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JP2004050810A - ハードコート膜付基材 - Google Patents

ハードコート膜付基材 Download PDF

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JP2004050810A JP2003019009A JP2003019009A JP2004050810A JP 2004050810 A JP2004050810 A JP 2004050810A JP 2003019009 A JP2003019009 A JP 2003019009A JP 2003019009 A JP2003019009 A JP 2003019009A JP 2004050810 A JP2004050810 A JP 2004050810A
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Abstract

【課題】基材との密着性、耐擦傷性、硬度等に優れるとともに生産性等にも優れ、しかもゴミ等の付着の少ないハードコート膜を有する被膜付基材を提供する。
【解決手段】基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜がマトリックス成分と五酸化アンチモン(Sb)粒子とを含み、該五酸化アンチモン粒子の平均粒子径が2〜100nmの範囲にあり、ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量が5〜95重量%の範囲にあることを特徴とするハードコート膜付基材。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度等に優れるとともに、帯電防止性能、透明性、ヘーズ等に優れたハードコート膜付基材に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート膜を形成することが知られており、このようなハードコート膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
また、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の反射を防止するため、その表面に反射防止膜を形成することが知られており、たとえば、コート法、蒸着法、CVD法等によって、フッ素樹脂、フッ化マグネシウムのような低屈折率の物質の被膜をガラスやプラスチックの基材表面に形成したり、シリカ微粒子等の低屈折率微粒子を含む塗布液を基材表面に塗布して、反射防止被膜を形成する方法が知られている(たとえば、特開平7−133105号公報など参照)。さらに、基材に帯電防止性能、電磁波遮蔽性能を付与するために金属微粒子、導電性の酸化物微粒子を含む導電性被膜を形成することも行われている。
【0004】
このように、反射防止膜および/または導電性被膜を設ける場合においても耐擦傷性を向上させるために基材と反射防止膜および/または導電性被膜とに間にハードコート膜を形成することが行われている。
しかしながら、従来のハードコート膜では、特に基材が樹脂製の基材の場合は基材との密着性や膜自体の耐擦傷性が不充分となることがあった。
【0005】
さらに、ハードコート膜上に、反射防止膜および/または導電性被膜を設ける場合においても、従来のハードコート膜では、ハードコート膜形成後に擦傷がついたり、静電気によってゴミが付着したりすることがあり、最終的に製造される導電性被膜付基材の透明性やヘーズに低下し、製品の歩留まりが低下する問題があった。
【0006】
このため、さらに基材との密着性や耐擦傷性を向上させるとともにゴミ等の付着を防止できるハードコート膜付基材の出現が望まれていた。
また、このような従来のハードコート膜では、膜厚を厚くすると、経済性が低下するとともに、透明性が低下する場合があり、さらにPET等の柔軟な基材の場合は反りや湾曲等変形することがあった。またハードコート膜の膜厚が約5μm以下となると、用いる膜中の粒子の種類、例えば樹脂粒子、無機粒子、導電性粒子等の種類によっては塗料用樹脂が硬化しにくくなり、膜厚によっては硬化しないことがあった。
【0007】
このような状況の下、本発明者は、上記問題点を解消すべく鋭意検討した結果ハードコート膜中に導電性粒子を配合すれば、導電性粒子によって、発生した静電気が除去され、その結果ゴミなどの付着が抑制されることを見いだした。
特に、導電性粒子として、特定の粒径を有する五酸化アンチモン粒子を使用することで、驚くべきことに、上記した問題点をいずれも解消したハードコート膜が得られることを見いだした。
【0008】
また、五酸化アンチモンを使用すると、ハードコート膜形成時に、塗布液中に含まれている被膜成分の硬化を促進させることができるので特定の厚さのハードコート膜にすれば極めて効率よく被膜の硬化を行うことも可能であることも見いだした。
【0009】
【発明の目的】
本発明では、基材との密着性、耐擦傷性、硬度等に優れるとともに生産性等にも優れ、しかもゴミ等の付着の少ないハードコート膜を有する被膜付基材を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係るハードコート膜付基材は、基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜がマトリックス成分と五酸化アンチモン(Sb)粒子とを含み、該五酸化アンチモン粒子の平均粒子径が2〜100nmの範囲にあり、ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量が5〜95重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0011】
前記マトリックス成分は、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂が好適である。
前記ハードコート膜の膜厚が0.1〜20μmの範囲にあることが好ましい。
さらに、前記ハードコート膜の膜厚が0.2〜10μmの範囲にあることがより好ましい。
前記ハードコート膜上にさらに反射防止膜が形成されていることが好ましい。
【0012】
さらに、前記ハードコート膜と反射防止膜との間に中間膜が形成されていてもよい。
【0013】
【発明の具体的な説明】
以下、本発明に係るハードコート膜付基材について説明する。
ハードコート膜付基材
本発明のハードコート膜付基材は、基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなる。
