることで、エッチング速度も各結晶面でそれぞれ異なる。これによって、結晶の{100}面が残るように異方性のドライエッチングが進行する。また、エッチングガスと同時に、基板の表面部分を構成する結晶材料に含まれる元素を含む活性種(付加的なガス)を基板に供給しているので、{100}面の形成が促進され、より平坦な面を形成することができる。
【0083】
なお、本実施形態で使用される活性種を含む付加的なガスおよびエッチングガスは上記のものに限られない。この付加的なガスとしては、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方を含むガスが用いられ得る。また、エッチングガスとしては、ハロゲンまたはハロゲン化合物を含むガスが好適に用いられ得る。
【0084】
また、エッチングガスとしては、エッチングガスと基板とが反応してできた生成物の蒸気圧が高く、生成物が気体になるようなガスを用いることが望ましい。これらの理由から、上述の三塩化砒素ガスのようなハロゲン化合物ガスなどがエッチングガスとして好適に用いられる。なお、上記の条件を満たすガスとしては他に水素ガスも挙げられる。
【0085】
なお、ハロゲン化合物をエッチングガスとして用いてガリウム砒素基板をエッチングする手法自体は従来から知られている。例えば、塩化水素を用いた方法はSurface Science 312,181 (1994)に記載されており、三塩化水素を用いた方法はJournal of Crystal Growth 164,97 (1994)に記載されている。また、三臭化砒素をエッチングガスとして用いてガリウム砒素基板をエッチングする方法が、特開平8−321483号公報に記載されている。これらには、ハロゲン化合物をエッチャントとして用いれば、非常に高い加工性度でエッチングが行なわれることが記載されている。本実施形態では、このような精度の高いエッチング方法をマイクロコーナーキューブアレイの作製に利用することで、非常に再帰率の高い反射板を作製することを可能にしている。
【0086】
このように、本実施形態では、結晶の{100}面が残るようにエッチングが進行するが、上述のような活性種を含むガスを供給することによって、結晶成長とエッチングとの両プロセスが適切に行われ、{100}面が好適に形成される。その結果、3つの{100}面からなるコーナーキューブ単位要素からなるコーナーキューブアレイ30が作製される。このようにして形成されたコーナーキューブアレイ30は、図5に示した実施形態1のコーナーキューブアレイ10と同様の形状を有する。
【0087】
なお、本実施形態においても、実施形態1と同様に、コーナーキューブアレイ10が形成された基板1から、電鋳法などによってコーナーキューブアレイの金型を作製し、ローラなどを用いて樹脂材料などに基板1の表面形状を転写することでコーナーキューブアレイを作製してもよい。
【0088】
また、基板として、InP、InAs、ZnS、GaPなどの他の閃亜鉛構造をとる化合物から形成される単結晶基板を用いることも可能である。さらに、ゲルマニウム結晶などのダイヤモンド構造を有する単結晶基板を用いることも可能である。
【0089】
(実施形態3)
上記実施形態では、第1活性種を供給する工程において、立体形状要素を有する基板に対して異方性の結晶成長を行うことにより、{100}面によって規定されている3つの結晶面を有するコーナーキューブ単位要素を形成しているが、異方性の結晶成長工程を行うだけでは、基板の露出表面に[100]面以外の結晶面が残ってしまう可能性もある。
【0090】
例えば、上記実施形態における第1活性種を供給する工程では、各単位要素の頂点部に[100]面以外の不要な面が残存しやすい。この不要な面の割合を減少させようと、基板表面にエッチング処置などの加工を施しても、その加工によって、頂点部以外の部分にさらに不要な面が発生する可能性が高いので、不要な面の割合を許容範囲内に減少させることは困難である。
【0091】
そこで、このような[100]面以外の不要な面の割合を低減するために、本実施形態では、第1活性種を供給する工程の後に、基板表面に対して2以上の異なる加工処理を行うことによって、上記不要な面の割合を許容範囲内に抑える。すなわち、基板表面のある部分(部分A)にある不要な面を低減させるが、基板表面の他の部分(部分B)に不要な面を生じる加工処理と、基板表面の部分Bにある不要な面を低減させるが、基板表面の部分Aに不要な面を生じる他の加工処理とを繰り返し行うことによって、基板表面全体における不要な面の割合を徐々に減少させる。
【0092】
以下に、図8(a)〜(i)および図9(a)〜(i)を参照して、本実施形態のコーナーキューブアレイの作製方法を説明する。図8(a)〜(i)は、各工程における基板表面の平面図であり、図9(a)〜(i)は、図8(a)〜(i)のそれぞれの工程における、基板の表面部分を模式的に示すA−A’断面図である。A−A’線は図8(i)にのみ示しており、他の図については省略している。
【0093】
本実施形態では、立方晶単結晶基板として、例えば閃亜鉛構造を有するガリウム砒素結晶から形成される基板1を用いる(図8(a))。基板1の表面は、[111}B面と実質的に平行である。この基板1の表面は、図9(a)に示すように、鏡面に仕上げられる。
【0094】
次に、基板表面上に、スピンコート法によって厚さ約1μmのポジ型フォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層の材料としては例えばOFPR−800(東京応化社製)を用いることができる。このフォトレジスト層を約100度で30分間プリベークした後、フォトレジスト層上にフォトマスクを配置して露光を行う。
【0095】
フォトマスクとしては、図3に示すような、実施形態1で用いたマスクと同様のフォトマスク5を用いることができる。フォトマスク5は、遮光領域5aのパターンである正三角形のいずれかの一辺が、ガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように基板上に配置される。なお、本実施形態では、遮光領域5aのパターンである正三角形の一辺の長さを約10μmにしている。
【0096】
このレジスト層を、現像液(例えば、NMD−32.38%(東京応化社製))を用いて現像することによって、図8(b)および図9(b)に示すように、基板1上にはパターニングされたレジスト膜2が形成される。上述のようなフォトマスク5を用いて形成された略正三角形のレジスト膜2は、その一辺がガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように配置される。すなわち、レジスト膜2の各辺が、結晶の{100}面と平行になるように配置される。
【0097】
本実施形態では、このレジスト膜2の配列パターンに応じて、形成されるコーナーキューブのサイズが制御され得る。より具体的には、形成されるコーナーキューブのサイズは、レジスト膜2のピッチP0(ここでは約10μm)と略同等のサイズとなる。
【0098】
なお、エッチングマスク層のパターンは、図8(b)に示すものに限らず、種々のものとすることができる。ただし、コーナーキューブを好適に作製するためには、エッチングマスク層のマスク部(残存するレジスト膜2)における所定の点(例えば重心位置)が、ハニカム格子点上に配列されることが望ましい。ここでハニカム格子点とは、合同な正六角形を隙間なく敷きつめた場合における、各正六角形の頂点と各正六角形の重心点とに対応する点を指す。あるいは、第1の方向に延びる等間隔(所定間隔)の複数の平行線と、上記第1の方向とは60°異なる第2の方向に延びる、等間隔かつ上記所定間隔と同一の間隔の複数の平行線との交点に対応する点を指す。また、エッチングマスク層のマスク部は、好適には、三角形または六角形などの3回の回転対称形状を有している。
【0099】
次に、磁石攪拌器でエッチング液を攪拌させながらウェットエッチング工程を行う(図8(c))。エッチング液としては、例えば、NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液を使用することができる。この場合、エッチング温度は約20度とし、エッチング時間は約60秒とすることができる。
【0100】
このエッチング工程において、ガリウム砒素結晶の{100}面((100)面、(010)面、および(001)面)は、他の結晶面に比べてエッチングされにくいため、{100}面が露出するように異方性のエッチングが進行する。ただし、このエッチング工程では、実施形態1で説明したように、開口部から{111}B面方向にエッチングされる量d1と{100}面方向にエッチングされる量d2とは図4に示すような関係になる。
【0101】
この結果、頂点3aが形成された段階で底面(平坦部)3bが残った立体形状3が形成されることになる。このように、本実施形態では、図9(c)に示すように、立体形状要素として、マスク部2の下に頂点を有する凸部3が基板1に形成される。
【0102】
凸部3は、互いに直交する3つの{100}面で規定される直角二等辺三角形の面を備えた三角錐形状(すなわち、立方体の一隅に対応する三角錐形状)を有する。また、この凸部3は、ハニカム格子点上に形成され、これらの配列ピッチは、マスク部2のピッチP0と同様になる。
【0103】
なお、上記のウェットエッチング工程によって形成される凹凸形状は、エッチング液の種類や、エッチング時間などのエッチング条件に応じて変化し得る。例えば、上記のエッチング速度比R{111}/R{100}がより大きい場合(例えば、1.8以上の場合)には、図4に示した場合に比べて平坦部3bの面積はより小さくなる。また、上述のような凸部ではなく、凹部または凹部と凸部とを組み合わせた立体形状要素が配列される場合もある。本発明において基板上に形成される立体形状要素は、このように三角錐状凸部以外の形状を有する立体形状要素であり得るが、これらはハニカム格子点上に配列されることが望ましい。
【0104】
次に、上述の異方性のエッチングにより三角錐状の凸部3が所定のパターンで形成された基板1を、アセトンなどの有機溶媒中で超音波洗浄することによって、基板1上に残存する不要なレジスト膜などを除去する(図8(d)および図9(d))。
【0105】
その後、気相成膜装置を用いて、立体形状要素が形成された基板面において異方性の結晶成長プロセスを行なう。なお、気相成膜装置としては、VPE(気相薄膜成長法)、MBE(分子線薄膜成長法)、MOVPE(有機金属気相薄膜成長法)などのエピタキシャル成長法による薄膜形成のために用いられる公知の装置を利用することができる。気相成膜装置内には、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)およびアルシン(AsH3)が導入される。これらのガスを、例えば、10Torrの減圧環境下、基板を630℃に加熱した状態で100分間流すことによって所望の結晶成長プロセスを実行することができる。
【0106】
結晶成長を生じさせるために用いられる活性種は、典型的には、基板を構成する結晶材料と同じ元素(本実施形態では、ガリウムまたは砒素)を含むガスとして供給される。このように活性種を含むガスとしては、典型的には、上述のトリメチルガリウムガスやアルシンなどのように、基板を構成する材料と同じ元素を含む分子(ガリウムまたはガリウム化合物と砒素または砒素化合物との少なくとも一方)のガスが用いられる。これは、基板の表面部分を構成する結晶材料と格子整合した結晶を適切に成長させることができるからである。
【0107】
この結晶成長プロセスでは、ガリウム砒素基板を形成する結晶材料(ガリウムおよび砒素)と同じ元素を含むガスを基板面に接触させる(すなわち、基板に対して活性種を供給する)が、基板に予め形成されている立体形状要素(凸部3)の影響により、結晶の{111}B面の法線方向には結晶成長が生じず、{100}面の法線方向に沿って選択的にガリウム砒素結晶が成長する。すなわち、トリメチルガリウムガスおよびアルシンに含まれる活性種が底面の{111}B面では反応を生じさせず、側壁をなす{100}面において優先的に成長が起こり、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長が行なわれる。
【0108】
この結晶成長工程において、所定の結晶面({100}面)が選択的に形成され、このとき、基板に予め形成された立体形状要素によって、結晶成長が生じる場所などが決定され得る。その結果、図8(e)に示すように、基板表面は、主に[100]結晶面で構成された単位要素のアレイ(以下、「初期単位要素アレイ」と呼ぶことがある)を形成する。初期単位要素アレイでは、各凸部のエッジ(稜線部11)に沿って、[100]面以外の結晶面が露出している。
