JP2004073053A - ペット用トイレ砂 - Google Patents
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Abstract
【課題】大きい膨潤容量と速い膨潤速度との組み合わせを有し、少ない消費量で所期の目的を達成できる活性ベントナイトの粒状成形品からなるペット用トイレ砂を提供すること。
【解決手段】モンモリロナイトを主成分とする酸性白土若しくはベントナイトを水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理することにより、1重量%食塩水と純水のそれぞれに分散し、0.05重量%懸濁液として測定されたゼータ電位(単位:mV)の数値をそれぞれZ1(食塩水中)とZ0(純水中)としたとき、両者は共にマイナスの値であって、その絶対値が
|Z1|≧40 且つ |Z0|≧35
である活性ベントナイトの粒状成形品からなるペット用トイレ砂。
【選択図】 なし
【解決手段】モンモリロナイトを主成分とする酸性白土若しくはベントナイトを水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理することにより、1重量%食塩水と純水のそれぞれに分散し、0.05重量%懸濁液として測定されたゼータ電位(単位:mV)の数値をそれぞれZ1(食塩水中)とZ0(純水中)としたとき、両者は共にマイナスの値であって、その絶対値が
|Z1|≧40 且つ |Z0|≧35
である活性ベントナイトの粒状成形品からなるペット用トイレ砂。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペット用トイレ砂に関するもので、より詳細には、膨潤力(容量)及び膨潤速度の組み合わせが良く、吸水性、固化性、脱臭性等に優れた活性ベントナイトからなるペット用トイレ砂に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸性白土及びベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土であり、世界各地で産出されている。これらの内でも、米国のワイオミング産ベントナイトは泥水の用途等に適した物性を有しているが、日本国内で産出される粘土はこの用途での性能が比較的に劣る場合がある。このため、天然産の酸性白土若しくはベントナイト(以下、単に「原料粘土」又は「本原料粘土」と記すことがある)を炭酸ナトリウム等のアルカリで処理し、膨潤性や粘性等を向上させた所謂活性ベントナイトが種々の用途に使用されるに至っている。
【0003】
例えば、特開昭63−50310号公報には、含水酸性白土に、無水物換算で1乃至5重量%の固体炭酸ナトリウムを添加し、固体の添加混合物を水分の保持条件下に50℃以上の温度で混練して、活性ベントナイトに転化することが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような活性ベントナイトをペット用トイレ砂に用いる場合、この活性ベントナイトは、大きい膨潤容量と速い膨潤速度との組み合わせを有していることが要求される。即ち、このような特性を有する活性ベントナイトを用いる粒状のトイレ砂においては、尿などが付着した部分の各粒子が迅速に膨潤(膨張)して粒同士の粘着(固着)を起こす機能を持っており、それにより汚れた部分のみが固結し、この固結部分を簡単に除去することが可能になるという利点を有している。この場合、大きい膨潤容量と速い膨潤速度を有していることから、単位容積のトイレ砂が単位時間に吸収する水分量(吸収能力)が大きいために、膨潤により固結する容積がより小さくなり、固結した活性ベントナイト粒の取り除く量が少なくなることで、消費者にとって経済的にも大きなメリットとなる。
【0005】
しかしながら、公知の活性ベントナイトからなるペット用トイレ砂は、純水での膨潤性についてはある程度満足できるものではあっても、猫などペットの尿のように少量の電解質を含んだ水溶液、例えば1重量%食塩水(以下、「1%食塩水」又は単に「食塩水」と記すことがある)に対する膨潤性、特に膨潤容量と膨潤速度との組み合わせに関しては未だ充分満足できるものではなかった。また、炭酸ナトリウム等で処理した従来の活性ベントナイトでは、処理する原料粘土の産地等によって、特性のバラツキを生じ、ある種の産地で採取された原料粘土では、炭酸ナトリウムで処理しても満足すべき膨潤容量や膨潤速度を示さず、用いる原料粘土の産地等が著しく制限されるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、特に電解質を含む水溶液に対しても大きい膨潤容量と速い膨潤速度との組み合わせを有し、少ない消費量で所期の目的を達成できる活性ベントナイトの粒状成形品からなるペット用トイレ砂を提供することにある。
本発明の他の目的は、任意の産地で採取された原料粘土から得られる活性ベントナイトの粒状成形品からなるペット用トイレ砂を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、活性ベントナイトの粒状成形品から成るペット用トイレ砂において、
前記活性ベントナイトは、1重量%食塩水及び純水のそれぞれに分散して調製された0.05重量%懸濁液で測定されるゼータ電位(mV)が共にマイナスであり、且つ下記式:
|Z1|≧40
及び
|Z0|≧35
上記式中、Z1は、1重量%食塩水中で測定したゼータ電位であり、
Z0は、純水中で測定したゼータ電位である、
の条件を満足するものであることを特徴とするペット用トイレ砂が提供される。
【0008】
本発明で用いる活性ベントナイトは、
(1)1重量%食塩水を用いて測定される膨潤力をS1(ml/2g)及び純水を用いて測定される膨潤力をS0(ml/2g)とするとき、下記式:
S1≧18
S0≧12
及び
S1≧S0
の条件を満足するものであること、
(2)モンモリロナイトに特有の微細の層状構造を有し、モル比で表して
Al2O3/SiO2=9.5×10−2 乃至 16×10−2
Na2O/SiO2=1.4×10−2 乃至 4.5×10−2
の化学組成を有すること、
が好ましい。
また、上記の活性ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする天然産の酸性白土若しくはベントナイトを原料粘土として、該原料粘土を水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理して得られる。
【0009】
尚、実施例の測定方法においても後述するが、本発明における「純水」とは、イオン交換樹脂を装填した純水製造装置を通して得られる精製水、いわゆる脱塩水のことであり、「1重量%食塩水」とは、一般の生理食塩水(溶液100cc中に0.85〜0.95gの食塩を含有)よりもやや濃い濃度(1重量%)で、食塩を上記の純水に溶解して調製される水溶液のことである。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明のペット用トイレ砂は、活性ベントナイトの粒状成形品からなるものであるが、天然産の酸性白土若しくはベントナイトを水酸化アルカリ(特に水酸化ナトリウム)及び/又はケイ酸アルカリ(特にケイ酸ナトリウム)で処理することにより得られた活性ベントナイトを用いることが重要な特徴である。
【0011】
[作用]
〔ゼータ電位と膨潤性〕
例えば天然産の酸性白土を水酸化ナトリウム及び/又はケイ酸ナトリウムで処理することにより得られた活性ベントナイトでは、原料の酸性白土の産地によらず、1重量%食塩水に分散して得られる0.05重量%懸濁液で測定されるゼータ電位Z1(mV)及び純水に分散して得られる0.05重量%懸濁液で測定されるゼータ電位Z0(mV)が、何れも原料の酸性白土に比してマイナス側にシフトし、且つ下記式:
|Z1|≧40
及び
|Z0|≧35
の条件を満足するものとなる。しかも、このようなゼータ電位特性を有する活性ベントナイトは、1重量%食塩水を用いて測定される膨潤力をS1(ml/2g)及び純水を用いて測定される膨潤力をS0(ml/2g)とするとき、下記式:
S1≧18
S0≧12
及び
S1≧S0
の条件を満足しており、膨潤容量と膨潤速度の両方で改善がなされているという現象も認められる。
【0012】
一方、原料粘土を炭酸ナトリウムで処理して得られた活性ベントナイトでは、上記と同様に食塩水を用いて測定されるゼータ電位Z1は、水酸化ナトリウムでの処理と同程度にマイナス側に大きく増大しているが、純水を用いて測定されるゼータ電位Z0の方はそれ程増大しないか、若しくは産地の異なる原料粘土を用いた場合には殆ど増大しないものもある。即ち、測定に用いる液の電解質の濃度によってゼータ電位に大きく差が生じてしまい、この結果、膨潤性の面でも、媒体となる液の電解質濃度の変化等に対して不安定な挙動を示すものとなってしまう。