【0014】
基材
本発明に用いる基材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。中でも樹脂系基材を好適に用いることができる。
【0015】
ハードコート膜
ハードコート膜は、マトリックス成分と五酸化アンチモン(Sb)粒子を含んでいる。五酸化アンチモン粒子の平均粒子径が2〜100nmの範囲にあり、ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量が5〜95重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0016】
五酸化アンチモン粒子
本発明に用いる五酸化アンチモン粒子は、平均粒子径が2〜100nm、好ましくは5〜80nmの範囲にある。
五酸化アンチモン粒子の平均粒子径が前記範囲の下限未満の場合は、基材との密着性や耐擦傷性、膜硬度が向上する効果が得られず、場合によっては低下することがあり、また、粉体抵抗が大きくなり充分な帯電防止性能が得られないことがある。
【0017】
五酸化アンチモン粒子の平均粒子径が前記範囲の上限を越えると、五酸化アンチモン粒子の含有量にもよるが、膜の透明性が低下したり、膜が着色することがあり、ヘーズが高くなることがある。
ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量はSbとして5〜95重量%、好ましくは10〜80重量%の範囲である。
【0018】
ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量がSbとして前記範囲の下限未満の場合は、基材との密着性、耐擦傷性および膜硬度の向上効果が充分得られず、また充分な帯電防止性能が発現しないために得られるハードコート膜付基材にはゴミなどが付着しやすい。このため、後述する反射防止膜および/または中間膜(導電膜、屈折率調整膜)を設けた基材の製造に於いて、得られる基材は透明性やヘーズに劣り製品の歩留まりが低下することがある。
【0019】
また、膜厚が約10μm以下、さらには5μm以下、特に2μm以下の薄いハードコート膜を形成する場合においても塗料用樹脂を硬化させたり硬化を促進させる効果が不充分となることがある。
ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量がSbとして前記範囲の上限を越えると、基材との密着性が低下したり、ボイドが生成し、ハードコート層の硬度が低下することがある。また得られるハードコート膜付基材の透明性やヘーズが不充分となることがある。さらに、前記塗料用樹脂の硬化を促進する効果がさらに向上することもない。
【0020】
ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量がSbとして上記範囲にあれば、基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度の向上効果、膜硬化の促進効果等が得られる他、ハードコート膜自体の屈折率を高めることも可能であり(Sbの屈折率2.0)、基材の屈折率がたとえば1.55以下と低い場合においても、あるいはハードコート膜のマトリックスの屈折率がたとえば1.55以下と低い場合においても、ハードコート膜と基材、さらに必要に応じて形成される反射防止膜との屈折率差を大きくすることができるので反射防止性能に優れた被膜付基材を形成することができる。
【0021】
このような五酸化アンチモン粒子は公知の製造方法で製造されたものを特に制限なく使用できるが、具体的な製造方法としては、平均粒子径が上記範囲にあり、充分な基材との密着性や硬度および耐擦傷性を有するハードコート膜付基材が得られれば特に制限はなく、本願出願人の出願による特開平2−180717号公報に開示した五酸化アンチモンゾルの製造方法は、粒子径が均一で安定性、透明性等に優れた五酸化アンチモンゾルが得られるので好適に採用することができる。
【0022】
詳細には、特定モル比の三酸化アンチモンとアルカリ物質との混合物に所定量の過酸化水素を所定速度で添加することによって製造することができる。
本発明のように、ハードコート膜中に五酸化アンチモン粒子が含まれていると、基材との密着性に優れるとともに、耐擦傷性、膜硬度に優れたハードコート膜を形成できる。なお、このような効果は、導電性酸化物粒子のなかでも、五酸化アンチモン粒子特有のものであり、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム、低次酸化チタンなどの導電性酸化物粒子、三酸化アンチモン粒子、金属微粒子などでは、発現されない。
【0023】
この理由は定かではないものの、マトリックス成分が熱硬化性樹脂の場合、五酸化アンチモン粒子が、樹脂の硬化を促進しているものと考えられる。
なお、五酸化アンチモン粒子以外の粒子では、塗料用樹脂の硬化が遅くなったり硬化しないことがある。これは、五酸化アンチモン粒子以外の粒子では、硬化を妨害する作用があると思われるが、五酸化アンチモン粒子はこの作用を抑制する効果があるものと考えられる。
【0024】
マトリックス成分
ハードコート膜に含まれているマトリックス成分としては、樹脂マトリックスが好適である。
このような樹脂マトリックスとして、具体的には塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。
【0025】
このような樹脂として、たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0026】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂の場合、紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
本発明では、特に、熱硬化性樹脂の場合に五酸化アンチモン粒子を配合した場合の効果(基材との密着性、耐擦傷性および硬度の向上効果)が顕著である。
【0027】
ハードコート膜の厚さは0.1〜20μm、さらには0.2〜10μm、特に0.2〜5μmの範囲にあることが好ましい。
このような厚さの範囲にあれば、ハードコート膜中に五酸化アンチモン粒子が含まれているので、被膜を充分に硬化できるとともに、薄膜で基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度等に優れ、経済性にも優れたハードコート膜付基材が得られる。
【0028】
ハードコート膜の厚さが前記範囲の下限未満の場合は、ハードコート膜が薄いためにハードコート膜表面に加わる応力を充分吸収することがでないために、結果的に鉛筆硬度が不充分となる。
