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JP2004049631A - ドラム式洗濯機 - Google Patents

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JP2004049631A JP2002212788A JP2002212788A JP2004049631A JP 2004049631 A JP2004049631 A JP 2004049631A JP 2002212788 A JP2002212788 A JP 2002212788A JP 2002212788 A JP2002212788 A JP 2002212788A JP 2004049631 A JP2004049631 A JP 2004049631A
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Abstract

【課題】バランス調整運転によるバランス調整効果を高めるようにする。
【解決手段】ドラムを回転させるためのモータ14は、制御用マイコン54により駆動制御されるようになっている。この制御用マイコン54は、ドラム内の洗濯物がドラム内周面に張り付くドラム回転速度から洗濯物がドラム内周面から落下する回転速度に向けて、ドラム回転速度を漸減させるようにモータ14の回転速度制御を行うバランス調整運転手段として機能すると共に、このドラム回転速度漸減中に、洗濯物の適正バランスを判定する適正バランス判定手段として機能する。さらに、この制御用マイコン54は、ドラム回転速度漸減運転を、ドラム1回転中での回転変動が少なくなるように制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯物がドラム内周面に張り付くドラム回転速度と洗濯物がドラム内周面から落下する回転速度との間で、ドラム回転速度減少方向又は増加方向に徐々に変化させるバランス調整運転手段を備えたドラム式洗濯機に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ドラム式洗濯機においては、脱水運転する場合に、ドラム内の洗濯物がアンバランス状態のまま脱水回転されることがないように、バランス調整運転を行う。すなわち、バランス調整運転について述べると、図12、図13に示すように、ドラム101の内周面に洗濯物102が張り付くような回転速度Naとなるようにモータ制御し、この回転速度Naから、洗濯物の一部若しくは全部がドラム内面から剥がれる(落ちる)ような回転速度Nbまで順次低くするようにモータ制御する。
【0003】
この場合、洗濯物102に作用する遠心力は、洗濯物102の回転半径をRiとし、回転速度である角速度をωとすると、Ri・ωで示される。この遠心力が重力gと等しいかこれよりも大きいときに洗濯物102がドラム101内周面に張り付いた状態となる(図12(a)参照)。上記ドラム101の角速度を小さくしていくと(モータの回転速度を小さくしていくと)、ドラム内周面側に位置する洗濯物(回転半径Ri1)よりもドラム中心に近い洗濯物群C(回転半径Ri2)が短い洗濯物群Cが、角速度の低下に伴って、先に落下する(図12(b)参照)。つまり、アンバランス要因であった洗濯物群Cが落下することによりアンバランスが解消されてバランスが適正となる。なお、ドラム101の回転速度を、洗濯物が張り付く回転速度としたときに既にバランス適正状態であることもある。
【0004】
従来では、このバランス調整運転の後、図13に示すようにドラム101の回転を立ち上げた後、所定期間Taにおいてドラム101の回転速度の変動を測定して実際にバランスが適正であるか否か(アンバランスか)を判定する。そして、適正バランスであると判定されたときには、そのまま回転を立ち上げ、アンバランスであると判定されたときには回転を止めて、再度バランス調整運転及びバランス適正判定を行う。
【0005】
ところで、ドラム101を回転駆動するモータはブラシレスDCモータを使用し、そのブラシレスDCモータをインバータ回路によって駆動する方式が広く採用されている。そして、モータの駆動条件に応じてトルクを制御する場合は、モータの印加電圧を増減させるようにしている。