【0109】
図9(e)は、稜線部11を含む基板の断面図である。図9(e)に示すように、エッチングによって得られた凸部3上に結晶層4が形成され、結晶層4の表面の一部が稜線部11を構成している。稜線部11は、典型的には、各凸部の頂点付近に生じる三角状の[111]B面と、頂点から各エッジに沿って生じる[110]面とを含んでいる。このような稜線部11は、結晶層4を形成するときに、(110)方向の成長速度が遅いために生じる。また、生じた稜線部11は、同じ条件で結晶成長を続けると拡大する。
【0110】
稜線部11を取り除くために、図8(f)および図9(f)に示すように、図8(b)と同様の手順で、結晶層4の各凸部の頂点をカバーするレジストマスク12を形成する。このとき、マスク12の面積は、図8(f)で用いたマスク2の面積よりも小さくすることが好ましい。
【0111】
次いで、異方性ウェットエッチングを行う(図8(g))。エッチング液として、例えば図8(c)で用いたものと同様のエッチング液(NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液)を用いることができる。また、エッチング温度は約20℃、エッチング時間は約20秒とすることができる。エッチング時間は、図8(c)のエッチング時間よりも短くなるように設定することが好ましい。このエッチングによって、基板の露出表面は、図9(g)に示す断面形状を有する。すなわち、稜線部11の面積は減少するが、エッチャントの(111)B/(100)が1.7程度であるために、基板の各凹部に三角形状に[100]面以外の結晶面が露出する(三角形領域13)。典型的には、この三角形領域13の面積は、図8(c)の各凹部に形成される三角形領域の面積より小さくなる。その後、図8(d)と同様の工程で、基板1上に残存する不要なレジスト膜などを除去する(図8(h)、図9(h))。
【0112】
次に、この基板1に対して、図8(e)と同様の方法で結晶成長を行う。例えばトリメチルガリウム(Ga(CH3)3)およびアルシン(AsH3)を、10Torrの減圧環境下、基板を630℃に加熱した状態で20分間流すことによって所望の結晶成長プロセスを実行することができる(図8(i))。なお、この処理時間(例えば20分間)は、図8(e)における処理時間より短いことが好ましい。この結晶成長によって、図9(j)に示すように、凹部に不要な結晶面(三角形領域13)がなくなるとともに、凸部に図8(e)の稜線部11よりも面積の小さい稜線部(図示せず)が生じる。この稜線部の面積が所定の割合以下の場合、良好なコーナーキューブアレイ10が完成する。一方、稜線部の面積が所定の割合より大きい場合は、図8(f)および図8(h)のエッチング工程と、図8(i)の成長工程とを繰り返す。繰り返す回数は必要に応じて選択できる。好ましくは、稜線部の面積が所定の割合以下(すなわち許容範囲内)となるまで上記工程を交互に行うとよい。例えば、コーナーキューブアレイ10の再帰反射率が95%以上となるまで、上記工程を繰り返す。コーナーキューブアレイ10の再帰性反射率(=反射光強度/入射光強度(%))は、既存の装置を用いて測定できる。
【0113】
これにより、各単位要素の凸部における不要な結晶面(稜線部)の割合が極めて小さく、かつ凹部に不要な結晶面(三角形領域)が存在しない、形状精度が高いコーナーキューブアレイ10が得られる。
【0114】
コーナーキューブアレイ10の形状は、図5(a)および(b)を参照して実施形態1で説明した形状と基本的には同様である。すなわち、成長した結晶の{100}面によって規定される3面S1〜S3を有するコーナーキューブの単位要素10Uがアレイ状に形成されている。コーナーキューブの単位要素10Uを構成する3面S1〜S3は、互いに直交する3つの略正方形の面である。また、このようにして作製されたコーナーキューブアレイ10は、凸部10aと凹部10bとが組み合わされた立体形状を有している。このコーナーキューブ単位要素は、上面からみたときには正六角形を示す。
【0115】
また、コーナーキューブの単位要素10Uは、凸部3の配列パターンに対応するパターンで形成される。すなわち、コーナーキューブの単位要素のサイズは、凸部3の配列パターン(配列ピッチ)によって規定され得、これを十数μm程度と非常に小さくすることができる。
【0116】
上述したように、本実施形態のマイクロコーナーキューブの作製方法では、異方性の結晶成長プロセスによって、基板上に、主に[100]面から構成される初期単位要素アレイを形成した後、2以上の異なる加工処理を行うことによって、初期単位要素アレイの形状を調整することができる。すなわち、ウェットエッチング(第1の加工処理)を行うことによって、異方性の結晶成長プロセスで生じた不要な結晶面を減少させ、次いで、結晶成長(第2の加工処理)を行うことによって、第1の加工処理であるウェットエッチングで発生した不要な結晶面を減少させる。その後、必要に応じて、上記第1および第2の加工処理を交互に繰り返すことにより、初期単位要素アレイに含まれる[110]面以外の不要な結晶面の割合を低減できる。その結果、より形状精度が高いコーナーキューブアレイを作製することができる。
【0117】
なお、本実施形態では、ウェットエッチングにより基板1上に立体形状要素パターンを形成した後に異方性の結晶成長を行うことによって、基板上に初期単位要素アレイを形成しているが、初期単位要素アレイの形成方法はこれに限定されない。例えば、非特許文献1に記載されているように、SiO2パッドを用いて基板上に立体形状要素パターンを形成した後に結晶成長を行うことによって、初期単位要素アレイを形成することもできる。その後、初期単位要素アレイが形成された基板1の表面に対して、本実施形態で行ったように異なる2つの加工処理を繰り返すことによって、初期単位要素アレイの各単位要素に含まれる[100]面以外の結晶面を減少させることもできる。
【0118】
また、[100]面以外の結晶面を減少するために行う2つの加工処理は、前述したような相補的な関係にある複数の異なる加工処理であればよく、上記に限定されない。さらに、各加工処理後に不要な結晶面が形成される位置も、上記に限定されない。
【0119】
図10(a)〜(d)は、2つの加工処理の繰り返しによって、初期単位要素アレイに含まれる不要な結晶面の割合を減少させる他の例を示す模式的な断面図である。
【0120】
まず、図8(a)〜(d)を参照して説明した方法と同様の方法でウェットエッチングした後、マスク(レジスト膜)を除去する。この後、図8(e)を参照して説明した方法と同様の方法で結晶成長を行うと、初期単位要素アレイが形成される。初期単位要素アレイが形成された基板の表面部分の断面図を図10(a)に示す。この基板の表面のうち稜線部11(幅:例えば2.2μm)を構成する面以外は[100]面である。
【0121】
初期単位要素アレイが形成された基板1に対してマスク20を用いてウェットエッチングを行うと、稜線部11を構成する不要な結晶面はなくなるが、基板1の各底点21を構成する面の底部に反り22を生じる(図10(b))。反り22は、{100}面をテラスとする原子レベルの多数の段差が形成された領域であり、巨視的には{100}面から傾斜した面を形成している。その後、マスク20を除去する。
【0122】
次いで、図8(e)で行った方法と同様の方法で結晶成長を行う。成長時間は図8(e)における成長時間よりも短いことが好ましい。この成長工程によって、基板1の表面に生じていた反り22はなくなるが、各凸部を構成するエッジには稜線部11(幅:例えば1.5μnm)が生じる(図10(c))。稜線部11の面積は、図10(a)における稜線部11の面積よりも小さい。その後、図10(a)のマスクよりも面積の小さいマスク20’を用いてさらなるウェットエッチング工程を行うと、図10(d)に示すように、各底点を構成する面に反り22は生じるが、その面積は図10(b)における反り22の面積よりも小さくなる。このように、成長工程とエッチング工程とを繰り返すことにより、稜線部11や反り22を構成する不要な結晶面の面積は減少する。その結果、良好な再帰反射率を示すコーナーキューブアレイ10が得られる。
【0123】
本実施形態によれば、2以上の加工処理の繰り返しによって、[100]面以外の結晶面(不要な結晶面)の合計面積が低減されたコーナーキューブアレイ10を作製できる。しかしながら、作製されたコーナーキューブアレイ10には、許容範囲内ではあるが、若干の不要な結晶面が残っている。残っている不要な面の位置、面積、形状などは、加工処理の種類、条件、繰り返す回数などによって異なる。例えば、上記2以上の加工処理のうち、どの加工処理を最後に行うかによって、作製されたコーナーキューブアレイ10の不要な面の形状や位置が異なる。以下にその具体例を説明する。
【0124】
図8および図10を参照して説明した作製方法では、不要な結晶面の合計面積を低減するために、エッチング工程と結晶成長工程とを繰り返している。図8の作製方法によれば、この繰り返しをエッチング工程で終了すると、得られたコーナーキューブアレイ10は各凹部に三角形状の不要な面(三角形領域)を有する。この三角形領域の面積は、図8(g)に示す三角形領域13の面積よりも小さい。同様にして、図10の作製方法では、加工処理の繰り返しをエッチング工程で終了すると、得られたコーナーキューブアレイ10は、底部に不要な面を含む反りを有する。この反りが生じている面積は、図11(b)に示す反り22の面積よりも小さい。一方、図8および図10のいずれの作製方法によっても、加工工程の繰り返しを結晶成長工程で終了すると、得られた各コーナーキューブアレイ10は、各頂点部に不要な面から構成される稜線部を有する。稜線部の面積は、図8(e)または図11(a)に示す稜線部11の面積よりも小さい。
【0125】
高い再帰性反射率を実現するためには、コーナーキューブ形状の底部(凹部)に正確な面形状を有することが望ましい。そのため、加工処理の繰り返しをエッチング工程で終了する場合には、コーナーキューブアレイ10の形状を1回若しくは奇数回転写することにより、底部に不要な結晶面を有さないコーナーキューブアレイ形状を得ることができる。また、加工処理の繰り返しを結晶工程で終了する場合には、底部に不要な結晶面が残らないので、GaAs基板などに形成されたコーナーキューブアレイ10自体が高い再帰性反射率を示す。または、コーナーキューブアレイ10の形状を偶数回転写することにより、再帰性反射率の高いコーナーキューブアレイ形状が得られる。
【0126】
このように、本実施形態では、作製方法によりコーナーキューブアレイ10の不要な結晶面の位置を制御できるので、コーナーキューブアレイ10の形状を用いて、転写の有無や転写の回数を適宜選択することにより、再帰反射性に優れたコーナーキューブアレイ形状を有する再帰性反射板を構成できる。
【0127】
以上、本実施形態のコーナーキューブアレイの作製方法について説明したが、上記とは異なるエッチングマスク層を用いた場合にもコーナーキューブアレイを作製することができる。例えば、上記には図8(b)に示すように、何れかの辺が結晶の<01−1>方向に平行に配置されたマスク部2を用いてエッチングを行なう形態を説明したが、マスク部2の正三角形のいずれか一辺が、ガリウム砒素結晶の<011>方向に平行となるように配置されたエッチングマスク層を用いてもよい。
【0128】
以上のようにして作製されたコーナーキューブアレイを再帰性反射板として用いる場合、上記凹凸が形成されたガリウム砒素基板上に、例えば蒸着法などによって、凹凸の表面形状に沿うように略一様な厚さ(例えば200nm)でアルミニウムや銀などの反射性材料の薄膜を形成する。これにより、直交する3つの略正方形の反射面を備える再帰性反射板(コーナーキューブリフレクタ)を作製することができる。作製されたコーナーキューブリフレクタは、例えば、反射型液晶表示装置(例えば、高分子分散型液晶表示装置(米国特許第5,182.663号に記載)や、機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどにおいて好適に用いられ得る。
【0129】
なお、コーナーキューブアレイ10が形成された基板1から、電鋳法などによってコーナーキューブアレイの金型を作製してもよい。このようにして形成された金型を用いて、ローラなどを用いて樹脂材料などに基板1の表面形状を転写するようにすれば、コーナーキューブアレイを量産することが可能である。
【0130】
なお、以上にはガリウム砒素単結晶基板を用いる例を説明したが、InP、InAs、ZnS、GaPなどの他の閃亜鉛構造をとる化合物から形成される単結晶基板を用いることも可能である。さらに、ゲルマニウム結晶などのダイヤモンド構造を有する単結晶基板を用いることも可能である。
