JP2004050950A - 履帯用リンク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】装軌式作業機械における履帯を構成するリンク10であって、 所要の間隔で連結ピン孔15と履帯ブッシュ装着孔16を有し、高さ方向の接地側の面(履板取付部19)にリンク10を履板と結合させる複数のボルト挿通孔20が設けられ、かつそのボルト挿通孔20の一端にナット装填用開口部21を形成され、そのナット装填用開口部21における前記ボルト挿通孔20と接しない部分(ウエブ部分23)の開口方向の厚みが、その周辺部に較べて薄肉に形成される。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、装軌式走行体を備える作業機械に用いられる履帯を連結するための履帯用リンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、パワーショベル,ブルドーザなど装軌式の作業機械における下部走行体の履帯は、無端状に連結されるリンクに、それぞれ履板が取り付けられたものであり、その履帯を車体フレームに支持されて所要の間隔で配されている駆動輪と遊動輪に巻き掛けられ、前記リンクを駆動輪のスプロケットに噛合わせて駆動され、それら駆動輪と遊動輪の間で車体フレームに配置される下部転輪と上部転輪により支持されて走行できるようにされている。
【0003】
このような履帯におけるリンクは、図7(a)(b)で示されるように、その幅方向において左右対称に形成されるリンク片51,51を所定の間隔をとって履帯ブッシュ52で相互に連結されて1リンク(リンクアセンブリ50)とされ、そのようなリンクアセンブリ50を履帯ブッシュ52の内部に挿通する連結ピン53によって順次連結されている。また、履板55は所要寸法のものを前記各リンクアセンブリ50の接地側に対応する端面に、そのリンク片51の中間位置で連結ピン53の軸方向と直交する方向に貫通するボルト挿通孔54を通じてボルト56とナット57によって締結固着されている。
【0004】
履帯は、前述のような構成であるので、使用されるリンクアセンブリ50(以下、単にリンクという)について、一般に連結されるリンク50の連結数が偶数・奇数に係わらず支障を来すことのないように、連結部でオフセットされた形状のリンク片51,51を対称に配置された、いわゆるオフセットリンクが使用されている。また、履板55とリンク片51とを締結するために、リンク片51の連結ピン孔とブッシュ取付穴との間に透かし孔58(ナット装填用開口部)が二箇所設けられ、そのリンク片51における透かし孔58の形成部における履板取付面に対する反対側の面にナット保持座が設けられている。
【0005】
このように構成された履帯は、走行する際の動力伝達を行う働きをするとともに、接地側において作業機械全体を支持するものであるから、全体として頑丈な構造のものが要求される。したがって、履帯のリンク50は、一般の動力伝達チェーンのリンクと異なり構造的に厚肉にされた頑丈な構造のものが使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の履帯用リンクにあっては、強度的に頑丈なものを採用して故障が発生しないことを前提としていることから、どうしてもその重量が大となる。殊に、一台の作業機械に装備される履帯を構成するリンクの数は、少なくとも80を越える数からなり、その単位重量は過大ではなくとも合計された重量としては非常に大きくなる。したがって、その駆動に対する動力もより多く消費されることになる。このようなことは、近時環境対策の一端として省エネルギー化の促進が求められることから、この種の履帯を備える作業機械についてもその見直しが必要となっている。
【0007】
このような見地から、多数のリンクを連結してそれらに取付く履板とで構成される履帯において、過剰な材料を用いて形成されているか否かを探求して、必要強度を確保するとともに、その自重量を削減することにより軽量化を図り、過剰な動力消費を削減することによる省エネルギー化、ひいてはコストダウンを達成できるという経済的効果が求められる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、リンクの耐久性を損なうことなく全体としての軽量化を図り、省エネルギー化と経済効果が得られるようにされる履帯用リンクを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するために、本発明による履帯用リンクは、
