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JP2004067944A - 極性熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

極性熱可塑性エラストマー組成物 Download PDF

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JP2004067944A
JP2004067944A JP2002231904A JP2002231904A JP2004067944A JP 2004067944 A JP2004067944 A JP 2004067944A JP 2002231904 A JP2002231904 A JP 2002231904A JP 2002231904 A JP2002231904 A JP 2002231904A JP 2004067944 A JP2004067944 A JP 2004067944A
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Japan
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thermoplastic elastomer
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rubber
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JP2002231904A
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English (en)
Inventor
Hajime Nishihara
西原 一
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Chemicals Corp
Asahi Chemical Co Ltd
Original Assignee
Asahi Kasei Chemicals Corp
Asahi Chemical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】機械的強度及び極性ポリマーに対する接着性に優れた熱可塑性エラストマー組成物の提供。
【解決手段】(A)架橋性ゴム状重合体、(B)含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有する熱可塑性樹脂、及び(C)溶解性パラメータが15〜30(joule/cm1/2の範囲にある相容化剤とからなる、架橋された熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。更に詳しくは、機械的強度及び極性ポリマーに対する接着性に優れた熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラジカル架橋性エラストマーとPP等のラジカル架橋性のない樹脂とをラジカル開始剤の存在下、押出機中で溶融混練させながら架橋する、いわゆる動的架橋による熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
このような熱可塑性エラストマー組成物として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とオレフィン系樹脂との動的架橋技術により製造されたオレフィン系エラストマー(特開平8−120127号公報、特開平9−137001号公報)が知られているが、極性ポリマーに対する接着性に劣り、必ずしも市場では満足されていない。
一方、ゴムとオレフィン系プラスチックと不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体との動的架橋技術で製造された熱可塑性エラストマー(特公平8−5999号公報)が開示されている。上記組成物は吸水性化合物を含有しているために吸水性が高く、かつ機械的強度、接着性が必ずしも充分でないために、実用的使用に耐えるゴム組成物が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち機械的強度及び極性ポリマーに対する接着性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は熱可塑性エラストマー組成物の改良を鋭意検討した結果、特定の官能基を含有する熱可塑性樹脂を用いることにより、驚くべきことに機械的強度及び極性ポリマーに対する接着性が飛躍的に向上する事を見出した。
即ち本発明は、(A)架橋性ゴム状重合体、(B)含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有する熱可塑性樹脂、及び(C)溶解性パラメータが15〜30(joule/cm1/2の範囲にある相容化剤とからなる、架橋された熱可塑性エラストマー組成物、とりわけ(C)が芳香族ビニル単量体単位を含有するブロック共重合体またはグラフト共重合体である熱可塑性エラストマー組成物を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳しく述べる。
本発明の組成物は、(A)架橋性ゴム状重合体、(B)特定の熱可塑性樹脂、及び(C)特定の相容化剤とからなる架橋された熱可塑性エラストマー組成物である。
ここで、(B)は含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有することが必須である。上記極性官能基を有することにより極性ポリマーとの接着性が向上する。
また、(C)は(A)(B)の相容性、分散性を向上するための成分であり、溶解性パラメータが15〜30(joule/cm1/2の範囲にある場合には、機械的強度及び極性ポリマーに対する接着性が向上することを見出し、本発明を完成した。
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
【0006】
(A)成分