ハードコート膜の厚さが前記範囲の上限を越えると、膜の厚さが均一になるように塗布したり、均一に乾燥したることが困難となり、このためクラックやボイドの発生により得られるハードコート膜の強度や透明性が不充分となることがある。
【0029】
このようなハードコート膜は、前記したマトリックス成分を形成するマトリックス形成成分と前記した五酸化アンチモン粒子を含む塗布液を塗布することで形成することができる。
なお、塗布液を調製する際には、五酸化アンチモン粒子は分散媒に分散させたゾルとして用いることが、均一に分散した塗布液を調製するためには好ましい。
【0030】
分散ゾルは水分散ゾル、アルコール等の有機溶媒に分散させた有機溶媒分散ゾルのいずれであってもよい。
さらにまた、五酸化アンチモン粒子は表面が公知のシランカップリング剤で処理されたものであってもよい。
こうして調製した分散ゾルとマトリックス形成成分とを適当な溶剤で希釈して、ハードコート膜形成用の塗布液とすることができる。さらに、塗布液には分散性、安定性を高めるために界面活性剤等を添加することもできる。
【0031】
また、塗布液には、マトリックス形成成分を溶解するとともに、容易に揮発しうる溶剤が含まれていてもよく、マトリックス形成成分が熱硬化性樹脂の場合は、必要に応じて硬化剤が配合されていてもよい。
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、熱硬化性樹脂の場合は硬化させた後、熱可塑性樹脂の場合は、さらに必要に応じて基材の軟化点未満の温度で加熱処理することによってハードコート膜を形成することができる。
【0032】
本発明のハードコート膜付基材には、ハードコート膜上に反射防止膜が設けられていてもよい。
反射防止膜
本発明に用いる反射防止膜としては、反射防止性能を有していれば特に制限はなく従来公知の反射防止膜を用いることができる。具体的には、前記ハードコート膜よりも屈折率が低いものであれば反射防止性能を具備している。
【0033】
このような反射防止膜は、反射防止膜形成用マトリックスと、必要に応じて低屈折率成分とからなっている。
反射防止膜形成用マトリックスとは、反射防止膜を形成しうる成分であり、基材との密着性や硬度および塗工性等の点から選択して用いることができる。
具体的には、前記ハードコート膜形成成分と同様のマトリックス成分を使用することができる。
【0034】
また、マトリックスとして加水分解性有機珪素化合物を用いることも可能である。具体的には、たとえば、アルコキシシランとアルコールの混合液に、水および触媒としての酸またはアルカリを加えることにより、アルコキシシランの部分加水分解物が好適に使用される。
加水分解性有機珪素化合物としては、一般式RSi(OR’)4−n[R、R’:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基、等の炭化水素基、n=0,1,2,または3]で表されるアルコキシシランを用いることができる。特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランなどのテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0035】
任意で含まれていてもよい低屈折率成分としては、CaF、NaF、NaAlF、MgF等の低屈折率物質の他、シリカ系粒子(シリカ粒子、シリカ中空粒子、シリカ・アルミナ複合酸化物粒子)、多孔質シリカ系粒子等が挙げられる。
たとえば、本願出願人の出願による特開平7−133105号公報に開示した多孔性の無機酸化物微粒子の表面をシリカで被覆した複合酸化物微粒子を用いると屈折率が低く反射防止性能に優れた反射防止膜を得ることができる。
【0036】
反射防止膜中の低屈折率成分の含有量は90重量%以下、さらには50重量%以下であることが好ましい。低屈折率成分の含有量が、90重量%を越えると被膜の強度や低下したり、ハードコート層(後述する中間膜が形成されている場合は中間層)等の基材との密着性が不足することがある。
反射防止膜の厚さは50〜300nm、さらには80〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0037】
反射防止膜の厚さが前記範囲未満の場合は、膜の強度、反射防止性能等が劣ることがある。
反射防止膜の厚さが前記範囲を越えると、膜にクラックが発生したり、このため膜の強度がしたり、また膜が厚すぎて反射防止性能が不充分となることがある。
【0038】
このような反射防止膜の屈折率は、低屈折率成分と樹脂等マトリックスとの混合比率および使用する樹脂等の屈折率によっても異なるが、通常1.28〜1.50の範囲にあることが好ましい。反射防止膜の屈折率が1.50を越えると基材の屈折率にもよるが、反射防止性能が不充分となることがあり、屈折率が1.28未満のものは得ることが困難である。
【0039】
反射防止膜は、上記した反射防止膜形成用マトリックスと、必要に応じて低屈折率成分と溶媒とを含む反射防止膜形成用塗布液を塗布することで形成される。使用される溶媒としては、いずれも容易に蒸散し、得られる反射防止膜に悪影響を及ぼすことの無いものであれば特に制限はない。
反射防止膜形成用塗布液としては、特に制限されるものではなく、前記したハードコート膜の形成と同様に、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法などの周知の方法で基材に塗布し、乾燥すればよく、特に形成成分が熱硬化性樹脂の場合は加熱処理、紫外線照射処理、電子線照射処理などにより、ハードコート膜の硬化を促進させてもよく、また形成成分に加水分解性有機ケイ素化合物が含まれている場合は加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解・重縮合を促進させてもよい。
【0040】
本発明では、さらにハードコート膜と反射防止膜との間に中間膜が設けられていてもよい。
中間膜
中間膜としては屈折率が1.6以上のものが設けられる。
特に、基材またはハードコート膜の屈折率が1.55以下の場合は、反射防止膜の屈折率との差が小さく、反射防止性能が不充分となることがあり、このため屈折率が1.6以上の中間膜が形成されていることが好ましい。
【0041】
中間膜は、高屈折率の金属酸化物微粒子と、必要に応じて中間膜形成用マトリックスとからなる。
中間膜形成用マトリックスとは、ハードコート膜の表面に中間膜を形成し得る成分をいい、ハードコート膜との密着性や塗工性等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、具体的には前記ハードコート膜形成用マトリックスで使用される、および、前記反射防止膜にて例示したアルコキシシラン等の加水分解性有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0042】