【0131】
【発明の効果】
本発明によれば、立方晶単結晶基板の{111}面に対して、所定のパターンで立体形状要素(凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせ)を形成した上で、基板の表面部分を構成する結晶材料に含まれる元素を含む活性種を供給することによって、形状精度の高いコーナーキューブアレイを微細なサイズで作製することが可能である。このようにして作製されたコーナーキューブアレイを用いれば、再帰性反射率に優れたコーナーキューブリフレクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)は、本発明の実施形態1にかかるコーナーキューブアレイの作製工程を示す断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、図1に示す作製工程を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態1にかかるコーナーキューブアレイの作製方法において用いられるマスクを示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態1にかかるコーナーキューブアレイの作製工程において、立体形状要素が作製される様子を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態1〜3によって作製されたコーナーキューブアレイの一部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図6】(a)〜(e)は、本発明の実施形態2にかかるマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示す断面図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6に示す作製工程を示す平面図である。
【図8】(a)〜(i)は、本発明の実施形態3にかかるマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示す平面図である。
【図9】(a)〜(i)は、図8(a)〜(i)に示す作製工程を示す断面図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明の実施形態3における加工処理の他の態様を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ガリウム砒素基板
2、12 レジスト膜(エッチングマスク層のマスク部)
3 立体形状要素
4 結晶層
5 フォトマスク
10 コーナーキューブアレイ
10U コーナーキューブの単位要素
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーナーキューブアレイおよびその作製方法に関し、特に、表示装置などにおいて好適に用いられる微細な構造を持つコーナーキューブアレイの作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロレンズ、マイクロミラー、マイクロプリズムなどの、非常にサイズが小さい光学素子(マイクロ光学素子)の開発が進められており、光通信や表示装置の分野で利用されている。このようなマイクロ光学素子の実現によって、光学技術及びディスプレイ技術の分野が一段と発展・充実することが期待されている。
【0003】
このような光学素子として、立方体の一隅に対応する形状を持ち、互いに直交する3面を有するコーナーキューブを規則的に配列することで得られるコーナーキューブアレイを用いた反射板(コーナーキューブリフレクタ)が知られている。コーナーキューブリフレクタは、入射された光を複数の反射面で反射することによって入射方向にかかわらず光を元の方向に反射させる再帰性反射板の1つである。以下、コーナーキューブアレイの従来の作製方法を説明する。
【0004】
(プレート法)
プレート法では、互いに平行な二平面を持つ平板を複数枚重ねあわせ、この重ね合わせた平板の端面において、平面に対して直角な方向に等しいピッチでV溝を切削し、頂角が約90°の連続する屋根型の突起群を形成する。次に、各々の平板上に形成された屋根型突起群の屋根の頂部が隣接する平板上に形成されたV溝の底部に一致するように各平板を配置させることによってコーナーキューブアレイ用の金型を作製し、これを用いてコーナーキューブアレイを作製する。ただし、この方法では、屋根型の突起が形成された平板を隣接する平板に対して適切な位置関係を有するように精度良く並べ換えて固定する必要があるため、サイズの小さい(例えば100μm以下)コーナーキューブのアレイを作製することは困難である。
【0005】
(ピン結束法)
ピン結束法では、六角柱形状を有する金属のピンの先端に、互いに直交する正方形の3面を有するプリズムを設け、それらを何本も束ねてプリズム集合体を作製する。近接する3つのピンのそれぞれに設けられたプリズムの各1面ずつを用いてコーナーキューブが形成される。ただしこの方法では、別々のピンに形成されたプリズムを集めてコーナーキューブを形成するため、サイズの小さいコーナーキューブを作製することは実際には困難である。この方法を用いて作製できるコーナーキューブの寸法は1mm程度が限界である。
【0006】
(三角プリズム法)
三角プリズム法では、金属等の平板の表面に三方向からV溝を切削することによって三角錐状の複数の突起を形成し、これを型として用いてプリズム集合体を形成する。ただし、この方法では、形成可能なプリズム形状が三角錐状のプリズムに限定される。
【0007】
また、特許文献1には、光化学的な手法を用いてコーナーキューブアレイを作製する方法が記載されている。この方法では、複数の正三角形の透過領域を有するマスクを用いてフォトレジストのパターニングを行なうが、マスクの各透過領域の透過率は、透過領域の中心部から周辺部に向かって次第に減少している。このマスクを用いて露光および現像を行なうことによって、複数の三角錐状のフォトレジストが基板上に形成される。このフォトレジストが形成された基板に対して所定の方法でエッチングを行なうことによって、基板上にはフォトレジストの形状と同様の突起が形成される。これによりコーナーキューブを作製することが可能である。
【0008】
さらに、非特許文献1には、互いに直交する正方形の3面からなる立方体型のコーナーキューブを微細なサイズで作製する技術が記載されている。この文献によれば、シリコン基板の(111)面上に、結晶成長を制御するための酸化膜を局所的に配置し、この基板上で結晶をエピタキシャル成長させることによって、微細なコーナーキューブアレイを作製することが可能である。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−205322号公報
【非特許文献1】
Applied Optics Vol.35, No19 pp3466‐3470”Precision crystal corner cubearrays for optical gratings formed by (100) silicon planes with selective epitaxial growth”
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このようなコーナーキューブリフレクタは、液晶ディスプレイなどの表示装置において用いられ、例えば米国特許第5,182,663号においてコーナーキューブリフレクタを備える液晶表示装置が記載されている。ただし、表示装置に用いる場合、コーナーキューブのサイズは非常小さい(例えば100μm以下)ことが要求される。これは、コーナーキューブ(単位要素)のサイズが表示装置の画素よりも大きいと、再帰反射された光が所望でない画素を通過するおそれがあり、これによって混色の問題などが発生するからである。
【0011】
しかしながら、上述のプレート法、ピン結束法などのような機械的にコーナーキューブを作製する方法では、このような微細なコーナーキューブを形成することは製造工程上困難である。また、上述のような方法を用いてコーナーキューブリフレクタを作製した場合、各反射面の鏡面性が低くなり、反射面の交差部におけるコーナー曲率(R)が大きくなるため、再帰反射させる効率が低くなるという問題も生じる。また、上記の三角プリズム法では、凹部と凸部とを含む立体形状を有する直交する正方形3面から構成される立方体型のコーナーキューブを作製することができない。
【0012】
また、特許文献1に記載されているような光化学的な手法を用いて作製されたマイクロコーナーキューブは、面精度(平面性)を高くすることが困難である。上記手法では、マイクロコーナーキューブの側面の面精度は、基板上に形成する三角錐状のフォトレジストの面精度に依存し、このフォトレジストの面精度を高めるには、マスクの透過率または遮光率の変化率を均一にするなどして、フォトレジストの露光・現像プロセスを厳密に制御する必要がある。しかし、このようなことは実際には困難である。
【0013】
また、シリコンの選択成長を利用した非特許文献1に記載されている手法では、結晶の側方成長を制御することが難しい。また、コーナーキューブのパターンを決定するためにシリコン基板上にはシリコン酸化膜が設けられるが、このシリコン酸化膜と成長させる膜との端面での歪みの影響が大きい。このようなことから、良好な形状を持つマイクロコーナーキューブアレイを作製することは困難である。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、微細で且つ形状精度が高いコーナーキューブアレイおよびその製造方法を提供することをその目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明によるコーナーキューブアレイの作製方法は、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板であって、前記結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板を用意する工程と、前記基板の前記表面を加工して、凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素を所定のパターンで形成する工程と、前記立体形状要素が形成された前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含む活性種を供給する工程とを包含する。
【0016】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素のパターンに対応するパターンで、コーナーキューブの単位要素が形成される。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素を形成する工程は、前記基板の前記表面に対して異方性のエッチング処理を行なう工程を包含する。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記異方性のエッチング処理は、ウェットエッチングを含む。
【0019】
ある好ましい実施形態において、前記異方性のエッチング処理を行なう工程の前に、前記基板の前記表面上にエッチングマスク層を設ける工程をさらに包含し、前記エッチングマスク層のパターンに応じて、コーナーキューブの単位要素のサイズが制御される。なお、ある好ましい実施形態において、前記エッチングマスク層は、それぞれの重心位置が略ハニカム格子点上に位置する複数の前記マスク部を有する。
【0020】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素は前記結晶材料から構成されている。
【0021】
ある好ましい実施形態において、前記立体形状要素は、前記結晶材料の{100}面によって規定される面を有する。
【0022】
ある好ましい実施形態において、結晶材料は、閃亜鉛構造またはダイヤモンド構造をとる。
【0023】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程は、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なう工程を包含する。
【0024】
ある好ましい実施形態において、前記結晶成長によって、前記結晶材料の{100}面によって規定される面を有するコーナーキューブの単位要素が形成される。
【0025】
ある好ましい実施形態において、前記結晶材料はガリウム砒素であり、前記結晶成長は、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方を原料とする気相成長法によって行なわれる。
