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JP2003234540A - 分布帰還型レーザ装置、半導体光装置および分布帰還型レーザ装置の製造方法 - Google Patents

分布帰還型レーザ装置、半導体光装置および分布帰還型レーザ装置の製造方法

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JP2003234540A
JP2003234540A JP2002033607A JP2002033607A JP2003234540A JP 2003234540 A JP2003234540 A JP 2003234540A JP 2002033607 A JP2002033607 A JP 2002033607A JP 2002033607 A JP2002033607 A JP 2002033607A JP 2003234540 A JP2003234540 A JP 2003234540A
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JP
Japan
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layer
diffraction grating
distributed feedback
feedback laser
light distribution
Prior art date
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Application number
JP2002033607A
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English (en)
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JP2003234540A5 (ja
Inventor
Yuichiro Okunuki
雄一郎 奥貫
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Publication date
Application filed by Mitsubishi Electric Corp filed Critical Mitsubishi Electric Corp
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Priority to TW091116345A priority patent/TW557620B/zh
Priority to US10/206,217 priority patent/US6912239B2/en
Priority to DE10245544A priority patent/DE10245544B4/de
Priority to KR1020020063520A priority patent/KR100572745B1/ko
Priority to CNB021473390A priority patent/CN1224146C/zh
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    • HELECTRICITY
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    • H01S5/2004Confining in the direction perpendicular to the layer structure

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造ばらつきに起因する光結合係数の変動を
抑制し、製造歩留りを向上させることができる分布帰還
型レーザ装置、半導体光装置、半導体光装置布帰還型レ
ーザ装置の製造方法を提供する。 【解決手段】 InP基板1上に設けられ、活性層4の
両側に位置するクラッド層と、クラッド層のいずれか一
方の中に、クラッド層と屈折率が異なり、光の出射方向
に所定ピッチで、その出射方向に交差する方向に延びる
桟状格子を有する回折格子6とを備え、回折格子と離れ
てクラッド層内に位置し、回折格子の組成と同じ組成を
有する少なくとも一層の光分布調整層2とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として光ファイ
バ通信に用いられる分布帰還型レーザ装置、分布帰還型
レーザ装置を含む半導体光装置および分布帰還型レーザ
装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ通信に用いられる分布帰還型
レーザ装置は、共振器内に回折格子を有するレーザ装置
であり、この回折格子の周期に対応した発振波長で発振
するので、高速変調動作時においても単一縦モードで安
定して動作する。このため、長距離または高いビットレ
ートの光ファイバ通信に多く用いられている。分布帰還
型レーザ装置の特性を大きく左右するパラメータの一つ
に光結合係数があり、このパラメータはレーザの閾値電
流やスロープ効率といった静特性のみならず、雑音特性
および動特性にも大きく影響する。
【0003】従来の分布帰還型レーザ装置としては、た
とえば、図37および図38に示す装置がある(特開2
000−114652号公報)。この分布帰還型レーザ
装置120では、n導電型InP基板115の上に、下
から順に(1)n導電型InPクラッド層116、(2)
InGaAsP光閉じ込め層117,118、(3)活
性層119、(4)InGaAsP光閉じ込め層12
0,121、(5)回折格子106、(6)p導電型In
Pクラッド層122、(7)p導電型InGaAsコン
タクト層123が積層されている。
【0004】図38(a)に示す分布帰還型レーザ装置
における発振光であるレーザ光の装置の厚み方向に沿う
光強度は、図38(b)に示すように、活性層を中心に
上下に広がって分布する。図38(a)および図38
(b)に示すように、回折格子高さh、すなわち波の振
幅および回折格子106と活性層119との距離Hに強
く依存する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、回折格子高さ
hは、回折格子を形成する際のエッチング深さのばらつ
き等により大きく変動する。回折格子のエッチングは、
幅0.2μm程度の微小な領域のエッチングであるた
め、エッチレートのウェハ面内ばらつきが大きく、また
製造機会ごと、すなわちrun to runでの変動も大きい。
このため、光結合係数は、回折格子高さhのばらつきの
大きさに応じて変動することになる。さらに、実際に
は、これに加えて結晶成長における層厚ばらつきの影響
も加えられる。たとえば、InGaAsP光閉じ込め層
120,121が厚くなるか、またはInGaAsP光
閉じ込め層118,120またはその外側の光閉じ込め
層117,121が厚くなる場合、回折格子106と活
性層119との距離Hが大きくなる。このため、回折格
子と重なる光強度が減少し、光結合係数は小さくなる。
このように、図37のような分布帰還型レーザ装置にお
いては、製造時のわずかの膜厚変動や、組成変動に起因
する屈折率変動により、光結合係数は大きくばらつき、
分布帰還型レーザ装置を歩留りよく製造することは難し
い。
【0006】一方、上記の回折格子高さhのばらつきの
影響を受けない分布帰還型レーザ装置として、たとえ
ば、図39に示すような装置が提案されている(Journa
l of Lightwave Technology vol.7(1989) pp2072-207
7)。この分布帰還型レーザ装置120では、InP基板
115の上に、下から順に、(1)InPクラッド層1
22a、(2)活性層、(3)InPクラッド層122
b、(4)回折格子106、(5)InPクラッド層12
2c、が積層されている。図39に示す分布帰還型レー
ザ装置の光結合係数は、2つの層厚dInP(InPクラ
ッド層122bの厚み)およびdgrating、回折格子の
屈折率および回折格子の断面形状により決定される。こ
のため、上記回折格子が所定ピッチで桟状格子が配置さ
れる構造であれば、光結合係数は上述のエッチング深さ
に依存しない。したがって、図37に示した分布帰還型
レーザ装置の光結合係数のばらつきの主要因である回折
格子高さhに対応する要因がない。このため、図39に
示す分布帰還型レーザ装置の光結合係数のばらつきは、
図37に示す分布帰還型レーザ装置に比べれば小さい。
【0007】しかしながら、層厚と屈折率とは成膜処理
工程において決まるので、成膜処理装置における膜成長
速度や組成の成膜処理機会ごとのばらつきや、各々の成
膜処理装置固有の膜成長速度や組成の面内分布の影響を
強く受ける。これらのばらつきの影響を受け、膜成長処
理機会間において、またウェハ面内において光結合係数
はばらつきをもつ。
【0008】以後の説明において、成膜処理とは、(g
1)下地膜と結晶方位の整合性を有するエピタキシャル
膜を成長させる場合も、また(g2)結晶方位の整合性
を問題にしないで結晶膜または非晶質膜を成膜する場合
