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JP2003176200A - 炭化珪素単結晶育成用種結晶、炭化珪素単結晶インゴット、及びこれらの製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶育成用種結晶、炭化珪素単結晶インゴット、及びこれらの製造方法

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JP2003176200A
JP2003176200A JP2001378265A JP2001378265A JP2003176200A JP 2003176200 A JP2003176200 A JP 2003176200A JP 2001378265 A JP2001378265 A JP 2001378265A JP 2001378265 A JP2001378265 A JP 2001378265A JP 2003176200 A JP2003176200 A JP 2003176200A
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JP
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silicon carbide
single crystal
seed crystal
crystal
carbide single
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JP2001378265A
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Tatsuo Fujimoto
辰雄 藤本
Noboru Otani
昇 大谷
Masakazu Katsuno
正和 勝野
Hirokatsu Yashiro
弘克 矢代
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、欠陥密度が極めて小さい大口径単
結晶炭化珪素ウエハを取り出せる炭化珪素単結晶の製造
を可能にする、炭化珪素単結晶インゴット育成用種結
晶、及びそれを用いた単結晶炭化珪素インゴット、及び
これらの製造方法を提供することをその目的とする。 【解決手段】 種結晶上に、フォトリソグラフィーによ
って主として炭素からなるマスク層を形成し、そのマス
ク越しに炭化珪素単結晶をエピタキシャル成長させつ
つ、その単結晶成長途中でフォトリソグラフィーにより
新たにマスク層を形成し、該マスク越しに炭化珪素単結
晶エピタキシャル成長を行うことを少なくとも1回は行
い、かつ、各マスク層のマスク部分の種結晶表面上への
投影が種結晶表面上への投影像が種結晶表面を完全に遮
蔽するように各マスク層のマスク部位置を配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭化珪素単結晶育
成用種結晶及びその製造方法に関し、特に、マイクロパ
イプや刃状欠陥等々をはじめとする各種欠陥が極めて少
ない大型単結晶インゴットの製造を可能にする、種結晶
及びその製造方法に関するものであり、また、この種結
晶を用いた炭化珪素単結晶インゴット及びその製造方法
に関するものである。本種結晶を使用して製造される炭
化珪素単結晶インゴットは、青色発光ダイオードや、高
耐圧・高周波動作を特徴とする電子デバイス等の基板ウ
エハとして使用される。
【0002】
【従来の技術】炭化珪素(SiC)は、耐熱性及び機械
的強度に優れ、また、代表的な汎用半導体材料であるシ
リコンを超える優れた半導体特性を有することから、青
色から紫外にかけての短波長光デバイス、高周波高耐圧
電子デバイス等の基板ウエハとして、その工業的安定生
産を目指す研究が近年活発化している。しかしながら、
現状でも欠陥密度が依然として高く、実用化に際して大
きな障壁の一つになっている。代表的な欠陥としてはマ
イクロパイプと称される微小中空状の欠陥の存在が知ら
れており、素子を作製した際に漏れ電流等を引き起こす
など、致命的な影響を与えてしまうことが既に報告され
ている(例えば、P. G. Neudeck et al.,IEEE Electron
Device Letters, Vol.15 (1994) pp.63-65)。また、
近年では、インゴット中に存在する刃状転位あるいは螺
旋転位等々の欠陥も、デバイスの漏れ電流を引起し得る
可能性があることを指摘する報告も増加する傾向にあ
る。したがって、工業的には、かような欠陥群が極力少
ない、大口径かつ高品質のSiC単結晶インゴットの製
造が希求されているものの、それを可能にする結晶成長
技術は、いまだ十分には確立されるには至っていない。
【0003】一般的に、SiC単結晶インゴットは、改
良レーリー法と称される方法によって製造される(Yu.
M. Tairov and V. F. Tsvetkov, Journal of Crystal G
rowth, Vol.52 (1981) pp.146-150)。本法では、Si
C単結晶ウエハを種結晶として使用し、主として黒鉛か
らなる坩堝中に原料となるSiC結晶粉末を充填して、
アルゴン等の不活性ガス雰囲気中(133Pa〜13.
