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JP2004076215A - 紙パルプ工程でのスケール防止方法 - Google Patents

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Ikuko Nishida
西田 育子
Kazuhiro Honda
本田 数博
Shigeru Sato
佐藤 茂
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Kurita Water Industries Ltd
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Abstract

【課題】水中に存在する金属イオンや製紙用薬剤の影響を受けない、超音波処理によって、工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止する紙パルプ製造工程でのスケール防止方法を提供する。
【解決手段】紙パルプ製造工程におけるスケール防止方法において、原料調製工程、蒸解工程、パルプ化工程、パルプ洗浄工程、漂白工程、沙紙工程、廃液回収工程、廃液処理工程及びアルカリ回収工程の少なくとも一箇所以上の工程水に、周波数20kHz以上及び被照射点での超音波の強度が0.3W/cm以上の超音波を照射することによって、該工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止する紙パルプ工程でのスケール防止方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙パルプ工場の原料調製工程、蒸解工程、パルプ化工程、パルプ洗浄工程、漂白工程、抄紙工程、廃液回収工程、廃液処理工程及びアルカリ回収工程において生成するスケールの付着防止に関する。さらに詳しくは、上記各工程の工程水の少なくとも一箇所以上の工程水に、周波数20kHz以上及び被照射点での超音波の強度が0.3W/cm以上の超音波を照射することによって、該工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止することを特徴とする紙パルプ工程でのスケール防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙パルプ製造工場においては、原料木材のチップ化処理、若しくは、回収古紙を離解、漂白処理する原料調製工程、化学薬剤処理によって木材中のリグニン等の有害不純物を除去する蒸解工程、セルロースを主成分とする製紙原料にするパルプ化工程、パルプ洗浄工程、漂白工程、抄紙工程、蒸解工程等からの廃液を回収する工程、廃液を処理して再利用する工程及びアルカリ回収工程等において、水に難溶性の無機化合物塩の結晶が多量に生成する。
紙の原料であるパルプにはカルシウム塩やバリウム塩を含み、原料水中や白水中にカルシウムイオン、バリウムイオンとして溶出する。特に回収古紙を原料にしたパルプの場合は、古紙中に無機系の填料が多量に存在し、特にカルシウムイオンの溶出が多い。
また、紙パルプ工場の抄紙工程においては、紙の定着、pH調整を主な目的として、硫酸バンドが広く用いられている。また、pH調整のために硫酸を添加する場合もある。これらに起因する硫酸イオンと、パルプ原料に由来するカルシウムイオン、バリウムイオンが結合して、水に難溶性の硫酸カルシウムや硫酸バリウムがスケールとして生成する。これらのスケールは、原料混合のミキシングチェスト、タンク、種箱、配管、ファンポンプ、スクリーン、インレット吹き出し口等の製紙工程の諸機器に付着して機器の持つ本来の性能を低下させるだけでなく、壁面で付着成長したスケールの一部が脱落して紙切れを生じさせたり、紙製品に斑点を生じさせて品質を損なう等、生産に大きな損失をもたらす場合がある。
また、紙の原料であるパルプは、木材チップを苛性ソーダ等の蒸解薬剤で蒸解することにより得られる。パルプ製造では多量の苛性ソーダと水を使用するため、一般的にアルカリ回収工程によって、苛性ソーダを回収し、水の有効利用が図られている。