本発明において、(A)架橋性ゴム状重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましく、このようなゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、及びエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレンン−ジエンモノマー三元共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−オクテン共重合体ゴム等の架橋ゴムまたは非架橋ゴム、並びに上記ゴム成分を含有する熱可塑性エラストマー等を挙げることができ、特に不飽和カルボン酸またはその無水物で変性され、あるいはエポキシ変性されていることが、(B)との接着性の観点で好ましい。
【0007】
本発明において(A)架橋性ゴム状重合体の中で好ましい共重合体の一つは、エチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。また(A)は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が好ましく、とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
【0008】
本発明において(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
一般には、メタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
【0009】
本発明において用いられる(A)の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率が60重量%を越えると、組成物の硬度、引張強度等の低下が大きく、一方、1重量%未満では柔軟性、機械的強度が低下する。
(A)の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.8〜0.9g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するオレフィン系エラストマーを用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低いエラストマー組成物を得ることができる。
【0010】
本発明にて用いられる(A)の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエラストマーを得ることができる。長鎖分岐を有するオレフィン系エラストマーとしては、USP5278272等に記載されている。
【0011】
また、(A)の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、室温以上にDSCの融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
また、本発明にて用いられる(A)のメルトインデックスは、0.01〜100g/10分(190℃、2.16kg荷重(0.212MPa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。100g/10分を越えると、組成物の架橋性が不十分であり、また0.01g/10分より小さいと流動性が悪く、加工性が低下して望ましくない。
【0012】
本発明において、(A)のもう一つの好ましい上記水素添加共重合体は、少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムの、全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加ゴムであり、とりわけ主鎖および側鎖に二重結合を有する重合体及び/またはランダム共重合体からなる不飽和ゴムの全二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴムであることが好ましい。
【0013】
上記水素添加ゴムにおいて、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体を共重合することができる。
上記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
【0014】
また前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、0〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0〜50重量%、最も好ましくは0〜30重量%である。
【0015】
(A)架橋性ゴム状重合体としての水素添加共重合体において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、またはビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体または前記共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を含む場合は、上記共役ジエン単量体部分の中でランダムに結合するが、本発明のDSCによる結晶性に関する要件を満足する範囲内で、ブロック状の芳香族ビニル単量体またはその他の単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、全芳香族ビニル単量体中の20重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以下である。
【0016】
上記水素添加ゴム中の全二重結合は、50%以上であり、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、または/および主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下であることが好ましい。このようなゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
【0017】
このような水素添加ゴムは、上述のゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,etal,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、Hung Yu Chen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルト−有機アルミニウム系触媒あるいは有機ニッケル−有機アルミニウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