【0006】
図14は、ドラム式洗濯機用のモータの制御系の一構成例を示すものである。制御系は例えばマイクロコンピュータなどで構成されており、機能ブロックとしては、PI制御部201、洗いパターン出力制御部202、UVW変換部203、初期パターン出力部204、PWM形成部205及び位置検知部206等を備えている。
【0007】
PWM形成部205により出力される各相のPWM信号は、モータ207を駆動するインバータ回路208に出力される。また、モータ207にはロータの位置検出を行うためのホールセンサ209が組み込まれており、ホールセンサ209は三相のうち二相(U、V)分の位置検出を行って位置検出信号を位置検知部206に出力するようになっている。
【0008】
PI制御部201は、洗濯機の運転制御を行う制御部(図示せず)より出力される脱水運転時の目標速度指令ωrefと、位置検知部206より出力されるモータ207の検出速度ωとに基づいてモータ207の回転速度をPI制御し、PWM信号のデューティー指令と位相指令とをUVW変換部203に出力する。また、洗いパターン出力部202は、洗い運転時におけるデューティー指令と位相指令とを、PI制御部1に代わってUVW変換部に出力するようになっている。
【0009】
UVW変換部3は、PI制御部201または洗いパターン出力部202より出力される指令をU、V、W各相の電圧指令に変換してPWM形成部205に出力する。また、初期パターン出力部204は、モータ207を停止状態から起動する場合に例えば120度通電パターンをUVW変換部203に代わってインバータ回路208に出力するようになっている。
【0010】
しかしながら、このような従来の方式では以下のような問題があった。すなわち、モータ207の回転速度は発生トルクに比例するが、上記構成のような印加電圧で制御を行うと発生トルクは電圧に比例しないため、目標速度指令ωrefとモータ207の検出速度ωとに差が生じやすく制御が不安定(回転速度変動)になりがちである。また、フィードバック制御周期が数百ミリ秒であるため、速度制御速度も遅いものであった。
【0011】
このような事情にあるため、前述したバランス調整運転において、ドラム101の回転速度、従ってモータ207の回転速度を順次低くする場合、図9の特性線J(二点鎖線)で示すように、全体には回転速度が順次低下してゆくが、モータ207の回転速度に変動があり、ドラム101内面で洗濯物に作用する遠心力Ri・ωと重力gとが近接する角速度範囲ω0を通過する時間範囲T1が短い。このため、上述したバランス調整作用が発揮される時間が短くなり、バランス調整効果が低いという問題があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バランス調整運転によるバランス調整効果を高め得るドラム式洗濯機を提供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ほぼ水平軸にて回転するドラムと、
このドラムを回転させるモータと、
前記ドラム内の洗濯物がドラム内周面に張り付くドラム回転速度から洗濯物がドラム内周面から落下する回転速度に向けて、ドラム回転速度を漸減させるように前記モータの回転速度制御を行うバランス調整運転手段と、
このバランス調整運転手段によるドラム回転速度漸減中に、洗濯物の適正バランスを判定する適正バランス判定手段とを備え、
前記バランス調整運転手段が、ドラム回転速度漸減運転を、ドラム1回転中での回転変動が少なくなるように制御するところに特徴を有する。
【0014】
この請求項1の発明においては、ドラムの回転速度漸減運転をドラム1回転中での回転変動が少なくなるように制御するから、ドラムの回転速度変化がほぼ直線的となり、ドラムの回転速度が、ドラム内面で洗濯物に作用する遠心力と重力とが近接する回転速度範囲を通過する時間範囲が長くとれるようになり、これにより、上述したバランス調整作用が発揮される時間が長くなり、バランス調整効果が向上する。
【0015】
請求項2の発明は、請求項のバランス調整手段に代えて、前記ドラム内の洗濯物がドラム内周面に張り付くドラム回転速度に向けて、ドラム回転速度を漸増させるように前記モータの回転速度制御を行うバランス調整運転手段を設けたところに特徴を有する。