3kPa)にて、2000〜2400℃に加熱される。
この際、原料粉末に比べ種結晶が低温側となる温度勾配
が形成されるように種結晶及び原料粉末が配置され、こ
れにより原料は昇華後、種結晶方向へ拡散、輸送され、
しかる後に、種結晶上に到来したSiC昇華ガスが種結
晶上に再結晶化することにより、単結晶成長が実現す
る。
【0004】このような改良レーリー法によってSiC
単結晶インゴットを製造する際、種結晶中に既に存在す
る欠陥群を成長時に引き継がれる性質があることが知ら
れている。これらの欠陥群を除去するためには、異種ポ
リタイプと称される本系特有の多形結晶や、結晶方位が
大きく乱れた結晶粒の発生等々による、刃状転位、螺旋
転位、マイクロパイプのような新たな欠陥群の発生が全
く起こらないように安定結晶成長を繰り返す必要があ
る。この安定成長の繰り返し操作により、結晶中の刃状
転位は、結晶周辺部に移動して、最終的に結晶外部に転
位中心が逃げる等々の現象により、結晶中の刃状転位密
度が減少する。また、マイクロパイプについても、その
形成原因と目されている螺旋転位中心の巨大なバーガー
スベクトルが、臨界値以下のバーガースベクトルを有す
る螺旋転位群に分解して、空孔部分が消滅する。現状で
は、このような方法以外に有効な方法は無い。
【0005】従来、欠陥密度の極めて小さい種結晶とし
て供試可能な結晶として、レーリー法によって製造され
る、レーリー結晶と称される結晶片の存在が知られてい
る。しかしながら、この結晶片は、その大きさが直径に
してせいぜい10〜15mm程度にしか及ばず、工業的
に希求されている2〜4インチ(約50〜100mm)
径にははるかに及ばない。このため、前記のような事情
から、実際としては、上記レーリー結晶から出発し、安
定結晶成長を繰り返して欠陥を新たに発生させないよう
に慎重に口径拡大を重ね、所望の2〜4インチ(約50
〜100mm)径にすることにより大口径高品質インゴ
ットを製造する方法で、大口径インゴットを作製してい
るのが現状である。更に、この方法によって口径拡大に
成功したとしても、成長条件の突発的変移等々の偶発的
な要因による成長不安定性が起こって、インゴット中に
新たに欠陥が多数発生する確率が無視できないことに留
意する必要がある。すなわち、かような成長不安定性が
起こって欠陥密度が増加した場合には、欠陥密度が元の
レベルまで低減するまで、再び安定結晶成長を繰り返す
必要があり、効率的な工業生産が阻まれてしまう。
【0006】このような理由から、特に大口径を有する
炭化珪素インゴットであって、かつ、欠陥密度が極力小
さい高品質なインゴットを、種結晶の欠陥密度に依存せ
ず、かつ過大な繰り返し安定成長を必要とせずに、製造
可能にする新たな方法が強く望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記のとおり、安定成
長が実現されている場合、SiC単結晶に存在する各種
欠陥の多くは、種結晶に存在していたものが、成長結晶
に引き継がれたものである(Takahashi et al., Journa
l of Crystal Growth, Vol.167 (1996) pp.596-606参
照)。従って、欠陥密度が極めて小さい大口径インゴッ
トを実現するためには、理想的には、欠陥が皆無な大口
径種結晶を作製する必要がある。しかしながら、現状で
は、そのような種結晶を効率的に作製する方法は無い。
【0008】従って本発明は、上記事情に鑑み、欠陥密
度が極めて小さい大口径インゴットを製造し得る、高品
質大口径種結晶、及びそれを用いた単結晶炭化珪素イン
ゴット、及びこれらの製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は以下の通
りである。すなわち、 (1)結晶法による炭化珪素単結晶インゴットの製造に
用いられる種結晶であって、炭化珪素単結晶からなる種
結晶中に、炭素を含んでなるマスク部と、開口部とから
なるマスク層を複数含むことを特徴とする炭化珪素単結
晶育成用種結晶。
【0010】(2)前記マスク層の厚さが、それぞれ独
立して、1〜100μmである(1)に記載の炭化珪素
単結晶育成用種結晶。
【0011】(3)前記マスク部の幅が、それぞれ独立
して、10〜100μmである(1)または(2)に記
載の炭化珪素単結晶育成用種結晶。
【0012】(4)前記マスク層のマスク開口率(開口
部面積/マスク部面積)が、それぞれ独立して、0.0