装軌式作業機械における履帯を構成する履帯用リンクであって、
所要の間隔で連結ピンを固定する開口部と履帯ブッシュを固定する開口部を有し、高さ方向の接地側の面にリンクを履板と結合させる複数のボルト挿通孔が設けられ、かつそのボルト挿通孔の一端にナット装填用開口部を形成され、そのナット装填用開口部における前記ボルト挿通孔と接しない部分の開口方向の厚みが、その周辺部に較べて薄肉に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、履板とリンクを結合するためのナット装填用開口部におけるボルト挿通孔と接しない部分の開口方向の厚みが、その周辺部の他の部分に較べて薄肉に形成されていることにより、非接地側の強度を低下させることなく重量軽減することができる。その結果、リンクの単位重量を削減できることは、多数のリンクを連結して構成される履帯としての重量がかなり大きく削減できることになり、運転時における動力消費を大きく低減できることになり、省エネルギー化と使用材料の削減に伴うコストダウンとが併せ得られるという効果を奏するのである。
【0011】
前記発明において、前記ナット装填用開口部における前記ボルト挿通孔と接しない部分は、そのボルト挿通孔を備える接地側部位と非接地側部位との間に形成されており、前記非接地側部位の幅方向の中間部に位置していることを特徴とする。こうすることで、リンクの非接地側部位が、ナット装填用開口部におけるボルト挿通孔と対向する開口部隣接部分を薄肉に形成されていても、非接地側部位に掛かる荷重に対する断面強度を維持することができ、重量軽減の効果を発揮することができる。
【0012】
前記発明において、前記ナット装填用開口部は複数設けられるのがよい。また、前記複数のナット装填用開口部間に形成される中間支持部位は、リンクのオフセット繋ぎ軸線上で横断面を菱形状に形成されるのがよい。このように構成されることにより、まずナット装填用開口部を複数設けることで、リンクと履板との締結固定能力を高めることができる。また、中間支持部位を菱形断面形状にすることで、型鍛造によるナット装填用開口部の抜き加工を容易にするとともに、前記薄肉部分の創成を無理なく容易に行えて、工作性を高めることができるという効果を奏する。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による履帯用リンクの具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1には本発明の一実施形態に係る履帯の一部分解斜視図が示されている。図2には、履板とリンクとの結合された履帯サブアセンブリを表わす斜視図が、図3にはリンクの正面図が、図4にはリンクの斜め下から見た外観斜視図(a)と斜め上から見たリンクの内側面斜視図(b)が、図5には図3のA−A視断面図が、それぞれ示されている。
【0015】
本実施形態の履帯用リンク10(以下、単にリンク10という)は、主に油圧ショベル,ブルドーザなど装軌式の建設機械(作業機械)における下部走行体(図示省略)に組み込まれる履帯1の一部を構成するものであり、図1にその一部を示すように、左右一対のリンク10,10をその接地面側に配される履板3にボルト締結して履板3とリンク10の組み付けられたものを、そのリンク部分において連結ピン4とブッシュ5によって多数連結して履帯1を構成するのに用いられるオフセット型のリンクである。
【0016】
このリンク10は、連結方向軸線に対して左右対称形のものを所定の間隔に配して連結ピン4とブッシュ5によって組立てられて順次連結されており、接地面側に所要寸法の履板3がボルト締結(後述)される。なお、リンク10は左右対称形であるので、以下その片側について述べる。
【0017】
リンク10は、その本体部11が連結状態で一列に揃うように中間位置から一端部12に対して他端部13を連結時に重なり合う寸法で幅方向にオフセットされている。そのオフセットされた他端部13には外側にカウンタボス14が設けられ、そのカウンタボス14に連結ピン孔15(本発明の連結ピンを固定する開口部に相当)が本体部11に直交して設けられ、一端部12には前記連結ピン孔15と平行して履帯ブッシュ装着孔16(本発明の履帯ブッシュを固定する開口部に相当)が設けられている。前記連結ピン孔15と履帯ブッシュ装着孔16との両軸芯間の距離がこのリンク10の連結ピッチとなる。なお、前記他端部13のカウンタボス14と反対側の内面部には、シールリングが装着されるシール穴17が前記連結ピン孔15と同軸芯で形成されている。