【0013】
例えば或る原料粘土は、1%食塩水と純水でのゼータ電位(マイナス)の絶対値が、それぞれ、|Z1|=34、|Z0|=26 であり、膨潤力は、それぞれ、S1=4、S0=6 であった(後述の比較例3参照)。
この原料粘土を炭酸ナトリウムで処理して得られた活性ベントナイトは、ゼータ電位(マイナス)の絶対値が、それぞれ|Z1|=41、|Z0|=32であり、膨潤力の数値は、それぞれS1=16、S0=23であった(比較例1参照)。
【0014】
さらに、上記の原料粘土を水酸化ナトリウムで処理して得られた活性ベントナイトは、ゼータ電位(マイナス)の絶対値が、|Z1|=43、|Z0|=41と大きく、膨潤力の数値も、S1=22、S0=16 と共に高く、特に電解質を含む水に対して大きな膨潤力を示した(実施例1参照)。
【0015】
上記の事実からわかるように、本発明では、水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで本原料粘土を処理することにより、ゼータ電位のマイナス側への増大が生じ、この結果、膨潤容量や膨潤速度の改善が生じるものである。このように、本発明において用いる活性ベントナイトは、前記のようなゼータ電位の値を有しているため、食塩水に対して特に大きな膨潤力を示し、尿のような電解質を含む水溶液に対しても優れた膨潤性を示すことが理解される。
【0016】
本発明における水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリによる処理が、従来の炭酸アルカリによる処理との比較で、上記膨潤性に及ぼす効果に差がある理由は明確でないが、本発明者等は次のように考えている。
【0017】
即ち、ベントナイトの主要成分であるモンモリロナイトは、SiO4四面体層−AlO6八面体層−SiO4四面体層から成る三層構造、或いはこれらの四面体層、八面体層が異種金属で同型置換された三層構造を基本構造(単位層)としている。これら単位層(板状体)の積層層間には、水やアルカリイオン、特にナトリウムイオンが多く存在している。このベントナイトに水が混合されると、モンモリロナイトの持つ上記単位層の積層層間に多くの水が入り、豊富に存在するアルカリイオンを取り囲むようにして層間を押し広げ、いわゆる膨潤が起こるが、やがては単位層がバラバラなコロイド状に分散し、流動状態となる。これを放置すると、単位層同士の吸引反発により、カード・ハウス構造が形成され、高度に増粘するか、あるいはゲル化した状態となる。これが、ベントナイトによる吸水性及び固化性の原理に大きく関係している。
【0018】
一般に、モンモリロナイト粒子−水系における粒子の膨潤は次の2つの原因によって起こると言われている。1つは、Na−モンモリロナイトのように粒子内部の単位層間の結合が弱い場合に、そこに水が入って層間が拡大する場合である。他の1つは、モンモリロナイト粒子の表面に隣接する拡散イオン層の間に存在する塩類濃度差のために浸透圧が生じ、電気二重層の厚さが増大するようになり、モンモリロナイト粒子間に反発力が発生する場合である。前者は内部膨潤、後者は外部膨潤と言われる。
一般に、内部膨潤は、層間に1価の陽イオン、特にNa+イオンが多い程、且つCa2+イオンなどの多価陽イオンが少ない程大きい。一方、外部膨潤は、粒子表面の陰電荷が大きい程、且つ吸着陽イオンのイオン価が小さい程大きい。また、塩類濃度が低い程大きい。
【0019】
本発明の原料粘土として用いる酸性白土若しくはベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とするものであるが、その産地により、種々の不純物が含まれており、この中には、クリストバライト(SiO2)の如き結晶性粒子や遊離の非晶質シリカ等がある。このクリストバライトは、前述した層状構造を有するものではなく、モンモリロナイトの膨潤性には全く寄与しないばかりか、一部のモンモリロナイトの微細な層状構造粒子を硬く包み込むような形で存在し、モンモリロナイトの層間に水が入り層間が広がって膨潤するのを阻害する方に働いている。
従って、このクリストバライトが多く含まれている産地のベントナイトでは、膨潤性が低く、クリストバライトの少ない産地のベントナイトでは、膨潤性が比較的高い。
【0020】
クリストバライトを多く含む産地の酸性白土若しくはベントナイトを炭酸アルカリで処理する場合には、陽イオン交換による層間イオンのアルカリイオン化は有効に行われるが、前述のクリストバライトによる阻害要因を除くことはできず、膨潤性を高めるという処理効果を最大限に引き出すことにはならない。
【0021】
これに対して、本発明にしたがい、水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理するときには、クリストバライトを容易に部分溶解し、モンモリロナイトの粒子を囲っている硬い被覆を壊すことにより、前述の阻害要因を相当に除くことができる。このため、クリストバライトを多く含む産地の原料粘土に対しても、モンモリロナイト層間のアルカリイオン化により膨潤性を高めるという活性ベントナイト化の処理効果はかなり大きくなる。
【0022】
該アルカリ処理による被覆クリストバライトの部分溶解には、膨潤性向上にとって、阻害要因の除去という上述の効果の他に更に付加的な効果が考えられる。
1つは、クリストバライトの部分溶解乃至は非晶質シリカの溶解により生成したもの及び/又は最初から添加されたものであるアルカリ・リッチなケイ酸アルカリが、炭酸アルカリの炭酸イオンと同様に、ソフトな酸根イオンであるケイ酸イオンを伴っているため、モンモリロナイト層間のイオン交換によるアルカリイオン化を容易にするためである。それに伴って、層間イオンの状態が1価の陽イオンであるアルカリイオンが多くなり、逆にCa2+イオンなどの多価陽イオンが少なくなることによって、前述の内部膨潤が起こりやすくなることの効果である。
【0023】
更には、種々の大きさの多価ケイ酸イオンがモンモリロナイト層の外表面に吸着若しくは沈着することにより、粒子表面の陰電荷が増大するためである。それに伴って、水又は水溶液に分散した場合に形成される固定層で固着している対イオンとしてはイオン価の小さいアルカリイオン等の陽イオンが多く、しかも固定層を含む粒子の総体的な電荷はマイナスで粒子間の反発力が生じており、前述の外部膨潤が起こりやすくなることの効果である。
【0024】
一般に、モンモリロナイトを含む粘土粒子−水系における粒子の膨潤は、水相が純水に近いほど大きく、電解質水溶液では小さいのが普通である。ところが、本発明の処理によって得られる活性ベントナイトでは、従来のベントナイトとは逆で、食塩水中での膨潤性が大きく且つ純水を用いて測定したときよりも高い膨潤力を有しているという全く予想外の優れた性能が見出されたのである。これは、本発明で用いる活性ベントナイト粒子の最も特徴的な物性であるが、本粒子表面のように、純水乃至食塩水中、特に食塩水中で絶対値の大きなマイナスのゼータ電位を示すものは、粒子の膨潤の要因中、外部膨潤の要因がより大きく利いているため、食塩水中での方がより高い膨潤力を示すという予想外の結果を出しているものと推察される。
【0025】
一方、従来の処理方法である炭酸ナトリウム処理によって得られた活性ベントナイトでは、純水中での膨潤力が、本発明で用いる活性ベントナイトよりも高いものもあるが、その場合も、食塩水中における膨潤力では本発明で用いるものに及ばない。この場合、食塩水中では或る程度大きなマイナスのゼータ電位を示しながら、その理由は明らかでないが、内部膨潤の因子の方が外部膨潤よりも大きく作用しているものと考えられ、モンモリロナイト層間のアルカリイオンによる効果がより大きく関予し、粒子表面の陰電荷の効果はあまり大きくは関与していないためと推察される。
【0026】
いずれにしても、本発明のアルカリ処理に由来する粒子表面の大きなマイナス荷電による外部膨潤の促進力が、食塩などの電解質の存在による外部膨潤の抑制力よりも上回っていることにより、食塩水中での膨潤性を高め、延いてはペットの尿に対する固化性能を高めるという従来にない重要な特長が、本発明で用いる活性ベントナイトには付与されている。
【0027】
〔固化性能の向上〕
かくして、本発明による活性ベントナイトの最大の特徴である食塩水中での高い膨潤性とこれを用いるペット用トイレ砂の優れた固化性能の発現が理解されるが、さらに本発明によれば、クリストバライト含有量の多少にかかわらず、種々の産地の原料粘土に対して膨潤性を高めることができるため、処理に用いる原料粘土の産地を制限される度合いが少ないという大きな利点も有していることになる。
【0028】