も含む。後者の(g2)の場合は、多結晶膜を堆積する
場合等が対応する。
【0009】図40に、層厚dInPの変動に起因する光
結合係数の設計値からのずれの計算結果を示す。また、
図41に、層厚dgratingの変動に起因する光結合係数
の設計値からのずれの計算結果を示す。さらに、図42
に、回折格子の屈折率のばらつきに起因する光結合係数
の設計値からのずれの計算結果を示す。これらの計算結
果によれば、±25%の層厚変動、または±1%の屈折
率変動により、光結合係数は±14〜25%も変動する
ことが分かる。このような光結合係数のばらつきによ
り、分布帰還型レーザ装置の特性は大きくばらつき、そ
の製造歩留りの向上が妨げられてきた。
【0010】本発明は、成膜処理機会間ばらつき、成膜
処理装置間ばらつきおよびウェハ面内ばらつきに起因す
る光結合係数の変動を抑制し、製造歩留りを向上させる
ことができる分布帰還型レーザ装置、その分布帰還型レ
ーザ装置とモノリシックに一体化された半導体光デバイ
ス、および分布帰還型レーザ装置の製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の分布帰還型レー
ザ装置は、半導体基板上に設けられ、活性層の両側に位
置するクラッド層と、クラッド層のいずれか一方の中
に、クラッド層と屈折率が異なり、光の出射方向に所定
ピッチで、その出射方向に交差する方向に延びる桟状格
子を有する回折格子とを備えるレーザ発振装置である。
このレーザ発振装置は、回折格子と離れてクラッド層内
に位置し、回折格子の組成と同じ組成を有する少なくと
も一層の光分布調整層とを備える(請求項1)。
【0012】この光分布調整層が回折格子を形成する前
に成膜される場合には、回折格子が形成される膜と光分
布調整層とは、同じ成膜処理装置中で形成される。この
場合、成膜処理装置の膜形成における厚みと組成のばら
つき傾向は、回折格子と光分布調整層とで同じになる。
回折格子の桟状格子および光分布調整層は、屈折率がク
ラッド層などと比べて高い。このため、たとえば回折格
子の厚さが厚く形成された場合、光分布調整層を配置し
ない場合、光の電界と回折格子との重なりは大きくな
り、光結合係数は増大する。
【0013】しかし、上記成膜処理装置により成膜され
た光分布調整層は、回折格子が形成される膜と同じ傾向
でばらつくので、やはり厚くなる。光は屈折率が大きい
部位に引き寄せられる性質があるため、光の電界強度分
布は、上記光分布調整層が厚く形成された分だけ、光分
布調整層に引き寄せられ、設計における分布よりも回折
格子から遠ざけられる。この結果、光結合係数の増減が
キャンセルされ、光結合係数の変動が抑制される。
【0014】また、回折格子が形成された後に形成され
る光分布調整層の場合は、回折格子が形成される成膜し
た成膜処理装置などを用いて、やはり回折格子が形成さ
れる膜と同じばらつき傾向の光分布調整層を形成する。
このため、上記と同様に、光結合係数の増減がキャンセ
ルされ、光結合係数の変動が抑制される。
【0015】ここで、回折格子は、通常、回折格子その
ものをさす意味に用いるが、回折格子が形成されている
層の意味に用いる場合もある。さらに、製造方法等の説
明において回折格子膜というときには、回折格子が形成
されることになる膜を意味する。
【0016】なお、光分布調整層および回折格子の組成
が同じとは、導電型を決める不純物を含めて同一の組成
であってもよいし、導電型を決める不純物は互いに異な
り、導電型を決める不純物以外の組成が同じであっても
よい。導電型を決める不純物が異なる場合は、通常、一
方はたとえばn導電型不純物を含み、他方はp導電型不
純物を含む。以後の説明でも、光分布調整層および回折
格子の組成が同じというとき、同様の意味とする。
【0017】本発明の分布帰還型レーザ装置では、光分
布調整層が、回折格子との間に活性層をはさむように位
置することができる(請求項2)。
【0018】この構成により、回折格子を形成するため
のエッチング処理前に、光分布調整層と回折格子膜とを
形成するので、同じ成膜処理装置内において連続して光
分布調整層と回折格子膜とを成膜することができる。こ
のため、確実に同じばらつき傾向を有する成膜処理装置
により、光分布調整層と回折格子膜とを成膜するので、
両方のばらつきが同じよう現れる。このため、光結合係
数が増大した場合、光の電界強度分布は、光分布調整層
の方にすなわち回折格子から遠ざけられるようにずれ
る。このような電界強度分布のずれは光結合係数の減少
として作用するので、回折格子膜および光分布調整層の
厚さ変動に起因する光結合係数の変動はキャンセルされ
る。このため、光結合係数の変動は抑制され、分布帰還
型レーザ装置の特性のばらつきがなくなり、製造歩留り
を向上させることができる。
【0019】本発明の分布帰還型レーザ装置では、光分
布調整層が、回折格子と活性層との間に位置することが
できる(請求項3)。
【0020】上記構成の場合も、回折格子を形成するた
めのエッチング処理前に、光分布調整層と回折格子膜と
を形成するので、同じ成膜処理装置内において連続して
光分布調整層と回折格子膜とを成膜することができる。
このため、確実に同じばらつき傾向を有する成膜処理装
置により、光分布調整層と回折格子膜とを成膜するの
で、両方のばらつきが同じよう現れる。したがって、光
結合係数の変動は抑制され、分布帰還型レーザ装置の特
性のばらつきがなくなり、製造歩留りを向上させること
ができる。
【0021】本発明の分布帰還型レーザ装置では、光分
布調整層が、活性層との間に回折格子をはさむように位
置することができる(請求項4)。
【0022】この場合、活性層と回折格子とに挟まれる
ように位置する下側クラッド層と、回折格子と光分布調
整層とに挟まれるように位置する上側クラッド層とが配
置される。回折格子は、これら下側クラッド層と上側ク
ラッド層とによって挟まれる。これら下側クラッド層と
上側クラッド層とは、回折格子のエッチング処理の前後
に形成されるので、同じ成膜処理装置内で連続して成膜
することはできない。しかし、上記の2つのクラッド層
は、同じばらつき傾向を有する成膜処理装置により形成
されることができる。同じばらつき傾向を示す成膜処理
装置として、たとえば(a1)同じ成膜処理装置、(a
2)層厚の面内分布が類似している成膜処理装置、また
は(a3)同一構造の成膜処理装置を用いることができ
る。このような成膜処理装置を用いることにより、これ
ら2つのクラッド層の厚みの設計値からのずれの割合の
面内分布は、両方のクラッド層をほぼ同じにすることが
できる。
【0023】下側クラッド層が厚くなった場合、他に何
の対策もとっていなければ、活性層と回折格子との距離
が大きくなるので、光結合係数は減少する。しかし、上
側クラッド層も、上述のように下側クラッドと同じばら
つき傾向を有する成膜処理装置により成膜されるので、
その層厚が増大する。この結果、光の電界強度分布は、
設計における位置よりも上側、すなわち回折格子に近づ
く。この電界強度分布の移動は、光結合係数の増大とし
て作用する。この結果、両方のクラッド層の層厚変動に
起因する光結合係数の変動は、キャンセルされ、光結合
係数の変動は抑制される。
【0024】本発明の分布帰還型レーザ装置では、光分
布調整層が、回折格子との間に活性層をはさむように位
置する第1の光分布調整層と、活性層との間に回折格子
をはさむように位置する第2の光分布調整層とからなる
ようにできる(請求項5)。
【0025】この構成により、第1の光分布調整層と回
折格子膜とは、同じ成膜処理装置で連続処理のうちに成
膜することができる。このため、上述の理由により、両
方の厚さなど、ばらつきに起因する光結合係数の変動は
互いにキャンセルして、光結合係数の変動は抑制され
る。
【0026】また、回折格子の上側と下側に位置する2
つのクラッド層は、たとえば上述の(a1)同じ成膜処
理装置、(a2)層厚の面内分布が類似している成膜処
理装置、または(a3)同一構造の成膜処理装置を用い
ることにより、その層厚など同じばらつき傾向とするこ
とができる。この結果、両方のクラッド層の層厚などの
ばらつきに起因する光結合係数の変動は互いにキャンセ
ルして、光結合係数の変動は抑制される。
【0027】上記のように、光結合係数に影響を及ぼす
4層が、その4層のうちで光結合係数への影響がキャン
セルされる相手の層と組み合わされることにより、光結
合係数の変動は抑制される。
【0028】本発明の分布帰還型レーザ装置では、光分
布調整層が、回折格子と活性層との間に位置する第3の
光分布調整層と、活性層との間に回折格子をはさむよう
に位置する第4の光分布調整層とからなるようにできる
(請求項6)。
【0029】この構成により、第3の光分布調整層と回
折格子膜とは、同じ成膜処理装置で連続処理のうちに成
膜することができる。このため、上述の理由により、両
方の厚さばらつきに起因する光結合係数の変動は互いに
キャンセルして、光結合係数の変動は抑制される。
【0030】また、回折格子の上側と下側に位置する2
つのクラッド層は、上述の(a1)、(a2)、または
(a3)の成膜処理装置を用いることにより、その層厚
など同じばらつき傾向とすることができる。この結果、
両方のクラッド層の層厚などのばらつきに起因する光結
合係数の変動は互いにキャンセルして、光結合係数の変