高屈折率の金属酸化物微粒子としては、屈折率が1.60以上の金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。さらに好ましい屈折率は1.70以上である。このような金属酸化物微粒子としては、酸化チタン(2.50)、酸化亜鉛(2.0)、酸化ジルコニウム(2.20)、酸化セリウム(2.2)、酸化スズ(2.0)、酸化タリウム(2.1)、チタン酸バリウム(2.40)、酸化アルミニウム(1.73)、酸化マグネシウム(1.77)、酸化イットリウム(1.92)、酸化アンチモン(2.0)、酸化インジウム(2.0)等が挙げられる。(括弧内は屈折率)
これらのなかでも、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等の導電性微粒子、さらにはこれら微粒子にアンチモン、スズ、フッ素等の異種元素をドープした導電性微粒子は、得られる反射防止膜付基材が反射防止性能に加えて帯電防止効果、電磁波遮蔽性能を有するので好ましい。
【0043】
金属酸化物微粒子の屈折率が1.60未満の場合は得られる中間膜の屈折率が1.60以上とならず、反射防止膜との屈折率の差が小さいので反射防止性能が不充分となり、中間膜を設ける効果が充分得られない。
また、金属酸化物微粒子の平均粒子径は5〜100nmの範囲にあることが好ましい。さらに好まし範囲は10〜60nmである。平均粒子径が5nm未満の粒子は金属酸化物の種類によっては得ることが困難であり、100nmを越えると可視光線の散乱が顕著となり被膜の透明性が低下するので好ましくない。
【0044】
中間膜中の金属酸化物微粒子の含有量は、屈折率が1.6以上の中間膜が得られれば特に制限はなく、中間膜形成用マトリックスや金属酸化物微粒子の屈折率によっても異なるが、通常30〜100重量%、さらには50〜95重量%の範囲にあることが好ましい。なお、中間膜は、マトリックスを含まず、金属酸化物微粒子のみからなるものであってもよい。
【0045】
中間膜中の金属酸化物微粒子の含有量が30重量%未満の場合は金属酸化物微粒子の種類にもよるが中間膜の屈折率が1.60以上とならず、中間膜を設ける効果が得られないことがある。
このような中間膜は、高屈折率の金属酸化物微粒子と、必要に応じて中間膜形成用マトリックスと溶媒とを含む中間膜形成用塗布液を塗布することで形成される。
【0046】
なお、このような金属酸化物微粒子を用いて中間膜形成用の塗布液を調製する際には、金属酸化物微粒子を分散媒に分散させたゾルとして用いることが好ましく、水分散ゾル、アルコール等の有機溶媒に分散させた有機溶媒分散ゾル、あるいは前記微粒子を公知のカップリング剤で処理した後、有機溶媒に分散させた有機溶媒分散ゾルと塗料用樹脂とを適当な有機溶剤で希釈して、中間膜形成用の塗布液とすることができる。さらに塗布液には分散性、安定性等を高めるために界面活性剤等を添加することもできる。
【0047】
使用される溶媒としては、容易に蒸散し、得られる反射防止膜、中間膜に悪影響を及ぼすことのないものであれば特に制限はない。
中間膜形成用塗布液の塗布方法としては、反射防止膜形成用塗布液の場合と同様に、特に制限されるものではなく、前記したハードコート膜形成用塗布液と同様に、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法などの周知の方法で基材に塗布し、乾燥すればよく、特に形成成分が熱硬化性樹脂の場合は加熱処理、紫外線照射処理、電子線照射処理などにより、中間膜の硬化を促進させてもよく、また形成成分に加水分解性有機ケイ素化合物が含まれている場合は、加熱処理により、加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解・重縮合を促進させてもよい。
【0048】
このように、中間膜を形成する場合、先ず基材上に前記したハードコート膜を形成した後、中間膜形成用の塗布液を塗布し、ついで乾燥し、さらに必要に応じて基材の軟化点未満の温度で加熱処理し、前記した反射防止膜を形成することによって得ることができる。
特にマトリックス成分が熱硬化性樹脂の場合は、各膜(ハードコート膜、反射防止膜、中間膜)を形成した後、硬化促進処理を行ってもよく、またハードコート膜の硬化促進処理後に、中間膜を形成し硬化促進処理を行った後、さらに、反射防止膜を形成し硬化促進処理を行ってもよい。
【0049】
以上のような本発明に係るハードコート膜付基材は、ハードコート膜中に五酸化アンチモン粒子が含まれているので、該粒子によって発生した静電気が除去さ、その結果ゴミなどの付着が抑制されるとともに、形成されたハードコート膜は基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度等に優れている。また被膜自体の硬度も高く、ハードコート膜が熱硬化性樹脂から構成される場合、五酸化アンチモンにより、被膜硬化が促進され、硬度の高い被膜を得ることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明では、基材表面に設けられたハードコート膜が五酸化アンチモン粒子を含んでいるために、基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度等に優れるとともに、帯電防止性能を有するハードコート膜付基材が得られる。また、五酸化アンチモン粒子を含んでいるために、硬度が高く、しかも薄膜で基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度等に優れ、経済性にも優れたハードコート膜付基材が得られる。
【0051】
さらに、ハードコート膜上に反射防止膜または中間膜と反射防止膜を設けたハードコート膜付基材製造する際にも、傷付いたり、ゴミ等異物が着することがなく、透明性、ヘーズ等に優れたハードコート膜付基材が歩留まりよく得られる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0053】
【実施例1】
ハードコート膜形成用塗布液( H−1 )の調製
五酸化アンチモン粒子分散液(触媒化成工業(株)製;ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20重量%、分散媒:エチルセロソルブ/エタノール重量比=94/66)200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)160gとエチルセロソルブ640gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(H−1)を調製した。
