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JP2004059757A - 樹脂組成物 - Google Patents

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JP2004059757A
JP2004059757A JP2002220712A JP2002220712A JP2004059757A JP 2004059757 A JP2004059757 A JP 2004059757A JP 2002220712 A JP2002220712 A JP 2002220712A JP 2002220712 A JP2002220712 A JP 2002220712A JP 2004059757 A JP2004059757 A JP 2004059757A
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濱口 美都繁
Hideo Matsuoka
松岡 英夫
Kazuhiko Kobayashi
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Abstract

【課題】ポリアミド樹脂の有する機械的強度および靭性と、PPS樹脂の有する低吸水性および耐透過性との高度なバランスの実現を課題とし、特異的な耐透過性、耐衝撃性、成形加工性を有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)変性ポリアミド樹脂25〜400重量部を必須成分として含有する樹脂組成物であって、かつ該樹脂組成物を加工して得られる成形品において、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において(a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相、(b)変性ポリアミド樹脂が分散相となる相構造を少なくとも一部に形成することを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体および/または液体の耐透過性に優れた樹脂組成物に関するものである。特に、変性ポリフェニレンスルフィド樹脂と変性ポリアミド樹脂を特定の相構造を形成させることによって得られる特異的な耐透過性、耐衝撃性、成形加工性を有する樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性および成形性をバランスよく備えているため、電気・電子部品および自動車部品などに広く用いられている。また、近年、安全性、保存安定性、更には環境汚染防止性を確保するために内容物の漏洩防止、外気の混入防止等の目的でガスバリア性(耐透過性)が要求される樹脂成形品が増加してきており、その中でもポリアミド樹脂は、優れたガスバリア性を有することから様々な成形品として用いられてきている。しかしながら、ポリアミド樹脂は、吸湿により強靱性は更に向上する反面、寸法変化および剛性などの低下や、更に、高湿度下の使用においては薬液および気体の耐透過性が低下し、その使用範囲を制約されることが多い状況にあり、改善が望まれている。
【0003】
このようなポリアミド樹脂の物性を補完するために、耐水性、耐透過性に優れる反面、靭性や成形加工性などに問題を有するポリフェニレンスルフィド樹脂とを組み合わせた樹脂組成物および成形体が従来より提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では確かにポリアミド樹脂単体に比較し、吸水時の寸法安定性および剛性は向上するものの、必ずしも満足するものではない。また、耐透過性および剛性が必要な部材に用いる場合には十分とはいえず、これらポリアミド樹脂の有する特性とポリフェニレンスルフィド樹脂の有する特性を兼ね備えている、高度に特性バランスに優れた成形材料がさらに求められている。
【0005】
また、バリア性の高い樹脂からなるバリア層を積層させた積層構造体においては、バリア層を形成する樹脂としてポリアミド樹脂(たとえば特開昭58−220738号公報)を代表例として挙げることができる。しかし、最近は自動車燃料としてガソリンとアルコ−ル類との混合物、いわゆるガスホ−ルが用いられる機会も増加しており、このような場合、前記の従来技術で得られるプラスチック容器ではバリア性が不十分であり、更なるバリア性の向上技術が望まれている。
【0006】
一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂はガソリンや自動車オイルなどの薬液および水に対して極めて高いバリア性を示すことが知られており、これを用いたブロ−成形中空容器や管状体なども提案されている(たとえば特開昭62−90216号公報、特開昭61−255832号公報、特開平3−32816号公報など)。しかし、ポリフェニレンスルフィド樹脂は他の樹脂との層間接着性が不十分のためポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系材料を始め他の樹脂材料との共押出やラミネ−ト加工などが困難であった。特開2001−30291号公報では、ポリアミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂の相構造を制御することにより、バリア性と層間接着性をバランス良く発現することができるが、耐衝撃性に関しては十分とはいえず更なる改良が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアミド樹脂の有する機械的強度および靭性と、ポリフェニレンスルフィド樹脂の有する低吸水性および耐透過性との高度なバランスの実現を課題とし、特異的な耐透過性、耐衝撃性、成形加工性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは前記の課題を解決すべく検討した結果、変性ポリフェニレンスルフィド樹脂と変性ポリアミド樹脂を特定の溶融粘度比になるよう制御して配合することで得られる樹脂組成物において、その樹脂組成物を成形して得られる成形品の樹脂相分離構造が変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続した相を一部または全部に形成するように分散構造を制御することにより前記課題が解決されることを見出し本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂とエポキシ基含有ポリオレフィンを含む変性ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)ポリアミド樹脂と酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体を含む変性ポリアミド樹脂25〜400重量部を必須成分として含有する樹脂組成物であって、かつ該樹脂組成物を加工して得られる成形品において、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において(a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相、(b)変性ポリアミド樹脂が分散相となる相構造を少なくとも一部に形成することを特徴とする樹脂組成物。
【0010】
(2) (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が、ポリフェニレンスルフィド100重量部に対して、エポキシ基含有ポリオレフィン1〜100重量部を必須成分として含有することを特徴とする前記(1)に記載の樹脂組成物。
【0011】
(3) (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が、ポリフェニレンスルフィドとエポキシ基含有ポリオレフィンからなる組成物100重量部に対して、エポキシ基含有ポリオレフィン以外のポリオレフィン樹脂を1〜45重量部を含有してなることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【0012】