動は抑制される。
【0031】さらに、光結合係数に影響を及ぼす4層
が、その4層のうちで光結合係数への影響がキャンセル
される相手の層と組み合わされることにより、光結合係
数の変動は抑制される。
【0032】本発明の分布帰還型レーザ装置では、光分
布調整層の屈折率が、クラッド層の屈折率よりも高いよ
うにできる(請求項7)。
【0033】この構成により、光分布調整層が光の電界
強度分布を、効果的に引き寄せることができる。
【0034】本発明の分布帰還型レーザ装置では、回折
格子が位相シフト部を有する(請求項8)。
【0035】この構成により、この分布帰還型レーザ装
置にさらに機能性や、レーザ発振の安定性をもたせるこ
とができる。
【0036】本発明の分布帰還型レーザ装置では、回折
格子の位相シフト部は、共振器の中央部に位置して媒質
内波長の1/4に相当する位相をシフトさせることがで
きる(請求項9)。
【0037】この構成により、共振器の両端面に無反射
コーティングを施すことにより、単一縦モードの歩留り
を向上させることができる。
【0038】本発明の分布帰還型レーザ装置では、半導
体基板が不純物を含むInP基板であり、活性層がIn
GaAsP層であり、クラッド層が不純物を含むInP
層であり、回折格子および光分布調整層が不純物を含む
InGaAsP層であるようにできる(請求項10)。
【0039】この構成により、従来のの製造装置を用い
て、InP/InGaAsP系の分布帰還型レーザ装置
を歩留りよく製造することができる。
【0040】本発明の半導体光装置は、上記のいずれか
の分布帰還型レーザ装置と、他の光デバイスとを共通の
半導体基板上にモノリシックに備える(請求項11)。
【0041】この構成により、分布帰還型レーザ装置
と、他の光デバイスとがモノリシックに一体化されてい
るので、装置が小型化される。また、一連の処理工程で
2つの装置を一体化して製造できるので、製造能率を大
きく向上することができる。
【0042】本発明の半導体光装置は、他の光デバイス
が変調器であり、その変調器が分布帰還型レーザ装置の
活性層から光を受ける吸収層を備えることができる(請
求項12)。
【0043】このモノリシックに一体化した装置では、
電極間に電圧を印加し、活性層に電流を注入し、活性層
の層に沿って発振させるとともに、回折格子などにより
特定の波長選択がなされ特定波長の発振が継続する。発
振した光は、活性層から変調器の吸収層に導波され、変
調器の電極間に印加される電圧により変調をかけること
ができる。この分布帰還型レーザ装置には、上記のいず
れかの分布帰還型レーザ装置が用いられるので、製造時
のばらつきに起因する光結合係数の変動が大幅に抑制さ
れる。さらに、分布帰還型レーザ装置と変調器とがモノ
リシックに一体化されているので、装置が小型化され
る。また、一連の処理工程で2つの装置を一体化して製
造できるので、製造能率を大きく向上することができ
る。
【0044】本発明の分布帰還型レーザー装置の製造方
法は、半導体基板上に設けた活性層の両側に位置するク
ラッド層と、クラッド層のいずれか一方の中に、クラッ
ド層と屈折率が異なり、光の出射方向に所定ピッチで、
その出射方向に交差する方向に延びる桟状格子が配置さ
れた回折格子と、回折格子と離れてクラッド層内に位置
し、回折格子の組成と同じ組成を有する少なくとも一層
の光分布調整層と、を有する分布帰還型レーザー装置の
製造方法である。この製造方法では、少なくとも一層の
光分布調整層の成膜処理と、回折格子を形成する膜の成
膜処理とを、(a1)同じ成膜処理装置、(a2)層厚の
面内分布が類似している成膜処理装置、および(a3)
同一構造の成膜処理装置、のいずれかを用いて行う(請
求項13)。
【0045】この製造方法により、光分布調整層のばら
つき傾向と、回折格子膜のばらつき傾向とを同じように
することができる。このため、これら両方の製造時のば
らつきに起因する光結合係数に及ぼす変動要因を、互い
に相反させ、したがってキャンセルするようにすること
ができる。この結果、製造時のばらつきに起因する光結
合係数の変動を抑制することができ、歩留りを向上させ
ることができる。
【0046】本発明の分布帰還型レーザー装置の製造方
法では、光分布調整層が、回折格子を形成する膜をエッ
チング処理するために、回折格子を形成する膜を形成し
た成膜処理装置から取り出され、エッチング処理された
後、成膜処理装置内で成膜されることができる(請求項
14)。
【0047】この構成により、エッチング処理のために
エッチング処理装置に装入され、そのエッチングの前後
になされる成膜処理であっても、上記のように成膜処理
装置を選ぶことにより、2つの成膜処理におけるばらつ
き傾向を同じようにすることができる。
【0048】本発明の分布帰還型レーザー装置の製造方
法では、回折格子および回折格子を含むクラッド層の形
成において、回折格子の下層に相当する位置に下側クラ
ッド層を形成し、下側クラッド層の上に、回折格子が形
成される回折格子膜を形成し、その回折格子膜をエッチ
ング処理して桟状格子を含む回折格子を形成し、さらに
その回折格子の上に前記エッチングされた部分を埋め込
むように上側クラッド層を形成するにあたり、下側クラ
ッド層の成膜処理と、上側クラッド層の成膜処理とを、
(a1)同じ成膜処理装置、(a2)層厚の面内分布が類
似している成膜処理装置、および(a3)同一構造の成
膜処理装置、のいずれかを用いて行うことができる(請
求項15)。
【0049】この構成により、回折格子を上下からはさ
む上側クラッド層と下側クラッド層とを、同じばらつき
傾向をもつように成膜することができる。このため、回
折格子膜と光分布調整層との同じばらつき傾向に基づく
光結合係数の変動抑制に加えて、これら両クラッド層の
製造時のばらつきに起因する光結合係数に及ぼす変動要
因を、互いにキャンセルするようにすることができる。
この結果、製造時のばらつきに起因する光結合係数の変
動を抑制することができ、歩留りを向上させることがで
きる。
【0050】
【発明の実施の形態】次に図面を用いて本発明の実施の
形態について説明する。
【0051】(実施の形態1)図1は、本発明の実施の
形態1における分布帰還型レーザ装置を示す図である。
図1において、n導電型InP基板1の上に、n導電型
InGaAsP層2が位置し、さらにその上に、n導電
型InP層3が設けられている。その上に活性層4を構
成するInGaAsP層が位置し、その活性層4の上
に、p導電型InP層5が設けられ、さらにその上にn
導電型InGaAsP層からなる桟状格子が所定ピッチ
で配置された回折格子6が位置する。この桟状格子の間
の溝を埋め込むように、p導電型InP層7,8が設け
られている。
【0052】InP層からなるクラッド層18a,18
bは、活性層4を上下から挟んでいる。また、上記のn
導電型InGaAsP層2が光分布調整層を構成する。
図1に示すように、クラッド層18bは、n導電型In
P基板1に接して位置する光分布調整層の上に接して配
置されている。このように半導体基板1上に接して位置
する光分布調整層の上に接してクラッド層が位置する場
合も、半導体基板およびクラッド層の組成は同じである
ので、光分布調整層はクラッド層内に位置するという。
すなわち、光分布調整層がクラッド層(InP)と半導
体基板(InP)とに挟まれる場合、光分布調整層は実
質的にクラッド層内に配置されているとみることができ
る。
【0053】また、以後の説明では、回折格子と、回折
格子が形成されることになる回折格子膜とは、図面中で
同じ符号によって表わされる。
【0054】この分布帰還型レーザ装置では、活性層4
に電流を注入し、活性層の層に沿って発振させるととも
に、回折格子6の桟状格子ピッチなどにより特定の波長
選択がなされ特定波長の発振が継続する。図1に示すよ
うに、発振中の光のうちから光を部分的に外部に取り出
し、光ファイバ通信等に用いる。
【0055】次に、上記分布帰還型レーザ装置の製造方
法について説明する。図2に示すように、n導電型In
P基板1の上に、下から順に、(1)光分布調整層とな
るn導電型InGaAsP層2、(2)n導電型InP
層3、(3)InGaAsP層からなる活性層4、(4)
p導電型InP層5、(5)回折格子が形成されるn導
電型InGaAsP膜6、(6)p導電型InP層7、
が形成される。
【0056】これらの成膜処理において重要なことは、
少なくとも、光分布調整層となるn導電型InGaAs
P層2と、回折格子が形成されるn導電型InGaAs
P膜6とは、同じばらつき傾向を持つ処理装置内で、そ
のばらつき傾向が変わらない処理機会、たとえば同一処
理機会に形成されなければならない。すなわち、たとえ
ばInPウェハを一枚ずつバッチ処理する場合には、そ
のInPウェハ上に、同じ成膜処理装置内で連続して、
光分布調整層となるn導電型InGaAsP層2と、回
折格子が形成されるn導電型InGaAsP膜6とを成
膜する必要がある。ここで、ばらつき傾向が同じとは、
ばらつく方向が同じで、かつそのばらつきの大きさが同
じ程度であることをさす。また、面内ばらつきを問題に
する場合には、ばらつきの方向も含めてばらつきの面内
分布が類似していることをいう。
【0057】上記の成膜処理方法としては、MOCVD
法(Metal Organic Chemical VaporDeposition:有機金属