5〜2である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の炭
化珪素単結晶育成用種結晶。
【0013】(5)前記マスク部を種結晶成長面上に投
影したときに得られる投影像が種結晶成長面を完全に遮
蔽することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一
項に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶。
【0014】(6)(1)〜(5)のいずれか一項に記
載の炭化珪素単結晶育成用種結晶を製造する方法であっ
て、炭化珪素単結晶からなる種結晶の結晶成長面上にマ
スク部と開口部とからなるマスク層を形成し、該マスク
層越しに炭化珪素エピタキシャル成長を行い、成長の途
中に新たなマスク層を形成して、さらに炭化珪素エピタ
キシャル成長を継続することを少なくとも1回は行うこ
とを特徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶の製造方
法。
【0015】(7)前記マスク層は、フォトリソグラフ
ィーによって種結晶上に遮蔽物を形成し、その上に炭素
を含んでなる薄膜を堆積した後に該遮蔽物を除去する方
法によって作製される、(6)に記載の炭化珪素単結晶
育成用種結晶の製造方法。
【0016】(8)昇華再結晶法により種結晶上に炭化
珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶
インゴットの製造方法であって、種結晶として(1)〜
(5)のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶育成用種
結晶を用いることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴッ
トの製造方法。
【0017】(9)(8)に記載の製造方法により得ら
れた炭化珪素単結晶インゴットであって、該インゴット
の口径が50mm以上であることを特徴とする炭化珪素
単結晶インゴット。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明は、結晶法による炭化珪素
単結晶インゴットの製造に用いられる種結晶であって、
炭化珪素単結晶からなる種結晶中に、炭素を含んでなる
マスク部と、開口部とからなるマスク層を複数含むこと
を特徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶およびその製
造方法、ならびに、当該種結晶からなる炭化珪素単結晶
インゴットおよびその製造方法である。
【0019】本発明において、種結晶上に、例えばフォ
トリソグラフィーの手法を利用して、主として炭素から
なるマスク層を形成し、そのマスク越しにSiC単結晶
を成長させつつ、その単結晶成長の途中で、フォトリソ
グラフィーによる新たなマスク層を形成してそのマスク
越しに炭化珪素単結晶エピタキシャル成長を行う工程を
少なくとも1回は繰り返し、その際、各マスク層のマス
ク部分の種結晶表面上への投影像が種結晶表面を覆い尽
くすように各マスク層を配置することにより、マイクロ
パイプ欠陥がほぼ皆無な、SiC単結晶育成用種結晶を
得ることができる。この種結晶を使用して、改良レーリ
ー法等々による昇華再結晶法によりSiC単結晶を成長
させることで、マイクロパイプ欠陥が極めて少ない、高
品質SiC単結晶インゴットを簡便に製造することが可
能になる。
【0020】図1に本発明の概要を示す。本図では、
{0001}面上にSiC単結晶成長を実施する場合に
ついて、2層のマスク層によって結晶成長表面が完全に
覆われる例が示されている。まず、SiC種結晶表面上
にフォトリソグラフィーを利用して、主として炭素から
なる第1層マスク層を形成する。このとき使用される種
結晶には、多数のマイクロパイプ欠陥が含まれていても
構わない。フォトリソグラフィーとしては、一般的に行
われている方法で十分であるが、例えば、SiC種結晶
表面に、まずフォトレジストと呼ばれるポジ型の感光剤
を均一に塗布してプリベークさせる。この表面へ、所望
のパターンを予め形成させてあるフォトマスクを通して
紫外線を露光し、しかる後に現像処理することにより、
感光した部分が全て抜け落ちたパターンが形成される。
このパターン化されたSiC種結晶表面上に、一様にカ