(4) (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂のIzod衝撃強度が300J/m以上である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0013】
(5) (b)変性ポリアミド樹脂が、ポリアミド100重量部に対して、酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体10〜80重量部を必須成分として含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0014】
(6) (b)変性ポリアミド樹脂が、ポリアミドと酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体からなる組成物100重量部に対して、酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン樹脂1〜45重量部からなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0015】
(7) (b)変性ポリアミド樹脂のIzod衝撃強度が500J/m以上である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0016】
(8) (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂および(b)変性ポリアミド樹脂からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)相溶化剤を0.01〜30重量部含有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0017】
(9) (c)相溶化剤がビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物であることを特徴とする前記(8)に記載の樹脂組成物。
【0018】
(10) (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂と(b)変性ポリアミド樹脂からなるる樹脂組成物であって、変性ポリフェニレンスルフィド樹脂および変性ポリアミド樹脂のうち、融点が高い方の樹脂の融点をTp(℃)とした時、Tp+10℃〜Tp+100℃の任意の温度において、下式(1)で定義される溶融粘度比が、せん断速度200秒−1以下の任意のせん断速度において0.5以下を示し、かつ、せん断速度1000秒−1以上の任意のせん断速度において0.8以上を示すことを満足することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに樹脂組成物。
【0019】
【式2】
Figure 2004059757
【0020】
(11) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載の樹脂組成物を加工して得られる成形品において、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において(a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相、(b)変性ポリアミド樹脂が分散相となる相構造に形成し、かつ変性ポリアミド樹脂の平均分散粒径が5μm以下であり、変性ポリアミド樹脂分散相中に酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体が平均分散粒径が1μm以下で分散したサラミ型分散構造を有することを特徴とする樹脂組成物。
を提供するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0022】
本発明に用いる(a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下変性PPS樹脂と略す)とは、ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)とエポキシ基含有ポリオレフィンおよび必要に応じてエポキシ基を含有しない他のポリオレフィンを溶融混練して得られる熱可塑性樹脂である。
【0023】
好ましいPPSは、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0024】
【化1】
Figure 2004059757
【0025】
耐熱性の観点からは前記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPSはその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
なかでもポリ−p−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体(m−フェニレンスルフィド単位20%以下)などは成形加工性とバリア性を兼備する点で好ましく用いられ得る。
【0026】
【化2】
Figure 2004059757
【0027】
本発明で用いられるPPSの溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常5〜2000Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のものが使用され、10〜500Pa・s(同上)の範囲がより好ましい。
【0028】
かかるPPSは通常公知の方法即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造できる。本発明において前記の様に得られたPPSを空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0029】
PPSの加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃である。また、加熱処理時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理ためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0030】
PPSを窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0031】
本発明で用いられるPPSは脱イオン処理を施されたPPSであることが好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶媒洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いても良い。
【0032】
PPSを有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPSを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上を混合して使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPSを浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPSを洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPSは残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0033】
PPSを熱水で洗浄処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるPPSの好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPSを投入し、常圧で或いは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPSと水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS200g以下の浴比が選択される。