気相成長法 )、MBE法(Molecular Beam Epitaxy)、L
PE法(Liquid Phase Epitaxy)を用いることができる。
【0058】この後、図3に示すように、干渉露光法、
電子ビーム露光法およびエッチングとにより、n導電型
InGaAsP膜6と、p導電型InP層7とを所定ピ
ッチの桟状格子となるように、パターニングする。この
上に、上記ピッチ間の溝を埋め込むように、p導電型I
nP層8を成膜して分布帰還形レーザ装置が完成する。
【0059】上記図1の分布帰還型レーザ装置の構成に
おいて、光分布調整層のn導電型InGaAsP層2
は、回折格子の桟状格子を構成するn導電型InGaA
sP層6と、導電型を決める不純物を含めて同じ組成で
ある。上述したように、上記の2つの層は同じ処理機会
に同じ処理装置内で相前後して形成されるために、両層
の厚さおよび組成は同じばらつき傾向を示す。したがっ
て、両層が屈折率の設計値からずれる割合は、両層とも
ほとんど同じである。たとえば、回折格子が形成される
InGaAsP層6が厚くなった場合、従来の分布帰還
型レーザ発振装置では、回折格子と発振電界分布との重
なりが増大して光結合係数は増大する。しかし、本実施
の形態では、光分布調整層であるInGaAsP層2
も、回折格子が形成されるInGaAsP膜6と同様の
傾向で、設計厚に対して同じような割合で厚くなる。
【0060】光は屈折率の高い領域に引き付けられるの
で、光分布調整層の厚みがばらついて厚くなった分だ
け、光の電界強度分布は、設計における発振位置から光
分布調整層の方に引き寄せられる。図4は、上記の光分
布調整層であるInGaAsP層2が厚くなったことに
より、導波路厚さ方向に沿った断面での光の電界強度分
布がInGaAsP層2の側に引き寄せられたことを示
す図である。破線は設計における電界強度分布Edesign
を表し、実線が光分布調整層がばらついて厚くなった後
の電界強度分布Eを示している。上記のような光電界強
度分布のずれは、光結合係数を減少させる方向に作用す
る。この結果、光分布調整層における回折格子膜と同じ
傾向の厚み変動は、回折格子における厚み変動に起因す
る光結合係数の変動を補償することができる。
【0061】また、回折格子が形成されるInGaAs
P膜6が薄くなった場合には、光分布調整層であるIn
GaAsP層2も、同じ傾向でばらつき、薄くなる。こ
のとき、上記図4の場合と同じメカニズムが作用して光
結合係数の変動を補償する。すなわち、図5に示すよう
に、分布調整層が薄くなった分、導波路厚さ方向に沿う
光の電界強度分布は、EdesignからEへと引き寄せられ
る。すなわち、設計における光電界強度分布よりも光分
布調整層から斥けられ、回折格子側に引き寄せられる。
【0062】上記は厚み変動に対してのみ説明したが、
回折格子の桟状格子を構成するInGaAsP層6の組
成変動に起因する屈折率変動が生じた場合でも、光分布
調整層2がその変動を補償し、その結果、光結合係数の
変動を補償する。
【0063】上記のように、回折格子を形成する層にお
いて、組成変動や厚み変動があっても、これら変動に起
因する光結合係数の変動を抑制することができる。これ
をまとめると次のように要約される。 (1)回折格子と同じ組成の光分布調整層を、回折格子
との間に活性層をはさむように配置する。 (2)この光分布調整層の配置を含めて、分布帰還型レ
ーザ装置を設計する。 (3)分布帰還型レーザ装置製造の際に、回折格子膜
に、厚み変動や組成変動が生じる場合、光分布調整層も
同じ傾向の厚み変動や組成変動が生じる。回折格子膜
と、光分布調整層とで同じ傾向の厚み変動や組成変動が
生じるためには、両層が同じばらつき傾向を示す成膜処
理装置内で形成されるようにする。たとえば、同一バッ
チ処理において同じ成膜処理装置内で連続して形成され
ることが望ましい。回折格子膜のエッチング処理をはさ
んで、回折格子膜の成膜処理と、光分布調整層の成膜処
理とが行われる場合には、回折格子膜の成膜処理と、光
分布調整層の成膜処理とを、同じ成膜処理装置内で連続
して行うことはできない。しかし、同じ成膜処理装置を
用いたり、少なくとも同じようなばらつき傾向を示す成
膜処理装置内で成膜することが望ましい。 (4)回折格子の厚み変動および組成変動に起因する光
結合係数の変動と、光分布調整層の厚み変動および組成
変動に起因する光結合係数の変動とがキャンセルして、
光結合係数の変動が抑制される。この結果、分布帰還型
レーザ装置の特性ばらつきを抑制することができ、歩留
りの向上が得られる。
【0064】図6に、本発明の分布帰還型レーザ装置の
回折格子に厚み変動が生じた場合の光結合係数の設計値
からのずれの計算結果を示す。また、図7に、本発明の
分布帰還型レーザ装置の回折格子に組成変動が生じ、そ
のために屈折率変動が生じた場合の光結合係数の設計値
からのずれの計算結果を示す。図6および図7によれ
ば、本発明の分布帰還型レーザ装置では、光結合係数の
変動は従来に比較しておよそ1/8に抑制されている。
この結果、分布帰還型レーザ装置の特性ばらつきを抑制
することができる。
【0065】なお、本実施の形態では、活性層の上側に
回折格子が配置されるものとして説明したが、回折格子
は活性層の下側にあってもよい。各半導体のn導電型と
p導電型とを逆にしてもよい。また、回折格子の一部に
回折格子の位相がシフトしている個所が1箇所または複
数箇所あってもよい。回折格子の共振器の中央部分に媒
質内波長の1/4に相当する位相シフトを設け、両端面
に無反射コーティングを施すこともできる。この位相シ
フトと無反射コーティングとにより、単一縦モード歩留
りを向上させることができる。
【0066】本実施の形態では、InP/InGaAs
P系の分布帰還型レーザ装置について説明した。しか
し、たとえば、InP/AlGaInAs系の分布帰還
型レーザ装置(第62回応用物理学会学術講演会(2001年)
13p-B-15)などに適用することもできる。さらに、本
実施の形態は、たとえば、変調器と分布帰還型レーザ装
置とを共通基板上にモノリシックに集積化した装置(IEE
E Journal of Quantum Electronics, vol.36(2000)pp90
9-915)における分布帰還型レーザ装置に適用することも
できる。
【0067】(実施の形態2)図8は、本発明の実施の
形態2における分布帰還型レーザ装置の構成を示す図で
ある。本実施の形態では、光分布調整層12が回折格子
16と活性層4との間に配置されている点に特徴があ
る。図8において、光分布調整層12と回折格子16と
は、クラッド層18a内に配置されている。
【0068】図8において、n導電型InP基板1の上
に、n導電型InP層3が位置し、その上に活性層を構
成するInGaAsP層4が設けられ、さらにその上に
p導電型InP層5が位置する。そのp導電型InP層
5の上に、光分布調整層のp導電型InGaAsP層1
2が位置し、その上にp導電型InP層7が設けられ
る。さらに、回折格子の桟状格子を構成するp導電型I
nGaAsP層16が配置されている。このp導電型I
nGaAsP層16を覆うように、p導電型InP層
8,9が配置されている。回折格子の桟状格子を形成す
るp導電型InGaAsP層16と、光分布調整層のp
導電型InGaAsP層12とは、導電型を決める不純
物を含めて同じ組成である。
【0069】この分布帰還型レーザ装置では、活性層4
に電流を注入し、活性層に沿うように発振させるととも
に、回折格子16の所定ピッチの桟状格子により特定の
波長選択がなされ特定波長の発振が継続する。図8に示
すように、発振中の光から部分的に外部に光を取り出
し、光ファイバ通信等に用いる。
【0070】次に、上記分布帰還型レーザ装置の製造方
法について説明する。図9に示すように、n導電型In
P基板1の上に、下から順に、(1)n導電型InP層
3、(2)InGaAsP層からなる活性層4、(3)p
導電型InP層5、(4)光布調整層となるp導電型I
nGaAsP層12、(5)p導電型InP層7、(6)
回折格子が形成されるp導電型InGaAsP膜16、
(7)p導電型InP層8、が形成される。
【0071】これらの成膜処理において重要なことは、
少なくとも、光分布調整層となるp導電型InGaAs
P層12と、回折格子が形成されるp導電型InGaA
sP膜16とは、同じばらつき傾向を持つ処理装置内
で、そのばらつき傾向が変わらない処理機会、たとえば
同一処理機会に形成されなければならない。すなわち、
たとえばInPウェハを一枚ずつバッチ処理する場合に
は、そのInPウェハ上に、同じ成膜処理装置内で連続
して、光分布調整層となるn導電型InGaAsP層2
と、回折格子が形成されるn導電型InGaAsP膜1
6とを成膜する必要がある。ここで、ばらつき傾向が同
じとは、ばらつく方向が同じで、かつそのばらつきの大
きさが同じ程度であることをさす。また、面内ばらつき
を問題にする場合には、ばらつきの方向も含めてばらつ
きの面内分布が類似していることをいう。
【0072】上記の成膜処理方法としては、MOCVD
法(Metal Organic Chemical VaporDeposition:有機金属
気相成長法 )、MBE法(Molecular Beam Epitaxy)、L