【0018】
また、水素添加ゴムの100℃で測定したムーニー粘度(ML)は20〜90、25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、0.020〜0.30(Pa・sec)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は0.025〜0.15(Pa・sec)である。
そして、水素添加ゴムの結晶性の指標である吸熱ピーク熱量の制御は、テトラヒドロフラン等の極性化合物の添加または重合温度の制御により行う。吸熱ピーク熱量の低下は、極性化合物を増量するか、または重合温度を低下させて、1,2−ビニル結合を増大させることにより達成される。
本発明にて用いられる(A)成分は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0019】
(B)成分
本発明において(B)熱可塑性樹脂は、含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有し、とりわけカーボネート基、エステル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、水酸基、エポキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基、酸無水物基、ケテン基、メルカプト基から選ばれる一種以上の官能基を含有することが好ましい。たとえば、ポリフェニレンエーテル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。特に熱可塑性樹脂として芳香族ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0020】
本発明において(B)成分として使用する芳香族ポリカーボネートは、芳香族ホモポリカーボネートと芳香族コポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは、例えば、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法を挙げることができる。該芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等であり、特に2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕が好ましい。本発明において、2官能フェノール系化合物は、単独で用いてもよいし、あるいはそれらを併用してもよい。
【0021】
本発明において(B)成分として使用するポリ(メタ)アクリレートは、ポリメタクリレートまたはポリアクリレートであり、(メタ)アクリル酸エステル単量体単独、または上記単量体を主成分に、上記単量体と共重合可能な単量体との共重合体である。このような単量体として、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、主成分の(メタ)アクリル酸エステル以外の炭素数が1〜8のアルキル基からなる(メタ)アクリル酸エステル、α−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等の単量体が挙げられる。単量体混合物中に占める前記共重合可能な単量体の含量は0〜40重量%である。
【0022】
(B)成分としてのポリ(メタ)アクリレートの中でも、メタクリル酸メチル80〜99重量%と、アクリル酸メチルまたはアクリル酸ブチル1〜20重量%との共重合体が特に好ましく、公知のラジカル重合法で製造される。
本発明において(B)成分の一つのポリフェニレンエーテルは、主鎖に芳香環を有し、それらがエーテル結合で結合された単独重合体及び/又は共重合体であり、具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。かかるポリフェニレンエ−テルの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3,306,875号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許3,257,358号明細書、及び特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記ポリフェニレンエ−テルの還元粘度ηsp/c(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。ポリフェニレンエ−テルの還元粘度ηsp/cに関する上記要件を満たすための手段としては、前記ポリフェニレンエ−テルの製造の際の触媒量の調整などを挙げることができる。
【0023】
(C)成分
(C)成分は(A)(B)の相容性、分散性を向上するための成分であり、溶解性パラメータが15〜30(joule/cm1/2の範囲にあれば特に制限されない。とりわけ(A)と(B)の溶解性パラメータの間にある相容化剤が好ましく、(A)成分、(B)成分と相互作用可能な構造単位を含有することが更に好ましい。例えば、(C)は上記要件を満足したランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体であり、特に不飽和カルボン酸またはその無水物で変性され、あるいはエポキシ変性されていることが好ましい。
【0024】
本発明において(C)の好ましい相容化剤としてのブロック共重合体は、芳香族ビニル単位と共役ジエン単位からなるブロック共重合体、または上記共役ジエン単位部分が部分的に水素添加され、あるいは不飽和カルボン酸またはその無水物で変性され、あるいはエポキシ変性されたブロック共重合体等が挙げられる。上記ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニル単量体を共重合してもよい。
【0025】
また、上記ブロック共重合体を構成する共役ジエン単量体は、1,3−ブタジエン、イソプレン等を挙げることができる。