このアルカリ回収工程は、木材チップを蒸解する木釜、黒液を濃縮するエバポレーター、ボイラ、ディゾルバータンク、緑液シックナー、苛性化槽、および回収、炭酸カルシウムを生石灰にするロータリーキルン等よりなっている。アルカリ回収工程を流れる水は、pHが高く、高温で、かつ木材由来のカルシウムイオン、炭酸イオンを含み、苛性化工程では生石灰を添加することによって、水酸化ナトリウムを回収し、再度木材チップの蒸解に循環使用される。このように、この水は、炭酸カルシウムが高過飽和状態になっているため、装置や配管内壁には炭酸カルシウムを主成分とするスケールの付着が恒常的に起こっている。
また、パルプ製造工程においては、木材原料由来もしくはアルカリ回収工程からのリサイクル水由来のカルシウムイオンと原料由来のシュウ酸から、シュウ酸カルシウムスケールが生成しやすい。炭酸カルシウムスケールが生じる場合もある。
アルカリ回収工程やパルプ製造工程において装置や配管内壁にスケールが付着すると、流量低下を起こして生産性が低下するばかりでなく、場合によっては、配管の閉塞を起こし、多大なトラブルを引き起こす。装置や配管にスケールが付着した場合には、高圧水を吹き付けたり、ハンマーで叩き落としたり、手作業で行う場合が多く、多大の労力と時間が必要である。
付着したスケールを叩き落とす時には、スケールの破片が飛び散るため、作業の安全性の点で問題がある。また、炭酸カルシウムは酸に可溶であるため、塩酸等で洗浄する場合もあるが、木材チップ由来のイオウ成分と反応して硫化水素が発生しやすいため、その作業は非常に危険である。
以上のような紙パルプ工場のスケール付着問題を改善するために、従来、スケール防止剤ポリマーを添加することは一般的に行なわれている。
例えば、カルシウム系スケールに対しては、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基が有効で、必要に応じて、これらと、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニルモノマーや、アクリルアミド等のノニオン性ビニルモノマーを対象水質に応じて組合せたコポリマーがスケール防止剤として一般的に使用されている。また、ヘキサメタリン酸ソーダやトリポリヘキサメタリン酸ソーダ等の無機ポリリン酸類、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸やホスホノブタントリカルボン酸等のホスホン酸類も一般的に使用されている。
また、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のシリカ系スケール防止には、アクリルアミド系(特開昭61−107998号公報)、カチオン系(特開平7−256266号公報)、ポリエチレングリコールを用いる方法(特開平2−31894号公報)、N−ビニルカルボン酸アミド重合体を用いる方法(特開平10−165986号公報)等のスケール防止剤が提案されており、スケール種に応じてポリマーが使い分けられている。
また、該スケール物質と同一または類似の結晶を結晶核生成の種晶として抄紙または原料調製工程、アルカリ回収工程水に添加し、該スケール物質を沈降分離する方法も提案されている。しかし、これらの方法は、水中に存在する金属イオンや種々の製紙用薬剤の影響を受け、効果の安定性に欠点があり、改善が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙パルプ工場の原料調製工程、蒸解工程、パルプ化工程、パルプ洗浄工程、漂白工程、抄紙工程、廃液回収工程、廃液処理工程及びアルカリ回収工程において生成するスケールの付着防止に当たり、従来技術の欠点である水中に存在する金属イオンや種々の製紙用薬剤の影響を受けることなく、生成するスケールの付着を防止するために、上記各工程の少なくとも一箇所以上の工程水に、周波数20kHz以上及び被照射点での超音波の強度が0.3W/cm以上の超音波を照射することによって、該工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止することを特徴とする紙パルプ工程でのスケール防止方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、紙パルプ製造工程でのスケール付着防止方法を鋭意研究の結果、従来技術の欠点を、処理水に存在する金属イオンや薬剤の影響を受けない物理的手段である超音波処理に着目して、その超音波処理条件を空洞現象の発生領域に特定することによって、該工程水中の無機化合物塩を水中に析出させ、壁面のスケール化を防止し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明は、