PE法(Liquid Phase Epitaxy)を用いることができる。
【0073】この後、図10に示すように、干渉露光
法、電子ビーム露光法およびエッチングとにより、p導
電型InGaAsP層16と、p導電型InP層8とを
所定ピッチの桟状格子となるように、パターニングす
る。この上に、上記ピッチ間の溝を埋め込むように、p
導電型InP層9を成膜して分布帰還形レーザ装置が完
成する。
【0074】図8の分布帰還型レーザ装置の構成におい
て、光分布調整層InGaAsP12は、回折格子の桟
状格子を構成するInGaAsP層16と同じ組成であ
る。上記の2つの層は同じ処理機会に同じ処理装置内で
連続して形成する。このために、両層の厚みおよび組成
は同じばらつき傾向を示す。したがって、両層が屈折率
の設計値からずれる割合は、両層ともほとんどである。
たとえば、回折格子を構成するInGaAsP層16が
厚くなった場合、従来の分布帰還型レーザ発振装置では
光結合係数は増大する。しかし、本実施の形態では、光
分布調整層であるInGaAsP層12も、回折格子の
桟状格子を構成するInGaAsP層16と同様の傾向
で同じ割合で厚くなる。
【0075】上述のように、光は屈折率の高い領域に引
き付けられるので、図11に示すように、光の電界強度
分布は、回折格子16から遠ざけられ、p導電型InG
aAsP層12のほうに引き寄せられる。このような光
電界強度分布のずれは、光結合係数を減少させる方向に
作用する。この結果、InGaAsP層16の層の厚み
変動に起因する光結合係数のずれを抑制することができ
る。
【0076】一方、回折格子が形成されるp導電型In
GaAsP膜16が薄くなった場合には、光分布調整層
であるp導電型InGaAsP層12も薄くなるように
ばらつく。この結果、図12に示すように、導波路厚さ
方向に沿う電界強度分布は回折格子側に引き寄せられ
る。図12の場合も、上記図4の場合と厚み変動に対し
て同じメカニズムが作用して光結合係数の変動を補償す
ることができる。
【0077】上記は厚み変動に対してのみ説明したが、
回折格子の桟状格子を構成するInGaAsP層16の
組成変動に起因する屈折率変動が生じた場合でも、光分
布調整層12がその変動を補償し、その結果、光結合係
数の変動を補償する。
【0078】上記のように、回折格子を形成する層にお
いて、組成変動や厚み変動があっても、これら変動に起
因する光結合係数の変動を抑制することができる。
【0079】なお、本実施の形態では、活性層の上側に
回折格子が配置されるものとして説明したが、回折格子
は活性層の下側にあってもよい。半導体の導電型のn導
電型とp導電型とを入れ換えてもよい。また、回折格子
の一部に回折格子の位相がシフトしている個所が1箇所
または複数箇所あってもよい。回折格子の共振器の中央
部分に媒質内波長の1/4に相当する位相シフトを設
け、両端面に無反射コーティングを施すこともできる。
この位相シフトと無反射コーティングとにより、単一縦
モード歩留りを向上させることができる。
【0080】本実施の形態では、InP/InGaAs
P系の分布帰還型レーザ装置について説明した。しか
し、たとえば、InP/AlGaInAs系の分布帰還
型レーザ装置などに適用することもできる。さらに、本
実施の形態は、たとえば、変調器と分布帰還型レーザ装
置とを共通基板上にモノリシックに集積化した装置にお
ける分布帰還型レーザ装置に適用することもできる。
【0081】(実施の形態3)図13は、本発明の実施
の形態3における分布帰還型レーザ装置の構成を示す図
である。本実施の形態では、光分布調整層12が、活性
層4との間に回折格子16をはさむ位置に設けられてい
る点に特徴がある。図13において、n導電型InP基
板1の上に、n導電型InP層3が位置し、さらにその
上に活性層4を構成するInGaAsP層が設けられて
いる。活性層4の上に、p導電型InP層5が位置し、
その上にp導電型InGaAsP膜から形成された回折
格子16が位置する。その上に回折格子の桟状格子の間
のエッチング溝を埋め込むように、p導電型InP層7
が設けられ、その上に光分布調整層であるp導電型In
GaAsP層12が位置する。このp導電型InGaA
sP層12の上にはp導電型InP層9が設けられてい
る。光分布調整層12はクラッド層18a内に配置され
ている。
【0082】次に、上記分布帰還型レーザ装置の製造方
法について説明する。まず、図14に示すように、n導
電型InP基板1の上に、下から順に、(1)n導電型
InP層3、(2)InGaAsP層からなる活性層
4、(3)p導電型InP層5、(4)回折格子が形成さ
れるp導電型InGaAsP膜16、(5)p導電型I
nP層7を形成する。
【0083】この後、図15に示すように、干渉露光
法、電子ビーム露光法およびエッチングとにより、p導
電型InGaAsP膜16と、p導電型InP層7とを
パターニングして、回折格子の桟状格子を形成する。こ
の上に、回折格子のエッチング溝を埋め込むようにp導
電型InP層8を形成し、さらにその上にp導電型In
P層9を成膜して、図13に示す分布帰還型レーザ装置
が完成する。
【0084】重要なことは、少なくとも、活性層4と回
折格子16とにはさまれるp導電型InP層5と、回折
格子16と光分布調整層12とにはさまれるp導電型I
nP層7,8は、同じばらつき傾向を有する成膜処理装
置により形成される必要がある。同じばらつき傾向を示
す成膜処理装置として、(a1)同じ成膜処理装置、
(a2)層厚の面内分布が類似している成膜処理装置、
または(a3)同一構造の成膜処理装置を用いることが
できる。このような成膜処理装置を用いることにより、
これらInP層の厚みの設計値からのずれの割合の面内
分布は、両方のp導電型InP層でほぼ同じにすること
ができる。
【0085】上記の成膜処理方法としては、MOCVD
法(Metal Organic Chemical VaporDeposition:有機金属
気相成長法 )、MBE法(Molecular Beam Epitaxy)、L
PE法(Liquid Phase Epitaxy)を用いることができる。
【0086】たとえば、p導電型InP層5が厚くなっ
た場合、活性層と回折格子との距離が増大するので、従
来の装置では光結合係数は減少する。しかし、本実施の
形態では、p導電型InP層7,8も、p導電型InP
層5と同じ割合で厚くなる。このため、p導電型InP
層7,8の厚み増大の効果により、図16に示すよう
に、導波路厚み方向に沿う電界強度分布Eは、Edesign
からずれて、回折格子の側に引き寄せられる。この電界
強度分布の回折格子の側への引き寄せは、光結合係数を
増加させるので、p導電型InP層5の厚み増加に伴う
光結合係数の減少を補償することができる。
【0087】一方、p導電型InP層5が薄くなった場
合、活性層と回折格子との距離が減少するので、従来の
装置では光結合係数は増大する。しかし、本実施の形態
では、p導電型InP層7,8も、p導電型InP層5
と同じ傾向で薄くなる。このため、図17に示すよう
に、導波路厚み方向に沿う電界強度分布は、Edesign
らずれて、活性層4の側、すなわち回折格子から遠い側
へと移動させられる。したがって、この場合にも光結合
係数の変動を補償することができる。
【0088】図18に、本発明の分布帰還型レーザ装置
において、InP層に厚み変動が生じた場合の光結合係
数の設計値からのずれの計算結果を示す。図18によれ
ば、本発明の分布帰還型レーザ装置では、光結合係数の
変動は従来に比較しておよそ1/6に抑制されている。
この結果、分布帰還型レーザ装置の特性ばらつきを抑制
することができる。
【0089】なお、本実施の形態では、活性層の上側に
回折格子が配置されるとして説明したが、回折格子は活
性層の下側にあってもよい。また、半導体の導電型のn
導電型とp導電型とを入れ換えてもよい。また、回折格
子の一部に回折格子の位相をシフトさせる個所が1箇所
または複数箇所あってもよい。回折格子の共振器の中央
部分に媒質内波長の1/4に相当する位相シフトを設
け、両端面に無反射コーティングを施すこともできる。
この位相シフトと無反射コーティングとの組合せによ
り、単一縦モード歩留りを向上させることができる。
【0090】このほか、たとえば、InP/AlGaI
nAs系の分布帰還型レーザ装置などに適用することも
できる。さらに、本発明は、たとえば、変調器と分布帰
還型レーザ装置とを共通基板上にモノリシックに集積化
した装置における分布帰還型レーザ装置に適用すること
もできる。
【0091】(実施の形態4)図19は、本発明の実施
の形態4における分布帰還型レーザ装置を示す図であ
る。本実施の形態では、分布帰還型レーザ装置に2つの
光分布調整層2,12を設けた点に特徴がある。すなわ
ち、実施の形態1の分布帰還型レーザ装置における光分
布調整層2と、実施の形態3の分布帰還型レーザ装置に
おける光分布調整層12とを備えている。光分布調整層
2はInP層のクラッド層18b内に配置され、または
より具体的にはクラッド層18bとInP基板1との間
に配置され、光分布調整層12はクラッド層18a内に
配置されている。
【0092】図19において、n導電型InP基板1の
上に、第1の光分布調整層となるn導電型InGaAs