そして、ブロック共重合体のブロック構造は、芳香族ビニル単位からなる重合体ブロックをSで表示し、共役ジエン及び/またはその部分的に水素添加された単位からなる重合体ブロックをBで表示する場合、SB、S(BS)n 、(但し、nは1〜3の整数)、S(BSB)n 、(但し、nは1〜2の整数)のリニア−ブロック共重合体や、(SB)n X(但し、nは3〜6の整数。Xは四塩化ケイ素、四塩化スズ、ポリエポキシ化合物等のカップリング剤残基。)で示され、B部分を結合中心とする星状(スター)ブロック共重合体であることが好ましい。なかでもSBの2型、SBSの3型、SBSBの4型のリニア−ブロック共重合体が好ましい。
【0026】
本発明において、(A)と(B)からなる組成物100重量部中の(A)は、1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%、最も好ましくは20〜80重量%である。(A)成分が1重量%未満であると、組成物の機械的強度、柔軟性が小さく、(A)成分が99重量%を超えると、組成物の熱可塑性は小さくなり、好ましくない。そして、(C)は(A)と(B)とからなる組成物100重量部に対して、0.001〜30重量部が好ましく、更に好ましくは0.01〜20重量部、最も好ましくは0.1〜10重量部である。0.001重量部未満では、組成物の相溶化、分散性の不良をきたし、30重量部を超えると、機械的強度の低下を招き、好ましくない。
【0027】
(D)成分
本発明の水素添加ゴム組成物は、(D)架橋剤で架橋されることが好ましい。(D)は、(D−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(D−2)多官能単量体、(D−3)単官能単量体を含有する。上記(D)は、(A)と(B)100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。0.001重量部未満では架橋が不十分であり、10重量部を越えると組成物の外観、機械的強度が低下する傾向にある。
【0028】
ここで、(D−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられる。その具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
【0029】
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
上記(D−1)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。1重量%未満では架橋が不十分であり、80重量%を越えると機械的強度が低下する。
【0030】
本発明において、(D)架橋剤の一つの(D−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基がこのましい。官能基の数は2以上であるが、(D−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
【0031】
上記(D−2)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。1重量%未満では架橋が不十分であり、80重量%を越えると機械的強度が低下する。
本発明において用いられる前記(D−3)は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
【0032】
上記(D−3)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。1重量%未満では架橋が不十分であり、80重量%を越えると機械的強度が低下する。
本発明において、(D)が(D−1)(D−2)と共に(D−3)として不飽和多価カルボン酸またはその無水物を含有することが好ましく、このような場合には極性ポリマーに対する接着性が極めて向上する。
【0033】
(E)成分
上記(E)は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体、またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
これらの(E)成分は組成物の硬度、柔軟性の調整用に、(A)と(B)100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。5重量部未満では柔軟性、加工性が不足し、500重量部を越えるとオイルのブリードが顕著となり望ましくない。
【0034】
(F)成分
本発明において、必要に応じて(B)以外の熱可塑性樹脂(F)を配合することができる。このような熱可塑性樹脂は、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等のスチレン系樹脂、またはエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ブテン−1系樹脂等のオレフィン系樹脂が挙げることができる。
【0035】
本発明において、耐磨耗性が要求される場合は、必要に応じて、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5×10−3(m/sec)以上であるポリオルガノシロキサンを添加することができる。
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0036】
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5×10−3(m/sec)以上であり、更に好ましくは、0.01(m/sec)以上10(m/sec)未満、最も好ましくは0.05(m/sec)以上2(m/sec)未満である。
本発明において、ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
【0037】
また、本発明の組成物には、その特徴を損ねない程度に無機フィラーおよび可塑剤を含有することが可能である。ここで用いる無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、酸化チタン、クレー、マイカ、タルク、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸エステル等が挙げられる。また、その他の添加剤、例えば、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、アンチブロッキング剤、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤等も好適に使用される。