【0026】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程は、前記活性種と、前記基板をエッチングすることが可能な種との混合物を前記基板に供給する工程を包含する。
【0027】
ある好ましい実施形態において、前記結晶材料はガリウム砒素であり、前記活性種を供給する工程は、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方、および、ハロゲンまたはハロゲン化合物を前記基板に対して供給する気相加工法によって行なわれる。
【0028】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程によって、互いに直交する3つの前記{100}面によって規定される3面を持つコーナーキューブの単位要素が形成される。
【0029】
ある好ましい実施形態において、前記3面は、互いに直交する略正方形の3面である。
【0030】
ある好ましい実施形態において、前記活性種を供給する工程によって前記基板に形成されたコーナーキューブアレイ形状を、他の材料に転写する工程をさらに包含する。
【0031】
本発明による他のコーナーキューブアレイの作製方法は、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなり、前記結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板であって、前記表面に、所定のパターンを有する凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素が設けられている基板を用意する工程と、前記立体形状要素が形成された前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含む第1活性種を供給することによって、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行う工程と前記基板の露出表面の形状を調整する工程とを包含する。
【0032】
ある好ましい実施形態において、前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板の前記露出表面のうち前記結晶材料の{100}面以外の不要な結晶面を減少させる工程である。
【0033】
ある好ましい実施形態において、前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板に対して第1の加工処理を行う工程と、前記基板に対して前記第1の加工処理と異なる第2の加工処理を行う工程とを含み、前記第1の加工処理を行う工程は、前記基板の前記露出表面のうち第1部分に生じた前記不要な結晶面を減少させるとともに、前記基板の前記露出表面のうち前記第1部分と異なる第2部分に前記不要な結晶面を生じ、前記第2の加工処理を行う工程は、前記第2部分に生じた前記不要な結晶面を減少させるとともに、前記第1部分に前記不要な結晶面を生じる。
【0034】
好ましくは、前記不要な結晶面が減少して再帰反射率が95%以上になるまで、前記第1の加工処理と前記第2の加工処理とを交互に行う。
【0035】
前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程を含んでもよい。
【0036】
前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第2活性種を供給することによって、異方性の結晶成長を行なう工程を含んでもよい。
【0037】
前記第1の加工処理を行う工程は、前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程を含み、前記第2の加工処理を行う工程は、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第2活性種を供給することによって、異方性の結晶成長を行なう工程を含んでもよい。
【0038】
前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程は、異方性のエッチングによって行うことが好ましい。
【0039】
前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第3活性種と、前記基板をエッチングすることが可能な種との混合物を供給する工程を含んでもよい。
【0040】
前記混合物を供給する工程では、前記基板の前記露出表面に対して、異方性のエッチングを行うとともに異方性の結晶成長を行うことができる。
【0041】
前記基板の前記露出表面の形状を調整する工程は、前記結晶材料の面方位に依存してエッチングまたは結晶成長を行う工程を含むことが好ましい。
【0042】
あるいは、本発明のコーナーキューブアレイは、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板に形成されたコーナーキューブアレイであって、前記結晶材料の{111}面において所定のパターンで形成された凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状単位要素と、前記立体形状要素上に成長させられた結晶層であって、前記結晶材料に含まれる元素を含む活性種を用いて、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なうことによって形成された結晶層とを有する。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明によるコーナーキューブアレイの作製方法では、閃亜鉛構造を有する化合物半導体やダイヤモンド構造を有する結晶材料から形成した基板などの、立方晶系の結晶材料からなる単結晶基板(以下、「立方晶単結晶基板」と呼ぶ場合もある)を用いてコーナーキューブアレイを作製する。なお、本明細書において「結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板」は、結晶材料の{111}面に対して平行な表面を有する基板だけでなく、0°〜10°傾いた表面を有する基板を含むものとする。また、本明細書において、立方晶単結晶基板は、少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板であればよく、非晶質や多結晶の材料からなる支持基板の上に単結晶層を有する基板を含むものとする。また、平板状のものだけでなく、平坦な表面を含む限り種々の立体形状を有し得る。
【0044】
より具体的には、表面が結晶材料の{111}面と実質的に平行に配置されている立方晶単結晶基板を用意し、この基板の表面において所定のパターンで配列される凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせ(立体形状要素)を形成する。その後、このように凹部や凸部が形成された基板に対して、上記の立方晶系の結晶材料(以下、基板材料ともいう)に含まれる元素を含む活性種を基板に対して供給することによってコーナーキューブアレイを作製する。なお、立方晶系の結晶材料に含まれる活性種を基板に対して供給するという場合、典型的には、結晶材料に含まれる元素と同じ元素を含むガスや液体などを基板に接触させることを言う。例えば、基板がガリウム砒素単結晶基板の場合に、上述の活性種は、トリメチルガリウムや、AsCl3であり得る。
【0045】
この活性種を供給する工程は、例えば、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なう工程を包含する。この場合、供給された活性種によって所定の結晶面が選択的に成長され得るが、このとき、基板に形成された立体形状要素の形状や配列パターンによって結晶成長が生じる場所などが規制され得る。従って、立体形状要素を適切なパターンや形状で形成しておけば、成長した結晶の所定の結晶面によって構成される、所望の形状およびパターンを有する凹凸が設けられた基板を得ることが可能である。このような方法を利用することによって、所定の結晶面で構成された凹凸からなるコーナーキューブアレイを基板上に作製することができる。
【0046】
得られたコーナーキューブアレイは、立方晶系結晶の結晶面に沿う形状を有しており、その形状精度が非常に高い。各コーナーキューブを構成する3面の平面性は良好であり、各面が交わる部分(角部または稜)の形状はシャープである。上記のコーナーキューブアレイは、規則的に配列された複数の凹凸を含む立体形状をとり得るが、各凹凸の頂点の高さレベルが揃っており、これらが略同一の面内に位置する。このようなコーナーキューブアレイを用いることで、再帰反射性の良好な再帰性反射板が得られる。
【0047】
また、本発明の方法によって作製されるコーナーキューブアレイにおける単位要素(1つのコーナーキューブ)のサイズは、基板に形成される立体形状要素の配列ピッチなどを適切に選択することによって制御される。この立体形状要素は、例えば、所定のエッチングマスクを用いてウェットエッチングなどによって形成することが可能であり、その配列ピッチは数十μm以下に設定され得る。この場合、数十μm以下のサイズを有するコーナーキューブのアレイを作製することが可能である。従って、液晶表示装置などに用いられる再帰性反射板として好適に使用される微細なコーナーキューブアレイが得られる。
【0048】
なお、本願出願人と同一の出願人によって、立方晶系の単結晶基板に異方性エッチング処理のみでマイクロコーナーキューブアレイを作製する方法が特願2001−181167号に記載されている。ただしこの方法では、エッチング条件が適切に選択されていないと、コーナーキューブ形状が得られない、または、コーナーキューブを構成する面の歪みが大きくなるという問題が生じる。このため、所望のコーナーキューブアレイを得るために適切なエッチング条件を選択することが必要となるが、このことは比較的容易ではない。
【0049】
これに対し、本発明のように基板に立体形状要素を形成した後に活性種を供給するようにすれば、所望の形状のコーナーキューブアレイを比較的容易に作製することが可能である。
【0050】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、図面を通じて同様の部材には同一の参照符号を付している。
【0051】
(実施形態1)
本実施形態1では、立方晶単結晶基板として、閃亜鉛構造を有するガリウム砒素結晶から形成される基板を用い、この基板にウェットエッチングによって所定のパターンで立体形状要素を形成した後、異方性の結晶成長プロセスを行なうことによって、マイクロコーナーキューブアレイを作製する。
【0052】
図1(a)〜(e)および図2(a)〜(e)は、本実施形態のマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示している。まず、表面が{111}B面と実質的に平行であるガリウム砒素基板1を用意する。なお、ガリウムが形成する{111}面が{111}A面であり、砒素が形成する{111}面が{111}B面である。この基板1の表面は、鏡面に仕上げられる(図1(a)および図2(a))。
【0053】
次に、基板表面上に、スピンコート法によって厚さ約1μmのポジ型フォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層の材料としては例えばOFPR−800(東京応化社製)を用いることができる。このフォトレジスト層を約100度で30分間プリベークした後、フォトレジスト層上にフォトマスクを配置して露光を行う。
【0054】
フォトマスクとしては、図3に示すように、正三角形の遮光領域5aおよび透過領域5bが三角形の辺方向のそれぞれにおいて互いに逆向きに交互に設けられたフォトマスク5を用いることができる。フォトマスク5は、遮光領域5aのパターンである正三角形のいずれかの一辺が、ガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように基板上に配置される。なお、本実施形態では、遮光領域5aのパターンである正三角形の一辺の長さを約10μmにしている。
【0055】
このレジスト層を、現像液(例えば、NMD−32.38%(東京応化社製))を用いて現像することによって、図1(b)または図2(b)に示すように、基板1上にはパターニングされたレジスト膜2が形成される。上述のようなフォトマスク5を用いて形成された略正三角形のレジスト膜2は、その一辺がガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように配置される。すなわち、レジスト膜2の各辺が、結晶の{100}面と平行になるように配置される。なお、本明細書では、レジスト膜2をマスク部と呼ぶことがあり、また、このマスク部と、レジスト層が除去された部分である開口部とを合わせてエッチングマスク層と呼ぶことがある。