P層2が位置し、その上にn導電型InP層3が設けら
れている。さらにその上に活性層のInGaAsP層4
が位置し、その活性層の上にp導電型InP層5が設け
られている。その上にn導電型InGaAsP層2と同
じバンドギャップを有するn導電型InGaAsP層か
ら形成された回折格子6が位置し、その上に回折格子の
桟状格子の間の溝を埋め込むように、p導電型InP層
7,8が設けられている。このp導電型InP層7,8
の上には、第2の光分布調整層となるp導電型InGa
AsP層12が位置し、その上にp導電型InP層10
が設けられている。
【0093】次に、図19に示す分布帰還型レーザ装置
の製造方法について説明する。まず、図20に示すよう
に、n導電型InP基板1の上に、下から順に、(1)n
導電型InGaAsP層2、(2)n導電型InP層
3、(3)InGaAsP活性層4、(4)p導電型In
P層5、(5)n導電型InGaAsP層2と同一のバ
ンドギャップを有するp導電型InGaAsP膜16、
(6)p導電型InP層7を、同じ成膜処理において成
膜する。この成長処理には、MOCVD法、MBE法、
LPE法などを用いることができる。
【0094】その後、干渉露光法や電子ビーム露光法
と、エッチングにより、p導電型InGaAsP層16
およびp導電型InP層7を、図21に示すように、所
定のピッチで除去することにより所定ピッチの桟状格子
を分布させることにより回折格子を形成する。この後、
(7)p導電型InP層8を回折格子の桟状格子間の溝
を埋め込むように形成し、さらに(8)p導電型InG
aAsP層12を成膜し、この上に(9)p導電型In
P層10を形成する。
【0095】上記の成膜処理において、回折格子を形成
するためのエッチング処理をはさんで、エッチング処理
より前の第1の成膜処理と、エッチングより後の第2の
成膜処理とは、(a1)同じ成膜処理装置、(a2)層厚
の面内分布が類似している成膜処理装置、または(a
3)同一構造の成膜処理装置を用いる。
【0096】第1の光分布調整層であるn導電型InG
aAsP層2と、回折格子が形成されるn導電型InG
aAsP膜6とは、いずれも上記エッチング前に成膜処
理される。このため、これら2つのn導電型InGaA
sP層は、同一組成であり、また連続した成膜処理によ
って形成される。このため、層厚および組成、または屈
折率の設計値からずれる割合は、これら2つのn導電型
InGaAsP層において、ほぼ同じである。
【0097】n導電型InGaAsP膜6が厚く形成さ
れた場合、従来の分布帰還レーザ装置では、光結合係数
は増大する。しかし、本実施の形態では、n導電型In
GaAsP層2も同じ割合で厚くなるため、導波路厚み
方向に沿う電界強度分布は、設計における電界強度分布
designよりもn導電型InGaAsP層2の方に、す
なわち回折格子から遠ざかる方向に引き寄せられる(図
22)。このような電界強度分布のずれは、光結合係数
を減少させる方向に作用するため、上記2つのn導電型
InGaAsP層の厚みを適切に選ぶことにより、これ
ら2つの厚み変動に起因する光結合係数の変動を抑制す
ることができる。
【0098】一方、n導電型InGaAsP膜6が薄く
形成された場合、光結合係数は小さくなる。しかし、こ
のときn導電型InGaAsP層2も、上記理由に基づ
き薄く形成される。このため、導波路厚さ方向に沿う電
界強度分布は、回折格子の側に引き寄せられる(図2
3)。この電界強度分布の移動により、光結合係数は増
大する。したがって、この場合も上記2つのn導電型I
nGaAsP層の厚みを適切に選ぶことにより、これら
2つの層の厚み変動に起因する光結合係数の変動を補償
することができる。
【0099】また、回折格子をはさむp導電型InP層
5とp導電型InP層7,8とは、上述のように(a
1),(a2),(a3)の成膜処理装置によって成膜さ
れるので、同様の層厚の面内分布となる。このため、こ
れら2つの層の設計値に対してずれる割合の面内分布
は、これら2つの層でほぼ同様である。
【0100】したがって、p導電型InP層5が設計値
より厚くなった場合、従来技術では光結合係数は減少す
る。しかし、本実施の形態では、p導電型InP層7,
8も同じ割合で厚くなるので、導波路厚さ方向に沿う光
電界強度分布Eは、設計における電界強度分布Edesign
よりも回折格子側に引き寄せられる(図24)。この電
界強度分布のずれは、光結合係数を増加させる方向に作
用させ、2つの層の厚さの同じ傾向の変動に起因する光
結合係数の変動は互いにキャンセルされる。この結果、
製造時の層厚のばらつきに起因する光結合係数の変動は
抑制される。
【0101】一方、p導電型InP層5が設計値より薄
くなった場合、従来技術では光結合係数は増大する。し
かし、本実施の形態では、p導電型InP層7,8も同
じ割合で薄くなるので、導波路厚さ方向に沿う光電界強
度分布Eは、設計における電界強度分布Edesignよりも
回折格子側から遠ざけられる(図25)。この電界強度
分布のずれは、光結合係数を増加させる方向に作用さ
せ、2つの層の厚さの同じ傾向の変動に起因する光結合
係数の変動は互いにキャンセルされる。この結果、光結
合係数は製造時の層厚のばらつきで大きく変動すること
がなくなる。
【0102】上記のように、本実施の形態における分布
帰還型レーザ装置の構成により、回折格子が形成される
層の組成や厚み変動に起因する光結合係数の変動を抑制
することができる。さらに、回折格子を挟んで位置する
p導電型InP層の厚み変動に起因する光結合係数の変
動も、両方のp導電型InP層の同傾向の厚み変動が光
結合係数に対して相反する方向の作用を及ぼすので、光
結合係数の変動の抑制が得られる。
【0103】本実施の形態における光結合係数の変動抑
制を定量的に計算で評価した結果を、図26〜図28に
示す。図26は、p導電型InP層の厚みが変動した場
合の光結合係数の設計値からのずれを示している。この
図によれば、従来の装置に比較して、本実施の形態で
は、光結合係数はほとんど(1/2)に減少している。
図27は、回折格子の厚みが変動した場合の光結合係数
の設計値からのずれを示している。この図によれば、従
来の装置に比較して本実施の形態の装置では、(1/
2)以下に減少している。また、図28は、回折格子の
屈折率が変動した場合の光結合係数の設計値からのずれ
を示している。この図によれば、従来の装置に比較して
本実施の形態の装置では、(1/2)よりも大幅に減少
している。
【0104】本実施の形態においても、実施の形態1〜
3と同様に、活性層の下方に回折格子を配置した分布帰
還型レーザ装置であってもよい。また、半導体のn導電
型とp導電型とを入れ換えてもよい。また、位相シフト
が設けられた回折格子を有する分布帰還型レーザ装置で
あってもよい。また、他の材料系、たとえばInP/A
lGaInAs系の分布帰還型レーザ装置であってもよ
い。さらに、変調器を集積化した分布帰還型レーザ装置
であってもよい。
【0105】(実施の形態5)図29は、本発明の実施
の形態5における分布帰還型レーザ装置を示す図であ
る。本実施の形態では、実施の形態4と同様に、分布帰
還型レーザ装置に2つの光分布調整層2,12を設けた
点に特徴がある。すなわち、実施の形態2の分布帰還型
レーザ装置における光分布調整層と、実施の形態3の分
布帰還型レーザ装置における光分布調整層12a,12
bとを備えている。2つの光分布調整層12a,12b
は、ともにクラッド層18a内に配置されている。
【0106】図29において、n導電型InP基板1の
上に、n導電型InP層3が位置し、その上に活性層の
InGaAsP層4が設けられている。活性層の上には
p導電型InP層5が位置し、その上に第1の光分布調
整層となるp導電型InGaAsP層12aが位置し、
その上にp導電型InP層7が設けられている。そのp
導電型InP層7の上には、回折格子6が位置し、次い
でp導電型InP層8,9、および第2の光分布調整層
となるp導電型InGaAsP層12bが位置し、その
上にp導電型InP層10が設けられている。
【0107】次に、図29に示す分布帰還型レーザ装置
の製造方法について説明する。まず、図30に示すよう
に、n導電型InP基板1の上に、下から順に、(1)n
導電型InP層3、(2)InGaAsP活性層4、
(3)p導電型InP層5、(4)p導電型InGaAs
P層12a、(5)p導電型InP層7、(6)p導電型
InGaAsP膜16、(7)p導電型InP層8、を
同じ成膜処理装置において成膜する。この成長処理に
は、MOCVD法、MBE法、LPE法などを用いるこ
とができる。
【0108】その後、干渉露光法や電子ビーム露光法
と、エッチングとにより、p導電型InGaAsP膜1
6およびp導電型InP層8を、図31に示すように、
パターニングして、桟状格子を形成する。この後、
(8)p導電型InP層9を回折格子の桟状格子の間の
溝を埋め込むように形成し、さらに(9)p導電型In
GaAsP層12bを、次いで、この上に(10)p導電
型InP層10を形成する。
【0109】上記の成膜処理において、回折格子を形成
するためのエッチング処理をはさんで、エッチング処理
より前の第1の成膜処理と、エッチングより後の第2の
成膜処理とは、(a1)同じ成膜処理装置、(a2)層厚