【0018】
このようにされるリンク10の本体部11中間部分では、オフセット部分を覆うようにして非接地側には所要肉厚の平面形成部18が、また、この平面形成部18と平行して反対の接地側には履板取付部19が、それぞれ所要寸法の肉厚で形成されている。なお、前記非接地側の平面形成部18は、リンク10を連結して使用される際に連結ピン4を基準にして回動する範囲で干渉しないように一端部12では外側を、他端部13では内側をそれぞれ切欠いて形成されている。
【0019】
前記履板取付部19には、所要の間隔で二箇所にボルト挿通孔20がその取付部19の取付面に直交するようにして穿設されている。それらボルト挿通孔20が設けられる履板取付部19と前記非接地側の平面形成部18との間には、ナット装填用開口部21,21が前記ボルト挿通孔20に対応させて設けてある。
【0020】
前記両ナット装填用開口部21,21間には、図3〜図5にて示されるように、非接地側の平面形成部18と履板取付部19とを接続するように中間支持部位22が設けられ、前記ナット装填用開口部21,21に繋がって前記中間支持部位22と前記平面形成部18との間に薄肉の水かき状のウエブ部分23,23が、内外両面から彫り込んだ状態で形成されている。また、前記中間支持部位22は、図5にて示されるように、その平断面が菱形状に形成されている。
【0021】
また、本体部11の両端部12,13では、いずれも非接地側に相当するカウンタボス14の上側部分13aおよび下側部分13bと履帯ブッシュ装着孔16の形成部上側12aにおける余剰部分(強度的に余り影響されない部分)を彫り込んで軽量化を図っている。
【0022】
このように構成される本実施形態のリンク10は、その製作に当って型鍛造加工によって外形を成形されている。したがって、その鍛造加工時に、本体部11の中間部分における中間支持部位22を挟んで設けられるナット装填用開口部21,21の打抜きと、そのナット装填用開口部21に繋がって前記中間支持部位22と前記平面形成部18との間に形成される薄肉水かき状のウエブ部分23,23が一体に成形される。なお、連結ピン孔15およびシール穴17と履帯ブッシュ装着孔16とは機械加工され、所定の連結ピッチどおりに仕上られる。また、履板取付部19に設けられるボルト挿通孔20,20についても孔加工され、履板をボルトで締結させるようになされる。
【0023】
本実施形態のリンク10は、図6にその要所の断面形状図で示されるように、要所の断面形状を駆動時に作用する負荷に対して十分耐える断面係数を所有させて、比較的負荷の小さい部位において断面が小さくなるように形成されている。
【0024】
すなわち、図6における図上断面1−1では、リンク一端部12に履帯ブッシュを装着するに要する通常の肉厚で形成されている。断面2−2は、ちょうど履板を締結するボルト挿入孔20の軸芯を通り、ナット装填用開口部21を縦断しており、前記ナット装填用開口部21に接する部分が薄肉のウエブ部分23として、オフセットされるリンク中間部での平面形成部18における厚さ方向(幅方向)のほぼ中ほどにウエブ部分23が位置するようにされているのが判る。また、断面3−3は中間支持部位22の外れ位置での断面形状が示され、断面4−4は中間支持部位22の位置を縦断した断面形状で、この部位では前面側を少し内側に控えるようにして平面形成部と履板取付部とが一体になっている。なお、断面5−5および断面6−6は、いずれも前記断面3−3および断面2−2とほぼ対称である。また、断面7−7は、ちょうど連結ピン孔の中心を縦断したところで、従来のものとほぼ同様である。
【0025】
前述のように本実施形態のリンク10は、牽引力が直接的に作用する一端部12と他端部13とではほぼ従来と同様の断面形状にされて耐久性を維持できるようにされている。そして、中間部においては履板3(図1参照)を介して作用する上下方向の負荷に対して中間支持部位22が、両端部12,13の連結ピン孔15周りと履帯ブッシュ装着孔16周りと協働して対応し、特にナット装填用開口部21,21周りを中間支持部位22が支柱の役目を果たすとともにその開口部に接するウエブ部分23,23によって中間支持部位22と両端部12,13との間を繋ぐリブの働きをさせる構造とすることで、当該部分を薄肉に形成されているにも係わらず断面強度の低下を防止することができるのである。