【0016】
この請求項2の発明においては、ドラムの回転速度漸増運転をドラム1回転中での回転変動が少なくなるように制御するから、ドラムの回転速度変化がほぼ直線的となり、ドラムの回転速度が、ドラム内面で洗濯物に作用する遠心力と重力とが近接する回転速度範囲を通過する時間範囲が長くとれるようになり、これにより、上述したバランス調整作用が発揮される時間が長くなり、バランス調整効果が向上する。特にこの請求項2の発明においては、ドラムの回転速度を順次上げてゆくから、回転速度を上げてゆく脱水行程に移行しやすい。
【0017】
ここで、バランス調整運転を所定期間(ドラム内周面に洗濯物が張り付く回転速度から洗濯物が落下する回転速度まであるいはその逆の期間)一義的に行った後に適正バランス判定を行うと不具合が予測される。すなわち、バランス調整運転では、上記所定期間のうちどこかで適正バランスとなることが予測されるが、その適正バランス直後もドラムの回転が継続すると、せっかく適正なバランス状態が崩れてしまうことがある。この場合、再度バランス調整運転を行う必要がある。従って、スムーズに脱水行程に以降しないことが懸念される。
【0018】
しかるに請求項3の発明においては、バランス調整運転手段によるドラム回転速度変更中に洗濯物の適正バランスを判定する適正バランス判定手段を設け、この適正バランスが判定されたときには脱水行程を開始するようにしたから、適正バランスとなったときにそのまま脱水行程に移行できて、適正バランス状態を保持したまま脱水を行うことができるようになる。
【0019】
この場合、適正バランス判定手段を、モータに流れる電流の変動幅が小さくなったことをもって適正バランスと判定するように構成しても良い(請求項4の発明)。このようにすると、モータの回転速度を検出してその回転変動により適正バランスを判定する方式に比して、適正バランス判定精度を高めることができるようになる。つまり、ドラムのアンバランス状態は、ドラムの回転速度の変動ひいてはモータの回転速度の変動も影響を与えるが、モータの負荷トルクと結びつきの強いモータ電流に直接的に影響を与える。従って、モータに流れる電流の変動幅が小さくなったことをもって適正バランスと判定することは適正バランス判定精度を向上させ得るものである。
【0020】
また、バランス調整運転手段は、モータの回転速度制御をモータのベクトル制御により行うと良い(請求項5の発明)。この請求項5においては、モータの回転速度制御をモータのベクトル制御により行うことで、q軸電流に比例させてモータのトルクを直接制御することができ、従って、従来のモータの回転速度制御よりも応答性を高めることができ、バランス調整運転におけるモータの回転速度の変更を変動なく直線的に行うことができ、ドラム1回転中での回転変動の減少を実現できるものである。
【0021】
この場合、さらに、適正バランス判定手段を、そのベクトル制御のq軸電流の変動幅が小さくなったことをもって適正バランスと判定するようにすると良く(請求項6の発明)、これによると、判定要素が、モータの負荷トルクに応じたq軸電流であるから、アンバランス状態と適正バランス状態とを精度良く判定することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施例につき図1ないし図9を参照して説明する。まず、ドラム式洗濯機の全体構成を示す図2において、ドラム式洗濯機の外殻をなす外箱1の前面部には、中央部に扉2が設けられ、上部に、多数のスイッチや表示部(いずれも図示せず)を備えた操作パネル3が設けられている。このうち扉2は、外箱1の前面部中央部に形成された洗濯物出入れ口4を開閉するためのものである。
【0023】
外箱1の内部には、円筒状をなす水槽5が配設されている。この水槽5は、その軸方向が前後方向(図2では左右方向)となる横軸状で、しかも前上がりの傾斜状に配設されていて、弾性支持装置6により弾性的に支持されている。水槽5の内部には、円筒状をなすドラム7が水槽5と同軸状に配設されている。このドラム7は、洗濯のほか、脱水及び乾燥に共用の槽として機能するものであり、胴部のほぼ全域に小孔8が多数形成され(図3に一部のみ図示)、胴部の内周部にはバッフル9が複数設けられている(図3に一つのみ図示)。