【0056】
本実施形態では、このレジスト膜2の配列パターンに応じて、形成されるコーナーキューブのサイズが制御され得る。より具体的には、形成されるコーナーキューブのサイズは、レジスト膜2のピッチP0(ここでは約10μm)と略同等のサイズとなる。
【0057】
なお、エッチングマスク層のパターンは、図2(b)に示すものに限らず、種々のものとすることができる。ただし、コーナーキューブを好適に作製するためには、エッチングマスク層のマスク部(残存するレジスト膜2)における所定の点(例えば重心位置)が、ハニカム格子点上に配列されることが望ましい。ここでハニカム格子点とは、合同な正六角形を隙間なく敷きつめた場合における、各正六角形の頂点と各正六角形の重心点とに対応する点を指す。あるいは、第1の方向に延びる等間隔(所定間隔)の複数の平行線と、上記第1の方向とは60°異なる第2の方向に延びる、等間隔かつ上記所定間隔と同一の間隔の複数の平行線との交点に対応する点を指す。また、エッチングマスク層のマスク部は、好適には、三角形または六角形などの3回の回転対称形状を有している。
【0058】
次に、磁石攪拌器でエッチング液を攪拌させながらウェットエッチング工程を行う(図1(c)および図2(c))。エッチング液としては、例えば、NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液を使用することができ、エッチング温度は約20度とし、エッチング時間は約60秒とすることができる。
【0059】
このエッチング工程において、ガリウム砒素結晶の{100}面((100)面、(010)面、および(001)面)は、他の結晶面に比べてエッチングされにくいため、この{100}面が露出するように異方性のエッチングが進行する。ただし、このエッチング工程では、{111}B面と{100}面とのエッチング速度比R{111}/R{100}が1.7程度であるため、開口部から{111}B面方向にエッチングされる量d1と{100}面方向にエッチングされる量d2とは図4に示すような関係になる。
【0060】
この結果、頂点3aが形成された段階で底面(平坦部)3bが残った立体形状3が形成されることになる。このように、本実施形態では、図1(c)および図2(c)に示すように、立体形状要素として、マスク部2の下に頂点を有する凸部3が基板1に形成される。
【0061】
この凸部3は、互いに直交する3つの{100}面で規定される直角二等辺三角形の面を備えた三角錐形状(すなわち、立方体の一隅に対応する三角錐形状)をなす。また、この凸部3は、ハニカム格子点上に形成され、これらの配列ピッチは、マスク部2のピッチP0と同様になる。
【0062】
なお、上記のウェットエッチング工程によって形成される凹凸形状は、エッチング液の種類や、エッチング時間などのエッチング条件に応じて変化し得る。例えば、上記のエッチング速度比R{111}/R{100}がより大きい場合(例えば、1.8以上の場合)には、図4に示した場合に比べて平坦部3bの面積はより小さくなる。また、上述のような凸部ではなく、凹部または凹部と凸部とを組み合わせた立体形状要素が配列される場合もある。本発明において基板上に形成される立体形状要素は、このように三角錐状凸部以外の形状を有する立体形状要素であり得るが、これらはハニカム格子点上に配列されることが望ましい。
【0063】
次に、上述の異方性のエッチングにより三角錐状の凸部3が所定のパターンで形成された基板1を、アセトンなどの有機溶媒中で超音波洗浄することによって、基板1上に残存しする不要なレジスト膜などを除去する(図1(d)および図2(d))。
【0064】
その後、気相成膜装置を用いて、立体形状要素が形成された基板面において異方性の結晶成長プロセスを行なう。なお、気相成膜装置としては、VPE(気相薄膜成長法)、MBE(分子線薄膜成長法)、MOVPE(有機金属気相薄膜成長法)などのエピタキシャル成長法による薄膜形成のために用いられる公知の装置を利用することができる。気相成膜装置内には、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)およびアルシン(AsH3)が導入される。これらのガスを、例えば、10Torrの減圧環境下、基板を630℃に加熱した状態で100分間流すことによって所望の結晶成長プロセスを実行することができる。
【0065】
この結晶成長プロセスにおいて、ガリウム砒素基板を形成する結晶材料(ガリウムおよび砒素)と同じ元素を含むガスが基板面に接触させられる(すなわち、基板に対して活性種が供給される)が、基板に予め形成されている立体形状要素(凸部3)の影響により、結晶の{111}B面の法線方向には結晶成長が生じず、{100}面の法線方向に沿って選択的にガリウム砒素結晶が成長する。すなわち、トリメチルガリウムガスおよびアルシンに含まれる活性種が底面の{111}B面では反応を生じさせず、側壁をなす{100}面において優先的に成長が起こり、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長が行なわれる。
【0066】
このような結晶成長工程において、所定の結晶面({100}面)が選択的に成長するが、このとき、立体形状要素によって、結晶成長が生じる場所などが決定され得る。このため、上述のように、基板に予め適切な形状の立体形状要素を適切なパターンで形成しておけば、所定の結晶面によって構成されるコーナーキューブのアレイを形成することが可能である。
【0067】
なお、結晶成長を生じさせるために用いられる活性種は、典型的には、基板を構成する結晶材料と同じ元素(本実施形態では、ガリウムまたは砒素)を含むガスとして供給される。このように活性種を含むガスとしては、典型的には、上述のトリメチルガリウムガスやアルシンなどのように、基板を構成する材料と同じ元素を含む分子(ガリウムまたはガリウム化合物と砒素または砒素化合物との少なくとも一方)のガスが用いられる。これは、基板の表面部分を構成する結晶材料と格子整合した結晶を適切に成長させることができるからである。
【0068】
このような異方性の選択的な結晶成長が生じる結果、結晶層4が凸部3上に形成される。これによって、図5(a)および(b)に示すように、成長した結晶の{100}面によって規定される3面S1〜S3を有するコーナーキューブの単位要素10Uがアレイ状に形成され、コーナーキューブアレイ10を得ることができる(図1(e)および図2(e))。コーナーキューブの単位要素10Uを構成する3面S1〜S3は、互いに直交する3つの略正方形の面である。また、このようにして作製されたコーナーキューブアレイ10は、図5(a)および(b)からわかるように凸部10aと凹部10bとが組み合わさった立体形状を有している。このコーナーキューブ単位要素は、上面からみたときには正六角形を示す。
【0069】
また、コーナーキューブの単位要素10Uは、凸部3の配列パターンに対応するパターンで形成される。すなわち、コーナーキューブの単位要素のサイズは、凸部3の配列パターン(配列ピッチ)によって規定され得、これを十数μm程度と非常に小さくすることができる。
【0070】
以上、本実施形態のコーナーキューブアレイの作製方法について説明したが、上記とは異なるエッチングマスク層を用いた場合にもコーナーキューブアレイを作製することができる。例えば、上記には図2(b)に示すように、何れかの辺が結晶の<01−1>方向に平行に配置されたマスク部2を用いてエッチングを行なう形態を説明したが、マスク部2の正三角形のいずれか一辺が、ガリウム砒素結晶の<011>方向に平行となるように配置されたエッチングマスク層を用いてもよい。
【0071】
このようなエッチングマスク層を用いて、上記と同様のウェットエッチング工程を行なった場合(すなわち、エッチング速度比R(111)/R(100)が約1.7の場合)には、底点と頂点とを有した、凹部と凸部とから構成される立体形状要素が形成される。ただし、この場合には、立体形状要素を構成する面に歪みが生じることがある。しかしながら、この基板を上記と同様の条件で気相成膜装置にて結晶成長されれば、{100}面を選択的に成長させることができるため、平坦な{100}の3面からなるコーナーキューブアレイ10を得ることが可能である。
【0072】
以上のようにして作製されたコーナーキューブアレイを再帰性反射板として用いる場合、上記凹凸が形成されたガリウム砒素基板上に、例えば蒸着法などによって、凹凸の表面形状に沿うように略一様な厚さ(例えば200nm)でアルミニウムや銀などの反射性材料の薄膜を形成する。これにより、直交する3つの略正方形の反射面を備える再帰性反射板(コーナーキューブリフレクタ)を作製することができる。作製されたコーナーキューブリフレクタは、例えば、反射型液晶表示装置(例えば、高分子分散型液晶表示装置(米国特許第5,182.663号に記載)や、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどにおいて好適に用いられ得る。
【0073】
なお、コーナーキューブアレイ10が形成された基板1から、電鋳法などによってコーナーキューブアレイの金型を作製してもよい。このようにして形成された金型を用いて、ローラなどを用いて樹脂材料などに基板1の表面形状を転写するようにすれば、コーナーキューブアレイを量産することが可能である。
【0074】
なお、以上にはガリウム砒素単結晶基板を用いる例を説明したが、InP、InAs、ZnS、GaPなどの他の閃亜鉛構造をとる化合物から形成される単結晶基板を用いることも可能である。さらに、ゲルマニウム結晶などのダイヤモンド構造を有する単結晶基板を用いることも可能である。
【0075】
(実施形態2)
本実施形態2では、ガリウム砒素基板にウェットエッチングによって所定のパターンで立体形状要素(凸部)を形成した後、基板を構成する結晶材料に含まれる元素と同じ元素を含む活性種を基板に供給しながらドライエッチングを行なうことによって、マイクロコーナーキューブアレイを作製する。
【0076】
図6(a)〜(e)および図7(a)〜(e)は、本実施形態のマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示している。まず、実施形態1と同様に、表面が{111}B面と実質的に平行であるガリウム砒素基板21を用意し、この表面を、鏡面に仕上げる(図6(a)および図7(a))。
【0077】
次に、実施形態1と同様に、基板21上にスピンコート法によって厚さ約1μmのフォトレジスト層を形成した後、図3に示すフォトマスク5を用いて、露光工程および現像工程を行う。ただし、フォトマスク5は、遮光領域5aのパターンである正三角形のいずれかの一辺がガリウム砒素結晶の<011>方向と平行になるように基板上に配置される。これによって、図6(b)または図7(b)に示すように、その一辺がガリウム砒素結晶の<011>方向と平行な略正三角形のレジスト膜(マスク部)22のパターンが基板上に形成される。なお、本実施形態においても、マスク部22の正三角形の一辺の長さを約10μmにしている。
【0078】
次に、磁石攪拌器でエッチング液を攪拌させながらウェットエッチング工程を行う(図6(c)および図7(c))。エッチング液としては、例えば、NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液を使用することができ、エッチング温度は約20度とし、エッチング時間は約60秒とすることができる。
【0079】
このエッチング工程において、ガリウム砒素単結晶の{100}面((100)面、(010)面、および(001)面)は、他の結晶面に比べてエッチングされにくいため、この{100}面が露出するように異方性のエッチングが進行する。ただしこのエッチング工程では、マスク部22の辺を<011>方向と平行に設けているために、底点と頂点とを有した、凹部と凸部とから構成される立体形状要素が形成される。また、形成される面に歪みが生じる。このようにして、図6(c)および図7(c)に示すような、コーナーキューブアレイ形状に類似した丸みを帯びた立体形状23が基板に形成される。
【0080】
この立体形状23を有する基板1を、アセトンなどの有機溶媒中で約10分間超音波洗浄することによって、基板1上に残存する不要なレジスト膜などを除去する(図6(d)および図7(d))。次に、レジスト膜が除去された基板1に対して、エタノール置換を行ない、純水流水洗浄を約10分間行った後、これを気相加工装置内に収容する。なお、気相加工装置としては、例えば、公知のドライエッチング装置を利用することができる。