【0038】
本発明の組成物の製造には、通常の樹脂組成物、エラストマー組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機、等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A)成分と(B)成分とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
【0039】
本発明の組成物は、(A)、(B)、および(C)の3成分を同時に混合後、架橋反応を行なっても良いし、あるいは(A)と一部の成分とをまず混合し、架橋反応を行なって、残りの成分を混合しても良い。ここで(F)として、オレフィン系樹脂を用いる場合には、(A)、オレフィン系樹脂、および(C)とで架橋した後、さらに(B)を添加することができる。
本発明の組成物は、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A)成分と(B)成分と(C)成分とをよく混合し、押出機のホッパーに投入する。(D)架橋剤を、(A)と(B)と(C)とともに最初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。また(E)を押出機の途中から添加してもよいし、最初と途中とに分けて添加してもよい。(A)と(D)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練される際に、前記(A)と(D)架橋剤とが架橋反応し、さらに(E)軟化剤等を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、本発明の組成物のペレットを得ることができる。
【0040】
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィード部とサイドフィード部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニーディング部分を有し、上記ニーディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
【0041】
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリューの噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いずれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリューが好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリューが好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリューが好ましい。
【0042】
本発明において、特に外観と機械的強度の向上のためには、(A)と(B)成分からなる組成物のモルフォロジーも重要であり、(A)の重量平均粒子径が0.01〜3μmであり、かつ粒子長径d1と粒子短径d2との比d1/d2の数平均が1〜3であることが好ましい。(A)成分が独立粒子として存在し、かつ(B)成分が連続相となることが必要であり、そのためには、例えば、高せん断力下で、かつ架橋速度を抑制することが重要である。具体的には、架橋開始剤または架橋助剤を減量し、かつ架橋開始剤の分解温度以上の、できるだけ低温・長時間反応を行うことにより達成される。また架橋助剤として多官能単量体と単官能単量体の併用によっても達成することができる。架橋開始剤、架橋助剤の過度の添加、または、過度に高活性な架橋開始剤、架橋助剤、または高温反応条件は、ゴム状重合体の凝集が発生し、本願の要件を満足しない。そして、(A)に前もって少量(E)軟化剤を吸収させながら、架橋開始剤、架橋助剤を(A)に配合する事により、架橋反応が穏和に進行するために、小粒子で均一粒子を生成させることができる。
【0043】
本発明において、添加成分、特に(E)軟化剤のブリードを抑制するためには、(A)の下記測定法での架橋度が1〜95%であり、かつ膨潤度が3〜100であることが好ましく、更に好ましくは膨潤度が3〜20であり、最も好ましくは、3〜10である。
(A)の架橋度、膨潤度の測定法
前もって組成物中の(A)の重量Wを測定した後に、組成物をキシレン200ml中で20時間リフラックスさせ、溶液をフィルターで濾過し、膨潤組成物の重量(W)を測定する。次いで、上記膨潤組成物を100℃で真空乾燥後、再度重量(W)を測定する。このようにして、架橋度、膨潤度は以下のように算出される。
架橋度=(W/W)×100 (%)
膨潤度=W/W
そして、本発明において(E)軟化剤のブリードを抑制するのモルフォロジーとしては、下記の測定法により(A)の0.01〜3μmの全体積が全粒子体積中で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。
【0044】
ゴム状重合体の粒子径及び粒子体積の測定法
ゴム状重合体の粒子径及び粒子体積は、組成物の超薄切片法により撮影した透過型電子顕微鏡写真中の500個のゴム状重合体の各粒子を以下の方法で算出する事により得られる。すなわち、各粒子の粒子径は各粒子の面積Sを求め、Sを用いて、(4S/π)0.5を各粒子の粒子径とする。平均粒子径は重量平均粒子径を用い、粒子形状は、粒子長径d1と粒子短径d2との比d1/d2で表わされる。また、粒子体積は粒子面積Sの3/2乗のS1.5で定義し、全粒子体積は各粒子体積の和で表される。
【0045】
たとえ0.01〜3μmの粒子が存在していても、それが凝集して互いに接触している場合は、凝集粒子を1つの粒子として扱う。
このようなモルフォロジーは、(A)が大粒子であり、かつ不均一粒子であるからであり、そのためには、(A)と(B)の溶融粘度比を大きくすることが重要である。また架橋速度を高めることによっても達成することができる。具体的には、(A)の分子量に比較して低分子量の(B)を用いることである。また、架橋開始剤または架橋助剤を増量し、かつ架橋開始剤の分解温度以上の、できるだけ高温・長時間反応を行うことにより達成される。また架橋助剤として多官能単量体を用い、2官能より3官能単量体がより好ましい。但し、架橋開始剤、架橋助剤の過度の添加、または、過度に高活性な架橋開始剤、架橋助剤、または高温反応条件は、ゴム状重合体の凝集が発生し、本願の要件を満足しない場合がある。