ここで、本発明における「固化性能」とは、トイレ砂として敷きつめられた個々の粒が、尿などの水溶液を吸収して膨潤(膨張)し、膨らむ粒同士が押し合いながら粘着し、固結して塊状化する過程、つまり固化プロセスの進行状態の良否に関わる性能のことである。
【0029】
本発明において、ペット用トイレ砂として用いる活性ベントナイトの膨潤容量及び膨潤速度、延いてはトイレ砂としての固化性能は、固化長の測定によって評価できる。この固化長の測定は、後で詳細に説明するが、一定粒度のトイレ砂を20cm以上の厚さに容器内に充填し、充填層上面より1cmの高さから、1%食塩水の一定量を10秒間かけて滴下し、トイレ砂が固化した部分の高さを測定するものである。
【0030】
トイレ砂となしたベントナイトの膨潤速度が小さいほど、また膨潤容量が小さいほど、食塩水は途中に留まらずに下方に流下するので、固化長は長くなる傾向がある。また、使用前のベントナイトの吸湿量によっても大きな影響を受け、一般に吸湿量が大きくなるほど、固化長は長くなる傾向がある。
【0031】
添付図面の図1は、本発明でペット用トイレ砂として用いる活性ベントナイト粒について、その吸湿量と固化長との関係をプロットしたものであり、図2は、従来の処理方法による活性ベントナイト粒について同様の関係をプロットしたものである。従来の活性ベントナイト粒の固化長は、吸湿前の乾燥状態での測定で35mm前後であるが、例えば吸湿量15重量%の条件下では150mm以上という大きな値をとり、吸湿による固化性能の低下が著しいことがわかる。これに対して、本発明にしたがって水酸化アルカリで処理された活性ベントナイト粒の固化長は、吸湿量の影響が小さく、乾燥状態では25mm前後と非常に短く、吸湿量15重量%の条件下でも80mm以下である。このことより、使用初期の固化性能も極めて高く、使用開始後の吸湿による固化性能の低下も実用上充分な程度に維持し得るという予想外の効果が明らかとなる。
【0032】
固化性能の優劣を表す固化長は或る程度に短い方が良いが、使用時の取扱い易さ、即ち固化物の堅さ(崩れ難さ)などの点から、20乃至120mm、特に25乃至100mmの長さに固化するのが特に好ましい。前述したように、固化長は使用前乃至使用時の大気からの吸湿によって長くなり、固化性能は劣化していく。トイレ砂の通常の使用期間における吸湿量が数%乃至20%前後であることを考えると、本発明の活性ベントナイトを用いたトイレ砂は、該吸湿量においても25乃至100mm前後の固化長を有し、従来の活性ベントナイトを用いたトイレ砂に比して、実用上も固化性能の優れたものであることが明らかである。
【0033】
前記したように、ベントナイト粒の固化長は乾燥状態(水分:1%以下)から吸湿量の増加に連れて長くなっていく。その程度(勾配)は元来の性能によって大きな違いがあること、すなわち、固化性能の良いものは乾燥状態での固化長がより短く、吸湿量の増加による固化長の増大の勾配はより小さいことがわかった。本発明の活性ベントナイト粒のように、乾燥状態での固化長が20mm以上35mm未満と従来品よりも短いものは、通常の使用期間における吸湿状態でも120mmを越えるような固化長にはならない。このことより、固化性能の実用上の優劣を評価する方法としては、乾燥状態での固化長の測定による方法が有用であることがわかる。
【0034】
本発明で用いる活性ベントナイトは、その粉末のX線回折像である添付図面の図3からわかるように、モンモリロナイトに特有の微細な層状構造を有しているものであり、さらに、酸化物基準のモル比で表して
Al2O3/SiO2=9.5×10−2 乃至 16×10−2 、
特に 10×10−2 乃至 14×10−2
Na2O/SiO2=1.4×10−2 乃至 4.5×10−2 、
特に 1.6×10−2 乃至 4.3×10−2の化学組成を有することが後述する吸着性、吸収性の点で好ましい。
【0035】
〔脱臭作用〕
一般に、有臭成分に対する脱臭作用は、物理吸着作用によるものと、化学吸着作用によるものとに大別される。高比表面積を有する表面での物理吸着作用は、雰囲気中に希薄な状態で存在する成分にも有効に作用する反面、吸着平衡状態が存在し、吸着された成分は吸着剤に対して吸着・脱離を繰り返して平衡に達する。一方、化学吸着では、一旦接触した成分は確実に捕捉され、捕捉した成分を容易には離さないという特徴がある。
【0036】
本発明に用いる活性ベントナイトは、上記の微細な層状構造を有するため、大きい比表面積を有し、有臭成分を吸着するという性能に優れている。これは単に物理吸着のみならず、化学吸着にも顕著な利点をもたらす。何となれば、有臭成分を濃縮された形で化学吸着サイトと接触させることが可能となるからである。
【0037】
上述した活性ベントナイトは、物理吸着による脱臭作用の寄与が大きいことも否定できないが、化学吸着による脱臭作用の寄与も大きいものと認められる。すでに指摘したとおり、モンモリロナイトの層間には金属イオンが存在しており、また、四面体層及び八面体層にも、同型置換の形でアルミニウム分以外の金属成分が含まれている。これらの金属成分は、硫化水素やメルカプタン類の化学吸着に役立っている。勿論、これらの金属成分は、有機酸由来の悪臭成分の脱臭にも役立っていると信じられる。また、モンモリロナイト、特に酸性白土中のモンモリロナイトでは、層間や層端に水素イオンやシラノール基(Si−OH)由来のプロトン酸が存在し、このプロトン酸或いは他の固体酸がアンモニアやアミン類の化学的吸着に役立っていると考えられる。
【0038】
したがって、本発明で用いる活性ベントナイトは、前述した化学組成を有すると共に、下記式(1)
AS=Ax/Six ‥‥(1)
式中、Axは活性ベントナイト中に含まれるNa、K、Mg、Ca、Feからなる各金属成分の単位重量当たりモル数の合計を表し、
Sixは活性ベントナイト中に含まれるシリカ(SiO2)成分の単位重量当たりモル数を表す、
で定義される金属成分モル比(AS)が0.10以上であること、及び70m2/g以上のBET比表面積を有することが、種々のガス成分、特に有臭成分に対して高い吸着性を示すという点で好ましい。
【0039】
後述する例に示すとおり、本発明で用いる活性ベントナイトは、有臭成分の吸着性能、即ちアンモニア、アミン等の塩基性ガス及び硫化水素、メルカプタン、有機酸等の酸性ガスの脱臭性能に優れている。
【0040】
〔細孔による吸水〕
本発明のペット用トイレ砂は、前述した活性ベントナイトを主体とする粒状成形品であり、特に、水銀圧入法で測定して、細孔半径1.5nm乃至105nmの範囲における細孔容積が0.15ml/g以上、特に0.2乃至0.35ml/gの値を有することが、ペットの尿を急速に吸収し、迅速に膨潤及び固結し、脱臭を速やかに行うために重要である。そのため、尿を残すことなく素早く吸収して、尿による固化部分を可及的に小さな容積に留めるようにすることが可能となる。後述する例に示すとおり、この細孔容積が上記範囲を下回るベントナイト粒状成形品では、尿との接触初期の段階で粒状物内部に尿を吸収する能力が不足し、最終的に一定尿量当たりの固化部分の容積が大きくなる傾向がある。
【0041】
また、本発明のペット用トイレ砂においては、上記活性ベントナイト粒状成形品の最小方向における粒径(短径)が0.5乃至8mmであり、アスペクト比(長径/短径)が1乃至20の範囲にあることが好ましい。この範囲の粒度特性を有するベントナイト粒状物では、その分散状態にランダム性があり、また尿に接触したときの固結の程度も堅く、使用済み部分を、崩壊することなく、塊として取り除くことが容易である。
【0042】
上述した特性を有する活性ベントナイトからなる本発明のペット用トイレ砂は、猫などペットの尿の吸収、膨潤、粘着及び固結による固化性能並びに尿及び糞の脱臭性能にも極めて優れている。
【0043】
[ペット用トイレ砂の製造]
本発明のペット用トイレ砂は、モンモリロナイトを主成分とし、前述した層状構造を有する天然産の酸性白土若しくはベントナイトを出発原料として製造され、既に述べた通り、特に産地等が限定されず、種々の産地で採取された原料粘土を使用できるという利点がある。勿論、天然産の粘土に限定されるものではなく、前述した層状構造を有する限り、本発明とは別の処理方法によって得られた活性化ベントナイト等も使用し得ることはいうまでもない。
【0044】
本発明の活性ベントナイトを製造するためには、原料粘土の化学組成として、アルカリ金属をR、アルカリ土類金属をMとして、酸化物基準のモル比で表して、
R2O/SiO2=0.1×10−2 乃至 1.5×10−2
MO/SiO2=4.5×10−2 乃至 10.5×10−2
である天然産の酸性白土若しくはベントナイトを用いるのが好ましい。これにより従来のベントナイト乃至は活性ベントナイトに比して水の吸収速度が大であると共に吸収容量も大きく、その結果としてペットの尿などの水溶液を残すことなく吸収することができ、しかも固化部分が可及的に小さな容積に留まるようにすることが可能な、且つペットの尿乃至糞が発生する臭気に対して脱臭性能の向上したペットのトイレ砂用活性ベントナイトを製造することが可能となる。