ーボン薄膜を真空蒸着させ、その後残留レジストを剥離
除去すると、この残留レジスト上に形成されたカーボン
薄膜層も全て除去され、最終的にフォトマスクのマスク
部に該当する部分のみ基板のSiC種結晶表面が露出
し、それ以外の部分は全てカーボン薄膜に覆われたパタ
ーン化表面(マスク層)を得ることができる(図1
(a))。
【0021】次に、このカーボン薄膜からなるマスク層
によってパターン化されたSiC種結晶表面上へ、マス
ク層越しにSiC単結晶をエピタキシャル成長させる。
ここでエピタキシャル成長の方法としては、物理的気相
成長法(Physical Vapor Transport法)、または、化学
的気相成長法(Chemical Vapor Deposition法)のいず
れを用いても構わないが、前者の方法がより高速成長が
可能である点で有利である。ただし、結晶成長時に、三
次元的核生成やステップバンチングが発生しないよう
に、成長速度等々の条件をコントロールする必要がある
(例えば、Y. Khlebnikov et al., Journal of Crystal
Growth, Vol.233 (2001) p.112)。エピタキシャル成
長の初期段階では、マスク層の開口部において、c軸に
ほぼ平行方向のSiC単結晶成長が起こるが、その後成
長が進展するにつれ、マスク部の直上部分では、c軸に
垂直方向の結晶成長が進展し、最終的にはパターン化さ
れた種結晶の表面全体を覆うようになる(図1
(b))。この際、マスク層の開口部では、種結晶中に
存在するマイクロパイプ等々の欠陥群が引き継がれるた
めに、欠陥密度がほぼ種結晶中のそれとほぼ同等のまま
維持されるが、特開平5−262599号公報に開示さ
れているように、マスク部上の空間部分では、マイクロ
パイプ欠陥の発生が殆ど無いことに加え、エピタキシャ
ル成長特有の安定成長機構により、極めて欠陥密度の小
さい結晶成長が実現される。ほぼ同様な結果は、最近Y.
Khlebnikov等によっても報告されている通りである
(Y. Khlebnikov etal., Journal of Crystal Growth,
Vol.233 (2001) p.112)。
【0022】引き続いて、本結晶表面上に第2層目のマ
スク層を上述した通りに形成し、開口部に残存した欠陥
群を除去する(図1(c))。以下、詳細に説明する。
まず、本結晶表面に、前記と同様にして、再びフォトリ
ソグラフィーによって、主として炭素を含んでなるマス
ク部と開口部とからなるマスク層を形成する。当該マス
ク層は本結晶表面上に直接形成しても構わないが、表面
起伏が激しい場合には、その前処理として、結晶表面を
研磨処理して、鏡面平坦面を形成してもよい。研磨処理
は、主としてダイヤモンド砥粒を含む研磨液を用いた機
械的研磨で十分であるが、引き続く結晶成長時の欠陥生
成を極力抑えるために、溶融KOH等々によるエッチン
グによって表面ダメージ層を除去することが好ましい。
このようにして形成した平坦面上に、前回と同様な方法
により、マスク形成及び単結晶エピタキシャル成長を実
施するが、その際、形成する第2マスク層を、そのマス
ク部分が第1マスク層の開口部分を完全に覆うように配
置する。この操作により、各マスク層のマスク部分の投
影像が、種結晶表面上を完全に遮蔽する。このようにし
て作製したマスク越しに、エピタキシャル成長を行う
と、第1回目のエピタキシャル成長によって形成され
た、欠陥密度が極めて小さい結晶部分より結晶成長が継
続されるため、第2マスク層の開口部分においても既に
欠陥は極めて少なく、結果的に結晶成長を行う結晶表面
のほぼ全部分に亘って欠陥密度の小さい、良質な種結晶
が製造される。
【0023】なお、フォトマスクの形状としては、メッ
シュ状あるいは格子状等々、どのようなパターンでも可
能であるが、フォトマスク製作の容易性の観点から、で
きるだけ簡便なものが好ましい。またマスク層の材質と
しては、SiC単結晶成長時の耐熱性や耐反応性等々を
考慮すると、炭素を含むことが好ましく、より好ましく
は黒鉛で形成される。
【0024】また、形成される炭素を含んでなるマスク
部と、開口部とからなるマスク層の厚さは、1〜100
μmであることが望ましい。ここでマスク層の厚さが1
μm未満となった場合には、マスク層厚のバラツキ等々
の理由により、マスクとしての機能が不十分となり好ま
しくなく、一方で、100μmを超えると、かようなマ
スク層を形成するのに過大な時間が必要となり、工業的
