JP2003185140A - ガスタービン燃焼器 - Google Patents
ガスタービン燃焼器Info
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- Coating By Spraying Or Casting (AREA)
Abstract
額縁とシールとの嵌合部で発生する摩耗損傷を防止する
耐摩耗構造のガスタービン燃焼器の提供。 【解決手段】発電用ガスタービンの燃焼器トランジショ
ンピース(尾筒)1と初段静翼とをシール材を介して嵌
合したガスタービン燃焼器において、化学組成中にクロ
ムを15〜30重量%、炭素を0.05〜0.2重量%含
有するコバルト基合金を基材とし、表面にクロム炭化物
を主成分とする厚さが0.1〜0.6mmの耐摩耗コーテ
ィング処理した板材をシール材3,3’とし、トランジ
ションピース嵌合部におけるシール材のコーティング層
との接触部に、シール材と同種のコバルト基合金板材を
取付けたガスタービン燃焼器。
Description
ービンのトランジションピース(尾筒)の摩耗損傷を防
止したガスタービン燃焼器に関する。
火力発電プラントで用いられるガスタービンは、燃焼ガ
ス温度が1300〜1500℃と上昇していることか
ら、耐熱性に優れたガスタービン材料の開発が数多く行
われている。
の回転や、高速で流れる高温ガス、冷却空気の通過等に
伴って、様々な個所で振動が発生する。
材で振動が発生した場合には、部材同士の接触部で摩耗
が発生し、高温下で摩耗損傷が生じる場合がある。摩耗
損傷が生じる個所には、耐摩耗性に優れた材料やコーテ
ィング処理の適用が必要とされる。
o合金のステライトを大気プラズマ溶射した例や、Cr
3C2等のクロム炭化物相をニッケル−クロム合金のバイ
ンダ材料と混合して、高速フレーム溶射(HVOF:H
igh Velocity Oxy-Fuel)によりガスタービン材料
に施工した例が報告されている。
ン部材に適用して摩耗損傷を低減した例としては特願平
8−53494号,特願平9−191554号公報等が
挙げられる。
じる高温摩耗損傷は、そのメカニズムが複雑で部材の使
用環境により摩耗状態は大きく変化する。そのため部材
に応じて、適用するコーティング材料の種類、および、
接触部材の組合せの適切な選択が必要となる。
に、燃焼器ライナから高温ガスをタービン入口に導くト
ランジションピース(尾筒)がある。
してN263等のニッケル基合金で構成され、前部が円
形、後方部が矩形という複雑な形状を有する。そして、
最後部に取付けられた矩形の額縁と呼ばれる部分の周囲
にスリットを設け、該スリット間に金属薄板のシール材
を挟み込んで、トランジションピースと初段静翼とを嵌
合している。また、同様のシール構造で隣接するトラン
ジションピース同士も嵌合している。
ョンピースの額縁部は500℃を超える高温と、100
Hz以上の高周波数の振動とに同時に曝されるため、長
時間の運転により額縁とシールの接触部で大きな摩耗損
傷が生じる。特に、トランジションピースと初段静翼と
を嵌合するフローティングシールと呼ばれる部材におい
ては、静翼側から額縁側にシールが押し付けられるよう
な力が作用するため、額縁最後部とフローティングシー
ルの接触部で顕著な摩耗が発生し、問題となる場合が多
い。
クロム炭化物をコーティングしても、摩耗損傷を十分に
防止できない場合がある。これは振動周波数が100H
z以上と比較的高い場合には、額縁とシールの両面にコ
ーティングを施して摺動すると、クロム炭化物粒子が相
手側コーティング中の炭化物粒子を削り取り、クロム炭
化物の脱落が生じるためである。
ジションピース材のニッケル基合金と摺動させると、硬
質なクロム炭化物がニッケル基合金表面を切削するアブ
レッシブ摩耗の状態となり、ニッケル基合金の摩耗損傷
を増大する結果となる。
トランジションピース額縁部へ適用しても、相手材の選
択が適切でない場合は、コーティング層あるいは相手材
のいずれかを大きく摩耗してしまう結果となる。
ンジションピースの額縁部とフローティングシール嵌合
部で発生する摩耗損傷を防止するための耐摩耗構造を有
するガスタービン燃焼器を提供することにある。
化物コーティングの相手材について検討し、耐摩耗性に
優れた耐熱材料としてコバルト基合金に着目した。ステ
ライトNo.6のような耐摩耗性に優れたコバルト基合
金は通常、組織中に多量の炭化物を含むことから、炭化
物の効果により耐摩耗性が優れると従来は考えられてい
る。
炭化物コーティングの相手材として高温下で摺動させた