【0024】
水槽5及びドラム7は、それぞれ前面部に洗濯物出入れ用の開口部10,11を有しており、このうち水槽5の開口部10は、前記洗濯物出入れ口4にベロー12によって水密に連ねられ、ドラム7の開口部11は、その水槽5の開口部10に臨んでいる。ドラム7の開口部11の周囲部にはバランスリング13が設けられている。
【0025】
上記水槽5の背面部には、ドラム7を回転駆動するモータ14が配設されている。このモータ14は、この場合アウタロータ形のDCブラシレスモータであり、そのステータ15が、水槽5の背部中央部に取り付けられた軸受ハウジング16の外周部に取り付けられている。ロータ17は、ステータ15を外側から覆うように配置されていて、中心部に取り付けられた回転軸18が、上記軸受ハウジング16に軸受19を介して回転可能に支承されている。軸受ハウジング16から突出した回転軸18の前端部が、ドラム7の背部の中央部に連結されている。従ってこの場合、モータ14のロータ17が回転すると、当該ロータ17と一体にドラム7も回転する構成となっている。
【0026】
水槽5の下面部には水溜部20が設けられており、この水溜部20の内部に洗濯水加熱用のヒータ21が配設され、水溜部20の後部に、排水弁22を介して排水ホース23が接続されている。
【0027】
水槽5の上部には温風生成装置24が設けられ、水槽5の背部には熱交換器25が設けられている。このうち温風生成装置24は、ケース26内に配設された温風用ヒータ27と、ケーシング28内に配設されたファン29と、このファン29をベルト伝動機構30を介して回転駆動するファンモータ31とから構成されていて、ケース26とケーシング28とは連通されている。また、ケース26の前部にはダクト32が接続されていて、このダクト32の先端部が、水槽5内の前部に突出していて、ドラム7の開口部12に臨んでいる。
【0028】
ここで、温風用ヒータ27とファン29とによって温風が生成され、その温風は、ダクト32を通してドラム7内に供給される。ドラム7内に供給された温風は、ドラム7内の洗濯物を加熱する共に水分を奪い、熱交換器25側へ排出される。
【0029】
上記熱交換器25は、上部が上記ケーシング28内と連通し、下部が水槽5内と連通している。この熱交換器25は、水が上部から注ぎ入れられて流下することにより、内部を通る空気中の水蒸気を冷却し凝縮させて除湿する水冷式のものである。この熱交換器25を通った空気は、再び温風生成装置24に戻され、温風化されて循環する。
【0030】
図1は、ドラム式洗濯機の制御系の構成を示す機能ブロック図である。尚、図1において、(α,β)は、三相ブラシレスモータ14の各相に対応する電機角120度間隔の三相(UVW)座標系を直交変換した直交座標径を示し、(d,q)は、ブラシレスモータ14のロータ17の回転に伴って回転している2次磁束の座標系を示すものである。
【0031】
減算器25には、目標速度指令ωref が被減算値として、エスティメータ(Estimator) 34によって検出されたブラシレスモータ14の回転速度である検出速度ωが減算値として与えられている。目標速度指令ωref は、洗濯機11の運転全般を制御する制御用のマイクロコンピュータ54より出力されるものである。そして、減算器25の減算結果は、速度PI制御部(速度制御手段)35に与えられている。
【0032】
速度PI制御部35は、目標速度指令ωref と検出速度ωとの差分量に基づいてPI制御を行い、q軸電流指令値Iqrefとd軸電流指令値Idrefとを生成して減算器36,37に被減算値として夫々出力する。尚、洗いまたはすすぎ運転時におけるd軸電流指令値Idrefは“0”に設定され、脱水運転時には、弱め界磁制御を行うためd軸電流指令値Idrefは所定値に設定される。減算器36,37には、αβ/dq変換部38より出力されるq軸電流値Iq,d軸電流値Idが減算値として夫々与えられており、減算結果は、電流PI制御部39q,39dに夫々与えられている。さらに、上記q軸電流値Iqは制御用マイコン54にも与えられる。
【0033】