【0046】
優れた機械的強度の向上を達成する製造方法として、以下の混練度Mを満足することがより好ましい。
M=(π/2)(L/D)D(N/Q)
10×10≦M≦1000×10
但し、L:原料添加部を基点としてダイ方向の押出機長(mm)、D:押出機バレル内径(mm)、Q:吐出量(kg/h)、N:スクリュー回転数(rpm)
混練度M=(π/2)(L/D)D(N/Q)が、10×10≦M≦1000×10であることが重要である。Mが10×10未満では、ゴム粒子が肥大化、凝集するために外観が低下し、一方Mが1000×10を越えると、過度のせん断力のために、機械的強度が低下する。
【0047】
そして、更に良好な機械的強度を達成するためには、以下の関係式の溶融温度を満足することが好ましい。即ち、溶融温度T(℃)で、まず溶融混練し、次いで溶融温度T(℃)で溶融混練し、とりわけ原料添加口を基点としてダイ方向に長さLを有する溶融押出機において、原料添加口から0.1L〜0.5Lの長さの押出機ゾーンを溶融温度T(℃)で、まず溶融混練し、次いでその後の押出機ゾーンを溶融温度T(℃)で溶融混練する。
【0048】
ここで、特にTが150〜250℃であることが好ましく、溶融押出機の各ゾーンのTまたはTは均一温度であっても良いし、または温度勾配を有していても良い。
:(C−1)の1分間半減期温度(℃)
−100<T<T+40
+1<T<T+200
こうして得られた組成物は任意の成形方法で各種成型品の製造が可能である。射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、発泡成形等が好ましく用いられる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
1.(A)の水素添加率(%)
NMR法による通常の方法で測定した。
2.SP値(δ)〔溶解性パラメーター(Solubility Parameter)〕
SP値は Polymer Engineering and Science、14、(2)、147 (1974)に記載のFedors 式、及び該文献に纏められている△e1と△v1のデータから算出した。
δ=[Σ(△e1)/Σ(△v1)]1/2
[ここで、△e1は各単位官能基当たりの凝集エネルギー、△v1は各単位官能基当たりの分子容を示し、δの単位は(joule/cm1/2である。以下、単位は省略する。]
尚、共重合体またはブレンド物のSP値は、加成則が成立すると仮定し、共重合体の場合は単量体ユニット、またはブレンド物の場合は各成分のSP値の重量比の比例配分により平均SP値を算出し、SP値とした。
【0050】
3.引張破断強度(MPa)
JIS K6251に準じ、23℃にて評価した。
4.極性ポリマーに対する接着性
極性ポリマーとしてABS樹脂を用い、射出成形して自動車用シフトノブ形状のインサート物を作製する。日精樹脂製のTSD−SE型縦型インサート射出成形機を用いて、ABS樹脂成形品を内層にし、本願の各種熱可塑性エラストマー組成物を外層にした自動車用シフトノブを成形する。このインサート成形品の熱可塑性エラストマー組成物の肉厚は1mmである。
このインサート成形品10個を用いて、ヒートショック試験を実施する。試験条件は−40℃で1時間、130℃で1時間のサイクルを100サイクル繰り返し、その後成形品のウエルドライン10カ所における割れの発生数を求め、接着性の指標とする。割れの発生数が少ないほど、接着性に優れていることを示す。
【0051】
実施例、および比較例で用いる各成分は、以下のものを用いる。
(イ)架橋性ゴム状重合体
1)水素添加共役ジエン系ゴムの製造
内容積10リッターの攪拌機付、ジャケット付きオートクレーブを反応器として用いて、ブタジエン/n−ヘキサン溶液(ブタジエン濃度20重量%)を20リッター/hrの速度で、n−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(濃度5重量%)を70ミリリッター/hrで導入し、重合温度110℃でブタジエンの連続重合を実施した。得られた活性重合体をメタノールで失活させ、別の内容積10リッターの攪拌機付、ジャッケット付きの反応器に重合体溶液8リッターを移し、温度60℃にて水素添加触媒としてジ−p−トリルビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液(濃度1ミリリッター/リッター)250ミリリッターと、n−ブチルリチウム溶液(濃度5ミリリッター/リッター)50ミリリッターとを、0℃、2kg/cmの水素圧下で混合したものを添加し、水素分圧3kg/cmにて30分間反応させた。得られた水素添加重合体溶液は、酸化防止剤として2,6−ジターシャルブチルヒドロキシトルエンを重合体当たり、0.5部添加して、溶剤を除去した。この際にブタジエン重合体を水素添加反応条件(水素添加圧力、水素添加温度、時間及び触媒量)を変えて水素添加して水素添加重合体を得た。その結果を表1、2に記載した。また結晶化ピーク熱量の制御は、極性化合物テトラヒドロフラン(THF)の添加または重合温度の制御により行う。そして、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体は、前記製造法において、スチレンを更に添加し同様に重合を行うことにより得られる。その結果を表2に記載する。
【0052】
2)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−1)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)である。(TPE−1と称する) SP値=17.0
3)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−2)
通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)である。(TPE−2と称する)
SP値=17.0
4)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)である。(TPE−3と称する) SP値=17.0
【0053】