【0081】
気相加工装置において、装置内を10−8Torrのオーダーまで排気し、減圧環境下で基板1を約600℃に加熱した後、エッチングガスと、基板と同じ元素を含む付加的なガス(活性種)とを約60分間流す。このようにして、エッチングガスと付加的なガスとを同時に基板に接触させるようなドライエッチング工程を行なう。本実施形態では、エッチングガスとして三塩化砒素ガスが用いられており、付加的なガスとしてトリメチルガリウムが用いられている。
【0082】
このドライエッチング工程では、使用するエッチングガスが基板表面と化学的に反応するが、基板における結晶面のそれぞれに対するエッチングガスの反応性が異なることで、エッチング速度も各結晶面でそれぞれ異なる。これによって、結晶の{100}面が残るように異方性のドライエッチングが進行する。また、エッチングガスと同時に、基板の表面部分を構成する結晶材料に含まれる元素を含む活性種(付加的なガス)を基板に供給しているので、{100}面の形成が促進され、より平坦な面を形成することができる。
【0083】
なお、本実施形態で使用される活性種を含む付加的なガスおよびエッチングガスは上記のものに限られない。この付加的なガスとしては、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方を含むガスが用いられ得る。また、エッチングガスとしては、ハロゲンまたはハロゲン化合物を含むガスが好適に用いられ得る。
【0084】
また、エッチングガスとしては、エッチングガスと基板とが反応してできた生成物の蒸気圧が高く、生成物が気体になるようなガスを用いることが望ましい。これらの理由から、上述の三塩化砒素ガスのようなハロゲン化合物ガスなどがエッチングガスとして好適に用いられる。なお、上記の条件を満たすガスとしては他に水素ガスも挙げられる。
【0085】
なお、ハロゲン化合物をエッチングガスとして用いてガリウム砒素基板をエッチングする手法自体は従来から知られている。例えば、塩化水素を用いた方法はSurface Science 312,181 (1994)に記載されており、三塩化水素を用いた方法はJournal of Crystal Growth 164,97 (1994)に記載されている。また、三臭化砒素をエッチングガスとして用いてガリウム砒素基板をエッチングする方法が、特開平8−321483号公報に記載されている。これらには、ハロゲン化合物をエッチャントとして用いれば、非常に高い加工性度でエッチングが行なわれることが記載されている。本実施形態では、このような精度の高いエッチング方法をマイクロコーナーキューブアレイの作製に利用することで、非常に再帰率の高い反射板を作製することを可能にしている。
【0086】
このように、本実施形態では、結晶の{100}面が残るようにエッチングが進行するが、上述のような活性種を含むガスを供給することによって、結晶成長とエッチングとの両プロセスが適切に行われ、{100}面が好適に形成される。その結果、3つの{100}面からなるコーナーキューブ単位要素からなるコーナーキューブアレイ30が作製される。このようにして形成されたコーナーキューブアレイ30は、図5に示した実施形態1のコーナーキューブアレイ10と同様の形状を有する。
【0087】
なお、本実施形態においても、実施形態1と同様に、コーナーキューブアレイ10が形成された基板1から、電鋳法などによってコーナーキューブアレイの金型を作製し、ローラなどを用いて樹脂材料などに基板1の表面形状を転写することでコーナーキューブアレイを作製してもよい。
【0088】
また、基板として、InP、InAs、ZnS、GaPなどの他の閃亜鉛構造をとる化合物から形成される単結晶基板を用いることも可能である。さらに、ゲルマニウム結晶などのダイヤモンド構造を有する単結晶基板を用いることも可能である。
【0089】
(実施形態3)
上記実施形態では、第1活性種を供給する工程において、立体形状要素を有する基板に対して異方性の結晶成長を行うことにより、{100}面によって規定されている3つの結晶面を有するコーナーキューブ単位要素を形成しているが、異方性の結晶成長工程を行うだけでは、基板の露出表面に[100]面以外の結晶面が残ってしまう可能性もある。
【0090】
例えば、上記実施形態における第1活性種を供給する工程では、各単位要素の頂点部に[100]面以外の不要な面が残存しやすい。この不要な面の割合を減少させようと、基板表面にエッチング処置などの加工を施しても、その加工によって、頂点部以外の部分にさらに不要な面が発生する可能性が高いので、不要な面の割合を許容範囲内に減少させることは困難である。
【0091】
そこで、このような[100]面以外の不要な面の割合を低減するために、本実施形態では、第1活性種を供給する工程の後に、基板表面に対して2以上の異なる加工処理を行うことによって、上記不要な面の割合を許容範囲内に抑える。すなわち、基板表面のある部分(部分A)にある不要な面を低減させるが、基板表面の他の部分(部分B)に不要な面を生じる加工処理と、基板表面の部分Bにある不要な面を低減させるが、基板表面の部分Aに不要な面を生じる他の加工処理とを繰り返し行うことによって、基板表面全体における不要な面の割合を徐々に減少させる。
【0092】
以下に、図8(a)〜(i)および図9(a)〜(i)を参照して、本実施形態のコーナーキューブアレイの作製方法を説明する。図8(a)〜(i)は、各工程における基板表面の平面図であり、図9(a)〜(i)は、図8(a)〜(i)のそれぞれの工程における、基板の表面部分を模式的に示すA−A’断面図である。A−A’線は図8(i)にのみ示しており、他の図については省略している。
【0093】
本実施形態では、立方晶単結晶基板として、例えば閃亜鉛構造を有するガリウム砒素結晶から形成される基板1を用いる(図8(a))。基板1の表面は、[111}B面と実質的に平行である。この基板1の表面は、図9(a)に示すように、鏡面に仕上げられる。
【0094】
次に、基板表面上に、スピンコート法によって厚さ約1μmのポジ型フォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層の材料としては例えばOFPR−800(東京応化社製)を用いることができる。このフォトレジスト層を約100度で30分間プリベークした後、フォトレジスト層上にフォトマスクを配置して露光を行う。
【0095】
フォトマスクとしては、図3に示すような、実施形態1で用いたマスクと同様のフォトマスク5を用いることができる。フォトマスク5は、遮光領域5aのパターンである正三角形のいずれかの一辺が、ガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように基板上に配置される。なお、本実施形態では、遮光領域5aのパターンである正三角形の一辺の長さを約10μmにしている。
【0096】
このレジスト層を、現像液(例えば、NMD−32.38%(東京応化社製))を用いて現像することによって、図8(b)および図9(b)に示すように、基板1上にはパターニングされたレジスト膜2が形成される。上述のようなフォトマスク5を用いて形成された略正三角形のレジスト膜2は、その一辺がガリウム砒素結晶の<01−1>方向と平行になるように配置される。すなわち、レジスト膜2の各辺が、結晶の{100}面と平行になるように配置される。
【0097】
本実施形態では、このレジスト膜2の配列パターンに応じて、形成されるコーナーキューブのサイズが制御され得る。より具体的には、形成されるコーナーキューブのサイズは、レジスト膜2のピッチP0(ここでは約10μm)と略同等のサイズとなる。
【0098】
なお、エッチングマスク層のパターンは、図8(b)に示すものに限らず、種々のものとすることができる。ただし、コーナーキューブを好適に作製するためには、エッチングマスク層のマスク部(残存するレジスト膜2)における所定の点(例えば重心位置)が、ハニカム格子点上に配列されることが望ましい。ここでハニカム格子点とは、合同な正六角形を隙間なく敷きつめた場合における、各正六角形の頂点と各正六角形の重心点とに対応する点を指す。あるいは、第1の方向に延びる等間隔(所定間隔)の複数の平行線と、上記第1の方向とは60°異なる第2の方向に延びる、等間隔かつ上記所定間隔と同一の間隔の複数の平行線との交点に対応する点を指す。また、エッチングマスク層のマスク部は、好適には、三角形または六角形などの3回の回転対称形状を有している。
【0099】
次に、磁石攪拌器でエッチング液を攪拌させながらウェットエッチング工程を行う(図8(c))。エッチング液としては、例えば、NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液を使用することができる。この場合、エッチング温度は約20度とし、エッチング時間は約60秒とすることができる。
【0100】
このエッチング工程において、ガリウム砒素結晶の{100}面((100)面、(010)面、および(001)面)は、他の結晶面に比べてエッチングされにくいため、{100}面が露出するように異方性のエッチングが進行する。ただし、このエッチング工程では、実施形態1で説明したように、開口部から{111}B面方向にエッチングされる量d1と{100}面方向にエッチングされる量d2とは図4に示すような関係になる。
【0101】
この結果、頂点3aが形成された段階で底面(平坦部)3bが残った立体形状3が形成されることになる。このように、本実施形態では、図9(c)に示すように、立体形状要素として、マスク部2の下に頂点を有する凸部3が基板1に形成される。
【0102】
凸部3は、互いに直交する3つの{100}面で規定される直角二等辺三角形の面を備えた三角錐形状(すなわち、立方体の一隅に対応する三角錐形状)を有する。また、この凸部3は、ハニカム格子点上に形成され、これらの配列ピッチは、マスク部2のピッチP0と同様になる。
【0103】
なお、上記のウェットエッチング工程によって形成される凹凸形状は、エッチング液の種類や、エッチング時間などのエッチング条件に応じて変化し得る。例えば、上記のエッチング速度比R{111}/R{100}がより大きい場合(例えば、1.8以上の場合)には、図4に示した場合に比べて平坦部3bの面積はより小さくなる。また、上述のような凸部ではなく、凹部または凹部と凸部とを組み合わせた立体形状要素が配列される場合もある。本発明において基板上に形成される立体形状要素は、このように三角錐状凸部以外の形状を有する立体形状要素であり得るが、これらはハニカム格子点上に配列されることが望ましい。
【0104】
次に、上述の異方性のエッチングにより三角錐状の凸部3が所定のパターンで形成された基板1を、アセトンなどの有機溶媒中で超音波洗浄することによって、基板1上に残存する不要なレジスト膜などを除去する(図8(d)および図9(d))。
【0105】
その後、気相成膜装置を用いて、立体形状要素が形成された基板面において異方性の結晶成長プロセスを行なう。なお、気相成膜装置としては、VPE(気相薄膜成長法)、MBE(分子線薄膜成長法)、MOVPE(有機金属気相薄膜成長法)などのエピタキシャル成長法による薄膜形成のために用いられる公知の装置を利用することができる。気相成膜装置内には、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)およびアルシン(AsH3)が導入される。これらのガスを、例えば、10Torrの減圧環境下、基板を630℃に加熱した状態で100分間流すことによって所望の結晶成長プロセスを実行することができる。
【0106】
結晶成長を生じさせるために用いられる活性種は、典型的には、基板を構成する結晶材料と同じ元素(本実施形態では、ガリウムまたは砒素)を含むガスとして供給される。このように活性種を含むガスとしては、典型的には、上述のトリメチルガリウムガスやアルシンなどのように、基板を構成する材料と同じ元素を含む分子(ガリウムまたはガリウム化合物と砒素または砒素化合物との少なくとも一方)のガスが用いられる。これは、基板の表面部分を構成する結晶材料と格子整合した結晶を適切に成長させることができるからである。
【0107】
この結晶成長プロセスでは、ガリウム砒素基板を形成する結晶材料(ガリウムおよび砒素)と同じ元素を含むガスを基板面に接触させる(すなわち、基板に対して活性種を供給する)が、基板に予め形成されている立体形状要素(凸部3)の影響により、結晶の{111}B面の法線方向には結晶成長が生じず、{100}面の法線方向に沿って選択的にガリウム砒素結晶が成長する。すなわち、トリメチルガリウムガスおよびアルシンに含まれる活性種が底面の{111}B面では反応を生じさせず、側壁をなす{100}面において優先的に成長が起こり、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長が行なわれる。