【0034】
PPSを酸水溶液で洗浄処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPSを浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPSを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPSは残留している酸または塩などを除去するために、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPSの好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
【0035】
本発明で使用される変性PPS樹脂の成分として用いられる好ましいエポキシ基含有ポリオレフィンとしてα−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルからなる変性ポリオレフィンを用いることができる。α−オレフィンとは具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン−1などであるが好ましいのはエチレンである。また、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとは下記一般式
【0036】
【化3】
Figure 2004059757
【0037】
(式中Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)で示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどであり、特にメタクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルの共重合量は1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲が適当である。
【0038】
PPS100重量部に対するエポキシ基含有ポリオレフィンの含有量は1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜80重量部である。エポキシ基含有ポリオレフィンの含有量が100重量部を超えるとバリア性の低下を引き起こすため好ましくない。またエポキシ基含有ポリオレフィンの含有量が1重量部未満になると本発明の特徴である高衝撃性の発現が困難になるため好ましくない。
【0039】
本発明で使用される変性PPS樹脂に追加成分として用いられ得るエポキシ基含有ポリオレフィン以外のポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体の少なくとも一部を加水分解して得られる重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体の少なくとも一部を加水分解して得られる重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/たは不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化した共重合体]、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体、および、そのブロック共重合体の水素化物などが用いられる。
【0040】
なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化した共重合体]が好ましい。
【0041】
また、ここでいうエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体であり、前記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上の点から好ましい。このエチレン/α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%、さらに好ましくは3〜20モル%である。
【0042】
更に1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1′−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。
【0043】
変性PPS樹脂100重量部に対するエポキシ基含有ポリオレフィン以外のポリオレフィン樹脂の含有量は好ましくは1〜45重量部であり、更に好ましくは5〜40重量部である。
【0044】
本発明の(a)変性PPS樹脂には、本発明の目的を損なわない限りにおいては、前記以外の他の樹脂が含有されることは差し支えがない。
【0045】
本発明の(b)変性ポリアミド樹脂は、ポリアミドと酸変性エチレン/αオレフィン共重合体および必要に応じて未変性ポリオレフィン樹脂を溶融混練して得られる熱可塑性樹脂である。
【0046】
好ましいポリアミドとしては、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0047】
本発明において、特に有用なポリアミドは、150℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミドであり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0048】
とりわけ好ましいポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12、およびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのポリアミドを成形加工性、相溶性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0049】
これらポリアミドの重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のポリアミドが好ましい。
【0050】
本発明で使用される変性ポリアミド樹脂に成分として用いられる好ましい酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体とは、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体と変性した樹脂であり、前記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上の点から好ましい。このエチレン/α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%、さらに好ましくは3〜20モル%である。更に1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1′−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。
【0051】
酸変性に用いられる変性剤としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体が挙げられ、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などである。これらの中では、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸や無水マレイン酸が好適である。
【0052】