(1)紙パルプ製造工程におけるスケール防止方法において、原料調製工程、蒸解工程、パルプ化工程、パルプ洗浄工程、漂白工程、抄紙工程、廃液回収工程、廃液処理工程及びアルカリ回収工程の少なくとも一箇所以上の工程水に、周波数20kHz以上及び被照射点での超音波の強度が0.3W/cm以上の超音波を照射することによって、該工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止することを特徴とする紙パルプ工程でのスケール防止方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の紙パルプ製造工程におけるスケール防止方法は、紙パルプ製造工程における原料調製工程、蒸解工程、パルプ化工程、パルプ洗浄工程、漂白工程、抄紙工程、廃液回収工程、廃液処理工程及びアルカリ回収工程の少なくとも一箇所以上の工程の装置又は配管の工程水に、周波数20kHz以上及び被照射点での超音波の強度が0.3W/cm以上の超音波を照射することによって、該工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止することによりスケール防止することができる。
本発明のスケール防止方法の対象となる紙パルプ製造工程は、原料木や古紙などの原料搬入から、完成紙搬出の全工程の内、スケール付着の原因となる工程水が発生する次の各工程を対象とすることができる。
本発明の対象となる原料調製工程は、丸太原料木の場合には、剥皮、切断、チップ化等の工程で汚染洗浄水が発生する。また、古紙を原料にする場合には、水中で離解され、除塵、脱インキと洗浄、漂白などの処理を受け、古紙には無機系の填料が多量に存在し、これらの処理過程で、特にカルシウムイオンの溶出が多い。この過程の工程水に溶出した多量の金属イオン類がスケール生成の原因になり得る。
本発明の対象となる蒸解工程は、主として、紙パルプ化に有害な成分であるリグニンを除去する工程である。蒸解薬品として、ソーダ法では苛性ソーダ、サルファイト法では亜硫酸水素塩、クラフト法では苛性ソーダと硫化ナトリウム等を使用することができる。現在、化学パルプの主流になっているクラフト法では、170℃で数時間加圧下に回分式もしくは連続式により蒸解液で処理することができる。この過程での廃液は黒液と呼ばれ、多量の有機物、金属塩類、硫化物等を含有し、残留アルカリのためpH12以上であって極めて高負荷の汚染廃液である。次の廃液回収工程でパルプ成分と分離した廃液を、廃液処理工程に送り有機物は焼却処分し、蒸解薬品成分は、アルカリ回収工程で分離しリサイクルすることができる。この工程での工程水に溶出した多量の金属イオン類がスケール生成の原因になり得る。
【0006】
本発明の対象となる廃液回収工程は、蒸解工程で得られた黒液から比較的少量の水によってパルプ成分は洗浄分離され、固形分濃度14〜18%の黒液を回収することができる。黒液の固形分の約6割が有機物である。この工程での工程水に溶出した多量の金属イオン類がスケール生成の原因になり得る。
本発明の対象となる廃液処理工程は、黒液の燃焼は、通常の焼却炉で行なうことができる。この場合は、焼却炉に送る前に、多重効用真空蒸発装置等で60%以上に濃縮する必要がある。ロータリーキルン方式では有機物焼却と黒灰の回収を行い、湿式燃焼の場合には、この黒液中で液中バーナーで有機物を焼却除去し、水管炉壁式燃焼炉(回収炉ボイラー)内に噴射する方式では、有機物を燃焼除去するとともに高圧のスチームを発生させ回収することができる。現在は、熱回収による省エネ化と装置効率の点で回収炉ボイラー方式が主流になっている。この方式では、回収炉に噴霧された黒液は、直ちに膨化、着火し、還元燃焼した有機物燃焼ガスは、二酸化硫黄や無機質粉塵を含んでおり、排ガス処理装置に送ることができる。灰分は炉床上に堆積することができる。この工程での廃水に存在する多量の金属イオン類がスケール生成の原因になり得る。