に好ましくない。
【0025】さらに、上述したマスク層の開口率(開口
部の面積/マスク部の面積)は、0.05〜2.0である
ことが望ましい。ここで開口率が0.05未満になる
と、種結晶部分からの成長方位の引き継ぎが困難とな
り、マスク部上で多結晶等が発生し易くなる恐れがあ
り、一方、2.0超になると、マスク部で被覆される部
分が小さくなり、マスク層によるマイクロパイプ欠陥の
遮蔽効果が小さくなってしまう恐れがある。
【0026】さらに、マスク部の幅が10μm未満で
は、c軸に垂直な方向への成長が、充分な長さ行われ
ず、マイクロパイプ欠陥が完全に抑制できない。従っ
て、本発明の効果を得ることが難しくなる。また、マス
ク部の幅が100μm超になると、今度は逆にc軸に垂
直な方向への成長によりマスク全域を覆うことが困難と
なり、マスク部中央部直上にボイド等の欠陥が発生する
など、好ましくない。
【0027】さらに本発明は、上記により得られたSi
C単結晶育成用種結晶を使用し、前記にて詳述した改良
レーリー法等の昇華再結晶法により、インゴットを製造
する方法である。当該方法により、ほぼ全面に亘って欠
陥密度が極めて低い高品質単結晶インゴットを製造する
ことができる。
【0028】なお、種結晶の、特にマスク部直上の領域
に、Takahashi et al., Journal ofCrystal Growth, Vo
l.181 (1997) pp.229-240に示されているように、(0
001)面積層欠陥が発生する可能性があるが、本発明
の種結晶を用いて昇華再結晶法によりSiC単結晶成長
を行い、十分に厚い単結晶インゴットを製造することに
より、種結晶直上以外の大部分の領域においては、ほぼ
c軸と平行な結晶成長が進行するため、前記のような面
欠陥は発生しない。
【0029】最後に、本発明は、基本的には種結晶の口
径に依存せず、あらゆる口径の種結晶について有効であ
るが、特に、口径が50mm以上の大型単結晶育成用種
結晶、及び単結晶インゴットについて、極めて大きな効
果が得られる。かように大型化したインゴットを作製す
るためには、従来では、既述したように、口径の小さ
く、かつ、マイクロパイプ密度等々の欠陥が少ない高品
質単結晶を慎重に口径50mmまで口径拡大するか、あ
るいは、その途中でマイクロパイプ密度が増加した場合
には、マイクロパイプ密度が所定の値まで低下するまで
安定成長を繰り返すことの、いずれかの方法でしか作製
できない。本発明の、例えば図1に示す方法によれば、
僅か2回の単結晶エピタキシャル成長を実施することの
みで、欠陥密度が極めて小さい高品質単結晶育成用種結
晶が得られ、かつ、改良レーリー法による単結晶インゴ
ットの製造において、得られた育成用種結晶を使用する
ことにより、欠陥密度が極めて小さい高品質単結晶イン
ゴットが簡便に製造することが可能になる。
【0030】上記のように、本発明の製造方法により、
種結晶の欠陥密度に関わらず、従来のように安定成長を
過大に繰り返すことなく、欠陥が極めて少ない大口径S
iC単結晶インゴット製造の高品質大口径種結晶を簡便
に製造することが可能になる。
【0031】
【実施例】以下に本発明の実施例を述べる。
【0032】図2に成長装置の概要を示す。口径は約5
1mm(=2インチ)で、そのc軸が<11−20>方
向に4°傾いた4°オフ六方晶系SiC単結晶ウエハを
種結晶ウエハとして使用した。次に、この種結晶ウエハ
表面にフォトリソグラフィーにより黒鉛製のマスク層を
形成した。図2(b)に、そのマスク形状を示す。当該
マスク層はマスク部(28)と開口部(29)とからな
り、マスク層の厚さは5μmで、円状の開口部の直径は
30μm、開口部の円中心間の隣接開口円中心間距離
(30)は80μmとした(マスク開口率:約0.1
2)。この種結晶を黒鉛製蓋の内面に取り付け、さらに
黒鉛製坩堝(21)の下部に、原料用高純度SiCウェ
ハ(23)を対向設置した後密閉し、断熱用黒鉛製フェ
ルト(25)で被覆して断熱処理を施して、水冷式二重
石英管(24)内部に設置した。二重石英管(24)の
外周には、ワークコイル(27)が設置されており、高
周波電流を流すことにより黒鉛製坩堝(21)を加熱
し、原料及び種結晶を所望の温度に加熱することができ
る。石英管の内部を真空排気した後、真空排気装置Ar
ガス配管(26)を介してArガスを流入して雰囲気置
換し、石英管内圧力を約80kPaに保ちながら、原料
温度を約2350℃まで上げた後、成長圧力である1.