電流PI制御部39q,39dは、q軸電流指令値Iqrefとd軸電流指令値Idrefとの差分量に基づいてPI制御を行い、q軸電圧指令値Vq及びd軸電圧指令値Vdを生成してdq/αβ変換部40に出力する。dq/αβ変換部40には、エスティメータ34によって検出されたブラシレスモータ14における2次磁束の回転位相角(ロータ位置角)θが与えられており、その回転位相角θに基づいて電圧指令値Vd,Vqを電圧指令値Vα,Vβに変換するようになっている。
【0034】
dq/αβ変換部40が出力する電圧指令値Vα,Vβは、αβ/UVW変換部41に与えられている。αβ/UVW変換部41は、電圧指令値Vα,Vβを三相の電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換して出力する。電圧指令値Vu,Vv,Vwは、切換えスイッチ42u,42v,42wの一方の各固定接点に与えられており、他方の各固定接点には、初期パターン出力部43によって出力される起動用の電圧指令値Vus,Vvs,Vwsが与えられている。そして、切換えスイッチ42u,42v,42wの各可動接点は、PWM形成部44の入力端子に接続されている。
【0035】
PWM形成部44は、電圧指令値Vus,Vvs,Vwsに基づいて16kHzの搬送波(三角波)を変調した各相のPWM信号Vup(+,−) ,Vvp(+,−) ,Vwp(+,−) をインバータ回路45に出力するようになっている。PWM信号Vup〜Vwpは、例えばモータ14の各相巻線に正弦波状の電流が通電されるように正弦波に基づいた電圧振幅に対応するパルス幅の信号として出力される。
【0036】
インバータ回路45は、実際には、6個のIGBT(スイッチング素子)46を三相ブリッジ接続して構成されており、下アーム側U,V相のIGBT46のエミッタは、夫々電流検出用のシャント抵抗(電流検出手段)47(u,v)を介してグランドに接続されている。また、両者の共通接続点は、図示しない増幅・バイアス回路を介してA/D変換部49に接続されている。尚、シャント抵抗47の抵抗値は0.1Ω程度である。
【0037】
増幅・バイアス回路はオペアンプなどを含んで構成されており、シャント抵抗47の端子電圧を増幅すると共にその増幅信号の出力範囲が正側に収まるように(例えば、0〜+5V)バイアスを与えるようになっている。尚、W相の電流に関しては、U,V相の電流に基づいて間接的に推定を行うことができる。また、インバータ回路45には、100Vの交流電源を倍電圧全波整流した約280Vの直流電圧が印加されるようになっている。
【0038】
A/D変換部49は、増幅・バイアス回路の出力信号をA/D変換した電流データIu,IvをUVW/αβ変換部52に出力する。UVW/αβ変換部52は、電流データIu,IvからW相の電流データIwを推定し、三相の電流データIu,Iv,Iwを(1)式に従って直交座標系の2軸電流データIα,Iβに変換する。
【数1】
Figure 2004049631
そして、2軸電流データIα,Iβをαβ/dq変換部38に出力する。
【0039】
αβ/dq変換部38は、ベクトル制御時にはエスティメータ34よりモータ14のロータ位置角θを得ることで、(2)式に従って2軸電流データIα,Iβを回転座標系(d,q)上のd軸電流値Id,q軸電流値Iqに変換する。
【数2】
Figure 2004049631
そして、d軸電流値Id,q軸電流値Iqを例えば128μ秒ごとに前述したようにエスティメータ34及び減算器36,37に出力するようになっている。
【0040】
エスティメータ34は、d軸電流値Id,q軸電流値Iqに基づいてロータ17位置角θ及び回転速度ωを推定し、各部に出力する。ここで、モータ14は、起動時には初期パターン出力部43によって直流励磁が行われてロータ17の回転位置が初期化された後、起動パターンが印加され強制転流が行われる。この起動パターンの印加による強制転流時においては、位置角θは推定するまでもなく明らかである。そして、αβ/dq変換部38は、ベクトル制御が開始される直前において初期パターン出力部43より得られる位置角θinitを初期値として、電流値Id,Iqを演算して出力する。
【0041】
ベクトル制御の開始以降は、エスティメータ34が起動されてロータ17位置角θ及び回転速度ωが推定される。この場合、エスティメータ34がαβ/dq変換部38に出力するロータ位置角θn とすると、エスティメータ34は、電流値Id,Iqに基づいてベクトル演算により推定したロータ位置角θn−1 とその一周期前に推定したロータ位置角θn−2 との相関に基づいてロータ位置角θn を推定するようになっている。