【0045】
天然産の酸性白土若しくはベントナイトである本原料粘土の水酸化アルカリ及び又はケイ酸アルカリによる処理は、一般に、原料粘土(水分:30〜35%)に水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリの水溶液を注加、混練し、押出造粒法等により成形した後に、加熱・乾燥の工程を経て行われる。また、もう一つの有効な処理方法としては、上記原料粘土を水に懸濁分散させ、撹拌下に上記アルカリ水溶液を添加し、加熱することによって行われる。
【0046】
かかる処理は、モンモリロナイトの層状構造が維持される程度に、且つ前述した本発明における活性ベントナイトの化学組成を有する程度に行われるべきであり、例えば反応系のpHが9乃至11程度となる程度にアルカリ分が添加される。また、水酸化アルカリ又はケイ酸アルカリとしては、水酸化(又はケイ酸)カリウム等を使用することも可能であるが、本発明の効果の発現性と経済性から、特に水酸化ナトリウム又はケイ酸ナトリウムが好適である。処理温度及び時間は、処理すべき原料粘土の量によっても異なるが、通常、100乃至200℃で1乃至20時間程度でよい。
【0047】
処理後の生成物は、各種の手段で造粒成形される。造粒には、圧縮成形法、打錠成形法、転動造粒法、噴霧造粒法、押出造粒法等のそれ自体公知の成形法が使用されるが、混練物を直ちに押出造粒するのが好適である。この造粒成形物は、既に述べた通り、最小方向における粒径が0.5乃至8mmであり、アスペクト比が1乃至20の範囲にあることが、吸収乃至吸着性能、取り扱い性、水分吸収の際の固化性や、固化物の取り除き性の点で好ましい。粒子形状は、球状、立方体状、円柱状、角柱状、顆粒状、タブレット状、不定形状等の任意の形状であってよい。得られた造粒成形物は、必要により乾燥して製品とする。乾燥温度は、100乃至300℃が適当である。
【0048】
【実施例】
本発明を以下の実施例で説明する。本実施例における試験液の調製方法並びに各種測定方法は下記の通りである。
【0049】
純水並びに1重量%食塩水の調製方法
〔純水〕 上水道水をヤマト科学(株)製純水製造装置(ピュアライン WL21型)に通し、イオン交換・ろ過法による精製水(電気伝導度:0.1mS/m(25℃)以下)として得られる。
〔1重量%食塩水〕 食塩(和光純薬工業(株)製、試薬特級、NaCl含量:99.5%以上)100.5gを秤取し、上記純水9899.5gを加えて溶解することによって、1重量%食塩水(以下、単に「1%食塩水」と記す。)が得られる。
【0050】
ゼータ電位の測定方法
〔ゼータ電位Z1の測定〕 300mlのビーカーに試料0.10gを秤取し、1%食塩水を加えて全量(風袋を除く)を200gとする。次に超音波分散機で10分間分散させる。室温にて24時間放置後、測定前に更に5分間分散させ、Malvern社製ゼータ電位測定装置(Zetasizer 3000 HSD)を用いてゼータ電位(mV)を測定する。また、各測定の前に、1%食塩水で測定装置系内を洗浄・置換する。
〔ゼータ電位Z0の測定〕 上記〔ゼータ電位Z1の測定〕において、1%食塩水に代えて純水を用いる以外は全く同様の方法で行う。
【0051】
膨潤力の測定方法
〔膨潤力S1の測定〕 容量100mlの共栓付きメスシリンダーに1%食塩水100mlをいれ、試料(粒状品)2gをシリンダー上部液面から静かに加え落とす。24時間放置後、メスシリンダー下部に膨潤・堆積した見掛け容積を測り、膨潤力(ml/2g)とする。
〔膨潤力S0の測定〕 上記〔膨潤力S1の測定〕において、1%食塩水に代えて純水を用いる以外は全く同様の方法で行う。
【0052】
固化長の測定方法
〔乾燥状態での測定〕
短径の平均が2.8mm、長径の平均が5mmになるように粒度を揃えた試料を150℃で乾燥(水分:1重量%未満)する。デシケーター内で放冷し、1時間後に取り出して、20cm以上の厚さに容器内に充填する。充填層上面より1cmの高さから1%食塩水7.0mlを10秒間で注下する。3分後に固化部分をとりだして、注下方向に対して縦方向の長さをはかり、固化長(mm)とする。
【0053】
アンモニアの脱臭性能
試料100gを、内容積1.8Lの広口ガラス瓶中に底面よりの高さ1cmになるように入れ、1.4%濃度のアンモニア水1mlを注射器等を用いてサンプルに振りかけ、直ちにフタを閉め室温状態で放置する。10分後瓶中、気相のアンモニア臭を官能で評価する。
○:無臭
△:臭いの質が判る程度に臭う
×:かなりのアンモニア臭
【0054】
メルカプタンの脱臭性能
試料100gを、内容積1.8Lの広口ガラス瓶中に底面よりの高さ1cmになるように入れ、0.1%濃度のエチルメルカプタンのエタノール溶液50μLを、マイクロシリンジを用いてサンプルに振りかけ、直ちにフタを閉め室温状態で放置する。10分後瓶中、気相のメルカプタン臭を官能で評価する。
○:無臭
△:臭いの質が判る程度に臭う
×:かなりのエチルメルカプタン臭
【0055】
[実施例1]
新潟県新発田市A地区産酸性白土A(水分33.0%)3.00kgに、水酸化ナトリウム20.0%水溶液355gを加え、それを二軸押し出し成型機(不二パウダル製)を用いて混練・押し出しの操作を三回繰り返し、直径3mmの円柱状成型物を得る。それを150℃で12時間乾燥後、粗砕・整粒し、短径平均2.8mm、長径平均5mmの活性ベントナイト粒状品を得た。また、その一部をサンプルミルにて粉砕し、活性ベントナイト粉末品(100メッシュ通過品)を得て、ゼータ電位測定の試料とした。表1に、得られた試料のゼータ電位、膨潤力および固化長の測定結果を示す。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、水酸化ナトリウム20.0%水溶液の添加量を225gに変えて行う以外は全く同様の方法で実施する。
【0057】
[実施例3]
実施例1において、水酸化ナトリウム20.0%水溶液の添加量を177gに変えて行う以外は全く同様の方法で実施する。
【0058】
[実施例4]
実施例1において、水酸化ナトリウム20.0%水溶液225gに代えて、同水溶液150gと3号ケイ酸ナトリウム(Na2O:7.00wt.%)167gを併用する以外は全く同様の方法で実施する。
【0059】
[実施例5]
実施例1において原料粘土である新潟県新発田市A地区産酸性白土Aに代えて、新潟県新発田市B地区産酸性白土B(水分27.0%)2.74kgを用いる以外は全く同様の方法で実施する。
【0060】
[比較例1]
新潟県新発田市A地区産酸性白土A(水分33.0%)3.00kgに、炭酸ナトリウム粉末60.0gを加え、以後は実施例1と全く同様に、混練・押し出し、加熱・乾燥、粗砕・整粒の工程を経て本比較例の粒状品および測定試料としての粉末品を得た。表1に、得られた試料のゼータ電位、膨潤力および固化長の測定結果を示す。
【0061】
[比較例2]
比較例1において原料粘土である新潟県新発田市A地区産酸性白土Aに代えて、新潟県新発田市B地区産酸性白土B(水分27.0%)2.74kgを用いる以外は全く同様の方法で実施する。
【0062】
[比較例3]
比較例1において、炭酸ナトリウム粉末60.0gを加えず、他の薬品も全く加えずに、以後は全く同様の方法で実施する。この場合、固化長の測定において、粒が泥状に崩壊して軟らかいまま長時間にわたって固化せず、測定不能であった。
【0063】
[比較例4]
市販の天然ベントナイト粒状品を短径平均2.8mm、長径平均5mmの粒度に揃えて試料とした。またその一部をサンプルミルにて粉砕し、該ベントナイトの粉末品(100メッシュ通過品)を得、ゼータ電位測定の試料とした。表1に、得られた試料のゼータ電位、膨潤力および固化長の測定結果を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、種々の産地で採取された酸性白土若しくはベントナイトを原料として、これを水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理することにより、大きい膨潤容量と速い膨潤速度との組み合わせを有し、少ない消費量で所期の目的を達成できるペット用トイレ砂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた活性ベントナイトについて、その吸湿量と固化長との関係をプロットした線図である。
【図2】比較例1で得られた活性ベントナイトについて、その吸湿量と固化長との関係をプロットした線図である。