3kPaに減圧し、その温度で約1時間成長を保持し
て、エピタキシャル成長を実施した。成長速度は約2μ
m/分以下であった。
【0033】次に得られた単結晶表面を、ダイヤモンド
砥粒を含む研磨液を使用する機械研磨によって鏡面処理
化し、さらに500℃に加熱した溶融KOHで単結晶表
面を僅かにエッチングした。このウエハ表面に、新たに
フォトリソグラフィーにより黒鉛製のマスク層を形成し
た。この時形成された、メッシュ状マスク層は開口部を
平行移動させ、初回成長時に使用したマスクの開口部分
を完全に覆うように配置した。以下、初回成長時とほぼ
同様な条件でエピタキシャル成長を実施し、SiC単結
晶育成用種結晶を作製した。
【0034】このようにして得られたSiC単結晶育成
用種結晶を用いて、一般的な改良型レーリー法による昇
華再結晶法により、SiC単結晶インゴットを製造し
た。すなわち、黒鉛製坩堝に、高純度SiC粉末からな
る原料を充填した後、上記で得られた種結晶を装着した
蓋で密閉し、黒鉛製フェルトで被覆して断熱処理を施し
た後、二重石英管内部に設置した。石英管の内部を真空
排気した後、Arガスを流入して雰囲気置換し、石英管
内圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を200
0℃まで上げた。その後、成長圧力である1.3kPa
に約30分かけて減圧しながら、原料温度を目標温度で
ある2400℃まで上昇させ、その温度で約20時間成
長を保持して、単結晶成長を実施した。この際の坩堝内
の温度勾配は15℃/cmであった。得られた結晶の口
径は53mmで、成長速度は約1mm/時であった。
【0035】このようにして得られたインゴットより、
厚さ約1mmの4°オフ{0001}面ウェハを取り出
し、研磨後に溶融KOHでウエハ表面をエッチング後、
顕微鏡観察したところ、各種欠陥に対応するエッチピッ
トの数は、概算でほぼ800個/cm2程度であること
が判明した。
【0036】比較例として、上記単結晶育成用種結晶を
作成する際に用いたSiC種結晶ウエハとほぼ同等な欠
陥密度を有する種結晶ウエハを用いて、全く同等な条件
にて直接昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴット
を製造し、厚さ約1mmの4°オフ{0001}面ウエ
ハを取り出して、同様に研磨後に溶融KOHでウェハ表
面をエッチング後、顕微鏡観察したところ、エッチピッ
トの数は、概算でほぼ2000個/cm2程度であっ
た。すなわち本発明の種結晶を使用することにより約6
0%におよぶ欠陥密度の減少が達成された。
【0037】また更に、従来行われてきた安定化工程を
繰り返すことによって欠陥を防ぐインゴット製造方法
と、本発明との比較を行った。上記単結晶育成用種結晶
を作成する際に用いたSiC種結晶ウエハと、ほぼ同等
の欠陥密度を有する種結晶ウエハを用いて、マスクを設
置しない、従来の昇華再結晶法による単結晶成長を実施
した。成長条件は前記と同様である。このインゴットか
ら4°オフ{0001}面ウエハを切り出し、さらにこ
のウエハを用いた単結晶成長と、4°オフ{0001}
面ウエハ切り出しとを、その後約19回、総計20回繰
り返した。しかる後に前記と同様に、厚さ約1mmの4
°オフ{0001}面ウエハを切り出し、研磨後に溶融
KOHでウエハ表面をエッチング後、顕微鏡観察したと
ころ、エッチピットの数は、ほぼ全面に亘って1500
個/cm2程度であった。すなわち、従来法では総計2
0回におよぶ単結晶成長および種結晶ウエハ切り出し工
程の繰り返しを行っても実現し得ない高品質単結晶イン
ゴットが、本発明では、僅か2層のマスク形成とそれに
伴う2回の単結晶成長によって実現できることが証明さ
れた。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の種結晶は
簡便に作成することができ、改良型レーリー法による炭
化珪素単結晶インゴットの製造において、本発明の種結
晶を用いることにより、欠陥密度が極めて小さい良質の
炭化珪素単結晶を再現性、及び均質性良く成長させるこ
とができる。このような炭化珪素単結晶ウエハを用いれ
ば、光学的特性の優れた青色発光素子、電気的特性の優
れた高耐圧・耐環境性電子デバイスを製作することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の種結晶の製造方法を概説する図であ
る。