【0054】
ハードコート膜付基材( F−1 )の製造
ハードコート膜形成用塗布液(H−1)をPETフィルム(厚さ:188μm、屈折率:1.65)に別個にバーコーター法で塗布し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)を1分間照射して硬化させ、ハードコート膜付基材(F−1−1)および(F−1−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
【0055】
得られたハードコート膜の表面抵抗を、表面抵抗計(三菱化学(株)製:ハイレスタ)にて測定し、結果を表1に示す。
また、全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定し、結果を表1に示す。
さらに、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表1に示す。
【0056】
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cmで50回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示す。
【0057】
評価基準:
筋条の傷が認められない  :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
密着性
反射防止膜付基材(F−1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
残存升目の数95個以上 :◎
残存升目の数90〜94個:○
残存升目の数85〜89個:△
残存升目の数84個以下 :×
【0059】
【実施例2】
ハードコート膜形成用塗布液( H−2 )の調製
五酸化アンチモン粒子分散液(触媒化成工業(株)製;ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20重量%、分散媒:エチルセロソルブ/エタノール重量比=94/66)200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)93.3gとエチルセロソルブ706.7gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(H−2)を調製した。
【0060】
ハードコート膜付基材( F−2 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(H−2)を用いた以外は実施例1と同様にして2つのハードコート膜付基材(F−2−1)および(F−2−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0061】
【実施例3】
ハードコート膜形成用塗布液( H−3 )の調製
五酸化アンチモン粒子分散液(触媒化成工業(株)製;ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20重量%、分散媒:エチルセロソルブ/エタノール重量比=94/66)200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)40gとエチルセロソルブ760gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(H−3)を調製した。
【0062】
ハードコート膜付基材( F−3 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(H−3)を用いて、実施例1と同様に、3つのハードコート膜付基材(F−3−1)、(F−3−2)および(F−3−3)を調製した。ハードコート膜の厚さはそれぞれ、5μmと1μmと0.3μmであった。
【0063】
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0064】
【実施例4】
ハードコート膜形成用塗布液( H−4 )の調製
五酸化アンチモン粒子分散液(触媒化成工業(株)製;ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20重量%、分散媒:エチルセロソルブ/エタノール重量比=94/66)200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)40gとエチルセロソルブ782.9gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(H−4)を調製した。
【0065】
ハードコート膜付基材( F−4 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(H−4)を用いた以外は同様にして2つのハードコート膜付基材(F−4−1)および(F−4−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0066】
【実施例5】
ハードコート膜形成用塗布液( H−5 )の調製
五酸化アンチモン粒子分散液(触媒化成工業(株)製;ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20重量%、分散媒:エチルセロソルブ/エタノール重量比=94/66)200gにアクリル樹脂(ヒタロイド1007、日立化成(株)製)40gとエチルセロソルブ760gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(H−5)を調製した。
【0067】
ハードコート膜付基材( F−5 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(H−5)を用いた以外は同様にして2つのハードコート膜付基材(F−5−1)および(F−5−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0068】
【実施例6】
ハードコート膜形成用塗布液( H−6 )の調製
五酸化アンチモンコロイド溶液(触媒化成工業(株)製:RSB−KU、平均粒子径10nm、Sb濃度1重量%)をロータリーエバポレーターにて溶媒置換するとともに濃縮し、五酸化アンチモン粒子分散液(Sb濃度20重量%、分散媒:エチルセロソルブ/エタノール重量比=94/66)を調製した。この分散液200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)40gとエチルセロソルブ760gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(H−6)を調製した。