【図3】実施例1で得られた活性ベントナイト粉末のX線回折像である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペット用トイレ砂に関するもので、より詳細には、膨潤力(容量)及び膨潤速度の組み合わせが良く、吸水性、固化性、脱臭性等に優れた活性ベントナイトからなるペット用トイレ砂に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸性白土及びベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土であり、世界各地で産出されている。これらの内でも、米国のワイオミング産ベントナイトは泥水の用途等に適した物性を有しているが、日本国内で産出される粘土はこの用途での性能が比較的に劣る場合がある。このため、天然産の酸性白土若しくはベントナイト(以下、単に「原料粘土」又は「本原料粘土」と記すことがある)を炭酸ナトリウム等のアルカリで処理し、膨潤性や粘性等を向上させた所謂活性ベントナイトが種々の用途に使用されるに至っている。
【0003】
例えば、特開昭63−50310号公報には、含水酸性白土に、無水物換算で1乃至5重量%の固体炭酸ナトリウムを添加し、固体の添加混合物を水分の保持条件下に50℃以上の温度で混練して、活性ベントナイトに転化することが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような活性ベントナイトをペット用トイレ砂に用いる場合、この活性ベントナイトは、大きい膨潤容量と速い膨潤速度との組み合わせを有していることが要求される。即ち、このような特性を有する活性ベントナイトを用いる粒状のトイレ砂においては、尿などが付着した部分の各粒子が迅速に膨潤(膨張)して粒同士の粘着(固着)を起こす機能を持っており、それにより汚れた部分のみが固結し、この固結部分を簡単に除去することが可能になるという利点を有している。この場合、大きい膨潤容量と速い膨潤速度を有していることから、単位容積のトイレ砂が単位時間に吸収する水分量(吸収能力)が大きいために、膨潤により固結する容積がより小さくなり、固結した活性ベントナイト粒の取り除く量が少なくなることで、消費者にとって経済的にも大きなメリットとなる。
【0005】
しかしながら、公知の活性ベントナイトからなるペット用トイレ砂は、純水での膨潤性についてはある程度満足できるものではあっても、猫などペットの尿のように少量の電解質を含んだ水溶液、例えば1重量%食塩水(以下、「1%食塩水」又は単に「食塩水」と記すことがある)に対する膨潤性、特に膨潤容量と膨潤速度との組み合わせに関しては未だ充分満足できるものではなかった。また、炭酸ナトリウム等で処理した従来の活性ベントナイトでは、処理する原料粘土の産地等によって、特性のバラツキを生じ、ある種の産地で採取された原料粘土では、炭酸ナトリウムで処理しても満足すべき膨潤容量や膨潤速度を示さず、用いる原料粘土の産地等が著しく制限されるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、特に電解質を含む水溶液に対しても大きい膨潤容量と速い膨潤速度との組み合わせを有し、少ない消費量で所期の目的を達成できる活性ベントナイトの粒状成形品からなるペット用トイレ砂を提供することにある。
本発明の他の目的は、任意の産地で採取された原料粘土から得られる活性ベントナイトの粒状成形品からなるペット用トイレ砂を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、活性ベントナイトの粒状成形品から成るペット用トイレ砂において、
前記活性ベントナイトは、1重量%食塩水及び純水のそれぞれに分散して調製された0.05重量%懸濁液で測定されるゼータ電位(mV)が共にマイナスであり、且つ下記式:
|Z1|≧40
及び
|Z0|≧35
上記式中、Z1は、1重量%食塩水中で測定したゼータ電位であり、
Z0は、純水中で測定したゼータ電位である、
の条件を満足するものであることを特徴とするペット用トイレ砂が提供される。
【0008】
本発明で用いる活性ベントナイトは、
(1)1重量%食塩水を用いて測定される膨潤力をS1(ml/2g)及び純水を用いて測定される膨潤力をS0(ml/2g)とするとき、下記式:
S1≧18
S0≧12
及び
S1≧S0
の条件を満足するものであること、
(2)モンモリロナイトに特有の微細の層状構造を有し、モル比で表して
Al2O3/SiO2=9.5×10−2 乃至 16×10−2
Na2O/SiO2=1.4×10−2 乃至 4.5×10−2
の化学組成を有すること、
が好ましい。
また、上記の活性ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする天然産の酸性白土若しくはベントナイトを原料粘土として、該原料粘土を水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理して得られる。
【0009】
尚、実施例の測定方法においても後述するが、本発明における「純水」とは、イオン交換樹脂を装填した純水製造装置を通して得られる精製水、いわゆる脱塩水のことであり、「1重量%食塩水」とは、一般の生理食塩水(溶液100cc中に0.85〜0.95gの食塩を含有)よりもやや濃い濃度(1重量%)で、食塩を上記の純水に溶解して調製される水溶液のことである。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明のペット用トイレ砂は、活性ベントナイトの粒状成形品からなるものであるが、天然産の酸性白土若しくはベントナイトを水酸化アルカリ(特に水酸化ナトリウム)及び/又はケイ酸アルカリ(特にケイ酸ナトリウム)で処理することにより得られた活性ベントナイトを用いることが重要な特徴である。
【0011】
[作用]
〔ゼータ電位と膨潤性〕
例えば天然産の酸性白土を水酸化ナトリウム及び/又はケイ酸ナトリウムで処理することにより得られた活性ベントナイトでは、原料の酸性白土の産地によらず、1重量%食塩水に分散して得られる0.05重量%懸濁液で測定されるゼータ電位Z1(mV)及び純水に分散して得られる0.05重量%懸濁液で測定されるゼータ電位Z0(mV)が、何れも原料の酸性白土に比してマイナス側にシフトし、且つ下記式:
|Z1|≧40
及び
|Z0|≧35
の条件を満足するものとなる。しかも、このようなゼータ電位特性を有する活性ベントナイトは、1重量%食塩水を用いて測定される膨潤力をS1(ml/2g)及び純水を用いて測定される膨潤力をS0(ml/2g)とするとき、下記式:
S1≧18
S0≧12
及び
S1≧S0
の条件を満足しており、膨潤容量と膨潤速度の両方で改善がなされているという現象も認められる。
【0012】
一方、原料粘土を炭酸ナトリウムで処理して得られた活性ベントナイトでは、上記と同様に食塩水を用いて測定されるゼータ電位Z1は、水酸化ナトリウムでの処理と同程度にマイナス側に大きく増大しているが、純水を用いて測定されるゼータ電位Z0の方はそれ程増大しないか、若しくは産地の異なる原料粘土を用いた場合には殆ど増大しないものもある。即ち、測定に用いる液の電解質の濃度によってゼータ電位に大きく差が生じてしまい、この結果、膨潤性の面でも、媒体となる液の電解質濃度の変化等に対して不安定な挙動を示すものとなってしまう。
【0013】
例えば或る原料粘土は、1%食塩水と純水でのゼータ電位(マイナス)の絶対値が、それぞれ、|Z1|=34、|Z0|=26 であり、膨潤力は、それぞれ、S1=4、S0=6 であった(後述の比較例3参照)。
この原料粘土を炭酸ナトリウムで処理して得られた活性ベントナイトは、ゼータ電位(マイナス)の絶対値が、それぞれ|Z1|=41、|Z0|=32であり、膨潤力の数値は、それぞれS1=16、S0=23であった(比較例1参照)。
【0014】
さらに、上記の原料粘土を水酸化ナトリウムで処理して得られた活性ベントナイトは、ゼータ電位(マイナス)の絶対値が、|Z1|=43、|Z0|=41と大きく、膨潤力の数値も、S1=22、S0=16 と共に高く、特に電解質を含む水に対して大きな膨潤力を示した(実施例1参照)。
【0015】
上記の事実からわかるように、本発明では、水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで本原料粘土を処理することにより、ゼータ電位のマイナス側への増大が生じ、この結果、膨潤容量や膨潤速度の改善が生じるものである。このように、本発明において用いる活性ベントナイトは、前記のようなゼータ電位の値を有しているため、食塩水に対して特に大きな膨潤力を示し、尿のような電解質を含む水溶液に対しても優れた膨潤性を示すことが理解される。
【0016】