本発明の対象となるアルカリ回収工程は、回収炉ボイラーで説明すると、炉床上に堆積する炭化水素由来の有機酸ナトリウム塩は炭酸ナトリウムに、チオリグニンのナトリウム塩及び硫酸ナトリウムは硫化ナトリウムに変化する。これらの無機ナトリウム塩は溶融し、炉の底部から排出され、ディゾルバータンクに入って水に溶解することができる。この液は、金属の硫化物、炭素粒子を含み、緑色を帯びているので、緑液と呼ばれる。この緑液は、沈降法、フィルター、遠心分離器等で不溶解分除去してから、水酸化カルシウムを添加して苛性化し、溶存している炭酸ナトリウムを苛性ソーダに転化させることができる。分離した石灰マッド(主成分は炭酸カルシウム)はナトリウム化合物を洗浄回収した後、ロータリーキルンで、1,100℃〜1,250℃に加熱し、生石灰に転化し回収することができる。この工程での工程水に溶出した多量の金属イオン類がスケール生成の原因になり得る。
【0007】
本発明の対象となるパルプ化工程は、広義の化学処理によるパルプ製造工程全体ではなく、蒸解工程で得られた黒液から比較的少量の水によってパルプ成分を洗浄分離し、セルロースを主成分とする製紙原料にする工程のことであって、パルプ成分は、次のパルプ洗浄工程に送ることができる。この工程での工程水に溶出した多量の金属イオン類がスケール生成の原因になり得る。
本発明の対象となるパルプ洗浄工程は、蒸解工程で得られた主としてセルロースよりなるパルプを洗浄することができる。この過程で工程水に溶存またはパルプに付着する物質が工程水中に移行してきて、スケールの原因になり得る。
本発明の対象となる漂白工程は、リグニン起因の褐色成分や古紙由来の着色物質を脱色する工程であって、例えば、漂白剤として、ハイドロサルファイト(亜二チオン酸)塩、塩素及び苛性ソーダ、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸素、過酸化水素、オゾン等を使用することができる。これらの漂白処理によって、着色成分は分解されて可溶化し、工程水に移行する。この過程で工程水に溶存またはパルプ付着物質が水中に移行してきて、スケールの原因になり得る。
本発明の対象となる抄紙工程は、精製されたパルプ植物繊維を水に分散させて得られる3次元的に均一な繊維懸濁液を、多孔性ろ材の上に展開してろ水し、薄層化する工程である。紙の定着、pH調整を主な目的として、硫酸バンドが広く用いられている。また、pH調整のために硫酸を添加する場合もある。これら由来の硫酸イオンと、パルプ原料に由来するカルシウムイオン、バリウムイオンが結合して、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の、水に極めて難溶性の無機化合物塩となる。これら無機化合物塩がスケールとして生成する原因になり得る。
この過程で溶存または付着物質が水中に移行してきて、スケールの原因になり得る。
【0008】
以上の各工程は、スケール生成によるトラブルの起きやすい工程であって、少なくとも、その一箇所以上の工程水に本発明の超音波処理を行い、スケール発生を重点的に防止することができる。本発明において、超音波処理は各工程の途中の工程水又は、各工程から流出する工程水に対して行なうことができる。例えば、抄紙工程では硫酸バンドが添加される場所付近及び/又は湿潤シートのプレス脱水時の回収水(白水の処理水)が添加される場所付近、パルプ洗浄工程では苛性ソーダ添加場所付近、アルカリ回収工程では生石灰添加場所付近等を特に効果的に選択し超音波処理を行うことができる。
本発明に用いる超音波は、周波数が20kHz〜10MHz、実用的には20kHz〜3MHzであるものが好ましいが、出力との関係で効果に差はあっても、周波数が20kHz以上であれば特に制限することなく使用することができる。
本発明に用いる超音波照射の効果は、使用する超音波発生装置の出力自体のみによって決まるものではなく、被照射点での超音波の強度すなわちエネルギー密度に依存するものである。被照射点での超音波の強度は、超音波発生装置の発生出力、立体放散角度、距離、通過媒質での減衰率等によって決まる。被照射点での超音波の強度が大きいほど効果は早く強く現れる。超音波伝播媒質としては液体、気体、固体のいずれも利用することができる。気体では吸収・減衰が液体、固体に比べて大きい。被照射点での超音波の強度は、音の輻射圧を測定する装置(例えば、ト−ション・ベーン輻射圧計等)によって測定することができる。指向性の高い超音波発生装置であって、被照射点が近接しているのであれば、被照射点での超音波の強度(W/cm)の数値は、超音波発生装置の表示実効出力(W)の数値とほぼ同程度とみなすことができる。