場合には、クロム炭化物コーティング側に大きな摩耗損
傷が生じてしまい、好ましい結果が得られなかった。
炭化物の形成が非常に少ないHS25のようなコバルト
基合金を、クロム炭化物コーティングの相手材として選
び試験した場合には、両者共に摩耗損傷が小さくなり、
非常に優れた耐摩耗性を示すことを見出した。
溶体型コバルト基合金)は、高温で摩耗を受けると摺動
表面に摩耗紛が堆積して、緻密な付着層を形成する。こ
のコバルト基合金の付着層は密着性が高く、摺動の際の
摩擦抵抗を低下させて、摩耗損傷を減少すると推測され
る。一方、ニッケル基合金が摩耗した際に摺動部表面に
形成される付着層は、密着性が低いため容易に表面から
脱落し、摩耗損傷の低下に繋がらないと考えた。
炭化物コーティングの相手材として高温ですべり摩耗さ
せた場合には、コーティング層の摺動表面に相手材のコ
バルト基合金摩耗紛がより多く付着する傾向がある。こ
れにより、コーティングのクロム炭化物粒子が付着層に
覆われるため、クロム炭化物のコーティングからの脱落
や、クロム炭化物の切削による相手材の損傷が無くな
り、摩耗損傷が著しく低下することを見出した。
温摩耗損傷を抑制するのに最も有効な方法は、額縁とフ
ローティングシールの接触部を、固溶体型コバルト基合
金とクロム炭化物コーティングとの組合せとすることで
ある。HS25等の固溶体型コバルト基合金は、容易に
薄板状に加工することが可能で、コバルト基合金でシー
ルを作製し額縁側にクロム炭化物コーティングを施工す
ることが最も容易な対策である。
動環境下で使用されるため、タービン運転中にクロム炭
化物コーティング層に損傷が生じて、部分的に剥離を起
こす可能性も考えられる。
ティングした場合には、コーティング層に剥離が生じた
場合、ニッケル基合金が直接摩耗を受けるため、摩耗損
傷が加速される懸念がある。従って、この構成の場合
は、長期安定性の点で課題がある。
ィングを施した場合は、コーティングが剥離しても基材
のコバルト基合金にある程度の耐摩耗性があるため、摩
耗損傷が加速度的に進行すると云う問題は解消される。
も有効な対策として、本発明は、炭素含有量の少ない固
溶体型コバルト基合金でフローティングシールを作製
し、シール材と同材質の薄板材をトランジションピース
額縁側摺動面に溶接により取付けて、フローティングシ
ールと額縁貼板表面のいずれか一方にのみ、クロム炭化
物を主体とした耐摩耗コーティングを施すことにある。
グにおいて、硬質相の炭化物には高温安定性に優れたC
r3C2粒子を使用することが好ましい。また、Cr3C2
粒子のみを溶射原料とすると、皮膜の脆化や密着性低下
が生じるため、粒子のバインダとして延性なニッケル−
クロム合金粉末と混合して成膜することが好ましい。
高温耐摩耗特性は向上するが、Cr 3C2粒子の含有量が
95%を超えると皮膜の延性が低下し好ましくない。一
方、Cr3C2粒子含有量が65%未満の場合は、耐摩耗
特性が不足するため好ましくない。
は、クロム含有量が15%未満では高温耐酸化特性が不
足し、35%を超えると延性が低下する。従ってバイン
ダ合金中のクロム含有量は15〜35%とすることが好
ましい。
い皮膜を形成できるHVOFを用いることが好ましい。
大気中または減圧雰囲気中でプラズマ溶射により成膜を
行うと、原料粉末が高温に加熱されるため、Cr3C2粒
子が分解し、構造変化や皮膜の軟化が生じて、耐摩耗性
が低下する可能性があるので好ましくない。
0.1mm未満の場合は長時間使用中に皮膜が摩滅し、
耐摩耗性が不足するため好ましくない。また、厚さが
0.6mmを超えると皮膜の剥離が生じ易くなるため好
ましくない。従って、コーティング層の厚さは0.1〜
0.6mmとすることが好ましい。
合せた場合の高温すべり摩耗試験による摩耗損傷量を示
すグラフである。試験温度は700℃とし、振動条件は
振幅1.0mm、周波数は100Hzとした。また、摩
耗試験片は全長40mmの蒲鉾型とし、形状が同じ1対
の試験片の曲面部分を交差して接触させ、5kgの荷重
を加えて摺動させた。
いて、表面粗さ計により凹凸のプロファイルを測定し、
プロファイル中の最大摩耗深さを記録した場合の値であ
る。なお、摩耗面に相手材の摩耗粒子が付着して盛上り
が生じた際の最大盛上り高さを、摩耗量の負の値で示し
た。
材のニッケル基合金N263,固溶体型コバルト基合金
のHS25および析出強化型コバルト基合金のFSX4
14を使用した。またコーティング材としては、HS2
5の表面にHVOFによりクロム炭化物を成膜した材料
(CrCコート)と、大気溶射によりステライトNo.