本発明における水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリによる処理が、従来の炭酸アルカリによる処理との比較で、上記膨潤性に及ぼす効果に差がある理由は明確でないが、本発明者等は次のように考えている。
【0017】
即ち、ベントナイトの主要成分であるモンモリロナイトは、SiO4四面体層−AlO6八面体層−SiO4四面体層から成る三層構造、或いはこれらの四面体層、八面体層が異種金属で同型置換された三層構造を基本構造(単位層)としている。これら単位層(板状体)の積層層間には、水やアルカリイオン、特にナトリウムイオンが多く存在している。このベントナイトに水が混合されると、モンモリロナイトの持つ上記単位層の積層層間に多くの水が入り、豊富に存在するアルカリイオンを取り囲むようにして層間を押し広げ、いわゆる膨潤が起こるが、やがては単位層がバラバラなコロイド状に分散し、流動状態となる。これを放置すると、単位層同士の吸引反発により、カード・ハウス構造が形成され、高度に増粘するか、あるいはゲル化した状態となる。これが、ベントナイトによる吸水性及び固化性の原理に大きく関係している。
【0018】
一般に、モンモリロナイト粒子−水系における粒子の膨潤は次の2つの原因によって起こると言われている。1つは、Na−モンモリロナイトのように粒子内部の単位層間の結合が弱い場合に、そこに水が入って層間が拡大する場合である。他の1つは、モンモリロナイト粒子の表面に隣接する拡散イオン層の間に存在する塩類濃度差のために浸透圧が生じ、電気二重層の厚さが増大するようになり、モンモリロナイト粒子間に反発力が発生する場合である。前者は内部膨潤、後者は外部膨潤と言われる。
一般に、内部膨潤は、層間に1価の陽イオン、特にNa+イオンが多い程、且つCa2+イオンなどの多価陽イオンが少ない程大きい。一方、外部膨潤は、粒子表面の陰電荷が大きい程、且つ吸着陽イオンのイオン価が小さい程大きい。また、塩類濃度が低い程大きい。
【0019】
本発明の原料粘土として用いる酸性白土若しくはベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とするものであるが、その産地により、種々の不純物が含まれており、この中には、クリストバライト(SiO2)の如き結晶性粒子や遊離の非晶質シリカ等がある。このクリストバライトは、前述した層状構造を有するものではなく、モンモリロナイトの膨潤性には全く寄与しないばかりか、一部のモンモリロナイトの微細な層状構造粒子を硬く包み込むような形で存在し、モンモリロナイトの層間に水が入り層間が広がって膨潤するのを阻害する方に働いている。
従って、このクリストバライトが多く含まれている産地のベントナイトでは、膨潤性が低く、クリストバライトの少ない産地のベントナイトでは、膨潤性が比較的高い。
【0020】
クリストバライトを多く含む産地の酸性白土若しくはベントナイトを炭酸アルカリで処理する場合には、陽イオン交換による層間イオンのアルカリイオン化は有効に行われるが、前述のクリストバライトによる阻害要因を除くことはできず、膨潤性を高めるという処理効果を最大限に引き出すことにはならない。
【0021】
これに対して、本発明にしたがい、水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理するときには、クリストバライトを容易に部分溶解し、モンモリロナイトの粒子を囲っている硬い被覆を壊すことにより、前述の阻害要因を相当に除くことができる。このため、クリストバライトを多く含む産地の原料粘土に対しても、モンモリロナイト層間のアルカリイオン化により膨潤性を高めるという活性ベントナイト化の処理効果はかなり大きくなる。
【0022】
該アルカリ処理による被覆クリストバライトの部分溶解には、膨潤性向上にとって、阻害要因の除去という上述の効果の他に更に付加的な効果が考えられる。
1つは、クリストバライトの部分溶解乃至は非晶質シリカの溶解により生成したもの及び/又は最初から添加されたものであるアルカリ・リッチなケイ酸アルカリが、炭酸アルカリの炭酸イオンと同様に、ソフトな酸根イオンであるケイ酸イオンを伴っているため、モンモリロナイト層間のイオン交換によるアルカリイオン化を容易にするためである。それに伴って、層間イオンの状態が1価の陽イオンであるアルカリイオンが多くなり、逆にCa2+イオンなどの多価陽イオンが少なくなることによって、前述の内部膨潤が起こりやすくなることの効果である。
【0023】
更には、種々の大きさの多価ケイ酸イオンがモンモリロナイト層の外表面に吸着若しくは沈着することにより、粒子表面の陰電荷が増大するためである。それに伴って、水又は水溶液に分散した場合に形成される固定層で固着している対イオンとしてはイオン価の小さいアルカリイオン等の陽イオンが多く、しかも固定層を含む粒子の総体的な電荷はマイナスで粒子間の反発力が生じており、前述の外部膨潤が起こりやすくなることの効果である。
【0024】
一般に、モンモリロナイトを含む粘土粒子−水系における粒子の膨潤は、水相が純水に近いほど大きく、電解質水溶液では小さいのが普通である。ところが、本発明の処理によって得られる活性ベントナイトでは、従来のベントナイトとは逆で、食塩水中での膨潤性が大きく且つ純水を用いて測定したときよりも高い膨潤力を有しているという全く予想外の優れた性能が見出されたのである。これは、本発明で用いる活性ベントナイト粒子の最も特徴的な物性であるが、本粒子表面のように、純水乃至食塩水中、特に食塩水中で絶対値の大きなマイナスのゼータ電位を示すものは、粒子の膨潤の要因中、外部膨潤の要因がより大きく利いているため、食塩水中での方がより高い膨潤力を示すという予想外の結果を出しているものと推察される。
【0025】
一方、従来の処理方法である炭酸ナトリウム処理によって得られた活性ベントナイトでは、純水中での膨潤力が、本発明で用いる活性ベントナイトよりも高いものもあるが、その場合も、食塩水中における膨潤力では本発明で用いるものに及ばない。この場合、食塩水中では或る程度大きなマイナスのゼータ電位を示しながら、その理由は明らかでないが、内部膨潤の因子の方が外部膨潤よりも大きく作用しているものと考えられ、モンモリロナイト層間のアルカリイオンによる効果がより大きく関予し、粒子表面の陰電荷の効果はあまり大きくは関与していないためと推察される。
【0026】
いずれにしても、本発明のアルカリ処理に由来する粒子表面の大きなマイナス荷電による外部膨潤の促進力が、食塩などの電解質の存在による外部膨潤の抑制力よりも上回っていることにより、食塩水中での膨潤性を高め、延いてはペットの尿に対する固化性能を高めるという従来にない重要な特長が、本発明で用いる活性ベントナイトには付与されている。
【0027】
〔固化性能の向上〕
かくして、本発明による活性ベントナイトの最大の特徴である食塩水中での高い膨潤性とこれを用いるペット用トイレ砂の優れた固化性能の発現が理解されるが、さらに本発明によれば、クリストバライト含有量の多少にかかわらず、種々の産地の原料粘土に対して膨潤性を高めることができるため、処理に用いる原料粘土の産地を制限される度合いが少ないという大きな利点も有していることになる。
【0028】
ここで、本発明における「固化性能」とは、トイレ砂として敷きつめられた個々の粒が、尿などの水溶液を吸収して膨潤(膨張)し、膨らむ粒同士が押し合いながら粘着し、固結して塊状化する過程、つまり固化プロセスの進行状態の良否に関わる性能のことである。
【0029】
本発明において、ペット用トイレ砂として用いる活性ベントナイトの膨潤容量及び膨潤速度、延いてはトイレ砂としての固化性能は、固化長の測定によって評価できる。この固化長の測定は、後で詳細に説明するが、一定粒度のトイレ砂を20cm以上の厚さに容器内に充填し、充填層上面より1cmの高さから、1%食塩水の一定量を10秒間かけて滴下し、トイレ砂が固化した部分の高さを測定するものである。
【0030】
トイレ砂となしたベントナイトの膨潤速度が小さいほど、また膨潤容量が小さいほど、食塩水は途中に留まらずに下方に流下するので、固化長は長くなる傾向がある。また、使用前のベントナイトの吸湿量によっても大きな影響を受け、一般に吸湿量が大きくなるほど、固化長は長くなる傾向がある。
【0031】
添付図面の図1は、本発明でペット用トイレ砂として用いる活性ベントナイト粒について、その吸湿量と固化長との関係をプロットしたものであり、図2は、従来の処理方法による活性ベントナイト粒について同様の関係をプロットしたものである。従来の活性ベントナイト粒の固化長は、吸湿前の乾燥状態での測定で35mm前後であるが、例えば吸湿量15重量%の条件下では150mm以上という大きな値をとり、吸湿による固化性能の低下が著しいことがわかる。これに対して、本発明にしたがって水酸化アルカリで処理された活性ベントナイト粒の固化長は、吸湿量の影響が小さく、乾燥状態では25mm前後と非常に短く、吸湿量15重量%の条件下でも80mm以下である。このことより、使用初期の固化性能も極めて高く、使用開始後の吸湿による固化性能の低下も実用上充分な程度に維持し得るという予想外の効果が明らかとなる。