【0069】
ハードコート膜付基材( F−6 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(H−6)を用いた以外は同様にして2つのハードコート膜付基材(F−6−1)および(F−6−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0070】
【実施例7】
ハードコート膜形成用塗布液( H−7 )の調製
五酸化アンチモンコロイド溶液(触媒化成工業(株)製:RSB−KU、平均粒子径10nm、Sb濃度1重量%)4000gにシランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを添加し、60℃で1時間撹拌した。ついで、ロータリーエバポレーターにて溶媒置換するとともに濃縮し、五酸化アンチモン粒子分散液(Sb濃度20重量%、分散媒:エチルセロソルブ/エタノール重量比=94/66)を調製した。この分散液200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)40gとエチルセロソルブ760gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(H−7)を調製した。
【0071】
ハードコート膜付基材( F−7 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(H−7)を用いた以外は同様にして2つのハードコート膜付基材(F−7−1)および(F−7−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0072】
【比較例1】
ハードコート膜形成用塗布液( RH−1 )の調製
紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)200gとエチルセロソルブ800gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(RH−1)を調製した。
【0073】
ハードコート膜付基材( RF−1 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(RH−1)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(RF−1−1)および(RF−1−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0074】
【比較例2】
ハードコート膜形成用塗布液( RH−2 )の調製
アクリル樹脂(ヒタロイド1007、日立化成(株)製)200gとエチルセロソルブ800gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(RH−2)を調製した。
【0075】
ハードコート膜付基材( RF−2 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(RH−2)を用いた以外は同様にして2つのハードコート膜付基材(RF−2−1)および(RF−2−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。
【0076】
【比較例3】
ハードコート膜形成用塗布液( RH−3 )の調製
シリカオルガノゾル(触媒化成工業(株)製;OSCAL−1432、平均粒子径12nm、SiO濃度20重量%、分散媒:イソプロピルアルコール)200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)40gとエチルセロソルブ760gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(RH−3)を調製した。
【0077】
ハードコート膜付基材( RF−3 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(RH−3)を用いた以外は同様にして3つのハードコート膜付基材(RF−3−1)、(RF−3−2)および(RF−3−3)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと1μmと0.3μmであった。
【0078】
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示した。
【0079】
【比較例4】
ハードコート膜形成用塗布液( RH−4 )の調製
三酸化アンチモン粒子(平均粒子径150μm)を濃度30重量%になるようにイソプロピルアルコールに分散させ、サンドミルにて30℃で5時間粉砕した。これにイソプロピルアルコールを加えて濃度20重量%の三酸化アンチモン微粒子分散液(平均粒子径50nm)を調製した。この分散液200gに紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)40gとエチルセロソルブ760gとを混合してハードコート膜形成用塗布液(RH−4)を調製した。
【0080】
ハードコート膜付基材( RF−4 )の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(RH−4)を用いた以外は同様にして2つのハードコート膜付基材(RF−4−1)および(RF−4−2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは5μmと0.3μmであった。
得られたハードコート膜について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示した。
【0081】
【表1】
Figure 2004050810
【0082】
【実施例8】
中間膜形成用の塗布液( M−1 )の調製
高屈折率粒子として酸化チタンコロイド(触媒化成工業(株)製;オプトレイク1130Z、屈折率2.2、平均粒子径20nm、濃度20重量%)20gと、紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)0.44gとイソプロパノール6.7gとを充分に混合して中間被膜形成用塗布液(M−1)を調製した。
【0083】
反射防止膜形成用塗布液 (R−1) の調製
〔低屈折率複合酸化物微粒子分散ゾルの製造〕