6を成膜した材料を使用した。試験に使用した合金およ
びステライトNo.6の化学組成を表1に示す。
織中の炭化物量が少なく、加工性に優れている。一方、
HS25の比較材として用いたFSX414は、炭素量
が0.25%と多いため組織中に多量のクロム炭化物や
タングステン炭化物が析出して材料が強化されている。
そのためHS25に較べて高温強度に優れているが、延
性は低下する。
めるために炭素の添加量を1%以上に増加している。ク
ロム炭化物コーティングにおいては、Cr3C2粒子とバ
インダのニッケル−クロム合金の混合粉末を原料とし
た。その際、Cr3C2粒子の含有量は体積比で80%と
した。
は、それぞれN263同士、HS25とN263、HS
25同士の合金素材間による摩耗試験結果である。
25とを組合せた場合の両方で、摩耗量は300〜40
0μm以上の大きな値を示している。
合せ、同種材の組合せの両方の試験結果共に、上記のN
263の場合に較べて摩耗量が低下しており、摩耗損傷
の低減効果があることが分かる。
おいても、試験材の片方が200μm以上摩耗してお
り、合金素材同士の接触では摩耗損傷の防止に十分な効
果が得られないことが明らかになった。
いた試験結果を示す。比較材のCrCコートとN263
の組合せにおいては、CrCコート側は摩耗減量が数μ
m程度であり、殆ど減肉が生じておらず、耐摩耗保護層
として優れていることが分かる。しかし、相手材のN2
63の摩耗量は400μm以上と非常に大きく、金属素
材の組合せよりも損傷が増大している。
材とHS25を組合せた場合には、CrCコート材には
減肉が起こらず、相手材の粒子が付着した盛上りが生じ
るだけであった。相手材のHS25摩耗量も約100μ
mとなり、金属素材の中では最小の値を示した。CrC
コート材には30μm以上の盛上りが見られるが、これ
はHS25の摩耗紛が摩耗面から排出されずに付着した
ためである。
れるが、HS25の方の盛上り高さが約2倍になり、摩
耗紛の凝着が促進されることが分かった。
成により、摺動面の摩擦抵抗が低下してHS25の摩耗
量が低下したものと推定される。
とFSX414の組合せでは、CrCコート側に400
μm程度の大きな摩耗減量が生じている。これはFSX
414が炭化物で強化されているために、この炭化物に
よりCrCコート側の炭化物が切削されて脱落したため
と推定される。
トコート材の組合せにおいても、FSX414の場合と
同様に、CrCコート側に300μm以上の大きな摩耗
減量が認められた。これもステライトが多量の炭化物を
含むことで生じたと考えられる。
の組合せでは、それぞれの試験材が180μm程度の損
傷を受けている。これも互いのクロム炭化物粒子が相手
側コーティング中の炭化物粒子を削り取り、クロム炭化
物の脱落が生じたためと推定される。
ティングを施した場合の高温すべり摩耗現象は、相手材
の組合せにより挙動が大きく変化する。相手材が延性な
金属の場合は、クロム炭化物コーティングには殆ど摩耗
による減肉が起こらず、コーティングの保護効果が非常
に有効に作用する。しかし、その反面、相手金属にある
程度の耐摩耗特性が備わっていないと、相手材の摩耗損
傷を低減することはできない。
硬質粒子を含む金属を相手材とした場合には、相手側の
硬質粒子により炭化物が切削されて、コーティングが損
傷してしまう。摩耗損傷の低減に最も有効なのは、接触
面をクロム炭化物コーティングと、HS25のような固
溶体型コバルト基合金の組合せとすることである。
炭化物コーティングと固溶体型コバルト基合金の耐摩耗
性に優れた材料の組合せを、実機ガスタービンのトラン
ジションピースに適用した例を説明する。
ピースの概略を示す斜視図である。トランジションピー
ス本体1の後方の額縁2の上下に取付けられ、静翼と額
縁を嵌合するシールがフローティングシール3,3’で
ある。また、額縁2の側面に取付けられ額縁同士を嵌合
するシールをサイドシール4,4’と呼ぶ。
の取付け状態を示す斜視図である。フローティングシー
ル3,3’は、湾曲した断面形状を有する薄板材であ
り、上下2本の各シールは、額縁2の外周部のシール溝
5に図3(a)に示す状態で取付けられる。シール取付
け後の状態を図3(b)に示した。上下のフローティン
グシール3,3’の後方に張出した部分は初段静翼と嵌
合する。
材を加工してフローティングシールを作製し、シールの