【0032】
固化性能の優劣を表す固化長は或る程度に短い方が良いが、使用時の取扱い易さ、即ち固化物の堅さ(崩れ難さ)などの点から、20乃至120mm、特に25乃至100mmの長さに固化するのが特に好ましい。前述したように、固化長は使用前乃至使用時の大気からの吸湿によって長くなり、固化性能は劣化していく。トイレ砂の通常の使用期間における吸湿量が数%乃至20%前後であることを考えると、本発明の活性ベントナイトを用いたトイレ砂は、該吸湿量においても25乃至100mm前後の固化長を有し、従来の活性ベントナイトを用いたトイレ砂に比して、実用上も固化性能の優れたものであることが明らかである。
【0033】
前記したように、ベントナイト粒の固化長は乾燥状態(水分:1%以下)から吸湿量の増加に連れて長くなっていく。その程度(勾配)は元来の性能によって大きな違いがあること、すなわち、固化性能の良いものは乾燥状態での固化長がより短く、吸湿量の増加による固化長の増大の勾配はより小さいことがわかった。本発明の活性ベントナイト粒のように、乾燥状態での固化長が20mm以上35mm未満と従来品よりも短いものは、通常の使用期間における吸湿状態でも120mmを越えるような固化長にはならない。このことより、固化性能の実用上の優劣を評価する方法としては、乾燥状態での固化長の測定による方法が有用であることがわかる。
【0034】
本発明で用いる活性ベントナイトは、その粉末のX線回折像である添付図面の図3からわかるように、モンモリロナイトに特有の微細な層状構造を有しているものであり、さらに、酸化物基準のモル比で表して
Al2O3/SiO2=9.5×10−2 乃至 16×10−2 、
特に 10×10−2 乃至 14×10−2
Na2O/SiO2=1.4×10−2 乃至 4.5×10−2 、
特に 1.6×10−2 乃至 4.3×10−2の化学組成を有することが後述する吸着性、吸収性の点で好ましい。
【0035】
〔脱臭作用〕
一般に、有臭成分に対する脱臭作用は、物理吸着作用によるものと、化学吸着作用によるものとに大別される。高比表面積を有する表面での物理吸着作用は、雰囲気中に希薄な状態で存在する成分にも有効に作用する反面、吸着平衡状態が存在し、吸着された成分は吸着剤に対して吸着・脱離を繰り返して平衡に達する。一方、化学吸着では、一旦接触した成分は確実に捕捉され、捕捉した成分を容易には離さないという特徴がある。
【0036】
本発明に用いる活性ベントナイトは、上記の微細な層状構造を有するため、大きい比表面積を有し、有臭成分を吸着するという性能に優れている。これは単に物理吸着のみならず、化学吸着にも顕著な利点をもたらす。何となれば、有臭成分を濃縮された形で化学吸着サイトと接触させることが可能となるからである。
【0037】
上述した活性ベントナイトは、物理吸着による脱臭作用の寄与が大きいことも否定できないが、化学吸着による脱臭作用の寄与も大きいものと認められる。すでに指摘したとおり、モンモリロナイトの層間には金属イオンが存在しており、また、四面体層及び八面体層にも、同型置換の形でアルミニウム分以外の金属成分が含まれている。これらの金属成分は、硫化水素やメルカプタン類の化学吸着に役立っている。勿論、これらの金属成分は、有機酸由来の悪臭成分の脱臭にも役立っていると信じられる。また、モンモリロナイト、特に酸性白土中のモンモリロナイトでは、層間や層端に水素イオンやシラノール基(Si−OH)由来のプロトン酸が存在し、このプロトン酸或いは他の固体酸がアンモニアやアミン類の化学的吸着に役立っていると考えられる。
【0038】
したがって、本発明で用いる活性ベントナイトは、前述した化学組成を有すると共に、下記式(1)
AS=Ax/Six ‥‥(1)
式中、Axは活性ベントナイト中に含まれるNa、K、Mg、Ca、Feからなる各金属成分の単位重量当たりモル数の合計を表し、
Sixは活性ベントナイト中に含まれるシリカ(SiO2)成分の単位重量当たりモル数を表す、
で定義される金属成分モル比(AS)が0.10以上であること、及び70m2/g以上のBET比表面積を有することが、種々のガス成分、特に有臭成分に対して高い吸着性を示すという点で好ましい。
【0039】
後述する例に示すとおり、本発明で用いる活性ベントナイトは、有臭成分の吸着性能、即ちアンモニア、アミン等の塩基性ガス及び硫化水素、メルカプタン、有機酸等の酸性ガスの脱臭性能に優れている。
【0040】
〔細孔による吸水〕
本発明のペット用トイレ砂は、前述した活性ベントナイトを主体とする粒状成形品であり、特に、水銀圧入法で測定して、細孔半径1.5nm乃至105nmの範囲における細孔容積が0.15ml/g以上、特に0.2乃至0.35ml/gの値を有することが、ペットの尿を急速に吸収し、迅速に膨潤及び固結し、脱臭を速やかに行うために重要である。そのため、尿を残すことなく素早く吸収して、尿による固化部分を可及的に小さな容積に留めるようにすることが可能となる。後述する例に示すとおり、この細孔容積が上記範囲を下回るベントナイト粒状成形品では、尿との接触初期の段階で粒状物内部に尿を吸収する能力が不足し、最終的に一定尿量当たりの固化部分の容積が大きくなる傾向がある。
【0041】
また、本発明のペット用トイレ砂においては、上記活性ベントナイト粒状成形品の最小方向における粒径(短径)が0.5乃至8mmであり、アスペクト比(長径/短径)が1乃至20の範囲にあることが好ましい。この範囲の粒度特性を有するベントナイト粒状物では、その分散状態にランダム性があり、また尿に接触したときの固結の程度も堅く、使用済み部分を、崩壊することなく、塊として取り除くことが容易である。
【0042】
上述した特性を有する活性ベントナイトからなる本発明のペット用トイレ砂は、猫などペットの尿の吸収、膨潤、粘着及び固結による固化性能並びに尿及び糞の脱臭性能にも極めて優れている。
【0043】
[ペット用トイレ砂の製造]
本発明のペット用トイレ砂は、モンモリロナイトを主成分とし、前述した層状構造を有する天然産の酸性白土若しくはベントナイトを出発原料として製造され、既に述べた通り、特に産地等が限定されず、種々の産地で採取された原料粘土を使用できるという利点がある。勿論、天然産の粘土に限定されるものではなく、前述した層状構造を有する限り、本発明とは別の処理方法によって得られた活性化ベントナイト等も使用し得ることはいうまでもない。
【0044】
本発明の活性ベントナイトを製造するためには、原料粘土の化学組成として、アルカリ金属をR、アルカリ土類金属をMとして、酸化物基準のモル比で表して、
R2O/SiO2=0.1×10−2 乃至 1.5×10−2
MO/SiO2=4.5×10−2 乃至 10.5×10−2
である天然産の酸性白土若しくはベントナイトを用いるのが好ましい。これにより従来のベントナイト乃至は活性ベントナイトに比して水の吸収速度が大であると共に吸収容量も大きく、その結果としてペットの尿などの水溶液を残すことなく吸収することができ、しかも固化部分が可及的に小さな容積に留まるようにすることが可能な、且つペットの尿乃至糞が発生する臭気に対して脱臭性能の向上したペットのトイレ砂用活性ベントナイトを製造することが可能となる。
【0045】
天然産の酸性白土若しくはベントナイトである本原料粘土の水酸化アルカリ及び又はケイ酸アルカリによる処理は、一般に、原料粘土(水分:30〜35%)に水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリの水溶液を注加、混練し、押出造粒法等により成形した後に、加熱・乾燥の工程を経て行われる。また、もう一つの有効な処理方法としては、上記原料粘土を水に懸濁分散させ、撹拌下に上記アルカリ水溶液を添加し、加熱することによって行われる。
【0046】
かかる処理は、モンモリロナイトの層状構造が維持される程度に、且つ前述した本発明における活性ベントナイトの化学組成を有する程度に行われるべきであり、例えば反応系のpHが9乃至11程度となる程度にアルカリ分が添加される。また、水酸化アルカリ又はケイ酸アルカリとしては、水酸化(又はケイ酸)カリウム等を使用することも可能であるが、本発明の効果の発現性と経済性から、特に水酸化ナトリウム又はケイ酸ナトリウムが好適である。処理温度及び時間は、処理すべき原料粘土の量によっても異なるが、通常、100乃至200℃で1乃至20時間程度でよい。
【0047】