メチルメトキシシラン27.4gを濃度0.65重量%の水酸化ナトリウム水溶液872.6gに混合し室温で1時間撹拌して、CHSiO3/2として1.5重量%の無色透明な部分加水分解物を調製した。
【0084】
ついで、種粒子として平均粒子径5nm、SiO濃度20重量%のシリカゾル20gと純水380gとの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiOとして1.5重量%の珪酸ナトリウム水溶液900gと、上記部分加水分解物の水溶液900gと、Alとして濃度0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1800gとを6時間掛けて同時に添加した。その間、反応母液の温度を80℃に維持した。反応母液のpHは添加直後、12.7に上昇し、その後ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のメチル基含有SiO・Al複合酸化物微粒子(A−1)の分散液を得た。
【0085】
得られた複合酸化物微粒子(A−1)の分散液250gに純水550gを加えて98℃に加温し、この温度を維持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得た珪酸液(SiO濃度3.5重量%)1,000gを5時間で添加して、シリカで被覆したメチル基含有SiO・Al複合酸化物微粒子(B−1)の分散液を得た。ついで、限外濾過膜を用いて洗浄し、固形分濃度13重量%とした分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5重量%)を滴下してpH1.0とし、微粒子からアルミニウムを除去する処理を行った。
【0086】
ついで、pH3.0の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜を用いて溶解したアルミニウム塩を洗浄除去するとともに、濃縮して固形分濃度13重量%のシリカで被覆したメチル基含有SiO・Al複合酸化物微粒子(C−1)の分散液を得た。
得られた複合酸化物微粒子(C−1)の分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび濃度28重量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO濃度28重量%)104gを添加し、前記シリカで被覆した。これをエバポレーターで固形分濃度5重量%まで濃縮した後、濃度15重量%のアンモニア水を加えてpH10とし、オートクレーブで180℃、2時間加熱処理し、ついで限外濾過膜で濃縮して固形分濃度10重量%のシリカで完全に被覆したメチル基含有SiO・Al複合酸化物微粒子(D−1)の分散液を得た。
【0087】
このシリカ被覆複合酸化物微粒子(D−1)のSiO/Alモル比は278、平均粒径は34nm、屈折率は1.36であった。
なお、粒子の屈折率は、次のようにして測定した。
(1)複合酸化物微粒子(D−1)の分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知である標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液(多くの場合はペースト状)が透明になったときの標準屈折液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
【0088】
上記で得た複合酸化物微粒子(D−1)の分散液を限外濾過膜に通し、分散媒の水をエタノールに置換した。このエタノールゾル(固形分濃度5重量%)50gと、紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)3gおよびイソプロパノールとn−ブタノールの1/1(重量比)混合溶媒47gとを充分に混合して反射防止膜形成用塗布液(R−1)を調製した。
【0089】
ハードコート膜付基材( F−8 )の製造
実施例1と同様にして調製したハードコート膜付基材(F−1−1)上に、上記で調製した中間被膜形成用塗布液(M−1)をバーコーター法で塗布し、80℃で、1分間乾燥した。このときの中間膜の厚さは80nm、屈折率は1.80であった。
ついで、上記で調製した反射防止膜形成用塗布液(R−1)をバーコーター法で塗布し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)を1分間照射して硬化させ、ハードコート膜付基材(F−8−1)を調製した。このときの反射防止膜の厚さは80nmであった。
【0090】
なお、表に示したハードコート膜、反射防止膜の各々の屈折率は、シリコンウェハーに上記各塗布液を個別に上記と同様に塗布、乾燥および硬化処理し、エリプソメーター(ULVAC社製、EMS−1)により測定した。
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0091】
【実施例9】
ハードコート膜付基材( F−9 )の製造
実施例2と同様にして調製したハードコート膜付基材(F−2−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(F−9−1)を調製した。
【0092】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0093】
【実施例10】
ハードコート膜付基材( F−10 )の製造
実施例3と同様にして調製したハードコート膜付基材(F−3−1)、(F−3−2)および(F−3−3)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(F−10−1)、(F−10−2)および(F−10−3)を調製した。
【0094】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0095】
【実施例11】
ハードコート膜付基材( F−11 )の製造
実施例4と同様にして調製したハードコート膜付基材(F−4−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(F−11−1)を調製した。
【0096】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0097】
【実施例12】
ハードコート膜付基材( F−12 )の製造
実施例5と同様にして調製したハードコート膜付基材(F−5−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(F−12−1)を調製した。
【0098】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0099】