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体成分をポリオレフィン樹脂に導入する方法は特に制限なく、予め主成分であるオレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体化合物を共重合せしめたり、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸またはその誘導体化合物をラジカル開始剤を用いてグラフト化処理を行って導入するなどの方法を用いることができる。不飽和カルボン酸またはその誘導体成分の導入量は変性ポリオレフィン中のオレフィンモノマ全体に対して好ましくは0.001〜40モル%、より好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であることが適当である。
【0053】
ポリアミド100重量部に対する酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体の含有量は10〜80重量部であることが好ましく、より好ましくは20〜70重量部である。酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体の含有量が80重量部を超えるとバリア性の低下を引き起こすため好ましくない。また酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体の含有量が10重量部未満になると本発明の特徴である高衝撃性の発現が困難になるため好ましくない。
【0054】
本発明で使用される変性ポリアミド樹脂に追加成分として用いられ得る酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体、未変性のエチレン/α−オレフィン共重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体の少なくとも一部を加水分解して得られる重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体の少なくとも一部を加水分解して得られる重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化した共重合体]、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体、および、そのブロック共重合体の水素化物などが用いられる。
【0055】
なかでも、未変性のエチレン/α−オレフィン共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化した共重合体]が好ましい。
【0056】
変性ポリアミド樹脂100重量部に対する酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン樹脂の含有量は好ましくは1〜45重量部であり、更に好ましくは5〜40重量部である。
【0057】
本発明の(b)変性ポリアミド樹脂には、本発明の目的を損なわない限りにおいては、他の樹脂が含有されることは差し支えがない。
【0058】
また、本発明の(b)変性ポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物を好ましく含有することができる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の含有量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物において(a)変性PPS樹脂100重量部に対する(b)変性ポリアミド樹脂の含有量は、25〜400重量部であることが必要である。好ましくは、65〜400重量部である。特に好ましくは、120〜400重量部である。(b)変性ポリアミド樹脂の含有量が400重量部を超えると、本発明の目的である高バリア性の発現が困難となるので好ましくない。また、(b)変性ポリアミド樹脂の含有量が25重量部未満になると、他の樹脂との接着性が低下し、また耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0060】
本発明においては、(a)変性PPS樹脂と(b)変性ポリアミド樹脂の相溶性の向上を目的として(c)相溶化剤を配合することもできる。(c)相溶化剤を用いると得られる成形品の相分離構造の安定性が向上し、その結果優れた耐衝撃性、耐透過性を発現し、好ましい態様の一つである。これら(c)相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これらは2種以上同時に使用することもできる。ここで多官能エポキシ化合物は、エポキシ基を分子中に2個以上含むものであり、液体または固体状のものを使用することができる。例えば、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン等のビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系エポキシ化合物、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させたノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。好ましくはエポキシ基を有する有機シラン化合物、ビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ樹脂が用いられる。特に好ましくは、ビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物である。
【0061】
この(c)相溶化剤の含有量は、(a)変性PPS樹脂と(b)変性ポリアミド樹脂の合計量100重量部に対し、0.01〜30重量部であることが好ましい。より好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。
【0062】
本発明の樹脂組成物において、(b)変性ポリアミドはサラミ型の分散構造を形成する。ここでサラミ型分散構造とは、図1に示したように変性ポリアミド樹脂のうちのポリアミドが分散相となり、かつポリアミド中に更に酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体が分散した海−島−湖構造のことをいう。
【0063】
(c)相溶化剤を使用することでこの分散相の分散粒径を微細化することができ、(b)変性ポリアミド樹脂が平均分散粒径が5μm以下で分散し、かつ分散する変性ポリアミド樹脂中に酸変性エチレン/αーオレフィン共重合体が1μm以下で分散するとき本発明の目的である特異的な耐衝撃性と耐透過性を発現することができる。変性ポリアミド樹脂の分散粒径は、3μm以下であることがより好ましい。また酸変性エチレン/αーオレフィン共重合体の分散粒径は、より好ましくは0.8μm以下である。
【0064】
本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形品は、(a)変性PPS樹脂が連続相(マトリックス)および(b)変性ポリアミド樹脂が分散相となる相構造を一部もしくは全体に有する。該成形品の形状については特に制限はない。また、該成形品中前記相構造が複数形成された態様もある。この相構造は、走査型および透過型電子顕微鏡を用いて観察し、確認する。
【0065】
本発明の樹脂組成物は一般的に溶融成形により成形されるが、溶融成形においては流動時の樹脂表層と樹脂内部には、温度差や応力差が生じ易い。本発明において、前記した相構造を得るために、これを利用することができる。すなわち(a)変性PPS樹脂と(b)変性ポリアミド樹脂にせん断速度に対する溶融粘度の依存性の異なった樹脂を用い、樹脂表層と樹脂内部に生じたせん断速度の差により、成形品の一部もしくは全体に(a)変性PPS樹脂が連続相となる部分を生ぜしめる方法である。例えば、射出成形を例に挙げて説明すると、ある成形加工温度で成形するとき、該温度におけるせん断速度200秒−1程度以下の任意のせん断速度で溶融粘度比(ここで、溶融粘度比とは変性PPS樹脂の溶融粘度/変性ポリアミド樹脂の溶融粘度、として定義される。)を0.5以下とすること成形品の中心部に(a)変性PPS樹脂が連続相となる部分を生ぜしめることができ、本発明の要件である(a)変性PPS樹脂が連続相(マトリックス)および(b)変性ポリアミド樹脂が分散相となる相構造を形成するための方法として好ましく用いることができる。一方、成形品の表層部は金型との摩擦により逆にせん断速度が高まるため、これらの樹脂が同温度におけるせん断速度1000秒−1程度以上の任意のせん断速度の溶融粘度比が0.8以上となる組み合わせであると表層部では(b)変性ポリアミド樹脂が連続相を形成することもできる。