【0009】
本発明に用いる超音波の強度は、被照射点の水中で、超音波による強制振動によって「空洞現象」が発生する下限強度である0.3W/cm以上になる超音波を照射する必要がある。「空洞現象」の発生によって、溶存気体の放出が起こり、生成した水蒸気泡が消滅する際に気泡の周囲の水がぶつかり合って、局部的に著しい高圧を生じ、その機械的衝撃によって、溶存物質間の衝突が加速され、化学反応の促進、懸濁物質の凝集が進行する。この懸濁物質の凝集進行は、超音波の場では、大きな粒子はほとんど静止しているのに、小さな粒子は音波と運動を共にするので衝突の機会が増すことに起因するものと考えることができる。
この観点から、本発明の超音波の強度は、0.3W/cm以上であれば、十分であると認めることができる。
本発明に用いる超音波を発生する装置は、公知の超音波発生装置を特に制限することなく使用することができる。水晶振動子に高周波電圧を加えて、基本振動数または奇数倍振動数で共振させる方式のものを使用することができる。100kHz以下では磁歪振動子方式あるいは電磁型スピーカーに類似した電磁型音源(導電型音源)を使用することができる。実用的には、出力50〜100Wの板状、棒状等の超音波発生器を好適に使用することができる。
実用の超音波発生装置としては、超音波洗浄器型、ホーン型超音波発振機(ホモジナイザー)等の超音波発生器などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
対象となる水をピットやタンクに導き、そこで照射してもよく、水を通水する配管部分に発振機を備え、照射することもできる。その場合、水を挟み込むように両側から照射することができる。また、対象となる水の温度を、溶解塩類の過飽和濃度になるまで下げて超音波照射すれば、溶解塩のイオン濃度をさらに効果的に下げることができる。
発振機の数は水量に合わせて選択することができる。
【0010】
超音波照射時間は、対象工程水の汚染程度、及び超音波発生装置の出力や使用形態に応じて、連続的、定期間歇的等、状況に合わせて適宜選択することができる。定期間歇的に照射する場合は、例えば、1時間に10〜20分間定期的に照射することができる。
本発明で除去すべき無機化合物塩は、次のような過程で発生する。紙の原料であるパルプにはカルシウム塩やバリウム塩を含み、原料水中や抄紙工程での白水と呼ばれる排水中にカルシウムイオン、バリウムイオンとして溶出する。特に回収古紙を原料にしたパルプの場合は、古紙中に無機系の填料が多量に存在し、特にカルシウムイオンの溶出が多い。これらカルシウムイオンは、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム等の無機化合物となる。また、紙パルプ工場の抄紙工程においては、紙の定着、pH調整を主な目的として、硫酸バンドが広く用いられている。また、pH調整のために硫酸を添加する場合もある。これら由来の硫酸イオンと、パルプ原料に由来するカルシウムイオン、バリウムイオンが結合して、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の、水に難溶性の無機化合物塩となる。
これら無機化合物塩がスケールとして生成する原因になり得る。
本発明を適用して発生を防止すべきスケールは、鱗片状や膜状の主として無機化合物塩からなる固形物であって、配管、機器、装置等に付着してトラブルの原因となり得る。紙パルプ工場で一般に問題となるスケール全般を対象とすることができる。例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム等のカルシウム系スケールを主な対象とすることができる。
【0011】
本発明の超音波処理によって析出する無機化合物塩結晶化物は、基本的には前記スケールと同じ物質であるが、固化が進行する以前の段階のものである。析出物が低部に沈澱する場合には、必要に応じて、ろ過等によって除去・分離することもできる。