(ロ)熱可塑性樹脂
市販の汎用の熱可塑性樹脂を用いる。括弧内は略称及びSP値を示す。
ポリプロピレン(PP;SP=16.0)、ビスフェノールA型ポリカーボネート(PC;SP=22.4)、ポリメチルメタクリレート(PMMA;SP=19.8)、ポリブチレンテレフタレート(PBT;SP=23.4)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(PPE;SP=22.4)
【0054】
(ハ)相容化剤
1)スチレン(S)・エチレン(E)ブチレン(B)・スチレン(S)ブロック共重合体(CP−1と称する)
S/E/B=67/23/10(重量比) SP値=19.8
2)スチレン(S)・メチルメタクリレート(M)ランダム共重合体(CP−2と称する)
S/M=60/40(重量比) SP値=20.6
3)スチレン(S)・メチルメタクリレート(M)グラフト共重合体(CP−3と称する)
ポリスチレンを幹にポリメチルメタクリレートを枝とした櫛型グラフト共重合体(マクロモノマー法による製法)
S/M=60/40(重量比) SP値=20.6
4)エチレン(E)・無水マレイン酸(MAH)共重合体
E/MAH=98/2(重量比)(CP−4と称する) SP値=17.5
【0055】
(ニ)パラフィン系オイル
出光興産(株)製、ダイアナプロセスオイル PW−90(MOと称する)
(ホ)架橋剤
1)架橋開始剤(D−1)
日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン( 商品名パーヘキサ25B)(POXと称する)
2)多官能単量体(D−2)
日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
3)単官能単量体(D−3)
和光純薬社製、無水マレイン酸(MAHと称する)
【0056】
実施例1〜10、および比較例1〜2
表1に記載の組成物を、バレル中央部に注入口を有した2軸押出機(40mmФ、L/D=47)を用いて200℃の温度条件で製造する。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いる。
このようにして得られた組成物から射出成形機を用いて、200℃で2mm厚のシートを作製し、各種評価を行なう。
その結果を表1に示す。
実施例11〜18
実施例1において、TPE−3を表2の(A)成分に変更すること以外、実施例1と同様の実験を繰り返す。
その結果を表2に示す。
【0057】
【表1】
Figure 2004067944
【0058】
【表2】
Figure 2004067944
【0059】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、優れた機械的強度及び極性ポリマーに対する接着性を有している。
本発明の組成物は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。

Claims (11)

  1. (A)架橋性ゴム状重合体、(B)含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有する熱可塑性樹脂、及び(C)溶解性パラメータが15〜30(joule/cm1/2の範囲にある相容化剤とからなる、架橋された熱可塑性エラストマー組成物。
  2. (A)および/または(C)が、不飽和カルボン酸またはその無水物で変性され、あるいはエポキシ変性されている請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. (C)が芳香族ビニル単量体単位を含有するブロック共重合体またはグラフト共重合体である請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. (B)がカーボネート基、エステル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、水酸基、エポキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基、酸無水物基、ケテン基、メルカプト基から選ばれる一種以上の官能基を含有する熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. (B)がポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルから選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂である請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. (A)が、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有するエチレン・α−オレフィン共重合体、あるいは少なくとも一種の、共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムの全二重結合の、水素添加率が50%以上である水素添加ゴムである請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. (A)のエチレン・α−オレフィン共重合体が、メタロセン触媒を用いて製造されたものである請求項6に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. さらに(D)架橋剤で架橋され、(E)軟化剤を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. (D)が、不飽和カルボン酸またはその無水物を含有する請求項8に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  10. さらに、オレフィン系樹脂を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  11. (A)とオレフィン系樹脂を必須とし、必要に応じて(C)の存在下で架橋され、さらに(B)を添加する請求項10に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
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