【図2】 (a)は、エピタキシャル単結晶成長を行う
成長装置の概要図であり、(b)は、フォトリソグラフ
ィーで用いるカーボン製マスクパターン例である。
【符号の説明】
11 マスク部 12 SiC種結晶 13 マイクロパイプ欠陥 21 黒鉛製坩堝 22 マスク付き種結晶 23 原料用高純度SiCウエハ 24 水冷式二重石英管 25 断熱用黒鉛製フェルト 26 真空排気装置Arガス配管 27 ワークコイル 28 マスク部 29 開口部 30 隣接開口円中心間距離
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 勝野 正和 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 矢代 弘克 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4G077 AA02 BE08 DA02 DA19 EA02 EA03 ED01 HA02 SA04

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 昇華再結晶法による炭化珪素単結晶イン
    ゴットの製造に用いられる種結晶であって、炭化珪素単
    結晶からなる種結晶中に、炭素を含んでなるマスク部
    と、開口部とからなるマスク層を複数含むことを特徴と
    する炭化珪素単結晶育成用種結晶。
  2. 【請求項2】 前記マスク層の厚さが、それぞれ独立し
    て、1〜100μmである請求項1に記載の炭化珪素単
    結晶育成用種結晶。
  3. 【請求項3】 前記マスク部の幅が、それぞれ独立し
    て、10〜100μmである請求項1または2に記載の
    炭化珪素単結晶育成用種結晶。
  4. 【請求項4】 前記マスク層のマスク開口率(開口部面
    積/マスク部面積)が、それぞれ独立して、0.05〜
    2である請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化珪素
    単結晶育成用種結晶。
  5. 【請求項5】 前記マスク部を種結晶成長面上に投影し
    たときに得られる投影像が種結晶成長面を完全に遮蔽す
    ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記
    載の炭化珪素単結晶育成用種結晶。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭
    化珪素単結晶育成用種結晶を製造する方法であって、炭
    化珪素単結晶からなる種結晶の結晶成長面上にマスク部
    と開口部とからなるマスク層を形成し、該マスク層越し
    に炭化珪素エピタキシャル成長を行い、成長の途中に新
    たなマスク層を形成して、さらに炭化珪素エピタキシャ
    ル成長を継続することを少なくとも1回は行うことを特
    徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記マスク層は、フォトリソグラフィー
    によって種結晶上に遮蔽物を形成し、その上に炭素を含
    んでなる薄膜を堆積した後に該遮蔽物を除去する方法に
    よって作製される、請求項6に記載の炭化珪素単結晶育
    成用種結晶の製造方法。
  8. 【請求項8】 昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素
    単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶イン
    ゴットの製造方法であって、種結晶として請求項1〜5
    のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶を
    用いることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製
    造方法。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の製造方法により得られ
    た炭化珪素単結晶インゴットであって、該インゴットの
    口径が50mm以上であることを特徴とする炭化珪素単
    結晶インゴット。
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