【0042】
尚、以上の構成において、インバータ回路45を除く構成は、主にDSP(Digital Signal Processer,トルク制御手段)53のソフトウエアによって実現されている機能である。そして、速度PI制御部35における速度制御周期(フィードバック制御周期)は例えば128マイクロ秒(数ミリ秒)になるように設定されている。また、DSP53にベクトル制御を開始させたり目標速度指令ωref を与えることは、制御用マイコン54によって行われる。
【0043】
また、本実施例では、モータ14を起動する場合、後述するように、ベクトル制御の開始前にPI制御を一時的に行うようになっている。そのため、具体的には図示しないが、図14に示す構成のPI制御部201、UVW変換部203を並列に備えており、実際には、UVW変換部203より出力される電圧指令Vu,Vv,Vwについても切換えスイッチ42u、42v、42w部分で切り替えてPWM形成部44に出力することができるようになっている。
【0044】
次に、本実施例の作用について図3乃至図9をも参照して説明する。図3は、「脱水」の全行程を概略的に示すフローチャートであり、また、図4はモータ制御に関するフローチャートであり、いずれも制御用マイコン54により実行される。制御用マイコン54は、バランス調整運転手段及び適正バランス判定手段として機能するものである。制御用マイコン54は、脱水運転に先立ち、図3のステップS1で示すようにモータ14の回転速度(角速度)を上側基準速度Naまで上げる。この上側基準速度Naはドラム7の内周面に洗濯物が張り付く速度であり、ただし、40rpm以上である。例えば75rpmに設定されている。この回転速度制御及び後述の回転速度制御においては、図4のフローチャートに示すように、前述した起動処理を行う(ステップT1)。即ち、切替えスイッチ42u〜42wを初期パターン出力部43がPWM形成部44に接続されるように切替えて、初期パターン出力部43により直流励磁を行わせ、ロータ17の回転位置を初期化させてから電圧指令値Vu〜Vwをインバータ回路45に与えてモータ14を強制転流させる(ステップT2)。すると、モータ14は回転を開始し、回転速度は上昇する。
【0045】
それから、制御用マイコン54は、例えば、初期パターン出力部43によって与えられる検知信号によりモータ14の回転数が20rpmに達したと判断すると(ステップT3,「YES」)、切替えスイッチ42u〜42wを、αβ/UVW変換部41とPWM形成部44とが接続されるように切替えると共に目標速度指令ωref の出力を開始し、従来と同様の構成による電圧制御(PI制御)を行う(ステップT4)。即ち、回転速度が比較的低い領域では、ベクトル制御を高精度で行うことが困難となるからである。
【0046】
続いて、制御用マイコン54は、エスティメータ34より与えられる回転速度ωを参照してモータ14の回転数が40rpmに達したと判断すると(ステップT5,「YES」)、ベクトル制御を開始させる(ステップT6)。その後は、運転停止の指示があるまで運転を継続する(ステップT7)。
【0047】
図3のステップS1においてモータ14の回転速度が上側基準速度Naまで上げられると、ステップS2に移行して、回転速度漸減運転を実行する。これは時間T0の間に下側基準速度Nbまで下げるように、つまり、(Na−Nb)/Tkの減速度で回転速度を順次下げてゆく。この下側基準速度Nbは、ドラム7の内周面から洗濯物が落下する回転速度例えば55rpmに設定されている。ただし40rpm以上である。従って、この回転速度漸減運転はモータ14をベクトル制御することによって行われるものであり、その回転制御はαβ/dq変換部38によるq軸電流値の出力が128μ秒の時間間隔でなされるから、ドラム7の1回転(75〜55rpm、1回転0.8秒〜1.09秒)のうち128μ秒のタイミングで回転速度制御がなされる。これにより、ドラム7の1回転中での回転変動が少なくなるように制御されるのである。
【0048】