の面内分布が類似している成膜処理装置、または(a
3)同一構造の成膜処理装置を用いて行う。
【0110】第1の光分布調整層であるp導電型InG
aAsP層12aと、回折格子が形成されるp導電型I
nGaAsP膜16とは、いずれも上記エッチング前に
成膜処理される。このため、これら2つのp導電型In
GaAsP層は、また連続した成膜処理によって形成さ
れる。このため、層厚および組成、または屈折率の設計
値からずれる割合は、これら2つのp導電型InGaA
sP層において、ほぼ同じである。
【0111】p導電型InGaAsP膜16が厚く形成
された場合、従来の分布帰還レーザ装置では、光結合係
数は増大する。しかし、本実施の形態では、p導電型I
nGaAsP層12aも、同じ割合で厚くなるため、導
波路厚み方向に沿う電界強度分布Eは、設計における電
界強度分布Edesignよりもp導電型InGaAsP層1
2aの側に、すなわち回折格子から遠ざかる方向に押さ
れる(図32)。このような電界強度分布のずれは、光
結合係数を減少させる方向に作用するため、上記2つの
p導電型InGaAsP膜の厚みを適切に選ぶことによ
り、これら2つの層の厚み変動に起因する光結合係数の
変動を補償することができる。
【0112】一方、p導電型InGaAsP膜16が薄
く形成された場合、光結合係数は小さくなる。しかし、
このときp導電型InGaAsP層12aも、上記理由
に基づき薄く形成される。このため、導波路厚さ方向に
沿う電界強度分布は、回折格子の側に引き寄せられる
(図33)。この引き寄せにより、光結合係数は増大す
る。したがって、この場合も上記2つのp導電型InG
aAsP層の厚みを適切に選ぶことにより、これら2つ
の層の厚み変動に起因する光結合係数の変動を補償する
ことができる。
【0113】また、回折格子をはさむp導電型InP層
7とp導電型InP層8,9とは、上述のように(a
1),(a2),(a3)の成膜処理装置によって成膜さ
れるので、同様の層厚の面内分布となる。このため、こ
れら2つの層の設計値に対してずれる割合の面内分布
は、これら2つの層でほぼ同様である。
【0114】したがって、p導電型InP層7が設計値
より厚くなった場合、従来技術では光結合係数は減少す
る。しかし、本実施の形態では、p導電型InP層8,
9も同じ割合で厚くなるので、導波路厚さ方向に沿う光
電界強度分布Eは、設計における電界強度分布Edesign
よりも回折格子側に引き寄せられる(図34)。この電
界強度分布のずれは、光結合係数を増加させる方向に作
用させ、2つの層の厚さの同じ傾向の変動に起因する光
結合係数の変動は互いにキャンセルされる。この結果、
光結合係数は製造時の層厚のばらつきで大きく変動する
ことがなくなる。
【0115】一方、p導電型InP層7が設計値より薄
くなった場合、従来技術では光結合係数は増大する。し
かし、本実施の形態では、p導電型InP層8,9も同
じ割合で薄くなるので、導波路厚さ方向に沿う光電界強
度分布Eは、設計における電界強度分布Edesignよりも
回折格子側から遠ざけられる(図35)。この電界強度
分布のずれは、光結合係数を増加させる方向に作用さ
せ、2つの層の厚さの同じ傾向の変動に起因する光結合
係数の変動は互いにキャンセルされる。この結果、光結
合係数は製造時の層厚のばらつきで大きく変動すること
がなくなる。
【0116】上記のように、本実施の形態における分布
帰還型レーザ装置の構成により、回折格子が形成される
層の組成や厚み変動に起因する光結合係数の変動を抑制
することができる。さらに、回折格子を挟んで位置する
p導電型InP層の厚み変動に起因する光結合係数の変
動も、両方のp導電型InP層の同傾向の厚み変動が光
結合係数に対して相反する方向の作用を及ぼすので、光
結合係数の変動の抑制が得られる。
【0117】本実施の形態においても、実施の形態1〜
4と同様に、活性層の下方に回折格子を配置した分布帰
還型レーザ装置であってもよいし、位相シフトが設けら
れた回折格子を有する分布帰還型レーザ装置であっても
よい。また、他の材料系、たとえばInP/AlGaI
nAs系の分布帰還型レーザ装置であってもよい。さら
に、変調器を集積化した分布帰還型レーザ装置であって
もよい。
【0118】(実施の形態6)図36は、本発明の実施
の形態6における半導体光装置を示す図である。図36
において、分布帰還型レーザ装置20と、変調器30と
が、図示していない半導体基板上に一体的にモノリシッ
クに形成されている。分布帰還型レーザ装置20には、
上記実施の形態1〜5に例示したいずれかの分布帰還形
レーザ装置が用いられている。
【0119】このモノリシックに一体化した装置では、
電極25a,25b間に電圧を印加し、活性層4に電流
を注入し、活性層の層に沿って発振させるとともに、回
折格子6,16などにより特定の波長選択がなされ特定
波長の発振が継続する。発振した光は、活性層4から変
調器30の吸収層34に導波され、変調器の電極25
a,25c間に印加される電圧により変調をかけること
ができる。
【0120】分布帰還型レーザ装置には、実施の形態1
〜5に例示したいずれかの分布帰還型レーザ装置が用い
られるので、製造時のばらつきに起因する光結合係数の
変動は大幅に抑制されている。さらに、分布帰還型レー
ザ装置と変調器とがモノリシックに一体化されているの
で、装置が小型化される。また、一連の処理工程で2つ
の装置を一体化して製造できるので、製造能率を向上す
ることができる。
【0121】上記において、本発明の実施の形態につい
て説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形
態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発
明の実施の形態に限定されることはない。本発明の範囲
は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許
請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべて
の変更を含むものである。
【0122】
【発明の効果】本発明の分布帰還型レーザ装置およびそ
の製造方法を用いることにより、製造時のばらつきに起
因する光結合係数の変動を、同じばらつき傾向を有する
成膜処理装置を選択するという簡単な手段により、抑制
し、製造歩留りを向上させることができる。さらに、本
発明の分布帰還型レーザ装置と他の光デバイスたとえば
変調器とを、共通の半導体基板上にモノリシックに一体
成形した半導体光装置を用いることにより、この半導体
光装置を小型化し、また製造工程を連続化して製造コス
トを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1における分布帰還型レ
ーザ装置を示す図である。
【図2】 図1の分布帰還型レーザ装置の製造方法にお
いて、回折格子膜の上にクラッド膜を成膜した状態を示
す図である。
【図3】 回折格子膜とクラッド膜とをパターニングし
て回折格子を形成した状態を示す図である。
【図4】 回折格子膜が厚くなるようにばらついた場合
において、光の電界強度分布が回折格子から遠ざかるよ
うにずれることを示す図である。
【図5】 回折格子膜が薄くなるようにばらついた場合
において、光の電界強度分布が回折格子に近づくように
ずれることを示す図である。
【図6】 図1の分布帰還型レーザ装置の回折格子の層
厚が変動した場合、光結合係数の設計値からのずれを計
算した結果である。
【図7】 図1の分布帰還型レーザ装置の回折格子の屈
折率が変動した場合、光結合係数の設計値からのずれを
計算した結果である。
【図8】 本発明の実施の形態2における分布帰還型レ
ーザ装置を示す図である。
【図9】 図8の分布帰還型レーザ装置の製造方法にお
いて、回折格子膜の上にクラッド膜を成膜した状態を示
す図である。
【図10】 回折格子膜とクラッド膜とをパターニング
して回折格子を形成した状態を示す図である。
【図11】 回折格子膜が厚くなるようにばらついた場
合に、光の電界強度分布が回折格子から遠ざかるように
ずれることを示す図である。
【図12】 回折格子膜が薄くなるようにばらついた場
合に、光の電界強度分布が回折格子に近づくようにずれ
ることを示す図である。
【図13】 本発明の実施の形態3における分布帰還型
レーザ装置を示す図である。
【図14】 図13の分布帰還型レーザ装置の製造方法
において、回折格子膜の上にクラッド膜を成膜した状態
を示す図である。
【図15】 回折格子膜とクラッド膜とをパターニング
して回折格子を形成した状態を示す図である。
【図16】 回折格子の下側に位置する下側クラッド層
が厚くなるようにばらついた場合に、光の電界強度分布
が回折格子に近づくようにずれることを示す図である。
【図17】 回折格子の下側に位置する下側クラッド層
が薄くなるようにばらついた場合に、光の電界強度分布
が回折格子から遠ざかるようにずれることを示す図であ
る。
【図18】 図13の分布帰還型レーザ装置の上側クラ
ッド層の膜厚が変動した場合、光結合係数の設計値から
のずれを計算した結果である。
【図19】 本発明の実施の形態4における分布帰還型
レーザ装置を示す図である。
【図20】 図19の分布帰還型レーザ装置の製造方法