摩耗損傷が生じる部分に、HVOFによりクロム炭化物
コーティングを施工した。
25の保護板6を溶接により取付け、上記部材を組合せ
てトランジションピースを作製した。
ティングシールと額縁を実機ガスタービンに取付けた際
の構造を示す模式断面図である。図4は、図3(b)の
断面Aにおける上部フローティングシール取付け部の模
式断面図である。
は、シールが静翼側から額縁側に押し付けられるような
力が作用し、額縁の最後部とフローティングシール内面
の静翼側の接触部で顕著な摩耗が発生する。そのため、
図4で示すようにフローティングシール3および額縁2
の部位に対して、コーティング施工と保護板6の取付け
を行った。
とフローティングシール3間の接触部においては、摩耗
損傷は比較的小さいことから、コーティングや保護板取
付けの摩耗対策は行なっていない。なお、下部のフロー
ティングシールにおいても、コーティングと保護板の取
付け位置は同じとした。
炭化物コーティング、および、額縁2への保護板6の取
付けの摩耗対策を施したトランジションピースを、実機
ガスタービンに取付けて運転試験を行なった。その結
果、摩耗防止対策を行なわない場合に比べてフローティ
ングシール,額縁材共に摩耗損傷が大きく改善されるこ
とを確認した。
付けたHS25製の保護板6の表面に、HVOFにより
クロム炭化物コーティングを施工する一方で、フローテ
ィングシール側にはコーティングを施工しない状態でト
ランジションピースを構成し、実機ガスタービンに適用
した。
取付け構造の模式断面図を示す。額縁2の保護板6の取
付け位置は実施例2と同様とし、溶接により保護板6を
取付けた後にコーティングを施工した。
の額縁側に施工しているが、フローティングシールと額
縁の接触部における材料組合せは、クロム炭化物コーテ
ィングとHS25である。これらも実機ガスタービンに
よる運転試験により、実施例2と同様に摩耗防止対策を
行なわない場合に比べて、摩耗損傷の防止に有効なこと
を確認した。
溶体型コバルト基合金保護板の組合せによる高温耐摩耗
構造を、ガスタービンのトランジションピースに適用す
ることにより、摩耗損傷を大幅に低減することが可能と
なる。その結果、トランジションピース額縁材およびシ
ール材の使用寿命の延長による交換頻度の低減や、ガス
タービンの信頼性向上が可能となる。
試験による摩耗損傷量を示すグラフである。
を示す斜視図である。
ローティングシールの取付け状態を示す斜視図である。
ールと額縁とを実機ガスタービンに取付けた模式断面図
である。
ールと額縁とを実機ガスタービンに取付けた模式断面図
である。
フローティングシール、4,4’…サイドシール、5…
シール溝、6…保護板、7…静翼、8…静翼シール溝。
Claims (3)
- 【請求項1】 発電用ガスタービンの燃焼器トランジシ
ョンピース(尾筒)と初段静翼とをシール材を介して嵌
合したガスタービン燃焼器において、 化学組成中にクロムを15〜30重量%、炭素を0.0
5〜0.2重量%含有するコバルト基合金を基材とし、
表面にクロム炭化物を主成分とする厚さが0.1〜0.6
mmの耐摩耗コーティング処理した板材をシール材と
し、トランジションピース嵌合部におけるシール材のコ
ーティング層との接触部に、シール材と同種のコバルト
基合金板材を取付けたことを特徴とするガスタービン燃
焼器。 - 【請求項2】 発電用ガスタービンの燃焼器トランジシ
ョンピース(尾筒)と初段静翼とをシール材を介して嵌
合したガスタービン燃焼器において、 化学組成中にクロムを15〜30重量%、炭素を0.0
5〜0.2重量%含有するコバルト基合金をシール材と
し、トランジションピース嵌合部におけるシールとの接
触部に、シール材と同種類のコバルト基合金板材を取付
けた後、該板材表面およびその周囲のシール材と接触す
る領域表面にクロム炭化物を主成分とする厚さが0.1
〜0.6mmの耐摩耗コーティング層を施したことを特
徴とするガスタービン燃焼器。 - 【請求項3】 前記耐摩耗コーティング層のクロム炭化
物と混合するバインダ相をニッケル−クロム合金とし、
コーティング層のクロム炭化物含有量が体積比で65〜
95%である請求項1または2に記載のガスタービン燃
焼器。
Priority Applications (1)
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