【0066】
なお、これから明らかなように前段の主旨は、溶融粘度比のせん断応力依存性を利用した本発明の態様を説明したものであり、具体的な溶融粘度比に本発明が制限されるものではなく、また、成形品の任意の位置に生じるせん断応力は金型設計等で操作しうるものであるので、かかる相構造も任意の位置に生ぜしめることは容易に理解できるところである。また、成形法としても本発明は限定されるものではない。
【0067】
本発明の樹脂組成物には機械的強度、剛性やバリア性を付与するために無機充填材を含有することができる。その材料は特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。
【0068】
また、これら無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、およびエポキシ化合物などのカップリング剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理して使用することは、より優れた機械的強度、バリヤ性を得る意味において好ましい。
【0069】
前記の無機充填剤の含有量は、(a)変性PPS樹脂および(b)変性ポリアミド樹脂の合計量100重量部に対し、0.1〜200重量部であることが好ましい。より好ましくは0.5〜200重量部、特に好ましくは1〜150重量部である。
【0070】
本発明の樹脂組成物には導電性を付与するために導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーを含有することができる。その材料は特に限定されるものではないが、導電性フィラーとして、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。
【0071】
金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
【0072】
金属繊維の金属種の具体例としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示できる。
【0073】
かかる金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0074】
金属酸化物の具体例としてはSnO(アンチモンドープ)、In(アンチモンドープ)、ZnO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0075】
導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO(アンチモンドープ)、In(アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0076】
カーボン粉末はその原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネスブラックが特に好適に用いられる。またカーボン粉末は、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性に特に制限は無いが、強度、電気伝導度のバランスの点から、平均粒径が好ましく500nm以下、更に好ましくは5〜100nm、特に好ましくは10〜70nmである。また比表面積(BET法)は10m2 /g以上、更には30m2 /g以上が好ましい。またDBP給油量は50ml/100g以上、特に100ml/100g以上が好ましい。また灰分は0.5重量%以下、特に0.3重量%以下が好ましい。
【0077】
かかるカーボン粉末はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0078】
本発明の樹脂組成物を加工して得られた成形品は、しばしば表面の平滑性が求められる。かかる観点から、本発明で用いられる導電性フィラーは、本発明で用いられる無機充填材同様、高いアスペクト比を有する繊維状フィラーよりも、粉状、粒状、板状、鱗片状、或いは樹脂組成物中の長さ/直径比が200以下の繊維状のいずれかの形態であることが好ましい。
【0079】
導電性ポリマーの具体例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどが例示できる。
【0080】
前記導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーは、2種以上を併用して用いても良い。かかる導電性フィラー、導電性ポリマーの中で、特にカーボンブラックが強度、経済性の点で特に好適に用いられる。
【0081】
本発明で用いられる導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーの含有量は、用いる導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度などとのバランスの点から、(a)および(b)成分の合計100重量部に対し、1〜250重量部、好ましくは3〜100重量部の範囲が好ましく選択される。また、更に好ましくは(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対し、3〜100重量部の範囲が導電性機能を付与するために好ましく選択される。
【0082】
また導電性を付与した場合、十分な帯電防止性能を得る意味で、その体積固有抵抗が1010Ω・cm以下であることが好ましい。但し前記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合は一般に強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため目標とする導電レベルが得られれば、前記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合量はできるだけ少ない方が望ましい。目標とする導電レベルは用途によって異なるが、通常体積固有抵抗が100Ω・cmを越え、1010Ω・cm以下の範囲である。
【0083】
本発明における組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0084】
本発明の樹脂組成物を得る方法としては、本発明が要件が満たされる限り、特に制限はないが、溶融混練において、好ましい相構造を実現するためには、たとえば2軸押出機で溶融混練する場合にメインフィーダーから予め溶融混練された(a)変性PPS樹脂と(b)変性ポリアミド樹脂および(c)相溶化剤を供給しする方法、メインフィーダーからPPSおよびエポキシ基含有ポリオレフィンを供給し、(b)変性ポリアミド樹脂および(c)相溶化剤を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法、メインフィーダーからポリアミドおよび酸変性エチレン/αオレフィン共重合体を供給し、(a)変性PPS樹脂および(c)相溶化剤を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法などが挙げられる。
【0085】
本発明の樹脂組成物より得られる成形品には種々の形に賦形された態様があり、特に溶融成形体を得る成形方法には、公知の方法(射出成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等)を採用できるが、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形から選ばれた方法を採用することが、発明の目的を容易に達成できるので好ましい。また、成形温度については、通常、PPSの融点より5〜50℃高い温度範囲から選択され、一般的には、単層であるが、2色射出成形法や共押出成形法などの方法により多層構造体としてもかまわない。