において、回折格子膜の上にクラッド膜を成膜した状態
を示す図である。
【図21】 回折格子膜とクラッド膜とをパターニング
して回折格子を形成した状態を示す図である。
【図22】 回折格子が厚くなるようにばらついた場合
に、光の電界強度分布が回折格子から遠ざかるようにず
れることを示す図である。
【図23】 回折格子が薄くなるようにばらついた場合
に、光の電界強度分布が回折格子から遠ざかるようにず
れることを示す図である。
【図24】 回折格子の下側に位置する下側クラッド層
が厚くなるようにばらついた場合に、光の電界強度分布
が回折格子に近づくようにずれることを示す図である。
【図25】 回折格子の下側に位置する下側クラッド層
が薄くなるようにばらついた場合に、光の電界強度分布
が回折格子から遠ざかるようにずれることを示す図であ
る。
【図26】 図19の分布帰還型レーザ装置において、
下側クラッド層が変動した場合の、光結合係数の設計値
からのずれの計算結果である。
【図27】 図19の分布帰還型レーザ装置において、
回折格子の厚さが変動した場合の、光結合係数の設計値
からのずれの計算結果である。
【図28】 図19の分布帰還型レーザ装置において、
回折格子の屈折率が変動した場合の、光結合係数の設計
値からのずれの計算結果である。
【図29】 本発明の実施の形態5における分布帰還型
レーザ装置を示す図である。
【図30】 図29の分布帰還型レーザ装置の製造方法
において、回折格子膜の上にクラッド膜を成膜した状態
を示す図である。
【図31】 回折格子膜とクラッド膜とをパターニング
して回折格子を形成した状態を示す図である。
【図32】 回折格子が厚くなるようにばらついた場合
に、光の電界強度分布が回折格子から遠ざかるようにず
れることを示す図である。
【図33】 回折格子が薄くなるようにばらついた場合
に、光の電界強度分布が回折格子から遠ざかるようにず
れることを示す図である。
【図34】 回折格子の下側に位置する下側クラッド層
が厚くなるようにばらついた場合に、光の電界強度分布
が回折格子に近づくようにずれることを示す図である。
【図35】 回折格子の下側に位置する下側クラッド層
が薄くなるようにばらついた場合に、光の電界強度分布
が回折格子から遠ざかるようにずれることを示す図であ
る。
【図36】 本発明の実施の形態6における半導体光装
置を示す図である。
【図37】 従来の分布帰還型レーザ装置を示す図であ
る。
【図38】 (a)は活性層と回折格子との間の距離が
光結合係数に影響することを示す図であり、(b)は波
状回折格子の高さが光結合係数に影響することを示す図
である。
【図39】 従来の他の分布帰還型レーザ装置を示す図
である。
【図40】 図39に示す分布帰還型レーザ装置におい
て、活性層と回折格子との間の距離を決めるクラッド層
の厚みが変動したときの光結合係数の設計値からのずれ
の計算結果である。
【図41】 図39に示す分布帰還型レーザ装置におい
て、回折格子の厚み変動による光結合係数の設計値から
のずれの計算結果である。
【図42】 図39に示す分布帰還型レーザ装置におい
て、回折格子の屈折率変動による光結合係数の設計値か
らのずれの計算結果である。
【符号の説明】
1 n導電型InP基板、2 n導電型InGaAsP
層(光分布調整層)、3 n導電型InP層、4 In
GaAsP活性層、5 p導電型InGaAsP層、6
n導電型InGaAsP回折格子または回折格子膜、
7,8,9,10 p導電型InP層、12,12a,
12b p導電型InGaAsP層(光分布調整層)、
16 p導電型InGaAsP回折格子または回折格子
膜、18a,18b クラッド層、20 分布帰還型レ
ーザ装置、25a,25b,25c 電極、30 変調
器、34 吸収層、E 実際の電界強度分布、Edesign
設計における電界強度分布。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体基板上に設けられ、活性層の両側
    に位置するクラッド層と、前記クラッド層のいずれか一
    方の中に、前記クラッド層と屈折率が異なり、光の出射
    方向に所定ピッチで、その出射方向に交差する方向に延
    びる桟状格子を有する回折格子とを備えるレーザ発振装
    置であって、 前記回折格子と離れて前記クラッド層内に位置し、前記
    回折格子の組成と同じ組成を有する少なくとも一層の光
    分布調整層とを備える、分布帰還型レーザ装置。
  2. 【請求項2】 前記光分布調整層が、前記回折格子との
    間に前記活性層をはさむように位置する、請求項1に記
    載の分布帰還型レーザ装置。
  3. 【請求項3】 前記光分布調整層が、前記回折格子と前
    記活性層との間に位置する、請求項1に記載の分布帰還
    型レーザ装置。
  4. 【請求項4】 前記光分布調整層が、前記活性層との間
    に前記回折格子をはさむように位置する、請求項1に記
    載の分布帰還型レーザ装置。
  5. 【請求項5】 前記光分布調整層が、前記回折格子との
    間に前記活性層をはさむように位置する第1の光分布調
    整層と、前記活性層との間に前記回折格子をはさむよう
    に位置する第2の光分布調整層とからなる、請求項1に
    記載の分布帰還型レーザ装置。
  6. 【請求項6】 前記光分布調整層が、前記回折格子と前
    記活性層との間に位置する第3の光分布調整層と、前記
    活性層との間に前記回折格子をはさむように位置する第
    4の光分布調整層とからなる、請求項1に記載の分布帰
    還型レーザ装置。
  7. 【請求項7】 前記光分布調整層の屈折率が、前記クラ
    ッド層の屈折率よりも高い、請求項1〜6のいずれかに
    記載の分布帰還型レーザ装置。
  8. 【請求項8】 前記回折格子が位相シフト部を有する、
    請求項1〜7のいずれかに記載の分布帰還型レーザ装
    置。
  9. 【請求項9】 前記回折格子の位相シフト部は、共振器
    の中央部に位置して媒質内波長の1/4に相当する位相
    をシフトさせる、請求項8に記載の分布帰還型レーザ装
    置。
  10. 【請求項10】 前記半導体基板が不純物を含むInP
    基板であり、前記活性層がInGaAsP層であり、前
    記クラッド層が不純物を含むInP層であり、前記回折
    格子および光分布調整層が不純物を含むInGaAsP
    層である、請求項1〜9のいずれかに記載の分布帰還型
    レーザ装置。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の分
    布帰還型レーザ装置と、他の光デバイスとを共通の半導
    体基板上にモノリシックに備える、半導体光装置。
  12. 【請求項12】 前記他の光デバイスが変調器であり、
    その変調器が前記分布帰還型レーザ装置の活性層から光
    を受ける吸収層を備えている、請求項11に記載の半導
    体光装置。
  13. 【請求項13】 半導体基板上に設けた活性層の両側に
    位置するクラッド層と、前記クラッド層のいずれか一方
    の中に、前記クラッド層と屈折率が異なり、光の出射方
    向に所定ピッチで、その出射方向に交差する方向に延び
    る桟状格子が配置された回折格子と、前記回折格子と離
    れて前記クラッド層内に位置し、前記回折格子の組成と
    同じ組成を有する少なくとも一層の光分布調整層と、を
    有する分布帰還型レーザー装置の製造方法であって、 前記少なくとも一層の光分布調整層の成膜処理と、前記
    回折格子を形成する膜の成膜処理とを、(a1)同じ成
    膜処理装置、(a2)層厚の面内分布が類似している成
    膜処理装置、および(a3)同一構造の成膜処理装置、
    のいずれかを用いて行う、分布帰還型レーザー装置の製
    造方法。
  14. 【請求項14】 前記光分布調整層が、前記回折格子を
    形成する膜をエッチング処理するために、前記回折格子
    を形成する膜を形成した成膜処理装置から取り出され、
    エッチング処理された後、前記成膜処理装置内で成膜さ
    れる、請求項13に記載の分布帰還型レーザー装置の製
    造方法。
  15. 【請求項15】 前記回折格子および前記回折格子を含
    むクラッド層の形成において、前記回折格子の下層に相
    当する位置に下側クラッド層を形成し、前記下側クラッ
    ド層の上に、回折格子が形成される回折格子膜を形成
    し、その回折格子膜をエッチング処理して桟状格子を含
    む回折格子を形成し、さらにその回折格子の上に前記エ
    ッチングされた部分を埋め込むように上側クラッド層を
    形成するにあたり、 前記下側クラッド層の成膜処理と、前記上側クラッド層
    の成膜処理とを、(a1)同じ成膜処理装置、(a2)層
    厚の面内分布が類似している成膜処理装置、および(a
    3)同一構造の成膜処理装置、のいずれかを用いて行
    う、請求項13または14に記載の分布帰還型レーザー
    装置の製造方法。
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