【0108】
この結晶成長工程において、所定の結晶面({100}面)が選択的に形成され、このとき、基板に予め形成された立体形状要素によって、結晶成長が生じる場所などが決定され得る。その結果、図8(e)に示すように、基板表面は、主に[100]結晶面で構成された単位要素のアレイ(以下、「初期単位要素アレイ」と呼ぶことがある)を形成する。初期単位要素アレイでは、各凸部のエッジ(稜線部11)に沿って、[100]面以外の結晶面が露出している。
【0109】
図9(e)は、稜線部11を含む基板の断面図である。図9(e)に示すように、エッチングによって得られた凸部3上に結晶層4が形成され、結晶層4の表面の一部が稜線部11を構成している。稜線部11は、典型的には、各凸部の頂点付近に生じる三角状の[111]B面と、頂点から各エッジに沿って生じる[110]面とを含んでいる。このような稜線部11は、結晶層4を形成するときに、(110)方向の成長速度が遅いために生じる。また、生じた稜線部11は、同じ条件で結晶成長を続けると拡大する。
【0110】
稜線部11を取り除くために、図8(f)および図9(f)に示すように、図8(b)と同様の手順で、結晶層4の各凸部の頂点をカバーするレジストマスク12を形成する。このとき、マスク12の面積は、図8(f)で用いたマスク2の面積よりも小さくすることが好ましい。
【0111】
次いで、異方性ウェットエッチングを行う(図8(g))。エッチング液として、例えば図8(c)で用いたものと同様のエッチング液(NH4OH:H2O2:H2O=1:2:7の混合液)を用いることができる。また、エッチング温度は約20℃、エッチング時間は約20秒とすることができる。エッチング時間は、図8(c)のエッチング時間よりも短くなるように設定することが好ましい。このエッチングによって、基板の露出表面は、図9(g)に示す断面形状を有する。すなわち、稜線部11の面積は減少するが、エッチャントの(111)B/(100)が1.7程度であるために、基板の各凹部に三角形状に[100]面以外の結晶面が露出する(三角形領域13)。典型的には、この三角形領域13の面積は、図8(c)の各凹部に形成される三角形領域の面積より小さくなる。その後、図8(d)と同様の工程で、基板1上に残存する不要なレジスト膜などを除去する(図8(h)、図9(h))。
【0112】
次に、この基板1に対して、図8(e)と同様の方法で結晶成長を行う。例えばトリメチルガリウム(Ga(CH3)3)およびアルシン(AsH3)を、10Torrの減圧環境下、基板を630℃に加熱した状態で20分間流すことによって所望の結晶成長プロセスを実行することができる(図8(i))。なお、この処理時間(例えば20分間)は、図8(e)における処理時間より短いことが好ましい。この結晶成長によって、図9(j)に示すように、凹部に不要な結晶面(三角形領域13)がなくなるとともに、凸部に図8(e)の稜線部11よりも面積の小さい稜線部(図示せず)が生じる。この稜線部の面積が所定の割合以下の場合、良好なコーナーキューブアレイ10が完成する。一方、稜線部の面積が所定の割合より大きい場合は、図8(f)および図8(h)のエッチング工程と、図8(i)の成長工程とを繰り返す。繰り返す回数は必要に応じて選択できる。好ましくは、稜線部の面積が所定の割合以下(すなわち許容範囲内)となるまで上記工程を交互に行うとよい。例えば、コーナーキューブアレイ10の再帰反射率が95%以上となるまで、上記工程を繰り返す。コーナーキューブアレイ10の再帰性反射率(=反射光強度/入射光強度(%))は、既存の装置を用いて測定できる。
【0113】
これにより、各単位要素の凸部における不要な結晶面(稜線部)の割合が極めて小さく、かつ凹部に不要な結晶面(三角形領域)が存在しない、形状精度が高いコーナーキューブアレイ10が得られる。
【0114】
コーナーキューブアレイ10の形状は、図5(a)および(b)を参照して実施形態1で説明した形状と基本的には同様である。すなわち、成長した結晶の{100}面によって規定される3面S1〜S3を有するコーナーキューブの単位要素10Uがアレイ状に形成されている。コーナーキューブの単位要素10Uを構成する3面S1〜S3は、互いに直交する3つの略正方形の面である。また、このようにして作製されたコーナーキューブアレイ10は、凸部10aと凹部10bとが組み合わされた立体形状を有している。このコーナーキューブ単位要素は、上面からみたときには正六角形を示す。
【0115】
また、コーナーキューブの単位要素10Uは、凸部3の配列パターンに対応するパターンで形成される。すなわち、コーナーキューブの単位要素のサイズは、凸部3の配列パターン(配列ピッチ)によって規定され得、これを十数μm程度と非常に小さくすることができる。
【0116】
上述したように、本実施形態のマイクロコーナーキューブの作製方法では、異方性の結晶成長プロセスによって、基板上に、主に[100]面から構成される初期単位要素アレイを形成した後、2以上の異なる加工処理を行うことによって、初期単位要素アレイの形状を調整することができる。すなわち、ウェットエッチング(第1の加工処理)を行うことによって、異方性の結晶成長プロセスで生じた不要な結晶面を減少させ、次いで、結晶成長(第2の加工処理)を行うことによって、第1の加工処理であるウェットエッチングで発生した不要な結晶面を減少させる。その後、必要に応じて、上記第1および第2の加工処理を交互に繰り返すことにより、初期単位要素アレイに含まれる[110]面以外の不要な結晶面の割合を低減できる。その結果、より形状精度が高いコーナーキューブアレイを作製することができる。
【0117】
なお、本実施形態では、ウェットエッチングにより基板1上に立体形状要素パターンを形成した後に異方性の結晶成長を行うことによって、基板上に初期単位要素アレイを形成しているが、初期単位要素アレイの形成方法はこれに限定されない。例えば、非特許文献1に記載されているように、SiO2パッドを用いて基板上に立体形状要素パターンを形成した後に結晶成長を行うことによって、初期単位要素アレイを形成することもできる。その後、初期単位要素アレイが形成された基板1の表面に対して、本実施形態で行ったように異なる2つの加工処理を繰り返すことによって、初期単位要素アレイの各単位要素に含まれる[100]面以外の結晶面を減少させることもできる。
【0118】
また、[100]面以外の結晶面を減少するために行う2つの加工処理は、前述したような相補的な関係にある複数の異なる加工処理であればよく、上記に限定されない。さらに、各加工処理後に不要な結晶面が形成される位置も、上記に限定されない。
【0119】
図10(a)〜(d)は、2つの加工処理の繰り返しによって、初期単位要素アレイに含まれる不要な結晶面の割合を減少させる他の例を示す模式的な断面図である。
【0120】
まず、図8(a)〜(d)を参照して説明した方法と同様の方法でウェットエッチングした後、マスク(レジスト膜)を除去する。この後、図8(e)を参照して説明した方法と同様の方法で結晶成長を行うと、初期単位要素アレイが形成される。初期単位要素アレイが形成された基板の表面部分の断面図を図10(a)に示す。この基板の表面のうち稜線部11(幅:例えば2.2μm)を構成する面以外は[100]面である。
【0121】
初期単位要素アレイが形成された基板1に対してマスク20を用いてウェットエッチングを行うと、稜線部11を構成する不要な結晶面はなくなるが、基板1の各底点21を構成する面の底部に反り22を生じる(図10(b))。反り22は、{100}面をテラスとする原子レベルの多数の段差が形成された領域であり、巨視的には{100}面から傾斜した面を形成している。その後、マスク20を除去する。
【0122】
次いで、図8(e)で行った方法と同様の方法で結晶成長を行う。成長時間は図8(e)における成長時間よりも短いことが好ましい。この成長工程によって、基板1の表面に生じていた反り22はなくなるが、各凸部を構成するエッジには稜線部11(幅:例えば1.5μnm)が生じる(図10(c))。稜線部11の面積は、図10(a)における稜線部11の面積よりも小さい。その後、図10(a)のマスクよりも面積の小さいマスク20’を用いてさらなるウェットエッチング工程を行うと、図10(d)に示すように、各底点を構成する面に反り22は生じるが、その面積は図10(b)における反り22の面積よりも小さくなる。このように、成長工程とエッチング工程とを繰り返すことにより、稜線部11や反り22を構成する不要な結晶面の面積は減少する。その結果、良好な再帰反射率を示すコーナーキューブアレイ10が得られる。
【0123】
本実施形態によれば、2以上の加工処理の繰り返しによって、[100]面以外の結晶面(不要な結晶面)の合計面積が低減されたコーナーキューブアレイ10を作製できる。しかしながら、作製されたコーナーキューブアレイ10には、許容範囲内ではあるが、若干の不要な結晶面が残っている。残っている不要な面の位置、面積、形状などは、加工処理の種類、条件、繰り返す回数などによって異なる。例えば、上記2以上の加工処理のうち、どの加工処理を最後に行うかによって、作製されたコーナーキューブアレイ10の不要な面の形状や位置が異なる。以下にその具体例を説明する。
【0124】
図8および図10を参照して説明した作製方法では、不要な結晶面の合計面積を低減するために、エッチング工程と結晶成長工程とを繰り返している。図8の作製方法によれば、この繰り返しをエッチング工程で終了すると、得られたコーナーキューブアレイ10は各凹部に三角形状の不要な面(三角形領域)を有する。この三角形領域の面積は、図8(g)に示す三角形領域13の面積よりも小さい。同様にして、図10の作製方法では、加工処理の繰り返しをエッチング工程で終了すると、得られたコーナーキューブアレイ10は、底部に不要な面を含む反りを有する。この反りが生じている面積は、図11(b)に示す反り22の面積よりも小さい。一方、図8および図10のいずれの作製方法によっても、加工工程の繰り返しを結晶成長工程で終了すると、得られた各コーナーキューブアレイ10は、各頂点部に不要な面から構成される稜線部を有する。稜線部の面積は、図8(e)または図11(a)に示す稜線部11の面積よりも小さい。
【0125】
高い再帰性反射率を実現するためには、コーナーキューブ形状の底部(凹部)に正確な面形状を有することが望ましい。そのため、加工処理の繰り返しをエッチング工程で終了する場合には、コーナーキューブアレイ10の形状を1回若しくは奇数回転写することにより、底部に不要な結晶面を有さないコーナーキューブアレイ形状を得ることができる。また、加工処理の繰り返しを結晶工程で終了する場合には、底部に不要な結晶面が残らないので、GaAs基板などに形成されたコーナーキューブアレイ10自体が高い再帰性反射率を示す。または、コーナーキューブアレイ10の形状を偶数回転写することにより、再帰性反射率の高いコーナーキューブアレイ形状が得られる。
【0126】
このように、本実施形態では、作製方法によりコーナーキューブアレイ10の不要な結晶面の位置を制御できるので、コーナーキューブアレイ10の形状を用いて、転写の有無や転写の回数を適宜選択することにより、再帰反射性に優れたコーナーキューブアレイ形状を有する再帰性反射板を構成できる。
【0127】
以上、本実施形態のコーナーキューブアレイの作製方法について説明したが、上記とは異なるエッチングマスク層を用いた場合にもコーナーキューブアレイを作製することができる。例えば、上記には図8(b)に示すように、何れかの辺が結晶の<01−1>方向に平行に配置されたマスク部2を用いてエッチングを行なう形態を説明したが、マスク部2の正三角形のいずれか一辺が、ガリウム砒素結晶の<011>方向に平行となるように配置されたエッチングマスク層を用いてもよい。
【0128】
以上のようにして作製されたコーナーキューブアレイを再帰性反射板として用いる場合、上記凹凸が形成されたガリウム砒素基板上に、例えば蒸着法などによって、凹凸の表面形状に沿うように略一様な厚さ(例えば200nm)でアルミニウムや銀などの反射性材料の薄膜を形成する。これにより、直交する3つの略正方形の反射面を備える再帰性反射板(コーナーキューブリフレクタ)を作製することができる。作製されたコーナーキューブリフレクタは、例えば、反射型液晶表示装置(例えば、高分子分散型液晶表示装置(米国特許第5,182.663号に記載)や、機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどにおいて好適に用いられ得る。