【0086】
ここで多層構造体とは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一つもつ構造体を言う。各層の配置については特に制限はなく、全ての層を本発明の樹脂組成物で構成してもよいし、他の層にその他の熱可塑性樹脂で構成してもよい。
【0087】
このような多層構造体は、2色射出成形法などによっても製造し得るが、フィルム状またはシ−ト状として得る場合は各々の層を形成する組成物を別個の押出機で溶融した後、多層構造のダイに供給し、共押出成形する方法、予め他の層を成形した後、本発明の樹脂組成物からなる層を溶融押出するいわゆるラミネ−ト成形法などにより製造することができるが、積層構造体の形状が瓶、樽、タンクなどの中空容器やパイプ、チュ−ブなどの管状体である場合は、通常の共押出成形法を採用することができ、例えば内層を本発明の樹脂組成物からなる層、外層を他の樹脂層で形成する2層中空成形体の場合、2台の押出機へ、前記樹脂組成物と他の樹脂とを別々に供給し、これら2種の溶融樹脂を共通のダイ内に圧力供給して、各々環状の流れとなした後、樹脂組成物からなる層を内層側に、他の樹脂層を外層側になるように合流させ、ついで、ダイ外へ共押出して、通常公知のチューブ成形法、ブロー成形法などを行うことにより、2層中空成形体を得ることができる。また、3層中空成形体の場合には、3台の押出機を用いて前記と同様の方法にて3層構造にするか、または2台の押出機を用いて2種3層構造の中空成形体を得ることも可能である。これらの方法の中では層間接着力の点で共押出成形法を用いて成形することが好ましい。
【0088】
他の層として用いられる熱可塑性樹脂としては、飽和ポリエステル、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリケトン共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、ABS、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマーなどが例示でき、これらの混合物としたり各種添加剤を添加して用いることもできる。
【0089】
本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形品は、例えば、フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−115、フロン−134a、フロン−32、フロン−123、フロン−124、フロン−125、フロン−143a、フロン−141b、フロン−142b、フロン−225、フロン−C318、R−502、1,1,1−トリクロロエタン、塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、メチルクロロホルム、プロパン、イソブタン、n−ブタン、ジメチルエーテル、ひまし油ベースのブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワースアリリングオイル、ウインドウオッシャ液、ガソリン、メタノール、エタノール、イソプタノール、ブタノール、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、メタン、プロパン、天然ガス、アルゴン、ヘリウム、キセノン、医薬剤等の気体および/または液体あるいは気化ガス等の透過性が低く優れていることから、燃料タンク、オイル用リザーバータンク、その他シャンプー、リンス、液体石鹸等の各種薬剤用ボトルおよび付属ポンプなどの薬液保存容器またはその付属部品、各種燃料チューブ接続部品、オイルチューブ接続部品、ブレーキホース接続部品、ウインドウオッシャー液用ノズル、冷却水、冷媒等用クーラーホース接続用部品、エアコン冷媒用チューブ接続用部品、消火器および消火設備用ホース、医療用冷却機材用チューブの接続用部品およびバルブ類、その他薬液およびガス搬送用チューブ用途、薬品保存用容器等の薬液および耐ガス透過性が必要とされる用途、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類などの機械部品を始め、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品など各種用途に有効である。
【0090】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0091】
(1)アルコールガソリン透過性
直径60mm、深さ5cmのアルミ製容器にモデルガソリン(トルエン//イソオクタン=50//50体積%)とメタノールを85対15重量比に混合したアルコールガソリン混合物を20g精秤し、射出成形により調整した1mm厚角板試験片により密封し、漏れのないようにボルトで固定した。その後、全体の重量を測定し、試験容器を60℃の防爆型オーブンにいれ、500時間おき、その後減量した重量を測定した。
【0092】
(2)アルコールガソリンの吸液性
射出成形によりにより調製したASTM1号引張試験片(厚さ1/8インチ)をオートクレーブ中でモデルガソリンとメタノールを85対15重量比に混合したアルコールガソリンに浸漬後、60℃の防爆型オーブンにいれ24時間おき、成形直後の絶対乾燥時(絶乾時)とアルコールガソリン吸液後の重量から吸液時重量増加率として求めた。
吸液率(%)={(吸液後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量}×100。
【0093】
(3)吸水率
射出成形によりにより調製したASTM1号引張試験片(厚さ1/8インチ)を温度60℃、相対湿度95%の恒温恒湿器中に、24時間静置し、成形直後の絶対乾燥時(絶乾時)と吸水後の重量から吸水時重量増加率として求めた。
【0094】
吸水率(%)={(吸水後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量}×100。
【0095】
(4)材料強度
以下の標準方法に従って測定した。
引張強度      :ASTM D638
Izod衝撃強度  :ASTM D256
低温衝撃強度    :温度雰囲気を−40℃にした以外はASTM D256
にしたがって測定したIzod衝撃強度。
【0096】
(5)相分離構造、分散形態の観察
ASTM1号試験片の厚さ方向に表面より0.1〜0.3mm部分(表層部)と1.4〜1.8mm部分(中心部)を電子顕微鏡(TEM、SEM)を用いて観察を行なった。
【0097】
(6)溶融粘度比
プランジャー式キャピラリーレオメーター(東洋精機製作所社製、キャピログラフ タイプ1C)を用いて、混練温度でのせん断速度100秒−1および5000秒−1における溶融粘度(Pa・s)を測定し下記式(1)により求めた。
【0098】
【式3】
Figure 2004059757
【0099】
(7)分散相の分散粒径
ASTM1号試験片の厚さ方向より1.4〜1.8mm部分(中心部)を電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、任意の分散相を100個選び、それぞれの最大径と最小径の平均値をとり、数平均値としてもとめた。
【0100】
実施例および比較例で使用した変性PPS樹脂および変性ポリアミド樹脂は以下のとおり。なお、特に断らない限りはいずれも常法に従い重合を行い、調製した。
【0101】
[参考例1(ポリ−p−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体の製造)]