【実施例13】
ハードコート膜付基材( F−13 )の製造
実施例6と同様にして調製したハードコート膜付基材(F−6−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(F−13−1)を調製した。
【0100】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0101】
【実施例14】
ハードコート膜付基材( F−14 )の製造
実施例7と同様にして調製したハードコート膜付基材(F−7−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(F−14−1)を調製した。
【0102】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0103】
【比較例5】
ハードコート膜付基材( RF−5 )の製造
比較例1と同様にして調製したハードコート膜付基材(RF−1−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(RF−5−1)を調製した。
【0104】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0105】
【比較例6】
ハードコート膜付基材( RF−6 )の製造
比較例2と同様にして調製したハードコート膜付基材(RF−2−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(RF−6−1)を調製した。
【0106】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0107】
【実施例15】
中間膜形成用の塗布液( M−2) の調製
硝酸インジウム79.9gを水686gに溶解して得られた溶液と、錫酸カリ ウム12.7gを濃度10重量%の水酸化カリウム溶液に溶解して得られた溶液 とを調製し、これらの溶液を、50℃に保持された1000gの純水に2時間かけて添加した。この間、系内のpHを11に保持した。得られたスズドープ酸化インジウム水和物分散液からスズドープ酸化インジウム水和物を濾別・洗浄した後、乾燥し、ついで空気中で350℃の温度で3時間焼成し、さらに空気中で600℃の温度で2時間焼成することによりスズドープ酸化インジウム微粒子(Q−3)を得た。これを濃度が30重量%となるように純水に分散させ、さらに硝酸水溶液でpHを3.5に調製した後、この混合液を30℃に保持しながらサンドミルで、3時間粉砕してゾルを調製した。次に、このゾルをイオン交換樹脂で処理して硝酸イオンを除去し、ついでイソプロパノールで溶媒置換してスズをドープした酸化インジウム(ITO)微粒子の分散液(屈折率1.90、平均粒子径20nm、濃度20重量%)を調製した。
【0108】
ついで、スズをドープした酸化インジウム(ITO)微粒子の分散液20gと、紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:ユニデックV5500)0.44gとイソプロパノール6.7gとを充分に混合して中間被膜形成用塗布液(M−2)を調製した。
ハードコート膜付基材( F−15 )の製造
実施例8において、中間膜形成用塗布液(M−2)を用いた以外は同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(F−15−1)を調製した。
【0109】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示した。
【0110】
【実施例16】
ハードコート膜付基材( F−16 )の製造
実施例8において、中間膜を形成しなかった以外は同様にしてハードコート膜付基材(F−16−1)を調製した。
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示した。
【0111】
【比較例7】
ハードコート膜付基材( RF−7 )の調製
比較例3と同様にして調製したハードコート膜付基材(RF−3−1)、(RF−3−2)および(RF−3−3)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(RF−7−1)、(RF−7−2)および(RF−7−3)を調製した。
【0112】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示した。
【0113】
【比較例8】
ハードコート膜付基材( RF−8 )の調製
比較例4と同様にして調製したハードコート膜付基材(RF−4−1)上に、実施例8と同様にして中間膜および反射防止膜を形成してハードコート膜付基材(RF−8−1)を調製した。
【0114】
得られたハードコート膜付基材について表面抵抗、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示した。
【0115】
【表2】
Figure 2004050810

Claims (6)

  1. 基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、
    該ハードコート膜がマトリックス成分と五酸化アンチモン(Sb)粒子とを含み、該五酸化アンチモン粒子の平均粒子径が2〜100nmの範囲にあり、ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量が5〜95重量%の範囲にあることを特徴とするハードコート膜付基材。
  2. 前記マトリックス成分が熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のハードコート膜付基材。
  3. 前記ハードコート膜の膜厚が0.1〜20μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート膜付基材。
  4. 前記ハードコート膜の膜厚が0.2〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
  5. 前記ハードコート膜上にさらに反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
  6. 前記ハードコート膜と反射防止膜との間に中間膜が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のハードコート膜付基材。
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