【0026】
また、前記中間支持部位22の断面をほぼ菱形状に形成することと、前記ウエブ部分23,23を幅方向の中ほどに位置させるように形成することで、リンクの一端部12に対して他端部13をオフセットさせて型鍛造するのを容易化し、かつナット装填用開口部21を確実に抜き落とし成形することができる。
【0027】
こうして形成される本実施形態のリンク10は、従来品と比較して、その強度を殆ど低下させることなく、重量を低減させることができるのである。ちなみに、従来品と本実施形態のものとの重量差は、従来品が9.25Kgであるのに対して、本実施形態のものが8.30Kgであり、その差は−0.95Kgである。ここで重量差−0.95Kgということは、1リンクアセンブリにおけるブッシュおよび連結ピンについて従来と変わりがないとしても、1リンクアセンブリ当り二個のリンクからなるので、その1リンクアセンブリ当りの減量が−1.9Kgとなる。したがって、装軌車両の1連の履帯におけるリンク数が40とすると、−1.9×40=76Kg、さらに下部走行体としては二連の履帯を必要とすることから、76×2=152Kgとなる。
【0028】
このように、リンク1個当りの重量軽減は僅かであっても、多数個のリンクを連結して構成される履帯としてみれば、その連結数が多いほど履帯そのものの条件を変更することなく多大な重量低減を図ることが可能になる。その結果、駆動時の動力消費量を大きく削減でき、運転コストの低減と製品材料の削減とによる経済効果を著しく高めることができるのである。
【0029】
さらに、本発明によれば、動力消費量の低減で同一性能の車両である場合、その駆動機でパワーアップあるいは動力消費量に見合った性能に対応する駆動機に置き換えてより軽量化を図ることができ、また、動力消費量の削減による省エネルギー化によって環境改善に資すること著しいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る履帯の一部分解斜視図である。
【図2】図2は、履板とリンクとの結合された履帯サブアセンブリを表わす斜視図である。
【図3】図3は、本実施形態のリンクの正面図である。
【図4】図4は、リンクの斜め下からの外観斜視図(a)と斜め上からのリンクの内側面斜視図(b)である。
【図5】図5は、図3のA−A視断面図である。
【図6】図6は、本実施形態のリンクにおける要所の断面形状図である。
【図7】図7は、従来のリンクサブアセンブリの斜視図(a)と正面図(b)である。
【符号の説明】
1 履帯
3 履板
4 連結ピン
5 ブッシュ
10 リンク
11 リンクの本体部
12 リンクの一端部
13 リンクの他端部
14 カウンタボス
15 連結ピン孔
16 履帯ブッシュ装着孔
18 平面形成部
19 履板取付部
20 ボルト挿通孔
21 ナット装填開口部
22 中間支持部位
23 ウエブ部分
Claims (4)
- 装軌式作業機械における履帯を構成する履帯用リンクであって、
所要の間隔で連結ピンを固定する開口部と履帯ブッシュを固定する開口部を有し、高さ方向の接地側の面にリンクを履板と結合させる複数のボルト挿通孔が設けられ、かつそのボルト挿通孔の一端にナット装填用開口部を形成され、そのナット装填用開口部における前記ボルト挿通孔と接しない部分の開口方向の厚みが、その周辺部に較べて薄肉に形成されていることを特徴とする履帯用リンク。 - 前記ナット装填用開口部における前記ボルト挿通孔と接しない部分は、そのボルト挿通孔を備える接地側部位と非接地側部位との間に形成されており、前記非接地側部位の幅方向の中間部に位置していることを特徴とする請求項1に記載の履帯用リンク。
- 前記ナット装填用開口部は複数設けられている請求項1または2に記載の履帯用リンク。
- 前記複数のナット装填用開口部間に形成される中間支持部位は、リンクのオフセット繋ぎ軸線上で横断面を菱形状に形成される請求項3に記載の履帯用リンク。
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