ステップS3では、q軸電流(q軸電流値Iq)を128μsecごとに読み込む。このとき、q軸電流は図5に示すような波形を示す。次のステップS4においては、q軸電流変動幅検出処理を行う。この処理は、まず、検出されたq軸電流(図5参照)を、デジタルフィルタ機能のローパスフィルタにより高周波分をカットし、ついで、所定間引き率で検出数を間引きし(図6(a)参照)、これを二乗演算し(図6(b)参照)、さらにローパスフィルタによりさらに高周波分をカットする(図6(c)参照)これにより、q軸電流の変動幅Hが検出される。
【0049】
次のステップS5においては、変動幅Hが予め定められた基準値Hkより小であるか否かを判断し、小であれば、ステップS7に移行して適正バランス状態であることを判定し、そして、ステップS7に移行して、直ちに、脱水回転制御を実行する。すなわち、所定の脱水回転速度Ndまでモータ14の回転速度を高める。この後、ステップS8に移行して脱水終了条件が予め設定された条件に合致したか否か、例えば図7の時点t1から脱水回転制御実行時間が予め設定された時間を経過したか否かを判断し、経過したことが判断されると(図7のタイミングte)、ステップS9に移行して、モータ14を停止して、脱水回転制御を終了する。
【0050】
なお、前記ステップS5において、変動値Hが基準値Hkより大きいときにはステップS10に移行し、現在の回転速度(図7の期間Tk中での回転速度)が下側回転速度Nb以下であるか否かを判断し、以下でなければ、ステップS2に戻って回転速度漸減運転を継続する。以下であればモータ14の運転を停止し、再度ステップS1に移行する。つまりバランス調整運転を再度行う(図8参照)。
【0051】
このように本実施例によれば、回転速度漸減運転はモータ14をベクトル制御することにより行い、ベクトル制御による回転制御をドラム7の1回転(0.8秒〜1.09秒)のうち128マイクロ秒(数ミリ秒)のタイミングで行うようにした。これにより、ドラム7の1回転中での回転変動が少なくなるように制御されるのである。この結果、図9の特性線Hで示すように、ドラム7の回転速度変化がほぼ直線的となり、ドラム7の回転速度が、ドラム7内面で洗濯物に作用する遠心力と重力とが近接する回転速度範囲を通過する時間範囲T2が長くとれるようになり、これにより、上述したバランス調整作用が発揮される時間が長くなり、バランス調整効果が向上する。
【0052】
また、本実施例によれば、バランス調整運転での回転速度変更中に洗濯物の適正バランスを判定するようにし、この適正バランスが判定されたときには脱水行程を開始するようにしたから、適正バランスとなったときにそのまま脱水行程に移行できて、適正バランス状態を保持したまま脱水を行うことができるようになる。
【0053】
さらにまた、適正バランスの判定を行うについて、そのベクトル制御のq軸電流の変動幅が小さくなったことをもって適正バランスと判定するようにしたから、判定要素が、モータ14の負荷トルクに応じたq軸電流であり、アンバランス状態と適正バランス状態とを精度良く判定することができる。
【0054】
なお、適正バランスを判定するについて、モータに流れる電流(モータ電流)の変動幅が小さくなったことをもって適正バランスと判定するように構成しても良い。このようにすると、モータの回転速度を検出してその回転変動により適正バランスを判定する方式に比して、適正バランス判定精度を高めることができるようになる。
【0055】
また、バランス調整運転でのモータ14の回転速度制御をモータのベクトル制御により行うようにしたから、モータ14の回転速度制御をモータ14のベクトル制御により行うことで、ドラム18の1回転中での回転変動の減少を実現できるものである。
【0056】
図10及び図11は本発明の第2の実施例を示しており、この第2の実施例においては、ドラム7内の洗濯物が該ドラム7内周面に張り付く上側基準速度Naに向けて、ドラム回転速度を漸増させ(最大期間Tk1)、その後下側基準速度Nbに向けてドラム回転速度を漸減させる(最大期間Tk)ようにしたところに特徴がある。そして、この回転速度漸増運転において、ドラム7の回転速度が40rpmからベクトル制御が開始され、そして、多くの場合、下側基準速度Nbから上側基準速度Naに達するまでに、洗濯物のバランスが調整され、これが制御用マイコン54により判定される(図10の時点t2)。そして、この後脱水運転に移行する。なお、この期間Tk1及び次の期間Tk2においてバランス調整が判定されないときには、再度、回転速度漸増運転(あるいは回転速度漸減運転も)実行されることとなる(図11参照)。