処理後の生成物は、各種の手段で造粒成形される。造粒には、圧縮成形法、打錠成形法、転動造粒法、噴霧造粒法、押出造粒法等のそれ自体公知の成形法が使用されるが、混練物を直ちに押出造粒するのが好適である。この造粒成形物は、既に述べた通り、最小方向における粒径が0.5乃至8mmであり、アスペクト比が1乃至20の範囲にあることが、吸収乃至吸着性能、取り扱い性、水分吸収の際の固化性や、固化物の取り除き性の点で好ましい。粒子形状は、球状、立方体状、円柱状、角柱状、顆粒状、タブレット状、不定形状等の任意の形状であってよい。得られた造粒成形物は、必要により乾燥して製品とする。乾燥温度は、100乃至300℃が適当である。
【0048】
【実施例】
本発明を以下の実施例で説明する。本実施例における試験液の調製方法並びに各種測定方法は下記の通りである。
【0049】
純水並びに1重量%食塩水の調製方法
〔純水〕 上水道水をヤマト科学(株)製純水製造装置(ピュアライン WL21型)に通し、イオン交換・ろ過法による精製水(電気伝導度:0.1mS/m(25℃)以下)として得られる。
〔1重量%食塩水〕 食塩(和光純薬工業(株)製、試薬特級、NaCl含量:99.5%以上)100.5gを秤取し、上記純水9899.5gを加えて溶解することによって、1重量%食塩水(以下、単に「1%食塩水」と記す。)が得られる。
【0050】
ゼータ電位の測定方法
〔ゼータ電位Z1の測定〕 300mlのビーカーに試料0.10gを秤取し、1%食塩水を加えて全量(風袋を除く)を200gとする。次に超音波分散機で10分間分散させる。室温にて24時間放置後、測定前に更に5分間分散させ、Malvern社製ゼータ電位測定装置(Zetasizer 3000 HSD)を用いてゼータ電位(mV)を測定する。また、各測定の前に、1%食塩水で測定装置系内を洗浄・置換する。
〔ゼータ電位Z0の測定〕 上記〔ゼータ電位Z1の測定〕において、1%食塩水に代えて純水を用いる以外は全く同様の方法で行う。
【0051】
膨潤力の測定方法
〔膨潤力S1の測定〕 容量100mlの共栓付きメスシリンダーに1%食塩水100mlをいれ、試料(粒状品)2gをシリンダー上部液面から静かに加え落とす。24時間放置後、メスシリンダー下部に膨潤・堆積した見掛け容積を測り、膨潤力(ml/2g)とする。
〔膨潤力S0の測定〕 上記〔膨潤力S1の測定〕において、1%食塩水に代えて純水を用いる以外は全く同様の方法で行う。
【0052】
固化長の測定方法
〔乾燥状態での測定〕
短径の平均が2.8mm、長径の平均が5mmになるように粒度を揃えた試料を150℃で乾燥(水分:1重量%未満)する。デシケーター内で放冷し、1時間後に取り出して、20cm以上の厚さに容器内に充填する。充填層上面より1cmの高さから1%食塩水7.0mlを10秒間で注下する。3分後に固化部分をとりだして、注下方向に対して縦方向の長さをはかり、固化長(mm)とする。
【0053】
アンモニアの脱臭性能
試料100gを、内容積1.8Lの広口ガラス瓶中に底面よりの高さ1cmになるように入れ、1.4%濃度のアンモニア水1mlを注射器等を用いてサンプルに振りかけ、直ちにフタを閉め室温状態で放置する。10分後瓶中、気相のアンモニア臭を官能で評価する。
○:無臭
△:臭いの質が判る程度に臭う
×:かなりのアンモニア臭
【0054】
メルカプタンの脱臭性能
試料100gを、内容積1.8Lの広口ガラス瓶中に底面よりの高さ1cmになるように入れ、0.1%濃度のエチルメルカプタンのエタノール溶液50μLを、マイクロシリンジを用いてサンプルに振りかけ、直ちにフタを閉め室温状態で放置する。10分後瓶中、気相のメルカプタン臭を官能で評価する。
○:無臭
△:臭いの質が判る程度に臭う
×:かなりのエチルメルカプタン臭
【0055】
[実施例1]
新潟県新発田市A地区産酸性白土A(水分33.0%)3.00kgに、水酸化ナトリウム20.0%水溶液355gを加え、それを二軸押し出し成型機(不二パウダル製)を用いて混練・押し出しの操作を三回繰り返し、直径3mmの円柱状成型物を得る。それを150℃で12時間乾燥後、粗砕・整粒し、短径平均2.8mm、長径平均5mmの活性ベントナイト粒状品を得た。また、その一部をサンプルミルにて粉砕し、活性ベントナイト粉末品(100メッシュ通過品)を得て、ゼータ電位測定の試料とした。表1に、得られた試料のゼータ電位、膨潤力および固化長の測定結果を示す。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、水酸化ナトリウム20.0%水溶液の添加量を225gに変えて行う以外は全く同様の方法で実施する。
【0057】
[実施例3]
実施例1において、水酸化ナトリウム20.0%水溶液の添加量を177gに変えて行う以外は全く同様の方法で実施する。
【0058】
[実施例4]
実施例1において、水酸化ナトリウム20.0%水溶液225gに代えて、同水溶液150gと3号ケイ酸ナトリウム(Na2O:7.00wt.%)167gを併用する以外は全く同様の方法で実施する。
【0059】
[実施例5]
実施例1において原料粘土である新潟県新発田市A地区産酸性白土Aに代えて、新潟県新発田市B地区産酸性白土B(水分27.0%)2.74kgを用いる以外は全く同様の方法で実施する。
【0060】
[比較例1]
新潟県新発田市A地区産酸性白土A(水分33.0%)3.00kgに、炭酸ナトリウム粉末60.0gを加え、以後は実施例1と全く同様に、混練・押し出し、加熱・乾燥、粗砕・整粒の工程を経て本比較例の粒状品および測定試料としての粉末品を得た。表1に、得られた試料のゼータ電位、膨潤力および固化長の測定結果を示す。
【0061】
[比較例2]
比較例1において原料粘土である新潟県新発田市A地区産酸性白土Aに代えて、新潟県新発田市B地区産酸性白土B(水分27.0%)2.74kgを用いる以外は全く同様の方法で実施する。
【0062】
[比較例3]
比較例1において、炭酸ナトリウム粉末60.0gを加えず、他の薬品も全く加えずに、以後は全く同様の方法で実施する。この場合、固化長の測定において、粒が泥状に崩壊して軟らかいまま長時間にわたって固化せず、測定不能であった。
【0063】
[比較例4]
市販の天然ベントナイト粒状品を短径平均2.8mm、長径平均5mmの粒度に揃えて試料とした。またその一部をサンプルミルにて粉砕し、該ベントナイトの粉末品(100メッシュ通過品)を得、ゼータ電位測定の試料とした。表1に、得られた試料のゼータ電位、膨潤力および固化長の測定結果を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、種々の産地で採取された酸性白土若しくはベントナイトを原料として、これを水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理することにより、大きい膨潤容量と速い膨潤速度との組み合わせを有し、少ない消費量で所期の目的を達成できるペット用トイレ砂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた活性ベントナイトについて、その吸湿量と固化長との関係をプロットした線図である。
【図2】比較例1で得られた活性ベントナイトについて、その吸湿量と固化長との関係をプロットした線図である。
【図3】実施例1で得られた活性ベントナイト粉末のX線回折像である。
Claims (4)
- 活性ベントナイトの粒状成形品から成るペット用トイレ砂において、
前記活性ベントナイトは、1重量%食塩水及び純水のそれぞれに分散して調製された0.05重量%懸濁液で測定されるゼータ電位(mV)が共にマイナスであり、且つ下記式:
|Z1|≧40
及び
|Z0|≧35
上記式中、Z1は、1重量%食塩水中で測定したゼータ電位であり、
Z0は、純水中で測定したゼータ電位である、
の条件を満足するものであることを特徴とするペット用トイレ砂。 - 前記活性ベントナイトは、1重量%食塩水を用いて測定される膨潤力をS1(ml/2g)及び純水を用いて測定される膨潤力をS0(ml/2g)とするとき、下記式:
S1≧18
S0≧12
及び
S1≧S0
の条件を満足するものであることを特徴とする請求項1記載のペット用トイレ砂。 - 活性ベントナイトが、モンモリロナイトに特有の微細な層状構造を有し、酸化物基準のモル比で表して
Al2O3/SiO2=9.5×10−2 乃至 16×10−2
Na2O/SiO2=1.4×10−2 乃至 4.5×10−2
の化学組成を有することを特徴とする請求項1または2記載のペット用トイレ砂。 - 活性ベントナイトが、モンモリロナイトを主成分とする天然産の酸性白土若しくはベントナイトを原料粘土として、該原料粘土を水酸化アルカリ及び/又はケイ酸アルカリで処理して得られることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のペット用トイレ砂。
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