本発明の紙パルプ工程でのスケール防止方法においては、必要に応じて他のスケール防止剤、例えばポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体、アクリル酸と2−ヒドロキシ−2−アリロキシプロパンスルホン酸の共重合体等の有機ポリマーを使用することができる。また、これら有機ポリマーとニトリロトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン系化合物と混合使用することができる。また、必要に応じて殺菌剤等のスライムコントロール剤や防腐剤、紙力剤、サイズ剤等と併用することができる。
また、スケール物質と同一または類似の結晶を結晶核生成の種晶として抄紙工程、原料調製工程、アルカリ回収工程等に添加し、該スケール物質を沈降分離する方法も併用することができる。
【0012】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
抄紙工程の模擬工程水として、カルシウムイオン800mg/L及び硫酸イオン2400mg/Lを含有し、pH値が6.4の水溶液を1000mL調製した。なお、カルシウムイオンは塩化カルシウム2水和物を用い、また、硫酸イオンは無水硫酸ナトリウムを用いて調製した。この水溶液を恒温水槽中で40℃に加温して温度が一定になったときに、チップ先端30mmのホーン型超音波発生器[Dr.Hielscher社製、UP400S]を使用し、発生周波数を24kHz、出力を50Wに調節設定して、超音波を照射した。被照射点の水相が激しく流動し、空洞現象の発生が認められた。経過時間5分、10分、20分、30分ごとにサンプリングして、0.1μmのフィルターでろ過した後、カルシウムイオン濃度をEDTAによる滴定で測定した。結果を第1表に示す。
【0013】
実施例2
模擬工程水を、カルシウムイオン1200mg/L及び硫酸イオン1800mg/Lを含有し、pH値が4.5の水溶液とした以外は、実施例1と同じ条件で超音波を照射した。被照射点の水相が激しく流動し、空洞現象の発生が認められた。実施例1と同じ方法でカルシウムイオン濃度を測定した。結果を第1表に示す。
実施例3
発生周波数を24kHz、ト−ション・ベーン輻射圧計[本多電子社製、HUS−5]によって測定された被照射点での超音波の強度が0.3W/cmになるように調節設定して、超音波を照射した以外は、実施例1と同じ条件で超音波を照射した。被照射点の水相が激しく流動し、空洞現象の発生が認められた。カルシウムイオン濃度は、1時間後720mg/Lに低下した。
比較例1
模擬工程水を、カルシウムイオン800mg/L及び硫酸イオン2400mg/Lを含有し、pH値が6.4の水溶液とし、超音波を照射しない以外は、実施例1と同じ条件で実験し、カルシウムイオン濃度を測定した。結果を第1表に示す。
【0014】
比較例2
模擬工程水を、カルシウムイオン1200mg/L及び硫酸イオン1800mg/Lを含有し、pH値が4.5の水溶液とし、超音波を照射しない以外は、実施例1と同じ条件で実験し、カルシウムイオン濃度を測定した。結果を第1表に示す。
比較例3
発生周波数を24kHz、ト−ション・ベーン輻射圧計[本多電子社製、HUS−5]によって測定された被照射点での超音波の強度が0.25W/cmになるように調節設定して、超音波を照射した以外は、実施例1と同じ条件で超音波を照射した。被照射点の水相は流動せず、空洞現象の発生は認められなかった。カルシウムイオンの測定濃度は、1時間後も初期濃度と変わらず、超音波を照射した効果は現れなかった。
【0015】
【表1】
Figure 2004076215
【0016】
【発明の効果】
スケール成分無機化合物塩を含む工程水に超音波を照射することにより、該工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止することができる。

Claims (1)

  1. 紙パルプ製造工程におけるスケール防止方法において、原料調製工程、蒸解工程、パルプ化工程、パルプ洗浄工程、漂白工程、抄紙工程、廃液回収工程、廃液処理工程及びアルカリ回収工程の少なくとも一箇所以上の工程水に、周波数20kHz以上及び被照射点での超音波の強度が0.3W/cm以上の超音波を照射することによって、該工程水中の無機化合物塩のスケール化を防止することを特徴とする紙パルプ工程でのスケール防止方法。
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