【0129】
なお、コーナーキューブアレイ10が形成された基板1から、電鋳法などによってコーナーキューブアレイの金型を作製してもよい。このようにして形成された金型を用いて、ローラなどを用いて樹脂材料などに基板1の表面形状を転写するようにすれば、コーナーキューブアレイを量産することが可能である。
【0130】
なお、以上にはガリウム砒素単結晶基板を用いる例を説明したが、InP、InAs、ZnS、GaPなどの他の閃亜鉛構造をとる化合物から形成される単結晶基板を用いることも可能である。さらに、ゲルマニウム結晶などのダイヤモンド構造を有する単結晶基板を用いることも可能である。
【0131】
【発明の効果】
本発明によれば、立方晶単結晶基板の{111}面に対して、所定のパターンで立体形状要素(凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせ)を形成した上で、基板の表面部分を構成する結晶材料に含まれる元素を含む活性種を供給することによって、形状精度の高いコーナーキューブアレイを微細なサイズで作製することが可能である。このようにして作製されたコーナーキューブアレイを用いれば、再帰性反射率に優れたコーナーキューブリフレクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)は、本発明の実施形態1にかかるコーナーキューブアレイの作製工程を示す断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、図1に示す作製工程を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態1にかかるコーナーキューブアレイの作製方法において用いられるマスクを示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態1にかかるコーナーキューブアレイの作製工程において、立体形状要素が作製される様子を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態1〜3によって作製されたコーナーキューブアレイの一部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図6】(a)〜(e)は、本発明の実施形態2にかかるマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示す断面図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6に示す作製工程を示す平面図である。
【図8】(a)〜(i)は、本発明の実施形態3にかかるマイクロコーナーキューブアレイの作製工程を示す平面図である。
【図9】(a)〜(i)は、図8(a)〜(i)に示す作製工程を示す断面図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明の実施形態3における加工処理の他の態様を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ガリウム砒素基板
2、12 レジスト膜(エッチングマスク層のマスク部)
3 立体形状要素
4 結晶層
5 フォトマスク
10 コーナーキューブアレイ
10U コーナーキューブの単位要素
Claims (27)
- 少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板であって、前記結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板を用意する工程と、
前記基板の前記表面を加工して、凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素を所定のパターンで形成する工程と、
前記立体形状要素が形成された前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含む第1活性種を供給する工程と
を包含するコーナーキューブアレイの作製方法。 - 前記立体形状要素のパターンに対応するパターンで、コーナーキューブの単位要素が形成される請求項1に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記立体形状要素を形成する工程は、前記基板の前記表面に対して異方性のエッチング処理を行なう工程を包含する、請求項1に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記異方性のエッチング処理は、ウェットエッチングを含む請求項3に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記異方性のエッチング処理を行なう工程の前に、前記基板の前記表面上にエッチングマスク層を設ける工程をさらに包含し、前記エッチングマスク層のパターンに応じて、コーナーキューブの単位要素のサイズが制御される請求項3に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記立体形状要素は前記結晶材料から構成されている、請求項1に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記立体形状要素は、前記結晶材料の{100}面によって規定される面を有する請求項1に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記第1活性種を供給する工程は、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なう工程を包含する請求項1に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記結晶成長によって、前記結晶材料の{100}面によって規定される面を有するコーナーキューブの単位要素が形成される請求項8に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記結晶材料はガリウム砒素であり、前記結晶成長は、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方を原料とする気相成長法によって行なわれる請求項8に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記第1活性種を供給する工程は、前記第1活性種と、前記基板をエッチングすることが可能な種との混合物を前記基板に供給する工程を包含する請求項1に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記結晶材料はガリウム砒素であり、前記第1活性種を供給する工程は、ガリウムまたはガリウムを含む化合物と、砒素または砒素を含む化合物との少なくとも一方、および、ハロゲンまたはハロゲン化合物を前記基板に対して供給する気相加工法によって行なわれる請求項11に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記第1活性種を供給する工程によって、互いに直交する3つの前記{100}面によって規定される3面を持つコーナーキューブの単位要素が形成される請求項1に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記3面は、互いに直交する略正方形の3面である請求項13に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記活性種を供給する工程によって前記基板に形成されたコーナーキューブアレイ形状を、他の材料に転写する工程をさらに包含する請求項1から14のいずれかに記載のコーナーキューブアレイの製造方法。
- 少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなり、前記結晶材料の{111}面と実質的に平行な表面を有する基板であって、前記表面に、所定のパターンを有する凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状要素が設けられている基板を用意する工程と、
前記立体形状要素が形成された前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含む第1活性種を供給することによって、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行う工程と
前記基板の露出表面の形状を調整する工程と
を包含するコーナーキューブアレイの作製方法。 - 前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板の前記露出表面のうち前記結晶材料の{100}面以外の不要な結晶面を減少させる工程である、請求項16に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、
前記基板に対して第1の加工処理を行う工程と、
前記基板に対して前記第1の加工処理と異なる第2の加工処理を行う工程とを含み、
前記第1の加工処理を行う工程は、前記基板の前記露出表面のうち第1部分に生じた前記不要な結晶面を減少させるとともに、前記基板の前記露出表面のうち前記第1部分と異なる第2部分に前記不要な結晶面を生じ、
前記第2の加工処理を行う工程は、前記第2部分に生じた前記不要な結晶面を減少させるとともに、前記第1部分に前記不要な結晶面を生じる、請求項16または17に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。 - 前記不要な結晶面が減少して再帰反射率が95%以上になるまで、前記第1の加工処理と前記第2の加工処理とを交互に行う、請求項18に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程を含む、請求項16から19のいずれかに記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第2活性種を供給することによって、異方性の結晶成長を行なう工程を含む、請求項16から20に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記第1の加工処理を行う工程は、前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程を含み、前記第2の加工処理を行う工程は、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第2活性種を供給することによって、異方性の結晶成長を行なう工程を含む、請求項16から21に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記基板の前記露出表面の一部を除去する工程は、異方性のエッチングによって行う、請求項20または22に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記基板の露出表面の形状を調整する工程は、前記基板に対して、前記結晶材料に含まれる元素を含み、前記第1活性種と同じまたは異なる第3活性種と、前記基板をエッチングすることが可能な種との混合物を供給する工程を含む、請求項16から21に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記混合物を供給する工程では、前記基板の前記露出表面に対して、異方性のエッチングを行うとともに異方性の結晶成長を行う、請求項24に記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 前記基板の前記露出表面の形状を調整する工程は、前記結晶材料の面方位に依存してエッチングまたは結晶成長を行う工程を含む、請求項16から25のいずれかに記載のコーナーキューブアレイの作製方法。
- 少なくとも表面部分が立方晶系の結晶材料からなる基板に形成されたコーナーキューブアレイであって、
前記結晶材料の{111}面において所定のパターンで形成された凹部、凸部、または凹部と凸部との組み合わせからなる立体形状単位要素と、
前記立体形状要素上に成長させられた結晶層であって、前記結晶材料に含まれる元素を含む活性種を用いて、結晶面方位によって成長速度が異なる異方性の結晶成長を行なうことによって形成された結晶層と
を有するコーナーキューブアレイ。
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