オートクレーブに硫化ナトリウム3.26Kg(25モル、結晶水40%を含む)、水酸化ナトリウム4g、酢酸ナトリウム三水和物1.36Kg(約10モル)およびN−メチルピロリドン(以下NMPと略す)7.9Kgを仕込み、撹拌しながら徐々に205℃まで昇温し、水1.36Kgを含む留出水約1.5リットルを除去した。残留混合物に1,4−ジクロロベンゼン3.373Kg(22.9モル)、1,3−ジクロロベンゼン0.375Kg(2.55モル)およびNMP2Kgを加え、270℃で5時間加熱した。反応生成物を70℃の温水で5回洗浄し、80℃で24時間減圧乾燥して、融点248℃、メルトフローレート350g/10分(以下MFRと略す;315℃、5000g荷重)の粉末状ポリ−p−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体を約2Kg得た。
【0102】
<変性PPS樹脂>
(A−1):融点280℃、MFR100g/10分(315℃、5000g荷重)、Mw70000、170Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、MFR3g/10分、エチレン/メタクリル酸グリシジル=94/6(重量%)共重合体を25重量部混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度300℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が500J/mの変性PPS樹脂。
【0103】
(A−2):融点280℃、MFR100g/10分(315℃、5000g荷重)、Mw70000、170Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、MFR3g/10分、エチレン/メタクリル酸グリシジル=88/12(重量%)共重合体を12.5重量部混合してなる変性PPS樹脂を100重量部としたとき、MFR=0.5、密度0.860のエチレン/α−オレフィン共重合体(三井化学製”タフマー”TX−610)を9重量部の比率で混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度300℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が650J/mの変性PPS樹脂。
【0104】
(A−3):上記参考例1により得られた融点248℃、MFR350g/10分(315℃、5000g荷重)のポリ−p−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体100重量部に対して、MFR3g/10分、エチレン/メタクリル酸グリシジル=88/12(重量%)共重合体を12.5重量部混合してなる変性PPS樹脂を100重量部としたとき、MFR=0.5、密度0.860のエチレン/α−オレフィン共重合体(三井化学製”タフマー”TX−610)を9重量部の比率で混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度270℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が550J/mの変性PPS樹脂。
【0105】
(A−4):融点280℃、MFR600g/10分(315℃、5000g荷重)、Mw38000、290Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、MFR3g/10分、エチレン/メタクリル酸グリシジル=88/12(重量%)共重合体を12.5重量部混合してなる変性PPS樹脂を100重量部としたとき、MFR=0.5、密度0.860のエチレン/α−オレフィン共重合体(三井化学製”タフマー”TX−610)を9重量部の比率で混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度300℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が550J/mの変性PPS樹脂。
【0106】
(A−5):融点280℃、MFR100g/10分(315℃、5000g荷重)、Mw70000、170Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のポリフェニレンスルフィド樹脂。
【0107】
(A−6):融点280℃、MFR100g/10分(315℃、5000g荷重)、Mw70000、170Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、MFR3g/10分、エチレン/メタクリル酸グリシジル=88/12(重量%)共重合体を2.8重量部混合してなる変性PPS樹脂を100重量部としたとき、MFR=0.5、密度0.860のエチレン/α−オレフィン共重合体(三井化学製”タフマー”TX−610)を39重量部の比率で混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度300℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が750J/mの変性PPS樹脂。
【0108】
<変性ポリアミド樹脂>
(B−1):融点225℃、相対粘度3.40のナイロン6樹脂100重量部に対し、無水マレイン酸で0.8重量部変性されたエチレン/1−ブテン共重合体を25重量部混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度250℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が850J/mの変性ポリアミド樹脂。
【0109】
(B−2):融点225℃、相対粘度3.40のナイロン6樹脂100重量部に対し、無水マレイン酸で0.8重量部変性されたエチレン/1−ブテン共重合体を43重量部混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度250℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が1000J/mの変性ポリアミド樹脂。
【0110】
(B−3):融点225℃、相対粘度3.40のナイロン6樹脂100重量部に対して、無水マレイン酸で0.8重量部変性されたエチレン/1−ブテン共重合体を21重量部混合してなる変性ポリアミド樹脂を100重量部としたときMFR=0.5、密度0.860のエチレン/α−オレフィン共重合体(三井化学製”タフマー”TX−610)を18重量部の比率で混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度250℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が950J/mの変性ポリアミド樹脂。
【0111】
(B−4):融点225℃、相対粘度4.40のナイロン6樹脂。
【0112】
(B−5):融点225℃、相対粘度2.75のナイロン6樹脂100重量部に対して、無水マレイン酸で0.8重量部変性されたエチレン/1−ブテン共重合体を66重量部混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度250℃で溶融押出して得られたIzod衝撃強度が900J/mの変性ポリアミド樹脂。
【0113】
<相溶化剤>
(C−1):エポキシ当量875〜975、分子量1600のビスフェノールA型エポキシ樹脂。
【0114】
(C−2):エポキシ当量3000〜5000、分子量5500のビスフェノールA型エポキシ樹脂。
【0115】
(C−3):γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン製SH6040)。
【0116】
<耐衝撃改良材▲1▼>
MFR3g/10分、エチレン/メタクリル酸グリシジル=88/12(重量%)共重合体。
【0117】
<耐衝撃改良材▲2▼>
無水マレイン酸で0.8重量部変性されたエチレン/1−ブテン共重合体。
【0118】
実施例1〜8