【0057】
この第2の実施例によれば、ドラム7の回転速度漸増運転をモータ7のベクトル制御により行うことによりドラム7の1回転中での回転変動が少なくなるように制御するから、ドラム7の回転速度変化(漸増)がほぼ直線的となり、ドラム7の回転速度が、ドラム7内面で洗濯物に作用する遠心力と重力とが近接する回転速度範囲を通過する時間範囲が長くとれるようになり、これにより、上述したバランス調整作用が発揮される時間が長くなり、バランス調整効果が向上する。特に、ドラム7の回転速度を順次上げてゆくから、回転速度を上げてゆく脱水行程に移行しやすい。なお、回転速度漸増運転後の回転速度漸減運転は無くても良い。
【0058】
【発明の効果】
本発明は以上の説明から明らかなように、バランス調整運転によるバランス調整効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例であり、制御系の電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】ドラム式洗濯機の縦断側面図
【図3】制御内容を示すフローチャート
【図4】回転速度を上げていくときの制御内容を示すフローチャート
【図5】q軸電流の変動を示す波形図
【図6】(a)はq軸電流のサンプリング数を間引きした波形図、(b)は二乗演算した波形図、(c)はローパスフィルタをかけた波形図
【図7】回転速度の変化の一例を示す図
【図8】回転速度の変化の別の例を示す図
【図9】ドラムの回転速度変動を示す図
【図10】本発明の第2の実施例を示す図8相当図
【図11】図9相当図
【図12】従来におけるバランス調整の様子を示す図
【図13】ドラム回転速度の変化の様子を示す図
【図14】図1相当図
【符号の説明】
7はドラム、14はモータ、38はαβ/dq変換部、45はインバータ回路、47はシャント抵抗、53はDSP、54は制御用マイコン(バランス調整運転手段、適正バランス判定手段)を示す。

Claims (6)

  1. ほぼ水平軸にて回転するドラムと、
    このドラムを回転させるモータと、
    前記ドラム内の洗濯物がドラム内周面に張り付くドラム回転速度から洗濯物がドラム内周面から落下する回転速度に向けて、ドラム回転速度を漸減させるように前記モータの回転速度制御を行うバランス調整運転手段と
    を備え、
    このバランス調整運転手段は、ドラム回転速度漸減運転を、ドラム1回転中での回転変動が少なくなるように制御することを特徴とするドラム式洗濯機。
  2. ほぼ水平軸にて回転するドラムと、
    このドラムを回転させるモータと、
    前記ドラム内の洗濯物がドラム内周面に張り付くドラム回転速度に向けて、ドラム回転速度を漸増させるように前記モータの回転速度制御を行うバランス調整運転手段と
    を備え、
    このバランス調整運転手段は、ドラム回転速度漸増運転を、ドラム1回転中での回転変動が少なくなるように制御することを特徴とするドラム式洗濯機。
  3. バランス調整運転手段によるドラム回転速度変更中に洗濯物の適正バランスを判定する適正バランス判定手段を設け、この適正バランスが判定されたときには脱水行程を開始することを特徴とする請求項1又は2記載のドラム式洗濯機。
  4. 適正バランス判定手段は、モータに流れる電流の変動幅が小さくなったことをもって適正バランスと判定することを特徴とする請求項3記載のドラム式洗濯機。
  5. バランス調整運転手段は、モータの回転速度制御をモータのベクトル制御により行うことを特徴とする請求項1又は2記載のドラム式洗濯機。
  6. バランス調整運転手段は、モータの回転速度制御をモータのベクトル制御により行い、且つ適正バランス判定手段はそのベクトル制御のq軸電流の変動幅が小さくなったことをもって適正バランスと判定することを特徴とする請求項3記載のドラム式洗濯機。
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