表1に示すように変性PPS樹脂、変性ポリアミド樹脂を日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機のメインフィダーから供給し、混練温度270〜300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、射出成形(東芝機械社製IS100FA、シリンダー温度270〜300℃、金型温度130℃)により試験片を調製した。各サンプルのバリア性および材料強度などを測定した結果は表1に示すとおりであった。
【0119】
比較例1〜4
表2に示すように変性PPS樹脂、変性ポリアミド樹脂および耐衝撃改良材を日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機のメインフィダーから供給し、混練温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、射出成形(東芝機械社製IS100FA、シリンダー温度300℃、金型温度130℃)により試験片を調製した。各サンプルのバリア性および材料強度などを測定した結果は表2に示すとおりであった。
【0120】
実施例9〜13
表3に示すように変性PPS樹脂、変性ポリアミド樹脂および相溶化剤を日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機のメインフィダーから供給し、混練温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、射出成形(東芝機械社製IS100FA、シリンダー温度300℃、金型温度130℃)により試験片を調製した。各サンプルのバリア性および材料強度などを測定した結果は表3に示すとおりであった。
【0121】
【表1】
Figure 2004059757
【0122】
【表2】
Figure 2004059757
【0123】
【表3】
Figure 2004059757
【0124】
実施例1〜13および比較例1〜4より変性PPS樹脂と変性ポリアミド樹脂からなる樹脂組成物を成形して得られる成形品は、バリア性、耐衝撃性に優れた特性を有する実用価値の高いものである。
【0125】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形品は、バリア性および耐衝撃性が良好であり、各種用途に展開可能であり、例えば電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品、建材、包装材、家具、日用雑貨などに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】変性PPS樹脂成分が連続相を形成し、変性ポリアミド樹脂のうちのポリアミドが分散相となり、かつポリアミド中に更に酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体が分散したサラミ型分散構造(海−島−湖構造)のモデル図である。
【符号の説明】
1 変性PPS樹脂
2 ポリアミド
3 酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体

Claims (11)

  1. (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂とエポキシ基含有ポリオレフィンを含む変性ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)ポリアミド樹脂と酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体を含む変性ポリアミド樹脂25〜400重量部を必須成分として含有する樹脂組成物であって、かつ該樹脂組成物を加工して得られる成形品において、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において(a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相、(b)変性ポリアミド樹脂が分散相となる相構造を少なくとも一部に形成することを特徴とする樹脂組成物。
  2. (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が、ポリフェニレンスルフィド100重量部に対して、エポキシ基含有ポリオレフィン1〜100重量部を必須成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が、ポリフェニレンスルフィドとエポキシ基含有ポリオレフィンからなる組成物100重量部に対して、エポキシ基含有ポリオレフィン以外のポリオレフィン樹脂を1〜45重量部を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
  4. (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂のIzod衝撃強度が300J/m以上である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. (b)変性ポリアミド樹脂が、ポリアミド100重量部に対して、酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体10〜80重量部を必須成分として含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. (b)変性ポリアミド樹脂が、ポリアミドと酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体からなる組成物100重量部に対して、酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン樹脂1〜45重量部からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. (b)変性ポリアミド樹脂のIzod衝撃強度が500J/m以上である請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂および(b)変性ポリアミド樹脂からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)相溶化剤を0.01〜30重量部含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. (c)相溶化剤がビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
  10. (a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂と(b)変性ポリアミド樹脂からなるる樹脂組成物であって、変性ポリフェニレンスルフィド樹脂および変性ポリアミド樹脂のうち、融点が高い方の樹脂の融点をTp(℃)とした時、Tp+10℃〜Tp+100℃の任意の温度において、下式(1)で定義される溶融粘度比が、せん断速度200秒−1以下の任意のせん断速度において0.5以下を示し、かつ、せん断速度1000秒−1以上の任意のせん断速度において0.8以上を示すことを満足することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに樹脂組成物。
    【式1】
    Figure 2004059757
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を加工して得られる成形品において、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において(a)変性ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相、(b)変性ポリアミド樹脂が分散相となる相構造に形成し、かつ変性ポリアミド樹脂の平均分散粒径が5μm以下であり、変性ポリアミド樹脂分散相中に酸変性エチレン/α−オレフィン共重合体が平均分散粒径が1μm以下で分散したサラミ型分散構造を有することを特徴とする樹脂組成物。
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